(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0011】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
図2は、
図1の線II−IIにおける略図的断面図である。
図1に示されるガスの処理装置1は、例えば、人体や環境等に有毒な成分を含むガスを処理し、無害化するための装置である。処理装置1は、より具体的には、例えば、アルミニウム膜等のドライエッチング装置から排出される、三塩化ホウ素などのハロゲン化合物を含むガスを処理するために好適に用いられる。
【0013】
図1に示されるように、処理装置1は、筐体10を備えている。筐体10内には、処理カートリッジ20が配されている。この処理カートリッジ20によりガスの処理が行われる。
【0014】
処理カートリッジ20は、容器21を有する。容器21は、導入口22と、排出口23と、内部空間24とを有する。導入口22及び排出口23は、それぞれ、内部空間24に接続されている。処理対象である被処理ガスは、導入口22から内部空間24に導入される。被処理ガスは、内部空間24において処理される。処理済みのガスは、排出口23を経由して内部空間24から排出される。本実施形態では、導入口22は、容器21の下部に設けられている。排出口23は、容器21の上部に設けられている。もっとも、本発明は、この構成に限定されない。容器の上部に導入口が設けられており、下部に排出口が設けられていてもよい。
【0015】
内部空間24内には、区画壁25が配されている。この区画壁25によって内部空間24が区画壁25の下側に位置する空間と、上側に位置する空間とに区画されている。
【0016】
内部空間24の区画壁25よりも下側に位置する空間は、トラップ室27を構成している。トラップ室27は、内部空間24の下部に設けられている。トラップ室27は、導入口22に直接接続されている。このトラップ室27には、被処理ガスを処理するための処理剤は配されていない。トラップ室27は、中空である。このトラップ室27において、被処理ガス内の粉体等の固体が収集される。
【0017】
内部空間24の区画壁25よりも上側に位置する空間は、処理室26を構成している。区画壁25には、トラップ室27と処理室26とを接続している少なくとも一つの貫通孔25aが設けられている。この貫通孔25aを経由して被処理ガスがトラップ室27から処理室26に移動する。
【0018】
処理室26には、処理剤28が配されている。処理剤28は、被処理ガスを処理するための薬剤である。具体的には、処理剤28は、被処理ガスに含まれる有害物質の濃度を低減させる。
【0019】
処理剤28は、吸着剤を含む。吸着剤は、被処理ガスに含まれている、濃度を低減させようとする物質を吸着する薬剤である。吸着剤は、例えば、ゼオライト、活性炭、活性白土等であってもよい。処理剤28は、吸着剤に加えて、濃度を低減させようとする物質と反応する反応剤、濃度を低減させようとする物質の反応に寄与する触媒等をさらに含んでいてもよい。
【0020】
処理室26に流入した被処理ガスは、処理剤28により処理される。その結果、有害物質などの特定の物質の濃度が低減された処理済みガスが生成される。処理済みガスは、排出口23を経由して、処理カートリッジ20の外部に排出される。
【0021】
ところで、三塩化ホウ素などが被処理ガスに含まれる場合、被処理ガスの温度が低くなると、ホウ酸などの固形物が生じる場合がある。このため、処理装置までの配管中で被処理ガスの温度が低下すると、生じた固形物により配管が閉塞する虞がある。従って、高温の被処理ガスを処理装置に導入したいという要望がある。温度が低下した際に固形物が生じないガスであっても、高温のまま処理装置に導入することが要望される場合もある。
【0022】
本発明者らは、鋭意研究した結果、例えば特許文献1に記載の処理装置に高温の被処理ガスを導入した場合、処理装置の処理能力が低下することを見出した。この原因は、定かではないが、高温の被処理ガスが導入されることにより吸着剤の温度が上昇し、吸着剤の処理能力が低下したためであると考えられる。
【0023】
そこで、処理装置1では、容器21に区画壁31,32が設けられている。これら区画壁31,32によって、ガスの流れる方向が相互に異なる複数の処理部41,42に区画されている。このため、処理室26内におけるガスの流路が長い。よって、ガスは、処理室26内で冷却され、処理室26の下流側部分におけるガスの温度が低くなる。従って、処理室26の下流側部分に配された吸着剤の吸着能の低下を抑制できる。その結果、高温の被処理ガスが導入される場合であっても、処理装置1は、優れた処理能力を示す。
【0024】
具体的には、処理装置1では、区画壁31は、底壁部31aと、側壁部31bとを有する。底壁部31aは、円板状である。底壁部31aは区画壁25の上方に位置している。底壁部31aは、区画壁25と間隔をおいて対向している。側壁部31bは、円筒状である。側壁部31bは、底壁部31aから上方に向かって延びている。側壁部31bは、容器21の上側壁部21bから離間している。側壁部31bは、容器21の外壁21aと間隔をおいて対向している。区画壁31と、外壁21a及び区画壁25との間に第1の処理部41が区画形成されている。従って、第1の処理部41は、外壁21aに沿って設けられている。
【0025】
区画壁31の内側には、区画壁32が配されている。区画壁32は、底壁部32aと、側壁部32bとを有する。底壁部32aは、底壁部31aの上方に配されている。底壁部32aは、円板状である。底壁部32aは、底壁部31aと間隔をおいて対向している。側壁部32bは、円筒状である。側壁部32bは、底壁部32aから上方に向かって延びている。側壁部32bは、容器の上側壁部21bに至っている。側壁部32bは、側壁部31bと間隔をおいて対向している。区画壁32と区画壁31との間に流路50が区画形成されている。流路50は、処理室26の側壁部31bの上方に位置する空間を介して第1の処理部41に接続されている。流路50には、処理剤28は配されていない。流路50は、中空である。
【0026】
第2の処理部42は、区画壁32の内側に設けられている。このため、第1の処理部41は、第2の処理部42よりも容器21の外壁21a側に設けられている。第2の処理部42は、中空である流路50により、第1の処理部41から隔離されている。
【0027】
第2の処理部42は、底壁部32aに設けられた貫通孔32a1によって流路50と接続されている。また、第2の処理部42は、排出口23に接続されている。第2の処理部42には、処理剤28が充填されている。
【0028】
図3は、第1の実施形態におけるガスの流れを説明するためのガスの処理装置の模式的断面図である。
図3に示されるように、まず、導入口22から導入された被処理ガスは、トラップ室27に流入する。トラップ室27は、処理室26よりも大きな流路面積を有する。このトラップ室27において、被処理ガスに含まれていた粉体等の固形物や、被処理ガスがトラップ室27等において冷却されることにより生じた固形物が収集される。従って、固形物を含む被処理ガスが処理室26に流入することにより目詰まりが発生することを抑制することができる。但し、本発明において、トラップ室27は必ずしも必須ではない。例えば、トラップ室を設けずに、導入口を処理室に直接接続してもよい。その場合、処理カートリッジに、固形物を収集するトラップを別途接続してもよい。
【0029】
被処理ガスは、貫通孔25aを経由して、トラップ室27から、第1の処理部41に流入する。第1の処理部41には、処理剤28が充填されている。このため、第1の処理部41においても、被処理ガスの処理が行われる。但し、高温の被処理ガスが導入口22から導入された場合は、第1の処理部41における被処理ガスの温度が高い。よって、第1の処理部41においては、処理剤28に含まれる吸着剤の吸着能が比較的低い。
【0030】
被処理ガスは、第1の処理部41から流路50に流入する。被処理ガスは、流路50から、貫通孔32a1を経由して、第2の処理部42に流入する。第2の処理部42には、処理剤28が充填されている。このため、第2の処理部42においても、被処理ガスの処理が行われる。第2の処理部42に流入した被処理ガスは、第1の処理部41を通過する際に冷却されている。このため、第2の処理部42には、比較的低温の被処理ガスが流入する。よって、第2の処理部42においては、処理剤28に含まれる吸着剤の吸着能が比較的高い。
【0031】
本実施形態では、第1の処理部41が第2の処理部42よりも容器21の外壁21a側に配されている。このため、第1の処理部41は、外気により冷却されやすい。よって、被処理ガスは、第1の処理部41を通過する際に冷却されやすい。従って、第2の処理部42に流入する被処理ガスの温度がより低い。よって、より優れた処理能力が実現される。
【0032】
第2の処理部42に流入する被処理ガスの温度をさらに低くすることにより、さらに優れた処理能力を実現する観点からは、第1の処理部41が外壁21aに沿って配されていることが好ましい。外壁21aの熱伝導率が、区画壁31,32の熱伝導率よりも高いことが好ましい。また、第1の処理部41の流路面積が、第2の処理部42の流路面積よりも小さいことが好ましい。この場合、容器21の半径方向に沿った第1の処理部41の厚みを小さくすることができる。従って、第1の処理部41を流れる被処理ガスがさらに冷却されやすくなるためである。第1の処理部41の流路面積は、第2の処理部42の流路面積の0.1倍〜2.4倍であることが好ましく、0.3倍〜1.3倍であることがより好ましい。容器21の半径に対する、容器21の半径方向に沿った第1の処理部41の厚み((容器21の半径方向に沿った第1の処理部41の厚み)/(容器21の半径))は、0.05〜0.46であることが好ましく、0.10〜0.35であることがより好ましい。
【0033】
3つ以上の処理部が設けられている場合は、最も導入口側(上流側)に位置する処理部が容器の外壁側、さらには、外壁に沿って設けられていることが好ましい。
【0034】
ところで、最も導入口22側に位置している第1の処理部41には、高温の被処理ガスが導入される。このため、処理装置1の稼働時において、第1の処理部41が高温になる。第1の処理部41の導入口22側の部分は、特に高温になる。具体的には、本実施形態では、第1の処理部41のトラップ室27と隣接している部分は、特に高温になる。このため、第2の処理部42の、第1の処理部41の導入口22側の部分と隣接している部分も高温になり、当該部分の処理能力が低下する虞がある。
【0035】
処理装置1では、第1の処理部41の導入口22側の部分と、第2の処理部42との間に流路50が配されている。流路50は、中空層である。このため、流路50の熱伝導率は、処理剤が充填された部分の熱伝導率よりも低い。よって、流路50により、第1の処理部41の導入口22側の部分から、第2の処理部42への熱伝導が抑制されている。従って、第2の処理部42の処理能力が高い。その結果、さらに優れた処理能力が実現されている。
【0036】
本実施形態では、流路50は、第1の処理部41と第2の処理部42との間全体にわたって設けられている。このため、第1の処理部41と第2の処理部42とは、中空である流路50により隔離されている。よって、第1の処理部41から第2の処理部42への熱伝導がさらに効果的に抑制されている。従って、さらに優れた処理能力が実現されている。
【0037】
処理剤28が、吸着剤に加えて、被処理ガスの成分と反応する反応剤、及び被処理ガスの成分を反応させる触媒の少なくとも一方を含む場合は、少なくとも第1の処理部41に配された処理剤28が、反応剤及び触媒の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。反応剤や触媒は、一般的に高温であるほど反応性または活性が高いためである。第1の処理部41における処理剤28中の反応剤及び触媒の濃度は、第2の処理部42における処理剤28中の反応剤及び触媒の濃度よりも高いことが好ましい。第1の処理部41に位置する処理剤28に反応剤及び触媒の少なくとも一方が含まれており、第2の処理部42に位置する処理剤28は、反応剤及び触媒を実質的に含まず、吸着剤により実質的に構成されていることが好ましい。
【0038】
なお、本実施形態では、処理室に処理部が2つ設けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。本発明において、処理室は、3つ以上の処理部を含んでいてもよい。処理室に含まれる処理部の数は、1〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0040】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
図5は、第2の実施形態におけるガスの流れを説明するためのガスの処理装置の模式的断面図である。
【0041】
本実施形態に係るガスの処理装置1aでは、第1の実施形態に係るガスの処理装置1とは異なり、流路50が設けられていない。
図5に示されるように、第1の処理部41を通過したガスは、第2の処理部42に流入し、第2の処理部42内を下方に向かって流れる。第2の処理部42を通過したガスは、貫通孔32a1を経由して中空層51に流入する。中空層51に流入したガスは、第1及び第2の処理部41,42を通過したガスであるため、処理済みのガスである。処理室26には、中空層51と排出口23とを接続している排出経路52が設けられている。中空層51に流入した処理済みのガスは、排出経路52を経由して、排出口23から処理装置1外へと排出される。
【0042】
処理装置1aでは、中空層51が第1の処理部41の導入口22側の部分と、第2の処理部42との間に位置している。このため、中空層51によって第1の処理部41から第2の処理部42への熱伝達が抑制されている。よって、第2の処理部42の温度が上昇しにくい。従って、優れた処理能力が実現されている。しかも、中空層51に流入するガスは、第1及び第2の処理部41,42を通過しながら冷却された低温のガスである。従って、この低温のガスが流入する中空層51の遮熱能力は高い。よって、より優れた処理能力が実現されている。本実施形態のように、処理済みのガスが第1の処理部41と第2の処理部42との間に位置する中空層51に流入することによって、処理装置の処理能力をさらに改善することができる。
【0043】
容器21の長手方向に沿った中空層51の厚みは、容器21の長手方向に沿った処理室26の長さの0.02倍以上であることが好ましく、0.04倍以上であることがより好ましい。中空層51が厚いほど断熱効果が高まる。但し、容器21の長手方向に沿った中空層51が厚すぎると、処理室26に占める処理剤28の体積が小さくなりすぎる場合がある。従って、容器21の長手方向に沿った中空層51の厚みは、容器21の長手方向に沿った処理室26の長さの0.1倍以下であることが好ましく、0.04倍以下であることがより好ましい。
【0044】
排出経路52の流路面積は、第2の処理部42の流路面積よりも小さいことが好ましく、第2の処理部42の流路面積の0.3倍以下であることがより好ましく、0.1倍以下であることがさらに好ましい。
【0045】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
図6に示される処理装置1bでは、外壁21aの外表面に突部21a1が設けられている。このため、外壁21aの外表面の表面積が大きい。よって、外壁21aを経由して放熱されやすい。従って、処理室26の温度が低い。その結果、さらに優れた処理能力を実現させることができる。
【0046】
本実施形態では、容器21を包囲する管状の複数の突部21a1が、容器21の軸方向に沿って等間隔に設けられている。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、
図7に示されるように、容器21の軸方向に沿って延びる複数の突部が、周方向に沿って設けられていてもよい。