特許第6221370号(P6221370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221370媒体処理装置、及び媒体処理装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221370
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】媒体処理装置、及び媒体処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 17/00 20060101AFI20171023BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20171023BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G06K17/00 025
   G06K7/10 148
   G06K7/10 152
   G06K7/10 276
   B41J29/38 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-122326(P2013-122326)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-63476(P2014-63476A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-189912(P2012-189912)
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 利明
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−257807(JP,A)
【文献】 特開2011−204011(JP,A)
【文献】 特開2005−215958(JP,A)
【文献】 特開2007−050542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 17/00
G06K 7/10
B41J 29/00−29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信で媒体のICタグへの情報の書き込み、及び前記ICタグに含まれる情報の読み出しを行う情報読書部と、
前記情報読書部での前記ICタグへの情報の書き込み及び前記ICタグに含まれる情報の読み出しを制御し、前記媒体の前記ICタグに情報を書き込むときに、前記ICタグの記憶領域の特定のエリアが所定の状態であるか否かを判別し、前記所定の状態であると判別した場合に前記ICタグへの書き込みを実行させる制御部と、を備え
前記情報読書部は、
無線信号を送信して通信可能な前記ICタグの検出を実行し、
前記制御部は、
前記情報読書部で通信可能な前記ICタグの検出を実行したときに、検出される前記ICタグの数を判別し、検出される前記ICタグの数が2以上であることを判別した場合、検出される前記ICタグの前記特定のエリアが前記所定の状態であるか否かを判別し、前記特定のエリアが前記所定の状態である前記ICタグが1つのとき、前記特定のエリアが前記所定の状態である前記ICタグへの情報の書き込みを実行させることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記情報読書部での前記ICタグへの情報の書き込み時に、前記ICタグの前記記憶領域の前記特定のエリアが前記所定の状態ではないと判別した場合、前記ICタグへの情報の書き込みを実行させない請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
検出される前記ICタグの数が2以上であることを判別した場合、
前記検出される前記ICタグに書き込みを実行させない請求項1または2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記媒体は、前記ICタグを、間隔を開けて配設し、
前記媒体を搬送する搬送部を備え、
前記情報読書部は、前記搬送部で情報読書位置に搬送された前記ICタグに、書き込みを実行する請求項1ないしのいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
媒体に配設されるICタグを情報読書位置に搬送し、
前記ICタグが前記情報読書位置に搬送された後、無線信号を送信して通信可能な前記ICタグの検出を実行し、
検出される前記ICタグの数を判別し、
前記ICタグの数が1であることを判別した場合、前記ICタグの記憶領域の特定のエリアが所定の状態であるか否かを判別し、
前記特定のエリアが前記所定の状態であることを判別したとき、前記ICタグへの情報の書き込み処理を実行し、
検出される前記ICタグの数が2以上であることを判別した場合、検出される前記ICタグの前記特定のエリアが前記所定の状態であるか否かを判別し、前記特定のエリアが前記所定の状態である前記ICタグが1つのとき、前記特定のエリアが前記所定の状態である前記ICタグへの情報の書き込みを実行することを特徴とする媒体処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体のICタグに情報を読み書き可能な媒体処理装置、当該媒体処理装置の制御方法、及び、当該媒体処理装置を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触のICタグ(非接触タグ、RFIDタグ)が設けられた媒体(記録媒体、ラベル)に情報を書き込み可能に構成された媒体処理装置(記録装置、ラベルプリンター)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−83459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した媒体処理装置のように、ICタグに情報を書き込むものでは、ICタグに想定していない情報が書き込まれた場合であっても、視認等によって容易に確認することができない。このため、ICタグが書き込み対象であるか否かを判別することが要求される場合がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ICタグが書き込み対象であるか否かを判別できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、無線通信で媒体のICタグに情報を書き込み、及び、前記ICタグに含まれる情報の読み出しを行う情報読書部と、前記情報読書部での前記ICタグの書き込み及び読み出しを制御し、前記媒体の前記ICタグに情報を書き込むときに、当該ICタグの記憶領域の特定のエリアが所定の状態であるか否かを判別し、前記所定の状態であると判別した場合に当該ICタグへの書き込みを実行させる制御部と、備えることを特徴とする。
本発明の構成によれば、特定のエリアについては、情報読書部による情報の書き込み前は、所定の状態が維持され、ICタグへの情報の書き込みが行われると、当該特定のエリアの所定の状態が変移するというICタグの特性を利用して、ICタグが既に情報の書き込みが行われているか否かを判別することが可能であると共に、ICタグが書き込み対象であるか否かを判別することが可能となる。
【0006】
また、本発明は、前記制御部は、前記情報読書部で前記ICタグに情報を書き込むときに、当該ICタグの記憶領域の特定のエリアが前記所定の状態ではないと判別した場合、前記ICタグへの書き込みを実行させない。
本発明の構成によれば、既に情報が書き込まれているICタグに、誤って情報の書き込みを行うことを防ぐことが可能となる。
【0007】
また、本発明は、前記情報読書部は、無線信号を送信して通信可能な前記ICタグの検出を実行し、前記制御部は、前記情報読書部で通信可能な前記ICタグの検出を実行したときに、検出される前記ICタグの数を判別する。
本発明の構成によれば、検出されるICタグの数に応じた適切な処理を実行可能となる。
【0008】
また、本発明は、前記制御部は、検出される前記ICタグの数が2以上であることを判別した場合、検出される前記ICタグの特定のエリアが前記所定の状態であるか否かを判別し、前記特定のエリアが前記所定の状態である前記ICタグが1つのとき、前記特定のエリアが前記所定の状態である前記ICタグに書き込みを実行させる。
ここで、何らかの原因により通信可能なICタグが複数検出された場合において、特定のエリアが初期状態であるICタグが1つではない場合、情報を書き込むべきICタグを特定できない。従って、この場合、上記構成のように、いずれのICタグにも情報の書き込みを行わないことにより、書き込むべきでないICタグに情報が書き込まれてしまうのを防止することが可能である。一方で、特定のエリアが初期状態であるICタグが1つである場合、当該ICタグが情報の書き込み対象である蓋然性が高く、この場合、当該ICタグに情報を書き込むことにより、情報を書き込むべきICタグを、情報の書き込み対象とすることができる。
【0009】
また、本発明は、前記制御部は、検出される前記ICタグの数が2以上であることを判別した場合、前記検出される前記ICタグに書き込みを実行させない。
ここで、通信可能なICタグが複数存在する場合、情報を書き込むべきでないICタグが通信可能な位置に位置しているというイレギュラーな状態である。このような場合に、上記構成のように、いずれのICタグにも情報の書き込みを行わないことにより、想定していないICタグに誤って情報が書き込まれてしまうことを確実に防止可能である。
【0010】
また、本発明は、前記媒体は、前記ICタグを、間隔を開けて配設し、前記媒体を搬送する搬送部を備え、前記情報読書部は、前記搬送部で情報読書位置に搬送された前記ICタグに、書き込みを実行する。
本発明の構成によれば、媒体に配設されたICタグの書き込みに際し、誤って情報が書き込まれることを防止できる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、媒体に配設されるICタグを情報読書位置に搬送し、前記ICタグが前記情報読書位置に搬送された後、前記ICタグの記憶領域の特定のエリアが所定の状態であるか否かを判別し、前記特定のエリアが前記所定の状態であることを判別したとき、前記ICタグに書き込み処理を実行することを特徴とする。
本発明の制御方法によれば、特定のエリアについては、情報読書部による情報の書き込み前は、所定の状態が維持され、ICタグへの情報の書き込みが行われると、当該特定のエリアの所定の状態が変移するというICタグの特性を利用して、ICタグが既に情報の書き込みが行われているか否かを判別することが可能であると共に、ICタグが書き込み対象であるか否かを判別することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、前記ICタグが前記情報読書位置に搬送された後、前記ICタグの数を検出し、検出される前記ICタグの数を判別し、前記ICタグの数が1であることを判別した後、前記ICタグの記憶領域の特定のエリアが所定の状態であるか否かを判別する。
本発明の制御方法によれば、ICタグの数が1つであるか否か、ICタグの記憶領域の特定のエリアが所定の状態であるか否かに応じた適切な処理を実行可能となる。
【0013】
本発明によれば、ICタグが書き込み対象であるか否かを判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るプリンターの斜視図である。
図2】カバーを開けた状態のプリンターの斜視図である。
図3】プリンター本体の内部機構を示す説明図である。
図4】プリンターの制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図5】RFIDタグのメモリーの要部のデータ構造を示す図である。
図6】プリンターの動作を示すフローチャートである。
図7】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1はプリンター1(媒体処理装置)の斜視図である。
本実施形態に係るプリンター1は、空港における航空会社のサービスカウンター等に設けられ、いわゆるバゲッジタグを発行するものである。プリンター1によって発行されるバゲッジタグは、IC(Integrated Circuits)タグを搭載しており、このICタグに、荷物(バゲッジ)を搭乗すべき飛行機の便の番号や、バゲッジタグを発行した日時等、予め定められた必要な情報が記録される。また、バゲッジタグの表面には、飛行機の便番号や、荷物の所有者の氏名等、予め定められた必要な情報が印刷される。
プリンター1は、印刷を実行するプリンター本体3にロール紙7(媒体)を供給する給紙装置2を備えて構成される。給紙装置2は、プリンター本体3に着脱可能に接続されるベース板4と、このベース板4に取り付けられている垂直支持板5と、垂直支持板5の上端側の部位に水平に取り付けられているロール紙支軸6とを備えている。ロール紙支軸6には、その先端側からロール紙7が装着される。ロール紙支軸6の先端部には、ロール紙支軸6に直交する方向にロール紙抜け止め用の抜け防止軸8が取り付けられている。また、ロール紙支軸6の根元側にはロール紙幅調整用の円盤状のスペーサー9が着脱可能に取り付けられており、幅の異なるロール紙を、装着可能となっている。
【0016】
ロール紙7は、本実施形態では、空港において使用されるバゲッジタグ用のラベル用紙10(媒体)を巻き取ったものである。ロール紙7は、一定幅の連続する長尺の台紙に、所定の長さのラベル用紙10が配置されたものである。各ラベル用紙10の先頭部分には所定の情報が書き込まれたRFID(Radio frequency identification)タグ10A(ICタグ)が貼付または埋設(搭載、配設)されている。なお、ベース板4を連続用紙の一つであるファンフォールド紙のトレイとして利用することも可能である。この場合には、給紙装置2を、ロール紙7およびファンフォールド紙の双方に給紙する装置として用いることができる。
プリンター本体3は、全体として前後に長い直方体形状をしたプリンター本体ケース11を備えている。プリンター本体ケース11の上面には、開閉自在にカバー16が設けられている。プリンター本体ケース11の後端面11a(図2参照)と、カバー16の先端部との間には、用紙挿入口26が形成されている。さらに、プリンター本体ケース11の前端面11bには、その上下方向の中程の位置に用紙排出口28が形成されている。
【0017】
図2はカバー16を開けた状態のプリンター本体3を示す斜視図である。
図2に示すように、カバー16を回動させて開くと上面開口部13が露出する。また、プリンター本体ケース11の一方の側面14には、上面開口部13から連続する側面開口部15が形成される。
【0018】
カバー16は、図1に示す閉じ位置において上面開口部13および側面開口部15を封鎖する。カバー16は、上面開口部13を封鎖するカバー天板部分17と、側面開口部15を封鎖するカバー側板部分18とを備えており、カバー天板部分17におけるプリンター本体3の前側の端部を中心として、図1に示す閉じ位置から図2に示す全開位置まで開くことができる。カバー16を開くと、プリンター本体ケース11の内部に形成されているラベル用紙10の搬送経路19、及び搬送経路19の上側に形成されている用紙溜まり部20が開放状態となり、これらに対して、上面開口部13及び側面開口部15からアクセス可能になる。
【0019】
搬送経路19の幅方向の一方の側端、すなわちプリンター本体3の一方の側端は、図2に示すように、カバー側板部分18の内側に形成されている第1用紙ガイド21である。また、幅方向の他方の側端は、搬送経路19の底面の底板24に着脱可能に取り付けた第2用紙ガイド22および第3用紙ガイド23のいずれかである。第2用紙ガイド22が取り付けられている場合には、第1用紙ガイド21および第2用紙ガイド22によってラベル用紙10をガイド可能であり、第2用紙ガイド22を外すと、第1用紙ガイド21および第3用紙ガイド23によってラベル用紙10をガイド可能になる。
【0020】
用紙挿入口26の内側には、プリンター本体ケース11の側に下側ガイドローラー27aが取り付けられており、カバー16側には、カバー16が図1の閉じ位置にある場合に、下側ガイドローラー27aに対向する上側ガイドローラー27bが取り付けられている。
プリンター本体3は、USBケーブル29を介して、後述するホストコンピューター55(図4)に接続され、ホストコンピューター55との間で印刷コマンドや印刷データを送受信する。
【0021】
図3(A)は、プリンター本体3の内部機構を示す説明図であり、プリンター1の前後方向に対して横方向(幅方向)から見た図である。また、図3(B)は、後述するが、図3(A)の搬送経路39を模式的に切り出した図である。
プリンター本体3の内部機構は、プリンター本体ケース11によって覆われている板金製の本体フレーム30にプリンター本体3の構成部品が搭載された構成となっている。本体フレーム30には上方に突出した左右の支持腕31が形成されており、これらの支持腕31の間にヒンジ軸32が、プリンター本体ケース11の幅方向に平行に架け渡されて、カバー16がヒンジ軸32の軸まわりに回動自在となっている。
【0022】
プリンター本体3の内部においては、用紙溜まり部20の前側の部位において、用紙挿入口26よりも下方の位置にテンションローラー36が幅方向に架け渡されている。また、用紙挿入口26と用紙排出口28との間には、テンションローラー36、及びテンションローラー36の前方に位置するプラテンローラー42を経由するラベル用紙10の搬送経路39が形成されている。
搬送経路39は、用紙挿入口26に近い上流側の傾斜搬送経路39Aと、下流側の傾斜搬送経路39Bと、さらに下流側において用紙排出口28近傍の水平搬送経路39Cとによって構成される。傾斜搬送経路39Aは、用紙挿入口26から下向きに傾斜して延び、テンションローラー36に至る経路である。また、傾斜搬送経路39Bは、テンションローラー36から下流側において上方に向けて傾斜して延び、プラテンローラー42に達する経路である。傾斜搬送経路39Bは、上下に対向して配置された用紙ガイド37、38によって形成される。また、水平搬送経路39Cは、プラテンローラー42から下流側すなわち前側に水平に延びて用紙排出口28に繋がる経路である。
傾斜搬送経路39Bには、ラベル用紙10に印刷を行うサーマルヘッド41が下向きに配置され、サーマルヘッド41には下側からプラテンローラー42が対向して配置されている。プラテンローラー42は、サーマルヘッド41の発熱面に押し付けて配置され、プラテンローラー42の回転によってラベル用紙10が搬送される。また、水平搬送経路39C上には、用紙排出口28の近傍にオートカッターユニット43が配置されており、サーマルヘッド41により印刷された印刷媒体(例えば、ラベル用紙10)はオートカッターユニット43により切断される。
【0023】
ラベル用紙10に印刷する場合、まず、カバー16が開かれて、ユーザーの作業によって給紙装置2にセットされたラベル用紙10が引き出されて、用紙挿入口26から挿入される。このラベル用紙10は、第1用紙ガイド21と第2用紙ガイド22あるいは第3用紙ガイド23にガイドされながら、傾斜搬送経路39Aを通って、テンションローラー36に導かれる。さらに、ラベル用紙10は、テンションローラー36から傾斜搬送経路39Bに沿ってサーマルヘッド41とプラテンローラー42の間に搬送され、水平搬送経路39Cを通って用紙排出口28から引き出された状態にセットされる。ここで、カバー16が閉じられると、ラベル用紙10の先端がプラテンローラー42とサーマルヘッド41とに挟まれて搬送可能となる。
【0024】
プリンター本体ケース11内には、RFIDタグ10Aに対してデータの書き込み及びデータの読み出しを行うタグ読書装置46(情報読書部)が配置されている。タグ読書装置46は、RFIDタグ10Aに対して無線信号を送受信するアンテナ44と、RF送受信回路45とを備えている。アンテナ44は、図3(A)に示すように、傾斜搬送経路39A(搬送経路)に向けて設けられ、傾斜搬送経路39Aが、タグ読書装置46によるデータの書き込み及びデータの読み出しが行われる情報読書位置となっている。すなわち、ラベル用紙10に付されたRFIDタグ10Aが傾斜搬送経路39Aの範囲に位置している間に、タグ読書装置46により、データの書込及びデータの読み取りが行われる。
【0025】
RFIDタグ10Aは、タグ読書装置46等の外部の装置から送信される無線信号を受信するアンテナを備え、このアンテナに誘起される電力によりICを駆動する受動型のICタグである。本実施形態のタグ読書装置46及びRFIDタグ10Aは、無線タグとして一般的なプロトコルに従って無線信号を送受信する。
すなわち、タグ読書装置46は、RFIDタグ10Aに対するデータの書き込み又はデータの読み出しを行う場合に、まず、所定周波数の搬送波を送信し、この搬送波に重畳して検出用信号を送信する。タグ読書装置46が送信した搬送波によってRFIDタグ10Aのアンテナに起電力が誘起されると、この電力によりRFIDタグ10AのICがオンに切り替わり、検出用信号を受信して、この検出用信号に対して応答する信号を送信する。タグ読書装置46は、RFIDタグ10Aが送信した応答信号を受信すると、搬送波の出力を継続しながら、このRFIDタグ10Aをデータの書き込み及びデータの読み出しの対象として設定するとともに、データの書き込み及びデータの読み出しを開始する旨を通知する信号を送信する。その後は、タグ読書装置46が搬送波の出力を継続しながら、タグ読書装置46とRFIDタグ10Aとの間で無線信号が送受信され、RFIDタグ10Aに記録されているデータの読み出し、及び、RFIDタグ10Aが有するICの書き換え可能な記憶領域に対し、データの書込が行われる。
【0026】
図4はプリンター1の制御系の構成を示す機能ブロック図である。
プリンター1は、上述した各部の他、ホストコンピューター55に接続される通信インターフェイス(I/F)51と、プリンター1の各部を制御する制御部54とを備えて構成される。通信インターフェイス51は、例えばUSB規格に準拠したコネクターやインターフェイス回路等を備え、ホストコンピューター55との間でコマンドや各種データを送受信する。
制御部54は、通信インターフェイス51を介してホストコンピューター55との間でコマンドや各種データを送受信するとともに、サーマルヘッド41、タグ読書装置46、搬送部52、及びオートカッターユニット43の各部を制御する。搬送部52は、プラテンローラー42、プラテンローラー42を駆動する搬送モーター(図示略)、及び、搬送モーターの駆動軸とプラテンローラー42とを連結するギヤ等により構成される構成部である。
【0027】
制御部54は、ホストコンピューター55から入力される印刷コマンドと印刷データに従って、搬送部52を制御してラベル用紙10を搬送させ、サーマルヘッド41への通電を制御して、ラベル用紙10に文字、画像、バーコード等を印刷させる。例えば、ラベル用紙10がバゲッジタグとして使用される場合、ラベル用紙10には、取扱航空会社、出発空港、行き先の空港、トランジットする空港、このバゲッジタグを発行したカウンター、対応する搭乗券の番号、搭乗便等の名称やコードが印刷される。
また、制御部54は、搬送部52を制御して、印刷対象のラベル用紙10に付されているRFIDタグ10Aを傾斜搬送経路39A上に停止させる。
また、制御部54は、タグ読書装置46を制御して、RFIDタグ10Aに対するデータ読み出し及びデータ書き込みを実行させる。より詳細には、タグ読書装置46を制御して、RFIDタグ10AのICが記憶しているデータを読み取り、続いて、ラベル用紙10に印刷する内容に対応したデータをRFIDタグ10AのICに書き込む。例えば、本実施形態のようにラベル用紙10がバゲッジタグとして使用される場合、取扱航空会社、出発空港、行き先の空港、トランジットする空港、このバゲッジタグを発行したカウンター、対応する搭乗券の番号、搭乗便等を示すデータをRFIDタグ10Aに書き込む。
また、制御部54は、通信インターフェイス51によりホストコンピューター55との間のコマンド及びデータの送受信を実行する。
【0028】
ここで、上述したとおり、タグ読書装置46が搬送波の送信を開始すると、この搬送波を受信可能な範囲に位置する全てのRFIDタグ10Aがオンになり、応答信号を送信する。
これを踏まえ、本実施形態では、タグ読書装置46が出力する搬送波の指向性を利用して、傾斜搬送経路39Aに対するアンテナ44の位置を適切に設計する等して、傾斜搬送経路39Aに位置するRFIDタグ10A以外のロール紙7に形成されたRFIDタグ10A(装着された媒体に搭載されたICタグ)には、搬送波が受信されない構成となっている。
図3(B)は、ある1枚のラベル用紙10の末端での切断が完了した直後の、プリンター1内におけるラベル用紙10の状態を、説明に適した態様で表す図である。つまり、図3(B)は、次に処理対象となるラベル用紙10(=次に発行されるバゲッジタグに対応するラベル用紙10)について、バゲッジタグの発行に係る処理が開始される前の状態を模式的に示している。
図3(B)に示すように、処理の開始前、ラベル用紙10の先端位置は、オートカッターユニット43の切断位置に位置しており、さらに、ラベル用紙10のRFIDタグ10Aは、傾斜搬送経路39Aに位置した状態となる。これは、バゲッジタグに係るラベル用紙10における先端位置からRFIDタグ10Aの離間距離が規格により定められおり、当該離間距離を踏まえて、処理の開始前は傾斜搬送経路39AにRFIDタグ10Aが位置するように、傾斜搬送経路39Bの長さや、その他の付随する部材、機構が設計されているからである。
このような構成のため、ある1のラベル用紙10に対して、バゲッジタグの発行に係る各種処理を開始する場合において、上述した手段により、通信可能なRFIDタグ10Aの検出を行った場合、プリンター1の近傍に処理済のラベル用紙10が載置される等のイレギュラーな状態とならない限り、処理対象となるラベル用紙10のRFIDタグ10A(=傾斜搬送経路39Aに位置するラベル用紙10)が検出される。
【0029】
以上のような構成の下、プリンター1は、以下のようにして、媒体に搭載されたICタグに連続して情報を書き込み、バゲッジタグを発行する。
ある1枚のバゲッジタグを発行する場合のプリンター1の基本的な動作について簡単に説明する。まず、制御部54は、図3(B)に示す状態のラベル用紙10について、搬送部52と、サーマルヘッド41とを制御して、ラベル用紙10の搬送と、サーマルヘッド41の駆動とを所定のタイミングで行い、処理対象となるラベル用紙10の表面の所定の位置に所定の情報を印刷する。また、制御部54は、ラベル用紙10の搬送に伴って、適切なタイミングで、RFIDタグ10Aと通信し、必要な情報を読み出し、また、必要な情報を書き込む。情報の読み書きに係る制御については、後に詳述する。このようにして、ラベル用紙10の表面に必要な情報を印刷し、また、RFIDタグ10Aに必要な情報を書き込んだ後、制御部54は、搬送部52を制御してロール紙7をさらに搬送し、処理対象となるラベル用紙10の末端を、オートカッターユニット43による切断位置まで搬送する。次いで、制御部54は、オートカッターユニット43を制御して、処理対象となるラベル用紙10の末端を切断する。
以上により、ラベル用紙10がロール紙7から切り離されて、1枚のバゲッジタグの発行が完了する。
【0030】
ところで、本実施形態に係るプリンター1では、タグ読書装置46が出力する搬送波の指向性を利用して、ロール紙7に搭載されたRFIDタグ10Aについて、傾斜搬送経路39A上のRFIDタグ10A以外のロール紙7に形成されたRFIDタグ10Aに搬送波が届かないようにしている。この構造上、例えば、処理済(情報を書き込み済)のラベル用紙10等がプリンター1の非常に近傍に載置される等した場合に、当該ラベル用紙10のRFIDタグ10Aが搬送波を受信可能な状態となってしまう場合がある。このような場合において、プリンター1の近傍に載置されたラベル用紙10のRFIDタグ10Aに情報が上書きされてしまった場合、当該RFIDタグ10Aに、誤った情報が書き込まれた状態となる可能性があるため、このような書き込みが行われることを防止する必要がある。
以上を踏まえ、本実施形態に係るプリンター1は、以下の動作を実行する。
【0031】
まず、処理対象のラベル用紙10のRFIDタグ10Aに情報の書き込むときの前提について説明する。
本実施形態に係るRFIDタグ10Aは、RFID推進団体であるEPCglobalによって提案されたRFIDの仕様であるGen2に準拠したEPC(Electronic Product Code)メモリーを、その記憶領域として使用している。
図5は、Gen2仕様のEPCメモリーのデータ構造の要部を模式的に示す図である。
図5に示すように、Gen2仕様のEPCメモリーには、フィールドとしてNSI(Numbering System Identifier)が形成されている。このNSIは、EPCメモリーを、EPCフィールドとして使用するか、又は、AFIフィールドとして使用するかを判断するための情報を格納するフィールドであり、メモリーの仕様に関し、EPCGlobal仕様からISO仕様へと移行する過程で設けられたものである。AFI(Application Family Identifier)とは、ICタグを利用すると想定されるアプリケーションごと(アプリケーション群ごと)に、割り振られた識別子のことである。また、図5に示すように、NSIは、1ビットからなるToggleエリアと、8ビットからなるReserved/AFIエリアとを有している。
ここで、EPCメモリーをEPCフィールドとして使用する場合は、NSIを構成する全てのビットを「0」とすべき旨、Gen2により規定されている。そして、RFIDタグ10Aの製造時、EPCメモリーは、Gen2の規定に準拠して形成されるため、RFIDタグ10Aの出荷後、NSIに対して意図的に情報が書き込まれない限りは、NSIの全てのビットが「0」の状態が、確実に維持された状態となる。以下、NSIの全てのビットが「0」である状態を「初期状態」と表現する。
一方で、本実施形態に係るプリンター1は、EPCメモリーをAFIフィールドとして使用する。そして、EPCメモリーにバゲッジタグに関する情報を書き込む場合、制御部54は、IATA(International Air Transport Association)によって取り決められた規定に従って、NSIのToggleエリアに「1」を書き込み、かつ、Reserved/AFIエリアに「C1h」を書き込む。このNSIへの特定の情報の書き込みは、EPCメモリーをAFIフィールドとして使用するために、必須の処理であり、本実施形態に係るプリンター1を含む、空港においてバゲッジタグを発行するプリンターは、RFIDタグ10Aに情報を書き込む場合、必ず、NSIのToggleエリア、及び、Reserved/AFIエリアに特定の情報を書き込む。
【0032】
以上説明した前提を踏まえ、本実施形態に係るプリンター1の動作を説明する。
図6は、ラベル用紙10のRFIDタグ10Aに、バゲッジタグに関する情報を書き込む際のプリンター1の基本的な動作を示すフローチャートである。図6のフローチャートでは、動作の開始時点では、処理対象となるラベル用紙10は、図3(B)の状態であるものとする。図6のフローチャートは、正常にセットされたラベル用紙10のRFIDタグ10Aに情報の書き込みを行う場合のプリンター1の動作を示している。
図6を参照し、プリンター1の制御部54は、タグ読書装置46を制御して、ラベル用紙10のRFIDタグ10Aから、プロトコルに従った通信を介して、メモリーデータを取得する(ステップSA1)。メモリーデータとは、EPCメモリーと同一のデータ構造、同一の内容のデータのことであり、より具体的には、EPCメモリーを構成するビット列からなるデータのことである。
次いで、制御部54は、メモリーデータにおけるNSIを参照し(ステップSA2)、NSIが初期状態であるか否かを判別する(ステップSA3)。上述したとおり、NSIが初期状態の場合、EPCメモリーに対する情報の書き込みは1度も行われていない状態であり、逆に、NSIが初期状態ではない場合、EPCメモリーに対する情報の書き込みが既に少なくとも1回は行われている状態である。
ステップSA3において、NSIが初期状態の場合(ステップSA3:YES)、制御部54は、タグ読書装置46を制御して、EPCメモリーに形成された所定のエリアに、所定の情報を書き込む(ステップSA4)。
一方、NSIが初期状態でない場合(ステップSA3:NO)、制御部54は、その旨警告し、情報の書き込みを行うことなく、処理を一時停止する(ステップSA5)。
このように、NSIが初期状態であるか否かを判別することにより、RFIDタグ10Aに情報の書き込みが行われているのか否かを判別できる。
また、NSIが初期状態でない場合、情報の書き込みが行われないため、既に情報が書き込まれているRFIDタグ10Aに誤って情報が書き込まれることを防止できる。また、警告により、イレギュラーな状態であることをユーザーに認識させることができる。
【0033】
図7は、処理対象となるラベル用紙10のRFIDタグ10Aにバゲッジタグに関する情報を書き込む際のプリンター1の動作をより詳細に示すフローチャートである。図7のフローチャートでは、動作の開始時点では、処理対象となるラベル用紙10は、図3(B)の状態であるものとする。
まず、制御部54は、タグ読書装置46を制御して、検出用信号を送信し、その応答信号の受信状況により、通信可能なRFIDタグ10Aを検出する検出処理を行う(ステップSB1)。
次いで、制御部54は、ステップSB1の検出処理の結果、通信可能なRFIDタグ10Aが1つも検出されていない状態か、否かを判別する(ステップSB2)。通信可能なRFIDタグ10Aが1つも検出されていない状況は、何らかの原因で処理対象のラベル用紙10のRFIDタグ10Aが壊れていたり、また、ラベル用紙10の引き抜き等が行われ、プリンター1内にラベル用紙10が位置していなかったりする場合に現出する。
通信可能なRFIDタグ10Aが1つも検出されなかった場合(ステップSB2:YES)、制御部54は、その旨を警告し、処理を一時停止する(ステップSB3)。通信可能なRFIDタグ10Aが1つもないため、情報の書き込みが不可能だからであり、何らかのエラーが発生していると考えられるからである。警告は、例えば、ホストコンピューター55に所定のデータを出力し、ホストコンピューター55が備える表示パネルに、通信可能なRFIDタグ10Aが1つも検出されなかった旨を示す情報を表示したり、また、プリンター1がLEDや、表示パネルを備えている場合は、LEDを所定の態様で点灯/消灯したり、表示パネルにその旨を示す情報を表示したりすることによって行われる。この点は、以下で行われる別のケースの警告も同様である。ステップSB3における警告により、ユーザーは、通信可能なRFIDタグ10Aが1つも検出されなかったことを迅速、かつ、確実に認識でき、対応する処理(例えば、原因の究明)を実行することが可能となる。
【0034】
一方、ステップSB2において、通信可能なRFIDタグ10Aが1つも検出されていない状態ではないと判別した場合(ステップSB2:NO)、制御部54は、検出されたRFIDタグ10Aが「1つ」であるか否かを判別する(ステップSB4)。
検出されたRFIDタグ10Aが「1つ」の場合(ステップSB4:YES)、制御部54は、タグ読書装置46を制御して、検出された1つのRFIDタグ10Aから、プロトコルに従った通信を介して、メモリーデータを取得する(ステップSB5)。メモリーデータとは、EPCメモリーと同一のデータ構造、同一の内容のデータのことであり、より具体的には、EPCメモリーを構成するビット列からなるデータのことである。
次いで、制御部54は、メモリーデータにおけるNSIを参照し(ステップSB6)、NSIが初期状態であるか否かを判別する(ステップSB7)。上述したとおり、NSIが初期状態の場合、EPCメモリーに対する情報の書き込みは1度も行われていない状態であり、逆に、NSIが初期状態ではない場合、EPCメモリーに対する情報の書き込みが既に少なくとも1回は行われている状態である。
ステップSB7において、NSIが初期状態の場合(ステップSB7:YES)、制御部54は、タグ読書装置46を制御して、EPCメモリーに形成された所定のエリアに、必要な情報を書き込む(ステップSB8)。
ここで、検出されたRFIDタグ10Aが「1つ」であり、かつ、当該RFIDタグ10AのNSIが初期状態ということは、未だ情報の書き込みが行われていない処理対象のラベル用紙10が、想定された正常な位置に位置しており、かつ、プリンター1の近傍に通信可能な他のRFIDタグ10Aが存在しない状態である。従って、制御部54は、検出されたRFIDタグ10Aに情報を書き込む。
【0035】
一方、NSIが初期状態でない場合(ステップSB7:NO)、制御部54は、その旨を警告し、処理を一時停止する(ステップSB9)。ここで、通信可能なRFIDタグ10Aが「1つ」であり、かつ、当該RFIDタグ10AのNSIが初期状態ではない状態としては、例えば、以下の状態が想定される。すなわち、何らかの原因で、処理対象のラベル用紙10が正常な位置に位置していない一方、発行済のバゲッジタグがプリンター1の近傍に載置されている状態である。この場合、通信可能なRFIDタグ10Aには、既に、情報が書き込まれている状態であり、仮に、当該RFIDタグ10Aに情報の書き込みを行った場合、既に書き込まれた情報が上書きされ、当該RFIDタグ10Aに想定された情報以外の情報が書き込まれた状態となってしまう。このため、新たに情報の書き込みを行うことを防止しなければならない。従って、ステップSB9において、処理を一時停止して警告を行う。当該警告により、ユーザーは、通信可能なRFIDタグ10Aが1つも検出されなかったことを迅速、かつ、確実に認識でき、対応する処理(例えば、原因の究明)を実行することが可能となる。
【0036】
さて、ステップSB4において、検出されたRFIDタグ10Aが「1つ」ではない(=複数)と判別した場合(ステップSB4:NO)、制御部54は、複数のRFIDタグ10Aのそれぞれと規格に準拠して通信し、それぞれのRFIDタグ10Aのメモリーデータを取得する(ステップSB10)。次いで、制御部54は、取得したメモリーデータのそれぞれのNSIを参照し(ステップSB11)、NSIが初期状態であるRFIDタグ10Aが「1つ」であるか否かを判別する(ステップSB12)。
検出された複数のRFIDタグ10Aについて、NSIが初期状態であるRFIDタグ10Aが「1つ」である場合(ステップSB12:YES)、制御部54は、タグ読書装置46を制御して、NSIが初期状態であるRFIDタグ10AのEPCメモリーに形成された所定のエリアに、必要な情報を書き込む(ステップSB13)。
ここで、検出されたRFIDタグ10Aが複数あり、かつ、複数のRFIDタグ10Aのうち、NSIが初期状態であるものが「1つ」である、という状態としては、例えば、以下の状態であることが想定される。すなわち、未だ情報の書き込みが行われていない処理対象のラベル用紙10が、想定された正常な位置に位置しており、かつ、プリンター1の近傍に発行済のバゲッジタグが載置されている状態である。この場合、NSIが初期状態であるRFIDタグ10Aに情報の書き込みを行えば、想定された適切なRFIDタグ10Aに情報の書き込みを行えるため、制御部54は、NSIが初期状態であるRFIDタグ10Aへの情報の書き込みを行う。
【0037】
一方、ステップSB12において、検出された複数のRFIDタグ10Aについて、NSIが初期状態であるRFIDタグ10Aが「1つ」ではないと判別した場合、換言すれば、初期状態であるRFIDタグ10Aが「0個」、又は、「2つ以上」であると判別した場合(ステップSB12:NO)、制御部54は、その旨警告し、処理を一時停止する(ステップSB14)。
通信可能なRFIDタグ10Aが複数であり、かつ、RFIDタグ10AのNSIが初期状態ではないものが「0個」である状態としては、例えば、以下の状態が想定される。すなわち、何らかの原因で、処理対象のラベル用紙10が正常な位置に位置していない一方、発行済のバゲッジタグが、複数、プリンター1の近傍に載置されている状態である。この場合、通信可能なRFIDタグ10Aの全てには、既に、情報が書き込まれている状態であり、仮に、いずれかのRFIDタグ10Aに情報の書き込みを行った場合、既に書き込まれた情報が上書きされ、当該RFIDタグ10Aに想定された情報以外の情報が書き込まれた状態となってしまう。このため、新たに情報の書き込みを行うことを防止しなければならない。
また、通信可能なRFIDタグ10Aが複数であり、かつ、RFIDタグ10AのNSIが初期状態ではないものが「2つ以上」である状態としては、例えば、以下の状態が想定される。すなわち、処理対象のラベル用紙10が正常な位置に位置している一方、未処理であり、情報の書き込みが行われていないラベル用紙10が何らかの原因でプリンター1の近傍に載置されている状態である。この場合において、仮に、検出されたRFIDタグ10Aのいずれかに情報の書き込みを行った場合、処理対象でないラベル用紙10のRFIDタグ10Aに情報が書き込まれる可能性がある。このため、新たに情報の書き込みを行うことを防止しなければならない。
以上を踏まえ、ステップSB14において、制御部54は、処理を一時停止して警告を行う。つまり、制御部54は、いずれのRFIDタグ10Aにも情報の書き込みを行わない。これにより、書き込むべきでないRFIDタグ10Aに情報が書き込まれてしまうことを確実に防止可能である。
【0038】
なお、図7のフローチャートでは、通信可能なRFIDタグ10Aが複数検出された場合であって、NSIが初期状態のRFIDタグ10Aが「1つ」の場合は、そのRFIDタグ10Aに情報を書き込む構成となっている。
しかしながら、通信可能なRFIDタグ10Aが、複数、検出された場合は、NSIが初期状態のRFIDタグ10Aの個数に限らず、いずれのRFIDタグ10Aにも情報を書き込まない構成であってもよい。つまり、NSIが初期状態のRFIDタグ10Aが「1つ」であったとしても、情報を書き込まない構成であってもよい。
この構成によれば、想定していないRFIDタグ10Aに、誤って情報が書き込まれてしまうことを確実に防止可能である。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、RFIDタグ10AのEPCメモリーのNSI(ICタグの記憶領域の特定のエリア)について、RFIDタグ10Aへの情報の書き込みが行われる前は、確実に初期状態が維持される構成となっている。そして、プリンター1の制御部54は、ラベル用紙10のRFIDタグ10Aに情報を書き込む場合、IATAの規格に準拠して、NSIのToggleエリア、及び、Reserved/AFIエリアに予め定められた情報(所定の情報)を書き込む一方、RFIDタグ10Aに情報を書き込む場合、NSIが初期状態か否かを判別し、初期状態の場合に情報の書き込み対象とする。
この構成によれば、ECPメモリーにおけるNSIを利用して、RFIDタグ10Aに対して既に情報の書き込みが行われているか否かを判別することが可能であり、既に情報が書き込まれており、従って、情報を書き込む対象ではないRFIDタグ10Aに、誤って情報が書き込まれることを防止できる。
【0040】
また、本実施形態では、制御部54は、タグ読書装置46により、ラベル用紙10のRFIDタグ10Aに情報を書き込む場合、対応するNSIが初期状態か否かを判別し、初期状態ではない場合、情報の書き込みを行わない。
この構成によれば、既に情報が書き込まれているRFIDタグ10Aに、誤って情報の書き込みを行うことを防止できる。
【0041】
また、本実施形態では、制御部54は、タグ読書装置46によりRFIDタグ10Aに情報を書き込む場合、無線信号を送信して通信可能なRFIDタグ10Aの検出を行う。複数のRFIDタグ10Aが検出された場合であって、NSIが初期状態のRFIDタグ10Aが1つではない場合、いずれのRFIDタグ10Aにも情報の書き込みを行わない。一方、NSIが初期状態のRFIDタグ10Aが1つである場合、そのRFIDタグ10Aを情報の書き込み対象とする。
この構成によれば、書き込むべきでないICタグに情報が書き込まれてしまうことを防止できると共に、情報を書き込むべきRFIDタグ10Aを、情報の書き込み対象とすることができる。
【0042】
また、制御部54は、上記処理に代えて、タグ読書装置46によりRFIDタグ10Aに情報を書き込む場合、無線信号を送信して通信可能なRFIDタグ10Aの検出を行い、複数のRFIDタグ10Aが検出された場合、いずれのRFIDタグ10Aにも情報の書き込みを行わないようにしてもよい。
この構成によれば、想定していないICタグに誤って情報が書き込まれてしまうことを確実に防止可能である。
【0043】
また、本実施形態では、制御部54は、RFIDタグ10Aに情報を書き込む場合、タグ読書装置46により無線信号を送信して通信可能なタグの検出を行い、1、又は、複数のRFIDタグ10Aが検出された場合であって、検出された全てのRFIDタグ10Aについて、NSIが初期状態ではない場合、所定の態様で警告を行う。
この構成によれば、RFIDタグ10Aに想定していない情報が書き込まれることを防止した上で、正常な状態でないことを迅速、かつ、確実に検知可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、制御部54は、RFIDタグ10Aに情報を書き込む場合、タグ読書装置46により無線信号を送信して通信可能なタグの検出を行い、1、又は、複数のRFIDタグ10Aが検出された場合であって、2以上のRFIDタグ10Aに係るNSIが初期状態の場合、所定の態様で警告を行う。
この構成によれば、RFIDタグ10Aに想定していない情報が書き込まれることを防止した上で、正常な状態でないことを迅速、かつ、確実に検知可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係るプリンター1は、RFIDタグ10Aが間隔を開けて連続して搭載(配設)されたロール紙7(媒体)が装着可能に構成されている。また、制御部54は、媒体を搬送する搬送部52と、タグ読書装置46とを制御して、ロール紙7を搬送しつつ、ロール紙7に搭載されたRFIDタグ10Aに連続して情報を書き込み可能である。そして、装着されたロール紙7に搭載されたRFIDタグ10Aについて、傾斜搬送経路39A上のRFIDタグ10A(情報の読み書き対象となっているRFIDタグ10A)以外のタグには、タグ読書装置46が送信する無線信号が受信されない構成となっている。
この構成によれば、プリンター1の近傍に、何らかの原因で、書き込み済のICタグが搭載された媒体が載置される等、イレギュラーな状態の場合に、情報の書き込みに際して、RFIDタグ10AのNSIが初期状態でないと判別される場合が生じることとなり、より高い実効性をもって、情報を書き込む対象ではないRFIDタグ10Aに、誤って情報が書き込まれることを防止できる。
【0046】
なお、上記実施形態は本発明を適用した好ましい一態様を例示したものであり、本発明はこれに限定されない。
例えば、上記実施形態では、「ICタグの記憶領域の特定のエリアが所定の状態である」とは、NSIが初期状態であることであった。しかしながら、ICタグの記憶領域の特定のエリアが所定の状態であることとしては、NSIが初期状態であることに限らない。すなわち、ICタグの記憶領域に、情報の書き込み前は、所定の状態が維持され、ICタグへの情報の書き込みが行われると、所定の状態が変移するというエリア(特定のエリア)が存在する場合は、そのエリアを利用して本発明を適用可能である。
また例えば、上記実施形態では、プリンター本体ケース11の内部において、ラベル用紙10が搬送される傾斜搬送経路39A、傾斜搬送経路39B、及び水平搬送経路39Cを含む搬送経路が設けられた構成を例に挙げて説明したが、ラベル用紙10の搬送経路の傾斜、サーマルヘッド41の配置、オートカッターユニット43の配置等は任意である。また、タグ読書装置46が備えるアンテナ44は、ラベル用紙10が搬送される経路を向けて配置されていればよく、例えば、用紙挿入口26や用紙排出口28の近傍に設置してもよいが、プリンター本体ケース11の外への無線信号の漏洩を考慮すると、図3に示したようにプリンター本体ケース11内の中央部に配置されることが好ましい。
また、RFIDタグ10Aが搭載された媒体としてのラベル用紙10を、ロール紙7としてプリンター本体3の近傍の給紙装置2にセットした構成に限定されず、例えばカット紙にRFIDタグ10Aを付した構成として、このカット紙をプリンター本体3の近傍に集積配置した構成とすることも可能であるし、プリンター本体3から離れた箇所にロール紙7をセットしてもよい。さらに、プリンター本体ケース11とは別体としてタグ読書装置46を配置してもよい。
また、プリンター1は、感熱紙としてのラベル用紙10に印刷を行うサーマルヘッド41を備えた構成に限定されず、インクジェット式プリンターであってもよいし、レーザープリンターやドットインパクトプリンター等に本発明を適用することも可能である。さらに、プリンター1に、エラーを報知するブザーや発光部、表示画面等を設けてもよく、その他の細部構成についても任意に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1…プリンター(媒体処理装置)、7…ロール紙(媒体)、10…ラベル用紙(媒体)、10A…RFIDタグ(ICタグ)、46…タグ読書装置(情報読書部)、52…搬送部、54…制御部、55…ホストコンピューター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7