特許第6221379号(P6221379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221379
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】空気調和機のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20171023BHJP
   F28G 9/00 20060101ALI20171023BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   F25B49/02 520M
   F28G9/00 Z
   F25B1/00 396B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-125368(P2013-125368)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-1327(P2015-1327A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】水元 美朗
(72)【発明者】
【氏名】松村 修
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3143261(JP,U)
【文献】 特開2002−098391(JP,A)
【文献】 特開2013−040730(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3072305(JP,U)
【文献】 特開平05−001897(JP,A)
【文献】 特開2005−061819(JP,A)
【文献】 特開平09−318208(JP,A)
【文献】 特開2005−016822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00,49/02
F28G 9/00,13/00
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外ユニット(2)と前記室外ユニット(2)に接続された1つ又は複数の室内ユニット(3)とを備える既設の空気調和機(1)をメンテナンスする方法であって、
前記室内ユニット(3)の少なくとも下部又は前記室外ユニット(2)の少なくとも下部を覆うようにシート部材(4)を配置してそのユニットの下方にシート部材(4)によって囲まれる空間(S)を形成する形成工程と、
前記空間(S)が形成された状態で、前記ユニットを洗浄する洗浄工程と、
前記空間(S)が形成された状態で、前記ユニットから冷媒の漏れが生じている場合に自重によって下降する冷媒を前記空間(S)の下部に集める集合工程と、
前記空間(S)の下部に集められた冷媒を検出手段(5)によって検出する検出工程と、を備える空気調和機のメンテナンス方法。
【請求項2】
冷媒漏れの検出及び洗浄の対象が、部屋の天井に設置される室内ユニット(3)又は部屋の壁に設置される室内ユニット(3)である、請求項1に記載の空気調和機のメンテナンス方法。
【請求項3】
媒漏れの検出及び洗浄の対象が前記複数の室内ユニット(3)であり、
前記複数の室内ユニット(3)のうちの一部の室内ユニット(3)において前記洗浄工程を行っているときに、他の室内ユニット(3)の少なくとも1つにおいて前記集合工程及び前記検出工程の少なくとも一方を行う、請求項1又は2に記載の空気調和機のメンテナンス方法。
【請求項4】
前記洗浄工程の後に、前記集合工程と前記検出工程とを行う、請求項2又は3に記載の空気調和機のメンテナンス方法。
【請求項5】
前記冷媒は、R32単体の冷媒である、請求項1〜4の何れか1項に記載の空気調和機のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外ユニットとこれに接続された1つ又は複数の室内ユニットとを備える既設の空気調和機をメンテナンスする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルなどの建物に既に設置されている空気調和機の室内ユニットにおいて、熱交換器などの構成部品を洗浄する方法が知られている。例えば特許文献1には、天井埋込み型、天井吊り下げ型などの空気調和機の室内ユニットにおいて、ケーシングの下面を覆うようにホッパーを取り付け、このホッパーに設けられた排水口にホースを接続し、洗浄ノズルによって噴霧された洗浄液をホッパーの排水口及びホースを通じてタンクに回収する洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−001897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空気調和機の冷媒回路においては高圧の冷媒が循環するので、長年の使用によって空気調和機において冷媒漏れが生じる場合がある。冷媒漏れが生じると空気調和機の性能が低下することがあるため、冷媒漏れが生じた状態を放置することは好ましくない。
【0005】
しかしながら、既設の空気調和機において冷媒漏れを短時間で検出する方法は知られていない。特に、既設の空気調和機において、冷媒漏れの度合いが小さいスローリークの有無を短時間で検出するのは非常に困難である。
【0006】
本発明の目的は、既設の空気調和機において、冷媒漏れを短時間で検出するメンテナンス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、室外ユニット(2)と前記室外ユニット(2)に接続された1つ又は複数の室内ユニット(3)とを備える既設の空気調和機(1)をメンテナンスする方法である。前記空気調和機のメンテナンス方法は、前記室内ユニット(3)の少なくとも下部又は前記室外ユニット(2)の少なくとも下部を覆うようにシート部材(4)を配置してそのユニットの下方にシート部材(4)によって囲まれる空間(S)を形成する形成工程と、前記空間(S)が形成された状態で、前記ユニットを洗浄する洗浄工程と、前記空間(S)が形成された状態で、前記ユニットから冷媒の漏れが生じている場合に自重によって下降する冷媒を前記空間(S)の下部に集める集合工程と、前記空間(S)の下部に集められた冷媒を検出手段(5)によって検出する検出工程と、を備える。
【0008】
本発明は、冷媒が空気よりも重いという特性に着目することによって生まれたものである。すなわち、本発明では、室内ユニット(3)又は室外ユニット(2)から漏れる冷媒を、シート部材(4)によって囲まれる空間(S)において自重によって下降させて空間(S)の下部に集めることによって、そのユニットから漏れる冷媒が微量であったとしても短時間で冷媒漏れの有無を検出することができる。
【0009】
しかも、本発明は、シート部材(4)によって空間(S)が形成された状態で室内ユニット(3)又は室外ユニット(2)の洗浄も行う。すなわち、本発明では、そのユニットの下方に空間(S)を形成するシート部材(4)は、ユニットから漏れる冷媒を集める機能と、洗浄時の水や洗浄剤などが周囲に飛散するのを防ぐ機能とを兼ね備える。したがって、1回のメンテナンスでユニットの洗浄とユニットの冷媒漏れ検査とを短時間で効率的に行うことができる。
【0010】
前記空気調和機のメンテナンス方法において、冷媒漏れの検出及び洗浄の対象が、部屋の天井に設置される室内ユニット(3)又は部屋の壁に設置される室内ユニット(3)であるのが好ましい。
【0011】
この方法で対象とされる天井設置型や壁掛け型の室内ユニット(3)は部屋の床からの距離が大きな高所に設置されるので、前記形成工程において室内ユニット(3)の下方にシート部材(4)によって囲まれる空間(S)を形成するのに必要なスペースを十分に確保することができる。
【0012】
前記空気調和機のメンテナンス方法において、冷媒漏れの検出及び洗浄の対象が前記複数の室内ユニット(3)であり、前記複数の室内ユニット(3)のうちの一部の室内ユニット(3)において前記洗浄工程を行っているときに、他の室内ユニット(3)の少なくとも1つにおいて前記集合工程及び前記検出工程の少なくとも一方を行うのが好ましい。
【0013】
この方法では、複数の室内ユニットが冷媒漏れ検出の対象及び洗浄の対象である場合に、洗浄と冷媒漏れ検査とを並行して行うので、メンテナンスをより短時間で効率的に行うことができる。
【0014】
前記空気調和機のメンテナンス方法において、前記洗浄工程の後に前記集合工程と前記検出工程とを行う場合には、冷媒漏れの有無の検出精度をより高めることができる。具体的に、例えば室内ユニット(3)が設置されている部屋の用途(例えば化学物質を扱うような用途など)によっては、その部屋の空気に含まれる冷媒以外の物質が室内ユニット(3)のケース内や前記空間(S)に存在し、検出手段(5)による誤検知の原因になる場合がある。このような場合、前記洗浄工程の後に前記集合工程と前記検出工程とを行うことによって誤検知が抑制されて冷媒漏れの有無の検出精度をより高めることができる。
【0015】
前記空気調和機のメンテナンス方法において、前記冷媒がR32単体の冷媒である場合を例示できる。HFC系冷媒の一種であるR32冷媒は微燃性の冷媒である。したがって、微燃性の冷媒の漏洩をこの方法によって検出することは非常に有意義である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、既設の空気調和機の室内ユニットにおいて、冷媒漏れを短時間で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】既設の空気調和機の一例を示す概略図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス方法の一工程を示す斜視図である。
図3】(A)は、室内ユニットの化粧パネル、送風機などをケースから取り外す分解工程を示し、(B)は、室内ユニットのケース内に熱交換器が残された状態を示している。
図4】第1実施形態に係るメンテナンス方法の一部の工程を示す断面図である。(A)は、メンテナンス方法の形成工程を示し、(B)は、メンテナンス方法の洗浄工程を示している。
図5】第1実施形態に係るメンテナンス方法の一部の工程を示す断面図である。(A)は、メンテナンス方法の集合工程を示し、(B)は、メンテナンス方法の検出工程を示している。
図6】(A)は、室内ユニットからシート部材を取り外す工程を示し、(B)は、化粧パネル、送風機などをケースに取り付ける工程を示している。
図7】本発明の第2実施形態に係るメンテナンス方法に用いられるシート部材を示す斜視図である。
図8図7のシート部材の下部にメンテナンス用開口部を形成する手順を示す斜視図である。
図9】(A)は、第2実施形態におけるシート部材を壁掛け型の室内ユニットに装着した状態での洗浄工程を示す正面図であり、(B)は、その側面図である。(C)は、冷媒漏れの検査を行う工程を示す正面図である。
図10】第2実施形態におけるシート部材を壁掛け型の室内ユニットに装着した状態を示す正面図であり、室内ユニットの下方の空間を図9(C)に示す形態よりも小さくした状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る空気調和機のメンテナンス方法について、図面を参照して説明する。まず、本実施形態のメンテナンス方法が適用される空気調和機の一例について説明する。
【0019】
[空気調和機]
図1は、既設の空気調和機1の一例を示す概略図である。図1に示す空気調和機1は、1つの室外ユニット2に対して複数の室内ユニット3が冷媒配管6を介して接続された空気調和機であり、いわゆるビル用マルチタイプの空気調和機である。室外ユニット2は、例えば建物の屋上などに設置される。建物の部屋8には複数の室内ユニット3が設置される。この空気調和機1は、冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路7を備える。室外ユニット2は、図略の圧縮機、膨張弁、室外熱交換器などを備える。部屋8は、床Fと、天井Cと、床Fと天井Cとを接続する壁Wとを有する。
【0020】
本実施形態では、各室内ユニット3は、部屋8の天井Cに設置される天井設置型の室内ユニットである。天井設置型の室内ユニット3としては、天井に埋め込まれる天井埋込型の室内ユニット、天井から吊り下げられる天井吊り下げ型の室内ユニットなどが挙げられる。図1に示す天井設置型の室内ユニット3は、天井埋込型の室内ユニットである。
【0021】
各室内ユニット3は、ケース31と、下面パネル(化粧パネル)32と、室内熱交換器33と、送風機34とを備える。ケース31は、天井裏に配置される。ケース31は、天井Cに設けられた開口A(図2参照)から天井裏に挿入される。ケース31の下部は室内に開口している。化粧パネル32は、ケース31の下部の開口を塞いでいる。化粧パネル32は、ケース31から取り外すことができる。室内熱交換器33及び送風機34は、ケース31内に配置されている。室内熱交換器33は、送風機34の周りを囲むように配置されている。室内熱交換器33としては、例えばフィンアンドチューブ型の熱交換器を用いることができるが、これに限られない。送風機34としては、ターボファンなどの遠心送風機を用いることができるが、これに限られない。
【0022】
冷媒回路7を循環する冷媒としては、例えばHFC系冷媒の一種であるR32単体の冷媒、R32を含む混合冷媒(例えばR410A冷媒)などを用いることができるが、これらに限られず、他の冷媒を用いることもできる。R32単体の冷媒及びR410A冷媒の蒸気の比重は、空気の比重よりも大きい。
【0023】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態に係るメンテナンス方法について説明する。空気調和機1のメンテナンスは、空気調和機の性能低下が生じたとき、空気調和機の汚れを除去する必要が生じたとき、定期的な点検のときなどに行われる。本実施形態のメンテナンス方法は、空気調和機1の室内ユニット3をメンテナンスの対象としている。このメンテナンス方法は、室内ユニット3における冷媒漏れの検出と、室内ユニット3の洗浄とを含む。
【0024】
本実施形態における冷媒漏れの検出は、室内ユニット3において具体的にどの箇所から冷媒が漏れているかを見つけ出すものではなく、室内ユニット3において冷媒漏れが生じているか否かを検出するものである。また、本実施形態における洗浄は、室内熱交換器33、送風機34などの構成部品を洗浄対象としている。洗浄は、水、洗浄剤などの液体を構成部品に噴射したり、構成部品のほこりや汚れを拭き取ったりすることによって行われる。
【0025】
図2は、本実施形態に係るメンテナンス方法の一工程を示す斜視図である。図2に示すシート部材4は、室内ユニット3のケース31の少なくとも下部を覆うように配置される袋状の部材である。本実施形態では、洗浄時の作業性、洗浄時の視認性などを考慮して、シート部材4は、透明又は半透明の樹脂によって形成されている。また、洗浄時に用いられる液体が部屋8内に飛散しないようにシート部材4は、防水性を有している。また、シート部材4は、柔軟性、可撓性を有しているので、室内ユニット3のケース31下部の形状にフィットさせることができる。
【0026】
シート部材4の上部43には開口部が設けられている。上部43の開口部は、ケース31の側面(周囲)を外側から包み込むことができる程度に、ケース31の下部の開口と同程度又は少し大きなサイズを有する。シート部材4の上部43は、例えば粘着テープなどを用いてケース31の下部の側面に固定される。
【0027】
シート部材の下部42にも開口部が設けられている。下部42の開口部は、洗浄に用いられる液体を後述する回収容器62に導くためのホース61(図4(A))が接続される接続部としての機能と、冷媒漏れを検出する検出手段5(図5(B))が挿入される挿入部としての機能とを有する。すなわち、シート部材4の下部42の開口部は、洗浄工程における液体回収用の開口部と、検出工程における検出手段5を挿入するための開口部とを兼ねている。下部42の開口部は、上部43の開口部よりも小さくてよい。
【0028】
シート部材4は、上部43と下部42との間に中間部41を有する。本実施形態では、中間部41は、下方に向かうほどサイズが小さくなるテーパー形状を有するが、これに限られない。中間部41は必ずしもテーパー形状でなくてもよい。
【0029】
シート部材4が図2に示すように室内ユニット3のケース31に取り付けられた状態では、室内ユニット3のケース31の下方には、シート部材4によって囲まれる空間Sが形成されている。空間Sは、側方がシート部材4によって塞がれ、上方がケース31によって塞がれている。したがって、洗浄時に用いられる液体が部屋8に飛散するのが抑制される。
【0030】
また、シート部材4の下部42の開口部を閉じることによって空間Sの下方もシート部材4によって塞がれる。したがって、室内ユニット3において冷媒漏れが生じている場合、漏れた冷媒はシート部材4の下部42に向かって自重で空間S内を下降し、空間Sの下部に集められる。
【0031】
次に、メンテナンスの詳細について説明する。図3図6は、メンテナンスの流れを示している。まず、メンテナンス時に部屋8内が汚れるのを防ぐために、床F、壁Wなどの要部を、図略の養生シートによって覆う。
【0032】
次に、メンテナンス前の空気調和機1の運転データを測定する。運転データとしては、例えば吸い込み温度、吹き出し温度、風速、吹き出しグリルのスイング状態などが挙げられる。この運転データの測定は省略することもできる。
【0033】
次に、図3(A)に示すように室内ユニット3の分解作業を行う。この分解作業では、化粧パネル32、送風機34、図略の電装部品、吸込グリル、フィルター、ドレンパン、ベルマウスなどをケース31から取り外す。図3(B)は、これらの構成部品がケース31から取り外された状態を示している。この状態では、ケース31内に室内熱交換器33が残されている。
【0034】
次に、図2及び図4(A)に示すように、シート部材4を室内ユニット3のケース31に取り付ける。具体的に、シート部材4の上部43がケース31の周囲を外側から覆うようにシート部材4の上部43をケース31の側面に粘着テープなどによって固定する。すなわち、室内ユニット3のケース31の少なくとも下部を覆うようにシート部材4を配置して室内ユニット3のケース31の下方にシート部材4によって囲まれる空間Sを形成する(形成工程)。形成工程では、シート部材4の上部43とケース31の側面との間にできるだけ隙間ができないような状態でシート部材4がケース31に固定される。そして、図4(A)に示すように、シート部材4の下部42にホース61の上端部が接続される。ホース61の下端部は、床Fに載置された回収容器62内に配置される。
【0035】
次に、図4(B)に示すように、室内ユニット3のケース31内の洗浄が行われる(洗浄工程)。本実施形態の洗浄工程では、室内熱交換器33が洗浄剤(洗浄用の薬品を含む液体)を用いて洗浄され、その後、室内熱交換器33が水洗いされるが、これに限られない。洗浄工程は、例えば水洗いだけでもよい。
【0036】
また、本実施形態の洗浄工程では、ノズル71と、ノズル71に接続されたチューブ72と、チューブ72が接続された噴霧機構73とが用いられる。噴霧機構73は、洗浄剤をノズル71から噴射させることができるとともに、水をノズル71から噴射させることもできる(高圧ジェット噴射機構)。ノズル71及びチューブ72の一部は、シート部材4の中間部41に設けられた挿入用開口44を通じてシート部材4で囲まれた空間S内に挿入される。挿入用開口44は、後述の集合工程及び検出工程では例えば粘着テープなどによって閉じられる。
【0037】
洗浄工程において、作業者はノズル71の向きを操作して室内熱交換器33を満遍なく洗浄した後、水噴射に切り換え、ノズル71の向きを操作して室内熱交換器33を満遍なく水洗いする。洗浄工程において使用された洗浄剤及び水は、シート部材4の内面を伝ってシート部材4の下部42に至り、ホース61を通じて回収容器62に回収される。
【0038】
また、ケース31から取り外された構成部品(化粧パネル32、送風機34、図略の電装部品、吸込グリル、フィルター、ドレンパン、ベルマウスなど)は、別途洗浄される。
【0039】
次に、室内ユニット3の冷媒漏れの検査が行われる。この冷媒漏れの検査では、室内ユニット3のケース31にシート部材4が取り付けられた状態(空間Sが形成された状態)が維持される。冷媒漏れの検査は、集合工程と、検出工程とを含む。洗浄工程で用いられるシート部材4と、集合工程及び検出工程で用いられるシート部材4は、同じものである。
【0040】
集合工程は、図5(A)に示すように、空間Sが形成された状態で、室内ユニット3から冷媒の漏れが生じている場合に自重によって下降するガス冷媒Rを空間Sの下部に集める。集合工程及び検出工程は、ケース31内の空間及びシート部材4に囲まれた空間Sにおいてできるだけ気流が生じないように、空気調和機1の圧縮機、送風機34などの運転が停止された状態で行われる。
【0041】
集合工程は、図5(A)に示すようにシート部材4の下部42からホース61を取り外した状態で行われる。集合工程は、シート部材4の下部42の開口部を閉じた状態で行われるのが好ましい。下部42の開口部を閉じる手段としては、粘着テープで開口部を塞ぐ、ロープを巻き付けて開口部を塞ぐなどの種々の方法が例示できる。集合工程において冷媒Rを空間Sの下部に集める時間は、特に限定されないが、例えば数分〜数十分程度(例えば5分〜10分)に設定される。本実施形態では、シート部材4の中間部41がテーパー形状を有するので、冷媒Rを局所的に集めやすい。これにより、冷媒漏れの検出精度を高めることができる。
【0042】
検出工程は、図5(B)に示すように、空間Sの下部に集められた冷媒Rを検出手段5によって検出する。検出手段5としては、公知の冷媒検知器を用いることができる。冷媒検知器のタイプに応じて、集合工程において冷媒Rを空間Sの下部に集める時間を設定してもよい。検出手段5は、操作部などを含む本体50と、本体50から延びるプローブ51とを有する。本実施形態では、検出手段5のプローブ51がシート部材4の下部42の開口部から挿入され、プローブ51の先端部が空間Sに配置される。これにより、空間Sの下部に集まるガス冷媒Rが検出される。なお、誤検知の防止のため、検出後には、プローブ51を空間Sから一旦出して再度空間Sに挿入して、冷媒検知器5による検出を再度行うのが好ましい。
【0043】
冷媒漏れ検査の一例を挙げると次の通りである。室温20℃の部屋に設置された室内ユニット3において、冷媒の初期封入圧力が1.0MPa(ガス封入)で、3日後の圧力が0.9MPaであり、約400g/年の冷媒漏れが生じている場合に、集合工程において冷媒Rを空間Sの下部に集める時間を5分に設定し、その後の検出工程において冷媒検知器5によって冷媒漏れを検出することができた。
【0044】
冷媒漏れ検査が終了した後、図6に示すように室内ユニット3のケース31からシート部材4を取り外す。そして、図6(B)に示すように、送風機34、化粧パネル32などをケース31に取り付ける。
【0045】
最後に、メンテナンス後の空気調和機1の運転データを測定する。運転データとしては、例えば吸い込み温度、吹き出し温度、風速、吹き出しグリルのスイング状態などが挙げられる。この運転データの測定は省略することもできる。
【0046】
なお、図1に示すように、冷媒漏れの検出及び洗浄の対象が複数の室内ユニット3である場合には、複数の室内ユニット3のうちの一部の室内ユニット3において前記洗浄工程を行っているときに、他の室内ユニット3の少なくとも1つにおいて集合工程及び検出工程の少なくとも一方を行うようにしてもよい。
【0047】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るメンテナンス方法について説明する。図7は、第2実施形態に係るメンテナンス方法に用いられるシート部材4を示す斜視図である。第2実施形態では、冷媒漏れの検出及び洗浄の対象が、部屋8の壁Wに設置される室内ユニット3である。
【0048】
第2実施形態におけるシート部材4は、第1実施形態におけるシート部材4と同様の材質を有している。図7に示すようにこのシート部材4は、上部43が開口した袋状の部材である。シート部材4は、壁掛け型の室内ユニット3の全体を包み込むことができる程度の大きさを有する。
【0049】
図8は、図7のシート部材4の下部42にメンテナンス用開口部42Aを形成する手順を示す斜視図である。このメンテナンス用開口部42Aは、冷媒漏れ検査のときに冷媒検知器5のプローブ51をシート部材4で囲まれた空間Sに挿入するための点検口として機能する。また、メンテナンス用開口部42Aは、洗浄工程において、ノズル71及びチューブ72の一部がシート部材4で囲まれた空間S内に挿入される挿入口としても機能する。すなわち、シート部材4の下部42の開口部42Aは、洗浄工程におけるノズル71挿入用の開口部と、検出工程における検出手段5を挿入するための開口部とを兼ねている。
【0050】
メンテナンス用開口部42Aは例えば図8に示すような手順で形成することができる。すなわち、まず、シート部材4の下部42の一部分に例えば梱包用の粘着テープ(ガムテープ)47を貼り付ける。そして、このガムテープ47の一部分にカッターなどによって切れ目45を入れる。切れ目45の大きさは、冷媒検知器5のプローブ51やノズル71を挿入できる程度であればよい。その後、切れ目45を覆うように梱包用の粘着テープ46を粘着テープ47に貼り付ける。この粘着テープ46は、冷媒漏れ検査などのときに着脱される蓋として機能する。
【0051】
図9(A)は、シート部材4を壁掛け型の室内ユニット3に装着した状態での洗浄工程を示す正面図であり、図9(B)は、その側面図である。図9(C)は、冷媒漏れの検査を行う工程を示す正面図である。
【0052】
第2実施形態のメンテナンス方法では、まず、シート部材4の上部43の開口部から室内ユニット3を袋内に挿入し、図9(A)に示すように室内ユニット3の全体をシート部材4によって覆う。シート部材4の上部43は、室内ユニット3との間に隙間が生じないように粘着テープなどによって室内ユニット3に固定される。
【0053】
次に、室内ユニット3の正面のグリルを開いた状態で、図9(A)に示すように洗浄が行われる(洗浄工程)。洗浄工程では、シート部材4で囲まれた空間Sに配置されたノズル71から洗浄剤を噴射させた後、水をノズル71から噴射させる。洗浄工程において使用された洗浄剤及び水は、シート部材4の内面を伝ってシート部材4の下部42に至り、ホース61を通じて回収容器62に回収される。
【0054】
次に、室内ユニット3の冷媒漏れの検査が行われる。この冷媒漏れの検査では、室内ユニット3のケース31にシート部材4が取り付けられた状態(空間Sが形成された状態)が維持される。冷媒漏れの検査は、第1実施形態と同様に集合工程と、検出工程とを含む。洗浄工程で用いられるシート部材4と、集合工程及び検出工程で用いられるシート部材4は、同じものである。
【0055】
集合工程は、空間Sが形成された状態で、室内ユニット3から冷媒の漏れが生じている場合に自重によって下降するガス冷媒Rを空間Sの下部に集める。この集合工程では、メンテナンス用開口部42Aは閉じられている。集合工程及び検出工程は、ケース31内の空間及びシート部材4に囲まれた空間Sにおいてできるだけ気流が生じないように、空気調和機1の圧縮機、送風機34などの運転が停止された状態で行われる。集合工程において冷媒Rを空間Sの下部に集める時間は、特に限定されないが、例えば数分〜数十分程度(例えば5分〜10分)に設定される。
【0056】
検出工程は、図9(C)に示すように、空間Sの下部に集められた冷媒Rを検出手段5によって検出する。検出手段5のプローブ51は、シート部材4の下部42の開口部42Aから挿入され、プローブ51の先端部が空間Sに配置される。これにより、空間Sの下部に集まるガス冷媒Rが検出される。
【0057】
なお、誤検知の防止のため、検出後には、プローブ51を空間Sから一旦出して再度空間Sに挿入して、冷媒検知器5による検出を再度行うのが好ましい。集合工程のときには、例えば室内ユニット3に接続される図略の冷媒配管(フレア管)の接続部分の冷媒漏れ検査、室外ユニットの点検などを並行して行うこともできる。室外ユニットの冷媒漏れの検査は、室内ユニット3と同様にして行うことができる。
【0058】
また、室内ユニット3に接続されている冷媒配管の接続部分がシート部材4で囲まれる空間Sの外部にあり、冷媒漏れが検出された場合には、冷媒漏れの箇所は、室内熱交換器である可能性が高いと判断できる。室内ユニット3に接続されている冷媒配管の接続部分がシート部材4で囲まれる空間Sの内部にあり、冷媒漏れが検出された場合には、冷媒漏れの箇所は、冷媒配管の接続部分である可能性と、室内熱交換器である可能性とがある。この場合には、冷媒配管の接続部分の冷媒漏れの有無を確認し、この接続部分からの冷媒漏れがなければ、冷媒漏れの箇所は、室内熱交換器である可能性が高いと判断できる。
【0059】
図10は、室内ユニット3の下方の空間Sを図9(C)に示す形態よりも小さくした状態を示している。この変形例では、シート部材4で囲まれた空間Sを図9(C)に示す形態よりも小さくしている。これにより、空間Sの下部に冷媒Rを局所的に集めやすい。これにより、冷媒漏れの検出精度を高めることができる。シート部材4は、柔軟性、可撓性を有する樹脂製であるので、図10に示すようにシート部材4の一部(図10における左側の部分)を上方に持ち上げて空間Sを小さくすることが容易にできる。上方に持ち上げられた部分は、シート部材4の中間部41や上部43において粘着テープなどによって固定される。
【0060】
[実施形態のまとめ]
第1実施形態及び第2実施形態では、前記メンテナンス方法は、室内ユニット3の少なくとも下部又は室外ユニット2の少なくとも下部を覆うようにシート部材4を配置してそのユニットの下方にシート部材4によって囲まれる空間Sを形成する形成工程と、空間Sが形成された状態で、前記ユニットを洗浄する洗浄工程と、空間Sが形成された状態で、前記洗浄工程の前後の何れかに行われ、前記ユニットから冷媒の漏れが生じている場合に自重によって下降する冷媒を空間Sの下部に集める集合工程と、空間Sの下部に集められた冷媒を検出手段5によって検出する検出工程と、を備える。このように、室内ユニット3から漏れる冷媒を、シート部材4によって囲まれる空間Sにおいて自重によって下降させて空間Sの下部に集めることによって、室内ユニット3から漏れる冷媒が微量であったとしても短時間で冷媒漏れの有無を検出することができる。すなわち、シート部材4によって囲まれる空間Sを形成することにより、室内ユニット3から漏れた冷媒は、部屋8の気流によって周辺に拡散することなく、空間Sの下部に局所的に集められる。これにより、検出対象の冷媒濃度が部屋8の気流によって下がることを防止できるので、室内ユニット3から漏れる冷媒が微量であったとしても短時間で冷媒漏れの有無を検出することができる。しかも、シート部材4によって空間Sが形成された状態で室内ユニット3の洗浄も行う。すなわち、室内ユニット3の下方に空間Sを形成するシート部材4は、室内ユニット3から漏れる冷媒を集める機能と、洗浄時の水や洗浄剤などが周囲に飛散するのを防ぐ機能とを兼ね備える。したがって、1回のメンテナンスで室内ユニット3の洗浄と室内ユニット3の冷媒漏れ検査とを短時間で効率的に行うことができる。
【0061】
第1実施形態では、冷媒漏れの検出及び洗浄の対象が部屋8の天井Cに設置される室内ユニット3であり、第2実施形態では、冷媒漏れの検出及び洗浄の対象が部屋8の壁Wに設置される室内ユニット3である。天井設置型や壁掛け型の室内ユニット3は部屋8の床Fからの距離が大きな高所に設置されるので、前記形成工程において室内ユニット3の下方にシート部材4によって囲まれる空間Sを形成するのに必要なスペースを十分に確保することができる。
【0062】
第1実施形態では、冷媒漏れの検出及び洗浄の対象が複数の室内ユニット3であり、複数の室内ユニット3のうちの一部の室内ユニット3において洗浄工程を行っているときに、他の室内ユニット3の少なくとも1つにおいて集合工程及び検出工程の少なくとも一方を行うのが好ましい。この場合には、メンテナンスをより短時間で効率的に行うことができる。
【0063】
第1実施形態及び第2実施形態では、例えば室内ユニット3が設置されている部屋の用途(例えば化学物質を扱うような用途など)によっては、その部屋の空気に含まれる冷媒以外の物質が室内ユニット3のケース31内や空間Sに存在し、検出手段5による誤検知の原因になる場合がある。このような場合、前記洗浄工程の後に前記集合工程と前記検出工程とを行うことによって誤検知が抑制されて冷媒漏れの有無の検出精度をより高めることができる。
【0064】
第1実施形態及び第2実施形態において、冷媒が微燃性のR32単体の冷媒である場合、冷媒の漏洩を上記メンテナンス方法によって検出することは非常に有意義である。
【0065】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0066】
前記実施形態では、室内ユニットが天井埋込み型の室内ユニットである場合、及び室内ユニットが壁掛け型の室内ユニットである場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、室内ユニットは、天吊り型、床置き型などの他のタイプの室内ユニットであってもよい。なお、床置き型の室内ユニットの場合には、シート部材4による空間Sを形成するために、室内ユニットを床から離した高所に配置してメンテナンスが行われる。
【0067】
前記実施形態では、冷媒漏れ検出の対象及び洗浄の対象が室内ユニット3である場合を例示したが、これらの対象が、床との間に空間が形成された位置に設置された室外ユニットであってもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、集合工程及び検出工程は、洗浄工程の後に行われているが、洗浄工程の前に行われてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 空気調和機
2 室外ユニット
3 室内ユニット
4 シート部材
5 検出手段
6 冷媒配管
S シート部材によって囲まれる空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10