(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のモータは、大口径の中空穴を維持しつつも大きな推力を得ようとした場合、ロータ外径側を大径化する必要がある。つまり、特許文献1に記載のモータは、機台からの突出長を抑え難い。また特許文献1に記載のモータは、ステータを2枚のロータで挟み込むことで磁路を形成する必要があり、加えて二枚のロータ同士の磁路を連結するための磁性体からなるベースブロックを設ける必要があり、軽量化し難い。また特許文献1に記載のモータは、ロータ間のステータを挟み込む空隙において十分な磁束量を維持するには、厚い磁石を組み込む必要があるため、軽量化し難い。このため、特許文献1に記載のモータは、面倒れ方向の慣性が大きく共振周波数を上げ難いため、ロータを高速回転することが難しい。また、特許文献2に記載のように、方持ちで機台に固定される場合、モータは、面倒れ方向の慣性を考慮する必要がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、片持ちで機台に固定され、面倒れ方向の慣性を抑制でき、中空環状のロータを有するモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し目的を達成するために、本発明のモータは、中空円環状の中空シャフトと、前記中空シャフトの外周かつ円周方向に配列される複数のマグネットを備えるモータロータと、前記モータロータの径方向外側を囲み、一端が機台に固定されて片持ち支持されるモータベースと、前記モータベースの内壁に前記中空シャフトを回転自在に支持する軸受と、前記モータベースに取り付けられ、前記複数のマグネットの一部の極数に磁気ギャップを介して対向する、ステータコアを備える複数のモータステータと、を備え、前記モータステータの総数をSnとした場合、下記式(1)のθeで表す電気角で位相をずらして配置されていることを特徴とする。
【0008】
θe=360°/(2×(Sn))・・・(1)
【0009】
上記構成により、モータは、モータステータの端部に起因するコギングトルクがモータステータの位相関係で相殺され、滑らかな回転を得ることができる。
【0010】
本発明の望ましい態様として、前記複数のステータコアは、前記モータベースの同じ表面に固定され、前記機台寄りに偏って配置されていることが好ましい。
【0011】
上記構成により、モータは、面倒れ方向の慣性を小さくすることができる。そして、面倒れ方向の慣性が小さく、共振周波数を上げることができるので、モータは、モータロータを高速回転することができる。
【0012】
本発明の望ましい態様として、前記複数のモータステータは、励磁コイルを備える前記ステータコアと、励磁コイルに通電しない又は励磁コイルを備えない疑似ステータコアとを含むことが好ましい。
【0013】
上記構成により、モータは、モータステータの端部に起因するコギングトルクが励磁コイルを備えるステータコアと疑似ステータコアとの位相関係で相殺され、滑らかな回転を得ることができる。
【0014】
本発明の望ましい態様として、前記複数のモータステータは、励磁コイルを備えるステータコアを複数含み、当該励磁コイルに電力を供給するアンプにより駆動され、前記複数のモータステータのうち1つのモータステータと、他のモータステータの少なくとも1つとは、別々の前記アンプで駆動されることが好ましい。
【0015】
上記構成により、モータは、複数のモータステータ間に電気角のずれがあっても各々のモータステータの通電タイミングに応じたモータ電流を流せるので、滑らかな回転を得ることができる。
【0016】
本発明の望ましい態様として、前記複数のモータステータは、励磁コイルを備えるステータコアを複数含み、当該励磁コイルに電力を供給するアンプにより駆動され、前記複数のモータステータのうち1つのモータステータは、他のモータステータを駆動するアンプと異なる前記アンプで駆動されることが好ましい。
【0017】
上記構成により、モータは、複数のモータステータ間に電気角のずれがあっても各々のモータステータの通電タイミングに応じたモータ電流を流せるので、滑らかな回転を得ることができる。
【0018】
本発明の望ましい態様として、前記モータベースは、前記中空シャフトが貫通しており、前記中空シャフトが露出する外周に、前記マグネットが配置されていることが好ましい。
【0019】
上記構成により、モータは、中空シャフトに大口径の中空穴を維持しつつも大きな推力を得ようとした場合、モータは、マグネットと、ステータコアとが重複する面積を拡大できる。
【0020】
また、上記構成により、マグネットとステータコアとは平面対向ではなく周対向になる。そして、モータステータは、コアを有するので、薄い磁石を用いても磁石の動作点を維持できる。そして薄い磁石を用いているため、モータは、面倒れ方向の慣性を小さくできる。また、モータは、ギヤなどの間接的な伝達機構を介さずに直接マグネット側に回転力を与える。そして、モータはいわゆるダイレクトドライブモータとなり、直接負荷体を回転することができる。また、モータは、高精度に位置決めをすることができる。
【0021】
本発明の望ましい態様として、前記マグネットは、外径側から回転中心に向けてみた形状が矩形であることが好ましい。
【0022】
上記構成により、表面上に斜めに磁石を貼り付けスキューをつけなくても、モータは、ステータコア端部に起因する強大なコギングトルクを抑制できる。このため、マグネットは、平板をねじったような形状の磁石としなくてもよく、成形が容易でモータのコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、片持ちで機台に固定され、面倒れ方向の慣性を抑制でき、中空環状のロータを有するモータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るモータの外観を示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係るモータの平面図である。
図3は、
図2の側面図である。
図1、
図2及び
図3に示すように、モータ1は、静止状態に維持される固定子(以下、モータステータという)であるモータステータ30A及びモータステータ30Bと、モータステータ30A及びモータステータ30Bに対して回転可能に配置された回転子(以下、ロータという)であるモータロータ10と、モータステータ30A及びモータステータ30Bを固定するモータベース20とを備えている。
【0027】
モータロータ10は、中空シャフト11と、ロータヨーク41と、マグネット42とを含む。中空シャフト11は、中空穴10Hを内壁で囲む中空円環状の円筒体である。中空シャフト11の回転中心Zrは、中空シャフト11の内壁の中心又は外壁の中心と一致する。中空シャフト11は、外部へ回転を伝える出力シャフトとなっている。
【0028】
モータベース20は、略板状のハウジングベース21と、ハウジングベース21のY方向の一端寄りに機台取付部22があり、Y方向の他端には機台取付部22がない。実施形態1に係るモータベース20は、モータステータ30A及びモータステータ30Bがハウジングベース21の一方の表面21fに固定されている。機台取付部22は、機台に取り付けるための雌ねじ又は貫通孔による取付孔22Hを含む。
【0029】
図2に示すように、機台取付部22は、光学機器、医療機器等の機器の機台51の表面51fにボルトなどの固定具23で固定されている。このため、モータベース20は、ハウジングベース21のY方向における一端を固定端とし、Y方向における他端を自由端として、片持ち支持されている。このため、モータ1は、モータベース20の配置上、機台取付部22寄りにモータステータ30A及びモータステータ30Bを偏らせて配置し、機台51から離れた部位にかかるモータステータ30A及びモータステータ30Bの質量が小さくなるようにすることで、
図3に示す面倒れ方向Fvの慣性を抑制することができる。
【0030】
図4は、
図2に示すA−Zr−B断面で実施形態1に係るモータの構成を切って模式的に示す部分断面図である。
図5は、
図2に示すC−Zr−D断面で実施形態1に係るモータの構成を切って模式的に示す部分断面図である。
【0031】
モータベース20は、中空シャフト11が貫通している。軸受装置14は、モータベース20の内壁に中空シャフト11を回転自在に支持する。このため、モータ1は、モータロータ10をハウジングベース21、モータステータ30A及びモータステータ30Bに対して回転させることができる。
【0032】
軸受装置14は、背面組み合わせのアンギュラ玉軸受であり、外輪がハウジングベース21の内壁に固定され、内輪が中空シャフト11の外周に固定されている。ロータヨーク41は、図示しないボルトで中空シャフト11に軸方向に固定することで、中空シャフト11に嵌め込まれた軸受装置14の内輪端面同士を密着させる。これにより、軸受装置14には、予圧が付加される。
【0033】
軸受装置14は、背面組み合わせアンギュラ玉軸受である。このため、軸受装置14が薄肉になり、中空シャフト11に大口径の中空穴10Hが確保できる。また、アンギュラ玉軸受は、予圧を与えるための機構部品をモータロータ10に搭載しなくても予圧を与えられる。このため、モータロータ10が軽量化し、面倒れ方向Fvの慣性を小さくできる。なお、軸受装置14は、薄肉の背面組み合わせアンギュラ玉軸受を用いた例で説明した。実施形態1に係るモータ1は、軸受装置14がアンギュラ玉軸受に限定されるものではなく、設置スペースや摩擦トルク、回転速度などによって適宜変更される。例えば軸受装置14は、単列の4点接触玉軸受又は深溝玉軸受を2個配置して予圧をかける構造としても良い。
【0034】
中空シャフト11が露出する外周に、ロータヨーク41を介して、マグネット42が配置されている。マグネット42は、ロータヨーク41の外周かつ円周方向Frに沿って複数配列される。マグネット42は、永久磁石であり、S極及びN極がロータヨーク41の円周方向Frに交互に等間隔で配置される。これにより、
図2に示すモータロータ10の極数は、ロータヨーク41の外周側にN極と、S極とがロータヨーク41の円周方向に交互に配置された96極である。マグネット42の極数は、例示であり、複数あれば良い。マグネット42は、エネルギー積の高いNd−Fe−B系磁石(ネオジム系磁石)の円弧状の永久磁石である。このため、隣り合うマグネット42の間に隙間を設け、モータロータ10の質量を抑制することができる。モータ1は、マグネット42間の隙間の分、面倒れ方向Fvの慣性を小さくできる。
【0035】
ロータヨーク41は、円環状であり、ロータヨーク41の内周が中空シャフト11の外周に接し、ロータヨーク41の外周には、マグネット42が固定されている。ロータヨーク41は、例えば低炭素鋼を用いており、薄肉化したロータヨーク41においても磁路を確保することができる。また、ロータヨーク41は、薄肉化により面倒れ方向Fvの慣性を小さくできる。ロータヨーク41は、表面に無電解ニッケルめっきの表面処理が施されている。なお、ロータヨーク41として、無電解ニッケルめっきが施された円環状の低炭素鋼を用いた例で説明したが、材質及び表面処理が実施形態1に限定されるものではなく、使用環境などの理由により適宜変更される。例えば、ロータヨーク41は、磁気特性は劣るもののマルテンサイト系ステンレス鋼など他の磁性材でも良い。
【0036】
マグネット42は、エポキシ系の接着剤によりロータヨーク41に接着固定されている。これにより、マグネット42の材質と、ロータヨーク41の材質との線膨張係数の差により生ずる応力を緩和できる。例えば、モータロータ10が大径化して、ロータヨーク41の直径が大きくなっても、マグネット42が剥離する磁極剥がれを抑制できる。また、無電解ニッケルめっきによる表面処理されたロータヨーク41は、エポキシ系の接着剤に対して高い接着強度を得られる。また、表面がエポキシコーティングを施されたマグネット41をロータヨーク41に接着することで、マグネット42の周囲がエポキシ樹脂で覆われ、磁極剥がれを抑制できる。なお、マグネット42は、エポキシコーティングが施されたNd−Fe−B系磁石(ネオジム系磁石)を用いた例で説明したが、材質及びコーティングが実施形態1に限定されるものではなく、モータが必要なトルク、使用環境又は接着剤との相性などにより適宜変更される。例えば、マグネット42は、表面が電解ニッケルめっきを施されていても良い。
【0037】
モータベース20の中空内壁、ロータヨーク41及び中空シャフト11はいずれも環状である。ロータヨーク41及び中空シャフト11は、回転中心Zrを中心に同心状に配置されている。
【0038】
モータステータ30A及びモータステータ30Bは、連続しておらず、セグメント状である。モータステータ30Aは、第1ステータコア31Aと、励磁コイル32とを含む。モータステータ30Bは、第2ステータコア31Bと、励磁コイル32とを含む。第2ステータコア31Bは、第1ステータコア31Aと同じ形状である。モータステータ30Aは、第1ステータコア31Aに励磁コイル32が巻きつけられる。モータステータ30Bは、第2ステータコア31Bに励磁コイル32が巻きつけられる。モータステータ30A及びモータステータ30Bには、電源からの電力を供給するための配線が接続されており、この配線を通じて励磁コイル32に対して後述するモータ制御回路90から電力が供給されるようになっている。
【0039】
図6は、
図2に示すモータステータを拡大して示す部分拡大図である。実施形態1において、モータステータ30Bは、モータステータ30Aと同じ構成であるので、説明を省略する。モータステータ30Aは、無方向性電磁鋼板の積層材を積層して複数のティース(突極)31Tが円周方向に等間隔に形成された円弧状の積層鉄心である。なお、モータステータ30Aの材質は、詳細形状や製造工程などの理由により適宜変更されるものであり、圧粉鉄心など他の電磁材を用いても良い。
【0040】
マグネット42と第1ステータコア31Aのティース31Tとは平面対向(アキシャルギャップ型)ではなく周対向(ラジアルギャップ型)になる。そして、マグネット42に薄い磁石を用いても磁石の動作点を維持できるため、モータ1は、モータロータ10の面倒れ方向Fvの慣性を小さくできる。
【0041】
例えば、
図6に示すように、第1ステータコア31Aは、
図2に示す開き角θsが30°の円弧状のバックヨーク31Yの内径側に向けて突出する、
図6に示す9つのティース(突極)31Tを備えている。励磁コイル32は、線状の電線である。励磁コイル32は、第1ステータコア31Aのティース31Tにインシュレータ(絶縁材料)を介して巻回される。励磁コイル32は、時計回り(円周方向Frと逆方向)に、U相正巻32Ua、U相逆巻32Ub、U相正巻32Ua、V相正巻32Va、V相逆巻32Vb、V相正巻32Va、W相正巻32Wa、W相逆巻32Wb及びW相正巻32Waの順で結線される。ティース31Tは、複数のマグネット42の一部に磁気ギャップGを介して対向する。
【0042】
上記構成により、第1ステータコア31Aが磁路として働くため、少なくともマグネット42が円周方向Frに並ぶ列が1列あれば良い。このため、モータロータ10が軽量化できる。その結果、モータ1は、面倒れ方向Fvの慣性を小さくできる。
【0043】
実施形態1に係るモータ1は、モータステータ30A又はモータステータ30Bと対向する、ロータの極数は、(96極/(360°/30°))=8極である。これに対し、モータステータ30A又はモータステータ30Bは、9つのティース31Tを備えているので、実施形態1に係るモータ1は、表面磁石型の回転型ブラシレスモータに換算して8極9スロットというスロットコンビネーション構成である。
【0044】
例えば、表面磁石型の回転型ブラシレスモータに換算した、8極9スロットのスロットコンビネーション構成は、磁極数とスロット数の関係が2:3でない分数スロットであり、コギング力は小さく、滑らかに回転する。このように磁極数とスロット数の関係が2:3でない分数スロットの構成は、磁極数とスロット数の関係が2:3である整数スロットの構成と比較して、磁極数とスロット数の最小公倍数が大きな値となるため、スロットコンビネーション起因のコギングトルクを抑えることができる。このように、磁極数とスロット数の最小公倍数は、モータが本来有するスロットコンビネーション起因のコギングトルクの山数であり、コギングトルクの山数が多いほどその振幅は相殺され分散されるため、結果的にコギングトルクの振幅は小さくなる。なお、磁極数とスロット数の関係は、全体形状や磁極形状により適宜変更される。磁極数とスロット数の関係は、例えば、10極9スロット、10極12スロット又は14極12スロットなど、他の分数スロット構成としても良い。また、モータが本来有するスロットコンビネーション起因のコギングトルクが問題とならない用途においては、整数スロット構成としても良い。
【0045】
実施形態1に係るモータ1は、中空シャフト11に大口径の中空穴10Hを維持しつつも大きな推力を得ようとした場合、中空シャフト11は、モータベース20に貫通しているので、中空シャフト11の外径方向を大径化することなく軸方向(回転中心Zrの軸方向)に伸ばすことができる。このため、モータ1は、マグネット42と、第1ステータコア31Aのティース31Tとが対向する面積を拡大できる。その結果、モータ1は、機台51からの突出長さの増加を小さく抑えることができる。
【0046】
図7は、実施形態1に係るモータのマグネットの配列を模式的に示す部分断面図である。
図8は、実施形態1に係るモータのステータコアのティースの配列を模式的に示す部分断面図である。マグネット42は、例えば、回転中心Zrの軸方向の長さ42zと円周方向Frの幅42wを有している場合、回転中心Zrの軸方向の長さ42zを伸ばすことで推力を増加させることができる。同様に、ティース31Tは、回転中心Zrの軸方向の長さ31Tzと円周方向Frの幅31Twを有している場合、回転中心Zrの軸方向の長さ31Tzを伸ばすことで推力を増加させることができる。
【0047】
図9は、実施形態1に係るモータとモータ制御回路との接続を説明するための説明図である。
図9に示すように、外部のコンピュータからモータ回転指令iが入力されたとき、モータ制御回路90は、CPU(Central Processing Unit)91から3相アンプ(AMP:Amplifier)92に駆動信号を出力し、AMP92からモータ1に駆動電流Miが供給される。モータ1は、3相正弦波状の駆動電流Miによりモータステータ30Aの励磁コイル32が励磁され、直接マグネット42側に回転力を与える。同様に、複数のモータステータ30A及び30Bは、励磁コイル32を備えるステータコア31A、31Bを複数含み、当該励磁コイル32のそれぞれに電力を供給する2つのAMP92により、複数のモータステータ30A及び30Bのそれぞれが異なるAMP92に駆動される。このため、モータ1は、複数のモータステータ30A、30B間に電気角のずれがあっても各々のモータステータ30A、30Bの通電タイミングに応じたモータ電流を流せるので、滑らかな回転を得ることができる。そして、回転力を受けて、モータロータ10が回転すると、モータロータ10の回転角度を検出した円環状のエンコーダ94等の角度検出器から検出信号Srが出力される。モータ制御回路90は、検出信号Srのデジタル情報に基づいて、CPU91はモータロータ10が指令位置に到達したか否かを判断し、指令位置に到達する場合、AMP92への駆動信号を停止する。このように、速度指令又は位置指令などのモータ回転指令iが入力されたとき、モータ制御回路90は、モータロータ10の回転速度又は位置がモータ回転指令i通りとなるように演算し、モータステータ30Aに駆動電流Miを出力する。
【0048】
図10は、モータステータのステータコア端部に起因して生ずるコギングトルクを示す図である。
図11は、複数のモータステータがステータコア端部に起因して生ずるコギングトルクを相殺する状態を説明する説明図である。実施形態1に係るモータ1は、
図2に示すように、ステータコアを備えるモータステータの総数をSnとした場合、モータステータ30Aの弧の中心とモータステータ30Bの弧の中心とが下記式(1)のθeで表す電気角で位相をずらして配置されている。
【0049】
θe=360°/(2×(Sn))・・・(1)
【0050】
実施形態1において、モータステータ30Aとモータステータ30Bとを備えているので、ステータコアを備えるモータステータの総数が2である。このため、上記(1)式により、θeで表す電気角は、90°である。磁対数は、48である場合、電気角を機械角に換算すると、機械角は、電気角を磁対数で除した値、すなわち、90°/48=1.875°になる。一方、モータ1の磁極は96極であり、電気角1周期は、機械角で、360°を極対数48で除した値、つまり360°/48=7.5°になる。モータステータ30Aとモータステータ30Bとは、7.5°×n+1.875°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−1.875°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することができる。実施形態1に係るモータ1は、回転中心Zrをできるだけ機台表面51fに近づけるように、n=12とし、モータステータ30Aから機械角で91.875°の位相関係でモータステータ30Bを離して配置している。
【0051】
このため、モータステータ30Aとモータステータ30Bとは、
図10に示す電気角1周期内に2周期生じるステータコア端部に起因して生ずるコギングトルクがある。モータステータ30Aとモータステータ30Bとは、7.5°×n+1.875°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−1.875°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することにより、ステータコア31A端部に起因して生じるコギングトルク30Aと、ステータコア31B端部に起因して生じるコギングトルク30Bとを相殺し、
図11に示す合成トルクWSが低減することで、滑らかな回転を得ることができる。
【0052】
そして、マグネット42と第1ステータコア31A又は第2ステータコア31Bとは平面対向(アキシャルギャップ型)ではなく周対向(ラジアルギャップ型)になる。そして、薄い磁石を用いても磁石の動作点を維持できるため、面倒れ方向Fvの慣性を小さくできる。また、モータ1は、ギヤなどの間接的な伝達機構を介さずに直接マグネット42側に回転力を与える。そして、モータ1はいわゆるダイレクトドライブモータとなり、直接負荷体を回転することができる。また、モータは、高精度に位置決めをすることができる。
【0053】
図7に示すように、マグネット42は、外径側から回転中心Zrに向けてみた形状が矩形である。実施形態1に係るモータ1は、マグネット42を、平板をねじったような形状の磁石としなくても良く、成形が容易でモータのコストを低減することができる。
【0054】
(実施形態2)
図12は、実施形態2に係るモータの平面図である。
図13は、複数のモータステータがステータコア端部に起因して生ずるコギングトルクを相殺する状態を説明する説明図である。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0055】
実施形態2に係るモータ1Aは、モータステータ30A、30B、30C及び30Dと、モータステータ30A、30B、30C及び30Dに対して回転可能に配置されたモータロータ10と、モータステータ30A、30B、30C及び30Dを固定するモータベース20とを備えている。モータステータ30B、30C、30Dは、モータステータAと同じ構成である。
図12に示すように、モータステータ30A、30B、30C及び30Dの総数をSnとした場合、Sn=4であり、上記式(1)のθeで表す電気角で位相をずらして配置されている。
【0056】
実施形態2において、Snが4であり、θeで表す電気角は、45°である。磁対数は、48である場合、電気角を機械角に換算すると、機械角は、電気角を磁対数で除した値、すなわち、45°/48=0.9375°になる。一方、モータ1の磁極は96極であり、電気角1周期は、機械角で、360°を極対数48で除した値、つまり360°/48=7.5°になる。モータステータ30A、30B、30C及び30Dのそれぞれが、7.5°×n+0.9375°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−0.9375°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することができる。実施形態2に係るモータ1は、回転中心Zrをできるだけ機台表面51fに近づけるように、n=12とし、モータステータ30Aから機械角で90.9375°の位相関係でモータステータ30Bを離して配置している。モータステータ30Bから機械角で89.0625°の位相関係でモータステータ30Cを離して配置している。モータステータ30Cから機械角で90.9375°の位相関係でモータステータ30Dを離して配置している。モータステータ30Dから機械角で89.0625°の位相関係でモータステータ30Aを離して配置している。
【0057】
このため、実施形態2に係るモータ1Aは、モータステータ30A、30B、30C、30D同士は、7.5°×n+0.9375°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−0.9375°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することにより、モータステータ30Aのステータコア端部に起因して生じるコギングトルク30Aと、モータステータ30Bのステータコア端部に起因して生じるコギングトルク30Bと、モータステータ30Cのステータコア端部に起因して生じるコギングトルク30Cと、モータステータ30Dのステータコア端部に起因して生じるコギングトルク30Dを互いに相殺し、合成トルクWSが低減することで、滑らかな回転を得ることができる。
【0058】
なお、実施形態1に係るモータ1は、実施形態2に係るモータ1Aに比べて、モータベース20の配置上、機台取付部22寄りにモータステータを偏らせて配置し、機台51から離れた部位にかかるモータステータの質量が小さくなるようにすることで、
図3に示す面倒れ方向Fvの慣性を抑制することができる。
【0059】
(実施形態3)
図14は、実施形態3に係るモータの平面図である。なお、上述した実施形態1及び実施形態2で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0060】
実施形態3に係るモータ1Bは、モータステータ30Bを通電しない疑似ステータとしている。モータステータ30Bは、実施形態1に記載のように、モータステータ30Aと同じ構成とし、励磁コイル32に通電しないようにしてもよい。これにより、モータ1Bは、モータ1と比較して、AMP92の数が少なくなる。またモータステータ30Aとモータステータ30Bとは、7.5°×n+1.875°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−1.875°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することにより、ステータコア31A端部に起因して生じるコギングトルク30Aと、ステータコア31B端部に起因して生じるコギングトルク30Bとを相殺し合成トルクWSが低減することで、滑らかな回転を得ることができる。
【0061】
また、
図14に示すように、モータステータ30Bは、第1ステータコア31Aと同じ形状の第2ステータコア31Bを含むが、励磁コイル32備えない疑似ステータとしてもよい。このようなモータステータ30Bであっても、またモータステータ30Aとモータステータ30Bとは、7.5°×n+1.875°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−1.875°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することにより、ステータコア31A端部に起因して生じるコギングトルク30Aと、ステータコア31B端部に起因して生じるコギングトルク30Bとを相殺し合成トルクWSが低減することで、滑らかな回転を得ることができる。
【0062】
以上説明したように、モータステータ30Bは、モータステータ30Aが有する第1ステータコア31Aと同じ形状の第2ステータコア31Bを、擬似ステータとして配置している。実施形態3に係るステータコアは、第1ステータコア31Aと同じ形状の第2ステータコア31Bの形状に限定されるものではなく、全体形状などの理由により適宜変更される。例えば、モータロータ10と、擬似ステータとの間に生じる磁気吸引力及びティース31Tに起因する、電気角1周期内に2周期生ずる強大なコギングトルクを相殺できるのであれば、単純円弧形状などであっても良い。
【0063】
(実施形態4)
図15は、実施形態4に係るモータの平面図である。
図16は、複数のモータステータがステータコア端部に起因して生ずるコギングトルクを相殺する状態を説明する説明図である。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0064】
実施形態4に係るモータ1Cは、モータステータ30A、30B及び30Cと、モータステータ30A、30B及び30Cに対して回転可能に配置されたモータロータ10と、モータステータ30A、30B及び30Cを固定するモータベース20とを備えている。複数のモータステータ30A、30B及び30Cは、励磁コイル31を備えるステータコア31A、31B、31Cを複数含み、当該励磁コイル32のそれぞれに電力を供給する3つのAMP92により、複数のモータステータ30A、30B及び30Cのそれぞれが異なるAMP92に駆動される。このため、モータ1は、複数のモータステータ30A、30B及び30C間に電気角のずれがあっても各々のモータステータ30A、30B及び30Cの通電タイミングに応じたモータ電流を流せるので、滑らかな回転を得ることができる。
図15に示すように、モータステータ30A、30B及び30Cの総数をSnとした場合、Sn=3であり、上記式(1)のθeで表す電気角で位相をずらして配置されている。なお、θe’も上記(1)で導かれる。
【0065】
実施形態4において、Snが3であるのでθe、θe’で表す電気角は、60°である。磁対数は、48である場合、電気角を機械角に換算すると、機械角は、電気角を磁対数で除した値、すなわち、60°/48=1.25°になる。一方、モータ1の磁極は96極であり、電気角1周期は、機械角で、360°を極対数48で除した値、つまり360°/48=7.5°になる。モータステータ30A、30B及び30Cのそれぞれが、7.5°×n+1.25°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−1.25°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することができる。実施形態4に係るモータ1は、回転中心Zrをできるだけ機台表面51fに近づけるように、n=12とし、モータステータ30Aから機械角で91.25°の位相関係でモータステータ30Bを離して配置している。モータステータ30Bから機械角で136.25°の位相関係でモータステータ30Cを離して配置している。
【0066】
このため、
図16に示すように、実施形態4に係るモータ1C
において、モータステータ30A、30B、30
C同士は、7.5°×n+1.25°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−1.25°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することにより、モータステータ30Aのステータコア端部に起因して生じるコギングトルク30Aと、モータステータ30Bのステータコア端部に起因して生じるコギングトルク30Bと、モータステータ30Cのステータコア端部に起因して生じるコギングトルク30Cと、を互いに相殺し、合成トルクWSが低減することで、滑らかな回転を得ることができる。
【0067】
なお、実施形態4に係るモータ1は、実施形態2に係るモータ1Aに比べて、モータベース20の配置上、機台取付部22寄りにモータステータを偏らせて配置し、機台51から離れた部位にかかるモータステータの質量が小さくなるようにすることで、
図3に示す面倒れ方向Fvの慣性を抑制することができる。
【0068】
(実施形態5)
図17は、実施形態5に係るモータの平面図である。
図18は、実施形態5に係るモータとモータ制御回路との接続を説明するための説明図である。
図19は、複数のモータステータがステータコア端部に起因して生ずるコギングトルクを相殺する状態を説明する説明図である。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0069】
実施形態5に係るモータ1Dは、モータステータ30A、30A、30B及び30Bと、モータステータ30A、30A、30B及び30Bに対して回転可能に配置されたモータロータ10と、モータステータ30A、30A、30B及び30Bを固定するモータベース20とを備えている。モータ1Dの磁極は96極であり、電気角1周期は、機械角で、360°を極対数48で除した値、つまり360°/48=7.5°になる。θmの機械角となるように、モータステータ30A及び30Aのそれぞれが、7.5°×n(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することができる。また、θmの機械角となるように、モータステータ30B及び30Bのそれぞれが、7.5°×n(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することができる。
【0070】
このため、モータステータ30A及び30Aは、同じ電気角で配置されることから、同じAMP92で駆動できる。また、モータステータ30B及び30Bは、同じ電気角で配置されることから、同じAMP92で駆動できる。このように複数のモータステータ30A、30A、30B及び30Bは、励磁コイル31を備えるステータコア31A、31Bを複数含み、当該励磁31コイルのそれぞれに電力を供給する複数のAMP92駆動される。複数のモータステータ30A、30A、30B及び30Bのうち、2つのモータステータ30A及び30Aは、モータステータ30B及び30Bとは異なるAMP92で駆動される。そして、モータステータ30A及び30Aが同じ電気角であり、モータステータ30B及び30Bが同じ電気角であることから、モータステータの総数をSnとした場合、Sn=2に相当し、上記式(1)のθeで表す電気角で位相をずらして配置されている。このため、モータ1は、複数のモータステータ30A、30B間に電気角のずれがあっても各々のモータステータ30A、30Bの通電タイミングに応じたモータ電流を流せるので、滑らかな回転を得ることができる。
【0071】
実施形態5において、Snが2であり、θeで表す電気角は、90°である。磁対数は、48である場合、電気角を機械角に換算すると、機械角は、電気角を磁対数で除した値、すなわち、90°/48=1.875°になる。一方、モータ1の磁極は96極であり、電気角1周期は、機械角で、360°を極対数48で除した値、つまり360°/48=7.5°になる。モータステータ30Aとモータステータ30Bとは、7.5°×n+1.875°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−1.875°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することができる。実施形態5に係るモータ1Dは、回転中心Zrをできるだけ機台表面51fに近づけるように、n=12とし、モータステータ30Aから機械角で91.875°の位相関係でモータステータ30Bを離して配置している。
【0072】
このため、モータステータ30Aとモータステータ30Bとは、
図10に示す電気角1周期内に2周期生じるステータコア端部に起因して生ずるコギングトルクがある。モータステータ30Aとモータステータ30Bとは、7.5°×n+1.875°(但し、nは自然数)又は7.5°×n−1.875°(但し、nは自然数)を満たす、任意の位相関係で配置することにより、ステータコア31A端部に起因して生じるコギングトルク30Aと、ステータコア31B端部に起因して生じるコギングトルク30Bとを相殺し合成トルクWSが低減することで、滑らかな回転を得ることができる。
【0073】
なお、実施形態5に係るモータ1Dは、実施形態5に係るモータ1Aに比べて、モータベース20の配置上、機台取付部22寄りにモータステータを偏らせて配置し、機台51から離れた部位にかかるモータステータの質量が小さくなるようにすることで、
図3に示す面倒れ方向Fvの慣性を抑制することができる。
【0074】
(適用例)
図20は、本実施形態のモータの適用される光学機器を説明する説明図である。実施形態1〜5に係るモータ1、1A、1B、1C及び1Dは、3次元スキャナとよばれる光学機器又は、特許文献2に記載の医療機器に適用できる。例えば、3次元スキャナ100は、被測定物の3次元形状を測定する光学機器であり、実施形態1に係るモータ1と、機台51と、機台51の昇降装置52と、モータ1の上述したモータロータ10と共に回転する光学ヘッド102とを備えている。このように、モータ1は、片持ちで機台に固定されても、面倒れ方向の慣性を抑制できる。