特許第6221396号(P6221396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221396
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20171023BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20171023BHJP
   G02B 27/01 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   G01C21/36
   B60R16/02 640K
   !G02B27/01
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-130721(P2013-130721)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4612(P2015-4612A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】中島 英信
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭一郎
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−121031(JP,A)
【文献】 特開2010−127685(JP,A)
【文献】 特開2011−218891(JP,A)
【文献】 特開平08−011580(JP,A)
【文献】 特開2009−023651(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0249589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 21/36
G08G 1/00 − 1/16
B60R 16/02
B60K 35/00
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の経路誘導を行うためのヘッドアップディスプレイ装置であって、
運転席前方のインストルメントパネル上面からドライバ視野内に立設された横長かつ略矩形の表示部を含む情報表示手段と、
車速情報と、車両に搭載されるナビゲーション装置で算出される前記経路誘導に関する情報とを取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した情報に基づき前記表示部に情報を表示させる情報表示制御手段と、を含み、
前記表示部は、前記車速情報と、誘導経路内の交差点であって次に曲がる交差点である対象交差点における進行方向を示す単一図形からなる進行方向情報と、複数の走行レーンを示す図形であって当該走行レーンのうち推奨走行レーンを特定可能な図形からなる推奨走行レーン情報と、を含む複数の情報の中から選択された所定の情報を表示可能であり、
前記情報表示制御手段は、前記対象交差点から現地点までの残距離が第1設定値になると、前記進行方向情報を前記表示部に表示させることなく、前記表示部における上側の領域に前記推奨走行レーン情報を、下側の領域に前記車速情報をそれぞれ表示させ、前記残距離が前記第1設定値よりも短い第2設定値になると、前記推奨走行レーン情報を前記表示部に表示させることなく、前記表示部における左右一方側の領域に前記進行方向情報を、左右他方側の領域に前記車速情報をそれぞれ表示させる、ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
記情報表示制御手段は、前記残距離が前記第2設値以下になると、前記表示部における車両内側の領域に前記進行方向情報を車両外側の領域に前記車速情報をそれぞれ表示させる、ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記情報表示制御手段は、車速が特定速度よりも速いときには、当該特定速度よりも遅いときに比べて、前記推奨走行レーン情報の表示を前記対象交差点からより離れた地点から開始させることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記推奨走行レーン情報の複数の走行レーンを示す図形は、前記複数の走行レーンに各々対応しかつ横方向に並列に並ぶ複数の矢印であり、前記進行方向情報は、進行方向を示す単一の矢印であることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行速度や進行方向を示す矢印などの情報を表示部に投影してドライバに視認させることにより、運転支援を行うヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置に表示されるナビゲーション情報の一部を、ヘッドアップディスプレイ装置により運転席前方に表示することにより、運転者がモニタ上の道路地図を見る余裕がない場合でも、経路誘導を可能とする情報表示装置が知られている。例えば特許文献1には、運転席前方のダッシュボード上に設置される補助ディスプレイに、走行速度や進行方向を示す矢印などの情報を表示する情報表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010―127685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される従来の情報表示装置には次のような課題がある。すなわち、この情報表示装置では、車両が交差点から離れたところを走行しているときには、進行方向を示す矢印と走行速度とが上下に並べて表示され、交差点が近づいてくると、前記矢印の上側に、順次、推奨走行レーンを案内する矢印や交差点名称といった新たな情報が追加される。この場合、表示領域は一定であるため、新たな情報が追加されることで、多数の情報が上下に圧縮されるように狭間隔で表示される。従って、肝心の交差点付近では、表示全体が煩雑なものとなり、経路誘導を円滑に行う上で必ずしも見易いものとは言えなかった。特に、進行方向を示す矢印や推奨走行レーンを案内する矢印が同時に表示されることで、ドライバが戸惑うことも考えられる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、より見易く良好に経路誘導を行うことが可能なヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、出願人は、鋭意検討を重ねた結果、ヘッドアップディスプレイ装置により経路誘導を行う場合、多くの情報を狭い範囲に表示すると、却って情報取捨の煩わしさが生じて良好な経路誘導が妨げられるとの知見を得た。要するに、少ない情報であっても、その情報を適切なタイミングで、かつドライバの注意を喚起できる態様で表示する方が、情報取捨の煩わしさがなくなり、経路誘導する上で有効であるとの知見を得た。本発明は、係る知見に基づくものである。すなわち、本発明は、車両の経路誘導を行うためのヘッドアップディスプレイ装置であって、運転席前方のインストルメントパネル上面からドライバ視野内に立設された横長かつ略矩形の表示部を含む情報表示手段と、車速情報と、車両に搭載されるナビゲーション装置で算出される前記経路誘導に関する情報とを取得する情報取得手段と、前記情報取得手段が取得した情報に基づき前記表示部に情報を表示させる情報表示制御手段と、を含み、前記表示部は、前記車速情報と、誘導経路内の交差点であって次に曲がる交差点である対象交差点における進行方向を示す単一図形からなる進行方向情報と、複数の走行レーンを示す図形であって当該走行レーンのうち推奨走行レーンを特定可能な図形からなる推奨走行レーン情報と、を含む複数の情報の中から選択された所定の情報を表示可能であり、前記情報表示制御手段は、前記対象交差点から現地点までの残距離が第1設定値になると、前記進行方向情報を前記表示部に表示させることなく、前記表示部における上側の領域に前記推奨走行レーン情報を、下側の領域に前記車速情報をそれぞれ表示させ、前記残距離が前記第1設定値よりも短い第2設定値になると、前記推奨走行レーン情報を前記表示部に表示させることなく、前記表示部における左右一方側の領域に前記進行方向情報を、左右他方側の領域に前記車速情報をそれぞれ表示させるものである。
【0007】
このヘッドアップディスプレイ装置では、対象交差点から適度に離れた位置では、推奨走行レーン情報と車速情報とが表示され、対象交差点に接近すると、推奨走行レーン情報が消えて、この推奨走行レーン情報の代わりに進行方向情報が表示される。この構成によれば、推奨走行レーン情報に対して進行方向情報が追加的に表示されるのではなく、経路誘導のための情報そのものが推奨走行レーン情報から進行方向情報に切り替わることで、ドライバの注意を喚起し易くなる。また、情報取捨の煩わしさがなくなり、ドライバが戸惑うとった不都合も解消される。
【0009】
より詳しくは、まず表示部における上側の領域に推奨走行レーン情報が、下側の領域に車速情報がそれぞれ表示されると、ドライバの注視点に近い位置に推奨走行レーン情報が表示されることで、ドライバは、対象交差点はまだ先であるが、時間的(距離的)にそろそろ準備をする必要があるという印象を受ける。そのため、走行レーンの変更等を心理的に促すことができる。そしてその後、表示部における左右一方側の領域に進行方向情報が表示され、左右他方側の領域に車速情報が表示されることで、つまり、経路誘導のための情報とその表示位置(表示レイアウト)とが同時に切り替わることで、ドライバは、対象交差点が間近であるという印象を強く受けることとなる。従って、より効果的にドライバの注意を喚起することができ、経路誘導をより円滑に行うことが可能となる。
ここで、本発明における表示部は、フロントガラスとは別に、インストルメントパネル上面に立設されるものであるから、フロントガラス等との関係で、表示領域の大きさが制限され易い。これに対し、本発明では、少ない情報で、よりドライバの注意を喚起しながら経路誘導を行えるので、非常に有用である。
【0010】
上記ヘッドアップディスプレイ装置において、前記情報表示制御手段は、前記残距離が前記第2設定値以下になると、前記表示部における車両内側の領域に前記進行方向情報を、車両外側の領域に前記車速情報をそれぞれ表示させるのが好適である。
【0011】
さらに、上記ヘッドアップディスプレイ装置において、前記情報表示制御手段は、車速が特定速度よりも速いときには、当該特定速度よりも遅いときに比べて、推奨走行レーン情報の表示を前記対象交差点からより離れた地点から開始させるものであるのが好適である。
この構成によれば、車両の車速に応じたより適切なタイミングで推奨走行レーン情報の表示を開始することが可能となり、円滑な経路誘導を行う上で有利となる。
【0013】
また、上記ヘッドアップディスプレイ装置において、例えば前記推奨走行レーン情報の複数の走行レーンを示す図形は、前記複数の走行レーンに各々対応しかつ横方向に並列に並ぶ複数の矢印であり、前記進行方向情報は、進行方向を示す単一の矢印であるのが好適である。
【0014】
このような構成によれば、直感的に経路誘導を行うことができることに加え、推奨走行レーン情報から進行方向情報へ切り替わる際に矢印の数が減少して一つになることで、ドライバの注意を喚起し易くなる。そのため、円滑な経路誘導を行う上でより有利となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置によれば、比較的少ない情報でドライバの注意を効果的に喚起することが可能であり、これにより経路誘導をより良好に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のヘッドアップディスプレイ装置が搭載された車両のインストルメントパネル周辺を示す斜視図である。
図2図1に示したインストルメントパネルの断面図である。
図3】ヘッドアップディスプレイ装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】ヘッドアップディスプレイ装置が表示する情報の種類とその優先順位を示す表である。
図5】ヘッドアップディスプレイ装置の情報表示制御の一例を示すフローチャートである。
図6】表示領域の表示レイアウトおよび優先順位を示すサブディスプレイの模式図であり、(a)は、対象交差点から900m又は600m以上手前の地点、(b)は、対象交差点から900m又は600mの地点を過ぎた地点、(c)は、対象交差点から300mの地点を過ぎた地点の表示レイアウトおよび優先順位をそれぞれ示す。
図7】(a)、(b)は、対象交差点から900m又は600m以上手前の地点のサブディスプレイの表示状態を示す模式図である。
図8】(a)は、対象交差点から900m又は600mの地点を過ぎたときのサブディスプレイの表示状態を示す模式図であり、(b)は、対象交差点から300mの地点を過ぎたときのサブディスプレイの表示状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0018】
図1は、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置が搭載された車両のインストルメントパネル周辺を示す斜視図である。図1に示すように、車室1の前部には、車幅方向に延びるインストルメントパネル2が設けられている。また、インストルメントパネル2の車幅方向中央部から車室1の後部に向かって、コンソール部4が延設されている。さらに、インストルメントパネル2の運転席側の側面に設けられた開口に図外のコラムシャフトが挿通されており、このコラムシャフトにステアリングホイール6が取り付けられている。
【0019】
インストルメントパネル2の車幅方向中央部の上面には、液晶画面を備えたセンターディスプレイ10が設けられている。また、インストルメントパネル2の運転席側(図1における左側)の側面には、メータユニット8が設けられている。さらに、インストルメントパネル2の運転席側の上面には、前記センターディスプレイ10とは別に、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置12の後記ディスプレイ20が設けられている。
【0020】
コンソール部4の上面には、車両の変速機の変速操作を行うためのシフトレバー16、及び後記ナビゲーション装置42(図3に示す)やクルーズコントロール機能等の各種車載機能に関する操作を行うためのダイヤルスイッチ18が設けられている。なお、図示を省略しているが、ステアリングホイール6には、ナビゲーション装置42やクルーズコントロール機能等の操作を行うためのステアリングスイッチ等が設けられている。
【0021】
次に、ヘッドアップディスプレイ装置12の構成について図2を用いて説明する。図2は、図1に示したインストルメントパネル2の断面図である。
【0022】
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置12は、インストルメントパネル2の上面からドライバの運転視野内に立設されるディスプレイ20(以下、センターディスプレイ10と区別するためにサブディスプレイ20と称す)と、インストルメントパネル2の内部に設置され、サブディスプレイ20に画像を投影するプロジェクタ22と、サブディスプレイ20を駆動するモータユニット24とを備えている。当例では、サブディスプレイ20は本発明の表示部に相当し、当該サブディスプレイ20及び前記プロジェクタ22が本発明の情報表示手段に相当する。
【0023】
サブディスプレイ20は、平面形状がほぼ台形の平板状のハーフミラーであり、回動軸を介してインストルメントパネル2の上面に回動自在に取り付けられている。前記プロジェクタ22の前方側には、このサブディスプレイ20を回転駆動する前記モータユニット24が設けられており、このモータユニット24により、サブディスプレイ20は、インストルメントパネル2の上面から上方に起立してドライバに情報を表示する表示位置(図2中に実線で示す位置)と、インストルメントパネル2の上面に沿って倒れた非表示位置(図2中に二点鎖線で示す位置)とに亘って変位可能になっている。モータユニット24は、車両のイグニッション(IGN)がオンにされると、サブディスプレイ20を表示位置に起立させ、イグニッションがオフにされると、サブディスプレイ20を非表示位置に収納する。
【0024】
車両運転中のドライバがサブディスプレイ20を視認する際の目線や焦点の移動を抑制するため、サブディスプレイ20は、ドライバの視点から可能な限り遠い位置に配置することが望ましい。具体的には、本実施形態によるサブディスプレイ20は、メータユニット8の表示面8aよりも車両前方に配置されている。この場合、インストルメントパネル2の上面とフロントウィンドウ3との間の狭いスペースにサブディスプレイ20を立設せざるを得ないことから、サブディスプレイ20は、アスペクト比がほぼ1:2程度の横長台形状で、その面積は30cm以上80cm以下、好ましくは45cm以上60cm以下に形成されている。
【0025】
図3は、ヘッドアップディスプレイ装置12の電気的構成をブロック図で示している。この図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置12は、サブディスプレイ20、プロジェクタ22、モータユニット24に加えて、サブディスプレイ20の表示等を統括的に制御するコントローラユニット30を備えている。
【0026】
コントローラユニット30は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であり、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばROMやRAM等、プログラム及び各種データを格納するメモリと、電気信号の入出力のための入出力(I/O)バスとを備えている。コントローラユニット30は、例えばCAN(Controller Area Network)等の車載ネットワーク40に接続されており、当該車載ネットワーク40を介してナビゲーション装置42等と通信可能となっている。
【0027】
本発明に関連する範囲内で説明すると、コントローラユニット30は、その機能構成として、情報取得部32、表示情報選択部34、表示制御部36及びディスプレイ制御部38等を含んでいる。
【0028】
情報取得部32は、サブディスプレイ20に表示するための各種情報を取得するものであり、車載ネットワーク40を介しナビゲーション装置42等から種々の情報を取得する。表示情報選択部34は、前記情報取得部32が取得した情報に応じてサブディスプレイ20に表示すべき情報を決定するとともに、その優先順位を特定するものである。表示制御部36は、表示情報選択部34が決定した表示すべき情報および優先順位に基づき、当該情報をサブディスプレイ20の所定位置に表示すべくプロジェクタ22に制御信号を出力するものである。なお、当例では、表示情報選択部34および表示制御部36が本発明の情報表示制御手段に相当する。
【0029】
前記ディスプレイ制御部38は、サブディスプレイ20の位置を制御するものであり、車載ネットワーク40を通じて入力される、イグニッション(IGN)のオンオフ信号に応じて、サブディスプレイ20の位置を表示位置と非表示位置との間で切り替えるべく、前記モータユニット24に制御信号を出力する。
【0030】
なお、前記ナビゲーション装置42は、周知の通り、GPS信号、走行速度およびジャイロセンサ出力等に基づき車両の現在地点を検出し、検出された現在地から、ドライバ等により特定された目的地までの誘導経路を算出し、この誘導経路を地図情報と共にセンターディスプレイ10上に表示するものである。また、誘導経路に沿ってドライバを誘導するための各種情報を算出してセンターディスプレイ10上に表示する。なお、当例では、誘導経路や、経路誘導のための各種情報など、ナビゲーション装置42において算出される情報が本発明の「経路誘導に関する情報」に相当する。
【0031】
前記ヘッドアップディスプレイ装置12は、このようにナビゲーション装置42において算出される情報(経路誘導に関する情報)を取得することにより、ドライバがセンターディスプレイ10上の情報を見る余裕がない場合でも、経路誘導が可能となるようにサブディスプレイ20上に補助的に情報を表示するものである。
【0032】
ここで、サブディスプレイ20に表示させる情報の種類及び各情報を表示する優先順位について図4を用いて説明する。
【0033】
図4に示すように、サブディスプレイ20に表示される情報の種類には、原則として常時表示される基本情報と、ナビゲーション情報(ナビ情報)と、ドライバへの警告を示す警告情報と、車両状態を示す車両状態情報とが含まれる。
【0034】
基本情報は、車両の運転時にドライバが視認する頻度の高い情報である。例えば、車両の「車速(現在速度)」が基本情報に該当する。車速は、ドライバによる視認頻度の高い情報であるため、ドライバが何時でも確認できるようにサブディスプレイ20に常時表示される。コントローラユニット30(情報取得部32)は、この情報を車両のECU(Electronic Control Unit)又はナビゲーション装置42から取得する。
【0035】
ナビゲーション情報は、誘導経路に沿ってドライバを誘導するための情報である。具体的には、「レーンガイド」、「進行方向ガイド」および「残距離」がナビゲーション情報に該当する。レーンガイド(本発明の推奨走行レーン情報に相当する)は、複数の走行レーンがある場合に、誘導経路との関係で推奨される走行レーンを特定する情報である。進行方向ガイド(本発明の進行方向情報に相当する)は、交差点における進行方向を特定する情報である。残距離は、誘導経路上の交差点であって次に曲がる交差点(以下、対象交差点という)までの距離を特定する情報である。ナビゲーション情報は、ドライバがナビゲーション装置42によるセンターディスプレイ10上の情報を見る余裕がない場合でも、ドライバが誘導経路を把握して運転操作を行うために必要な情報であることから、適切なタイミングでサブディスプレイ20に表示される。このナビゲーション情報は、ナビゲーション装置42において算出される上記経路誘導に関する情報に含まれており、従って、コントローラユニット30(情報取得部32)は、この情報をナビゲーション装置42から取得する。
【0036】
車両状態情報は、車両の状態を必要に応じてドライバに把握させるための情報である。例えば、アクティブセーフティシステム(車線逸脱警報機能、前方車両追従走行機能、車間距離認知支援機能等)のステータスや、これらの機能により検出された車両の動作状態を示す情報が車両状態情報に該当する。コントローラユニット30(情報取得部32)は、この車両状態情報を、図外のアクティブセーフティシステムから取得する。
【0037】
警告情報は、車両に関するトラブルや事故の危険性をドライバに警告するための情報である。例えば、アクティブセーフティシステムによる警告(車線逸脱警告、前方衝突警告、自動ブレーキ作動警告等)が、警告情報に該当する。コントローラユニット30(情報取得部32)は、この警告情報をアクティブセーフティシステムから取得する。
【0038】
図4に示す各情報のうち、警告情報は、警告をドライバに迅速且つ確実に認識させる必要があることから、全ての情報の中で最も優先順位が高い。また、ナビゲーション情報は、ドライバの運転操作(例えば交差点の右左折)に直結する情報であり、確実にドライバに視認させる必要があることから、ナビゲーション情報は警告情報に次いで優先順位が高い。また、基本情報はドライバによる視認頻度が高く常時表示の必要があることから、基本情報はナビゲーション情報に次いで優先順位が高い。車両状態情報は、車両の状態の変化に応じて時々刻々変化する情報であるが、ドライバが確認できればよいレベルのものであることから、全ての情報の中で最も優先順位が低い。すなわち、図4に示すように、各情報の優先順位は、警告情報、ナビゲーション情報、基本情報、車両状態情報の順に高い(図4において、「1」が最も優先順位が高く、「4」が最も優先順位が低い)。
【0039】
次に、ヘッドアップディスプレイ装置12における情報表示制御の一例について図5のフローチャートに従って説明する。
【0040】
図5に示す情報表示制御は、車両のイグニッションがオンにされ、ヘッドアップディスプレイ装置12に電源が投入された場合に起動され、繰り返し実行される。この制御が開始されると、まず、情報取得部32が、サブディスプレイ20の表示を行うために各種情報を取得する(ステップS1)。具体的には、情報取得部32は、基本情報(車速)をECUから取得し、車両状態情報をアクティブセーフティシステムから取得し、ナビゲーション情報をナビゲーション装置42から取得し、警告情報をアクティブセーフティシステムから取得する。ここで、情報取得部32は、基本情報(車速)については常に取得するが、その他の情報(車両状態情報、ナビゲーション情報、警告情報)については、これらの情報がアクティブセーフティシステムやナビゲーション装置42から出力(算出)された場合にのみ取得する。
【0041】
次に、表示情報選択部34は、情報取得部32が取得した情報にナビゲーション情報が含まれるか否かを判定し(ステップS3)、YESと判定した場合には、現在地から対象交差点までの残距離Dが予め設定された第1設定距離D1以下か否かを判定する(ステップS5)。当例では、この第1設定距離D1が本発明の第1設定値であり、例えば900mに設定されている。
【0042】
ステップS5およびステップS3の処理において、表示情報選択部34がNOと判定した場合には、表示情報選択部34は、情報取得部32が取得した情報のうち、ナビゲーション情報を除く他の情報をその優先順位に従ってサブディスプレイ20に表示させ(ステップS17)、当該情報表示制御の処理をステップS1に移行する。
【0043】
すなわち、表示情報選択部34が、図4に示した表に基づき各情報の優先順位を特定し、各情報がそれらの優先順位に従ってサブディスプレイ20上の所定位置に表示されるように、表示制御部36がプロジェクタ22に制御信号を出力する。この場合、表示制御部36は、図6(a)に示すように、サブディスプレイ20の表示領域を、上側の第1領域20aと、下側かつ車両内側(左ハンドル車における車両右側)の第2領域20bと、下側かつ車両外側(左ハンドル車における車両左側)の第3領域20cの3つの領域に分割する。そして、優先順の高い情報が第1領域20aから順に表示されるようにサブディスプレイ20に制御信号を出力する。なお、図6(a)中の丸付き数字は、サブディスプレイ20の各領域の優先順位を示している(図6(b)、(c)も同じである)。
【0044】
これにより、例えば表示対象が基本情報(速度)のみの場合には、図7(a)に示すように、第1領域20aの中央に基本情報が表示される。また、表示対象が基本情報(速度)と車両状態情報(例えば車線逸脱警報機能のステータス)の場合には、図7(b)に示すように、優先順位の高い基本情報が第1領域20aに表示され、それより優先順位の低い車両状態情報が第2領域20bに表示される。この場合、表示制御部36は、同図に示すように、第1領域20aのうち、車両外側寄りの位置(第3領域20cの上方)に基本情報が表示されるように、表示制御部36に制御信号を出力する。つまり、上下の情報を車幅方向に互いにずらすことで、情報の視認性を向上させるようになっている。なお、表示される文字や図形は、コントローラユニット30内の図外の記憶部に記憶されており、情報取得部32が取り込んだ情報に基づき、表示制御部36が適切な文字や図形を選択した上でサブディスプレイ20に表示せる。
【0045】
一方、ステップS5でYESの場合、すなわち、現在地から対象交差点までの残距離Dが第1設定距離D1以下である場合には、表示情報選択部34は、車両の現在の速度Sが設定速度S1以上か否かを判定する(ステップS7)。当例では、この設定速度S1は、例えば70km/hである。
【0046】
ここで、NOと判定した場合には、表示情報選択部34は、現在地から対象交差点までの残距離Dが第2設定距離D2以下か否かを判定する(ステップS8)。当例では、この第2設定距離D2は例えば600mである。
【0047】
ステップS7およびステップS8でYESと判定した場合には、表示情報選択部34は、さらに、残距離Dが第3設定距離D3以下か否かを判定する(ステップS9)。当例では、この第3設定距離D3が本発明の第2設定値であり、例えば300mに設定されている。
【0048】
ここでYESと判定した場合には、表示情報選択部34は、情報取得部32が取得した情報のうち、優先順位の高いものから順に2つの情報を選択し、表示制御部36を介してこの2つの情報をサブディスプレイ20に表示させる(ステップS11)。従って、情報取得部32がアクティブセーフティシステムから警告情報を取得していない限り、このステップS11の処理では、基本情報(車速)およびナビゲーション情報のみがサブディスプレイ20に表示されることになる。この場合、表示情報選択部34は、情報取得部32が取得したナビゲーション情報のうち、レーンガイドのみを選択する。
【0049】
なお、ステップS11の処理では、表示制御部36は、サブディスプレイ20の表示レイアウトを、図6(a)の表示レイアウトから図6(b)の表示レイアウトに変更する。具体的には、表示制御部36は、サブディスプレイ20の表示領域を、上側の第1領域20dと下側の第2領域20eの上下半分に分割し、図8(a)に示すように、優先順位の高いナビゲーション情報(レーンガイド)を第1領域20dに表示させ、基本情報(車速)を第2領域20eに表示させる。この場合、表示制御部36は、レーンガイドとして、第1領域20dを広く使って、複数の走行レーンを示す図形であって当該走行レーンのうち推奨レーンを特定可能な図形を表示させる。例えば図8(a)に示すように、複数の走行レーンに各々対応して横方向に並列に並ぶ複数の矢印を表示させるとともに、これら矢印のうち、推奨レーンを黒塗り矢印で表示させる。つまり、同図の例では、右側2つの矢印が推奨レーンを示す。
【0050】
こうして、残距離Dが第3設定距離D3以下になるまでステップS11の処理を繰り返し、残距離Dが第3設定距離D3以下になると(ステップS9でYES)、表示情報選択部34は、情報取得部32が取得したナビゲーション情報のうち進行方向ガイドおよび残距離を選択し、サブディスプレイ20に表示されるナビゲーション情報をレーンガイドから進行方向ガイドおよび残距離に変更する(ステップS13)。これと同時に、表示制御部36は、サブディスプレイ20の表示レイアウトを、図6(b)の表示レイアウトから図6(c)の表示レイアウトに変更する。具体的には、表示制御部36は、サブディスプレイ20の表示領域を、車両内側の第1領域20fと車両外側の第2領域20gの左右半分に分割し、図8(b)に示すように、優先順位の高いナビゲーション情報(進行方向ガイドおよび残距離)を第1領域20fに表示させ、基本情報(車速)を第2領域20gに表示させる。
【0051】
この場合、表示制御部36は、進行方向ガイドとして、同図に示すように、第1領域20fを広く使って、進行方向を示す単一の矢印を表示させた上で、その下側に残距離を示す文字を表示させる。
【0052】
その後、表示情報選択部34は、車両が対象交差点を通過したか否かを判定し(ステップS15)、ここで、YESと判定した場合には、当該情報表示制御の処理をステップS1にリターンする。
【0053】
なお、図5のフローチャート中には示されていないが、情報取得部32が取得した情報に警告情報が含まれており、表示情報選択部34がこの警告情報を選択すると、表示情報選択部34は予め設定さたテーブルに従って当該情報の重要度を判定する。そして、最も重要度の高い警告情報が選択されている場合には、表示制御部36は、他の情報を表示することなく、サブディスプレイ20の表示領域全体に当該警告情報を表示する。例えば、車線逸脱警報機能の作動中に車両が斜線から逸脱すると、車線逸脱警告を示す画像がサブディスプレイ20の表示領域全体に表示されている。
【0054】
以上のような、ヘッドアップディスプレイ装置12における情報表示制御について、特に、情報取得部32がナビゲーション情報を取得している場合のサブディスプレイ20の表示についてまとめると以下の通りである。
【0055】
まず、現在地から対象交差点までの残距離Dが第1設定距離D1(900m)を超えている場合には、サブディスプレイ20には、ナビゲーション情報は表示されず、図7(a)又は図7(b)に示したように、基本情報(速度)や車両状態情報(車線逸脱警報機能等のステータス)が表示される。
【0056】
そして、車両の速度Sが設定速度S1(70m/h)以上の場合には、残距離Dが第1設定距離D1(900m)以下になった地点で、又車両の速度Sが設定速度S1(70m/h)未満の場合には、残距離Dが第2設定距離D2(600m)以下になった地点で、それぞれサブディスプレイ20にナビゲーション情報が表示され始める。この場合には、図8(a)に示したように、ナビゲーション情報としてレーンガイドのみがサブディスプレイ20の上側に表示され、その下側に基本情報である速度が表示される。このような表示が、残距離Dが第3設定距離D3(300m)以下になるまで継続される。
【0057】
そして、さらに車両が対象交差点に接近し、残距離Dが第3設定距離D3(300m)以下になると、ナビゲーション情報の表示がレーンガイドから進行方向ガイドおよび残距離に切り替わり、これと同時に、サブディスプレイ20の表示レイアウトが上下分割から左右分割に切り替わる。この場合、図8(c)に示したように、サブディスプレイ20の内側(車両内側の領域)に進行方向ガイドおよび残距離が表示され、外側(車両外側の領域)に基本情報である速度が表示される。そして、このような表示が、車両が対象交差点を通過するまで継続される。
【0058】
以上のように上記のヘッドアップディスプレイ装置12では、対象交差点からある程度は離れた地点(残距離Dが第3設定値を超え第1又は第2設置値以下)では、基本情報である速度と、ナビゲーション情報のうちレーンガイドのみがサブディスプレイ20に表示され、車両がより対象交差点に接近すると(残距離Dが第3設定値以下)、レーンガイドが消え、当該レーンガイドに代えて進行方向ガイドがサブディスプレイ20に表示される。
【0059】
このようなサブディスプレイ20の表示によれば、非常に多くの情報が同時に表示部に表示される従来装置(背景技術の特許文献1)のような情報取捨の煩わしさがない。また、レーンガイドに対して進行方向ガイドが追加的に表示されるのではなく、ナビゲーション情報そのものがレーンガイドから進行方向ガイドに切り替わるので、ドライバの注意をより喚起し易くなることに加え、多数のナビゲーション情報が同時に表示されることによってドライバが戸惑うとった不都合も解消される。また、レーンガイドや進行方向ガイドを、狭い表示領域を可及的に広く使って大きく表示することができため、この点でも、ドライバの注意を喚起し易くなるという利点がある。
【0060】
特に、上記ヘッドアップディスプレイ装置12では、まず、サブディスプレイ20の表示領域のうち、上側にレーンガイドを、下側に速度をそれぞれ表示しておき(図8(a))、その後、対象交差点に近づくと、ナビゲーション情報をレーンガイドから進行方向ガイドに切り替えるとともに、これと同時、表示レイアウトを上下レイアウトから左右レイアウトに切り替える(図8(b))ので、ドライバの注意を効果的に喚起しながら円滑に経路誘導を行うことが可能となる。すなわち、上記のような表示形態によれば、まず、ドライバの注視点に近いサブディスプレイ20の上側の領域にレーンガイドが表示されることで、ドライバは、対象交差点はまだ先であるが、時間的(距離的)にそろそろ準備をする必要があるという印象を受ける。そのため、走行レーンの変更等を心理的に促すことができる。そしてその後、ナビゲーション情報の内容とその表示位置(表示レイアウト)とが同時に切り替わることで、ドライバは、対象交差点が間近であるという印象を強く受けることとなる。従って、このヘッドアップディスプレイ装置12によれば、サブディスプレイ20に表示されるレーンガイドや進行方向ガイドに対するドライバの注意を効果的に喚起することができ、これにより、ドライバの経路誘導をより円滑に行うことが可能となる。
【0061】
また、上記ヘッドアップディスプレイ装置12によれば、車両の速度に応じて、レーンガイドがサブディスプレイ20に表示されるタイミングが切り替えられる(レーンガイドが表示され始める地点が切り替えられる)。具体的には、車速が設定速度S1(70km/h)以上の場合には、それ未満の場合より一定の距離(300m)だけ手前の地点からレーンガイドが表示され始める。従って、車速によって、レーンガイドの表示開始タイミングが早すぎたり、遅すぎたりするといった不都合を抑制することができ、この点でも、円滑な経路誘導に寄与するという利点がある。
【0062】
なお、上記の説明では言及していないが、サブディスプレイ20に表示される文字・数字の大きさは、図7及び図8に示すように、表示領域が変わっても一定となるように、表示制御部36によって制御される。これは、表示領域によって文字・数字の大きさが変わることで、その文字・数字の有する意味内容が変わったのかとドライバが困惑することを避けるためである。
【0063】
ところで、以上説明した車両用情報表示装置は、本発明に係る車両用情報表示装置の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態のヘッドアップディスプレイ装置12は、インストルメントパネル2の上面には立設されるディスプレイ20(ハーフミラー)を表示部として、当該サブディスプレイ20に情報を表示するものであるが、例えばヘッドアップディスプレイ装置12は、フロントウィンドウ3の一部を表示部として、当該フロントウィンドウ3に情報を表示するタイプのものであってもよい。
【0065】
また、図8(a)、(b)に示したレーンガイドや進行方向ガイドの図形は、あくまでも実施形態の例示であって同図のものに限定されるものではく適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
12 ヘッドアップディスプレイ装置
20 サブディスプレイ
22 プロジェクタ
24 モータユニット
30 コントローラユニット
32 情報取得部
34 表示情報選択部
36 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8