(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体素子の発熱時の前記第3電極と前記第2電極との間の前記第4電圧は、前記第3電極と前記第2電極との間に対する前記半導体素子を発熱させる前記電流の通電開始から通電終了までの電圧の平均である、
ことを特徴とする請求項7記載の熱抵抗計測方法。
前記半導体素子の発熱時の前記第3電極と前記第2電極との間の前記第4電圧は、前記第3電極と前記第2電極との間に対する前記半導体素子を発熱させる前記電流の通電時間の半分の時間が経過した時点の電圧である、
ことを特徴とする請求項7記載の熱抵抗計測方法。
第1電極と第2電極との間に印加される電圧に応じて第3電極から第2電極へ電流を流す半導体素子の発熱前後において、前記半導体素子を収納する半導体装置の外装温度を計測する外装温度計測部と、
前記半導体素子が発熱しない程度の一定の電流を通電させて、前記半導体素子の前記第3電極と前記第2電極との間の電圧が一定になるように制御された前記半導体素子の前記第1電極と前記第2電極との間の非発熱時電圧を計測する第1計測部と、
前記半導体素子の前記第1電極と前記第2電極との間に印加する電圧を一定にして前記第3電極と前記第2電極との間に前記半導体素子が発熱する一定の電流を通電させて、前記半導体素子の発熱時の前記第3電極及び前記第2電極の間の発熱時電圧を計測する第2計測部と、
前記非発熱時電圧と前記非発熱時電圧に関する温度係数とに基づき前記半導体素子の素子温度と、前記半導体素子が発熱する前記電流と前記発熱時電圧とに基づいて電力とを算出し、さらに、前記半導体素子の発熱前後の前記外装温度の変化量並びに前記素子温度の変化量と前記電力とに基づき、前記半導体素子の熱抵抗値を算出する算出部と、
を有することを特徴とする熱抵抗計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の熱抵抗計測方法では、まず、第1電極と第2電極との間に印加される電圧に応じて第3電極から第2電極へ電流を流す半導体素子を収納する半導体装置の外装温度を計測する。さらに、当該半導体素子が発熱しない程度の一定の電流を通電し、当該半導体素子の第3電極と第2電極との間の第1電圧が一定になるように第1電極と第2電極との間の第2電圧を制御して、第1電極と第2電極との間の第2電圧の温度係数に基づき半導体素子の素子温度とを計測する。
【0011】
次いで、半導体素子の第3電圧を一定にして第3電極に半導体素子が発熱する一定の電流を通電させて、半導体素子の発熱時の第3電極と第2電極との間の電力を計測する。そして、半導体素子の発熱前後の外装温度及び素子温度のそれぞれの変化量と、当該電力とに基づき熱抵抗値を算出するものである。
【0012】
このような熱抵抗計測方法について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る熱抵抗計測方法を示すフローチャートである。
図2は、第1の実施の形態に係る時間に応じて変化する電圧及び電流を示す図であり、
図2(A)は△Vgs法を、
図2(B)は△Vds法を、
図2(C)は第1の実施の形態に係る熱抵抗計測方法を利用した場合をそれぞれ示している。また、
図2では、Vgsはゲート・ソース電極間の電圧、Idはドレイン電流、Vdsはドレイン・ソース電極間の電圧のそれぞれの経時変化を示している。
【0013】
熱抵抗値の計測対象の半導体装置は、第1電極に印加される電圧に応じて第3電極から第2電極へ電流を流す半導体素子を収納している。半導体素子が、例えば、MOSFETである場合には、第1電極はゲート電極、第2電極はソース電極、第3電極はドレイン電極を、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)の場合には、第1電極はゲート電極、第2電極はエミッタ電極、第3電極はコレクタ電極をそれぞれ対応させることができる。
【0014】
以下では、半導体素子として、MOSFETを利用した場合を一例にして説明を行う。
まず、このような半導体素子を収納する半導体装置において、△Vgs法のみを利用した場合の熱抵抗計測方法について、
図2(A)を用いて説明する。
【0015】
なお、△Vgs法では半導体素子のドレイン・ソース電極間のVdsは一定(VH)とする。
半導体素子が発熱していない状態の半導体装置の外装温度(Tc0)を計測する。半導体装置の外装温度の計測は、熱電対または赤外線カメラ等により行うことができる。
【0016】
半導体素子に、当該半導体素子が発熱しない程度の微小一定電流(Im)を通電させて、この際のゲート・ソース電極間のVgsを計測して、計測したVgs(=Vm0)と、温度係数(K)とに基づき半導体素子の素子温度(Tj0)を算出する。なお、半導体素子の温度変化に対するVgsの変化率を表す温度係数(K)は予め計測並びに算出しておく。
【0017】
次いで、半導体素子に一定のId(=IH)を通電させることで、半導体素子を動作させて発熱させる。Vgsは、Vdsが一定(Va)になるように制御されており、電力PH(=IH×Va)が算出される。
【0018】
半導体素子を発熱させた後、半導体素子に通電させるIdを再び微小一定電流(Im)として、半導体装置の外装温度(Tc1)と、温度係数(K)(この際のVgsはVm1)に基づき半導体素子の素子温度(Tj1)とを計測する。
【0019】
ここで、熱抵抗値(Rth)は、一般に、次式(1)により算出することができる。
Rth(j−c)
={△Tj(=Tj1−Tj0)−△Tc(=Tc1−Tc0)}/PH・・・(1)
上記で計測した外装温度(Tc0,Tc1)、素子温度(Tj0,Tj1)並びに電力(PH)を式(1)に入力することで△Vgs法による熱抵抗値(Rth)を算出することができる。
【0020】
しかしながら、半導体素子を含む半導体装置の熱抵抗値を△Vgs法で計測する場合、特にチャネル抵抗が大きい半導体素子では、チャネル電流が流れるチャネル領域の温度が他の部分よりも上昇する。このため半導体素子内の温度分布が局所的となり、発熱時の電流の温度特性が正となるために熱抵抗測定を適切に行うことができなくなる。さらに、半導体素子内の温度分布が局所的になると、半導体素子を多並列に配置した半導体装置では半導体素子間の発熱温度が不均等になり、この場合にも適切に熱抵抗計測ができなくなる。
【0021】
次に、このような半導体素子を収納する半導体装置において、△Vgs法に代わり、△Vds法のみを利用した場合の熱抵抗計測方法について、
図2(B)を用いて説明する。
なお、△Vds法では半導体素子のゲート・ソース電極間のVgsは一定(Bgs)とする。
【0022】
△Vds法でも、半導体素子が発熱していない状態において、△Vgs法の場合と同様に、半導体装置の外装温度(Tj0)を計測する。また、△Vds法では、半導体素子が発熱しない程度の微小一定電流(Im)に対するソース・ドレイン電極間のVdsを計測して、計測したVds(=Vm0)と、温度係数(K)とに基づき半導体素子の素子温度(Tj0)を計測する。なお、この場合の温度係数(K)も予め計測並びに算出しておく。
【0023】
次いで、半導体素子に一定のId(=IH)を通電させることで半導体素子を動作させて発熱させる。この際、半導体素子の特性に応じて変化するVds(=VH)が計測されて、半導体素子の発熱時における電力PH(=IH×VH)が算出される。
【0024】
半導体素子を発熱させた後、半導体素子に通電させるIdを再びImとして、半導体装置の外装温度(Tc1)を計測し、計測したVds(=Vm1)と温度係数(K)とに基づき半導体素子の素子温度(Tj1)を算出する。
【0025】
△Vds法においても、このように計測した外装温度、素子温度並びに電力を上記の式(1)に入力することで熱抵抗値(Rth)を算出することができる。
しかし、半導体素子の熱抵抗値(Rth)を△Vds法で計測する場合、特にオン電圧が小さい半導体素子では、算出する温度係数(K)の精度が非常に悪くなる。このため、当該温度係数(K)に基づき熱抵抗測定を適切に行うことができなくなる。
【0026】
そこで、第1の実施の形態に係る熱抵抗測定方法が、
図1に示す手順並びに
図2(C)に示す電圧・電流により行われる。
まず、半導体素子の発熱前において、半導体素子を収納する半導体装置の外装温度(Tc0)を計測する(ステップS1)。
【0027】
半導体素子が発熱しない程度の微小一定電流(=Im)を通電し、半導体素子のドレイン電極(第3電極)とソース電極(第2電極)との間の第1電圧が一定になるように制御された半導体素子のゲート電極(第1電極)とソース電極(第2電極)との間の第2電圧を計測する。当該第2電圧と、第2電圧に関する温度係数とに基づき半導体素子の素子温度(Tj0)を算出する(ステップS2)。
【0028】
即ち、ステップS2では、△Vgs法を用いて、半導体素子の素子温度(Tj0)を算出する。なお、この際の温度変化に対する第2電圧の変化率を表す温度係数(K)は、予め、算出されているものとする。
【0029】
半導体素子のゲート電極(第1電極)とソース電極(第2電極)との間に印加する第3電圧を一定にしてドレイン電極(第3電極)とソース電極(第2電極)との間に半導体素子が発熱する一定の電流(IH)を通電させる(ステップS3)。
【0030】
即ち、ステップS3では、△Vgs法から切り替えて、△Vds法により半導体素子に通電させて当該半導体素子を発熱させる。
このようにして発熱した半導体素子において、半導体素子が発熱する一定の電流(IH)と、半導体素子の発熱時のドレイン電極(第3電極)及びソース電極(第2電極)の間の第4電圧(VH)とに基づいて電力(PH=IH*VH)を計測する(ステップS4)。
【0031】
電力の計測後、ドレイン電極(第3電極)に対する半導体素子が発熱する電流の通電を半導体素子が発熱しない程度の微小一定電流(Im)にして、再び、△Vgs法を用いて素子温度(Tj1)を算出し、半導体素子の発熱後の外装温度(Tc1)を計測する(ステップS5,S6)。
【0032】
最後に、半導体素子の発熱前後の外装温度の変化量(△Tc=Tc1−Tc0)並びに素子温度の変化量(△Tj=Tj1−Tj0)と、電力(PH)とに基づき、半導体装置の熱抵抗値(Rth)を算出することができる(ステップS7)。
【0033】
このような熱抵抗計測方法では、第1電極と第2電極との間に印加される電圧に応じて第3電極から第2電極へ電流を流す半導体素子の素子温度を、半導体素子が発熱しない程度の一定の電流を通電させた際の第1電極と第2電極との間の非発熱時電圧の温度係数に基づき計測するようにした。このような△Vgs法では、温度変化に対する非発熱時電圧の変化量を表す温度係数の精度が向上し、半導体素子の発熱前後の非発熱時電圧の変化量から得られる△Tjの精度が向上する。
【0034】
また、このような熱抵抗計測方法では、半導体素子の第1電極と第2電極との間に印加する電圧を一定にして第3電極と第2電極との間に半導体素子が発熱する一定の電流を通電させて、半導体素子が発熱する電流と、半導体素子の発熱時の第3電極及び第2電極の間の発熱時電圧とに基づいて電力を計測するようにした。このような△Vds法を用いて半導体素子を発熱させると、半導体素子内において温度分布が局所的になる原因となるチャネル電流の増加が抑制されて、半導体素子内全体で温度が変化するようになり、半導体素子サイズを小さく見積もる必要がなくなる。また、半導体素子を多並列に配置した半導体装置の発熱分布のばらつきを抑制することができる。
【0035】
したがって、上記の熱抵抗計測方法により半導体装置の熱抵抗を高精度に計測することができるようになる。また、不要な設計マージンを加える必要がなくなり、最適な設計を行うことができるようになる。
【0036】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、上記第1の実施の形態についてより具体的に説明を行う。
まず、第2の実施の形態に係る熱抵抗計測装置のハードウェア構成の一例について
図3を用いて説明する。
【0037】
図3は、第2の実施の形態に係る熱抵抗計測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
熱抵抗計測装置200は、計測対象である被計測モジュール100の熱抵抗値を計測する。
【0038】
被計測モジュール100は、例えば、MOSFETまたはIGBT等のスイッチング素子を含む、熱抵抗の計測対象とされるモジュール(半導体装置)である。被計測モジュール100の具体例については次の
図4で説明する。
【0039】
熱抵抗計測装置200は、例えば、
図3に示すように、制御ユニット210と、表示ユニット220、入力ユニット230、計測ユニット300を備えている。
制御ユニット210は、さらに、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)210aと、RAM(Random Access Memory)210b、HDD(Hard Disk Drive)210c、グラフィック処理部210d、入出力インタフェース210eを備えている。これらの各部はバス210fで相互に接続されている。
【0040】
CPU210aは、HDD210c等の記憶媒体に記憶された各種プログラムを実行することにより、このコンピュータ全体を統括的に制御する。
RAM210bは、CPU210aに実行させるプログラムの少なくとも一部、並びにこのプログラムによる処理に必要な各種データを一時的に記憶する。
【0041】
HDD210cは、CPU210aにより実行されるプログラム、並びにその実行に必要な各種のデータ等を記憶する。
グラフィック処理部210dには、後述する表示ユニット220が接続されている。このグラフィック処理部210dは、CPU210aからの命令に従って、表示ユニット220の表示画面上に画像を表示させる。
【0042】
入出力インタフェース210eには、後述する入力ユニット230並びに計測ユニット300が接続されている。入出力インタフェース210eは、入力ユニット230からの入力信号を、バス210fを介してCPU210aに送信する。また、入出力インタフェース210eは、CPU210aからの計測制御信号を、バス210fを介して計測ユニット300に対して通知して被計測モジュール100に対する計測を実行させる。また、入出力インタフェース210eは、計測ユニット300からの計測結果を表す信号を、バス210fを介してCPU210aに送信する。
【0043】
また、表示ユニット220は、ディスプレイ、モニタ等の表示装置であって、CPU210aからの画像情報に基づき、例えば、被計測モジュール100の熱抵抗値の計測結果等を表示することができる。
【0044】
入力ユニット230は、キーボード、マウス等の入力装置であって、ユーザからの操作入力により計測条件の設定、処理実行要求等の入力情報を受け付けて、CPU210aに通知する。
【0045】
計測ユニット300は、被計測モジュール100の熱抵抗値の計測に必要な半導体素子の素子温度、被計測モジュール100の外装温度等を計測するための手段を備えている。計測ユニット300の詳細については後述する
図5を用いて説明する。
【0046】
次に、被計測モジュール100の詳細について
図4を用いて説明する。
図4は、第2の実施の形態に係る被計測モジュールを示す図である。
なお、
図4(A)は被計測モジュール100の断面模式図、
図4(B)は被計測モジュール100が備えるMOSFET110の回路構成をそれぞれ示している。
【0047】
被計測モジュール100は、ゲート電極と、ソース電極、ドレイン電極にそれぞれ接続するゲート端子111と、ソース端子112、ドレイン端子113(
図4(B))を備えるMOSFET110が半田層130を介して回路基板120上に配置されている。
【0048】
MOSFET110は、主に、炭化シリコン(またはシリコン)により構成されており、その構成上ダイオードが内蔵される。
回路基板120は、絶縁基板120aと、絶縁基板120aの表裏面に形成された銅パターン120b,120cとにより構成されている。
【0049】
被計測モジュール100は、さらに、このようなMOSFET110が配置された回路基板120が半田層140を介して、被計測モジュール100の外装であって、例えば、銅により構成された基板150上に配置されている。
【0050】
なお、このような被計測モジュール100は、MOSFET110の表面のP点においてMOSFET110の素子温度が、基板150の裏面のQ点において被計測モジュール100の外装温度がそれぞれ計測される。
【0051】
次に、第2の実施の形態に係る熱抵抗計測装置が備える機能の一例について
図5を用いて説明する。
図5は、第2の実施の形態に係る熱抵抗計測装置が備える機能を表す機能ブロックの一例を示す図である。
【0052】
熱抵抗計測装置200が備える制御ユニット210は、少なくとも、情報保持部211と、計測制御部212、計測値取得部213、算出部214を備える。
情報保持部211は、計測ユニット300によって計測された被計測モジュール100の計測値並びに後述する算出部214で算出された算出結果を保持する。また、情報保持部211は、被計測モジュール100のMOSFET110の温度変化に対するゲート・ソース電極間の電圧の変化率を表す温度係数(K)の情報を保持する。
【0053】
計測制御部212は、計測ユニット300の被計測モジュール100に対する計測を制御する。計測制御部212は、計測ユニット300に対して、△Vgs法により被計測モジュール100の素子温度の計測を実行させ、△Vds法により被計測モジュール100にMOSFET110が発熱する電流を通電させてその際の電圧並びに電流を計測させる。計測制御部212は、計測ユニット300に対して、外装温度計測部310により被計測モジュール100の外装温度を計測させる。
【0054】
計測値取得部213は、計測ユニット300が計測した被計測モジュール100における素子温度、外装温度、電流、電圧等の計測値を計測ユニット300から受け付けて、受け付けた計測値を情報保持部211に保持させる。
【0055】
算出部214は、情報保持部211が保持する計測値に基づき、電圧を温度係数で除することにより素子温度を、電圧と電流との積により電力を、素子温度の変化量と外装温度の変化量と差を電力で除することにより熱抵抗値をそれぞれ算出する。
【0056】
なお、制御ユニット210の少なくとも計測制御部212と、計測値取得部213、算出部214は、例えば、制御ユニット210が備えるCPU210aによって所定のプログラムが実行されることにより、または、各処理を実行する回路、装置等で構成されることにより、その処理機能が実現される。
【0057】
また、計測ユニット300は、外装温度計測部310と、計測切替回路320、△Vgs計測回路330(第1計測部)、△Vds計測回路340(第2計測部)を備える。
外装温度計測部310は、被計測モジュール100のQ点(
図4参照)の温度を計測する熱電対、赤外線カメラ等の温度計測装置である。
【0058】
計測切替回路320は、任意の素子等が用いられた回路により構成されており、計測制御部212からの制御信号に基づき、被計測モジュール100に対する接続を△Vgs計測回路330、△Vds計測回路340のいずれかに切り替えて計測を実行させる。
【0059】
△Vgs計測回路330は、任意の素子等が用いられた回路により構成されており、△Vgs法により、被計測モジュール100のMOSFET110のゲート・ソース電極間の電圧を計測する。
【0060】
△Vds計測回路340は、任意の素子等が用いられた回路により構成されており、△Vds法により、被計測モジュール100のMOSFET110が発熱する電流を、当該MOSFET110に通電させて、その際のMOSFET110の電圧及び電流を計測する。
【0061】
次に、△Vgs計測回路330、△Vds計測回路340の回路構成について
図6を用いて説明する。
図6は、第2の実施の形態に係る△Vgs法及び△Vds法をそれぞれ行う計測回路の構成の一例を示す図である。
【0062】
なお、
図6(A)は、△Vgs法により計測する△Vgs計測回路330、
図6(B)は、△Vds法により計測する△Vds計測回路340をそれぞれ示している。
△Vgs計測回路330は、
図6(A)に示すように、MOSFET110のゲート端子111と、ソース端子112、ドレイン端子113(
図4(B)参照)にそれぞれ接続するゲート端子331と、ソース端子332、ドレイン端子333を備えている。
【0063】
ソース端子332とドレイン端子333との間に、MOSFET110のソース電極とドレイン電極との間にMOSFET110に電流を供給する定電流源334と、一定の電圧を印加するための電源335とを有している。
【0064】
また、△Vgs計測回路330は、ソース端子332とドレイン端子333との間に備えられており、MOSFET110のソース電極・ドレイン電極からの信号に応じてゲート電極に対して所定の電圧値となるように、ゲート端子331に電圧を印加する比較器336を有する。
【0065】
さらに、△Vgs計測回路330は、ゲート端子331とソース端子332との間に、MOSFET110のゲート電極とソース電極との間の電圧を計測する電圧計337とを有している。
【0066】
一方、△Vds計測回路330は、
図6(B)に示すように、MOSFET110のゲート端子111と、ソース端子112、ドレイン端子113にそれぞれ接続するゲート端子341と、ソース端子342、ドレイン端子343を備えている。
【0067】
△Vds計測回路330は、ドレイン端子343とソース端子342との間に、MOSFET110のドレイン電極・ソース電極との間にMOSFET110を発熱させるための電流を供給する定電流源344と、MOSFET110のドレイン電極・ソース電極との間の電圧を計測する電圧計345とを有している。
【0068】
さらに、△Vds計測回路330は、ゲート端子341とソース端子342との間に、MOSFET110のゲート電極・ソース電極との間に一定の電圧を印加するための電源346を有している。
【0069】
次に、このような構成を備える熱抵抗計測装置200により実行される被計測モジュール100の熱抵抗計測方法について
図7を用いて説明する。
図7は、第2の実施の形態に係る熱抵抗計測装置で実行される熱抵抗計測処理を示すフローチャートである。
【0070】
なお、温度係数(K)は、
図7に示すフローチャートの処理が実行される前に予め算出されるものである。このような温度係数(K)は、例えば、以下のように算出される。
△Vgs計測回路330が、MOSFET110のソース・ドレイン電極間の電圧(Vds)が20Vとなるように印加し、MOSFET110が発熱しない程度の一定の電流Im(例えば、100mA)を通電させる(
図6(A)参照)。
【0071】
△Vgs計測回路330は、このような状態において、ゲート・ソース電極間の電圧(Vgs)を変化させて、対応する温度に対する電圧(Vgs)を計測する。なお、
図6(A)には温度計測装置の記載を省略している。計測値取得部213が各電圧(Vgs)に対する温度の情報を△Vgs計測回路330から取得して、情報保持部211にそれぞれ保持させる。算出部214は、情報保持部211が保持するこのような電圧(Vgs)と当該電圧(Vgs)に対応する温度との情報に基づき、電圧(Vgs)の変化量を温度の変化量で除することで温度係数(K)を算出することができる。このような温度係数(K)は情報保持部211により保持される。
【0072】
このような事前準備が完了している熱抵抗計測装置200は、被計測モジュール100が所定位置にセットされて、ユーザの入力ユニット230に対する計測開始の操作入力を受け付ける。すると、熱抵抗計測装置200は、制御ユニット210が情報保持部211が保持する情報を適宜クリアする等の初期設定を実行して、以下の処理を開始する。
【0073】
[ステップS10] 制御ユニット210の計測制御部212は、△Vgs法による計測要求信号を計測切替回路320に通知する。
計測切替回路320は、このような信号が通知されると、被計測モジュール100に対して、△Vgs計測回路330(
図6(A))を接続し、△Vgs方法による計測を設定する。
【0074】
[ステップS20] 制御ユニット210の算出部214が、△Vgs計測回路330が計測したMOSFET110のゲート・ソース電極間の電圧(Vgs=Vm0)と温度係数(K)とに基づき、MOSFET110のP点での温度(Tj0)を算出する。
【0075】
なお、制御ユニット210の算出部214は、算出した温度(Tj0)を情報保持部211に保持させる。
また、ステップS20の処理の詳細については後述する。
【0076】
[ステップS30] 制御ユニット210の計測制御部212は、外装温度計測部310に被計測モジュール100のQ点における温度(Tc0)の計測要求を通知する。
外装温度計測部310は、被計測モジュール100のQ点における温度(Tc0)を計測し、計測した温度(Tc0)を制御ユニット210の計測値取得部213に通知する。
【0077】
計測値取得部213は、通知された温度(Tc0)の情報を情報保持部211に保持させる。
なお、ステップS30の処理順序は、後述するステップS40よりも前であれば、いつでも構わない。
【0078】
[ステップS40] 制御ユニット210の計測制御部212は、△Vds法による計測要求信号を計測切替回路320に通知する。
計測切替回路320は、このような信号が通知されると、被計測モジュール100に対する接続を△Vgs計測回路340から△Vds計測回路340(
図6(B))に切り替える。
【0079】
[ステップS50] △Vds計測回路340は、MOSFET110のゲート・ソース電極間の電圧(Vgs)に20Vを印加し、MOSFET110に一定の電流(IH=100A)を通電させて、MOSFET110を発熱させる。
【0080】
この際、制御ユニット210の算出部214は、△Vds計測回路340が計測したMOSFET110のドレイン・ソース電極間の電圧(Vds)に基づき電力(PH)を算出する。
【0081】
なお、ステップS50の処理の詳細については後述する。
[ステップS60] 制御ユニット210の計測制御部212は、△Vgs法による計測要求信号を計測切替回路320に通知する。
【0082】
計測切替回路320は、このような信号が通知されると、被計測モジュール100に対する接続を△Vds計測回路340から△Vgs計測回路330(
図6(A))に切り替える。
【0083】
[ステップS70] 制御ユニット210の算出部214が、ステップS20と同様に、△Vgs計測回路330が計測した発熱後のMOSFET110のゲート・ソース電極間の電圧(Vgs=Vm1)と温度係数(K)とに基づき、MOSFET110のP点での温度(Tj1)を算出する。
【0084】
なお、制御ユニット210の算出部214は、算出した温度(Tj1)を情報保持部211に保持させる。
また、ステップS70の処理の詳細については後述する。
【0085】
[ステップS80] 制御ユニット210の計測制御部212は、ステップS30と同様に、外装温度計測部310に発熱後のMOSFET110を含む被計測モジュール100のQ点の温度(Tc1)の計測要求を通知する。
【0086】
外装温度計測部310は、被計測モジュール100のQ点での温度(Tc1)を計測し、計測した温度(Tc1)を制御ユニット210の計測値取得部213に通知する。
計測値取得部213は、通知された温度(Tc1)の情報を情報保持部211に保持させる。
【0087】
なお、ステップS80の処理は、ステップS70の処理終了後、例えば、100μs以内にできる限り早く実行されることが望ましい。
[ステップS90] 制御ユニット210の算出部214は、情報保持部211を参照して、ステップS20,S70,S30,S80で計測・算出した素子温度(Tj0,Tj1)と、外装温度(Tc0,Tc1)、電力(PH)を式(1)に入力して、熱抵抗値(Rth)を算出する。
【0088】
算出部214は、算出した熱抵抗値(Rth)の情報を情報保持部211に保持させる。
以上のフローチャートに沿って処理を実行することにより、MOSFET110を備える被計測モジュール100の熱抵抗値(Rth)を算出することができる。
【0089】
次いで、上記のフローチャートのステップS20,S50,S70で実行される処理の詳細について
図8を用いて説明する。
図8は、第2の実施の形態に係る熱抵抗計測装置で実行される熱抵抗計測処理の詳細を示すフローチャートである。
【0090】
なお、
図8(A)は、ステップS20(発熱前のモジュールの素子温度の算出処理)及びステップS70(発熱後のモジュールの素子温度の算出処理)、
図8(B)は、ステップS50(モジュール発熱処理)のフローチャートをそれぞれ示している。また、ステップS20,S70は同じ処理が実行されるために、
図8(A)では、ステップS20,S70を併記している。
【0091】
まず、ステップS20,S70の処理について説明する。
[ステップS21,S71] △Vgs計測回路330が、MOSFET110のゲート・ソース電極間の電圧(Vgs=Vm0,Vm1)を計測する。
【0092】
△Vgs計測回路330は、計測した電圧(Vgs=Vm0,Vm1)を制御ユニット210の計測値取得部213に通知する。
計測値取得部213は、通知された電圧(Vgs=Vm0,Vm1)を情報保持部211に保持させる。
【0093】
[ステップS22,S72] 制御ユニット210の算出部214が、情報保持部211を参照して、電圧(Vgs=Vm0,Vm1)を温度係数(K)で除することで、MOSFET110のP点での温度(Tj0,Tj1)を算出する。
【0094】
算出部214は、算出した温度(Tj0,Tj1)の情報を情報保持部211に保持させる。
ステップS20,S70では、以上のフローチャートに沿って処理を実行することにより、発熱前後のMOSFET110のP点における温度(Tj0,Tj1)を算出することができる。
【0095】
次いで、ステップS50の処理について説明する。
[ステップS51] △Vds計測回路340は、MOSFET110のゲート・ソース電極間の電圧(Vgs)に20Vを印加し、MOSFET110に一定の電流(IH=100A)を通電させて、MOSFET110を動作させて発熱させる。
【0096】
△Vds計測回路340は、電流(IH=100A)の情報を制御ユニット210の計測値取得部213に通知する。
計測値取得部213は、通知された電流(IH=100A)を情報保持部211に保持させる。
【0097】
[ステップS52] △Vds計測回路340は、この時のドレイン・ソース電極間の電圧(Vds)を計測する。
△Vds計測回路340は、計測した電圧(Vds)を制御ユニット210の計測値取得部213に通知する。
【0098】
計測値取得部213は、通知された電圧(Vds)を情報保持部211に保持させる。
[ステップS53] 制御ユニット210の算出部214は、情報保持部211を参照して、電流(IH=100A)と、電圧(Vds)との積により、ドレイン・ソース電極間の電力(PH)を算出する。
【0099】
なお、算出部214は、当該電力(PH)を算出する際に用いる電圧(Vds)として、MOSFET110に電流(IH=100A)を通電させている間における電圧(Vds)の平均値、または、当該通電時間においての半分の時間が経過した時点の電圧(Vds)のいずれかを用いる。
【0100】
算出部214は、算出した電力(PH)を情報保持部211に保持させる。
ステップS50では、以上のフローチャートに沿って処理を実行することにより、発熱時のMOSFET110のソース・ドレイン電極間の電力(PH)を算出することができる。
【0101】
このような熱抵抗計測装置200で実行される熱抵抗計測方法では、MOSFET110の素子温度(Tj0,Tj1)を、ゲート・ソース電極間の電圧(Vgs)の温度係数(K)に基づき算出するようにした。特に、MOSFET110が炭化シリコンまたは窒化ガリウムで構成される場合には、オン電圧が非常に小さいために、△Vds法で算出した温度係数(K)の精度が非常に悪い。さらに、炭化シリコンまたは窒化ガリウムで構成されるMOSFET110は、△Vds法で発熱した場合には、当該MOSFET110に内蔵されるダイオードが発光するために、印加した電力の一部が発光で消費され、適切に熱抵抗計測を行うことができない。そこで、熱抵抗計測装置200では、このような△Vgs法を利用することで、温度変化(△Tj=Tj1−Tj0)に対する電圧の変化率を表す温度係数(K)の精度が向上する。
【0102】
また、このような熱抵抗計測装置200で実行される熱抵抗計測方法では、MOSFET110のゲート電極に印加する電圧を一定にしてドレイン・ソース電極間にMOSFET110が発熱する電流を通電させて、MOSFET110が発熱する電流(IH)と、MOSFET110の発熱時のドレイン・ソース電極間の電圧(Vds)とに基づいて電力(PH)を計測するようにした。特に、MOSFET110が炭化シリコンまたは窒化ガリウムで構成される場合には、チャネル抵抗が大きいために、△Vgs法で発熱した場合、MOSFET110内での発熱分布が局所的となり、さらに、MOSFET110を多並列に配列した被計測モジュール100においてMOSFET110間の発熱温度が不均等になり、適切に熱抵抗計測ができない。そこで、熱抵抗計測装置200では、このような△Vds法を用いてMOSFET110を発熱させると、MOSFET110内において温度分布が局所的になる原因となるチャネル電流の増加が抑制されて、MOSFET110内全体で温度が変化するようになり、MOSFET110のサイズを小さく見積もる必要がなくなり、さらに、MOSFET110を多並列に配置した被計測モジュール100においてMOSFET110では発熱分布を抑制することができる。
【0103】
したがって、上記の熱抵抗計測装置200で実行される熱抵抗計測方法により被計測モジュール100の熱抵抗を高精度に計測することができるようになる。また、被計測モジュール100においてMOSFET110を多並列に配置した場合には、不要な設計マージンを加える必要がなくなり、最適な設計を行うことが可能となる。