特許第6221417号(P6221417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221417
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】アウトスライド扉のシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/06 20060101AFI20171023BHJP
   B60J 10/25 20160101ALI20171023BHJP
   B60J 10/86 20160101ALI20171023BHJP
【FI】
   B60J5/06 B
   B60J10/25
   B60J10/86
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-136361(P2013-136361)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-9667(P2015-9667A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】飛澤 孝男
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−184508(JP,A)
【文献】 実開昭60−067228(JP,U)
【文献】 実開昭61−061224(JP,U)
【文献】 特開2002−120563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00−10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側面に配置され、開扉時は一対の扉本体を車両幅方向及び互いに離間する車両前後方向にそれぞれ移動させると共に、閉扉時は一対の扉本体を互いに近接する車両前後方向及び車両幅方向にそれぞれ移動させるアウトスライド扉のシール構造であって、
一対の前記扉本体の上縁部にそれぞれ設けられて車両前後方向に延びる一対の上側シール部材と、
一対の前記扉本体の戸先側縁部にそれぞれ設けられて上下方向に延びる一対の戸先側シール部材と、
一対の前記扉本体の戸元側又は戸先側の少なくとも一方に設けられて上下方向に延びる排水流路と、を備え、
一対の前記上側シール部材それぞれは、車両外側の端部から上方に突出すると共に車両前後方向に延びる封鎖部と、当該封鎖部よりも車室側の上面部に形成されて車両前後方向に延びると共に、その端部を前記排水流路の上端部に隣接させた少なくとも一本の排水溝と、を有し、
一対の前記戸先側シール部材それぞれが、基端側が前記扉本体に固定されて先端側が突出する基部を有すると共に、一方の前記戸先側シール部材が、前記基部の側部から車外側に突出して横断面で湾曲する戸先側封鎖部を有し、
閉扉時に、一方の前記戸先側シール部材の前記戸先側封鎖部の先端部が他方の前記戸先側シール部材の車外側面に接触し、一対の前記戸先側シール部材の前記基部の車外側面と一方の前記戸先側シール部材の前記戸先側封鎖部の車室側面とにより囲まれる空間により、前記扉本体の戸先側の前記排水流路が形成される
ことを特徴とするアウトスライド扉のシール構造。
【請求項2】
前記扉本体の戸元側縁部に設けられて上下方向に延びる戸元側シール部材をさらに備え、当該戸元側シール部材の少なくとも一部に前記戸元側の排水流路を形成した
請求項1記載のアウトスライド扉のシール構造。
【請求項3】
他方の前記戸先側シール部材の前記基部の車外側面に、一方の前記戸先側シール部材の前記戸先側封鎖部の先端部が接触する受容溝が形成される
請求項1又は2に記載のアウトスライド扉のシール構造。
【請求項4】
前記扉本体の戸元側又は戸先側の少なくとも一方のフレーム内に、上下方向に延びると共に前記排水流路を構成する中空部が形成される
請求項1から3の何れか一項に記載のアウトスライド扉のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトスライド扉のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両側面に形成された乗降口に配置される開閉扉として、一対の扉を車幅方向外側に張り出させた後、車両前後方向にそれぞれスライドさせて開扉するアウトスライド扉が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなアウトスライド扉によれば、戸袋を必要としないため、車室における収納スペースを最小にし、且つ立席スペースを拡大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−126891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的なアウトスライド扉のシール構造は、図7に示すように、乗降口400の開口上縁から下方に突出して設けられたフランジ120と、そのフランジに設けられたシール部材110とを備え構成されている。このようなシール構造では、扉本体100の上縁部に溜まった水を外部に排出する経路が確保されていないため、シール部材110の背面に漏れ出た水が車室内に垂れる可能性がある。また、漏れ出た水が扉本体100の車室側の側面を伝い落ちるため、品質感が損なわれるといった課題もある。
【0006】
本発明の目的は、品質感を損ねることなく、車室内への水の侵入を効果的に防止することができるアウトスライド扉のシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明のアウトスライド扉のシール構造は、車両側面に配置され、開扉時は扉本体を車両幅方向及び車両前後方向に移動させると共に、閉扉時は扉本体を車両前後方向及び車両幅方向に移動させるアウトスライド扉のシール構造であって、前記扉本体の上縁部に設けられて車両前後方向に延びる上側シール部材と、前記扉本体の戸元側又は戸先側の少なくとも一方に設けられて上下方向に延びる排水流路と、を備え、前記上側シール部材は、車両外側の端部から上方に突出すると共に車両前後方向に延びる封鎖部と、当該封鎖部よりも車室側の上面部に形成されて車両前後方向に延びると共に、その端部を前記排水流路の上端部に隣接させた少なくとも一本の排水溝と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記扉本体の戸元側縁部に設けられて上下方向に延びる戸元側シール部材をさらに備え、当該戸元側シール部材の少なくとも一部に前記戸元側の排水流路を形成してもよい。
【0009】
また、前記扉本体の戸先側縁部に設けられて上下方向に延びる戸先側シール部材をさらに備え、当該戸先側シール部材の少なくとも一部に前記戸先側の排水流路を形成してもよい。
【0010】
また、前記扉本体の戸元側又は戸先側の少なくとも一方のフレーム内に、上下方向に延びると共に前記排水流路を構成する中空部が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアウトスライド扉のシール構造によれば、品質感を損ねることなく、車室内への水の侵入を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るアウトスライド扉を示す模式的な斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るアウトスライド扉において、扉本体の開閉動作を説明する模式的な平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るアウトスライド扉のシール構造を示す模式的な縦断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るアウトスライド扉のシール構造を示す模式的な横断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るアウトスライド扉のシール構造を示す模式的な斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係るアウトスライド扉のシール構造を示す模式的な斜視図である。
図7】従来のアウトスライド扉のシール構造を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るアウトスライド扉のシール構造を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0014】
まず、図1,2に基づいて、本実施形態のシール構造が適用されるアウトスライド扉10の全体構成から説明する。本実施形態のアウトスライド扉10は、例えば、バス等の車両側面に形成された乗降口70に配置されるものである。なお、図1中において、アウトスライド扉10は前輪と後輪との間に配置される中扉として示されているが、例えば前扉や後扉であってもよい。
【0015】
アウトスライド扉10は、乗降口70を開閉可能な一対の扉本体11を備えて構成されている。より詳しくは、図2に示すように、扉本体11の車室側には、車両前後方向に延在するガイドレール12が設けられると共に、このガイドレール12には、ガイド溝に沿って移動可能なローラ13が配置されている。ローラ13は、アーム14の先端部に回転自在に軸支されると共に、アーム14の基端部は、車体80に回動可能に支持されている。
【0016】
すなわち、開扉動作時は、アーム14が回動して扉本体11を車幅方向外側に移動させた後、ローラ13がガイドレール12に沿って移動して扉本体11を車両前後方向にスライドさせる。一方、閉扉動作時は、ローラ13がガイドレール12に沿って移動して扉本体11を車両前後方向にスライドさせた後、アーム14が回動して扉本体11を車幅方向内側に移動させるように構成されている。
【0017】
次に、図3〜6に基づいて、本実施形態のシール構造の詳細構成を説明する。
【0018】
図3に示すように、扉本体11の上縁部には、ゴム等の弾性部材で形成された上側シール部材20が設けられている。この上側シール部材20は、車外側の側面から上方に突出して形成された上側封鎖部21と、上側封鎖部21よりも車室側の上面部に形成された水切り段差部22と、水切り段差部22よりも車室側の上面部に凹設された排水溝23と、排水溝23よりも車室側に形成された堰部24とを備えている。また、上側シール部材20から間隔を隔てた乗降口70の開口上縁には、車外側に突出すると共に上方に折り曲げられた略L字状のフランジ部60が取り付けられている。このフランジ部60は、ゴム等の弾性部材で形成されている。
【0019】
上側封鎖部21は、車両前後方向に延びると共に、車外側に張り出すように縦断面形状を略円弧状に湾曲して形成されている。また、上側封鎖部21の背面側には、車体80の外壁面(フランジ部60の縦側面)から流入する水を捕集するための凹部21Aが形成されている。この上側封鎖部21は、閉扉時に先端部(上端部)をフランジ部60の縦側面に接触させることで、扉本体11と乗降口70との間の隙間を封鎖する。すなわち、上側封鎖部21の先端部は、閉扉時に車体80の外壁面に直接当たることなく、フランジ部60に当たるように構成されている。これにより、車体80の塗装面等が受ける外傷を効果的に防止することができる。
【0020】
排水溝23は、車両前後方向に延びると共に水切り段差部22よりも下方に凹むように、その断面形状を略U字状に形成されている。この排水溝23には、中心から車両前後方向の両端部に向かって次第に深くなる傾斜が設けられている。すなわち、水切り段差部22から流れ込んだ水は、排水溝23内を車両前後方向に案内されて両端部に到達する。そして、両端部に到達した水は、詳細を後述する戸元側排水流路33及び戸先側排水流路60に向けて落下されるように構成されている(図5,6参照)。
【0021】
堰部24は、車両前後方向に延びると共に、その頂面が排水溝23よりも上方に位置するように上方に突出して形成されている。すなわち、水が排水溝23内から車室側に漏れ出した場合においても、車室内への侵入は堰部24によって確実に防止されるように構成されている。
【0022】
図4に示すように、扉本体11の戸元端部には、例えばゴム等の弾性部材で形成された戸元側シール部材30がそれぞれ設けられている。この戸元側シール部材30は、上下方向に延びる基部31と、基部31と一体的に形成された戸元側封鎖部32と、戸元側排水流路33とを備えている。
【0023】
基部31は、先端側を略円弧状に突出させると共に、基端側を扉本体11の戸元側端部に固定されている。本実施形態において、基部31は、基端側に形成された凸部を扉本体11の戸元側縁部に凹設された溝と嵌合させることで固定されている。
【0024】
戸元側封鎖部32は、基部31の側部から車外側に突出すると共に、横断面形状を略円弧状に湾曲して形成されている。この戸元側封鎖部32は、閉扉時に先端部を車体80の外壁面と接触させることで、扉本体11の戸元側と乗降口70との間の隙間を封鎖する。
【0025】
戸元側排水流路33は、基部31の側面と戸元側封鎖部32の背面とにより略V字状に囲まれた空間で形成されている。この戸元側排水流路33の上方には、排水溝23の戸元側端部が隣接して配置されている(図5参照)。すなわち、排水溝23の戸元側端部から流れ落ちる水は、戸元側排水流路33の上端に流入し、戸元側排水流路33内を下端まで流れ落ちた後、外部(車外)に排出されるように構成されている。
【0026】
扉本体11の戸先端部には、例えばゴム等の弾性部材で形成された戸先側シール部材40,50がそれぞれ設けられている。車両前方側の戸先側シール部材40は、上下方向に延びる基部41と、基部41と一体的に形成された戸先側封鎖部42とを備えている。一方、車両後方側の戸先側シール部材50は、上下方向に延びる基部51と、基部51の側面に形成されて上下方向に延びる受容溝52とを備えている。
【0027】
基部41,51は、先端側を略円弧状に突出させると共に、基端側を扉本体11の戸先側端部に固定されている。戸先側封鎖部42は、基部41の側部から車外側に突出すると共に、横断面形状を略円弧状に湾曲して形成されている。この戸先側封鎖部42は、閉扉時にその先端部を受容溝52に接触させることで、基部41,51間の隙間を封鎖する。
【0028】
本実施形態において、戸先側排水流路60は、閉扉時に基部41,51の側面と戸先側封鎖部42の背面とにより囲まれる空間で形成されている。この戸先側排水流路60の上方には、排水溝23の戸先側端部が隣接して配置されている(図6参照)。すなわち、排水溝23の戸先側端部から流れ落ちる水は、戸先側排水流路60の上端に流入し、戸先側排水流路60内を下端まで流れ落ちた後、外部(車外)に排出されるように構成されている。
【0029】
なお、戸元側排水流路33及び戸先側排水流路60は、必ずしも戸元側シール部材30や戸先側シール部材40,50で構成される必要はなく、例えば、扉本体11のフレーム内に形成された上下方向に延びる戸元側中空部35又は戸先側中空部62によって構成することもできる。
【0030】
次に、本実施形態に係るアウトスライド扉のシール構造による作用効果を説明する。
【0031】
本実施形態のアウトスライド扉のシール構造では、扉本体11の上縁部に設けられた上側シール部材20に、車両前後方向に延びる排水溝23が形成されている。この排水溝23には、中心から車両前後方向に向かって次第に深くなる傾斜が設けられている。さらに、排水溝23よりも車室側の上側シール部材20には、上方に突出する堰部24が設けられている。すなわち、上側シール部材20に流れ込んだ水は、車室側に侵入することなく排水溝23によって車両前後方向に案内されると共に、排水溝23から漏れ出た場合においても堰部24によって確実に堰き止められるように構成されている。
【0032】
したがって、本実施形態のアウトスライド扉のシール構造によれば、上側シール部材20に流れ込んだ水の車室内への侵入を確実に防止することができる。
【0033】
また、本実施形態のアウトスライド扉のシール構造では、排水溝23の両端部から流れ落ちる水を外部(車外)に排出するために、戸元側シール部材30に戸元側排水流路33が設けられると共に、戸先側シール部材40,50に戸先側排水流路60が設けられている。これら排水流路33,60は乗客等に視認されないように、戸元側排水流路33は基部31と戸元側封鎖部32の背面とにより囲まれる空間で形成されると共に、戸先側排水流路60は基部41,51の側面と戸先側封鎖部42とにより囲まれる空間で形成されている。
【0034】
したがって、本実施形態のアウトスライド扉のシール構造によれば、乗客に視認されない経路を効果的に用いることで、品質感を損なうことなく排水を確実に行うことが可能になる。また、排水のために配管等を別途設ける必要がないため、コストの上昇を効果的に抑制することができる。
【0035】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0036】
例えば、扉本体11は二枚扉に限定されず、一枚扉であってもよい。また、車両はバスに限定されず、アウトスライド扉を適用可能であれば、他の車両(例えば電車等)であってもよい。これら何れの場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 アウトスライド扉
11 扉本体
20 上側シール部材
21 上側封鎖部(封鎖部)
22 水切り段差部
23 排水溝
24 堰部
30 戸元側シール部材
33 戸元側排水流路
40,50 戸先側シール部材
60 戸先側排水流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7