特許第6221426号(P6221426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221426
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/36 20060101AFI20171023BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20171023BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20171023BHJP
   F16K 1/00 20060101ALI20171023BHJP
   F16K 7/16 20060101ALI20171023BHJP
   H01M 8/04 20160101ALN20171023BHJP
【FI】
   F16K1/36 Z
   F02M37/00 311H
   F16K27/02
   F16K1/00 E
   F16K7/16 C
   !H01M8/04 N
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-141736(P2013-141736)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-14331(P2015-14331A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】菊 信隆
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−146924(JP,A)
【文献】 特開2011−074937(JP,A)
【文献】 特開2006−032134(JP,A)
【文献】 特開2007−173211(JP,A)
【文献】 特開2013−087803(JP,A)
【文献】 特開2002−213629(JP,A)
【文献】 特開2010−281422(JP,A)
【文献】 実開昭60−162168(JP,U)
【文献】 実公昭39−015778(JP,Y1)
【文献】 国際公開第2013/006707(WO,A1)
【文献】 米国特許第02504057(US,A)
【文献】 独国特許発明第01929627(DE,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00−1/54
F16K 27/00−27/12
F16K 31/00−31/11
H01M 8/04−8/06
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の流入口と流出口とを有する流路が形成されたバルブハウジングと、
前記バルブハウジングに取り付けられた駆動装置と、
前記駆動装置の出力軸に連結されて、前記バルブハウジングにおいて軸方向に移動する弁軸と、
前記弁軸の軸心に対し半径方向に延びるように取り付けられ、前記弁軸とともに移動することにより、一側の面が前記バルブハウジングの流路に形成された弁座に離れまたは接触して前記流路を開閉する弁体と、
を備え、
前記バルブハウジングは、前記弁軸が水平面に対して傾斜するように取付先部材に取り付けられ、
前記弁体は、前記バルブハウジングの前記流路であって前記弁座が形成されている部分のうち前記流路内の液体が自重によって溜まる部分に対応する、前記弁体の一側の面の反対側の他側の面の縁部に沿って形成された壁部を備えた流体制御弁。
【請求項2】
前記壁部は、前記弁体の他側の面の縁部の全周に亘って形成されている請求項1記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記バルブハウジングは、前記弁座の外周に全周に亘って形成された溝部を有する請求項1または請求項2記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記弁体とともに移動するダイヤフラムをさらに備え、
前記ダイヤフラムの一側は前記流路および前記弁座を含んで構成され前記流体が流通する流体室に面しており、前記ダイヤフラムの他側は前記流体の進入が禁止され大気に開放されている空気室に面しており、
前記ダイヤフラムの有効受圧面積は前記弁体の有効受圧面積より大きい請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを制御する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体制御弁の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、流体制御弁は、気体の流入口と流出口とを有する流路(流体入口通路17、連通路19および流体出口通路18から構成されている)が形成されたバルブハウジング(第1および第2バルブ本体11,12)と、バルブハウジングに取り付けられた駆動装置(電磁アクチュエータ16)と、駆動装置の出力軸に連結されて、バルブハウジングにおいて軸方向に移動する弁軸(プランジャ16a)と、弁軸の軸心に対し半径方向に延びるように取り付けられ、弁軸とともに移動することにより、一側の面がバルブハウジングの流路に形成された弁座(シート部20)に離れまたは接触して流路を開閉する弁体15と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4141810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されている流体制御弁においては、弁軸が水平面に対して傾斜した状態(例えば特許文献1の図1で流体出口通路18が下側に位置する状態)でバルブハウジングが取付先部材に取り付けられた場合、弁体が弁座に接触(着座)している際に流路内の液体(例えば水)が、弁体の上面部を越えるほど流路の最下部(例えば弁座の左側)に溜まることがある。このとき、この水が凍結すると、流体制御弁が開かないおそれがある。
この問題を解決するために、駆動装置の駆動力を向上させることで、凍結固着している弁体を作動させることが考えられるが、駆動装置の大型化・高コスト化を招くこととなる。
【0005】
本発明は、上述した各問題を解消するためになされたもので、流体制御弁において、内部に溜まった水が凍結しても、装置の大型化・高コスト化を招くことなく、弁の開閉性を高く維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る流体制御弁の発明は、気体の流入口と流出口とを有する流路が形成されたバルブハウジングと、バルブハウジングに取り付けられた駆動装置と、駆動装置の出力軸に連結されて、バルブハウジングにおいて軸方向に移動する弁軸と、弁軸の軸心に対し半径方向に延びるように取り付けられ、弁軸とともに移動することにより、一側の面がバルブハウジングの流路に形成された弁座に離れまたは接触して流路を開閉する弁体と、を備え、バルブハウジングは、弁軸が水平面に対して傾斜するように取付先部材に取り付けられ、弁体は、バルブハウジングの流路であって弁座が形成されている部分のうち流路内の液体が自重によって溜まる部分に対応する、弁体の一側の面の反対側の他側の面の縁部に沿って形成された壁部を備えている。
【0007】
これによれば、弁軸が水平面に対して傾斜した状態でバルブハウジングが取付先部材に取り付けられたとき、弁体が弁座に接触(着座)している際に流路内の液体(例えば水)が流路の一部(例えば最下部)に溜まった場合、弁体の他側の面(上面)に形成された壁部が、溜まった水が弁体の上面部を越える(弁体の他側の面(上面)上まで浸水する)のを抑制することができる。よって、溜まった水が凍結した場合であっても、駆動力の比較的大きな大型・高コストの駆動装置を設けることなく、従来どおりの比較的小駆動力の小型・低コストの駆動装置を使用することで、凍結固着した弁体を作動させて流体制御弁の開弁性を高く維持することができる。
【0008】
また請求項2に係る発明は、請求項1の流体制御弁において、壁部は、弁体の他側の面の縁部の全周に亘って形成されている。
これによれば、弁体の他側の面(上面)の上方の流体内壁から水が弁体の上面に落ちたとき、その落水は弁体の縁部全周に形成された壁部によって弁体上面に貯水されるため、バルブハウジングの流路の一部(例えば最下部)に溜まる水量を少なく抑制することができ、ひいては溜まった水が弁体の上面部を越える(弁体の他側の面(上面)上まで浸水する)のをさらに抑制することができる。また、バルブハウジングに弁体を組み付ける際に、壁部を所定位置(水が溜まる部分に対応する位置)に位置決めする工程を省略することでき、ひいては弁体の組付けを容易にすることができる。(さらに、駐車中の車両の傾斜角度によっては、水が溜まる部分が変更するときがあるが、このときに溜まった水が凍結した場合であっても、駆動力の比較的大きな大型・高コストの駆動装置を設けることなく、従来どおりの比較的小駆動力の小型・低コストの駆動装置を使用することで、凍結固着した弁体を作動させて流体制御弁を開弁することができる。)
【0009】
また請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2の流体制御弁において、バルブハウジングは、弁座の外周に全周に亘って形成された溝部を有する。
これによれば、バルブハウジングの流路の一部(例えば最下部)にある水が溜まる部分の貯水量を溝部の容積だけ増量することができるため、水が溜まる部分に溜まる水量を少なく抑制することができ、ひいては溜まった水が弁体の上面部を越える(弁体の他側の面(上面)上まで浸水する)のをさらに抑制することができる。
【0010】
また請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項の流体制御弁において、弁体とともに移動するダイヤフラムをさらに備え、ダイヤフラムの一側は流路および弁座を含んで構成され流体が流通する流体室に面しており、ダイヤフラムの他側は流体の進入が禁止され大気に開放されている空気室に面しており、ダイヤフラムの有効受圧面積は弁体の有効受圧面積より大きい。
これによれば、弁体とともに移動するダイヤフラムをさらに備えた流体制御弁においても、上述した請求項1から請求項3までの作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による燃料電池システムを示したブロック図である。
図2図1に示したエア調圧弁の閉弁時の部分断面図である。
図3図1に示した三方弁の閉弁時の部分断面図である。
図4図2に示したエア調圧弁の作用効果を説明するための水が溜まる部分および壁部を含んだ付近の部分断面図である。左側の図が壁部なしのもので、右側が壁部ありのものである。
図5図3に示した三方弁の作用効果を説明するための水が溜まる部分および壁部を含んだ付近の部分断面図である。左側の図が壁部なしのもので、右側が壁部ありのものである。
図6図2に示すエア調圧弁の変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1−3に基づき、本発明の一実施形態による三方弁3およびエア調圧弁4について説明する。図1に示すように、本実施形態による三方弁3およびエア調圧弁4(流体制御弁に該当する)は、車両に搭載された燃料電池システム1の酸素系2に適用されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるべきものではなく、燃料供給系システムあるいは油圧ブレーキシステムといった、車両用流体制御弁として広範囲に使用することが可能であり、また、家庭用機器もしくは一般産業機械用の流体制御弁としても適用することが可能である。
【0014】
また、以下、図2における上方および下方を、それぞれエア調圧弁4の上方および下方とし、図2における右方および左方を、それぞれエア調圧弁4の右方および左方として説明しているが、車両におけるエア調圧弁4の実際の取付方向とは無関係である。なお、車両におけるエア調圧弁4は、バルブシャフト44が水平面に対して傾斜するように、すなわち図4に示すようにバルブ部材45が水平面に対して傾斜するように、車両に設けられた取付部11a(取付先部材に該当する)に取り付けられている。
【0015】
図1に示すように、燃料電池システム1は、酸素系2、燃料系5、電池スタック6、動力系7、冷却系8および制御装置9とから形成されている。
電池スタック6は、これに限定されるべきものではないが、複数の固体高分子型の単セルが積層されることで形成されている。複数の単セルは電気的に直列に接続されており、各々の単セルは電解質膜と、これを挟むアノード極およびカソード極(いずれも図示せず)を含んでいる。また、単セルのアノードセパレータ(図示せず)には、アノード極に対して水素ガスを供給するためのアノード流路61が形成されており、カソードセパレータ(図示せず)には、カソード極に対して空気を供給するためのカソード流路62が形成されている。
【0016】
酸素系2は酸素系供給配管21aを備えており、酸素系供給配管21aは電池スタック6内のカソード流路62の一端と接続されている。酸素系供給配管21a上には、電池スタック6に向けて順に、エアフィルタ22、エアコンプレッサ23、インタークーラ24および三方弁3が形成されている。
カソード流路62の他端には酸素系排出配管21bの一端が接続されており、酸素系排出配管21b上には、2ポートの流体制御弁であるエア調圧弁4が設けられている。また、前述した三方弁3は3ポートの流体制御弁であって、バイパス配管21cの一端が接続されており、バイパス配管21cの他端は、酸素系排出配管21bのエア調圧弁4よりも下流側部位(電池スタック6が接続されていない側)に接続されている。
【0017】
一方、燃料系5は、燃料系供給配管51aの一端に水素タンク52が接続されており、燃料系供給配管51a上には遮断弁53が形成されている。燃料系供給配管51aの他端は、電池スタック6内のアノード流路61の一端と接続されている。アノード流路61の他端には、燃料系排出配管51bが接続されており、燃料系排出配管51b上には、電池スタック6に近い側から順に、気液分離器54、排気排水弁55および排出ガス希釈器56が形成されている。排出ガス希釈器56には、上述した酸素系排出配管21bの他端が接続されている。
【0018】
また、気液分離器54は燃料系循環路51cを介して、燃料系供給配管51a上の遮断弁53とアノード流路61との接続部との間の部位に接続されている。燃料系循環路51c上には循環ポンプ57が設けられており、気液分離器54からアノード流路61に向けて水素ガスを循環させている。
動力系7は、車両を走行させるための電動モータ71を備えている。電動モータ71は電池スタック6の正極および負極と接続されており、電池スタック6の発電によって駆動される。
【0019】
また、冷却系8は水冷ポンプ81を備え、電池スタック6内に冷却水を循環させて電池スタック6を冷却している。
制御装置9は、エアコンプレッサ23、三方弁3、エア調圧弁4、遮断弁53、循環ポンプ57および冷却ポンプ81と電気的に接続されている。制御装置9は車両の走行状態に応じて算出された電池スタック6の必要な発電量に基づき、これらの各構成要素の作動を制御している。
上述した構成により、車両が運転開始すると、制御装置9はエアコンプレッサ23を作動させてカソード流路62へ空気を供給するとともに、遮断弁53および循環ポンプ57を作動させてアノード流路61へ水素ガスを供給し、電池スタック6において発電を行う。
【0020】
酸素系2において、エアフィルタ22を介して吸引された酸素を含んだ空気は、エアコンプレッサ23において圧縮された後、インタークーラ24によって冷却される。三方弁3は、電池スタック6の発電量に応じてバルブ部材の位置を変位させ、インタークーラ24から供給された空気を分流してバイパス配管21cへ逃すことにより、電池スタック6への空気の流量を制御している。
また、エア調圧弁4は、その開度を調整し電池スタック6内に残存した空気の排出量を調整することにより、電池スタック6内の圧力を制御している。
【0021】
アノード流路61から排出される水素オフガス(燃料ガスオフガス)には発電に使用されなかった水素ガスと発電によって生成された水(水蒸気)が含まれている。気液分離器54は水素ガスと水を分離する機能を有している。気液分離器54で分離された水素ガスは循環ポンプ57により燃料系循環路51cを介して燃料系供給配管51aに供給され循環される。気液分離器54で分離された水(液状)は排気排水弁55が開弁状態になったとき、水素ガスとともに排出ガス希釈器56に送られる。気液分離器54から排出ガス希釈器56に排出された水素ガスは、排出ガス希釈器56において、酸素系排出配管21bから供給された空気により希釈化された後、水とともに外部へと放出される。
【0022】
次に、エア調圧弁4の構造について詳細に説明する。図2に示したように、エア調圧弁4は、バルブハウジング41の外周面にモータアッセンブリ42(駆動装置に該当する)が取り付けられて形成されている。バルブハウジング41は、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材料にて形成されたバルブボデー411と、金属板により一体に形成されたバルブカバー412とを互いに結合させて形成されている。尚、本実施形態においては、駆動装置として電動モータを使用したモータアッセンブリ42を使用しているが、ソレノイドアクチュエータやガス圧によって駆動されるアクチュエータなどを使用してもよい。
【0023】
バルブボデー411には、バルブカバー412の取り付け用の金属製のカバー取付スリーブ411aがインサートされている。また、バルブボデー411のフランジ部411bには、エア調圧弁4を車両に取り付けるための金属スリーブ411cがインサートされている。カバー取付スリーブ411aおよび金属スリーブ411cの内周面には、雌螺子が形成されている。
フランジ部411bは、車両の取付部11aにネジ止め固定されている。このとき、図4に示すように、バルブシャフト44が水平面に対して傾斜するように、すなわちバルブ部材45が水平面に対して傾斜するように、バルブボデー411が取付部11aに取り付けられている。
【0024】
バルブボデー411には、図2において右方に開口する調圧弁インレット411d(流入口に該当する)が形成されている。調圧弁インレット411dは、上述した酸素系排出配管21bを介して、電池スタック6のカソード流路62の他端に接続されている(図1参照)。また、バルブボデー411には、調圧弁インレット411dに対し垂直方向に開口(図2において下方に開口)する調圧弁アウトレット411e(流出口に該当する)が形成されている。調圧弁アウトレット411eは、上述した酸素系排出配管21bを介して、排出ガス希釈器56に接続されている。調圧弁インレット411dから調圧弁アウトレット411eまでの流路が流路R1(流路に該当する)である。
【0025】
さらに、バルブボデー411の内周面において、調圧弁インレット411dと調圧弁アウトレット411eとの間には調圧弁座411f(弁座に該当する)が形成されている。調圧弁座411fは平坦な円環状に形成されている。また、調圧弁座411fの外周には、全周に亘って溝部411gが形成されている。
【0026】
バルブカバー412は、貫通させた取付ボルト413をカバー取付スリーブ411aに締め付けることによって、バルブボデー411の上端面に取り付けられている。バルブカバー412は、バルブボデー411への取付面412aと、取付面412aから上方へと突出したモータ取付部412bと、モータ取付部412bの中央部において段付状に下降し、下端部が開口したシャフト収容部412cとにより形成されている。また、モータ取付部412bの上面には、複数の雌螺子穴412dが設けられている。バルブカバー412は、金属板をプレス成型することにより、上述した取付面412a、モータ取付部412bおよびシャフト収容部412cが一体に形成されている。
【0027】
モータ取付部412bの上面には、上述したモータアッセンブリ42が取り付けられている。モータアッセンブリ42は、モータケース421の機構収容部421aの外周面を、シャフト収容部412cの内周面に嵌合させた状態で、取付フランジ421bに貫通させた複数の取付スクリュー43を、モータ取付部412bの雌螺子穴412dに締め付けることによってバルブカバー412に固定される。取付スクリュー43は取付フランジ421bに形成された貫通孔(図示せず)に対して遊嵌しており、バルブカバー412は、シャフト収容部412cの内周面が機構収容部421aの外周面に当接することにより、その位置決めが行われる。
【0028】
モータケース421の内壁には、ステッピングモータ422が固定されている。ステッピングモータ422の出力シャフト422a(出力軸に該当する)の先端は円筒形状を呈しており、その軸心部には駆動孔422bが形成されている。駆動孔422bの内周面には所定の長さの雌螺子が形成されており、バルブシャフト44(弁軸に該当する)の端部外周面に形成された雄螺子部441と螺合している。
【0029】
バルブシャフト44はステンレス等の金属材料にて形成され、その雄螺子部441の下方には二面幅部442が形成されている。二面幅部442は、モータケース421の下端部に形成された一対の対向面(図示省略)と係合しており、これによって、バルブシャフト44はモータケース421に対して回転不能となっている。したがって、ステッピングモータ422の出力シャフト422aが一方向に回転すると、バルブシャフト44がバルブハウジング41内において軸方向に下降し、出力シャフト422aが反対方向に回転すると、バルブシャフト44は上昇する。
【0030】
上述したバルブシャフト44の雄螺子部441と、出力シャフト422aの雌螺子とは、ともに台形ネジにより形成されており、バルブシャフト44と出力シャフト422aとの間の逆効率がほぼ0に設定されていることが望ましい。これにより、バルブシャフト44と出力シャフト422aとの間の動作の伝達が不可逆的に形成され、エア調圧弁4が閉じられている状態で、バルブシャフト44から出力シャフト422aに向けて戻し荷重が働いた場合に、出力シャフト422aは開弁する方向に回転せず、不用意にエア調圧弁4が開弁することがない。
【0031】
図2に示したように、バルブシャフト44の二面幅部442の下方には、モータケース421から突出し一定の径により軸方向に延びた円柱部443が形成されている。円柱部443の外周面は、バルブカバー412のシャフト収容部412cの下端に形成されたシャフトリテーナ部412eにより、軸方向に移動可能に支持されている。互いに当接する円柱部443の外周面またはシャフトリテーナ部412eには無電解ニッケルメッキ等が施され、その摺動面の耐摩耗性を向上させている。
【0032】
さらに、円柱部443の先端部には、円柱部443よりも小径に形成された連結部444が一体に形成されている。連結部444は、外周面において対向する一対の平坦面444aを有する二面幅形状に形成されている。
【0033】
連結部444には、軸心に直交する方向にボール孔445が貫通しており、ボール孔445の両端部は、対向した平坦面444aに直交するようにそれぞれ開口している。ボール孔445内には、鋼球446が配置されている。鋼球446の直径は、平坦面444a同士の距離(二面幅の厚み)よりも大きく設定されており、鋼球446はボール孔445の両端部から突出している。また、鋼球446の直径は、ボール孔445の直径よりも僅かに小さく、鋼球446はボール孔445内において回転可能、かつ、ボール孔445内をボール孔445の軸方向に移動可能に収容されている。
【0034】
バルブシャフト44の先端部に設けられた鋼球446には、バルブシャフト44の軸心に対し半径方向に延びるように、バルブ部材45(弁体に該当する)が取り付けられている。バルブ部材45のバルブフレーム451は、ステンレス等の金属板がプレス成形されて形成されている。バルブフレーム451は、バルブシャフト44の軸心に対し、半径方向に円板状に延びた平板部451aを有しており、平板部451aには外周縁を覆うようにシール部材452が固着されている。
【0035】
シール部材452は、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)またはEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)といった合成ゴム材料にて形成されている。シール部材452の下面(一側の面に該当する)には、バルブ部材45の下降により、バルブボデー411に形成された調圧弁座411fと当接可能なシールリップ452aが突出している。図2に示したように、シールリップ452aは、断面リップ状に形成されている。このシールリップ452aは、発電停止時に、電池スタック6内に残留した水素ガスと酸素の反応や電池スタック6の温度低下による残留水蒸気の凝縮などによって発生する負圧によりセルフシールするように、半径方向内向き(調圧弁アウトレット411eに向いて)に形成されている。
【0036】
さらに、シール部材452の上面(一側の面の反対側の他側の面に該当する)には、壁部452bが形成されている。壁部452bは、バルブハウジング41の流路R1であって調圧弁座411fが形成されている部分のうち流路R1内の液体が自重によって溜まる部分R1aに対応するシール部材452の上面縁部に形成されている。調圧弁4の取付位置(取付角度)が事前に決定されているときには、壁部452bは、車両が水平面に駐車されている場合における水が溜まる部分R1aに相当(対応)する箇所に形成されるのが好ましい。
【0037】
バルブフレーム451には、平板部451aの半径方向中心部に連続した段部451bが形成されている。段部451bはバルブシャフト44の軸方向に延びており、径方向の段差が軸方向に並ぶように2箇所に形成されている。
また、バルブフレーム451は、一端が段部451bに連続した円筒部451cを有している。円筒部451cは、平板部451aに対して垂直方向に延び、バルブシャフト44の円柱部443が挿入されている。さらに、バルブフレーム451は、円筒部451cの他端に連続して形成され、先端が袋状に閉じていることにより、バルブシャフト44の連結部444を収容することが可能な取付部451dを有している。
【0038】
取付部451dは、バルブシャフト44の連結部444が収容された場合に、それぞれ連結部444の平坦面444aと対向するように一対の固定壁451eを有している。各々の固定壁451eからは、取付部451d内に連結部444を挿入した際に、鋼球446を収容可能な嵌合部451fが突出している。また、取付部451dには、固定壁451e同士を繋ぐように、対向した一対の接続面部(図示省略)が形成されている。
【0039】
双方の固定壁451eの内周面間の距離は、連結部444の平坦面444a同士の距離(二面幅の厚み)よりも大きく、双方の接続面部の内周面間の距離は、連結部444の側面部444b同士の距離よりも大きく設定されている。
バルブシャフト44にバルブ部材451を取り付ける場合、ボール孔445内に鋼球446を配置した状態で、平坦面444aから突出した鋼球446が嵌合部451f内に収容されるように、連結部444を取付部451d内に挿入する。その後、鋼球446に対して、双方の固定壁451eをかしめることによりかしめ部451hが形成され、取付部451dが鋼球446に固定される。
【0040】
また、バルブフレーム451がバルブシャフト44に取り付けられた状態において、円筒部451cの内周面と、挿入されたバルブシャフト44の円柱部443の外周面との間には、バルブシャフト44の軸心に対する半径方向の隙間ε(以下、半径方向隙間εという)が形成されている。半径方向隙間εは、円筒部451cの内周面と円柱部443の外周面との間において全周に渡って形成されている。半径方向隙間εを設けたことによって、バルブ部材45はバルブシャフト44に対し傾き可能に形成されている。
【0041】
図2に示すように、バルブフレーム451の段部451bの内周面には、上方からスプリングリテーナ453が圧入固定されている。スプリングリテーナ453は、金属板がプレス工程にて絞られて形成されている。スプリングリテーナ453は、段部451bの下方に形成された段差と円柱部443との間に位置する円筒状の固定部453aと、固定部453aから半径方向外方へと拡がった肩部453bとを有している。
【0042】
スプリングリテーナ453の固定部453aは、肩部453bがバルブフレーム451の平板部451aの上面に当接するまで、バルブフレーム451の段部451bの内周面に圧入されている。段部451bに圧入された固定部453aは、バルブシャフト44の円柱部443の外周面との間には隙間を有しているため、バルブ部材45のバルブシャフト44に対する傾きを妨げることはない。
【0043】
また、段部451bの上方に形成された段差と固定部453aとの間には、シール部材であるOリング454が介装されている。Oリング454は、バルブフレーム451と固定部453aとの間においてシール機能を発揮し、エア調圧弁4内に浸入した水分または異物等が、バルブフレーム451の取付部451dあるいは後述するダイヤフラム46で区分けされた空気室415まで浸入することを防止している。
さらに、スプリングリテーナ453は、肩部453bから上方へと延びた連結部453cと、連結部453cから半径方向外方へと拡がる締付部453dとを備えている。
【0044】
また、ダイヤフラム保持体455は、半径方向内端にバルブシャフト44の軸方向に延びる係合部455aを有し、係合部455aの上端からは、押圧部455bが半径方向に延びている。押圧部455bの下面がスプリングリテーナ453の連結部453cの上端に当接するまで、係合部455aが連結部453cの内周面に圧入されることにより、スプリングリテーナ453とダイヤフラム保持体455は一体化されている。
【0045】
スプリングリテーナ453の締付部453dとダイヤフラム保持体455の押圧部455bとの間には、ダイヤフラム46の内周縁が固定されている。ダイヤフラム46は合成ゴム材料にて一体的に形成されており、略中央部には表裏を貫通する装着孔461が形成されている。装着孔461の周縁は、締付部453dと押圧部455bとにより上下方向に挟圧され、双方の間において液密的に固定されている。
【0046】
ダイヤフラム46の外周縁は、前述したバルブボデー411の上端面とバルブカバー412のモータ取付部412bの下端との間において挟圧され、液密的に固定されている。このように、ダイヤフラム46がバルブハウジング41の内周面とバルブ部材45とに取り付けられることにより、ダイヤフラム46およびバルブ部材45によって、バルブハウジング41の内部が2つに区分けされている。すなわち、バルブハウジング41の内部は、調圧弁インレット411d、調圧弁アウトレット411eおよび調圧弁座411fを含み供給された流体(気体)が通過する流体室414と、流体等の進入が防止され空気が充填されている空気室415とが形成されている。空気室415は、バルブカバー412に設けられた図示しない通気孔により外気に連通している。
【0047】
ダイヤフラム46はバルブ部材45とともに移動するものである。ダイヤフラム46の一側は流路R1および弁座411fを含んで構成され前記流体(気体)が流通する流体室414に面しており、ダイヤフラム46の他側は前記流体(気体)の進入が禁止され大気に開放されている空気室415に面している。さらに、ダイヤフラム46の有効受圧面積はバルブ部材45の有効受圧面積より大きくなるようになっている。
【0048】
スプリングリテーナ453の肩部453bと、バルブカバー412のシャフト収容部412cの段部との間には、バルブシャフト44を円周方向に取り囲むようにコイルスプリング47が介装されている。コイルスプリング47は、スプリングリテーナ453とバルブカバー412との間に弾発的に装着され、バルブ部材45をバルブシャフト44の先端方向に向けて付勢している。
【0049】
調圧弁インレット411dからバルブハウジング41の内部に、空気等の所定の圧力を有した流体が供給されると、上述したダイヤフラム46が流体から圧力を受けて、バルブ部材45の上部は、ダイヤフラム46により円周上を均等に引っ張られて、バルブシャフト44の軸心からずれずに(センタリング)、バルブシャフト44の軸心に対して傾かずに保持される。
【0050】
また、上述したコイルスプリング47のバルブシャフト44の先端方向に向けた付勢力により、バルブ部材45の下方部も、バルブシャフト44の軸心からずれずに(センタリング)、バルブシャフト44の軸心に対して傾かずに保持される。尚、コイルスプリング47は、スプリングリテーナ453とバルブカバー412との間に設ける代わりに、ダイヤフラム保持体455の押圧部455bとバルブカバー412との間に介装されていてもよい。
【0051】
次に、エア調圧弁4の作動について説明する。バルブシャフト44が上方にあり、バルブ部材45のシール部材452が調圧弁座411fから離間している(離れている)時、エア調圧弁4は開弁状態にある(図示省略)。この状態において、調圧弁インレット411dと調圧弁アウトレット411eとが連通しており、双方の間の空気等の流体の流通は許容されている。
【0052】
制御装置9からの駆動信号により、ステッピングモータ422が一方向に回転すると、バルブ部材45がバルブシャフト44とともに軸方向に下降し、シール部材452が調圧弁座411fに着座する(接触する。図2参照)。これにより、エア調圧弁4は閉弁状態となり、調圧弁インレット411dと調圧弁アウトレット411eとの間の連通が遮断され、双方の間の流体(気体)の流通は断たれる。すなわち、エア調圧弁4においては、モータアッセンブリ42の出力シャフト422aが閉弁位置にて位置決め固定されることにより、バルブ部材45が弁座411fに接触しバルブハウジング41の流路R1が閉じられる状態が維持される。
【0053】
さらに、凍結時におけるエア調圧弁4の作動について図4を参照して説明する。なお、左側の図は、壁部452bがないものを、右側の図は、壁部452bがあるものを示している。いずれも、図2に示す調圧弁4(バルブシャフト44)が左側に傾斜されて車両に取り付けられている状態を示している。
【0054】
車両の燃料電池システム1が停止されると、燃料電池6のカソード流路62が湿潤状態であり、カソード流路62の水蒸気の凝縮水が水滴として流路R1内壁面に発生する。この水滴を流路から排出するために、大量の空気を一度に投入する掃気が行われるが、水滴全てを排出することはできないし、掃気後に流路R1壁面に水滴が付く場合もある。燃料電池システムの停止中において、掃気後に流路R1内に存在する水滴は、自重によって流路R1の下部に向かって流れて、水が溜まる部分R1aに溜まる。
【0055】
このとき、図4の左側に示すように、壁部452bが形成されていないときには、水が溜まる部分R1aに溜まった水Wが、バルブ部材45の上面すなわちバルブフレーム451およびシール部材452の上面の少なくとも一部を浸水する。すなわち、水Wがバルブ部材45の上面の一部を覆っている。
この状態で、周囲が低温となって、水が溜まる部分R1aに溜まった水Wが凍結すると、バルブ部材45の上面の一部が氷で覆われる。
【0056】
一方、図4の右側に示すように、壁部452bが形成されているときには、水が溜まる部分R1aに溜まった水Wは、壁部452bによってバルブ部材45の上面すなわちバルブフレーム451およびシール部材452の上面に浸水しない。すなわち、水Wがバルブ部材45の上面を覆うことを抑制することができるため、周囲が低温となって、水が溜まる部分R1aに溜まった水Wが凍結しても、バルブ部材45の上面が氷で覆われるのを抑制することができる。
【0057】
したがって、駆動力の比較的大きな大型・高コストの駆動装置を設けることなく、従来どおりの比較的小駆動力の小型・低コストの駆動装置を使用することで、凍結固着したバルブ部材45を作動させることができるため、調圧弁4(流体制御弁)の開弁性を高く維持することができる。
【0058】
次に、三方弁3(流体制御弁に該当する)の構造について、図3に基づき詳細に説明する。尚、以下、図3における上方および下方を、それぞれ三方弁3の上方および下方とし、図3における右方および左方を、それぞれ三方弁3の右方および左方として説明しているが、車両における三方弁3の実際の取付方向とは無関係である。なお、車両における三方弁3は、バルブシャフト33が水平面に対して傾斜するように、すなわち図5に示すようにバルブ部材35が水平面に対して傾斜するように、車両に設けられた取付部(取付先部材に該当する。図示省略)に取り付けられている。
【0059】
図3に示したように、三方弁3もエア調圧弁4と同様に、バルブハウジング31の外周面にモータアッセンブリ32(駆動装置に該当する)が取り付けられて形成されている。バルブハウジング31は、ともにポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材料にて形成された第1ボデー311と第2ボデー312とを、互いに液密的に嵌合させて形成している。
【0060】
第1ボデー311には、図3において右方に開口する三方弁インレット311a(流入口に該当する)が形成されている。三方弁インレット311aは、上述した酸素系供給配管21aを介して、インタークーラ24に接続されている(図1参照)。また、第2ボデー312には、三方弁インレット311aに対し垂直方向に開口(図3において下方に開口)する三方弁アウトレット312a(流出口に該当する)が形成されている。三方弁アウトレット312aは、上述した酸素系供給配管21aを介して、電池スタック6のカソード流路62の一端に接続されている(図1参照)。三方弁インレット311aから三方弁アウトレット312aまでの流路が流路R2(流路に該当する)である。
また、第1ボデー311には、図3において左方に開口するバイパス口311bが形成されている。バイパス口311bは、上述したバイパス配管21cを介して、排出ガス希釈器56に接続されている(図1参照)。
【0061】
また、第2ボデー312の内周面において、三方弁インレット311aと三方弁アウトレット312aとの間には制御弁座312b(弁座に該当する)が形成されている。制御弁座312bは平坦な円環状に形成されている。また、制御弁座312bの外周には、全周に亘って溝部312cが形成されている。
【0062】
また、第1ボデー311の内部上面からは、円筒状の着座体311cが下方に延びている。着座体311cの下端は平坦に形成され、三方弁インレット311aおよび三方弁アウトレット312aと、バイパス口311bとの間に位置するバイパス弁座311dが形成されている。また、第1ボデー311の内周上面からは、着座体311cの半径方向内方に位置するように、円筒形のシャフト支持部311eが突出している。
【0063】
上述したエア調圧弁4と同様に、バルブハウジング31の上面には、上述したモータアッセンブリ32が取り付けられている。モータアッセンブリ32は、モータケース321の機構収容部321aの外周面を、第1ボデー311の上端部に形成されたモータ取付ボス311fの内周面に嵌合させた状態で、モータケース321に貫通させた複数の取付スクリュー39を、第1ボデー311の固定部311gに締め付けることによって第1ボデー311に固定される。取付スクリュー39はモータケース321の固定部321bに形成された貫通孔(図示せず)に対して遊嵌しており、モータアッセンブリ32は、機構収容部321aの外周面がモータ取付ボス311fの内周面に当接することにより、その位置決めが行われる。
第1ボデー311の固定部311gは、モータ取付ボス311fの開口端から外方に向けて延設されるフランジ部である。モータケース321の固定部321bは、バルブハウジング31に設けられたバルブハウジング固定部311gに取り付けられている。
【0064】
エア調圧弁4と同様に、モータケース321内には、ステッピングモータ322が固定されており、ステッピングモータ322の出力シャフト322a(出力軸の該当する)の回転運動は直進運動に変換され、バルブシャフト33(弁軸に該当する)に伝達される。ステッピングモータ322の出力シャフト322aの先端は円筒形状を呈しており、その軸心部には駆動孔322bが形成されている。駆動孔322bの内周面には所定の長さの雌螺子が形成されており、バルブシャフト33の端部外周面に形成された雄螺子部339と螺合している。
バルブシャフト33は、上述したシャフト支持部311eの内周面において、その軸方向に移動可能に支持されている。
【0065】
バルブシャフト33の長さ方向の略中央部には、一定の径により軸方向に延びた円柱部331が形成されている。また、円柱部331の上方には、円柱部331と同径の第1ランド部332が設けられており、円柱部331と第1ランド部332との間には、第1シール溝333が円周上に形成されている。第1シール溝333内には、合成ゴム材料にて形成されたシールパッキン34が装着されている。シールパッキン34は、バルブシャフト33の外周面とシャフト支持部311eの内周面との間でシール性能を発揮し、モータアッセンブリ32内への水、異物等の浸入を防止している。
【0066】
バルブシャフト33の先端部には、円柱部331よりも小径の連結部334が一体に形成されている。エア調圧弁4と同様に、連結部334は、外周面において対向する一対の平坦面334aを有する二面幅形状に形成されている。
連結部334には、軸心に直交する方向にボール孔335が貫通しており、ボール孔335の両端部は、対向した平坦面334aに直交するようにそれぞれ開口している。ボール孔335内には、鋼球336が回転可能、かつ、ボール孔335の軸方向に移動可能に配置されている。連結部334、ボール孔335および鋼球336の寸法関係は、上述したエア調圧弁4の場合と同様に設定されている。
【0067】
エア調圧弁4と同様に、連結部334にはバルブ部材35(弁体に該当する)が取り付けられている。バルブ部材35のバルブフレーム351は、バルブシャフト33の軸心に対し、半径方向に円板状に延びた平板部351aを有しており、平板部351aにはその外周面(上面および外周縁)を覆うように、合成ゴム材料にて形成されたシール部材352が被覆されている。
【0068】
シール部材352の下面には、バルブ部材35の下降により、第2ボデー312に形成された制御弁座312bと当接可能なシールリップ352aが突出している。図3に示したように、シールリップ352aは、電池スタック6内に残留した水素ガスと酸素の反応によって発生する負圧によりセルフシールするように、半径方向外向きに形成されている。
【0069】
さらに、シール部材352の上面(一側の面の反対側の他側の面に該当する)には、上述した壁部452bと同様に構成された壁部352bが形成されている。壁部352bは、バルブハウジング31の流路R2であって制御弁座312bが形成されている部分のうち流路R2内の液体が自重によって溜まる部分R2aに対応するシール部材352の上面縁部に形成されている。三方弁3の取付位置(取付角度)が事前に決定されているときには、壁部352bは、車両が水平面に駐車されている場合における水が溜まる部分R2aに相当(対応)する箇所に形成されるのが好ましい。
【0070】
さらに、シール部材352の上面には、壁部352bの内側にバルブシャフト33と同軸的に環状の凸部352cが形成されている。環状の凸部352cの上面は、バルブ部材35の上昇により、第1ボデー311に形成されたバイパス弁座311dと当接可能となっている。環状の凸部352cは、凸部352cがバイパス弁座311dに当接しているときに、壁部352bが流路R2の内壁面(壁部352bの上方位置の内壁面)に当接しないように構成されている。
【0071】
バルブフレーム351には、平板部351aの半径方向中心部において、バルブシャフト33の先端方向に窪んだ凹部351bが形成されている。また、バルブフレーム351は、一端が凹部351bの内周端に連続した円筒部351cを有している。円筒部351cは、平板部351aに対して垂直方向に延び、バルブシャフト33の円柱部331が挿入されている。
【0072】
さらに、バルブフレーム351は、エア調圧弁4と同様に、円筒部351cの他端に連続して形成され、バルブシャフト33の連結部334を受け入れる取付部351dを有している。取付部351dはボール孔335から突出した鋼球336に対しかしめられ、鋼球336に対し脱落不能に固定されている。
尚、図3において、バルブ部材35(バルブフレーム351)をバルブシャフト33に取り付けるために、取付部351dに形成される構成のうち、エア調圧弁4と同様の構成については、あえて符号を省略している。
【0073】
エア調圧弁4と同様に、バルブフレーム351はバルブシャフト33に取り付けられた状態において、円筒部351cの内周面と、バルブシャフト33の円柱部331の外周面との間には、バルブシャフト33の軸心に対する半径方向隙間εが全周上に形成されている。
バルブシャフト33において、上述した連結部334の上方には円柱部331と同径の第2ランド部337が設けられており、円柱部331の下端と第2ランド部337との間には、第2シール溝338が円周上に形成されている。第2シール溝338内には、合成ゴム材料にて形成されたリング状のシャフトシール36が装着されている。シャフトシール36は、バルブシャフト33の外周面とバルブフレーム351の円筒部351cの内周面との間でシール性能を発揮し、バルブフレーム351の円筒部351cおよび取付部351d内への水、異物等の浸入を防止している。
【0074】
また、バルブフレーム351の凹部351bと、第1ボデー311の内部上面との間には、バルブスプリング37が介装されている。バルブスプリング37の内周面は、上述したシャフト支持部311eの外周面に嵌着している。バルブスプリング37は、バルブフレーム351と第1ボデー311との間に弾発的に装着され、バルブ部材35をバルブシャフト33の先端方向に向けて付勢している。バルブスプリング37の付勢力により、バルブ部材35はバルブシャフト33の軸心からずれずに(センタリング)、バルブシャフト33の軸心を中心として傾かずに保持される。
【0075】
次に、三方弁3の作動について簡単に説明する。バルブシャフト33が上方にある時、バルブ部材35のシール部材352の凸部352cの上面がバイパス弁座311dに着座する(接触する)とともに、制御弁座312bから離間している(離れている。図示省略)。この時、三方弁インレット311aと三方弁アウトレット312aとは連通し、双方の間の空気等の流体の流通が許容されるとともに、三方弁インレット311aおよび三方弁アウトレット312aと、バイパス口311bとの間の連通は遮断され、これらの間の流体の流通は断たれる。
【0076】
制御装置9からの駆動信号により、ステッピングモータが一方向に回転すると、バルブ部材35がバルブシャフト33とともに軸方向に下降し、シール部材352の凸部352cの上面がバイパス弁座311dから離れるとともに、シールリップ352aが制御弁座312bに着座する(接触する。図3参照)。この時、三方弁インレット311aとバイパス口311bとが連通し、双方の間の空気等の流体の流通が許容されるとともに、三方弁インレット311aおよびバイパス口311bと、三方弁アウトレット312aとの間の連通は遮断され、これらの間の流体の流通は断たれる。
【0077】
三方弁3において、バルブ部材35は、制御弁座312bとバイパス弁座311dとの間において任意の位置をとることにより、三方弁インレット311aから供給された流体の、三方弁アウトレット312aおよびバイパス口311bへそれぞれ分流される流量を、流体が通過する通路の断面積に基づき制御することができる。
【0078】
このとき、壁部352bは、バルブ部材35が開弁位置にあるとき、該壁部352bと流路R2の内壁面との間の流路断面積を所定値以上となるように形成されている。なお、所定値は、バルブ部材35が開弁位置にあるとき、圧力損失が所定値以下となる値である。これによれば、三方弁3(流体制御弁)が開弁状態にあるとき、壁部352bと流路R2の内壁との間の流路は所定値以上の流路断面積を確実に確保することができるので、圧力損失を低く抑制することができる。
【0079】
さらに、凍結時における三方弁3の作動について図5を参照して説明する。なお、左側の図は、壁部352bがないものを、右側の図は、壁部352bがあるものを示している。いずれも、図3に示す三方弁3(バルブシャフト33)が左側に傾斜されて車両に取り付けられている状態を示している。
【0080】
上述した凍結時におけるエア調圧弁4の作動の説明と同様に、燃料電池システムの停止中において、掃気後に流路R2内に存在する水滴は、自重によって流路R2の下部に向かって流れて、水が溜まる部分R2aに溜まる。このとき、図5の左側に示すように、壁部352bが形成されていないときには、水が溜まる部分R2aに溜まった水Wが、バルブ部材35の上面すなわちバルブフレーム351およびシール部材352の上面の少なくとも一部を浸水する。すなわち、水Wがバルブ部材35の上面の一部を覆っている。この状態で、周囲が低温となって、水が溜まる部分R2aに溜まった水Wが凍結すると、バルブ部材35の上面の一部が氷で覆われる。
【0081】
一方、図5の右側に示すように、壁部352bが形成されているときには、水が溜まる部分R2aに溜まった水Wは、壁部352bによってバルブ部材35の上面すなわちバルブフレーム351およびシール部材352の上面に浸水しない。すなわち、水Wがバルブ部材35の上面を覆うことを抑制することができるため、周囲が低温となって、水が溜まる部分R2aに溜まった水Wが凍結しても、バルブ部材35の上面が氷で覆われるのを抑制することができる。
【0082】
したがって、駆動力の比較的大きな大型・高コストの駆動装置を設けることなく、従来どおりの比較的小駆動力の小型・低コストの駆動装置を使用することで、凍結固着したバルブ部材35を作動させることができるため、三方弁3(流体制御弁)の開弁性を高く維持することができる。
【0083】
本実施形態によれば、バルブシャフト33,44(弁軸)が水平面に対して傾斜した状態でバルブハウジング31,41が取付部11a(取付先部材)に取り付けられたとき、バルブ部材35,45(弁体)が制御弁座312bまたは調圧弁座411f(弁座)に接触(着座)している際に流路R1,R2内の液体(例えば水)が流路R1,R2の一部(例えば最下部)に溜まった場合、バルブ部材35,45(弁体)の他側の面(上面)に形成された壁部352b,452bが、溜まった水がバルブ部材35,45(弁体)の上面部を越える(弁体の他側の面(上面)上まで浸水する)のを抑制することができる。よって、溜まった水Wが凍結した場合であっても、駆動力の比較的大きな大型・高コストの駆動装置を設けることなく、従来どおりの比較的小駆動力の小型・低コストの駆動装置を使用することで、凍結固着したバルブ部材35,45(弁体)を作動させて流体制御弁の開弁性を高く維持することができる。
【0084】
また、バルブハウジング31,41は、制御弁座312bまたは調圧弁座411f(弁座)の外周に全周に亘って形成された溝部312c,411gを有する。
これによれば、バルブハウジング31,41の流路R1,R2の水が溜まる部分R1a,R2aの貯水量を溝部312c,411gの容積だけ増量することができるため、水が溜まる部分R1a,R2aに溜まる水量を少なく抑制することができ、ひいては溜まった水Wがバルブ部材35,45(弁体)の上面部を越える(弁体の他側の面(上面)上まで浸水する)のをさらに抑制することができる。
【0085】
また、調圧弁4(流体制御弁)は、バルブ部材45(弁体)とともに移動するダイヤフラム46をさらに備え、ダイヤフラム46の一側は流路および弁座を含んで構成され流体が流通する流体室414に面しており、ダイヤフラム46の他側は流体の進入が禁止され大気に開放されている空気室415に面しており、ダイヤフラム46の有効受圧面積は弁体の有効受圧面積より大きい。
これによれば、バルブ部材45(弁体)とともに移動するダイヤフラム46をさらに備えた調圧弁4(流体制御弁)においても、上述した作用効果を得ることができる。
【0086】
また、壁部352b,452bは、バルブ部材35,45(弁体)が開弁位置にあるとき、該壁部352b,452bと流路R1,R2の内壁との間の流路断面積を所定値以上となるように形成されている。
これによれば、三方弁3,調圧弁4(流体制御弁)が開弁状態にあるとき、352b,452bと流路R1,R2の内壁との間の流路は所定値以上の流路断面積を確実に確保することができるので、圧力損失を低く抑制することができる。
【0087】
なお、上述した実施形態においては、壁部452b(または352b)は、シール部材452の上面縁部のうち水が溜まる部分R1a(またはシール部材352の上面縁部のうち水が溜まる部分R2a)に対応する箇所に設けられているが、図6に示すように、壁部452cは、シール部材452の上面縁部の全周に亘って形成するようにしてもよい。
【0088】
これによれば、バルブ部材35,45(弁体)の他側の面(上面)の上方の流体内壁から水がバルブ部材35,45(弁体)の上面に落ちたとき、その落水はバルブ部材35,45(弁体)の縁部全周に形成された壁部452cによって弁体上面に貯水されるため、バルブハウジング31,41の流路R1,R2の水が溜まる部分R1a,R2aに溜まる水量を少なく抑制することができ、ひいては溜まった水Wがバルブ部材35,45(弁体)の上面部を越える(弁体の他側の面(上面)上まで浸水する)のをさらに抑制することができる。
【0089】
また、バルブハウジング31,41にバルブ部材35,45(弁体)を組み付ける際に、上述したように壁部352b,452bを所定位置(水が溜まる部分R1a,R2aに対応する位置)に位置決めする工程を省略することでき、ひいてはバルブ部材35,45(弁体)の組付けを容易にすることができる。
さらに、駐車中の車両の傾斜角度によっては、水が溜まる部分が変更するときがあるが、壁部452cがバルブ部材35,45(弁体)の上面縁部全周に設けられているため、水が溜まる部分が変更したときに溜まった水が凍結した場合であっても、駆動力の比較的大きな大型・高コストの駆動装置を設けることなく、従来どおりの比較的小駆動力の小型・低コストの駆動装置を使用することで、凍結固着した弁体を作動させて流体制御弁を開弁することができる。
【符号の説明】
【0090】
図面中、3は三方弁(流体制御弁)、4はエア調圧弁(流体制御弁)、31,41はバルブハウジング、32,42はモータアッセンブリ(駆動装置)、33,44はバルブシャフト(弁軸)、35,45はバルブ部材(弁体)、36はシャフトシール、311aは三方弁インレット(流入口)、312aは三方弁アウトレット(流出口)、312bは制御弁座(弁座)、312cは溝部、334,444は連結部、351,451はバルブフレーム、351a,451aは平板部、351bは凹部、351c,451cは円筒部、351d,451dは取付部、352,452はシール部材、352a,452aはシールリップ、352b,452b,452cは壁部、411dは調圧弁インレット(流入口)、411eは調圧弁アウトレット(流出口)、411fは調圧弁座(弁座)、411gは溝部、R1,R2は流路、R1a,R2aは水が溜まる部分を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6