(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221440
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】プリント配線基板、及びそれを備えた電動工具用スイッチ
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
H05K3/34 501B
H05K3/34 502C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-145828(P2013-145828)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-18970(P2015-18970A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】保住 昭宏
【審査官】
内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−327645(JP,A)
【文献】
特開2004−228261(JP,A)
【文献】
特開2009−088573(JP,A)
【文献】
特開2005−153029(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0016480(US,A1)
【文献】
実開昭64−016686(JP,U)
【文献】
実開昭61−201365(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/32 〜 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部部材の凸部に半田付けして接合する接合部を備えたプリント配線基板であって、
上記接合部は、
上記凸部が挿入される第1の穴部と、
上記凸部を半田付けするためのメインランドと、
上記メインランドから引き出された1つ以上の金属パターンと、
上記金属パターンを介して上記メインランドと接続したサブランドと、を備え、
上記メインランドは、プリント配線基板における半田付けする表面、及び該表面と反対側の裏面のうち少なくとも表面における上記第1の穴部の周辺領域を覆う金属膜によって構成されており、上記第1の穴部を形成する側壁には形成されておらず、
上記サブランドは、プリント配線基板を貫通する第2の穴部の形成する側壁、並びにプリント配線基板における上記表面、及び上記裏面の両面における上記第2の穴部の周辺領域を覆う金属膜によって構成されており、前記第2の穴部は、半田のフラックスが前記第2の穴部の側壁との表面張力により前記裏面に到達しないような寸法であることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
上記メインランドと上記サブランドとの間に配された上記金属パターンを覆うように、レジスト膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】
上記サブランドを覆うレジスト膜を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】
上記サブランドは、上記裏面に形成された配線パターンと電気的接続されておらず、電気的に独立していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプリント配線基板。
【請求項5】
上記外部部材は、電動工具用スイッチを構成する構成部材であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のプリント配線基板。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のプリント配線基板を備えたことを特徴とする電動工具用スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板、及びそれを備えた電動工具用スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板には、各種部品を実装する、あるいは取り付けるための半田付け用のランドが表面に露出して設けられている。
【0003】
特に、電動工具用スイッチに用いられるプリント配線基板は、電動工具用スイッチを構成する構成部材(例えば板金加工された筐体部材)に半田付けされて接合している。
図5は、電動工具用スイッチにおける、プリント配線基板110と構成部材120との接合部分を模式的に示した斜視図である。
【0004】
図5に示されるように、構成部材120には、凸部121が設けられている。そして、プリント配線基板110には、凸部121が挿入されるホール111が形成されている。また、プリント配線基板110表面には、ホール111を取り囲むように、凸部121を半田付けするための半田付け用のランド112が設けられている。このランド112は、金属で構成された膜である。また、電動工具用スイッチにおいては、プリント配線基板110における半田付けする表面と反対側に、スイッチのオン・オフを切り替える接点機構が配置されている。
【0005】
図6は、従来の半田付け用ランドの構成を示す断面図であり、
図6の(a)はスルーホールランドの構成を示し、
図6の(b)は、片面ランドの構成を示す。
【0006】
図6の(a)に示されるように、スルーホールランド112Aを構成する金属膜は、プリント配線基板110の表面110aから、ホール111を形成する側壁、及びプリント配線基板110の裏面110bに渡って延在している。一方、片面ランド112Bを構成する金属膜は、プリント配線基板110の表面110aのみに形成されている。
【0007】
また、特許文献1には、ランドを構成する金属膜がプリント配線基板から剥離するのを防止するために、ランドの端部をシルク印刷された印刷塗料によって押える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−94681号公報(2012年 5月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5に示された構成を有する電動工具用スイッチにおいては、スイッチ動作中に、プリント配線基板110と構成部材120との接合部分に振動が伝わる。このため、プリント配線基板110と構成部材120との接合部分は、このような振動に対しても、プリント配線基板110の配線パターンが剥離しない程度の強度が要求される。また、同時に、凸部121を半田付けするに際し、半田付けによって発生するフラックスの、プリント配線基板の裏面側への飛散を防止することが要求される。プリント配線基板110における半田付けする表面と反対側に配された接点機構に、半田付けによって発生するフラックスが付着すると、導通不良が発生する。
【0010】
しかしながら、
図6の(a)及び(b)に示された、従来のランドの構成では、振動等に対するプリント配線基板の配線パターンの剥離強度の確保と、プリント配線基板の裏面側へのフラックスの飛散防止との両方を満足することが困難である。
【0011】
まず、
図6の(a)に示されたスルーホールランド112Aの構成では、構成する金属膜が、ホール111を形成する側壁、及びプリント配線基板110の裏面110bにまで延在しているので、配線パターンの剥離強度が強くなっている。しかし、スルーホールランド112Aに半田付けした場合、ホール111を形成する側壁に金属膜が形成されているため、半田材料はホール111内へ移動しやすくなる。それゆえ、半田付けによって発生するフラックスの、プリント配線基板の裏面110b側への飛散を防止することができない。
【0012】
次に、
図6の(b)に示された片面ランド112Bにおいて、ホール111を形成する側壁は、金属膜が形成されておらず、絶縁材料が露出している。このため、片面ランド112Bに半田付けした場合、半田材料は、プリント配線基板110の表面110aに形成された金属膜内に留まり、ホール111を形成する側壁を介してプリント配線基板110の裏面110bにまで移動しにくくなっている。このため、フラックスがプリント配線基板110の裏面110b側へ飛散しにくくなっている。しかし、金属膜が、ホール111を形成する側壁、及びプリント配線基板110の裏面110bにまで延在していないため、配線パターンの剥離強度が弱い。
【0013】
また、プリント配線基板110の配線パターンの剥離強度を強くするために、特許文献1の技術を適用した場合、ランドの端部をシルク印刷された印刷塗料によって押える工程が必要になる。このため、製造工程が複雑化するという問題がある。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動等に対するプリント配線基板の配線パターンの剥離強度の確保と、プリント配線基板の裏面側へのフラックスの飛散防止との両方を満足するプリント配線基板、及びそれを備えた電動工具用スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明のプリント配線基板は、外部部材の凸部に半田付けして接合する接合部を備えたプリント配線基板であって、上記接合部は、上記凸部が挿入される第1の穴部と、上記凸部を半田付けするためのメインランドと、上記メインランドから引き出された1つ以上の金属パターンと、上記金属パターンを介して上記メインランドと接続したサブランドと、を備え、上記メインランドは、プリント配線基板における半田付けする表面、及び該表面と反対側の裏面のうち少なくとも表面における上記第1の穴部の周辺領域を覆う金属膜によって構成されており、上記第1の穴部を形成する側壁には形成されておらず、上記サブランドは、プリント配線基板を貫通する第2の穴部の形成する側壁、並びにプリント配線基板における上記表面、及び上記裏面の両面における上記第2の穴部の周辺領域を覆う金属膜によって構成されていることを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、上記メインランドは、上記第1の穴部を形成する側壁に金属膜が形成されていない構成であるので、上記第1の穴部を形成する側壁は、絶縁材料が露出している。このため、上記メインランドに半田付けした場合、半田材料は、プリント配線基板の表面に形成された金属膜内に留まり、上記第1の穴部を形成する側壁を介してプリント配線基板の裏面にまで移動しにくくなっている。このため、フラックスがプリント配線基板の裏面側へ飛散しにくくなっている。
【0017】
また、上記メインランドは、プリント配線基板の表面及び裏面のうち少なくとも表面における上記第1の穴部の周辺領域を覆う金属膜によって構成されており、上記第1の穴部を形成する側壁には形成されていない構成であるため、剥離強度が比較的弱い。
【0018】
そこで、上記の構成によれば、上記サブランドは、プリント配線基板を貫通する第2の穴部の形成する側壁、並びにプリント配線基板における上記表面、及び上記裏面の両面における上記第2の穴部の周辺領域を覆う金属膜によって構成されており、プリント配線基板の表面において、上記メインランドと上記サブランドとが金属パターンを介して接合したスルーホール接合ランドの構造になっている。このため、上記の構成によれば、上記メインランドは、上記サブランドによって剥離強度が補強される。それゆえ、上記の構成によれば、上記サブランドが設けられているため、従来の半田付け用ランドと比較して、配線パターンの剥離強度を強くすることができる。それゆえ、上記メインランドは、上記サブランドによって剥離強度が補強される。
【0019】
このように、上記の構成によれば、振動等に対するプリント配線基板の配線パターンの剥離強度の確保と、プリント配線基板の裏面側へのフラックスの飛散防止との両方を満足することができる。
【0020】
また、本発明のプリント配線基板において、上記メインランドと上記サブランドとの間に配された上記金属パターンを覆うように、レジスト膜が形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、上記メインランドと上記サブランドとの間に配された上記金属パターンを覆うように、レジスト膜が形成されており、このレジスト膜は露出している。それゆえ、半田付けするに際し、半田材料は、上記メインランドから上記サブランドへ向かって流れるのを防止することができる。それゆえ、上記の構成によれば、プリント配線基板の表面において、半田材料を上記メインランド内に留めることができ、半田材料の拡散を防止することができる。
【0022】
また、本発明のプリント配線基板において、上記サブランドを覆うレジスト膜を備えたことが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、上記サブランドを覆うレジスト膜を備えており、このレジスト膜は露出している。このため、プリント配線基板の表面において、半田材料が上記サブランド上に乗りにくくなる。このため、上記の構成によれば、上記サブランドにおけるホールを通って半田材料がプリント配線基板の裏面へ移動するのを防止することができる。
【0024】
上記サブランドは、上記裏面に形成された配線パターンと電気的接続されておらず、電気的に独立していてもよい。すなわち、本願発明におけるサブランドは、プリント配線基板における表面の配線パターンと裏面の配線パターンとを電気的に接続することを目的として設けられたものではない。
【0025】
また、本発明のプリント配線基板において、上記外部部材は、電動工具用スイッチを構成する構成部材であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の電動工具用スイッチは、上述のプリント配線基板を備えたことを特徴としている。
【0027】
これによって、電動工具用スイッチの動作中の振動等に対して、プリント配線基板の配線パターンの剥離強度を確保できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のプリント配線基板は、以上のように、上記接合部は、上記凸部が挿入される第1の穴部と、上記凸部を半田付けするためのメインランドと、上記メインランドから引き出された1つ以上の金属パターンと、上記金属パターンを介して上記メインランドと接続したサブランドと、を備え、上記メインランドは、プリント配線基板における半田付けする表面、及び該表面と反対側の裏面のうち少なくとも表面における上記第1の穴部の周辺領域を覆う金属膜によって構成されており、上記第1の穴部を形成する側壁には形成されておらず、上記サブランドは、プリント配線基板を貫通する第2の穴部の形成する側壁、並びにプリント配線基板における上記表面、及び上記裏面の両面における上記第2の穴部の周辺領域を覆う金属膜によって構成されている構成である。
【0029】
それゆえ、振動等に対するプリント配線基板の配線パターンの剥離強度の確保と、プリント配線基板の裏面側へのフラックスの飛散防止との両方を満足することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態1に係るプリント配線基板における、電動工具用スイッチを構成する構成部材との接合部近傍の構成を示し、(a)は断面図であり、(b)は表面側から見た平面図であり、(c)は裏面側から見た平面図である。
【
図2】(a)及び(b)は、本発明の実施形態1に係るプリント配線基板における、微孔スルーホールランドの数及び形成箇所の例を示した平面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係るプリント配線基板における、電動工具用スイッチを構成する構成部材との接合部近傍の構成を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態3に係るプリント配線基板における、電動工具用スイッチを構成する構成部材との接合部近傍の別の構成を示す平面図である。
【
図5】電動工具用スイッチにおける、プリント配線基板と構成部材との接合部分を模式的に示した斜視図である。
【
図6】従来の半田付け用ランドの構成を示す断面図であり、(a)はスルーホールランドの構成を示し、(b)は、片面ランドの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態について、
図1に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
図1は、本実施形態に係るプリント配線基板10における、電動工具用スイッチを構成する構成部材との接合部10A近傍の構成を示し、
図1の(a)は断面図であり、
図1の(b)は表面10a側から見た平面図であり、
図1の(c)は裏面10b側から見た平面図である。
【0032】
図1の(a)〜(c)に示される、接合部10Aは、プリント配線基板10における、上記構成部材(外部部材)の凸部に半田付けして接合する部分である。接合部10Aは、ホール11(第1の穴部)と、半田付け用ランド12(メインランド)と、引き出しパターン13(金属パターン)と、微孔スルーホールランド14(サブランド)とを、備えている。
【0033】
ホール11には、上記構成部材に設けられた凸部が挿入される。また、半田付け用ランド12は、ホール11に挿入された上記凸部をプリント配線基板10と半田付けするためのランドであり、金属膜によって構成されている。半田付け用ランド12を構成する金属膜は、プリント配線基板10の表面10aにおいて、ホール11の周辺を囲むように形成されている。
【0034】
また、引き出しパターン13は、金属膜で構成されており、プリント配線基板10の表面10a及び裏面10bの両方の面において、半田付け用ランド12から引き出されたパターンである。
図1の(b)に示されるように、引き出しパターン13は、プリント配線基板10の表面10aにおいて、半田付け用ランド12から2方向に引き出されている。
【0035】
また、プリント配線基板10のホール11の近傍には、プリント配線基板10を貫通する微孔(第2の穴部)が形成されている。微孔スルーホールランド14は、表面10aにおける微孔の周辺領域、微孔を形成する側壁、及び裏面10bにおける微孔の周辺領域に渡って形成された金属膜である。微孔スルーホールランド14は、プリント配線基板10の表面10a及び裏面10bの両方の面において、引き出しパターン13を介して、半田付け用ランド12と連結している。微孔スルーホールランド14は、半田付けのためのランドではなく、プリント配線基板10の表面10a及び裏面10bの間をつなげる金属ブリッジの役割を果たす。なお、微孔スルーホールランド14の微孔に金属材料が埋まっていても、配線パターンの剥離強度を強くすることができる。ただし、この場合、微孔に金属材料を埋め込む工程が必要になる。
【0036】
また、
図1の(b)及び(c)に示されるように、微孔スルーホールランド14は、半田付け用ランド12を挟んで2か所に形成されている。微孔スルーホールランド14の形成箇所は、ホール11の中心に対して線対称の位置にある。
【0037】
ここで、
図1の(a)〜(c)に示されるように、半田付け用ランド12は、上述の片面ランドと同様の構成になっている。半田付け用ランド12を構成する金属膜は、プリント配線基板10の表面10aのみに形成されている。ホール11を形成する側壁、及びプリント配線基板10の裏面10bは、金属膜が形成されておらず絶縁材料が露出している。このため、半田付け用ランド12に半田付けした場合、半田材料は、表面10aに形成された金属膜内に留まり、ホール11を形成する側壁を介して裏面10bにまで移動しにくくなっている。このため、フラックスがプリント配線基板10の裏面10b側へ飛散しにくくなっている。
【0038】
また、本実施形態において、引き出しパターン13は、プリント配線基板10の表面10aに形成されており、裏面10bには形成されていない。微孔スルーホールランド14は、表面10aに形成された引き出しパターン13を介して、半田付け用ランド12と連結している。
【0039】
半田付け用ランド12は、プリント配線基板10の表面10aのみに形成された金属膜で構成された片面ランドであるため、剥離強度が比較的弱い。そこで、本実施形態に係るプリント配線基板10のランド構造は、表面10aにおいて、半田付け用ランド12と微孔スルーホールランド14とが引き出しパターン13を介して接合したスルーホール接合ランドの構造になっている。
【0040】
このため、半田付け用ランド12は、微孔スルーホールランド14によって剥離強度が補強される。それゆえ、本実施形態に係るプリント配線基板10によれば、微孔スルーホールランド14が設けられているため、従来の片面ランドと比較して、配線パターンの剥離強度を強くすることができる。よって、電動工具用スイッチの動作中の振動等に対する配線パターンの剥離強度を確保できるプリント配線基板10を実現することができる。
【0041】
このように、本実施形態に係るプリント配線基板10によれば、振動等に対するプリント配線基板10の配線パターンの剥離強度の確保と、プリント配線基板10の裏面10b側へのフラックスの飛散防止との両方を満足することができる。
【0042】
なお、
図1に示された構成では、半田付け用ランド12は、プリント配線基板10の表面10aにのみ形成されていた。しかし、本実施形態において、半田付け用ランド12を構成する金属膜は、プリント配線基板10の表面10a及び裏面10bのうち少なくとも表面10aにおけるホール11の周辺領域を覆うように形成され、ホール11を形成する側壁には形成されていなければよい。それゆえ、半田付け用ランド12を構成する金属膜は、
図1の構成の他に、プリント配線基板10の表面10a及び裏面10bの両方の面のみに形成されていてもよい。
【0043】
また、半田付け用ランド12を構成する金属膜が、プリント配線基板10の裏面10bに形成されている場合、半田付け用ランド12は、裏面10bに形成された引き出しパターン13を介して微孔スルーホールランド14と接合していることが好ましい。これによって、プリント配線基板10の配線パターンの剥離強度をより強くすることができる。
【0044】
なお、本実施形態に係るプリント配線基板10では、半田付け用ランド12及び微孔スルーホールランド14を同一工程によって製造することができる。すなわち、まず、プリント配線基板10にホール11及び微孔を所定の位置に形成する。次に、形成したホール11及び微孔に対して、公知の金属蒸着技術または金属メッキ技術を用いて金属膜を形成する。このような製造手順によって、半田付け用ランド12及び微孔スルーホールランド14を同時に形成することができ、簡易に補強用の微孔スルーホールランド14を形成することができる。
【0045】
なお、微孔スルーホールランド14における微孔の寸法は、プリント配線基板10が備えられた部品に応じて適宜設定できるが、好ましくは、ホール11の寸法よりも小さい。特に好ましくは、半田付けの際に発生するフラックスが、微孔の側壁との表面張力によって裏面10bに到達しない(微孔の側壁または表面10aに留まる)程度の寸法である。
【0046】
なお、微孔スルーホールランド14は、プリント配線基板10の配線パターンの剥離強度を補強する目的によって形成されたものであるので、プリント配線基板10の裏面10bに形成された回路(配線パターン)と電気的接続されておらず、電気的に独立している。すなわち、微孔スルーホールランド14は、プリント配線基板10において、表面10aに形成された配線パターンと、裏面10bに形成された配線パターンとを電気接続するためのものではない。
【0047】
また、
図1の(a)〜(c)に示された構成では、微孔スルーホールランド14は、半田付け用ランド12を挟んで2つ形成されており、これらの形成箇所は、ホール11の中心に対して線対称の位置にあった。しかし、微孔スルーホールランド14の数、及び形成箇所は、これに限定されず、半田付け用ランド12を補強することが可能な数、形成位置であればよい。
図2の(a)及び(b)は、本実施形態に係るプリント配線基板10における、微孔スルーホールランド14の数及び形成箇所の例を示した上面図(表面10a側から見た図)である。
【0048】
図2の(a)に示されるように、微孔スルーホールランド14は、半田付け用ランド12の近傍位置に1つ形成されていてもよい。
図2の(a)に示される配置では、半田付け用ランド12における微孔スルーホールランド14近傍位置(一点)での剥離強度が相対的に強くなる。
【0049】
また、
図1の(b)に示される配置では、半田付け用ランド12における微孔スルーホールランド14近傍位置(二点)での剥離強度が相対的に強くなる。すなわち、2か所の微孔スルーホールランド14を結ぶ線方向の剥離強度が強くなる。
【0050】
また、
図2の(b)に示されるように、微孔スルーホールランド14は、半田付け用ランド12を挟んで、3か所に形成されていてもよい。
図2の(b)に示される配置では、半田付け用ランド12における微孔スルーホールランド14近傍位置(三点)での剥離強度が相対的に強くなる。すなわち、半田付け用ランド12の面内の3方向の剥離強度が強くなる。このように、半田付け用ランド12を挟む微孔スルーホールランド14の数が多くなれば多くなるほど、プリント配線基板10の表面10a内において、半田付け用ランド12における剥離強度が強化される箇所が多くなる。
【0051】
微孔スルーホールランド14の数及び形成箇所は、剥離強度を強化する方向等に応じて適宜設定し得る。剥離強度を強化する方向が表面10a内の任意の方向である場合、微孔スルーホールランド14は、
図2の(b)の配置、すなわち、半田付け用ランド12を挟んで3か所形成され、3つの形成位置を結ぶ三角形が正三角形になった配置であることが好ましい。
【0052】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図3及び
図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0053】
図3は、本実施形態に係るプリント配線基板10における、電動工具用スイッチを構成する構成部材との接合部近傍の構成を示す平面図である。
図3に示されるように、本実施形態に係るプリント配線基板10においては、半田付け用ランド12と微孔スルーホールランド14との間に、レジスト膜15が形成されている。レジスト膜15は、プリント配線基板10の表面10aにおいて、半田付け用ランド12と微孔スルーホールランド14との間に形成された引き出しパターン13を覆うように形成されている。
【0054】
このようにレジスト膜15が形成されていることによって、半田付けするに際し、半田材料は、半田付け用ランド12から微孔スルーホールランド14へ向かって流れるのを防止することができる。それゆえ、プリント配線基板10の表面10aにおいて、半田材料を半田付け用ランド12内に留めることができ、半田材料の拡散を防止することができる。
【0055】
図4は、本実施形態に係るプリント配線基板10における、電動工具用スイッチを構成する構成部材との接合部近傍の別の構成を示す平面図である。
図4に示されるように、プリント配線基板10は、微孔スルーホールランド14を覆うレジスト膜16を備えていてもよい。このようにレジスト膜16が形成されていることによって、プリント配線基板10の表面10aにおいて、半田材料が微孔スルーホールランド14上に乗りにくくなる。このため、微孔スルーホールランド14における微孔を通って半田材料がプリント配線基板10の裏面10bへ移動するのを防止することができる。なお、レジスト膜16を構成するレジストの量は、微孔の寸法等応じて適宜設定することができ、微孔を介してレジストが裏面10b側へ流入しない程度の量であればよい。
【0056】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、スイッチ、特に、電動工具用のスイッチに利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10 プリント配線基板
10a 表面
10b 裏面
10A 接合部
11 ホール(第1の穴部)
12 半田付け用ランド(メインランド)
13 引き出しパターン(金属パターン)
14 微孔スルーホールランド(サブランド)
15 レジスト膜
16 レジスト膜