(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1〜
図3は、本発明の一実施形態に係わる車両用ステップ装置1を示し、
図4は、
図1〜
図3の車両用ステップ装置1を備える車両のスライドドア下部周辺を示している。ステップとしてのステップ板3は、
図4(a)に示すように、車体5の乗降口近傍の下部側方にする突出状態(使用状態)と、車体5の下部に格納される格納状態(非使用状態)との間を移動変位する。なお、図中のFRで示す方向が車両前方であり、UPRで示す方向が車両上方である。
【0010】
このような車両用ステップ構造は、
図4(a)に示すように車体5の側部に設定してあるスライドドア7を後方にスライド移動させて開放させたときに、ステップ板3がスライドドア7の移動に連動して使用状態となる。使用状態のステップ板3は、車体5の側部に形成してある乗降口となるドア開口部9の下方位置にて側方に突出する。逆に、
図4(b)のようにスライドドア7を前方(
図4中で左側)にスライド移動させて閉じたときには、ステップ板3が、スライドドア7の移動に連動して車体5の内側(本実施形態では車体5の下方)に入り込んで格納されて非使用状態となる。
【0011】
車両用ステップ装置1は、前述したステップ板3と、車体5の下部の例えばサイドシルやフロアメンバに、
図2に示す取付部11を介して取り付けられる本体部13と、ステップ板3と本体部13とを回転可能に連結する2本のアームとしての回転アーム15と、を備えている。
【0012】
ステップ板3と回転アーム15とは、
図1に示すようにブラケット17を介して連結されている。ブラケット17は、上壁17a、下壁17b、側壁17cを備え、
図1中で紙面に直交する方向の両側及び、
図1中で右側が開放している。上壁17aの
図1中で紙面に直交する方向の両側には、ステップ板3の下面に図示しないボルトにより固定される取付フランジを備えている。すなわち、ブラケット17は、この図示しない取付フランジをボルトによってステップ板3の下面に締結することで、ステップ板3に取り付けられる。
【0013】
上記したブラケット17には、
図1中で右側の開放側近傍に、ステップ板回動支持軸19が上下方向に貫通するようにして取り付けられている。そして、ブラケット17の上壁17aと下壁17bとの間に回転アーム15の先端部15aを挿入し、該先端部15aをステップ板回動支持軸19に軸受部21を介して回転可能に連結している。このような回転アーム15の先端部15aとステップ板3との連結構造は、2本の回転アーム15相互で同等である。
【0014】
一方、回転アーム15の基端部15bは、回転支持軸としての本体側回転支持軸23の下部に連結固定されている。この回転アーム15の基端部15bと本体側回転支持軸23との連結構造自体は、2本の回転アーム15相互で同等である。しかし、
図2中で車両前方側に位置する回転アーム15は、
図1に対応していて、本体部13に設けてある
図3に示す駆動機構25に本体側回転支持軸23を介して連結している。
【0015】
図2中で車両後方側に位置する回転アーム15は、駆動機構25には連結されておらず、単に本体側回転支持軸23に連結されているだけである。つまり、駆動機構25の駆動によって
図2中で車両前方側に位置する一方の回転アーム15が回転駆動し、それに伴って
図2中で車両後方側に位置する他方の回転アーム15も、2本の回転アーム15が互いに平行状態を維持しつつ回転する。
【0016】
本体部13は、
図3に示すように、ベースプレート27と、ベースプレート27上に取り付けられる前述した駆動機構25と、駆動機構25を覆うようにしてベースプレート27の上に装着されるカバー29と、を備えている。ベースプレート27は、ステップ板3側の側部から車両後方に向けてする延長部27aを備え、その延長部27aの先端付近の支持部27bに本体側回転支持軸23が回転可能に取り付けられている。支持部27bの周辺に前述した取付部11の一部が設けられている。
【0017】
駆動機構25は、駆動源となる電動モータ31と、
図1に示すギア33を含む動力伝達機構35とを備えている。ギア33は本体側回転支持軸23に嵌合固定されている。すなわち、電動モータ31の駆動によって、ギア33を含む動力伝達機構35を介して
図1に示す本体側回転支持軸23が回転し、本体側回転支持軸23の回転に伴って回転アーム15が回転する。電動モータ31は、スライドドア7の開閉動作に連動して駆動されるなど、図示しない制御回路によって規定のタイミングで駆動される。
【0018】
カバー29は、
図2、
図3中で車両前方側の端部付近の上面に、駆動機構25の電気系統の配線36を通すための配線引出孔29aを備えている。
【0019】
図1に示す本体側回転支持軸23は、ベースプレート27に設けられた貫通孔27cに、ブッシュ37を介して挿入している。ブッシュ37は、
図5に拡大して示すように、上下一対の樹脂製の摺動子39と、摺動子39の外側に位置する金属製の支持剛体41とを備えている。
【0020】
摺動子39は、全体として円筒形状を呈し、円筒部39aと、円筒部39aの一方の端部に形成されるフランジ部39bとを有している。上下一対の摺動子39は、内径が本体側回転支持軸23の外径に対してやや大きく、フランジ部39bと反対側の円筒部39aの端部同士を突き合わせた状態で、本体側回転支持軸23が回転可能に挿入されている。
【0021】
支持剛体41は、全体として円筒形状を呈し、円筒部41aと、円筒部41aの上部に形成されているフランジ部41bとを有している。支持剛体41は、内径が摺動子39の円筒部39aの外径に対してほぼ同等かやや小さく、上下一対の摺動子39が圧入された状態となる。この支持剛体41の円筒部41aがベースプレート27の貫通孔27cに挿入固定され、フランジ部41bがベースプレート27の上部に位置してブッシュ37のベースプレート27に対する抜け止めとなる。
【0022】
ブッシュ37の上部には、
図1に示すようにラッチベース43及びワッシャ45が本体側回転支持軸23の挿入を受けた状態で配置され、ワッシャ45の上からナット47を本体側回転支持軸23に締結している。ナット47の締結時には、その締結力及びワッシャ45の弾性力でラッチベース43が摺動子39のフランジ部39bに押し付けられる。
【0023】
本体側回転支持軸23が回転するときには、金属製のラッチベース43は、ワッシャ45との間の金属同士の摩擦力のほうが、樹脂製の摺動子39との間の摩擦力よりも大きいので、摺動子39に対して摺動回転する。つまり、本体側回転支持軸23の回転に伴ってラッチベース43も一体となって回転する。以上より、本体側回転支持軸23は、ラッチベース43、ワッシャ45、ナット47、ギア33とともに一体となって回転する。
【0024】
ラッチベース43上には図示しない一対のラッチが回転可能に取り付けられ、一対のラッチはベースプレート27側の対応するピンにそれぞれ係合可能である。電動モータ31の駆動によりギア33を介して本体側回転支持軸23が一定角度回転し、それに伴うラッチベース43の回転によって、一方のラッチが対応する一方のピンに係合し、本体側回転支持軸23の逆回転を規制する。この際、回転アーム15も一体となって一定角度回転し、上記ラッチの係合状態でステップ板3が例えば突出(使用)状態となってその状態が維持される。
【0025】
一方、上記の状態から電動モータ31が逆回転して本体側回転支持軸23も逆回転すると、ギア33上の突起が係合状態の一方のラッチの係合を解除し、そのまま回転を継続すると他方のラッチが対応する他方のピンに係合してギア33の正回転を規制する。この際、回転アーム15も一体となって回転し、ステップ板3が例えば格納(非使用)状態となってその状態が維持される。
【0026】
回転アーム15は、
図6に示すように、上部材49と下部材51との二つの部材に分割されており、
図6中で右側となる先端部15aには前記したステップ板回動支持軸19が挿入される挿入孔49a,51aをそれぞれ設けている。一方、回転アーム15の基端部15bには、上部材49にのみ、前記した本体側回転支持軸23が挿入される挿入孔49bを設けている。また、基端部15bには、上部材49と下部材51との間に軸取付用コア53を配置している。軸取付用コア53には、本体側回転支持軸23が挿入されて取り付けられる取付孔53aを設けている。
【0027】
取付孔53aは、
図5に拡大して示すように、上部材49側に位置する円筒孔53a1と、円筒孔53a1の下部に連続する円錐孔53a2と、円錐孔53a2のさらに下部に連続する下部円筒孔53a3とを備えている。円筒孔53a1は、上部材49の挿入孔49bと内径がほぼ同等であり、円錐孔53a2は、下部の内径が上部の内径よりも大きい。
【0028】
一方、上記した取付孔53aに挿入される本体側回転支持軸23は、下端部に円錐部23aを設けている。円錐部23aは、下部の外径が上部の外径よりも大きい。円錐部23aの下部には下部円筒孔53a3と同心円状に形成される円形部23bを設けている。円錐部23aの斜面と軸取付用コア53の円錐孔53a2の斜面とは互いに平行である。また、円錐部23aの斜面の長さBは、軸取付用コア53の円錐孔53a2の斜面の長さCよりも短い。
【0029】
軸取付用コア53の円錐孔53a2及び下部円筒孔53a3と、本体側回転支持軸23の円錐部23a、円錐部23aの上部の軸部の一部及び円形部23bとの間には、環状の隙間が形成される。この環状の隙間に、結合部としての溶接部55を設けている。溶接部55は、例えばCO
2溶接によって溶接材を溶融させてその溶融物を充填する。
【0030】
溶接作業としては、上部材49の下部材51に対向する面に軸取付用コア53を重ね合わせた状態で、本体側回転支持軸23を、取付孔53a及び挿入孔49bに取付孔53a側から挿入した状態で行う。これにより、上記した環状の隙間内にほぼ円錐形状の環状の溶接部55が形成される。このとき、本体側回転支持軸23の軸心Pと、取付孔53a及び挿入孔49bの中心とを整合させた状態で行う。
【0031】
また、このとき、本体側回転支持軸23の下端面23cと、軸取付用コア53の上部材49と反対側の下端面53bとをほぼ同一面とする。この際、溶接部55の上部材49と反対側の下端部55aが、上記した下端面23c及び下端面53bから
図5中で下方に突出しないようにして、これら下端面23c及び下端面53bと同一面とする。溶接部55を形成したら、下部材51を上部材49に溶接によって固定する。
【0032】
ここで、本実施形態では、
図5に示すように、溶接部55の外周側の傾斜面55bと、該傾斜面55bに密着する軸取付用コア53の円錐孔53a2の内面との間に結合傾斜面57を有している。結合傾斜面57は、本体側回転支持軸23の軸方向に対し、下部が上部よりも半径方向外側となるよう傾斜している。そして、この結合傾斜面57上の上方への延長線Qは、ブッシュ37の上部の摺動子39の上端内側の角部Rを通過する。角部Rは本体側回転支持軸23の外周面に接触している。なお、延長線Qは本体側回転支持軸23の軸心Pと同一面上にある。
【0033】
また、本体側回転支持軸23の円錐部23aと溶接部55の内周傾斜面55cとの間には、軸側結合傾斜面59を有している。軸側結合傾斜面59と前記した結合傾斜面57とは互いにほぼ平行であり、これら相互間に溶接部55が形成されている。
【0034】
次に、作用を説明する。ステップ板3を、
図4(a)のように車体側部に突出した使用状態としたときに、乗員がステップ板3に足を載せると、ステップ板3には荷重F(
図1)が作用する。この荷重Fは、ブラケット17を介して回転アーム15及び本体側回転支持軸23に伝達され、回転アーム15及び本体側回転支持軸23は、
図5に示すブッシュ37の摺動子39における上端内側の角部Rを支点(曲げ支点)として、
図5中で反時計回り方向に回転しようとする。
【0035】
このとき、荷重Fが大きくなることで回転アーム15及び本体側回転支持軸23は弾性変形し、角部Rに接触する部分にて曲げ荷重を受ける。すなわち、本体側回転支持軸23は、回転アーム15がステップ板3を介して下方に向けて荷重Fを受けたときに、本体部13の軸支持部となるブッシュ37との間で曲げ荷重を受け、曲げ支点(角部R)回りのモーメントMが発生する。
【0036】
その際、本体側回転支持軸23は、ナット47により本体部13(ブッシュ37)からの抜け止めがなされ、回転アーム15は、溶接部55により本体側回転支持軸23からの抜け止めがなされて、静的な釣り合いが維持される。つまり、ステップ板3が荷重Fを受けたときに、本体側回転支持軸23の下部では、回転アーム15と本体側回転支持軸23との間の結合傾斜面57を含む溶接部55が荷重を受けることになり、溶接部55には、モーメントMに対し上記した静的釣り合いを維持するための反力が発生する。
【0037】
ここで、本実施形態では、結合傾斜面57の延長線Qが摺動子39の角部Rに一致している。このため、回転アーム15が、摺動子39の角部Rを本体側回転支持軸23の曲げ支点として回転しようとするときに、延長線Q上の結合傾斜面57において、溶接部55が軸取付用コア53を直角方向に押し付ける力f1が反力として作用する。つまり、延長線Q上の結合傾斜面57において溶接部55が軸取付用コア53を直角方向に押し付ける圧縮荷重が作用するので、延長線Q上の結合傾斜面57は圧縮荷重を受ける荷重受け部を備えていることになる。
【0038】
これと同時に、上記力f1が作用する部分に対して反対側の
図5中で左側に位置する結合傾斜面57においては、軸取付用コア53が溶接部55を直角方向に押し付ける圧縮方向の荷重f2が作用する。
【0039】
このように、本実施形態では、回転アーム15がステップ板3を介して下方に向けて荷重Fを受けたときに、結合部の荷重受け部となる結合傾斜面57が、回転アーム15と本体側回転支持軸23との間で圧縮荷重を受ける。このため、溶接部55を含む結合部は、引張荷重を受ける場合に比較して破損しにくくなり、溶接部55を含む結合部の破損を抑制できる。
【0040】
また、本実施形態では、本体側回転支持軸23が曲げ荷重を受ける曲げ支点となる角部Rが、結合部となる溶接部55の傾斜面55bの延長線Q上に位置している。このため、本体側回転支持軸23が曲げ荷重を受けるときには、結合傾斜面57が直角方向に圧縮荷重を受けるので、溶接部55を含む結合部の破損をより確実に抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、溶接部55と軸取付用コア53との間の結合傾斜面57と、溶接部55と本体側回転支持軸23との間の軸側結合傾斜面59との間に、溶接部55が形成されている。このため、回転アーム15と本体側回転支持軸23との間の結合部として溶接部55を用いた場合であっても、結合傾斜面57に対応する溶接部55の傾斜面55bが直角方向に圧縮荷重を受けるので、溶接部55の破損を抑制することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【0043】
例えば、上記した実施形態では、回転アーム15と本体側回転支持軸23との間の結合部として溶接部55を使用する場合について説明した。しかし、溶接部55を設けずに、軸取付用コア53の取付孔53aの円錐孔53a2に、本体側回転支持軸23下部の円錐部23aを直接密着させて固定する構造に対しても本発明を適用することができる。
【0044】
また、溶接部55は、本体側回転支持軸23の全周に設けて環状に形成しているが、少なくとも
図5に示されている位置、すなわち、ステップ板3に荷重Fが作用したときに、本体側回転支持軸23と軸取付用コア53との間に圧縮荷重が作用する部位に設けてあればよい。