特許第6221445号(P6221445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221445
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車両用走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20171023BHJP
   B60K 31/00 20060101ALI20171023BHJP
   B60W 30/16 20120101ALI20171023BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G08G1/16 E
   B60K31/00 Z
   B60W30/16
   G08G1/09 H
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-148683(P2013-148683)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-22423(P2015-22423A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠秀
(72)【発明者】
【氏名】川添 寛
(72)【発明者】
【氏名】橋口 博文
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−309959(JP,A)
【文献】 特開2012−035819(JP,A)
【文献】 特開2007−290707(JP,A)
【文献】 特開2012−068966(JP,A)
【文献】 特開2003−115095(JP,A)
【文献】 特開2013−069178(JP,A)
【文献】 特開平11−175897(JP,A)
【文献】 特開2012−240531(JP,A)
【文献】 特開平09−081899(JP,A)
【文献】 特開2013−125345(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0131949(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
B60W 10/00 − 10/30
B60W 30/00 − 50/16
B60K 31/00 − 31/18
F02D 29/00 − 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周囲を走行する車両のうち、少なくとも先行車両を検出する周辺車両検出部と、
自車両周囲の他車両と車車間通信を行いながら、先行車両との車間時間が隊列走行用の目標車間時間となるように制駆動力制御を行う隊列走行制御部と、
現状の隊列走行状態を維持困難な状況である維持困難状態か否かを判定する隊列状態維持判定部と、
上記隊列状態維持判定部が上記維持困難状態と判定すると、先行車両との車間時間を上記隊列走行用の目標車間時間よりも長い離隔用の車間時間となるように制駆動力を制御する車間時間変更部と、
先行車両が減速中か否かを判定する先行車両減速判定部と、を備え
上記先行車両減速判定部が先行車両の減速中と判定しているときの上記離隔用の車間時間を、上記先行車両減速判定部が先行車両の減速中と判定していないときの上記離隔用の車間時間よりも大きな値とすることを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
上記隊列状態維持判定部は、隊列走行の解除操作を検出すると、上記維持困難状態と判定し、
上記車間時間変更部は、上記隊列状態維持判定部が隊列走行の解除操作を検出することで上記維持困難な状況と判定すると、上記離隔用の車間時間となるまで制動制御を実行することを特徴とする請求項1に記載した車両用走行制御装置。
【請求項3】
上記隊列状態維持判定部が検出する上記隊列走行の解除操作の一つは、運転者による制動操作子の操作であり、
上記車間時間変更部は、上記隊列状態維持判定部が運転者による制動操作子の操作を検出することで上記維持困難な状況と判定した場合には、当該運転者による制動操作子の操作を検出した際の減速度を維持するように制動制御を実行することを特徴とする請求項2に記載した車両用走行制御装置。
【請求項4】
上記隊列状態維持判定部は、先行車両との車車間通信が不能状態となると、上記維持困難状態と判定し、
上記車間時間変更部は、先行車両との車車間通信が不能状態となることで上記維持困難状態と判定すると、行車両との車車間通信が不能状態となることで上記維持困難状態と判定している間、上記隊列走行用の目標車間時間を上記離隔用の車間時間に設定変更することで実行することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載した車両用走行制御装置。
【請求項5】
上記隊列状態維持判定部は、先行車両との車車間通信が不能状態となると、上記維持困難状態と判定し、
上記車間時間変更部は、先行車両との車車間通信が不能状態となることで上記維持困難状態と判定すると、自車両を隊列走行の先頭車両に設定変更すると共に、上記離隔用の車間時間となるように制動制御を実行することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載した車両用走行制御装置。
【請求項6】
上記自車両を隊列走行の先頭車両に設定してから予め設定した第1設定時間経過したと判定すると、隊列走行状態を解除することを特徴とする請求項に記載した車両用走行制御装置。
【請求項7】
上記自車両を隊列走行の先頭車両に設定してから上記第1設定時間経過前に先行車両との車車間通信が再度通信可能となると、先行車両との隊列の再結合処理を行うことを特徴とする請求項に記載した車両用走行制御装置。
【請求項8】
自車両周囲を走行する車両のうち、少なくとも先行車両を検出する周辺車両検出部と、
自車両周囲の他車両と車車間通信を行いながら、先行車両との車間時間が隊列走行用の目標車間時間となるように制駆動力制御を行う隊列走行制御部と、
道路種別が隊列走行の実施条件を満足しない道路位置に予め設定した距離だけ近づいたと判定すると、現状の隊列走行状態を維持困難な状況である維持困難状態と判定する隊列状態維持判定部と、
上記隊列状態維持判定部が道路種別が隊列走行の実施条件を満足しない道路位置に予め設定した距離だけ近づくことで上記維持困難状態と判定し、且つ先行車両が隊列状態を解除したと判定すると、先行車両との車間時間を上記隊列走行用の目標車間時間よりも短い近接用の車間時間となるように自車両を制駆動制御する第2車間時間変更部と、
上記第2車間時間変更部の作動によって先行車両との車間時間が上記近接用の車間時間となったと判定すると隊列走行を解除することを特徴とする車両用走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両周囲の車両と車車間通信をしながら隊列走行可能な走行制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転状態である隊列走行制御を行う車両用走行制御装置としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1に記載の技術では、先行車両及び後続車両とデータ授受を行いつつ隊列走行をする。このとき、自車両が先頭車両でない場合には、先行車両から送信された先行車識別番号に「1」を足した値を自車両識別番号として設定することで隊列中の自車両位置を認識する。また、運転者の離脱操作(隊列走行の解除)などによって上記隊列走行制御つまり自動制御状態が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−81899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
隊列走行状態では、自車両が先頭車両でない場合、自車両は、先行車両に対し隊列走行に適した短い車間時間となるように制駆動力制御を行う自動運転状態となっている。このような隊列走行中であって、先行車両との車間距離が十分に開いていない状況で、運転者が隊列走行の解除操作をして手動運転状態に移行したとき、先行車両が減速すると、上記減速に対する自車両の減速対応が遅れる可能性がある。減速対応が遅れると、例えば、自車両が必要以上に先行車両に近づいてしまう可能性がある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、現状の隊列走行状態を維持困難な状況において、先行車両の減速度の変化に対する対応をより容易にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、自車両周囲の他車両と車車間通信を行いながら、先行車両との車間時間が隊列走行用の目標車間時間となるように制駆動力制御を行う。隊列走行中に、現状の隊列走行状態を維持困難な状況である場合には、先行車両との車間時間を上記隊列走行用の目標車間時間よりも長い離隔用の車間時間となるように制駆動力制御を行う。先行車両が減速中か否かを判定し、先行車両の減速中と判定しているときの離隔用の車間時間を、先行車両減速判定部が先行車両の減速中と判定していないときの離隔用の車間時間よりも大きな値とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、現状の隊列走行状態を維持困難な状況になると、隊列走行用の目標車間時間よりも長い離隔用の車間時間に調整することで、先行車両の減速度の変化に対応可能な車間時間が増大する。この結果、現状の隊列走行状態を維持困難な状況になった場合において、先行車両の減速度の変化に対する対応がより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に基づく実施形態に係る車両構成を示す図である。
図2】本発明に基づく実施形態に係る制御構成を示す図である。
図3】本発明に基づく実施形態に係る走行制御コントローラの構成を示す図である。
図4】本発明に基づく第1実施形態に係る処理例を説明するフローチャート図である。
図5】第1変形例の処理を説明する図である。
図6】第2変形例の処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
(構成)
車両は、制動力を発生する制動装置、及び駆動力(駆動トルク)を発生する駆動装置を備える。
制動装置は、図1に示すように、車輪13に設けられるブレーキ装置10と、その各ブレーキ装置10に接続する配管を含む流体圧回路11と、ブレーキコントローラ6Aとを備える。ブレーキコントローラ6Aは、上記流体圧回路15を介して各ブレーキ装置10で発生する制動力を、制動力指令値に応じた値に制御する。ブレーキ装置10は、流体圧で制動力を付与する装置に限定されず、電動ブレーキ装置等であっても良い。
【0009】
駆動装置は、図1に示すように、駆動源としてのエンジン12と、エンジン12で発生するトルク(駆動力)を制御するエンジンコントローラ6Bとを備える。駆動装置の駆動源は、エンジン12に限定されず、電動モータであっても良いし、エンジンとモータを組み合わせたハイブリッド構成であっても良い。
上記ブレーキコントローラ6Aとエンジンコントローラ6Bは、それぞれ上位コントローラである走行制御コントローラ5からの制動指令、駆動指令の各指令値(制駆動力制御量)を受け付ける構成とする。ブレーキコントローラ6Aとエンジンコントローラ6Bは、加減速制御装置を構成する。
【0010】
また車両は、図1及び図2に示すように、制御作動用スイッチ1、車輪速センサ2、外界認識装置3、通信装置4を備える。また、車両は、走行制御コントローラ5を備える。
制御作動用スイッチ1は、隊列走行制御、先行車追従走行制御(ACC走行制御)を含む自動走行制御の作動の開始指示及び終了指示、または走行制御の設定車速の変更指示を行うための操作子である。この制動作動用スイッチの状態は、走行制御コントローラ5に出力される。制御作動用スイッチ1は、例えばステアリングホイールに設けられている。
【0011】
ここで、隊列走行は、複数の車両と隊列の群を形成して走行する。自車両が所属する隊列内において自車両が先頭車両でない場合には、先行車両に対し目標車間時間となるように走行制御が実行される。先行車追従走行制御(ACC走行制御)でも、先行車両に対し目標車間時間となるように走行制御が行われるが、隊列走行制御では、交通効率を考慮して、先行車追従走行制御(ACC走行制御)よりも短い車間時間となるように制御が行われる。追従制御という点だけに限定すれば、目標車間時間となるように走行制御する点では、隊列走行制御も先行車追従走行制御(ACC走行制御)も同様である。
【0012】
車輪速センサ2は、車輪速を検出し、検出した車輪速情報を走行制御コントローラ5に出力する。車輪速センサ2は、例えば車輪速パルスを計測するロータリエンコーダなどのパルス発生器で構成する。
外界認識装置3は、自車両前方に存在する先行車両を認識し、その認識した先行車両の状態として、当該先行車両の有無及び走行状態を検出を検出する。検出した先行車両の状態に関する情報は、走行制御コントローラ5に出力される。外界認識装置3は、例えばレーザ距離計やカメラによって構成する。
【0013】
通信装置4は、自車両周囲の車両と車車間通信を行う通信装置4である。通信装置4は、予め設定した範囲に存在する先行車両や後続車両と車車間通信を行い、隊列走行を行うための識別情報の授受を行い、先行車両や後続車両から取得した識別情報を走行制御コントローラ5に出力する。通信装置4を介して先行車両や後続車両の走行情報を取得しても良い。
走行制御コントローラ5は、制御作動用スイッチ1がON(制御作動要求)であると判定した場合には、制御作動用スイッチ1の作動状態と、車輪速センサ2からの信号に基づく自車速と、外界認識装置3が検出した先行車両の走行状態に関する情報と、通信装置4が取得した識別情報とに基づき、先行車両に対する追従走行や隊列走行のための走行制御を行う。
【0014】
走行制御コントローラ5は、制御作動用スイッチ1のうち隊列走行作動要求がON(制御作動要求)であると判定すると、予め設定した範囲に存在する先行車両及び後続車両と車車間通信をして隊列走行状態へ移行するか判定する。走行制御コントローラ5は、隊列走行状態へ移行と判定すると、隊列走行制御の処理を実行する。すなわち、走行制御コントローラ5は、自車両の走行状態の情報、外界認識装置3による先行車両の検出情報、通信装置4から得られる自車両周囲車両の情報に基づき隊列走行制御を行う。なお、制御作動用スイッチ1のうちACC走行作動要求がON(制御作動要求)であると判定すると、自車両の走行状態の情報、外界認識装置3による先行車両の検出情報に基づき追従走行制御を行う。ACC走行制御においても、車車間通信によって先行車両の走行情報を取得して使用しても良い。
【0015】
走行制御コントローラ5は、ACC走行制御を行う場合、運転者が設定した車間距離に基づく車間時間や予め設定されているACC用の車間時間を目標車間時間として追従走行制御を実行する。また走行制御コントローラ5は、隊列走行制御の処理を実行する場合、自車両が先頭車両でない場合には、先行車両に対し、隊列走行用の目標車間時間となるように追従走行制御を実行する。隊列走行用の目標車間時間は、例えばACC制御時の目標車間時間よりも小さく設定されている。上記追従走行制御のために算出した制御指令値(加減速制御量)は、加減速制御装置6を構成するブレーキコントローラ6A及びエンジンコントローラに出力される。ブレーキコントローラ6A及びエンジンコントローラは、受信した加減速制御量(制御指令値)となるように車両の加減速を制御する。
【0016】
上記走行制御コントローラ5は、マイクロコンピュータおよびその周囲回路を備えるコントローラである。この走行制御コントローラ5は、本実施形態の走行制御を実現するために、図3に示すような処理ロジックを備える。すなわち、走行制御コントローラ5は、図3に示すように、制御状態設定部5A、先行車検出状態判定部5B、先行車車速・減速度推定部5C、目標応答特性算出部5D、目標車速算出部5E、目標加減速度算出部5F、車速指令値算出部5G、車速サーボ演算部5J、トルク配分制御演算部5K、エンジントルク演算部5L、及びブレーキ液圧演算部5Mを備える。さらに、走行制御コントローラ5は、及び隊列走行判定処理部5Nを備える。
【0017】
制御状態設定部5Aは、上記制御作動用スイッチ1の作動状態に基づき、制御を作動させるための各種スイッチ操作の有無判断を行う。運転者による制御作動用スイッチ1の操作状態を検出し、検出結果を、先行車検出状態判定部5B、車速指令値算出部5G、及び隊列走行判定処理部5Nに出力する。ここで、隊列走行を行うと判定した場合には、追従時の隊列走行用の目標車間時間に設定する。なお、予め設定した車両前方に対し、先行車両の存在を検出しない場合には、設定車速を車速指令値とする。隊列走行時に自車両が先頭車両となった場合は、隊列走行用の設定車速を車速指令値とする。すなわち、ACC走行制御時と隊列走行制御時では、上記設定車速は必ずしも一致しない。
【0018】
先行車検出状態判定部5Bは、追従制御対象となる先行車両の検出状態を判断する。すなわち、先行車検出状態判定部5Bは、外界認識装置3から得られる自車両前方を走行する先行車両と自車両との間の車間相対値と、制御状態設定部5Aから得られた運転者のスイッチ操作とに基づき、追従制御対象となる先行車両の有無を判断する。そして、判断結果を先行車車速・減速度推定部5Cへ出力する。ここで、本実施形態の上記車間相対値は、車間距離及び相対速度である。ここで、先行車両の走行状態の情報の一部を車車間通信によって取得しても良い。
【0019】
先行車車速・減速度推定部5Cは、先行車検出状態判定部5Bが追従制御対象が存在すると判定した場合に、当該追従制御対象となる先行車両の車速及び加減速度の推定値を算出する。そして、算出した先行車両の車速推定値、及び先行車両加減速度推定値を目標応答特性算出部5Dへ出力する。
目標応答特性算出部5Dは、先行車両の加減速度に対して、どのような応答特性とするかを算出する。目標応答特性算出部5Dは、先行車車速・減速度推定部5Cが算出した先行車両の車速度推定値と先行車両加減速度推定値と、制御状態設定部5Aから取得した追従時の目標車間時間の設定値を基に、目標応答特性を算出する。ここで、追従時におけるACC制御時の目標車間時間は運転者のスイッチ操作により選択可能としている。複数台で群を形成して走行する隊列走行と判定した場合は、目標車間時間の設定値は固定とするが、選択可能としても良い。
【0020】
目標車速算出部5Eは、目標応答特性算出部5Dで算出された目標応答特性を満足する目標車速を算出する。目標車速算出部5Eは、算出した目標車速を目標加減速度算出部5Fへ出力する。
目標加減速度算出部5Fは、目標車速算出部5Eが算出した目標車速を基に、目標加減速度を算出し、算出した目標加減速度を車速指令値算出部5Gへ出力する。
車速指令値算出部5Gは、目標加減速度算出部5Fが算出した目標加減速度に対し加減速度の変化率リミッタを付加し、そのリミッタ処理をした目標加減速度から車速指令値を算出する。そして、車速指令値算出部5Gで算出された車速指令値は、車速サーボ演算部5Jで使用される。
【0021】
ここで、本実施形態では先行車両に追従しているものとして記載する。特に、隊列走行時における先行車両への追従を中心にして説明する。
自車両前方の予め設定した先方距離内に先行車両が存在しないなど、先行車両非追従時の場合は、運転者が設定した設定車速が車速指令値となる。
隊列走行判定処理部5Nは、通信装置4による車車間通信によって、先行車両や後続車両と識別情報の授受を行い、隊列状態の判定を行う。隊列走行判定処理部5Nは、自車隊列番号IDの初期値を「0」とし、先行車両が存在しないか、先行車両が存在していても、その先行車両と連結しない場合には、自車隊列番号IDを「1」とする。具体的には、隊列走行判定処理部5Nは、先行車両に連結要求信号を出力し、その連結要求信号に対して先行車両から連結許可信号を受信した場合には、先行車から受信した先行車の自車隊列番号IDに「1」を足した値を自車の自車隊列番号IDとする。一方、隊列走行判定処理部5Nは、先行車両に連結要求信号を出力し、その連結要求信号に対して先行車両から連結非許可信号を受信した場合には、自車の自車隊列番号IDを、初期値の「1」に設定する。先行車両から連結非許可信号が出力される場合とは、例えば先行車両が隊列の最後尾の車両と認識している場合である。例えば、隊列の台数を5台とした場合、先行車両の自車隊列番号IDが「5」となっている場合には、後続車両に対して連結非許可信号を出力する。また、隊列走行中であれば、自車隊列番号IDが「2」以上であれば、先行車両に追従するように走行制御を実行するように走行制御が実行されることなる。
【0022】
車速サーボ演算部5Jは、車速指令値算出部5Gで演算された車速指令値となるように車両を制駆動制御する処理を行う。すなわち、車速サーボ演算部5Jは、選択された車速指令値を達成するための目標加減速度を演算し、演算した車速指令値に対し演算した目標加減速度をトルク配分制御演算部5Kへ出力する。
トルク配分制御演算部5Kは、車速サーボ演算部5Jが演算した目標加減速度に応じたエンジントルク、ブレーキトルクのトルク配分を演算する。そして、分配されたトルクを、それぞれエンジントルク演算部5L及び、ブレーキ液圧演算部5Mへ出力する。
【0023】
エンジントルク演算部5Lは、トルク配分制御演算部5Kで配分されたトルクを達成するためのエンジントルク指令値を算出する。エンジントルク指令値はスロットル開度等である。エンジントルク演算部5Lは、算出したエンジントルク指令値をエンジンコントローラ6Bに出力する。
ブレーキ液圧演算部5Mは、トルク配分制御演算部5Kで配分されたトルクを達成するためのブレーキ液圧指令値を算出し、算出したブレーキ液圧指令値をブレーキコントローラ6Aに出力する。
【0024】
次に、上記走行制御コントローラ5における追従走行制御に係わる処理を、特に隊列走行制御での追従走行制御に関わる処理を中心に、図4のフローチャートを参照して説明する。この処理は、上記の制御部が追従走行制御の実行条件を満足する判定すると起動し、追従制御終了と判定されるまで、予め設定した制御時間毎に実施される。
ここで、走行制御コントローラ5は、上位の制御部本体で、ACC追従制御及び隊列走行制御を実行するか判定し、実行開始と判定すると、追従制御に係わる処理を開始する。
【0025】
先ずステップS10では、走行制御コントローラ5は、各センサ及び他のコントローラからの各種データを読み込む。具体的には、制御作動用スイッチ1の各種スイッチの情報、外界認識装置3から先車両情報として車間距離vDistance、相対速度vVR、各輪の車輪速Vwi(i=1〜4)、自車識別番号を読み込む。
次に、ステップS20では、自車速Vを算出する。本実施形態では、通常走行時には、例えば後輪駆動の車両の場合は、下記(1)式により前輪の車輪速Vw1,Vw2の平均値として自車速Vを算出する。Vw1,Vw2は、タイヤ径に基づき求めた車速換算値とする。
V=(Vw1+Vw2)/2 ・・・(1)
【0026】
なお、ABS制御などの車速を用いた他のシステムが作動している場合には、そのような他のシステムで使用している自車速(推定車速)を用いても良い。
ステップS30では、隊列走行要求がONになっている場合、先行車両と車車間通信を行うことで、上述した自車識別番号の設定処理を行う。隊列走行要求がONになっていない場合には、例えば自車識別番号を「0」に初期化する。
【0027】
ステップS40では、隊列走行の解除要求があったか判定する。解除要求があった場合には、ステップS200に移行する。解除要求が無い場合には、ステップS50に移行する。ここで、隊列走行の解除要求は、ブレーキペダルを踏み込む操作やスイッチ操作によって発生する。
ステップS200では、先行車両の走行状態として先行車両が減速しているか判定する。例えば、ブレーキ操作を検出するブレーキスイッチがONとなったことを、通信装置4を介して受信することで、先行車両の減速を判定する。相対速度の変化から減速度の変化を検出して判定しても良い。先行車が減速していないと判定した場合にはステップS210に移行する。先行車両が減速していると判定した場合にはステップS220に移行する。
【0028】
ステップS210では、離隔用の車間時間として、隊列用の車間時間よりも大きな第1の車間時間を設定する。そしてステップS230に移行する。
ステップS220では、離隔用の車間時間として、第1の車間時間よりも大きな第2の車間時間を設定する。そしてステップS230に移行する。
ステップS230では、先行車との車間時間が、離隔用の車間時間以上か判定する。先行車との車間時間が、離隔用の車間時間以上と判定した場合には、追従走行の走行制御を終了して、上位の制御本体部(不図示)に復帰して、追従制御を終了する。先行車両との車間時間が、離隔用の車間時間未満の場合には、ステップS240に移行する。
【0029】
ステップS240では、解除要求を検出した時の自車両の減速度を制動指令として設定する。そして、その制動指令を加減速制御装置に出力して復帰する。ここで、上記離隔用の車間時間より大きな値を目標車間時間に設定してS90に移行して制駆動制御を実施して離隔用の車間時間となるように走行制御しても良い。
ステップS50では、先行車両との通信状態を判定する。例えばメッセージカウンタなどで通信状態を判定する。具体的には、先行車両と通信不能状態か否かを判定する。通信可能状態と判定した場合にはステップS60に移行する。通信不能状態と判定した場合には、ステップS70に移行する。
【0030】
ステップS60では、隊列用の目標車間時間に対して、隊列用の目標車間時間の初期値を設定してステップS80に移行する。
ステップS70では、隊列用の目標車間時間に対して、上記隊列用の目標車間時間の初期値よりも大きな第3の車間時間を離隔用の車間時間として設定する。
ここで、目標車間時間Tgapは、ACC走行制御では運転者のスイッチ操作に基づき選択する。ただし、複数台での隊列走行を行う隊列走行制御での追従制御の際には、予め設定した固定値とする。ここで、隊列走行で設定する目標車間時間の初期値は、ACC制御の車間時間よりも短い車間時間とすることで、より交通効率を向上させることが可能となる。
【0031】
ステップS80では、上記処理で設定された目標車間時間を達成するための目標車間距離Ltを算出する。隊列走行と判定されている場合には、隊列用の目標車間時間が設定される。例えば自車識別番号が2以上の値となっている場合には、隊列走行での追従走行制御であると判定する。
目標車間距離Ltは、例えば次にようにして算出する。すなわち、目標車間時間をTgap、先行車両の車速Vtとした場合に、目標車間距離Ltは、例えば下記(2)式によって算出する。
Lt=Vt×Tgap ・・・(2)
【0032】
ここで、先行車両の車速Vtは相対速度vVRと自車速Vから算出する。先行車両の車速Vtは、車車間通信で先行車両から受信しても良い。
ステップS90では、目標応答特性を算出する。ステップS90では、ステップS80で設定した目標車間距離Ltを実現するための応答特性として、目標車速Vtargetを算出する。先ず、第1目標車速Vrefを、先行車両と自車両との間の車間相対値と目標車間相対値との偏差に基づき算出する。本実施形態では、車間相対値として、先行車両と自車両との間の車間距離及び相対速度を使用する場合とする。すなわち本実施形態では、下記(3)式のように、目標車間距離と車間距離とのと車間距離偏差、目標相対速度vVTと相対速度の相対速度偏差、及び先行車両の車速のそれぞれに対して、それぞれにゲインK1、K2、K3をかけた値を変数とする関数から、第1目標速度Vref求める。目標相対速度vVTは、例えばゼロとする。各ゲインK1、K2、K3は、例えば対応するパラメータが大きくなるほど大きな値となるように設定されている。
【0033】
Vref = f( K1×(vVR−vVT)、
K2×(Lt−vDistance)、
K3×vVR)・・・(3)
そして、上記第1目標車速Vrefに対して、下記(4)式に基づき、予め設定した伝達特性を持たせた目標車速Vtargetを算出する。ここで、上記(4)式では、伝達特性として1次遅れ系のフィルタを施す場合を例示している。
【0034】
【数1】
【0035】
次に、ステップS100では、上記目標車速Vtargetに基づき目標加減速度を算出する。ステップS100では、ステップS90で算出した目標応答特性を実現するための目標加減速度Xgtを、下記(5)式に基づき算出する。ここでは、変数が自車速Vと目標車速Vtargetの関数を採用する。
Xgt = f(V、Vtarget)・・・(5)
(5)式の関数は、例えば、自車速と目標車速との車速偏差(V−Vtarget)が予め設定した値より小さい場合は、前回の目標加減速度を小さくし、その車速偏差が予め設定した値より大きい場合は、前回の目標加減速度を大きくするような関数とする。
【0036】
ステップS110では、ステップS100で算出した目標加減速度Xgtから目標車速指令値を算出する。具体的には、ステップS100で算出した目標加減速度Xgtに対して、予め設定した範囲に変化量を抑える加減速度リミッタ処理を施して、リミッタ処理後の目標加減速度Xgtargetを求め、そのリミッタ処理後の目標加減速度Xgtargetに基づき、(6)式によって目標車速指令値Vtargetを算出する。加減速度リミッタ処理は、例えば前回値と今回値との差分を取り、その差分が予め設定した差分閾値以上の場合には、前回値に差分閾値を加えた値を今回の目標加減速度Xgtargetとする。
Vtarget=f(Xgtarget)× Stime・・・(6)
ここで、Stimeは予め設定した時間をあらわす。
【0037】
ステップS120では、トルク配分制御を算出する。具体的には、ステップS110で算出した目標車速指令値Vtargetを実現するための制御量を、エンジントルク指令値と、ブレーキ液圧指令値とに配分する。
例えば、加速度もしくは、車速からATギア比などを含めたホイル端トルク指令値を求め、その後、ホイル端トルク指令値からエンジントルク指令値を求める。その後、ホイル端トルクから算出したエンジントルク指令値から、エンジンブレーキ+走行抵抗分を差し引いた分をブレーキ液圧指令値とする。
【0038】
ステップS130では、エンジン制御作動判断を行う。具体的には、ステップS120で算出されたエンジントルク指令値が予め設定した所定値以下となった場合に、エンジン制御作動フラグfengを「1」に設定して、エンジントルク指令値を出力する。
ステップS140では、ブレーキ制御作動判断を行う。具体的には、ステップS120で算出されたブレーキ液圧指令値が予め設定した所定値以上となった場合に、ブレーキ制御作動フラグfbrを「1」に設定して、ブレーキ液圧指令値を出力する。なお、ステップS36で算出したブレーキ液圧指令値は、予め設定した所定値以上の値である。
ステップS150では、上記ステップS130、S140で算出された各制御量を加減速制御装置に出力する。その後、復帰する。
【0039】
(動作その他)
運転者が隊列走行の選択操作を行うと、外界認識装置の検出情報、及び先行車両や後続車両との車車間情報に基づき、隊列走行可能か判定する。
例えば隊列走行判定処理部5Nは、先行車両に連結要求信号を出力し、その連結要求信号に対して先行車両から連結許可信号を受信した場合には、先行車から受信した先行車の自車隊列番号IDに「1」を足した値を自車の自車隊列番号IDとする。このように先行車両から連結許可信号を受信した場合には、隊列走行可能な状態と見なせる。また、後続車両から連結要求信号を受信し、その連結要求信号に対し連結許可信号を後続車両に出力した場合には、隊列走行可能な状態と見なせる。
隊列走行可能の場合に、自車両が隊列の先頭車両(自車隊列番号ID=1)には、隊列の車群としての設定車両となるように速度制御を行う。
【0040】
次に、隊列走行可能であって、自車両が先頭車両でない場合(自車隊列番号ID>1)について説明する。
この状態では、自車両は周囲の車両と隊列を形成した状態になっていると共に、先行車両に対して隊列走行維持のための追従走行を行う。この隊列走行維持のための追従走行制御では、隊列用の車間時間を目標車間時間として先行車両に対し追従走行制御を行っている。
上記隊列用の車間時間の初期値は、ACC制御の車間時間よりも短い車間時間とすることで、交通効率を向上させることが可能となる。
この隊列を組んだ走行中に、運転者が隊列解除の操作を行ったとする。隊列解除の操作は、例えば運転者がブレーキ操作子(ブレーキペダルなど)を制動方向に操作した場合や、運転者が隊列解除のためのスイッチ操作を行った場合である。
【0041】
運転者が隊列の解除操作を行うと、自車両は、隊列走行のための自動走行状態である追従走行制御から手動運転状態に移行することになる。このとき、隊列走行時には、交通効率を向上するために車間時間を相対的に短く設定されていることから、隊列走行制御を終了した時点では、自車両と先行車両との車間距離が短いおそれがある。この状態で先行車両が減速すると、更に、自車両と先行車両との車間距離が短くなることで、運転者の制動操作などの運転者の運転操作が慌ただしくなるおそれがある。
【0042】
これに対し、本実施形態では、隊列の解除操作を検出しても、実際の車間時間が、隊列走行時の目標車間時間よりも長い隔離用の車間時間よりも短い場合には、先行車両との車間時間が隔離用の車間時間以上となるまで制駆動制御を行う。そして、実際の車間時間が隔離用の車間時間以上となってから手動運転状態に移行する。
このように、先行車両との車間時間が確実に隔離用の車間時間以上となってから手動運転状態に移行することで、隊列の解除操作後に、運転者は、先行車両の減速度の変化、特に先行車の減速度増大に対する対応が容易になる。
【0043】
運転者による隊列の解除操作は、現状の隊列走行状態を維持困難な状況である維持困難状態の一例である。
また、現状の隊列走行状態を維持困難な状況である維持困難状態としては、他の例としては、先行車両との通信が不能となる状態がある。先行車両との通信が不能とある状況は、例えば、先行車両だけがトンネル内を走行するとか、先行車両が上り坂から下り坂を走行し、自車両が上り坂を走行中などに発生するおそれがある。
【0044】
本実施形態では、先行車両との通信が通信不能と判定すると、隊列走行状態は解除することなく、隊列用の目標車間時間を離隔用の車間時間にして長くすることで、通信不能となった先行車両との車間距離を稼ぐことで、先行車両の減速に対する対応が容易になる。
ここで、通信不能と判定して目標車間時間を大きくしても、先行車両との通信が再度可能となったときは先行車両に対する車間距離を隊列用の目標車間距離の初期値に戻すことで、車間距離が短くなる。
先行車両との通信が通信不能の状態が予め設定した時間継続した場合には、隊列走行を解除しても良い。この場合でも、車間時間は、隊列用の目標車間時間よりも大きくなっているので、運転者は、先行車両の減速度の変化、特に先行車の減速度増大に対する対応が容易になる。
【0045】
(第1変形例)
上記実施形態では、先行車両との通信が不能と判定すると、現状の隊列走行状態を維持困難な状況である維持困難状態と判定して、現状の隊列状態を維持したまま目標車間時間を一時的に広げる場合で説明した。現状の隊列状態を維持とは先行車両との隊列の連結状態を維持したままにすることを指す。
これに対し、本変形例では、先行車両との通信が不能と判定すると、自車両を隊列走行の先頭車両となるように隊列が分割するように隊列状態を設定変更する。
【0046】
(構成)
本変形例に係る処理を、フローチャート図である図5を参照して説明する。
すなわち、ステップS50にて先行車両との通信が不能か否かを判定する。通信不能と判定したらステップS410に移行する。通信不能でないと判定した場合にはステップS405に移行する。
ステップS410では、隊列分割処理を行った後にステップS420に移行する。
【0047】
隊列分割処理について、次に記載する。
まず、自車識別番号を「1」に設定変更し、その設定変更後の自車識別番号を後続車に送信する。このとき、後続車両が存在しない場合や、後続車両が他の隊列の先頭車両の場合には、その後続車との隊列の連結処理を行わない。この場合、一時的に自車両1台だけの隊列走行となるが、例外として隊列走行状態と見なして処理を続行する。
また併行して、先行車両との目標車間時間として予め設定した時間だけ追従走行制御を続行する。すなわち、隊列として分割するが、追従走行制御を継続する状態とする。
ここで、隊列一時的分離状態のフラグを立てる(ONにする)と共に、タイマのカウントを開始する。
【0048】
隊列一時的分離状態のフラグは、初期値でオフになっている。また隊列一時的分離状態のフラグがONの場合には、上記隊列分割処理はスキップしてステップS420に移行すればよい。
ステップS420では、上記隊列分離後、予め設定した第1設定時間だけ経過したか判定する。条件を満足する場合(設定時間経過した場合)には、ステップS430に移行する。条件を満足しない場合には、そのまま復帰して上記処理を繰り返す。
ステップS430では、通信不能状態が継続して、一時的な通信不能状態でない場合であるので、隊列走行の解除処理を実行し、追従制御を終了して、上位の制御部に復帰する。
【0049】
またステップS405では、隊列一時的分離状態のフラグがONか否かを判定する。
隊列一時的分離状態のフラグがONならばステップS440に移行する。隊列一時的分離状態のフラグがOFFならば、ステップS80に移行して追従制御を継続する。
またステップS440では、隊列一時的分離状態のフラグが立っており、且つ経過時間が第1設定時間以内か判定する。第1設定時間以内の場合にはステップS450に移行する。第1設定時間を越えている場合にはステップS430に移行する。
【0050】
ステップS450では、通信の電波状態が良いか否かを判定する。例えば電波強度が予め設定した値以上の場合に、電波状態が良いと判定する。電波状態が良いと判定した場合にはステップS460に移行する。電波状態が良いと判定しない場合には、一時的に通信可能となった可能性があるので、そのまま復帰して上記処理を繰り返す。
ステップS460では、通信が回復したとして隊列結合処理を行った後に、復帰する。
【0051】
隊列結合処理について、次に記載する。
先行車両に連結要求信号を出力し、その連結要求信号に対して先行車両から連結許可信号を受信した場合には、先行車から受信した先行車の自車隊列番号IDに「1」を足した値を自車の自車隊列番号IDとする。但し、連結要求信号に対して先行車両から連結非許可信号を受信した場合には、先行車両と連結出来ないので、隊列の結合を行わない。
【0052】
(動作など)
本変形例では、先行車両との通信が不能となると、一時的に隊列を分割し、且つ先行車両との車間時間を、隊列用の車間時間よりも長い車間時間となるように制駆動力制御を行う。
第1設定時間を越えて通信不能状態が継続する場合には、一時的な電波障害による通信不能ではないので、隊列走行を解除する。このとき、隊列用の車間時間よりも長い車間時間で先行車両に追従走行をしていたので、車間距離が稼げているため、隊列走行解除後に先行車両が減速度を増大しても、運転者の制動対応が容易となる。
一方、先行車両との通信が不能になっても第1設定時間以内に通信が回復した場合には、隊列の再結合処理が実行されて、通常の隊列走行に復帰することが可能となる。
【0053】
(第2変形例)
上記実施形態及び変形例の処理に加えて、以下に説明する隊列走行の解除処理を実行しても良い。
(構成)
隊列走行中の処理として、図6示す処理を実行する。この処理は、上記追従走行制御の処理のうち、ステップS10とステップS20との間の処理として実行する。
すなわち、ステップS500にて、自車位置を検出する。自車位置は、GPSによって判定しても良いし、路車間通信によって判定しても良い。
次に、ステップS510にて、ステップS500にて取得した自車位置と、ナビゲーション装置等が有する地図情報とを参照して、現在の走行路の種別が、隊列走行可能な道路種別か判定する。例えば、道路種別が高速道路の場合に隊列走行可能な道路種別と見なす。
【0054】
更に、現在の走行路から路長で予め設定した設定距離だけ前方の道路の種別が、隊列走行が非許可の道路種別であるか判定する。この条件を満足する場合にはステップS520に移行する。一方、条件を満足しない場合には、上述した追従走行制御の処理を続行する。
ステップS520では、先行車両が隊列状態を解除したか否かを判定する。先行車両が隊列状態を解除した場合には、ステップS530に移行する。一方、先行車両が隊列状態を解除していない場合には、上述した追従走行制御の処理を続行する。
【0055】
ステップS530では、先行車両との目標車間時間として、現在の隊列用の車間時間から予め設定した単位減少時間(:正の値)を減じた値を、隊列用の車間時間に設定する。
ステップS540では、現在の車間時間が、予め設定した近接用の車間時間以下か判定する。近接用の車間時間は、隊列用の車間時間の初期値よりも短い時間に設定されている。現在の車間時間の代わりに設定変更した隊列用の車間時間が近接用の車間時間以下か判定しても良い。
現在の車間時間が近接用の車間時間以下の場合には、ステップS550で隊列走行の解除処理を実施したのちに、追従走行を終了する。現在の車間時間が近接用の車間時間よりも大きい場合には、ステップS90に移行して、設定変更した隊列用の車間時間を目標車間時間として追従走行制御を行う。
【0056】
(動作など)
例えば高速道度を隊列走行可能な道路とする。また一般道路は、隊列走行非許可とする。
今、自車両が高速道路を走行中であり、且つ自車両が周囲の車両と隊列を形成して走行している状態であって、高速道路の料金所など当該走行している高速道路の終わり位置に向かっている場面を想定する。
そして、自車両若しくは隊列を形成している車群が、隊列走行が非許可の道路に予め設定した距離まで近づくと、隊列走行解除の処理に移行する。
【0057】
このとき、自車両では、先行車両が隊列を解除してから自車両で隊列の解除処理を行う。すなわち、隊列を先頭車から後方に向けて順番に隊列を分離して隊列を解除していく。
このとき自車両は、隊列の解除処理と強いて、追従制御時の車間時間を現在の車間時間から徐々に短くなるように制御する。通常は、自車両は、加速して先行車両との車間距離を短くする。そして、先行車両に対する自車両の車間時間が隊列用の車間時間よりも短くなってから自車両の隊列解除を行う。
【0058】
ここで、隊列を解除する際に、各車両が減速して車間距離を確保して隊列解除を行うと、各車両が順番に減速することでショックウェーブ現象が発生する。
この点、本実施形態では、前方の車両との車間距離をつめるように加速して隊列の解除を、隊列を形成していた前側の車両から順番に実施することで、上記前方の車両との車間時間を開けてから隊列解除を順番に実施する場合に比べて上記ショックウェーブが起きにくくなる。
ここで、外界認識装置3は周辺車両検出部を構成する。走行制御コントローラ5は隊列走行制御部を構成する。ステップS40,S50,S510は隊列状態維持判定部を構成する。ブレーキペダルは制動操作子を構成する。ステップS200は先行車両減速判定部を構成する。ステップS520〜ステップS540は第2車間時間変更部を構成する。
【0059】
(本実施形態の効果)
(1)走行制御コントローラ5は、自車両周囲の他車両と車車間通信で情報の授受を行いながら、先行車両との車間時間が隊列走行用の目標車間時間となるように制駆動力制御を行う。走行制御コントローラ5は、現状の隊列走行状態を維持困難な状況である維持困難状態か否かを判定する。走行制御コントローラ5は、上記隊列状態維持判定部が上記維持困難状態と判定すると、先行車両との車間時間を上記隊列走行用の目標車間時間よりも長い離隔用の車間時間となるように制駆動力を制御する。
この構成によれば、現状の隊列走行状態を維持困難な状況になると、隊列走行用の目標車間時間よりも長い離隔用の車間時間に調整することで、先行車両の減速度の変化に対応可能な車間時間が増大する。この結果、現状の隊列走行状態を維持困難な状況になった場合において、先行車両の減速度の変化、特に先行車両の減速度の増大に対する対応をより容易になる。
【0060】
(2)走行制御コントローラ5は、隊列走行の解除操作を検出すると、上記維持困難状態と判定し、その隊列走行の解除操作を検出することで上記維持困難な状況と判定すると、上記離隔用の車間時間となるまで制動制御を実行する。
この構成によれば、隊列走行を解除して手動運転に移行したときに、先行車両の減速度の変化に対応可能な車間時間が増大する。この結果、現状の隊列走行状態を維持困難な状況になった場合において、隊列制御から手動運転に移行したときに、先行車両の減速度の変化、特に先行車両の減速度の増大に対する対応をより容易になる。
【0061】
(3)隊列走行の解除操作の一つは、運転者による制動操作子の操作である。走行制御コントローラ5は、運転者による制動操作子の操作を検出することで上記維持困難な状況と判定した場合には、当該運転者による制動操作子の操作を検出した際の減速度を維持するように制動制御を実行する。
この構成によれば、自車両における減速を継続することで、隊列走行を解除する際に、先行車両との車間時間を広げることが可能となる。
【0062】
(4)走行制御コントローラ5は、先行車両の減速中と判定しているときの上記離隔用の車間時間を、上記先行車両減速判定部が先行車両の減速中と判定していないときの上記離隔用の車間時間よりも大きな値とする。
この構成によれば、先行車両が制動を掛けて自車両との相対距離が小さくなる可能性が高い場合には、当該先行車両との車間時間をより大きくしてから隊列走行を解除する。これによって、先行車両の挙動に応じて、先行車両の減速度の変化に対応可能な車間時間が増大する。
【0063】
(5)走行制御コントローラ5は、先行車両との車車間通信が不能状態となることで上記維持困難状態と判定すると、上記先行車両との車車間通信が不能状態となることで上記維持困難状態と判定している間、上記隊列走行用の目標車間時間を上記離隔用の車間時間に設定変更する。
この構成によれば、先行車両との通信が不能状態となって、現状の隊列走行状態を維持出来ない可能性が高くなると、先行車両との車間時間を増大することで、先行車両の減速により対応可能となる。
【0064】
(6)走行制御コントローラ5は、先行車両との車車間通信が不能状態となることで上記維持困難状態と判定すると、自車両を隊列走行の先頭車両に設定変更すると共に、上記離隔用の車間時間となるように制動制御を実行する。
この構成によれば、上記通信が上記不能状態になると、自車両が一時的に隊列の先頭となるように隊列を分割して、先行車両との車間時間を開く。これによって、先行車両との車間時間を増大することで、先行車両の減速に対して対応可能となる。
また先方車両との追従走行を行う事で、通信回復後の先行車両への再結合処理を短時間で可能とする。
【0065】
(7)走行制御コントローラ5は、先行車両との車車間通信が不能状態となることで自車両を隊列走行の先頭車両に設定変更した後に、予め設定した第1設定時間経過したと判定すると、隊列走行状態を解除する。
この構成によれば、通信不能が一時的でない場合には、隊列走行を解除する。またこのとき、先行車両に対する車間時間が長くなっているので、先行車両の減速に対して対応可能となる。
【0066】
(8)走行制御コントローラ5は、上記自車両を隊列走行の先頭車両に設定してから上記第1設定時間経過前に先行車両との車車間通信が再度通信可能となると、先行車両との隊列の再結合処理を行う。
この構成によれば、隊列の再結合を行う事で、交通効率を上げることが出来る。
【0067】
(9)走行制御コントローラ5は、道路種別が隊列走行の実施条件を満足しない道路位置に予め設定した距離だけ近づいたと判定すると、現状の隊列走行状態を維持困難な状況である維持困難状態と判定する。走行制御コントローラ5は、隊列状態維持判定部が道路種別が隊列走行の実施条件を満足しない道路位置に予め設定した距離だけ近づくことで上記維持困難状態と判定し、且つ先行車両が隊列状態を解除したと判定すると、先行車両との車間時間を上記隊列走行用の目標車間時間よりも短い近接用の車間時間となるように自車両を制駆動制御する。その制駆動制御によって先行車両との車間時間が上記近接用の車間時間となったと判定すると隊列走行を解除する。
本構成によれば、隊列全体を解除する場合には、先行車両との車間時間を短くして各車両が隊列を解除することで、各車両が減速することによるショックウェーブが発生し難くなる。
【符号の説明】
【0068】
1 制御作動用スイッチ
3 外界認識装置
4 通信装置
5 走行制御コントローラ
5A 制御状態設定部
5B 先行車検出状態判定部
5C 先行車車速・減速度推定部
5D 目標応答特性算出部
5E 目標車速算出部
5F 目標加減速度算出部
5G 車速指令値算出部
5J 車速サーボ演算部
5K トルク配分制御演算部
5L エンジントルク演算部
5M ブレーキ液圧演算部
5N 隊列走行判定処理部
6 加減速制御装置
6A ブレーキコントローラ
6B エンジンコントローラ
10 ブレーキ装置
12 エンジン
13 車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6