(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る非接触給電装置を含む非接触給電システムの概要図である。本例の非接触給電システムは、電気自動車やハイブリッド車両等の車両に設けられたバッテリに対して、地上側の給電装置から、非接触で電力を供給することで、バッテリを充電するシステムとして用いられる。なお、本例の非接触給電システムは、車両に限らず、他の移動体に搭載されてもよい。また、本例の非接触給電システムは、車両のバッテリに限らず、例えば車両のモータなどの負荷に対して、電力を供給してもよい。
【0011】
非接触給電システムは、交流電源10と、高周波電源回路20と、送電コイル30と、受電コイル40とを備えている。交流電源10、高周波電源回路20、送電コイル30は、地上側に設けられ、受電コイル40は車両1側に設けられている。
【0012】
交流電源10は、例えば三相交流を出力する商用電源である。高周波電源回路20は、整流器、インバータ、及び平滑回路等を有しており、交流電源10から出力される電力を、例えば数kHz〜数百kHz程度の交流電力に変換して、送電コイル30に出力する回路である。高周波電電回路20のインバータは、IGBT又はMOSFET等のスイッチング素子とダイオードを互いに逆向きで並列に接続したものを、複数接続することで構成される電圧側インバータである。そして、後述するコントローラにより、複数のスイッチング素子のオン、オフが制御されることで、送電コイル30から受電コイル40に供給される電力が制御される。
【0013】
送電コイル30は、受電コイル40に対して、少なくとも磁気的な結合によって非接触で電力を送電するコイルであって、地上(道路)に埋設されている。送電コイル30は、基部31、切替部32、及び拡大部33を有している。
【0014】
基部31は、車両の進行方向を長手方向として、長手方向にコイル用の配線を延在させることで構成されており、送電コイル30の一部分である。
図1では、車両の進行方向をX方向としているため、基部31の長手方向もX方向となる。基部31は、コイル用の配線を、屈曲させることで、2つの矩形をもつ形状に形成されている。2つの矩形のうち、一方の矩形は高周波電源回路20からY方向に延在し、他方の矩形は、当該一方の矩形の一端から、X方向に延在している。そして、他方の矩形を形成する辺のうち、長辺の配線31a、31bがX方向(長手方向)に、短辺の配線31c、31dがY方向に(長手方向に対して垂直な方向)なるように、形成されている。配線31a〜31dは、一本の導線、複数の導線を重ねた線、あるいは、複数の導線を捻ったケーブル状の線等で構成されている。また、基部31は、送電コイル30の他の部分である切替部32及び拡大部33と、面積の切り替えを可能とするコイル面を形成するために、同列で平行に並べられた長辺の配線31a、31b間には隙間が設けられ、同様に短辺の配線31c、31d間にも隙間が設けられている。また、長辺の配線31bは、複数の切替部32を構成するために、間隔を空けつつ複数の配線を直線状に並べるように、配置されている。
【0015】
切替部32は、複数の拡大部33と基部31との間の電気的な導通及び遮断を切り替える部分である。切替部32は、複数の拡大部33に対応して設けられ、複数の切替部32と複数の拡大部33は、それぞれ対応しつつ、組になっている。切替部32は、スイッチ機能を有した機械的な機構、又は、トランジスタなどの半導体スイッチにより構成される。また、各切替部32は、それぞれa接点とb接点を有している。a接点は、基部31と拡大部33との間を電気的に遮断しつつ、基部31の長辺の配線31bを導通するための接点である。一方、b接点は、基部31と拡大部33との間を電気的に導通しつつ、基部31の長辺の配線31bを遮断するための接点である。なお、
図1において、切替部32のa接点は、切替部32の先端部分同士の接触部分を、便宜上、接点としている、また、複数の切替部32は、高周波電源回路20に対して遠い位置から順に、32A、32B、32Cと記載する。
【0016】
拡大部33は、コイル用の配線で形成される送電コイル11のコイル面を拡大する部分であり、基部31に対して切替部32を介しつつコイル用の配線を延在させた部分である。拡大部33は、複数の切替部32に対応しつつ、複数設けられている。拡大部33は、送電コイル30のコイル面を含む平面(
図1のXY平面)で、Y方向を長手方向とする配線33a、33bと、X方向を長手方向とする配線33cを有している。また、配線33cの両端が、配線33a及び配線33bのそれぞれの一端に接続されている。配線33a〜配線33cで形成される矩形は、受電コイル40のコイル面と対応している。複数の拡大部33の形状は、互いに同一形状である。
【0017】
これにより、拡大部33は、受電コイル40と対向する送電コイル11の対向面(送電コイル11のコイル面であって、
図1のXY平面)で、基部31の長手方向以外の方向に配線を延在させて、基部31と形成するコイル面を拡大させている。言い換えると、拡大部33は、基部31の配線で形成されるコイル面を、Y方向に向かって拡大するように、構成されている。なお、
図1において、複数の拡大部33は、高周波電源回路20に対して遠い位置から順に、33A、33B、33Cと記載する。
【0018】
基部31、切替部32、及び拡大部33は、切替部32による接点のつながりに応じて、1つのコイル面(配線により閉じられ、コイルとして機能する面)を形成する。送電コイル11のコイル面は、例えば地平線に沿った面と平行な面になる。
【0019】
受電コイル40は、送電コイル30のコイル面と平行な面をコイル面とするコイルであって、例えば車両1のシャーシに設けられている。
【0020】
図2は、非接触給電システムのうち地上側の給電装置のコントローラのブロック図である。コントローラ100は、車両検知部101と、コイル検知部102と、コイル制御部103と、電源回路制御部104とを有している。
【0021】
車両検知部101は、移動体である車両1が給電経路内に入るか否かを判定する。給電経路は、送電コイル11を備えた走行車線の所定範囲を示している。車両検知部101は、例えば、車両1と無線通信を行い、車両1の位置情報を取得して、車両1の位置が給電経路内にあるか否かを判定することで、車両1を検知する。
【0022】
コントローラ100のシステムのうち、車両検知部101に係るシステムは、常時、動作しているが、他のシステムは、消費電力を減らすために、停止している。コントローラ100は、車両検知部101により、給電経路内で車両1を検知すると、車両検知部101以外の他のシステムを起動させる。また、車両検知部101は、車両1が給電経路内に進入した場合には、給電経路内で車両1を検知したことを示す信号を、コイル制御部103及び電源回路制御部104に出力する。
【0023】
コイル検知部102は、受電コイル40の位置を検知して、受電コイル40の位置が送電コイル30の有効範囲内であるか否かを判定する。コイル検知部102は、判定結果を示す信号を、コイル制御部103及び電源回路制御部104に出力する。なお、送電コイル30の有効範囲については、後述する。
【0024】
コイル制御部103は、車両検知部101の検知結果及びコイル検知部102の検知結果に基づき、切替部32A〜32Cのa接点とb接点との切り替えを制御する。電源回路制御部104は、車両検知部101の検知結果及びコイル検知部102の検知結果に基づき、高周波電源回路20のインバータ回路のスイッチング素子を制御する。また、電源回路制御部104は、車両1からの要求される電力に基づいて、送電コイル30から受電コイル40に対して、要求電力に応じた電力を給電するように、当該スイッチング素子を制御する。
【0025】
次に、本例の非接触給電システムにより、車両1のバッテリを充電する際の切替部32A〜32Cの切り替えのタイミングについて、
図3を用いて説明する。
図3は、走行中の車両1の受電コイル40と送電コイル30との位置関係を示す概要図であって、(a)、(b)、(c)の順で車両が移動している。なお、
図3に示す送電コイル30は、
図1の送電コイル30のうち、基部31の一部を簡略化した上で図示している。
【0026】
本例の非接触給電システムは、給電経路内を走行している走行中の車両に対して、非接触で電力を供給する。そして、本例の非接触給電システムは、電力供給の効率を高めるために、車両の動きと、切替部32A〜32Cの切り替えタイミングとを合わせている。すなわち、
図3に示すように、X方向を進行方向とする車両について、車両1の受電コイル40が、拡大部33内に入ったときに、切替部32はb接点に接続し、車両1の受電コイル40が、拡大部33外である場合には、切替部32は、a接点に接続する。
【0027】
図3(a)に示すように、受電コイル40が、拡大部33C内に入ったときには、切替部33Cのb接点が接続され、切替部33A、33Bのa接点が接続される。そのため、拡大部33Cは基部31と電気的に導通され、拡大部33A、33Bは、基部31と電気的に遮断される。
【0028】
車両1が走行すると、車両1の位置が、
図3(a)で示す位置から、
図3(b)で示す位置になる。受電コイル40が、拡大部33B内に入ったときには、切替部33Bのb接点が接続され、切替部33A、33Cのa接点が接続される。そのため、拡大部33Bは基部31と電気的に導通され、拡大部33A、33Cは、基部31と電気的に遮断される。
【0029】
車両1がさらに走行すると、車両1の位置が、
図3(b)で示す位置から、
図3(c)で示す位置になる。受電コイル40が、拡大部33A内に入ったときには、切替部33Aのb接点が接続され、切替部33B、33Cのa接点が接続される。そのため、拡大部33Aは基部31と電気的に導通され、拡大部33B、33Cは、基部31と電気的に遮断される。
【0030】
これにより、コントローラ100が、車両1の動きに基づいて複数の切替部33を制御することで、本例の非接触給電システムは、車両1の受電コイル40の位置に対応して、送電コイル30のコイル面を、車両1の進行方向と垂直な方向に向かって、拡大させている。
【0031】
次に、
図3に示すように、a接点に接続する切替部32を、車両1の走行に合わせて遷移させた場合の送電コイル30のコイル面の面積について、
図4を用いて説明する。
図4は、
図3に示す非接触給電システムのうち、送電コイル30のみを表している。なお、
図4の(a)〜(c)は、
図3の(a)〜(c)と同様に、(a)、(b)、(c)の順で、時系列を表している。
【0032】
図3で示したように、複数の拡大部33のうち、一つの拡大部33が、車両1の走行に合わせて、電気的に導通している。また、
図1に示すように、複数の拡大部33は同一の形状で構成され、車両の進行方向に沿うように、一列に並べて配置されている。そのため、車両1の走行に合わせて形成される送電コイル30のコイル面の形は、
図4に示すように、時系列で変わっている。
【0033】
一方、コイル面の面積については、複数の拡大部33のうち、一つの拡大部33が基部31と電気的に導通することで、コイル面の面積は拡大するが、他の拡大部33は基部31から遮断されているため、拡大される部分の位置が、車両1の走行に合わせて移動するだけである。すなわち、送電コイル30は、複数の拡大部33のうち一つの拡大部33と基部31とを導通させたときに、常にコイル面の面積を同一になる形状に形成している。また、複数の切替部33の切り替えでは、複数の拡大部33のうち一つの拡大部33と基部31とを導通させたときに、常にコイル面の面積を同一になるように、複数の切替部33が制御されている。
【0034】
これにより、車両1の負荷(バッテリ、モータなど)が一定である場合には、送電コイル30に流す電流を一定に保つことができる。
【0035】
次に、
図5を用いて、送電コイル30のインダクタンス値について説明する。
図5は、
図1に示す非接触給電システムのうち、地上側(1次側)の構成を示した概要図である。ただし、送電コイル30のインダクタンスを図で明示するために、各配線のインダクタンスを、コイルの回路図で表している。
【0036】
基部31のインダクタンスをL
fとし、拡大部33AのインダクタンスをL
V1とし、拡大部33BのインダクタンスをL
V2とし、拡大部33CのインダクタンスをL
V3とする。
図5では、基部31のインダクタンスを分かり易くするために、複数のコイルで標記しているが、基部31自体のインダクタンスが、L
fとなる。
【0037】
基部31のインダクタンス(L
f)は、各拡大部33のインダクタンス(L
V1、L
V2、L
V3)より大きく、例えば、L
V1、L
V2、L
V3=0.01×L
fを満たすように、設計されている。そして、
図3に示すように、車両1の走行に応じて、切替部32を切り替えた場合に、送電コイルのインダクタンスは、L
V1、L
V2、及びL
V3の間で変化するのみであり、インダクタンス(L
f)の一定値であるとみなすことができる。すなわち、本例は、非接触給電の回路上で、高周波電源回路20の出力から受電コイル40側をみたときに、インダクタンスの大きさが定常的に一定になる。
【0038】
送電コイル30を形成する回路が、切替部32による切替に応じて、変わる際に、本発明とは異なり、コイルの配線長が変わり、送電コイル30のインダクタンスが大きく変化する場合には、1次側の回路のインピーダンスが変化する。そのため、送電コイル30から受電コイル40へ送電する電力を一定に保つには、このインダクタンスの変化に対応させて、高周波電源回路20の出力を制御できるように、高周波電源回路20のインバータの回路設計を複雑なものにしなければならない。
【0039】
一方、本発明では、切替部32による切替に対して、送電コイル30のインダクタンスを一定に保つことができるため、高周波電源回路20に含まれるインバータの回路設計が容易になる。
【0040】
次に、
図1、
図3、及び
図6を用いて、コントローラ100の制御について説明する。
図6は、走行中の車両1の受電コイル40と送電コイル30の拡大部33との位置関係を示す概要図である。なお、
図6は、本例の非接触給電システムを、Y方向から見たときの側面図で表している。ただし、コイルの位置関係を明記するために、コイルの一部を図示している。
【0041】
コントローラ100は、車両検知部101により、車両1を検知し、車両1の位置が給電経路内に入った場合には、メインシステムを起動する。コイル検知部102は、地上側に設けられたカメラ(図示しない)の撮像画像を用いて、受電コイル40の位置を検知し、受電コイル40の位置が送電コイル30の有効範囲内にあるか否かを判定する。
【0042】
ここで、送電コイル30の有効範囲について、
図6を用いて説明する。送電コイル30の有効範囲は、受電コイル40に対して、効率よく電力を供給できる範囲を、受電コイル40の位置で規定している。有効範囲は、拡大部33A〜拡大部33Cに対応して、それぞれ規定されている。拡大部33Aの有効範囲は、拡大部33Aのコイル端を、Z方向(コイル面の法線方向)から射影した範囲である。そして、コイル検知部102は、受電コイル40の少なくとも一部が有効範囲内にある場合に、受電コイルが有効範囲内にある、と判定する。拡大部33B、33Cの有効範囲は、拡大部33Aの有効範囲と同様である。
【0043】
コントローラ100は、受電コイル40の位置が送電コイル30の有効範囲内にあると判定した場合には、コイル制御部103により、有効範囲内に入った拡大部33に対応する切替部32を、a接点からb接点に切り替える。車両1が給電経路内に入ってから、受電コイル40の位置は、最初に、拡大部33Cの有効範囲内に入る。そのため、コイル制御部103は、切替部32Cをa接点からb接点に切り替える(
図3(a)を参照)。また、コイル制御部103は、切替部32A、32Bをa接点に接続する。
【0044】
電源回路制御部104は、切替部32Cのb接点への接続に合わせて、送電コイル30から受電コイル40に電力を供給するよう、高周波電源回路20を制御する。コイル検知部102は、電力の供給中、受電コイル40の位置を検知し、受電コイル40の位置が拡大部33Cの有効範囲内にあるか否かを判定する。
【0045】
コントローラ100は、受電コイル40の位置が拡大部33Cの有効範囲内にないと判定した場合には、コイル制御部103により、拡大部33Cに対応する切替部32Cを、b接点からa接点に切り替える。また、電源回路制御部104は、切替部32Cのa接点への接続に合わせて、送電コイル30からの電力の供給を停止する。車両1は、次の有効範囲に向かって走行しているため、コイル検知部102は、受電コイル40の位置を検知し、受電コイル40の位置が拡大部33Bの有効範囲内にあるか否かを判定する。
【0046】
コントローラ100は、受電コイル40の位置が拡大部33Bの有効範囲内にあると判定した場合には、コイル制御部103により、有効範囲内に入った拡大部33Bに対応する切替部32Bを、a接点からb接点に切り替える。また、コントローラ100は、切替部32Cの切替と同様に、受電コイル40の位置が拡大部33Bの有効範囲外になったときに、切替部32Bをb接点からa接点に接続する。また、電源回路制御部104は、切替部32Bの切替に合わせて、高周波電源回路20を制御し、送電力の供給の開始と停止を行う。
【0047】
車両1は、さらに次の有効範囲に向かって走行しているため、コイル検知部102は、受電コイル40の位置を検知し、受電コイル40の位置が拡大部33Aの有効範囲内にあるか否かを判定する。コイル制御部103は、受電コイル40の位置が拡大部33Aの有効範囲内にあると判定した場合に、切替部32Aを、a接点からb接点に切り替える。
【0048】
コントローラ100は、切替部32B、Cの切り替えと同様に、受電コイル40の位置が拡大部33Aの有効範囲外になったときに、切替部32Aをb接点からa接点に接続する。また、電源回路制御部104は、切替部32Aの切り替えに合わせて、高周波電源回路20を制御し、送電力の供給の開始と停止を行う。これにより、車両1は、給電経路内を走行中に、地上側の給電装置から、非接触で電力を受電する。
【0049】
次に、コントローラ100の制御フローについて、
図7を用いて説明する。
図7は、コントローラ100の制御手順を示すフローチャートである。
【0050】
ステップS1にて、コントローラ100は、車両検知部101にて、車両1の位置を検知する。ステップS2にて、車両検知部101は、車両1が給電経路内に入ったか否かを判定する。車両1が給電経路内に入っていない場合には、ステップS1に戻る。
【0051】
車両1が給電経路内に入った場合には、ステップS3にて、コントローラ100は、車両検知部101以外のメインシステムを起動させる。ステップS4にて、コントローラ100は、切替対象となる切替部32の番号(N)を、初期値である「1」に設定する。なお、切替部32の番号(N)は、車両1の進行方向において、車両1が給電経路内に入る際に、車両1に最も近い拡大部33に対応する切替部32を「1」とし、車両の進行方向に向かって順番に振られている。
図1の例では、切替部32Cは「1」、切替部32Bは「2」、切替部32Aは「3」となる。
【0052】
ステップS5にて、コイル検知部102は、受電コイル40の位置を検知する。ステップS6にて、コイル検知部102は、受電コイル40がn番目の切替部32に対応する拡大部33の有効範囲内にあるか否かを判定する。最初の制御フローでは、ステップS4で「n=1」に設定されているため、コイル検知部102は、受電コイル40の位置が拡大部33Cの有効範囲内にあるか否かを判定する。受電コイル40の位置が拡大部33Cの有効範囲内にない場合には、ステップS5に戻る。
【0053】
受電コイル40の位置が拡大部33Cの有効範囲内である場合には、ステップS7にて、コイル制御部103は、n番目の切替部33をb接点に、他の切替部33をa接点に接続するように、切替部32を切り替える。
【0054】
ステップS8にて、電源回路制御部104は、高周波電源回路20を制御して、送電コイル30から受電コイル40に電力の供給を開始する。ステップS9にて、コイル検知部102は、受電コイル40の位置を検知する。ステップS10にて、コイル検知部102は、受電コイル40がn番目の切替部32に対応する拡大部33の有効範囲内にあるか否かを判定する。受電コイル40の位置が拡大部33の有効範囲内である場合には、受電コイル40への電力供給を継続させるために、ステップS9に戻る。
【0055】
一方、受電コイル40の位置が拡大部33の有効範囲内でない場合には、ステップS11にて、コイル制御部103はn番目の切替部32をb接点からa接点に節接続するように、切り替える。ステップS12にて、電源回路制御部104は、高周波電源回路20を制御して、送電コイル30からの電力の供給を停止する。
【0056】
ステップS13にて、コントローラ100は、切替対象となる切替部の番号(N)を、1つ繰り上げる。これにより、切替部32の切替対象は、車両1の走行に応じて、次の切替部32に進む。
【0057】
ステップS14にて、コントローラ100は、切替対象として設定された番号(n)が閾値(n
th)より大きいか否かを判定する。閾値(n
th)は、切り替え可能な切替部33の数に対応し、
図1の例では「3」に設定される。
【0058】
そして、切替対象として設定された番号(N)が閾値(n
th)以下である場合には、ステップS5に戻り、ステップS5以下の制御フローが繰り返し、実行される。一方、切替対象として設定された番号(n)が閾値(n
th)より大きい場合には、ステップS15にて、コントローラ100は、メインシステムを停止させて、電力供給を停止して、
図7の制御フローを終了させる。
【0059】
すなわち、最初の制御フローで、ステップS4にて、「n=1」に設定された場合には、ステップS5からステップS11までの制御フローにより、
図3(a)に対応する給電制御が行われる。そして、ステップS13で、切替対象の切替部33が、切替部33Bとなり(n=2)、ステップS14の後、ステップS5に戻る。ステップS5からステップS12までの制御フローにより、
図3(b)に対応する給電制御が行われる。
【0060】
さらに、ステップS13で、切替対象の切替部33が、切替部33Bとなり(n=3)、ステップS14の後、ステップS5に戻る。ステップS5からステップS12までの制御フローにより、
図3(c)に対応する給電制御が行われる。
【0061】
次に、
図8を用いて、漏電する電磁界の強度について説明する。本発明では、上記のように、車両1が存在する部分では、切替部32をb接点に接続することで、Y方向にコイル面の面積を拡大させつつ、車両1が存在しない部分では、切替部32をa接点に接続することで、Y方向にコイル面の面積を拡大させないように、している。一方、参考例では、車両1の位置に限らず、全ての切替部33bをb接点に接続している。
図8は、本発明及び参考例の漏洩電磁界を示すグラフである。
【0062】
図8に示すように、参考例と比較して、本発明の漏洩電磁界は、低くなっている。すなわち、比較例では、有効に電力を供給できない部分のコイル面が拡大されているため、その分、漏洩する電磁界が大きくなる。一方、本発明は、受電コイル40に対して有効に電力を供給できる部分のコイル面を、拡大しており、有効に電力を供給できない部分のコイル面を拡大していない。そのため、漏洩電磁界を抑えて、給電効率を高めることができる。
【0063】
上記のように、本例において、送電コイル30は、車両1の進行方向を長手方向とし、長手方向にコイル用の配線を延在させた基部31と、受電コイル40と対向する送電コイル30の対向面(
図1のXY平面)で、少なくとも長手方向以外の方向にコイル用の配線を延在させて、基部31とともに形成されるコイル面を拡大する複数の拡大部33と、複数の拡大部33にそれぞれ対応して設けられ、拡大部33と基部31との間の電気的な導通及び遮断を切り替える複数の切替部32とを有している。さらに、コントローラ100は車両1の動きに基づいて複数の切替部32を制御する。これにより、送電コイル30のコイル面がY方向に拡大することで磁束量が増加しているため、車両1が、Y方向にずれて走行したとしても、非接触給電の効率の低下を抑制することができる。
【0064】
また本例において、コントローラ100は複数の拡大部33の少なくとも1つと基部31とを導通させたときに、常に送電コイル30のコイル面の面積を同じになるように、複数の切替部32を制御する。これにより、送電コイル30のコイル面がY方向に拡大することで磁束量を増加しつつ、漏洩磁束を減少できる。その結果として、非接触給電の効率の低下を抑制することができる。
【0065】
また本例において、送電コイル30は、複数の拡大部33の1つと基部31とを導通させたときに、常にコイル面の面積を同じになる形状に形成されている。これにより、送電コイル30から出力される磁束量を増加しつつ、漏洩磁束を減少できる。その結果として、非接触給電の効率の低下を抑制することができる。
【0066】
また本例は、切替部32A、拡大部33A、及び基部31を含んだコイル面(
図4(c)を参照)の面積と、切替部32B、拡大部33B、及び基部31を含んだコイル面(
図4(b)を参照)の面積と、切替部32C、拡大部33C、及び基部31を含んだコイル面(
図4(a)を参照)の面積とが、同じである。これにより、切替部32の切り替えによって、受電コイル40の位置に応じて、コイル面の形を変える際に、送電コイル11のインダクタンスの変化量を小さくすることができるため、高周波電源回路20の回路設計が容易になる。
【0067】
また本例は、拡大部33と、受電コイル40の少なくとも一部とが対向する場合に、受電コイル40と対向した拡大部33と対応する切替部32を制御して、当該拡大部33と基部31との間を導通させる。すなわち、車両の走行に合わせて、受電コイル40に対して有効に電力を供給できる部分のコイル面を、拡大しており、有効に電力を供給できない部分のコイル面を拡大していない。そのため、漏電電磁界を抑えて、給電効率を高めることができる。
【0068】
また本例において、複数の拡大部33は、X方向に並べて配置されている。これにより、X方向を進行方向とする車両1に対して、効率よく電力を供給することができる。
【0069】
なお、本発明の変形例として、
図9に示すように、拡大部33は、送電コイル30のコイル面において、基部31の長手方向に対して垂直方向でかつ両方向に、コイル面を拡大するように、構成されてもよい。
図9は、変形例に係る送電コイル30のうち、1つの切替部35及び拡大部36の部分を拡大した拡大図である。
図9は、送電コイル30を平面図で示す。
図9では、便宜上、切替部35を、切替部35a、切替部35bとして記載している。なお、
図9では、1つの切替部35及び拡大部36のみを図示しているが、変形例に係る送電コイル11は、切替部35及び拡大部36を、
図1の切替部32及び拡大部33と同様に、複数有している。
【0070】
図9に示すように、拡大部36は、送電コイル30のコイル面を含む平面(
図9のXY平面)で、Y方向を長手方向とする配線36a、36c、36eと、X方向を長手方向とする配線33b、36dとを有している。配線36aの両端のうち、基部31側に配置された一端は、切替部35のb接点に接続されている。また、配線36eの両端のうち、基部31側に配置された一端は、切替部35に接続されている。そして、矩形を形成する四辺のうち、Y方向の両辺の一方の辺には、配線36a及び配線36eが配置され、他方の辺には、配線36cが配置される。また、X方向の両辺には、配線36b及び配線36dがそれぞれ配置される。配線36a〜36eの各端部は、矩形の頂点部分で、接続されている。また、配線36a〜36eで形成される矩形が、Z方向からみたときに基部31を跨ぐように、配線36a〜36eが配置されている。
【0071】
切替部35は、基部31と拡大部36との間の電気的な導通及び遮断を切り替える部分であって、切替部35a、切替部35b、a接点、及びb接点を有している。切替部35aは、基部31の配線間を導通しつつ、基部31と拡大部36の配線36aとの間を遮断する状態と、基部31の配線間を遮断しつつ、基部31と拡大部36の配線36aとの間を導通する状態とを切り替える。切替部35aは、a接点及びb接点に接続できるよう構成されている。切替部35bは、基部31と拡大部36の配線36eとの間で、導通及び遮断を切り替える。切替部35bはa接点には接続できるが、b接点には接続できないように、構成されている。
【0072】
拡大部36がコイルとして機能する場合と、拡大部36がコイルとして機能しない場合の切替部35の状態を、
図10を用いて説明する。
図10は、変形例に係る送電コイル30のうち、1つの切替部35及び拡大部36の部分を拡大した拡大図であって、(a)はコイルとして機能しない状態を示し、(b)はコイルとして機能する状態を示す。
【0073】
図10(a)に示すように、拡大部36をコイルとして機能させない場合には、切替部35aがa接点に接続され、拡大部36の配線36aと基部31との間が遮断される。また、切替部35bがa接点に接続されないことで、基部31と拡大部36の配線36eとの間が遮断される。
【0074】
図10(b)に示すように、車両1が拡大部に近づき、拡大部36をコイルとして機能させる場合には、切替部35aがb接点に接続されることで、拡大部36の配線36aと基部31との間が導通される。また、切替部35bがa接点に接続されることで、基部31と拡大部36の配線36eとの間が導通される。
【0075】
これにより、送電コイル30のコイル面がY方向の両方向に拡大することで磁束量が増加しているため、車両1が、Y方向にずれて走行したとしても、非接触給電の効率の低下を抑制することができる。
【0076】
なお、車両検知部101は、地上側に設けられたカメラ(図示しない)の撮像画像により、車両1の動きを検知してもよい。また、車両検知部101は、送電コイル30とは別のコイルを設けて、当該コイルと受電コイル40との間で電力を送電することで、車両1の動きを検知してもよい。電力の送電により、車両1を検知する場合には、電流センサ又は電圧センサを設けて、センサの検出値から、車両1を検出すればよい。さらに、車両検知部101は、赤外線等の無線発信器を用いて、車両1を検知してもよい。
【0077】
また、送電コイル30を構成する基部31のインダクタンス(L
f)と拡大部33のインダクタンス(L
V1、L
V2、L
V3)は、必ずしも、L
f>L
V1、L
V2、L
V3の関係を満たすように、設計しなくもよい。例えば、拡大部33に磁性材等を配置して磁路設計を施すことで、L
f<L
V1、L
V2、L
V3の関係を満たすように、設計してもよい。
【0078】
また、本例は、送電コイル20の有効範囲を、拡大部33A〜33Cのコイル端の間で規定したが、必ずしもコイル端の間にする必要はなく、例えば、拡大部33Aの中心(配線33a〜33cで囲った矩形の中心)と中点として、コイル端の間の範囲より狭い範囲としてもよく、あるいは、コイル端の間の範囲より広い範囲としてもよい。
【0079】
また、本例において、切替部32によるa接点とb接点との間の切り替えは、コイル検知部102の検知結果に対して、遅れ時間をもって、切り替えてもよい。また、切替部32をa接点からb接点に切り替える場合と、切替部32をb接点からa接点に切り替える場合との間で、ヒステリシスをもたせてもよい。そして、ヒステリシスをもたせるには、例えばコイル検知部102のソフトによる判定出力に対してヒステリシス幅を設けてもよく、あるいは、ハードによるシュミットトリガ回路等を設けてもよい。
【0080】
また、本例は、コイル検知部102を省いて、車両1の動きに応じて変化する受電コイル40の位置を、演算により求めてもよい。すなわち、車両検知部101により、車両1が給電経路内に入ったことを検知する際に、コントローラ20は、車両1の車速を取得する。車速は、通信により車両1から取得してもよく、あるいは車両1の位置から演算で求めてもよい。そして、車両1の検出された位置に対して、各拡大部33までの距離は予め分かるため、車両の車速から、車両1が各拡大部33の有効範囲に到達するタイミング、及び、それぞれの有効範囲から出るタイミングも演算することができる。そして、コイル制御部103は、演算されたタイミングに応じて、切替部32を切り替えればよい。
【0081】
また本例の非接触給電システムは、1次側又は2次側の回路に、電力効率をより高めるために、コンデンサを含んだ共振回路を設けてもよい。
【0082】
また本例は、配線33a、33bをY方向に延在させたが、必ずしもY方向に延在させる必要なく、例えばXY平面において、Y方向に対して一定の傾きをもつ方向に延在させてもよい。また拡大部33のXY平面における形状は必ずしも矩形にする必要なく、例えば円又は楕円にしてもよい。ただし、漏電磁界を減らすためには、拡大部33の形状は、受電コイル40のコイル面の形状と対応させることが好ましい。
【0083】
上記のコントローラ100が本発明の制御手段に相当する。
【0084】
《第2実施形態》
図11は、発明の他の実施形態に係る非接触給電システムの送電コイルの一部を拡大した拡大図である。本例では、上述した第1実施形態に対して、送電コイル30の形状が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
図11は、送電コイル30を平面図で示す。
図11では、便宜上、切替部37を、切替部37a、切替部37bとして記載している。なお、
図11では、2つの切替部37及び拡大部38のみを図示しているが、変形例に係る送電コイル11は、切替部37及び拡大部38を、
図1の切替部32及び拡大部33と同様に、複数有している。
【0085】
複数の拡大部38は、送電コイル30を含む平面(
図11のXY平面)で、基部31を挟む位置に配置されている。複数の拡大部38は、対になっており、Y方向を長手方向とする配線38a、38cと、X方向を長手方向とする配線33bとを、それぞれ有している。
【0086】
複数の切替部37は、基部31と複数の拡大部38との間の電気的な導通及び遮断をそれぞれ切り替える部分であって、切替部37a、切替部37b、a接点、及びb接点を有している。なお、
図11において、切替部37、37bのa接点は、切替部37a、37bのスイッチの先端部分同士の接触部分を、便宜上、接点としている。b接点は、配線38a、38cの先端部分に設けられている。
【0087】
切替部37a、37bは、a接点に接続することで、基部31の配線間の導通しつつ、基部31と拡大部38の配線部38a、38cを遮断する。また、切替部37a、37bは、b接点に接続することで、基部31の配線間を遮断しつつ、基部31と拡大部38の配線部38a、38cを導通する。
【0088】
拡大部38がコイルとして機能する場合と、拡大部38がコイルとして機能しない場合の切替部35の状態を、
図12を用いて説明する。
図12は、変形例に係る送電コイル30のうち、2つの切替部37及び拡大部38の部分を拡大した拡大図であって、(a)はコイルとして機能しない状態を示し、(b)、(c)はコイルとして機能する状態を示す。
【0089】
図12(a)に示すように、拡大部38をコイルとして機能させない場合には、切替部37がa接点に接続され、拡大部38の配線38a、38cと基部31との間が遮断される。
【0090】
図12(b)に示すように、車両1が、複数の拡大部38のうち、
図12の紙面上で上側の拡大部38に近づき、上側の拡大部38をコイルして機能させる場合には、上側の切替部37がb接点に接続されることで、上側の拡大部38の配線38a、38cと基部31との間が導通される。一方、下側の拡大部38は、コイルとして機能させなくてもよいため、下側の切替部37がa接点に接続され、下側の拡大部38の配線38a、38cと基部31との間が遮断される。
【0091】
図12(c)に示すように、車両1が、複数の拡大部38のうち、
図12の紙面上で下側の拡大部38に近づき、下側の拡大部38をコイルして機能させる場合には、下側の切替部37がb接点に接続されることで、下側の拡大部38の配線38a、38cと基部31との間が導通される。一方、上側の拡大部38は、コイルとして機能させなくてもよいため、上側の切替部37がa接点に接続され、上側の拡大部38の配線38a、38cと基部31との間が遮断される。
【0092】
コントローラ100は、車両検知部101で検知される車両1の位置から、車両1が、複数の拡大部38のうち、どちらの拡大部38に近づいているか判定する。車両1が、複数の拡大部38のうち一方の拡大部38に近づいている場合には、コントローラ100のコイル検知部102は、受電コイル40の位置が当該一方の拡大部38の有効範囲内であるか否かを判定する。
【0093】
そして、受電コイル40の位置が当該一方の拡大部38の有効範囲内にある場合には、コントローラ100のコイル制御部103は、当該一方の拡大部38と基部31との間を導通させるように、当該一方の拡大部38に対応する切替部37a、37bを、b接点に接続する。また、コイル制御部103は、複数の拡大部38のうち他方の拡大部38に対応する切替部37a、37bを、a接点に接続する。
【0094】
これにより、車両1が存在する部分では、コイル面の面積を拡大することで磁束量を増加させている。また、車両1が存在しない部分では、コイル面の面積を拡大させていないため、漏洩電磁界を抑えて、給電効率を高めることができる。さらに、車両の進行方向に対して垂直な方向において、本例は、一方の方向だけでなく、他方の方向にも、コイル面を拡大できるように、送電コイル30を構成しているため、車両1が、運転者のハンドリング技量等によって、基部31に対してY方向にずれた場合に、効率よく、給電することができる。
【0095】
次に、
図13を用いて、給電効率(η)について説明する。本発明では、上記のように、基部31に対して、切替部37及び拡大部38を設け、車両1が存在する部分では、コイル面の面積を拡大するように、切替部37を切り替えている。一方比較例では、送電コイル30を基部31のみで構成し、切替部37及び拡大部38を備えていない。ただし、比較例の基部31は、幅の細い矩形状のループコイルで構成されている。
図13は、基部31の位置と、受電コイル40とのY方向への位置ずれ量に対する給電効率の特性を示すグラフである。グラフaは本発明の特性を、グラフbは比較例の特性を示す。
【0096】
比較例では、車両1がY方向にずれると、受電コイル40と基部31と対向しないため、Y方向への位置ズレに応じて、給電効率が大きく低下する。
【0097】
一方本発明では、車両1がY方向にずれても、受電コイル40は拡大部38のコイル面と対向するため、Y方向への位置ズレに対して、給電効率の低下を抑制することができる。
【0098】
上記のように、本例において、複数の拡大部38は、送電コイル30のコイル面を含む平面で、基部31を挟む位置に配置されている。これにより、送電コイル30のコイル面がY方向に拡大することで磁束量が増加しているため、車両1が、Y方向にずれて走行したとしても、非接触給電の効率の低下を抑制することができる。