(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレームにおけるカップに対応するカップ対応部と前記ボウ対応部とで、形状または素材特性の少なくともいずれかが異なることによって、前記カップ対応部よりも前記ボウ対応部の方が打撃により変形しやすいように構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシンバルパッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のシンバルパッドは、あくまで一体的に構成されるために制限が多く、カップ、ボウ及びエッジのそれぞれに適した打撃の感触をアコースティックのシンバルのものに近づけることは困難であった。例えば、一部の領域では満足のいく打感であっても他の領域では違和感がある、等の問題があり、全体としての打感の改善の余地は大きかった。
【0006】
また、打撃検出においても、1つのセンサで全ての領域の打撃を検出する場合、どの位置で打撃してもそれなりにセンサは反応するため、打撃位置による音色等の区別を明確に付けるのが容易でない。しかも、検出の感度についても、打撃した位置とセンサの配置位置との関係(距離や方向)や、振動伝達の具合によっても差が生じ、好ましい楽音制御を行う上では改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ボウとエッジの打感を個別に適切化することができるシンバルパッド及び電子打楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の請求項1のシンバルパッドは、打撃領域として、カップ、ボウ及びエッジを有するシンバルパッドであって、フレームと、前記フレームよりも軟質であり、前記フレームを覆うように配設され
て打撃面を提供する表面部材とを有し、前記フレームにおけるボウに対応するボウ対応部とエッジに対応するエッジ対応部とで、形状または素材特性の少なくともいずれかが異なることによって、前記ボウ対応部よりも前記エッジ対応部の方が打撃により変形しやすいように構成され
、前記ボウ対応部よりも前記エッジ対応部の方が肉薄であることを特徴とする。
また、打撃領域として、カップ、ボウ及びエッジを有するシンバルパッドであって、フレームと、前記フレームよりも軟質であり、前記フレームを覆うように配設されて打撃面を提供する表面部材とを有し、前記フレームにおけるボウに対応するボウ対応部とエッジに対応するエッジ対応部とで、形状または素材特性の少なくともいずれかが異なることによって、前記ボウ対応部よりも前記エッジ対応部の方が打撃により変形しやすいように構成され、前記ボウ対応部の裏側には、前記ボウ対応部を補強するための補強リブが設けられることを特徴とする。
また、打撃領域として、カップ、ボウ及びエッジを有するシンバルパッドであって、フレームと、前記フレームよりも軟質であり、前記フレームを覆うように配設されて打撃面を提供する表面部材とを有し、前記フレームにおけるボウに対応するボウ対応部とエッジに対応するエッジ対応部とで素材特性が異なることによって、前記ボウ対応部よりも前記エッジ対応部の方が打撃により変形しやすいように構成されることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記エッジ対応部の裏側にはリブが設けられ、前記リブは外郭形状が円形の前記フレームの円周方向に断続的に形成される
。好ましくは、前記フレームにおけるカップに対応するカップ対応部と前記ボウ対応部とで、形状または素材特性の少なくともいずれかが異なることによって、前記カップ対応部よりも前記ボウ対応部の方が打撃により変形しやすいように構成される。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の請求項6のシンバルパッドは、打撃領域として、カップ、ボウ及びエッジを有するシンバルパッドであって、エッジに対応する第1のフレームと、ボウに対応する第2のフレームと、前記第1のフレームよりも軟質であり、前記第1のフレームを覆うように配設され
てエッジの打撃面を提供する第1の表面部材と、前記第2のフレームよりも軟質であり、前記第2のフレームを覆うように配設され
てボウの打撃面を提供する第2の表面部材と、前記第1のフレームまたは前記第2のフレームのいずれかに一体に形成されるか、または別部材でなる連結部とを有し、前記第1のフレームに前記第1の表面部材を固着してなるエッジ構成部と、前記第2のフレームに前記第2の表面部材を固着してなるボウ構成部とが、前記連結部にて連結され
、前記連結部は、外郭形状が円形の前記第1のフレームの円周方向に断続的に設けられることを特徴とする。
また、打撃領域として、カップ、ボウ及びエッジを有するシンバルパッドであって、エッジに対応する第1のフレームと、ボウに対応する第2のフレームと、前記第1のフレームよりも軟質であり、前記第1のフレームを覆うように配設されてエッジの打撃面を提供する第1の表面部材と、前記第2のフレームよりも軟質であり、前記第2のフレームを覆うように配設されてボウの打撃面を提供する第2の表面部材と、前記第1のフレームまたは前記第2のフレームのいずれかに一体に形成されるか、または別部材でなる連結部とを有し、前記第1のフレームに前記第1の表面部材を固着してなるエッジ構成部と、前記第2のフレームに前記第2の表面部材を固着してなるボウ構成部とが、前記連結部にて連結され、前記連結部は、前記第1のフレームまたは前記第2のフレームの少なくともいずれかと緩衝材を介して固定されていることを特徴とする。
また、打撃領域として、カップ、ボウ及びエッジを有するシンバルパッドであって、エッジに対応する第1のフレームと、前記第1のフレームとは別体に構成され、ボウに対応する第2のフレームと、前記第1のフレームよりも軟質であり、前記第1のフレームを覆うように配設されてエッジの打撃面を提供する第1の表面部材と、前記第2のフレームよりも軟質であり、前記第2のフレームを覆うように配設されてボウの打撃面を提供する第2の表面部材と、前記第1のフレーム及び前記第2のフレームのいずれに対しても別部材でなる連結部とを有し、前記第1のフレームに前記第1の表面部材を固着してなるエッジ構成部と、前記第2のフレームに前記第2の表面部材を固着してなるボウ構成部とが、前記連結部にて連結されていることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、
前記第1のフレーム及び前記第2のフレームとは別体に構成され、カップに対応する第3のフレームと、前記第3のフレームよりも軟質であり、前記第3のフレームを覆うように配設され
てカップの打撃面を提供する第3の表面部材とを有し、前記第3のフレームに前記第3の表面部材を固着してなるカップ構成部と前記ボウ構成部とを、前記連結部とは別の連結部にて連結した。好ましくは、前記エッジ及び前記ボウのそれぞれに振動センサが設けられた。
【0012】
上記目的を達成するために本発明の請求項11の電子打楽器は、請求項10記載のシンバルパッドを備えた電子打楽器であって、前記シンバルパッドの前記各々の振動センサの出力に基づいて楽音を制御する制御手段(50)を有することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記制御手段は、前記各々の振動センサの出力及び検出タイミングに応じて楽音を制御する。
【0014】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0015】
本発
明によれば、ボウとエッジの打感を個別に適切化することができる。
特に、請求項1によれば、エッジを変形しやすくすることができる。請求項2によれば、ボウをエッジより変形しにくくすることができる。請求項4によれば、エッジの変形しやすさを確保しつつ表面部材の折り返し部と係合するリブを設けることができる。請求項5によれば、カップとボウとの打感を個別に適切化することができる。
【0020】
また特に、請求項
6によれば、連結部が撓みやすくなりエッジが変形しやすくなる。
請求項7によれば、エッジ構成部とボウ構成部との独立性が高まり打感の違いを大きくすることができる。請求項9によれば、カップとボウとの打感を個別に適切化することができる。
【0023】
請求項10によれば、例えば、打撃位置により楽音の差異を明確にする制御を容易にすることができる。
【0024】
本発明の請求項11によれば、ボウとエッジの打感を個別に適切化すると共に、打撃位置による楽音の差異を明確にすることができる。
【0025】
請求項12によれば、例えば、2度鳴りを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0028】
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るシンバルパッドが適用される電子ドラムセットの外観図である。この電子ドラムセットは、スタンド10と、スタンド10に支持されるシンバルパッドPDと、シンバルパッドPDに電気的に接続される楽音発生装置12とから構成される電子打楽器である。
【0029】
このシンバルパッドPDは、一例としてライドシンバルとして利用されるが、これに限られず、ハイハット、クラッシュ等のシンバルに適用してもよい。あるいは、シンバルパッドPDは練習用として用いることもでき、その場合は、スタンド10を用いずにシンバルパッドPDを机等に載置して打撃することもでき、電子的に発音させるための機構も必要とされない。
【0030】
図1(b)、(c)は、シンバルパッドPDの上面図、側面図である。シンバルパッドPDは、平面視で円盤状に形成され、半径方向における中心に支持穴17が形成される。支持穴17をスタンド10の上側支柱10aが貫通した状態で、不図示の弾性材が上下からシンバルパッドPDを挟むように配設されることで、シンバルパッドPDが上側支柱10aに対して前後左右に揺動自在に支持される。
【0031】
図1(b)に示すように、シンバルパッドPDにはピエゾ素子等の打撃センサ18が設けられている。奏者13がスティック14でシンバルパッドPDを打撃すると、その打撃を打撃センサ18が検出し、その検出信号に応じた楽音が楽音発生装置12から発生する。その楽音制御の際、シートセンサsA(
図2(a))の信号も加味してもよい。
【0032】
シンバルパッドPDの上側に露出した面が、打撃面となり、その打撃領域としては、支持穴17に近い側から順に、カップ40、ボウ30及びエッジ20となっており、これらはいずれも外郭形状が円形である。カップ40はボウ30よりも上方に突出しているため外観で区別される。ボウ30とエッジ20との境目は外観上区別されるようになっていないが、境目がわかるような視覚上の差異を設けてもよい。
【0033】
図2(a)は、シンバルパッドPDの構成を示す模式的な断面図である。シンバルパッドPDは、裏面PDa側から順に、フレーム21、表面部材29が積層された2層構造でなる。2層構造は、シンバルパッドPDの全体において適用されている。表面部材29の露出した表面が、スティック14により打撃される打撃面を提供する。打撃センサ18は、フレーム21の下面に配設される。
【0034】
フレーム21は、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)やPP(ポリプロピレン)等の硬質プラスチック、あるいは金属板でなり、打撃に対する十分な剛性を有する硬質のベース部である。フレーム21を覆うように設けられる表面部材29は、フレーム21の素材よりも軟らかい素材でなり、例えば、ゴムや発砲スポンジ等の軟質材でなる。表面部材29は、打撃による振動を速やかに減衰させると共に、打撃による衝撃音を緩和する機能を有する。
【0035】
フレーム21の厚みは、支持穴17から半径方向外側ほど肉薄となっている。フレーム21において、カップ40に対応する部分をカップ対応部21C、ボウ30に対応する部分をボウ対応部21B、エッジ20に対応する部分をエッジ対応部21Aとする。
【0036】
フレーム21の肉厚については、カップ対応部21Cにおける最小厚み>ボウ対応部21Bにおける最大厚みであり、且つ、ボウ対応部21Bにおける最小厚み>エッジ対応部21Aにおける最大厚みとなっている。これにより、打撃時の撓み易さ(変形のしやすさ)については、カップ40<ボウ30<エッジ20となり、アコースティックシンバルに近似してくる。
【0037】
図2(b)、(c)は、エッジ20に対応するフレーム21の部分の断面図、側面図である。フレーム21(エッジ対応部21A)の外周縁部22上にはシートセンサsAが配設される。シートセンサsAは、外周縁部22と表面部材29との間において、外周縁部22のほぼ全周に亘って配設される。
【0038】
外周縁部22の、フレーム21の半径方向内側において、L字状の鉤部23がエッジ対応部21Aに一体に形成されている。鉤部23は、垂下リブ23aと、垂下リブ23aから半径方向外側に延設形成される延設部23bとからなる。一方、表面部材29の外周縁部には、半径方向内側に折れ曲がった折り返し部29aが形成されている(
図2(a))。
【0039】
フレーム21に表面部材29を取り付ける際には、表面部材29をフレーム21に被せつつ、外周縁部22を折り返し部29aで外周から包むようにする。それにより、外周縁部22と鉤部23とで形成される凹部に折り返し部29aが係合する。その際、フレーム21の上面と表面部材29の裏面とは接着等で固定してもよい。
【0040】
ところで、鉤部23は、エッジ対応部21Aの全周に亘り連続して形成してもよい。しかし本実施の形態では、エッジ20を従来よりも撓みやすくするために、
図2(c)に示すように、鉤部23を、間隔を空けて断続的に設けた。
【0041】
本実施の形態によれば、フレーム21におけるボウ対応部21Bよりもエッジ対応部21Aの方が肉薄のため打撃により変形しやすい。これにより、エッジ20を変形しやすくし、アコースティックシンバルのように良好な打撃感触が得られる。このように、フレーム21の厚みを打撃領域毎に異ならせることで、ボウ30とエッジ20との打感を個別に適切化することが可能となる。
【0042】
図2(d)、(e)は、変形例のフレーム21の裏面図である。例えば、
図2(d)、(e)に例示するように、フレーム21におけるボウ対応部21Bだけに、裏側に突出する補強リブ25を設けてもよい。補強リブ25はボウ対応部21Bの剛性を高めて相対的にエッジ対応部21Aを撓みやすくする効果を有する。従って、補強リブ25の形状は問わず、放射状(
図2(d))、あるいは、半径の異なる同心円状に複数設けてもよい(
図2(e))。ただし、同心円であることは必須でない。
【0043】
なお、打感を個別に適切化することは、カップ対応部21Cについても適用できる。例えば、カップ対応部21Cよりもボウ対応部21Bの方が撓みやすいように構成するために、カップ対応部21Cとボウ対応部21Bとエッジ対応部21Aとで、形状または素材特性の少なくともいずれかが異なる構成とすればよい。例えば、打撃面の傾斜角度については、カップ対応部21C>ボウ対応部21B<エッジ対応部21Aとしてもよい。
【0044】
(第2の実施の形態)
図3(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るシンバルパッドPDの構成を示す模式的な断面図である。
【0045】
第1の実施の形態と同様に、シンバルパッドPDは、裏面PDa側から順に、フレーム21、表面部材29が積層された2層構造でなる。ただし、本実施の形態では、フレーム21は、カップ対応部21Cとボウ対応部21Bとエッジ対応部21Aとが別体に構成される。また、表面部材29についても、カップ40、ボウ30及びエッジ20のそれぞれに対応する、表面カップ対応部29Cと表面ボウ対応部29Bと表面エッジ対応部29Aとが別体に構成される。
【0046】
エッジ対応部21Aと表面エッジ対応部29Aとが組み付けられてエッジ構成部26Aがなる。ボウ対応部21Bと表面ボウ対応部29Bとが組み付けられてボウ構成部26Bがなる。カップ対応部21Cと表面カップ対応部29Cとが組み付けられてカップ構成部26Cがなる。それぞれの組み付けは、接着等の固着による。なお、エッジ対応部21Aと表面エッジ対応部29Aとについては、第1の実施の形態と同様に、外周縁部22及び鉤部23と折り返し部29aとが係合する。
【0047】
フレーム21、表面部材29の素材は第1の実施の形態と同様である。なお、エッジ対応部21A、ボウ対応部21B、カップ対応部21Cの素材特性を異ならせてもよい。なお、その場合、硬さについては、カップ対応部21C>ボウ対応部21B>エッジ対応部21Aとしてもよい。
【0048】
各々独立した構成のエッジ対応部21Aとボウ対応部21Bとが、連結部31で連結されることで、ボウ構成部26Bとエッジ構成部26Aとが一体に連結されている。まず、エッジ対応部21Aには、フレーム21の半径方向内側に向かって連結部31が一体に延設形成されている。連結部31が、緩衝材32を介してボウ対応部21Bにネジ33によって取り付けられる。なお、固定は、ネジ止めに限定されず、嵌め込み、接着や粘着であってもよい。
【0049】
これにより、連結部31がヒンジとなって、ボウ構成部26Bに対してエッジ構成部26Aが片持ち梁のように撓みやすい構成となっている。従って、連結部31の素材特性、ここではエッジ対応部21Aの素材特性としては、エッジ20への打撃時に適度の変形をするように弾性を設定するのがよい。
【0050】
図3(b)は、エッジ対応部21Aとボウ対応部21Bとの連結部分の裏面図である。連結部31は、エッジ対応部21Aの全周に亘って形成してもよいが、本実施の形態では、
図3(b)に示すように、円周方向に断続的に設けている。これにより、連結部31が撓みやすくなる。
【0051】
なお、連結部31は、エッジ対応部21Aと一体に形成することに限定されず、ボウ対応部21Bに一体に形成してもよい。あるいは、
図3(c)に変形例を示すように、連結部31を、エッジ対応部21A及びボウ対応部21Bとは別部材で構成し、両者に対して緩衝材32を介してネジ止め固定してもよい。
【0052】
また、連結に関しては、ボウ構成部26Bとエッジ構成部26Aとの関係を説明したが、ボウ構成部26Bとカップ構成部26Cとの連結の態様も同様にして考えることができる。
【0053】
本実施の形態によれば、エッジ構成部26Aと、ボウ構成部26Bと連結部31にて連結するので、打撃時の変位に関して両者の独立性を高め、エッジ20の打撃時にはエッジ構成部26Aの変位量を大きくすることができる。これにより、打撃感触はボウ30を打撃したときとエッジ20を打撃したときとで明確に区別でき、ボウ30とエッジ20の打感を個別に適切化することができる。例えば、スティック14の振り抜きも自然な状態でできるようになる。同様にして、カップ40とボウ30との間でも、打感を明確に異ならせることができる。
【0054】
ところで、本実施の形態では、打撃された領域が特に大きく振動し、他の領域に振動が伝達しにくくなるため、打撃を個別に検出する方が適する。そこで、
図3(a)に示すように、センサを打撃領域ごとに設ける。
【0055】
まず、シートセンサsについては、第1の実施の形態と同様のシートセンサsAをエッジ構成部26Aに設けるのに加え、ボウ構成部26B、カップ構成部26CにそれぞれシートセンサsB、sCを設ける。さらに、打撃センサ18に相当する振動センサとして、振動ないし衝撃を検出するピエゾ素子等の打撃センサpを各構成部26ごとに設ける。すなわち、打撃センサpA、pB、pCを、それぞれ、エッジ対応部21A、ボウ対応部21B、カップ対応部21Cの裏面に配設する。
【0056】
楽音制御については、3つの打撃センサpの出力のみに基づいて行ってもよいが、本実施の形態では、3つの打撃センサpの出力と3つのシートセンサsの出力とに基づいて楽音を制御する。
【0057】
図4は、第2の実施の形態におけるシンバルパッドPDを備えた電子打楽器の全体構成を示すブロック図である。
【0058】
この電子打楽器は、ROM52、RAM53、タイマ54、記憶装置55、表示装置56、音源57、サウンドシステム58、インターフェイス59が、バス51を介してCPU50にそれぞれ接続されて構成される。センサ群60及びパネル操作子61からの信号がインターフェイス59を介してCPU50に入力される。CPU50にはタイマ54が接続され、音源57にはサウンドシステム58が接続されている。
【0059】
CPU50は、本楽器全体の制御を司る。ROM52は、CPU50が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶する。RAM53は、各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ54は、タイマ割り込み処理における割り込み時間等の各種時間を計時する。記憶装置55は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種楽曲データ、各種データ等を記憶する。
【0060】
音源57は、CPU50から入力される発音信号や予め設定された演奏データ等を楽音信号に変換する。サウンドシステム58は、音源57から入力される発音信号に各種効果を付与して音響に変換する。楽音発生装置12(
図1)には、符号52〜58の構成要素が該当し、センサ群60には、打撃センサp及びシートセンサsが該当する。
【0061】
図5は、本電子打楽器におけるメインルーチンのフローチャートを示す図である。本処理は電源のオン時に開始され、CPU50により実行される。
【0062】
まず、初期化を実行、すなわち所定プログラムの実行を開始し、各種レジスタに初期値を設定して初期設定を行う(ステップS101)。次いで、パネル操作子61の操作を受け付け、機器の設定等の指示を実行する(ステップS102)。次いで、後述する
図6の発音等処理を実行して(ステップS103)、ステップS102に戻る。
【0063】
図6は、
図5のステップS103で実行される発音等処理のフローチャートである。
【0064】
まず、現在、発音中であるか否かを判別し(ステップS201)、発音中でないなら発音継続時間hktをゼロにリセットする(ステップS202)一方、発音中であれば発音継続時間hktを1だけインクリメントする(ステップS203)。発音継続時間hktは、発音開始からの経過時間に相当する変数である。
【0065】
ステップS202またはステップS203の処理後は、エッジ対応部21Aの打撃センサpAの出力信号があるか否かを判別する(ステップS204)。その判別の結果、打撃センサpAの出力信号がない場合は、ボウ対応部21Bの打撃センサpBの出力信号があるか否かを判別する(ステップS211)。その判別の結果、打撃センサpBの出力信号がない場合は、カップ対応部21Cの打撃センサpCの出力信号があるか否かを判別する(ステップS213)。
【0066】
ステップS204の判別の結果、打撃センサpAの出力信号がある場合は、ステップS205〜S210で発音処理を実行してステップS211に進む。また、ステップS211の判別の結果、打撃センサpBの出力信号がある場合は、ステップS212の発音処理を実行してステップS213に進む。また、ステップS213の判別の結果、打撃センサpCの出力信号がある場合は、ステップS214の発音処理を実行してステップS215に進む。
【0067】
ここで、ステップS212、S214の発音処理は、処理対象となる信号の出力元である打撃センサpが異なる以外はステップS205〜S210の処理と同様であるので、詳細なステップの記載は省略されている。従って、発音処理については、代表して打撃センサpAに関するステップS205〜S210で説明する。
【0068】
ステップS205では、「hkt>10または発音中でない」に該当するか否かを判別する。その判別の結果、「hkt>10または発音中でない」に該当する場合、すなわち、発音中であっても発音開始から相当の時間が経過している(hkt>10)場合や、発音中でない場合は、ステップS206に進む。一方、「hkt>10または発音中でない」に該当しない場合、すなわち、発音開始から間もない状態(hkt≦10)である場合は、ステップS208に進む。
【0069】
ステップS205からステップS206に進んだ場合は、新たな打撃があったと判断されるので、打撃センサpAの出力に基づき新たな発音信号を生成する。そして現在が発音中であるか否かを改めて判別し(ステップS207)、発音中であればその現在の発音を停止させてから(ステップS209)、ステップS210に進む。発音中でなければそのままステップS210に進む。
【0070】
一方、ステップS205からステップS208に進んだ場合は、発音開始して間もない楽音があるので、その発音中の発音開始時のセンサ値と今回の打撃センサpAの出力とに基づき更新用の発音信号を生成する。その後、ステップS209、S210を実行する。その際、発音中の信号と更新用に生成した発音信号で1つの連続した音となるように発音処理する。
【0071】
ここで、現在の発音は、ステップS212またはステップS214の処理によって打撃センサpBまたは打撃センサpCの出力に基づき発生している。従って、ステップS208の処理を実行した場合は、少なくとも2つの打撃センサpの出力に応じた発音信号が生成されることになる。
【0072】
例えば、ボウ30におけるエッジ20との境目付近が強く打撃された場合のように、まず、打撃センサpBが大きく反応した直後(hkt≦10)に打撃センサpAも反応する、という状況が生じ得る。そのような場合は、打撃センサpBの出力に基づき発音された楽音を、その直後に打撃センサpAの出力に基づき変更(更新)する。その際、その楽音は、アコースティックシンバルにおいて、ボウ30におけるエッジ20との境目付近が打撃された場合の打撃音に近似させるのがよい。アコースティックシンバルでは、ボウへの打撃であっても、エッジから遠い位置とエッジに近い位置とでは、発生する打撃音が微妙に異なるからである。
【0073】
また、hkt≦10という短い時間内に、ステップS205〜S210、ステップS212、またはステップS214が、相前後して実行される場合がある。従って、1つの打撃センサpの出力で開始した発音を、他の打撃センサpの出力に基づき変更するという場合が想定される。しかし「hkt≦10」は非常に短い時間であるから、実質的には、この短い時間を除けば、2つ以上の打撃センサpの出力に基づき合成した発音信号で発音がなされることになる。
【0074】
一例を挙げると、3つの各打撃センサpごとに波形データを準備しておき、出力信号の大きさに応じてそれらを合成した合成信号を発音信号として生成する。打撃センサpA、pB、pCに対応する波形データを波形データwA、wB、wCとする。さらに、打撃センサpが反応した場合は、通常、打撃位置に対応するシートセンサsも反応するため、シートセンサsの出力も合成信号に反映させる。
【0075】
波形データwAの合成割合は、「打撃センサpAの出力信号/打撃センサpA、pB、pCの出力信号の加算値」とする。同様に、波形データwB、wCの合成割合は、「打撃センサpB、pCの出力信号/打撃センサpA、pB、pCの出力信号の加算値」とする。
【0076】
例えば、打撃センサpA、pB、pCの出力信号の大きさの比が、3:2:1である場合、波形データwAの合成割合は、3/3+2+1=0.5となり、波形データwBの合成割合は、2/3+2+1=0.33なり、波形データwCの合成割合は、1/3+2+1=0.16となる。これらに、シートセンサsの出力も加える。シートセンサsの信号については、出力があったものにつき「1」を加えるとする。
【0077】
従って、エッジ20で打撃がされ、シートセンサsAが信号を出力し、シートセンサsB、sCは信号を出力しなかった場合は、波形データwAの最終的な合成割合は、0.5+1となり、波形データwB、wCの最終的な合成割合は、0.33、0.16となる。これにより、ステップS210では、アコースティックシンバルのエッジが打撃されたときに発生する打撃音に近似した楽音が発生する。
【0078】
ステップS215では、その他の入力に応じた各種の処理を実行する。
【0079】
図6の処理によれば、1回の打撃による2度鳴りを防止しつつ、打撃位置による楽音の差異を明確にすることができる。
【0080】
なお、この処理では、2度鳴りをソフト的に防止しているが、打撃センサpの出力の強弱や検出タイミング差を把握してソフト的にマスクをかける手法であればよく、その手法は問わない。例えば、簡単には、出力のあった打撃センサpの位置に応じた発音をすると共に、所定時間差以内の2度目の打撃センサpの出力を無視するようにしてもよい。
【0081】
なお、
図6の処理において、シートセンサsを設けることなく、打撃センサpの出力に基づき発音制御を行ってもよい。その場合、3つの打撃センサpの出力の大きさと検出タイミングとから打撃位置を特定して、特定した打撃位置に応じた楽音を発生させてもよい。例えば、領域の境界位置と境界位置から遠い位置とでは、異なる楽音となるよう制御する。あるいは、単純に、シートセンサsの出力で発生した楽音に対し、打撃センサpの出力によって、効果パラメータを変化させてもよい。
【0082】
なお、センサs、センサpを打撃領域ごとに設けて、これらの出力に基づいて楽音を制御することは、第1の実施の形態の構成にも適用可能である。
【0083】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。