(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
掘削により形成された坑井から地中の天然資源を採掘する方法において、請求項1に記載の採掘用分散液を坑井に圧入し40℃以上の熱水中で加水分解性樹脂材料の加水分解を行う工程を含む採掘方法。
前記採掘用分散液の坑井内への圧入により、坑井の壁面に該分散液に含まれる固形分のフィルターケーキを形成させ、前記加水分解性樹脂材料の加水分解により放出された酸によって該フィルターケーキを分解する請求項5に記載の採掘方法。
【背景技術】
【0002】
地下資源の採取のために、水圧破砕法、ロータリー式掘削法、ライザーレス掘削法等の坑井掘削法が現在広く採用されている。
ロータリー式掘削法では、泥水を還流しながらドリルにより掘削して坑井が形成され、仕上げ流体として、逸水防止剤が配合されているものが用いられ、坑井の壁面に泥壁と呼ばれるフィルターケーキが形成される。このケーキにより、坑壁を安定的に保って崩壊を防いだり、坑井を流れる流体との摩擦軽減がなされる。
また水圧破砕法は、坑井内を満たした流体を高圧で加圧することにより、坑井近傍に亀裂(フラクチュア)を生成せしめ、坑井近傍の浸透率(流体の流れ易さ)を改善し、坑井へのオイルやガスなどの資源の有効な流入断面を拡大し、坑井の生産性を拡大するというものである。
【0003】
ところで、前述した仕上げ流体に配合される逸水防止剤としては、炭酸カルシウムや各種塩類の顆粒が主に用いられているが、このような逸水防止剤の使用は、これを取り除く際に酸処理を必要とすることや、資源を採掘しようとする地層に根詰まりして生産障害をもたらすという問題がある。
また水圧破砕法で用いられる流体は、フラクチュアリング流体とも呼ばれ、古くはジェル状のガソリンのような粘性流体が使用されていたが、最近では、比較的浅いところに存在する頁岩層から産出するシェールガスなどの開発に伴い、環境に対する影響を考慮し、水にポリマーを溶解乃至分散させた水性分散液が使用されるようになってきた。このようなポリマーとしては、ポリ乳酸が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
即ち、ポリ乳酸は加水分解性と生分解性を示す物質であり、地中に残存したとしても、地中の水分や酵素により分解するため環境に対して悪影響を与えることがない。また、分散媒として用いられている水も、ガソリンなどと比較すれば、環境に対する影響はほとんどないといってよい。
また、このようなポリ乳酸の水分分散液を坑井中に満たし、これを加圧したとき、ポリ乳酸が坑井近傍に浸透していくが、このポリ乳酸は加水分解して樹脂の形態を失っていくこととなり、このポリ乳酸が浸透していた部分に空間(即ち、亀裂)が生成し、従って、坑井への資源の流入空間を増大することが可能となるわけである。
さらに、ポリ乳酸は、逸水防止剤としても機能し、分散媒として使用されている水の地中への過度の浸透を抑制するため、地層に与える環境変化を最小限に抑制するという利点を有する。また、地中で分解するため酸処理も不要となる。
加えるに、ポリ乳酸の分解物である乳酸は有機酸の一種であり、ポリ乳酸が分解後、乳酸が放出され、シェール層を酸浸食することで、シェール層の多孔化を促進する機能もある。
【0005】
しかしながら、ポリ乳酸は、高い温度では比較的早く加水分解するものの、温度が低くなるとともに加水分解速度は遅く、従って、地中温度の低い箇所から産出するシェールガスなどの採取に適用する場合には、その効率が悪く、改善が求められている。
【0006】
一方、ポリ乳酸に代えて、ポリグリコール酸を使用することが提案されている(特許文献2参照)。
ポリグリコール酸も生分解性樹脂として知られており、しかも、ポリ乳酸に比して加水分解性が高く、例えば80℃程度の温度での加水分解速度がポリ乳酸に比してかなり速く、ポリ乳酸の代替えとして効果的である。
しかしながら、ポリグリコール酸は、ポリ乳酸に比してかなり高コストであるという問題があり、これは、多量のフラクチュアリング流体が使用される水圧破砕法では致命的な欠点となっている。また、特定の温度条件下では、十分満足する分解性が得られない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の掘削用分散液は、加水分解性樹脂材料が水性媒体に分散された分散液であり、これには、必要に応じて、坑井掘削や水圧破砕を実施するために配合される公知の添加剤が適宜配合される。
【0019】
<加水分解性樹脂材料>
本発明において、用いる加水分解性樹脂材料は、難加水分解性の加水分解性樹脂とエステル分解促進性の加水分解性樹脂とを含む。
【0020】
1.難加水分解性の加水分解性樹脂;
難加水分解性の加水分解性樹脂は、この樹脂材料の主成分となるものであり、例えば、加水分解性樹脂を凍結粉砕し粉体化した試料で、1mg/1ml濃度の水分散液を作製し、45℃で一週間インキュベート後、残液のTOC(総有機炭素量)が5ppm以下であるものを意味する。さらに水溶性のポリマーは含まない。水溶性のポリマー(例えば、20℃の水に対する溶解度が50g/100g以上)は、地中への浸透性が高すぎ、例えば環境に与える影響が大きく、フラクチュアリング流体に用いる配合剤としては適さない。
【0021】
上記のような難加水分解性の加水分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート、酢酸セルロース、熱可塑性澱粉などを例示することができ、これらは共重合体やブレンド物の形で使用することもできるが、特にコストの点からポリ乳酸が最適である。
【0022】
ポリ乳酸は、100%ポリ−L−乳酸或いは100%ポリ−D−乳酸の何れであってもよいし、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の溶融ブレンド物でもよく、また、L−乳酸とD−乳酸とのランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
【0023】
さらに、上記の加水分解性樹脂は、その加水分解性樹脂の特性が損なわれない限り、各種の脂肪族多価アルコール、脂肪族多塩基酸、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが共重合された共重合体の形態で使用することもできる。
このような多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ポリエチレングリコールなどを例示することができる。
多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸を例示することができる。カルボン酸ジエステルを用いてもよい。
ヒドロキシカルボン酸としては、グルコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、マンデル酸を挙げることができる。
ラクトンとしては、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトン、グリコリド、マンデライドなどを挙げることができる。
また、このような難加水分解性樹脂には、必要に応じて、公知の可塑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、顔料、フィラー、充填剤、離型剤、帯電防止剤、香料、滑剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0024】
また、上述した難加水分解の加水分解性樹脂は、フラクチュアリング流体として用いたときの目止材としての機能及び地中への浸透性の点で適宜の分子量を有しているべきであり、一般に、重量平均分子量が5,000乃至1,000,000、特に10,000乃至500,000の範囲にあるのがよい。
【0025】
2.エステル分解促進性の加水分解性樹脂;
上述した加水分解性樹脂、例えばポリ乳酸は難加水分解性であり、100℃以下の温度、特に80℃以下の低温では、その分解に著しく長期間を要する。このため、本発明では、以下に述べるエステル分解促進性の加水分解性樹脂が配合される。
【0026】
このエステル分解促進性の加水分解性樹脂(以下、単に「エステル分解性樹脂」と略すことがある)は、それ単独ではエステル分解能を示さないが、水分と混合したときにエステル分解の触媒として機能する酸或いはアルカリを放出するもので
あるが、本発明では、特にシュウ酸を放出するものが使用される。
【0027】
このようなエステル分解性樹脂は、通常、上記の難加水分解性の加水分解性樹脂の内部に均一に分散され、このエステル分解性樹脂から放出される
シュウ酸によっての加水分解性樹脂の加水分解を迅速に促進するために、例えば、その重量平均分子量が1000乃至200000程度のものが使用される。
【0028】
また、かかるエステル分解性樹脂において、アルカリ放出性の
もの、例えば、アクリル酸ソーダ等のアクリル酸のアルカリ金属塩やアルギン酸ソーダ等を用いたときには、アルカリ放出による環境への悪影響が
大きい。本発明では、酸放出性のもの(即ちシュウ酸を放出するもの)が使用されるため、このような不都合はない。
【0029】
酸放出性のエステル分解性樹脂から放出される
シュウ酸は、0.005g/ml濃度の水溶液乃至水分散液でのpH(25℃)が3以下を示すものであり、水と混合したときに容易に加水分解して
シュウ酸を放出するポリマーが使用される。
上記ポリマーとして
、例えば、ポリオキサレートが挙げられる。
このようなポリマーは、コポリマー、単独での使用、2種以上を組み合わせての使用でもよい。
コポリマーを形成する成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ビスフェノールA、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラセンジカルボン酸などのジカルボン酸やそのジエステル;グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、マンデル酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;グリコリド、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
また、このようなエステル分解性樹脂にも、必要に応じて、公知の可塑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、顔料、フィラー、充填剤、離型剤、帯電防止剤、香料、滑剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0030】
なお、本明細書では、ホモポリマー、共重合体、ブレンド体において、少なくとも一つのモノマーとしてシュウ酸を重合したポリマーをポリオキサレートとする。
【0031】
特に、
上記のポリオキサレートは易加水分解性の加水分解性樹脂であり、速やかに加水分解するため、難加水分解性樹脂の加水分解促進能に優れている。これらの中でも、ポリオキサレート、特にポリエチレンオキサレートは、ポリグリコール酸に比しても著しく高い加水分解促進能を示し、80℃以下の温度でもポリ乳酸等の難加水分解性樹脂の加水分解を著しく促進させることができ、しかもポリグリコール酸に比してもかなり安価であり、コストのメリットも極めて大きい。
【0032】
また、上述したエステル分解性樹脂は、その種類によっても異なるが、一般に、前記難加水分解性の加水分解性樹脂100重量部当り1重量部以上配合されることが、加水分解促進の点で好ましく、特に加水分解促進性とコストの観点から、30乃至300重量部の量、特に30乃至200重量部の量で使用することが好ましい。エステル分解樹脂の使用量が少なすぎると、難加水分解性の加水分解性樹脂の分解を十分に促進させることが困難となり、例えば80℃程度での温度では、加水分解にかなりの時間を要するようになってしまう。また必要以上に多量に使用すると、コストの点で不満足となってしまうばかりか、加水分解速度が速すぎてフラクチュアリング流体や逸水調整剤としての取り扱いに難を生じるおそれがある。
【0033】
3.加水分解性樹脂材料の形態;
本発明において、上述した難加水分解性の加水分解性樹脂(難加水分解性樹脂)とエステル分解促進性の加水分解性樹脂(エステル分解性樹脂)とを含む生分解樹脂材料は、それ自体公知の成形手段により、ペレット、粒状物、フィルムを破断して得られる破砕物、繊維或いはカプセル等の形態に成形され、水に分散される。
即ち、ポリ乳酸に代表される難加水分解性樹脂とエステル分解性樹脂とを密接した状態で分散液中に存在せしめることにより、エステル分解性樹脂から放出される酸等により、難加水分解性樹脂の加水分解を促進させることができるわけである。
【0034】
また、本発明においては、難加水分解性樹脂とエステル分解性樹脂とを密接した状態で存在しており且つ適度な大きさを有している限り、その形態は、前述した例に限定されるものではないが、特に好ましくは、難加水分解性樹脂をシェルとし、エステル分解性樹脂をコアとするシェルコア構造を有していることが好ましい。例えば、上記の繊維では、難加水分解性樹脂を鞘、エステル分解性樹脂を芯とする芯鞘繊維が好ましい形態である。即ち、このようなシェルコア構造の形態を採用することにより、水がコアの部分に浸透した段階で急速に加水分解が進行することとなり、フラクチュアリング流体としての取り扱い性が高められることとなる。
【0035】
本発明において、このような加水分解性樹脂材料は、通常、水性分散液中に0.01乃至20重量%、特に0.01乃至10重量%の量で存在せしめるのが、坑井掘削や水圧破砕をスムーズに実施するうえで好適である。
【0036】
また、本発明においては、上述した難加水分解性樹脂とエステル分解性樹脂に加え、吸水性のポリマー、例えば、ポリビニルアルコールやCMCなどを配合しておくこともできる。このような水溶性ポリマーの配合により、水圧破砕を実施する前の加水分解を抑制し、フラクチュアリング流体としての取り扱い性を高めることができる。
ただし、吸水性ポリマーの使用が多すぎると、エステル分解性樹脂の機能が損なわれるおそれがあるので、通常、その使用量は、難加水分解性樹脂100重量部当り50重量部以下、特に1乃至10重量部の範囲が好ましい。
【0037】
<その他の添加剤>
本発明において、上述した加水分解性樹脂材料が分散された水分散液には、坑井掘削法や水圧破砕法で配合される公知の添加剤を配合することができる。
例えば、水圧破砕法の場合、増粘剤としてグアガムやキトサンなどの水溶性多糖類(ゲル化剤)、砂(支持剤)を含むプロパントとして配合しておくことにより、水圧破砕で生成した亀裂が閉塞しないように保持しておくことができる。
また、加水分解性樹脂材料を分散させるための界面活性剤を配合しておくこともできるし、さらには、加水分解性樹脂材料の加水分解を適度に促進させるために、適度の量の酸やアルカリ、酵素を添加しておくこともできる。
【0038】
何れの添加剤も、加水分解性樹脂材料が前述した量で水分散液中に分散されており且つ加水分解性樹脂の機能を損なわない程度の量で配合されていればよい。
【0039】
上述した本発明の掘削用分散液は、坑井の掘削に際して用いる仕上げ流体や、水圧破砕法により地下資源を採掘する際に使用されるフラクチュアリング流体等として極めて有用である。
以下、これらの用途について説明する。
【0040】
<仕上げ流体>
ロータリー式掘削法等により坑井を掘削した際には、坑井の崩壊などを防止するために、この坑井に仕上げ流体を充満させておく必要がある。このような仕上げ流体には、炭酸カルシウムや各種塩類の顆粒などが逸水防止剤として配合されている。即ち、この仕上げ流体を坑井中に圧入することにより、坑井の壁面に逸水防止剤のフィルターケーキを生成させ、このケーキにより坑井からの仕上げ流体の逸水(坑井付近への流体の浸透)を防止するわけである。しかるに、このような逸水防止剤(フィルターケーキ)は、資源の採掘に際しては、目詰まりによる生産性の低下を回避するため、これを回収しておく必要があり、このために酸処理を行う必要がある。
【0041】
本発明の掘削用分散液を仕上げ用流体として使用する場合には、この分散液中の固形分(即ち、加水分解性樹脂材料)が逸水防止剤として機能し、この固形分のケーキが坑井の壁面に生成することとなるが、このケーキは、所定時間経過後は加水分解して崩壊する。従って、このケーキを回収するための酸処理が不要となるというメリットがある。勿論、この掘削用分散液に炭酸カルシウムなどの逸水防止剤を配合し、ケーキ強度の増大などにより逸水防止性を高め、さらには坑井の崩壊防止機能を高めることもでき、このような場合においても、加水分解性樹脂材料の加水分解によって生成する酸が、炭酸カルシウムなどの逸水防止剤を溶解するため、その後の酸処理が不要であるというメリットは損なわれない。
尚、本発明の掘削用分散液に炭酸カルシウムなどの逸水防止剤を配合する場合、該逸水防止剤の量は、加水分解性樹脂材料100重量部当り10〜150重量部程度が適量である。
【0042】
<水圧破砕による掘削>
本発明においては、上述した加水分解性樹脂材料が分散されている掘削用分散液は、これを地下に圧入し、40℃以上の温度で該分散液中の加水分解性樹脂を加水分解することができるため、例えばフラクチュアリング流体として用いての水圧破砕により、目的とする地下資源の掘削を行うことができる。
【0043】
具体的には、目的とする地下資源が存在する地層まで掘削を行って竪穴を形成し、次いで水平方向に掘削を行って水平穴を形成することにより坑井を形成する。
このようにして形成された坑井に、上述したプロパントを含む掘削用分散液を充満させ、加圧することによりフラクチュアリングを行う。即ち、この加圧により、水平穴の近傍に加水分解性樹脂材料とプロパントが浸透していき、該加水分解性樹脂材料が加水分解して消滅し、ピラー構造を形成することとなる。残存する分散液を吸引後、ガスやオイルなどの地下資源の回収が開始される。
【0044】
本発明の掘削用分散液をフラクチュアリング流体を用いて水圧破砕を行った場合には、加水分解性樹脂材料が80℃程度の温度でも速やかに分解するため短時間で効率よく行うことができる。フラクチュアリング流体以外として、プラグやブレークダウン材としても利用される。
また、泥水を還流しながらドリルにより掘削する場合には、仕上げ流体中の逸水調整剤として用いることができ後工程の酸処理が不要となる。また目詰まりもなく生産障害が生じない。
仮に樹脂が必要以上に広範囲の領域に浸透し且つ加水分解せずに残存したとしても、係る樹脂は生分解性であり、環境に悪影響を与えるおそれはない。
【0045】
また、この掘削用分散液をフラクチュアリング流体として用いた場合には、加水分解性樹脂材料が短時間で加水分解するため、この樹脂材料が浸透した部分にピラー構造の空間(亀裂)を生成させるばかりか、加水分解により生成した酸が、頁岩などの鉱物を溶解して亀裂の生成を促進する。この結果、シェールガス等の掘削の生産効率を高めることができる。
【0046】
さらに、この分散液中の加水分解性樹脂材料は、坑井中の流路を遮断する目止剤としても機能させ得るが、その後に加水分解するため、目止剤の沈降による目詰まりなどの問題も回避でき、生産効率を高めることができる。
【0047】
尚、この分散液には、低pH下で溶解するキトサンなどのゲル化剤を配合し、坑井中でゲル化による流体の高粘性化を図ることができる。即ち加水分解性材料の加水分解により酸によってpHが低下し、ゲル化剤が分散液中に溶解し、この結果、ゲル化が生じ増粘することとなる。従って、流体の圧入による液の坑井近傍への浸透を効果的に行い、さらにはプロパント(支持材)の移送も効率よく行うことができる。
さらに、上記のゲルは、その後の加水分解により酸量が増え、さらなるpH低下によって速やかに分解(低粘性化)するため、フラクチュアリング流体の回収も効果的に行うことができ、生産性を高めることができる。
【実施例】
【0048】
本発明を次の例で説明する。
尚、実験例で行った各種測定は、以下の方法による。
【0049】
<融点、ガラス転移温度の測定>
装置:セイコーインスツルメント株式会社製DSC6220(示差走査熱量測定)
試料調整:試料量5〜10mg
測定条件:窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で0℃〜250℃の範囲で測定。
【0050】
<分子量の測定>
装置:ゲル浸透クロマトグラフGPC
検出器:示差屈折率検出器RI(Waters製RI-2414型、感度512)
カラム:昭和電工製Shodex HFIP-LG(1本)、HFIP-806M(2本)
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール(5mM トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
試料調製:試料約1.5mgに溶媒5mLを加え、室温で緩やかに攪拌した(試料濃度約0.03%)。目視で溶解していることを確認した後、0.45μmフィルターにて濾過した(秤量から繰り返し2回行った)。全ての試料について、調製開始から約1時間以内に測定を行った。
【0051】
<ポリエチレンオキサレート(以下「PEOx」と略す)の合成>
マントルヒーター、攪拌装置、窒素導入管、冷却管を取り付けた1Lのセパラブルフラスコに,
シュウ酸ジメチル 472g(4mol)
エチレングリコール 297g(4.8mol)
テトラブチルチタネート 0.42g
を入れ、窒素気流下フラスコ内温度を120℃からメタノールを留去しながら180℃まで加熱し7時間反応させた。最終的に270mlのメタノールを留去した。
その後、内温170℃〜190℃に段階的に昇温し、0.1kPa〜0.2kPaの減圧度で7時間反応後、粘度が上がり取り出した。
取り出したポリマーをクラッシャーで造粒し、110℃で4時間真空乾燥処理し結晶化させた。
得られたポリマーは重量平均分子量70000、融点180℃、ガラス転移温度35℃であった。
【0052】
<エステル分解樹脂含有PLAペレット(加水分解性樹脂材料の作製>
ポリ乳酸(PLA)にPEOxをドライブレンドし、二軸押出機(テクノベル社製ULT Nano05-20AG)を用いて200℃で溶融混合し、マスターペレットを作製し、これを加水分解性樹脂材料の試料とした。
【0053】
<加水分解試験>
25mlのバイアル瓶に、上記で作製されたペレット一粒を、分散媒10mlに加え、各温度で静置保管した。4日後にペレットを取りだし、60℃の真空乾燥機で4時間乾燥させ、重量を測定し、分解率を測定した。分解率は下記式で算出した。
分解率=(初期重量−分解後重量)×100/初期重量
分解率が40%以下を×、40%を越えたものを○と判定した。
尚、分散媒としては、蒸留水、グアガム水溶液(グアガム0.7wt%水溶液)及びアルカリ水溶液(1wt%の水酸化ナトリウム水溶液)を用いて、加水分解性の評価を行った。
【0054】
<実験例1〜13、比較例1〜5>
加水分解性樹脂材料のペレットとして、ポリ乳酸(PLA)当りのポリエチレンオキサレート(PEOx)の含有率(重量%)が表1示すものを作製し、表1に示す温度(分解温度)の分散液に該ペレットを分散させ、その加水分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
<実験例14>
加水分解性樹脂材料として、ポリ乳酸(PLA)のペレットと、PLA当りのポリエチレンオキサレート(PEOx)の含有率が40重量%の混合樹脂(PEOx40%PLA)のペレットとを用意した。
これらの加水分解性樹脂材料のペレットをそれぞれ、120℃で3時間真空乾燥し結晶化させた。
25mlのバイアル瓶に上記ペレット14mg、蒸留水10mlを加えた。そのバイアル瓶を70℃のオーブンに入れ静置状態で保管した。4日後にペレットを回収し、乾燥後重量を測定し分解率を計算した。その結果は、以下の表2のとおりである。
【0057】
【表2】
【0058】
さらに、上記の加水分解試験前後の各ペレットの分子量(Mw)を測定した。その結果は、表3に示した。
また、加水分解試験前と加水分解試験後(4日後)のペレットについてのGPC測定にて分子量分布を
図1に示した。サンプル調整はクロロホルムを溶媒として濃度3mg/mlとし、フィルターろ過したものを用いた。
クロロホルム溶媒を用いたGPC測定;
GPCには、東ソー株式会社製HLC−8120を用い、カラムとしてTSKgel SuperHM−H×2及びガードカラムとしてTSKguard column SuperH−Hを用いた。カラムオーブンの温度を40℃とし、溶離液としてクロロホルムを用い、流速を0.5ml/minとした。また、サンプル注入量は20μlとした。スタンダードはクロロホルムにポリスチレンを溶解させたものを用いた。
【0059】
【表3】
【0060】
さらに、加水易分解試験後の各ペレットを指圧したところ、PLAは崩壊しなかったが、PEOx40%PLAは、加水分解による多孔化及び分子量低下により容易に崩壊した。
このことから、PEOx含有PLAは、目止材として効果的に機能し、これで坑井内を目止めした後、時間とともに加水分解し、坑井内の圧力で容易に崩壊することが判る。
崩壊したPEOx含有PLA分解残物は坑井内の水とともに容易に回収される。
【0061】
<実験例15>
加水分解性樹脂材料として、ポリ乳酸(PLA)のペレット、PLA当りのポリエチレンオキサレート(PEOx)の含有率が5重量%の混合樹脂(PEOx5%PLA)のペレット及びPEOxの含有率が40重量%の混合樹脂(PEOx40%PLA)のペレットとを用意した。
これらの加水分解性樹脂材料のペレットをそれぞれ、120℃で3時間真空乾燥し結晶化させた。
25mlのバイアル瓶に、上記の結晶化ペレット450mg、炭酸カルシウム250mg、水50μlを加え、120℃、3時間静置した。その後、水10mlを加え3時間後に液を採取し、HPLCで乳酸カルシウム、シュウ酸量を測定した。その結果を表4に示した。
【0062】
【表4】
【0063】
上記の結果から理解されるように、PEOx含有PLAからの乳酸カルシウムの生成量はPLAと比較して20倍以上である。このことから、PEOx含有PLAは、頁岩等のカルシウム成分を含む鉱物の溶解速度が速く、所謂酸フラクチュアリング(acid fracture)として適用性が高いことが判る。
ところで、上記の結果では、シュウ酸がほとんど溶出していない。このため、シュウ酸カルシウムとして新たに析出した可能性が考えられる。そこで、炭酸カルシウムを除いた実験系を組みシュウ酸の溶出量を測定した。
【0064】
25mlのバイアル瓶に、前述した結晶化ペレット450mg、水50μlを加え、120℃3時間静置した。その後、水10mlを加え3時間後に液を採取し、HPLCでシュウ酸量を測定した。その結果を表5に示した。
【0065】
【表5】
【0066】
上記の結果から、PEOx5%含有PLAでもシュウ酸の溶出が認められた。つまり、炭酸カルシウムを混合した系では、PEOx40%含有PLAでは、その大部分がシュウ酸カルシウムとして析出していることを示している。このことから、Acid fractureとしての性能は、PEOx配合量が40%未満が好ましいことが判る。
【0067】
<実験例16>
PLAペレットとPEOx5%含有PLAペレットとを、それぞれ、120℃で3時間真空乾燥し結晶化させ、凍結粉砕にて結晶化粉末サンプルを作製した。
【0068】
25mlのバイアル瓶に、上記の結晶化粉末450mg、水50μlを加え、120℃3時間静置した。その後、水10mlを加え3時間後に液を採取し、HPLCで乳酸量を測定した。その結果を、表6に示した。
【0069】
【表6】
【0070】
上記の結果から理解されるように、PEOx5%含有PLAの結晶化粉末では、PLAと比較し、乳酸の溶出量が20倍(分解速度が20倍)であった、つまり炭酸カルシウムと混合して用いることで、易自己分解性のフィルターケーキへの適性(即ち、逸水防止剤としての特性)に優れ、本発明の掘削分散液は仕上げ流体として好適に使用し得ることが判る。
【0071】
<実験例17>
実験例14と全く同様にして、PLAの結晶化ペレットと、PEOx40%PLAの結晶化ペレットとを用意した。
25mlのバイアル瓶に水5ml、キトサン(ゲル化剤)0.2g、上記の結晶化ペレット1gを加え、70℃のオーブンに入れ静置保管した。経時による流動性の変化を観察した。
ゲル化し流動性を失った液を○、流動性を示すが粘度が水より高い液を△、水と同等な液を×として、その結果を表7に示した。
【0072】
【表7】
【0073】
PLAは70℃では加水分解性を示さないため、乳酸が放出されない。その結果、液のpHが低下せずキトサンが溶解しないのでゲル化が生じない。
一方でPEOx40%含有PLAは70℃で加水分解し、シュウ酸を放出するためpHが低下し、キトサンが溶解しゲル化する。
さらにシュウ酸の量が多いと、一度ゲル化した後、溶液の流動性が再び増加することが分かっており、PEOxの含有量を増加させるかPEOx含有PLAの投入量を増加せることで、低温域でゲル化可能で、かつゲルブレーカーが不要となるフラクチャリング流体も得られる。