特許第6221476号(P6221476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6221476-回転電機のステータの固定構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221476
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】回転電機のステータの固定構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   H02K1/18 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-160649(P2013-160649)
(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公開番号】特開2015-33202(P2015-33202A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120178
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 康成
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】実方 宏之
(72)【発明者】
【氏名】荒井 英洋
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−191241(JP,A)
【文献】 特開2003−158833(JP,A)
【文献】 特開2003−032923(JP,A)
【文献】 特開2002−027687(JP,A)
【文献】 実開平07−009070(JP,U)
【文献】 特開2008−125276(JP,A)
【文献】 特開2002−165410(JP,A)
【文献】 特開平11−308790(JP,A)
【文献】 特開2001−018668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形に形成されたステータ保持部材の内側にステータを圧入固定する回転電機のステータの固定構造において、ステータを周方向に分割した複数の分割部材の組み立て体で構成し、ステータの中心軸と直交する横断面において分割部材の外周面の周方向の両端部に直線部を形成し、両端部の間に円弧部を形成するとともに、前記ステータ保持部材の内周面を前記直線部と前記円弧部に対応する形状に形成したことを特徴とする、回転電機のステータの固定構造。
【請求項2】
前記円弧部は前記ステータと前記ステータ保持部材との接触部の半径に等しい半径を有する請求項1の回転電機のステータの固定構造。
【請求項3】
前記直線部を前記分割部材の外周面の中央部に形成した、請求項1または2の回転電機のステータの固定構造。
【請求項4】
前記分割部材はプレス加工された鋼板の積層体で構成される、請求項1から3のいずれかの回転電機のステータの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータやジェネレータなどの回転電機における、ステータのステータ保持部材への固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータやジェネレータなどの回転電機のステータは、コイルの巻線を行なうために等しい角度間隔で形成された複数のティースを備えている。ステータは、ティース毎に分割され、分割部材の各々はプレス加工された同一形状の鋼板の積層体で構成される。
【0003】
分割部材は円筒形に組み立てられ、回転電機のケースの内側に固定されることで円筒形状のステータを構成する。
【0004】
特許文献1はこのようにして構成されるステータのケースへの固定方法を提案している。この従来技術によれば、ステータはステータ保持部材としてのインナフレームの内側に圧入固定され、インナフレームを介してケースの内側に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−018668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステータの外周面とインナフレームの内周面は円形であることから、この固定構造においては、ステータがインナフレームに対して回転しないように、回り止めのキーを設ける必要がある。
【0007】
そのため、特許文献1の従来技術は、すべての分割部材の背面にキー溝を設ける一方、キー溝に嵌合する突起をインナフレームに形成している。
【0008】
つまり、この固定構造によれば、分割部材とインナフレームの双方がキー結合のための加工を必要とする。このキー結合のための加工の手間は、回転電機の製造コストを上昇させる要因となる。
【0009】
この発明は、従来技術の上記問題を解決すべくなされたものであり、格別のキー孔加工を必要としない、ステータの回り止め構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するために、この発明は筒形に形成されたステータ保持部材の内側にステータを圧入固定する回転電機のステータの固定構造を提供する。固定構造は、ステータを周方向に分割した複数の分割部材の組み立て体で構成し、ステータの中心軸と直交する横断面において分割部材の外周面の周方向の両端部に直線部を形成し、両端部の間に円弧部を形成するとともに、ステータ保持部材の内周面を直線部と円弧部に対応する形状に形成する
【発明の効果】
【0011】
ステータとステータ保持部材との接触部の横断面に直線部と円弧部を交互に形成することで、ステータ保持部材に圧入されたステータとステータ保持部材とは異径嵌合状態となり、両者の相対回転が阻止される。ステータもステータ保持部材もキー加工を必要としないため、キー孔の加工の手間を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ステータのインナフレームへの圧入工程を説明するステータとインナフレームとケース要部の分解斜視図である。
図2】この発明の実施形態による分割部材の斜視図である。
図3】この発明の実施形態による圧入後のステータとインナフレームの要部横断面図である。
図4】この発明の実施形態による圧入後のステータとインナフレームの要部縦断面図である。
図5】この発明の実施形態による分割部材用の鋼板の母材のプランクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、電動モータやジェネレータなどの回転電機のステータ1はティースごとに分割された複数の分割部材1Aの組み立て体で構成される。ステータ1はステータ保持部材である有底の筒状のインナフレーム2の内側に圧入固定される。
【0014】
図4を参照すると、ステータ1はインナフレーム2を介してケース3の内側の所定位置に保持される。
【0015】
図2を参照すると、分割部材1Aの側面には溝1Bと帯状突起1Cとが形成される。ステータ1は、複数の分割部材1Aを、溝1Bと帯状突起1Cを隣接する分割部材の帯状突起1Cと溝1Bにそれぞれ嵌合させることで筒状に組み立てられた組み立て体で構成される。
【0016】
図5を参照すると各分割部材1は、プランク12からプレス加工された鋼板の積層体で構成される。
【0017】
再び図2を参照すると、ステータ1の中心軸と直交するステータ1の横断面に関して、各分割部材1Aの外周には、直線部4と円弧部5とが交互に形成される。すなわち、各分割部材1Aの外周の中央部と両端部にそれぞれ直線部4が形成され、それらの直線部4の間に円弧部5が形成される。円弧部5の半径は、好ましくは、インナフレーム2の内径あるいはステータ1の外径に等しく設定される。言い換えれば、ステータ1とステータ保持部材であるインナフレーム2との接触部の径に等しく設定される。
【0018】
図3を参照すると、このように形成された分割部材1Aを筒状に組み立て、ティース間のスロットにコイル10を巻き回すことでステータ1が形成される。図の一点鎖線の枠に囲まれた部分が1個の分割部材1Aに相当する。
【0019】
分割部材1Aは両端の直線部4を隣接する分割部材1Aの直線部4に連続する形で組み立てられる。したがって、組立後のステータ1の外周には直線部4と円弧部5とが交互に形成される。一方、インナフレーム2は筒形に形成される。インナフレーム2の内周面にはステータ1の外周面に対応する直線部4と円弧部5がプレス成形によりあらかじめ形成される。このように、外周面に直線部4と円弧部5を形成したステータ1を同形の内周面を有するインナフレーム2の内側に圧入する。その結果、ステータ1とインナフレーム2は異径嵌合状態となり、インナフレーム2内のステータ1の回転変位は阻止される。
【0020】
ステータ1を圧入したインナフレーム2は例えばボルトなどで回転電機のケース内に固定される。
【0021】
ステータ1の以上の固定構造により次の効果が得られる。
【0022】
すなわち、ステータ1のインナフレーム2に対する回り止めがキー結合なしに実現するため、キー結合の加工に要する作業やコストを削減できる。
【0023】
また、隣接する直線部4を接続する円弧部5の半径を、ステータ1とインナフレーム2との接触部の径に等しく設定することは次の効果をもたらす。すなわち、円弧部5の半径をより小さく設定する場合と比べて、インナフレーム2をプレス成形する際の、成形前と成形後の板厚の差を小さくすることができる。言い換えれば、プレス成型による板厚の変化率であるしごき率を小さくすることができる。しごき率が大きいと割れなどの欠陥が発生する確率が高くなる。円弧部5の半径をステータ1とステータ保持部材であるインナフレーム2との接触部の径に等しく設定することで、しごき率を小さく抑えることができる。
【0024】
また、図5において、分割部材1Aを構成する各鋼板の外周には図のAに示す中央の領域に直線部4が形成される。その結果、鋼板をプレス加工するプランク12の幅aを、直線部4を形成しない場合と比較して小さくすることができ。
【0025】
同様に図のBに示す両端の領域にも直線部4が形成される。その結果、直線部4を円弧とする場合と比べて鋼板を切り出すプランク12の幅aをさらに小さくすることができる。
【0026】
このように、ステータ1とステータ保持部材との接触部のステータ1の中心軸と直交する横断面の外周に、直線部と円弧部とを交互に形成することで、分割部材1Aを構成する鋼板の母材となるプランク12の寸法を小さくすることができる。言い換えればステータ1の材料の歩留まりが向上する。この点も、回転電機の製造コスト削減に好ましい効果をもたらす。
【0027】
以上のように、この発明を特定の実施形態を通じて説明して来たが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではない。当業者にとっては、特許請求の範囲でこれらの実施形態にさまざまな修正あるいは変更を加えることが可能である。
【0028】
例えば、上記の実施形態では、直線部を各分割部材1Aの外周及びインナフレーム2の内周面の中央部と両端部にそれぞれ形成している。しかしながら、直線部を各分割部材1Aの外周面とインナフレーム2の内周面の中央部のみに形成しても良い。あるいは、直線部を各分割部材1Aの外周面とインナフレーム2の内周面の両端部のみに形成しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 ステータ
1 A 分割部材
1B 溝
1C 帯状突起
2 インナフレーム
3 ケース
4 直線部
5 円弧部
10 コイル
12 プランク
図1
図2
図3
図4
図5