(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚しく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化、および高出力化が進み、これらの性能に対する要求がますます高度なものとなっている。電子回路の高密度化のために高絶縁性信頼性および小型化が求められている。また、電子機器の高出力化に伴う発熱による電子機器の劣化防止のための放熱性向上が強く求められている。
エレクトロニクス分野では絶縁材として高分子材料が好適に用いられているため、放熱性を向上させるため、高分子材料の熱伝導性の向上が望まれるようになっている。高分子材料の熱伝導性(放熱性)向上には限界があるが、熱伝導性粒子を高分子材料に混合することで、熱伝導性(放熱性)を向上させることができる。かかる材料は、熱伝導性を有する接着シートあるいは粘着シート等の熱伝導性部材等に好適に利用できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、層状珪酸塩が均一分散されたナノコンポジットポリアミド樹脂と、熱伝導性無機フィラーとを含有する成形用樹脂が開示されている。熱伝導性無機フィラーとしては、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、窒化ホウ素、炭化珪素、および窒化珪素などが開示されている。
従来よりも少ない使用量で成形体に熱伝導性を付与できるよう、熱伝導性無機フィラーには、熱伝導性の向上が求められている。
【0004】
特許文献2には、平均粒子径が10μm以下の高熱伝導性粒子を造粒し焼結することにより、熱伝導性が向上された平均粒子径が3〜85μmの球状の複合粒子を得る方法が開示されている。
具体的には、アルミナ、窒化アルミニウム、あるいは結晶性シリカ等の熱伝導性粒子を、シランカップリング剤あるいは熱硬化性樹脂でコーティング処理した後、800℃以上、好ましくは1000〜2800℃の熱伝導性粒子の融点近い温度で焼結し、球状の複合粒子を得る方法が提案されている(段落[0009]、[0021]〜「0022」、[0028]〜[0032]参照)。
特許文献2によれば、複合粒子の凝集力を高めるために焼結すると記載されている。しかしながら、造粒後に熱伝導性粒子の融点近い温度で焼結する結果、造粒の際使用したバインダーは消失してしまう。そのため、焼結後の複合粒子の凝集力は決して高くなく、むしろ焼結後の複合粒子は脆くて造粒状態を維持できず、崩壊し易い。
仮に、融点よりも高い温度で充分に焼結すれば、熱伝導性粒子同士が融着一体化するので凝集力の高いものを得ることはできるが、融着一体化の結果、巨大な硬い粒子となってしまう。
【0005】
特許文献3には、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、あるいは窒化アルミニウム等の無機質粉末と熱硬化性樹脂組成物とを含み、粉末、造粒粉末、または顆粒に加工された粉体組成物が開示されている。しかしながら、用いられている無機質粉末はサイズが大きく、かつ熱硬化性樹脂組成物を使用しているため、凝集体内で樹脂が硬化して、強固な結合をもった硬い粉体組成物が得られる。
【0006】
特許文献4には、アルミナ粒子粉末の表面を表面改質剤で被覆し、さらにその表面に炭素粉末を付着させて得られた複合粒子粉末を、窒素雰囲気下で1350〜1750℃にて加熱焼成する窒化アルミニウムの製造方法が開示されている([特許請求の範囲]、段落[0034]、[0042]、[0046]〜[0049]」参照)。
【0007】
特許文献5には、平均粒子径が10〜500μmで気孔率が0.3%以上の球状窒化アルミニウム焼結粉が開示されている。具体的には一次粒子径が0.1〜0.8μmの粉末を全量の10質量%以上含む窒化アルミニウム粉末と、酸化リチウムあるいは酸化カルシウム等の焼結助剤とを含むスラリーを噴霧乾燥し、さらに1400〜1800℃で焼成する球状窒化アルミニウム焼結粉の製造方法が記載されている(請求項1、4、段落[0035]参照)。
【0008】
特許文献4、5も、特許文献2と同様に、高温で焼結し、焼結助剤等と窒化アルミニウムとが強固に結合するため、硬い窒化アルミニウム粒子の凝集体か、あるいは焼結して一体化された巨大で硬い窒化アルミニウム粒子が得られる。
【0009】
特許文献6には、燐片状窒化ホウ素の一次粒子を等方的に凝集させた二次凝集体が開示されている。
具体的には、燐片状窒化ホウ素を1800℃前後にて仮焼きした後、粉砕して得られた一次粒子からなる顆粒を2000℃で焼成し、気孔率が50%以下、平均気孔径が0.05〜3μmの強度を保った二次凝集体を得る方法が開示されている(段落[0010]、[0011][0014]、[0026]、「0027]参照)。
【0010】
特許文献7には、不規則形状の非球状窒化ホウ素粒子を凝集させた球状窒化ホウ素凝集体を1800〜2100℃で焼成し、破壊強度のバルク強度に対する比が6.5MPa・cc/gを下回らない球状窒化ホウ素を、好ましいサイズ範囲に粉砕し、更に表面処理を施し熱伝導性組成物の充填剤として用いる方法が開示されている。(段落[0012]、[0016]、[0017]、[0026])
【0011】
特許文献8には窒化珪素質焼結体が開示され、特許文献9には焼結処理された球状酸化亜鉛粒子粉末が開示されている。
【0012】
しかしながら、放熱に対する要求が高まるにつれ、従来の熱伝導性粒子あるいはその造粒体では、その要求に充分応えられなくなってきている。
そこで、より少ない使用量で従来と同程度の熱伝導性を付与できるか、あるいは従来と同程度の使用量でより高い熱伝導性を付与できる、熱伝導性付与材料が求められようになってきている。
【0013】
一方、熱伝導性粒子を使用した熱伝導性部材としては、例えば、特許文献10、11に無機粒子を使用した熱伝導性接着シートが開示されている。かかる熱伝導性部材の熱伝導性を高めるためには、粒子の充填率を上げることが効果的であるが、粒子量の増加に伴い、高分子材料の量が減少するため、成膜性および基材追従性の低下が起こってしまう。特に接着シート用途においては、充填率を高めることにより接着成分が減少し、接着性が失われてしまう。
【0014】
特許文献12、13には、粒子の充填率が低い状態で粒子の接触(熱伝パス)を形成させるため、熱伝導性部材に磁場あるいは電場をかけて粒子の配向制御する方法が開示されている。しかしながら、かかる手法は、工業化を考えたときに実用的なものではない。
【0015】
特許文献14には、二次粒子を塗膜中に近接配置させて三次集合体を形成し、低充填量で高熱伝導性を発現する方法が開示されている。この文献では、造粒のための結着剤としてシランカップリング剤が使用されており、二次粒子を150℃で4時間以上乾燥させてカップリング反応させることで、造粒体としての操作性を向上させている反面、粒子の柔軟性は失われている。そのため、熱伝導性および接着強度はともに不充分である。
【0016】
上記のように、従来の熱伝導性粒子あるいはその二次粒子(凝集体)を用いた熱伝導性樹脂組成物では、高い熱伝導性と優れた成膜性、得られる膜の基材追従性を達成することは困難である。
また、接着シート用において、従来の熱伝導性粒子あるいはその二次粒子(凝集体)を用いた熱伝導性樹脂組成物では、高い熱伝導性と優れた成膜性、得られる膜の基材追従性と接着性を達成することは困難である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
「易変形性凝集体(D)」
本発明の易変形性凝集体(D)は、平均一次粒子径が0.1〜15μmの非球状の熱伝導性粒子(A)100質量部と、有機結着剤(B)0.1〜30質量部とを含み、平均粒子径が2〜100μmであり、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下である。
【0024】
本発明における「易変形性」とは、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下であることをいう。
「圧縮変形率10%に要する平均圧縮力」とは、圧縮試験により測定した、粒子を10%変形させるための荷重の平均値のことである。これは例えば、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT−210)で測定することができる。
具体的には、以下のように測定できる。
測定対象のごく少量の試料を顕微鏡にて拡大観察して任意の一粒を選択し、この測定対象粒子を加圧圧子の下部に移動させ、加圧圧子に負荷を加え、測定対象粒子を圧縮変形させる。試験機は、測定対象粒子の圧縮変位を計測するための検出器を、加圧圧子の上部に備えている。検出器にて、測定対象粒子の圧縮変位を計測し、変形率を求める。そして、測定対象粒子を10%圧縮変形するために要する圧縮力(以下、「10%圧縮変形力」とも略す)を求める。任意の他の測定対象粒子について、同様にして「10%圧縮変形力」を求め、10個の測定対象粒子についての「10%圧縮変形力」の平均値を「圧縮変形率10%に要する平均圧縮力」とする。
なお、本発明の易変形性凝集体(D)は、後述するように小さな熱伝導性粒子(A)が複数集合した状態のものであるが、圧縮変形率の測定においては凝集体を一粒の単位とする。
【0025】
(熱伝導性粒子(A))
熱伝導性粒子(A)は熱伝導性を有するものであれば特に限定されず、
例えば、
酸化アルミニウム、酸化カルシウム、および酸化マグネシウム等の金属酸化物;
窒化アルミニウム、および窒化ホウ素等の金属窒化物;
水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;
炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム等の炭酸金属塩;
ケイ酸カルシウム等のケイ酸金属塩;
水和金属化合物;
結晶性シリカ、非結晶性シリカ、炭化ケイ素、およびこれらの複合物;
金、および銀等の金属;
および
カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、および炭素繊維等の炭素材料等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0026】
電子回路等の電子材料用途等で用いる場合、熱伝導性粒子(A)は絶縁性を有していることが好ましく、金属酸化物および金属窒化物が好ましく、なかでも熱伝導率や加水分解されにくいという安定性の観点から窒化ホウ素がより好ましい。
【0027】
熱伝導性粒子(A)の形状は、非球状である。
なお、本発明において「非球状」であるとは、例えば、「円形度」であらわすことができる。ここで、「円形度」とは、粒子をSEM等で撮影した写真から任意の数の粒子を選び、粒子の面積をS、周囲長をLとしたとき、下記式で表すことができる。
(円形度)=4πS/L
2
円形度の測定には、各種画像処理ソフトまたは画像処理ソフトを搭載した装置を使用することができる。
本発明における「非球状粒子」は、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて粒子の平均円形度を測定した際の平均円形度が0.9よりも小さいものをいう。非球状の熱伝導粒子を用いると、粒子間の接触面積が大きくなり、熱伝導性粒子(A)間の熱の受け渡しの効率が上がり、系全体の熱伝導性を向上することができるため好ましい。
【0028】
易変形性凝集体(D)を得るために用いられる非球状の熱伝導性粒子(A)は、平均一次粒子径が0.1〜15μmであり、0.3〜13μmであることが望ましい。大きさの異なる複数の種類の熱伝導性粒子(A)を用いることもできる。
平均一次粒子径が小さ過ぎると、凝集体内における一次粒子同士の接点が多くなり、接触抵抗が大きくなるため熱伝導性が低下する傾向にある。一方、平均一次粒子径が大き過ぎると凝集体を作成しようとしても崩壊し易く、凝集体自体が形成されにくい。
【0029】
本発明において「一次粒子」とは、単独で存在することができる最小粒子を表し、「平均一次粒子径」とは、走査型電子顕微鏡で観察される一次粒子径の長径を意味する。「一次粒子径の長径」とは、球状粒子については一次粒子の最大直径を意味し、六角板状または円板状粒子については、それぞれ厚み方向から観察した粒子の投影像における最大直径または最大対角線長を意味する。具体的に「平均一次粒子径」は、300個の粒子の長径を上記方法により測定し、その個数平均として算出する。
また、本発明の易変形性凝集体(D)が「崩壊しにくいこと」は、例えば、ガラスサンプル管に易変形性凝集体(D)を空隙率70%となるように入れ、振とう機にて2時間振とうしても、振とう後の平均粒子径が振とう前の平均粒子径の80%以上であることから評価できる。
【0030】
(有機結着剤(B))
本発明における有機結着剤(B)は、熱伝導性粒子(A)同士を結着させる「つなぎ」の役割を果たす。
有機結着剤(B)としては特に制限されず、「つなぎ」の役割を果たせる範囲においてその分子量も問われない。
有機結着剤(B)としては例えば、
界面活性剤、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、(不飽和)ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ゼラチン、ギルソナイト、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、スチレン/無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、および塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
有機結着剤(B)は、1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
有機結着剤(B)は、得られる易変形性凝集体(D)の変形性に影響を与えるため、非硬化性であることが好ましい。
「非硬化性」とは、有機結着剤(B)が25℃で自己架橋しないことをいう。
有機結着剤(B)に対して硬化剤として機能する成分は、使用しないことが好ましい。
【0032】
後述の熱伝導性部材(I)が接着シートである場合、有機結着剤(B)としては水溶性樹脂が好適である。水溶性樹脂としては例えば、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン等が挙げられる。
用途によっては、有機結着剤(B)として非水溶性樹脂を用いることができる。非水溶性樹脂としては例えば、フェノキシ樹脂および石油樹脂等が挙げられる。
【0033】
本発明の易変形性凝集体(D)は、熱伝導性粒子(A)100質量部に対し、有機結着剤(B)を0.1〜30質量部、好ましくは1〜10質量部含有する。
有機結着剤(B)の量が0.1質量部より少ないと、熱伝導性粒子(A)を充分に結着することができず形態を維持するために充分な強度が得られないため好ましくない。有機結着剤(B)の量が30質量部より多い場合は、熱伝導性粒子(A)同士を結着させる効果は大きくなるが、熱伝導性粒子(A)間に必要以上に有機結着剤(B)が入り込み、熱伝導性を阻害する恐れがあるため好ましくない。
【0034】
本発明の易変形性凝集体(D)の平均粒子径は2〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜70μmである。易変形性凝集体(D)の平均粒子径が2μmより小さい場合、凝集体(D)を構成する熱伝導性粒子(A)の数が少なくなり、凝集体としての効果が低く、変形性にも劣るため好ましくない。易変形性凝集体(D)の平均粒子径が100μmを超えると、単位体積あたりの易変形性凝集体(D)の質量が大きくなり、分散体として用いた場合に沈降する恐れがあり、好ましくない。
本発明における易変形性凝集体(D)の「平均粒子径」は、粒度分布計(例えば、Malvern Instruments社製、マスターサイザー2000)で測定したときの値である。
【0035】
易変形性凝集体(D)の比表面積は、特に制限されないが、10m
2/g以下であることが好ましく、5m
2/g以上であることがさらに好ましい。10m
2/gより大きい場合、後記バインダー樹脂(E)が粒子表面あるいは凝集体内部に吸着して、成膜性が低下したり接着力が低下したりする傾向にあるため、好ましくない。
「比表面積」は、BET比表面積計(例えば、日本ベル社製、BELSORP−mini)で測定したときの値である。
【0036】
有機結着剤(B)は窒素原子を有することができる。この場合、有機結着剤(B)中の窒素原子と、後記バインダー樹脂(E)の骨格とが非共有結合性相互作用することにより、後記熱伝導性部材(H)、(I)の凝集力が向上し、例えば接着シートとして用いた際には、接着力向上につながる。
【0037】
窒素原子を有する有機結着剤(B)としては特に制限されず、有機結着剤(B)として例示した上記の各種樹脂において、窒素原子を含む1種または2種以上の官能基を有する樹脂が挙げられる。
【0038】
窒素原子を含む官能基を有する有機結着剤(B)は、窒素原子を含む官能基を有する単量体を用いて合成された樹脂でもよいし、窒素原子を含む官能基を有さない樹脂の一部を変性し、窒素原子を含む官能基を付加させたものでもよい。
【0039】
窒素原子を含む官能基としては例えば、
ウレタン基、チオウレタン基、ウレア基、チオウレア基、アミド基、チオアミド基、イミド基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ヒドラゾ基、アジノ基、ジアゼニル基、アゾ基、アンモニオ基、イミニオ基、ジアゾニオ基、ジアゾ基、アジド基、およびイソシアネート基等が挙げられる。
中でも窒素原子導入量を制御しやすいことから、ウレタン基、アミド基、およびアミノ基等が好ましい。
【0040】
後述の熱伝導性部材(I)が接着シートである場合、有機結着剤(B)としては水溶性樹脂が好適である。窒素原子を含む水溶性樹脂としては例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド、およびポリビニルピロリドン等が挙げられる。
用途によっては、有機結着剤(B)として非水溶性樹脂を用いることができる。窒素原子を含む水溶性樹脂としては例えば、非水溶性ウレタン樹脂、および非水溶性アミド樹脂等が挙げられる。
【0041】
有機結着剤(B)は反応性官能基を有することができる。
この場合、有機結着剤(B)中の反応性官能基と、後記バインダー樹脂(E)中の官能基とが反応することにより、後記熱伝導性部材(H)、(I)の熱伝導層内の架橋構造が発達し、耐熱性の向上につながる。
ここでいう「反応性」とは、本発明の凝集体(D)を含む後記熱伝導性部材(H)、(I)が加熱されることによって後記バインダー樹脂(E)の官能基と架橋構造を形成することを示す。なお、加熱工程は、後記熱伝導性部材(H)、(I)が加圧されて凝集体(D)が変形すると同時に、あるいは変形した後に行われることが好ましい。例えば25℃等の非加熱温度で反応性を示し、圧縮変形される前に反応性を示す官能基を有すると、易変形性凝集体(D)の変形性が損なわれるため好ましくない。
【0042】
反応性官能基を有する有機結着剤(B)としては特に制限されず、有機結着剤(B)として例示した上記の各種樹脂において、1種または2種以上の反応性官能基を有する樹脂が挙げられる。
【0043】
反応性官能基を有する有機結着剤(B)は、反応性官能基を有する単量体を用いて合成された樹脂でもよいし、反応性官能基を有さない樹脂の一部を変性し、反応性を有する官能基を付加させたものでもよい。
【0044】
反応性官能基としては例えば、エポキシ基、カルボキシル基、アセトアセチル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、水酸基、およびチオール基等が挙げられる。
耐熱性の観点から、有機結着剤(B)の反応性官能基はエポキシ基、アセトアセチル基、アミノ基、水酸基、またはカルボキシル基であり、バインダー樹脂(E)中の官能基はエポキシ基、カルボキシル基、または水酸基、であることが好ましい。
【0045】
後述の熱伝導性部材(I)が接着シートである場合、有機結着剤(B)としては水溶性樹脂が好適である。反応性官能基を有する水溶性樹脂としては例えば、カルボキシメチルセルロース、およびポリアリルアミン等が挙げられる。
【0046】
(熱伝導性繊維(P))
易変形性凝集体(D)は熱伝導性繊維(P)を含むことができる。この場合、易変形性凝集体(D)の熱伝導性を向上させることができる。
【0047】
熱伝導性繊維(P)としては、熱伝導性が良好な繊維状物質であれば特に制限されない。熱伝導性繊維(P)は、少なくとも表面が金属であることが好ましい。
【0048】
熱伝導性繊維(P)としては例えば、銅、白金、金、銀、およびニッケル等の金属を含む、金属(ナノ)ワイヤ、金属(ナノ)チューブ、および金属メッシュ等が用いられる。
ここでいう「繊維状物質」とは、平均繊維径に対する平均長(アスペクト比)が、5以上であるものをいう。
熱伝導性繊維は例えば、直径が0.3〜50000nm、長さが1〜5000μmである。
【0049】
金属繊維の合成法は例えば、鋳型法(特開2004−269987号公報)、電子線照射法(特開2002−67000号公報)、化学還元法(特開2007−146279号公報、Chemical Physics Letters 380(2003)146−169)などに記載されている。
【0050】
熱伝導性繊維(P)としては、
シリコン、金属酸化物、金属窒化物、またはカーボンなどを主成分とする、(ナノ)ワイヤ、(ナノ)チューブ、または(ナノ)ファイバー;
および、
グラファイトまたはグラフェンなどからなるシート状のフィブリル等を用いることもできる。
ここでいう「ナノワイヤ、ナノチューブ、ナノファイバー」とは、平均繊維径が1μm未満のものをいう。
【0051】
熱伝導性繊維(P)として、非熱伝導性繊維を、銅、白金、金、銀、およびニッケル等の金属、シリコン、金属酸化物、金属窒化物、またはカーボンなどを主成分とする材料により被覆した材料を用いることもできる。被覆方法としては例えば、電界めっき法、無電界めっき法、溶融亜鉛めっき法、および真空蒸着法等が挙げられる。
【0052】
上記熱伝導性繊維(P)の中でも、易変形性の点から、金属を主成分とした(ナノ)ワイヤが好ましく、酸化耐性の点から銀を主成分とする金属(ナノ)ワイヤ(銀(ナノ)ワイヤ)が特に好ましい。
【0053】
易変形性凝集体(D)を得るために用いられる熱伝導性繊維(P)の添加量は、熱伝導性粒子(A)100質量部に対し、0.01〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。添加量が50質量部より大きくなると、易変形性凝集体(D)に含まれない熱伝導性繊維(P)が多くなってしまう場合がある。
【0054】
易変形性凝集体(D)は、熱伝導性繊維(P)として繊維状の炭素材料(J)(ただし、平均一次粒子径が0.1〜10μmの炭素粒子は除く)を含むことができる。この場合、易変形性凝集体(D)の熱伝導性を向上させることができる。
【0055】
繊維状の炭素材料(J)は、熱伝導性粒子(A)間の熱伝導を補助する機能を担う。
好ましくは非球状の熱伝導性粒子(A)を用いたり、粒子径の小さな熱伝導性粒子(A)を用いたりすることで、凝集体(D)中の空隙を減らすことができる。さらに繊維状の炭素材料(J)を併用して熱伝導性粒子(A)間の熱伝導を補助することで熱伝導率がさらに向上する。
繊維状の炭素材料(J)は、用いる熱伝導性粒子(A)よりも小さいことが好ましい。
【0056】
繊維状の炭素材料(J)としては、カーボン繊維、グラファイト繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノファイバー、およびカーボンナノチューブ等が挙げられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0057】
繊維状の炭素材料(J)は、熱伝導性粒子(A)間に効率よく熱伝導パスを形成できるため好ましい。
炭素材料(J)は、平均繊維径が5〜30nm、平均繊維長が0.1〜20μmであることが好ましい。
【0058】
本発明の易変形性凝集体(D)は、熱伝導性粒子(A)100質量部に対し、繊維状の炭素材料(J)を0.5〜10質量部含有することが好ましく、1〜5質量部含有することがより好ましい。上記範囲内であると、絶縁性を保ちながら、熱伝導パスを形成できる。
【0059】
易変形性凝集体(D)は、熱伝導性粒子(A)として、炭素材料を含まない非球状粒子と、繊維状以外の任意形状の炭素材料とを併用することができる。この場合、易変形性凝集体(D)の熱伝導性を向上させることができる。
【0060】
繊維状以外の任意形状の炭素材料は、炭素材料を含まない非球状粒子間の熱伝導を補助する機能を担う。
好ましくは非球状の熱伝導性粒子(A)を用いたり、粒子径の小さな熱伝導性粒子(A)を用いたりすることで、凝集体(D)中の空隙を減らすことができる。さらに熱伝導性粒子(A)として炭素材料を併用して炭素材料を含まない熱伝導性粒子(A)間の熱伝導を補助することで熱伝導率がさらに向上する。
繊維状以外の任意形状の炭素材料は、炭素材料を含まない非球状粒子よりも小さいことが好ましい。
【0061】
繊維状以外の炭素材料としては、グラファイト、カーボンブラック、フラーレン、およびグラフェン等が挙げられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0062】
特に、板状の炭素材料は、炭素材料を含まない非球状粒子間に効率よく熱伝導パスを形成できるため好ましい。
板状炭素材料は、平均アスペクト比が10〜
3000、平均厚みが0.1〜500nmであることが好ましい。
【0063】
本発明の易変形性凝集体(D)は必要に応じて、上記以外の他の任意成分を含むことができる。
【0064】
(製造方法)
本発明の易変形性凝集体(D)は例えば、熱伝導性粒子(A)、有機結着剤(B)、必要に応じて添加される任意成分、およびこれらの成分を溶解または分散する溶剤(C)を含有するスラリーを得、次いで、スラリーから溶剤(C)を除去する方法(1)によって、得ることができる。
本発明の易変形性凝集体(D)は、単に、溶剤(C)を除く上記成分(熱伝導性粒子(A)、有機結着剤(B)、および必要に応じて添加される任意成分)を混合する方法(2)によっても得られる。
本発明の易変形性凝集体(D)は、熱伝導性粒子(A)、有機結着剤(B)、必要に応じて添加される任意成分、およびこれらの成分を溶解または分散する溶剤(C)を含有する液(溶液または分散液)を吹き付けた後、もしくは吹き付けつつ、溶剤(C)を除去する方法(3)によっても得られる。
組成がより均一な易変形性凝集体(D)を得るためには、上記方法(1)が好ましい。
【0065】
溶剤(C)は、熱伝導性粒子(A)を分散し、かつ有機結着剤(B)を溶解する。熱伝導性繊維(P)および/または炭素材料(J)を用いる場合、溶剤(C)はこれらを分散する。
溶剤(C)は有機結着剤(B)を溶解することができれば特に制限はなく、有機結着剤(B)の種類により適宜選択することができる。
溶剤(C)としては例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、および水等を使用することができる。
溶剤(C)は1種または2種類以上を用いることができる。
【0066】
溶剤(C)は除去し易さの点から沸点は低いほうが好ましく、沸点が110℃以下であることが好ましく、例えば、水、エタノール、メタノール、および酢酸エチル等が好ましい。
溶剤(C)の使用量は除去し易さの点からは少ない方が好ましいが、有機結着剤(B)の溶解性あるいは溶媒乾燥用の装置に合わせて適宜変更することができる。
【0067】
スラリーから溶剤(C)を除去する方法は特に制限はなく、市販の装置を用いることができる。例えば、噴霧乾燥、攪拌乾燥、および静置乾燥等の方法の中から選択することができる。中でも、比較的丸く粒子径の揃った易変形性凝集体(D)を生産性良く得られ、乾燥速度が速く、より変形しやすい易変形性凝集体(D)を得られるという点から、噴霧乾燥を好適に用いることができる。この場合、スラリーを霧状に噴霧しながら、溶剤(C)を揮発除去すればよい。噴霧条件および揮発条件は適宜選択することができる。
【0068】
「熱伝導性樹脂組成物(G)、熱伝導性部材(H)、(I)」
本発明の熱伝導性樹脂組成物(G)は、上記の本発明の易変形性凝集体(D)20〜90体積%と、バインダー樹脂(E)10〜80体積%と、バインダー樹脂(E)を溶解する溶剤(F)とを含有する。
【0069】
基材上に熱伝導性樹脂組成物(G)を塗布して塗膜を形成し、この塗膜から溶剤(F)を除去して、熱伝導層を形成することで、熱伝導性部材(H)を得ることができる。
さらに、熱伝導性部材(H)に圧力を加え、含まれている易変形性凝集体(D)を変形させることによって、熱伝導性部材(H)の熱伝導性を向上させた熱伝導性部材(高熱伝導性部材)(I)を得ることができる。
【0070】
例えば、熱伝導性樹脂組成物(G)を用いて熱伝導性部材(H)として熱伝導性シートを得、放熱対象の物品と放熱部材との間に熱伝導性シートを挟み圧力を加えることによって、熱伝導性部材(I)として熱伝導性が向上された熱伝導性シートを得ることができる。この熱伝導性シートは、放熱対象の物品の熱を効率良く放熱部材に伝えることができる。
熱伝導性部材(H)として、接着性あるいは粘着性を有する熱伝導性シートを得ることができる。この場合、加圧時に放熱対象の物品と放熱部材とを貼り合わせることができる。
【0071】
熱伝導性樹脂組成物(G)に圧力と熱を加え、含まれている易変形性凝集体(D)を変形させることによって、シート状等の熱伝導性部材(I)を直接得ることもできる。
【0072】
易変形性凝集体(D)自体に圧力を加え、易変形性凝集体(D)を変形させることによって、熱伝導性部材(I)を直接得ることもできる。この場合は、易変形性凝集体(D)を構成している有機結着剤(B)がバインダー樹脂(E)の役割をも担う。
例えば、放熱対象の物品と放熱部材との間に易変形性凝集体(D)を挟み、圧力を加えて易変形性凝集体(D)を変形させることによって、放熱対象の物品の熱を効率良く放熱部材に伝えることができる。
【0073】
放熱対象の物品としては、
集積回路、ICチップ、ハイブリッドパッケージ、マルチモジュール、パワートランジスタ、およびLED(発光ダイオード)用基板等の種々の電子部品;
建材、車両、航空機、および船舶等に用いられ、熱を帯び易く、性能劣化を防ぐためにその熱を外部に逃がす必要がある物品等が挙げられる。
【0074】
高熱伝導性を実現するためには、熱を伝えたい方向により多くの熱伝導経路を形成することが重要である。
本発明の易変形性凝集体(D)は、熱伝導性粒子(A)が凝集しているので、粒子間の距離が近く、熱伝導経路が予め形成されているので、効率良く熱伝導させることができる。
しかも、本発明の易変形性凝集体(D)は「易変形性」であることによって、高熱伝導性を実現できる。即ち、易変形性凝集体(D)に力が加わった際に易変形性凝集体(D)は崩壊することなく、易変形性凝集体(D)内の熱伝導性粒子(A)同士の密着性が向上することにより、予め形成された熱伝導経路を増強できる。あわせて、易変形性凝集体(D)を構成する熱伝導性粒子(A)の位置が容易に変化できることによって、放熱対象の物品と放熱部材との間で、易変形性凝集体(D)が界面の形状に追従し、放熱対象の物品や放熱部材と熱伝導性粒子(A)との接触面積が増え、熱流入面積や熱伝播経路を飛躍的に増大させることができる。
このように本発明の易変形性凝集体(D)は「易変形性」であるが故に、熱伝導性に優れる。つまり、本発明の易変形性凝集体(D)は、より少ない使用量で従来と同程度の熱伝導性を熱伝導性部材に付与したり、あるいは従来と同程度の使用量でより高い熱伝導性を熱伝導性部材に付与したりできる。
【0075】
熱伝導率(W/m・K)は、試料中を熱が伝導する速度を表す熱拡散率(mm
2/s)に測定試料の比熱容量(J/(g・K))と密度(g/cm
3)を乗じた下記式で求められる。
熱伝導率(W/m・K)=熱拡散率(mm
2/s)×比熱容量(J/(g・K))×密度(g/cm
3)
【0076】
熱拡散率の測定は、測定サンプルの形状等に応じて、例えば、周期加熱法、ホットディスク法、温度波分析法、またはフラッシュ法等を選択することができる。本明細書に記載のデータでは、キセノンフラッシュアナライザーLFA447 NanoFlash(NETZSCH社製)を用いたフラッシュ法で熱拡散率を測定した。
【0077】
熱伝導性樹脂組成物を得る際に用いられるバインダー樹脂(E)としては例えば、
ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、ゼラチン、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、および塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
バインダー樹脂(E)は、1種または2種以上を用いることができる。
上記の中でも、柔軟性の観点からはウレタン系樹脂が好適に用いられ、電子部品として用いる際の絶縁性および耐熱性等の観点からはエポキシ系樹脂が好適に用いられる。
なお、易変形性凝集体(D)を構成する有機結着剤(B)は、易変形性を確保するために、非硬化性であることが好ましい。これに対して、バインダー樹脂(E)としては、バインダー樹脂(E)自体硬化するか、もしくは適当な硬化剤との反応により硬化するものを用いることができる。
【0078】
有機結着剤(B)が反応性官能基を有する場合、バインダー樹脂(E)としては有機結着剤(B)の反応性官能基と反応する官能基を有するものが好ましい。
バインダー樹脂(E)が有する官能基としては例えば、エポキシ基、カルボキシル基、アセトアセチル基、エステル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、水酸基、およびチオール基などが挙げられる。バインダー樹脂(E)は、1種または2種以上の官能基を有することができる。
【0079】
熱伝導性樹脂組成物(G)は、易変形性凝集体(D)と、バインダー樹脂(E)と、溶剤(F)とを含む。用いられる溶剤(F)は、熱伝導性樹脂組成物(G)中に易変形性凝集体(D)およびバインダー樹脂(E)を均一に分散させるために用いられる。
易変形性凝集体(D)は、1種を単独で用いてもよいし、平均粒子径、熱伝導性粒子(A)の種類または平均一次粒子径、あるいは、有機結着剤(B)の種類または量の異なるものを、複数種併用してもよい。
【0080】
溶剤(F)は、バインダー樹脂(E)を溶解し得るものであって、易変形性凝集体(D)を構成する有機結着剤(B)を溶解しないものを適宜選択することが重要である。熱伝導性樹脂組成物(G)を得る際、有機結着剤(B)を溶解してしまう溶剤(F)を用いると、易変形性凝集体(D)の凝集状態を保持できなくなる。
例えば、有機結着剤(B)としてポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂を選択した場合、熱伝導性樹脂組成物(G)を得る際の溶剤(F)としては、トルエンまたはキシレン等の非水性溶剤を選択すればよい。
有機結着剤(B)としてフェノキシ樹脂または石油樹脂等の非水溶性樹脂を選択した場合、熱伝導性樹脂組成物(G)を得る際の溶剤(F)としては、水またはアルコール等の水性溶剤を選択すればよい。
なお、ここでいう「不溶」とは、有機結着剤(B)1gを、溶剤(F)100gに入れ、25℃で24時間攪拌し、目視で沈殿が確認されることとする。
【0081】
このとき、易変形性凝集体(D)の含有量は、目標とする熱伝導性、および用途に応じて適宜選択することができる。高熱伝導性を得るためには、易変形性凝集体(D)の含有量は、熱伝導性樹脂組成物(G)の固形分を基準として、20〜90体積%であることが好ましく、30〜80体積%であることが好ましい。
20体積%未満の含有量だと、易変形性凝集体(D)の添加効果が薄く充分な熱伝導性が得られない。一方、90体積%を超えると相対的にバインダー樹脂(E)の含有量が少なくなり、形成される熱伝導性部材(H)、(I)が脆くなったり、熱伝導性部材(I)内に空隙が出来るおそれがあり、熱伝導性部材(I)を使用している間に熱伝導性が徐々に低下する可能性がある。
ここでいう「体積%」とは、熱伝導性樹脂組成物(G)中の固形分に対する、熱伝導性粒子(A)、有機結着剤(B)、必要に応じて配合される任意成分(熱伝導性繊維(P)および/または炭素材料(J)等)、およびバインダー樹脂(E)の質量比と各成分の比重とをもとに計算した理論値を示す。
【0082】
熱伝導性樹脂組成物(G)はさらに、凝集していない熱伝導性粒子も併用することができる。凝集していない熱伝導性粒子も併用することにより、易変形性凝集体(D)間の隙間を埋めたり、易変形性凝集体(D)が変形する際に隙間が生じた場合、熱伝導性粒子(A)間の隙間を埋めたりして、更なる熱伝導性の向上効果が期待できる。
併用し得る熱伝導性粒子としては、例えば熱伝導性粒子(A)として例示したものが挙げられる。
【0083】
熱伝導性樹脂組成物(G)は、さらに必要に応じて、難燃剤および/または充填剤を添加してもよい。
難燃剤としては例えば、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0084】
熱伝導性樹脂組成物(G)には、必要に応じて他の各種添加剤を加えることができる。添加剤としては例えば、基材密着性を高めるためのカップリング剤、吸湿時の絶縁信頼性を高めるためのイオン捕捉剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
有機結着剤(B)が反応性官能基を有し、バインダー樹脂(E)が有機結着剤(B)の反応性官能基と反応する官能基を有する場合、熱伝導性樹脂組成物(G)には、耐熱性を高めるための硬化剤を添加することができる。有機結着剤(B)をバインダー樹脂(E)だけでなく硬化剤とも反応させることで、耐熱性を向上させることができる。
添加剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0085】
熱伝導性樹脂組成物(G)は、易変形性凝集体(D)、バインダー樹脂(E)、溶剤(F)、および必要に応じて他の任意成分を撹拌混合することで製造することができる。
撹拌混合には一般的な撹拌方法を用いることができる。撹拌混合機としては例えば、ディスパー、スキャンデックス、ペイントコンディショナー、サンドミル、らいかい機、メディアレス分散機、三本ロール、およびビーズミル等が挙げられる。
【0086】
撹拌混合後は、熱伝導性樹脂組成物(G)から気泡を除去するために、脱泡工程を経ることが好ましい。脱泡方法としては例えば、真空脱泡、および超音波脱泡等が挙げられる。
【0087】
本発明の熱伝導性部材(H)の製造方法は、
基材上に熱伝導性樹脂組成物(G)を塗布して塗膜を形成する工程と、
上記塗膜から溶剤(F)を除去して、熱伝導層を形成する工程とを有する。
【0088】
本発明の熱伝導性部材(I)の製造方法は、
熱伝導性部材(H)を用意する工程と、
上記熱伝導層を加圧する工程とを有する。
【0089】
熱伝導性部材(H)、(I)として、熱伝導性シート等を製造できる。熱伝導性シートは熱伝導性フィルムと称されることもある。
【0090】
基材としては例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム;
および、
上記プラスチックフィルムに離型処理したフィルム(以下、剥離フィルムという);
アルミニウム、銅、ステンレス、およびベリリウム銅等の金属体または金属箔等が挙げられる。
【0091】
基材への熱伝導性樹脂組成物(G)の塗布方法としては例えば、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビアコート、フレキソコート、ディップコート、スプレーコート、スクリーンコート、ディスペンサー、インクジェットおよびスピンコート等が挙げられる。
【0092】
熱伝導層の厚さは、用途に応じて適宜決定しうる。
熱源とヒートシンク等との間に配置され、熱を逃がすために用いられる熱伝導性シート等の用途では、熱伝導性および種々の物性の観点より、熱伝導層の厚さは通常10〜200μm、好ましくは30〜150μmとするのが良い。また、熱源からの熱がこもらないようにしたいパッケージ等の筐体等の用途では、強度等を鑑みて、熱伝導層の厚さは200μm以上、場合によっては1mm程度の厚さとすることもできる。
【0093】
また、冷却対象部材との接着性の補強のために、強接着層を本発明の熱伝導性部材の両面に設け、三層構成の積層体として使用することもできる。
【0094】
熱伝導性部材(H)においては、熱伝導率の向上のためには、易変形性凝集体(D)同士間の接触抵抗はできるだけ小さいことが好ましい。
熱伝導性部材(H)の厚みに対して適切なサイズの易変形性凝集体(D)を選択することで、熱伝導性部材(H)中でのトータルの接触抵抗を小さくすることができる。
具体的には、熱伝導性部材(H)の厚みに対する、易変形性凝集体(D)の平均粒子径の比率が20%以上であることが好ましく、50%以上であることが好ましい。
熱伝導性部材(H)の厚みに対する、易変形性凝集体(D)の平均粒子径の比率は、100%以上であってもよい。この場合、放熱対象の物品と放熱部材との間に熱伝導性部材(H)を挟み、圧力を加え、易変形性凝集体(D)を変形させることによって、熱伝導性部材(I)を貫通するような熱伝導パスを形成することができる。
【0095】
用途に応じて厚い熱伝導性部材(H)を得たい場合には、上記比率が20%以上の熱伝導性部材(H)を複数積層させて熱伝導パスを効率良く形成することも可能である。
【0096】
任意の基材上の熱伝導層を形成して熱伝導性部材(H)を製造した後、他の任意の基材を重ね、加熱下で加圧プレスし、熱伝導性部材(I)を得ることができる。
上記2つの基材のうち少なくとも一方を剥離フィルムとすることができる。この場合、剥離フィルムを剥がすことができる。
2つの基材を剥離フィルムとした場合、2枚の剥離フィルムを剥がして、熱伝導層を単離し、これを熱伝導性部材(I)とすることができる。
【0097】
加圧プレス処理方法は特に限定されず、公知のプレス処理機を使用することができる。
加圧プレス時の温度は適宜選択することが出来るが、熱硬化性接着シートとして使用するのであれば、バインダー樹脂(E)の熱硬化が起こる温度以上で加熱することが望ましい。
必要に応じて、減圧下にて加圧プレスすることができる。
加圧プレス時の圧力は、易変形性凝集体(D)が変形できる圧力を加えることができれば適宜選択することができるが、1MPa以上であることが好ましい。
【0098】
溶剤(F)を含有しない熱伝導性樹脂組成物(G)を加圧下に直接成形することによって、高熱伝導の成形物を得ることもできる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例において、「部」および「%」は特に明記しない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」を表し、「vol%」は「体積%」を表し、Mwは質量平均分子量を表す。
【0100】
熱伝導性粒子(A)の平均一次粒子径、易変形性凝集体(D)の平均粒子径、熱伝導性粒子(A)の円形度、易変形性凝集体(D)の圧縮変形率10%に要する平均圧縮力、易変形性凝集体(D)の崩壊しにくさ(振とう試験後の平均粒子径の維持率)、炭素材料(J)の形状、熱伝導性部材(H)、(I)の熱伝導率、熱伝導性部材(I)(接着シート)の接着力、および熱伝導性部材(I)の耐熱性については、以下のようにして求めた。
【0101】
<平均一次粒子径>
走査型電子顕微鏡で観察される一次粒子径300個の粒子の長径を測り、その個数平均を求めた。
なお、球状粒子の場合、「一次粒子径の長径」とは一次粒子の最大直径を、
六角板状または円板状粒子の場合、「一次粒子径の長径」とは、それぞれ厚み方向から観察した粒子の投影像における最大直径または最大対角線長を、それぞれ意味する
【0102】
<平均粒子径>
Malvern Instruments社製粒度分布計マスターサイザー2000を用いて測定した。乾式ユニットを用いた。空気圧は2.5バールとした。フィード速度はサンプルにより最適化した。
【0103】
<円形度>
東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて平均円形度を測定した。トルエン10mlに測定したい粒子約5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5,000〜2万個/μlとした。この分散液を用い、上記装置により測定を行い、円相当径粒子群の円形度を測定し、平均円形度を求めた。
【0104】
<圧縮変形率10%に要する平均圧縮力>
微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT−210)を用い、測定領域内で無作為に選んだ10個の粒子について、粒子を10%変形させるための荷重を測定した。その平均値を圧縮変形率10%に要する平均圧縮力とした。
【0105】
<崩壊しにくさ(振とう試験後の平均粒子径の維持率)>
ガラスサンプル管に易変形性凝集体(D)を空隙率70%となるように入れ、振とう機にて2時間振とうした後に粒子径分布を測定した。振とう試験後の平均粒子径の維持率として、処理前の平均粒子径に対する処理後の平均粒子径の割合を求めた。
処理後の平均粒子径が処理前の平均粒子径の80%以上である場合を「崩壊しにくい」と判定した。
【0106】
<熱伝導率>
サンプル試料を15mm角に切り出し、サンプル表面に金を蒸着し、カーボンスプレーによりカーボンを被覆した後、キセノンフラッシュアナライザーLFA447 NanoFlash(NETZSCH社製)にて、試料環境25℃での熱拡散率を測定した。比熱容量はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の高感度型示差走査熱量計DSC220Cを用いて測定した。密度は水中置換法を用いて算出した。これらパラメータから、熱伝導率を求めた。
【0107】
<耐熱性>
熱伝導性部材(I)(接着シート)(3層構成のサンプル:Cu箔(40μm厚)/熱伝導層/アルミ板(250μm厚))を、260℃の溶融半田上に、アルミ板面を接触させて3分間浮かべた。その後、サンプルの外観を目視で観察し、熱伝導性部材(I)の発泡と浮き・剥がれの発生の状態を評価した。
「発泡」とは、熱伝導層とCu箔(40μm)との界面に気泡が発生している状態である。
「浮き・剥がれ」とは、熱伝導層がアルミ板から浮き上がり、剥がれてしまっている状態である。
評価基準は以下の通りである。
優(◎):外観変化なし、
良(○):小さな発泡がわずかに観察される、
可(△):発泡が観察される、
不可(×):激しい発泡の発生あるいは浮き・剥がれが観察される。
【0108】
表中の略語について以下に示す。
H
2O:イオン交換水、
Tol:トルエン、
IPA:2−プロパノール、
MEK:メチルエチルケトン。
【0109】
<樹脂合成例1>
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、および窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとから得られたポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP−1011」、Mn=1006)401.9質量部、ジメチロールブタン酸12.7質量部、イソホロンジイソシアネート151.0質量部、およびトルエン40質量部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させ、これにトルエン300質量部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次に、イソホロンジアミン27.8質量部、ジ−n−ブチルアミン3.2質量部、2−プロパノール342.0質量部、トルエン396.0質量部を混合したものに、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液815.1質量部を添加し、70℃3時間反応させ、トルエン144.0質量部および2−プロパノール72.0質量部で希釈し、Mw=54,000、酸価=8mgKOH/gのポリウレタンポリウレア樹脂(E−1)の溶液を得た。
【0110】
<樹脂合成例2>
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、導入管、および窒素導入管を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオール(クラレポリオール C−2090:株式会社クラレ製)292.1質量部、テトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化株式会社製)44.9質量部、および溶剤としてのトルエン350.0質量部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−8125:東都化成株式会社製)62.9質量部、触媒としてのトリフェニルホスフィン4.0質量部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分が35%になるように調整し、Mw=25000のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(E−2)の溶液を得た。
【0111】
<樹脂合成例3>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および滴下ロートを備えた4口フラスコに、ブチルアクリレート98.5質量部、アクリル酸1.5質量部、および酢酸エチル150.0質量部を仕込み、窒素置換下で70℃まで加熱し、アゾビスイソブチロニトリル0.15質量部を添加し重合を開始した。重合開始後3時間後から1時間おきに5時間後までそれぞれアゾビスイソブチロニトリル0.15質量部を添加し、更に2時間重合を行った。その後、酢酸エチル150.0質量部を添加して重合を終了させ、固形分25%、Mw=84000のアクリル樹脂(E−3)の溶液を得た。
【0112】
(繊維合成例1:銀ナノワイヤ)
160℃に加熱したエチレングリコール100mlに、0.15mMの硝酸銀のエチレングリコール溶液10mlを10秒かけて添加した。10分後、170℃に昇温し、100mMの硝酸銀のエチレングリコール溶液200mlと、600mMのポリビニルピロリドン(Mw40000)のエチレングリコール溶液200mlをそれぞれ210分かけて添加した。さらに170℃にて3時間加熱した。
続いて、得られた溶液をイソプロパノールにて再沈殿を3回行うことにより、銀分3.0mg/mlの平均繊維径500nm、平均長10μm(アスペクト比20)の銀ナノワイヤが約0.3質量%、イソプロパノール中に分散した分散液(P1)を得た。
【0113】
(繊維合成例2:銅ワイヤ)
酢酸銅0.2質量部を蒸留水10mlに溶解させた酢酸銅水溶液10mlと、金属イオン還元剤として5.0mol/lとなるように水素化ホウ素ナトリウムと蒸留水を混合した水素化ホウ素ナトリウム水溶液100mlと、を作製した。水素化ホウ素ナトリウム水溶液に水溶性高分子のポリビニルピロリドン(PVP)0.5gを添加して攪拌溶解させた。
続いてこの還元性水溶液に、窒素と酸素の比率が3:1となるように調整した混合ガスを約60分間バブリングした後、水温を20℃に設定して上記酢酸銅水溶液10mlを滴下した。この混合液を水温20℃に保持したまま約60分間よく攪拌した。生成した黒色の反応液を回収し、銅分1.8mg/mlの平均繊維径12μm、平均長100μm(アスペクト比8.3)の銅ワイヤが約0.18質量%、分散した分散液(P2)を得た。
【0114】
(繊維合成例3:金属被覆ポリマーナノファイバー)
アクリルニトリル/グリシジルメタクリレート=35/65の共重合体(Mw=40,000)を用い、エレクトロスピニングにより、ポリマーナノファイバー70質量部を作製した。さらに、これと200mLの水酸化ヒドラジニウムとを、2500mLのフラスコ中で混合し、一晩攪拌した。ついで、5000mLのメタノールで6回洗浄した後、真空中50℃で24時間乾燥させた。
70質量部のヒドラジン修飾されたポリマーナノファイバーを、密閉ガラス瓶内の50mLの0.1M AgNO
3溶液、5mLの1M KOH溶液および10mLの濃縮NH
3溶液の混合液に浸漬することにより、銀被覆を行った。さらに5000mLのメタノールで6回洗浄した後、真空中50℃で24時間乾燥させることにより、平均繊維径100nm、平均長15μm(アスペクト比150)の銀で被覆されたポリマーナノファイバー(P3)を得た。
【0115】
(実施例1)
熱伝導性粒子(A)として窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン株式会社製「NX−1」、平均一次粒子径:0.7μm、円形度:0.6)100質量部、有機結着剤(B)としてポリビニルアルコールの4質量%水溶液(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNL−05」):25質量部(固形分:1質量部)、およびスラリー内の熱伝導性粒子(A)濃度が40重量%となるように溶剤(C)としてのイオン交換水:125質量部を、ディスパーで1000rpm、1時間、攪拌して、スラリーを得た。このスラリーをミニスプレードライヤー(日本ビュッヒ社製「B−290」)にて、125℃雰囲気下で噴霧乾燥し、平均粒子径約15μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約0.3mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:85%の易変形性凝集体(D−1)を得た。
【0116】
(実施例2)
25質量部(固形分:1質量部)だったポリビニルアルコールの4質量%水溶液を50質量部(固形分:2質量部)とし、125質量部だったイオン交換水を100質量部とした以外は実施例1と同様にして、平均粒子径約5μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約1mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:85%の易変形性凝集体(D−2)を得た。
【0117】
(実施例3)
25質量部(固形分:1質量部)だったポリビニルアルコールの4質量%水溶液を125質量部(固形分:5質量部)とし、125質量部だったイオン交換水を25質量部とした以外は実施例1と同様にして、平均粒子径約10μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約1.5mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:95%の易変形性凝集体(D−3)を得た。
【0118】
(実施例4)
熱伝導性粒子(A)として窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン株式会社製「NX−5」、平均一次粒子径:5μm、円形度:0.55)100質量部、前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」の8質量%水溶液:125質量部(固形分:10質量部)、およびイオン交換水:25質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、平均粒子径約25μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約3mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:87%の易変形性凝集体(D−4)を得た。
【0119】
(実施例5)
熱伝導性粒子(A)として窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン株式会社製「PT160」、平均一次粒子径:8μm、円形度:0.25)100質量部、前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」の4質量%水溶液:50質量部(固形分:2質量部)、およびイオン交換水:100質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、平均粒子径約30μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約2.4mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:85%の易変形性凝集体(D−5)を得た。
【0120】
(実施例6)
熱伝導性粒子(A)として窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン株式会社製「PT140」、平均一次粒子径:10μm、円形度:0.4)100質量部、前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」の20質量%水溶液:120質量部(固形分:30質量部)、およびイオン交換水:30質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、平均粒子径約50μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約3.2mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:88%の易変形性凝集体(D−6)を得た。
【0121】
(実施例7)
熱伝導性粒子(A)として窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン株式会社製「PT120」、平均一次粒子径:13μm、円形度:0.47)100質量部、前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」の4質量%水溶液:50質量部(固形分:2質量部)、およびイオン交換水:100質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、平均粒子径約100μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約0.8mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:82%の易変形性凝集体(D−7)を得た。
【0122】
(実施例8)
熱伝導性粒子(A)として窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン株式会社製「PT140」、平均一次粒子径:10μm、円形度:0.4)100質量部、有機結着剤(B)としてポリビニルピロリドンの4質量%水溶液(株式会社日本触媒製「K−85W」):125質量部(固形分:5質量部)、およびイオン交換水:25質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、平均粒子径約20μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約1.2mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:90%の易変形性凝集体(D−8)を得た。
【0123】
(実施例9)
実施例1で用いた前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」の4質量%水溶液:25質量部(固形分:1質量部)の代わりに、有機結着剤(B)としてアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセファイマーZ−100」の4質量%水溶液:125質量部(固形分:5質量部)を用い、イオン交換水を25質量部とした以外は実施例1と同様にして、平均粒子径約15μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約1.8mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:90%の易変形性凝集体(D−9)を得た。
【0124】
(実施例10)
熱伝導性粒子(A)として前記窒化ホウ素粒子「NX−5」:100質量部、有機結着剤(B)としてポリエスエテル樹脂(東洋紡績株式会社:バイロン200)の4質量%トルエン溶液:125質量部(固形分:5質量部)を用い、イオン交換水の代わりにトルエンを25質量部用い、噴霧乾燥温度を125℃から140℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径約25μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約4mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:88%の易変形性凝集体(D−10)を得た。
【0125】
(実施例11)
実施例10で用いたポリエスエテル樹脂の代わりに、有機結着剤(B)としてポリウレタン樹脂(東洋紡績株式会社:バイロンUR−1400)の10質量%トルエン溶液:20質量部(固形分:2質量部)を用い、トルエンを100質量部とした以外は、実施例10と同様にして、平均粒子径約20μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約3.8mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:88%の易変形性凝集体(D−11)を得た。
【0126】
(実施例12)
熱伝導性粒子(A)として前記窒化ホウ素粒子「NX−5」:100質量部、有機結着剤(B)として前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」の20質量%水溶液:10質量部(固形分:2質量部)、繊維合成例1で得た銀ナノワイヤの分散液(P1):333.3質量部(固形分:1質量部)、およびイオン交換水:6.7質量部を、ディスパーで1000rpm、1時間、攪拌してスラリーを得た。
このスラリーをミニスプレードライヤー(日本ビュッヒ社製「B−290」)にて、125℃雰囲気下で、噴霧乾燥し、平均粒子径約30μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約1.2mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:92%の易変形性凝集体(D−12)を得た。
【0127】
(実施例13)
熱伝導性粒子(A)として前記窒化ホウ素粒子「PT140」:100質量部、有機結着剤(B)として前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」の20質量%水溶液:25質量部(固形分:5質量部)、繊維合成例2で得た銅銀ナノワイヤの分散液(P2)溶液:222.2質量部(固形分:0.4質量部)、およびイオン交換水:2.8質量部を用いた以外は実施例12と同様にして、平均粒子径約50μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約0.6mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:89%の易変形性凝集体(D−13)を得た。
【0128】
(実施例14)
熱伝導性粒子(A)として前記窒化ホウ素粒子「NX−1」:100質量部、有機結着剤(B)として前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」の20質量%水溶液:75質量部(固形分:15質量部)、繊維合成例2で得た金属被覆ポリマーナノファイバー(P3):40質量部、およびイオン交換水:35質量部を用いた以外は実施例12と同様にして、平均粒子径約15μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約4mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:93%の易変形性凝集体(D−14)を得た。
【0129】
(実施例15)
熱伝導性粒子(A)として前記窒化ホウ素粒子「NX−1」:100質量部、有機結着剤(B)として前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」の4質量%水溶液:125質量部(固形分:5質量部)、炭素材料(J)としてカーボンナノチューブ分散体(CnanoTechnology社製「LB200」、平均繊維径11nm、平均繊維長10μm):100質量部(固形分:5質量部)、およびイオン交換水:25質量部を用いた以外は実施例12と同様にして、平均粒子径約15μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約2.4mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:88%の易変形性凝集体(D−15)を得た。
【0130】
(実施例16)
熱伝導性粒子(A)として前記窒化ホウ素粒子「NX−5」:100質量部、有機結着剤(B)として前記ポリビニルアルコール「ゴーセノールNL−05」:50質量部(固形分:2質量部)、炭素材料(J)としてXG Sciences社(鱗片状グラフェン粉末Mグレード、平均アスペクト比3000、平均厚み3nm):1質量部、およびイオン交換水:100質量部を用いた以外は実施例12と同様にして、平均粒子径約30μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約3mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:86%の易変形性凝集体(D16)を得た。
【0131】
(比較例1)
熱伝導性粒子(A)として窒化ホウ素粒子「NX−1」の代わりに、窒化ホウ素粒子「SGP」(電気化学工業株式会社製、平均一次粒子径:約18μm、円形度:0.5、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約150mN)を用い、上記ポリビニルアルコールの4質量%水溶液:125重量部(固形分:5重量部)、イオン交換水:25質量部を用いた以外は実施例3と同様にしてを用いて易変形性凝集体を得ようとしたが、崩壊し易く、凝集体の態を成さない生成物(D’−1)を得た。
【0132】
(比較例2)
ポリビニルアルコールを使用せず、イオン交換水を150質量部とした以外は実施例4と同様にして易変形性凝集体を得ようとしたが、崩壊し易く、凝集体の態を成さない生成物(D’−2)を得た。
【0133】
(比較例3)
ポリビニルアルコールの20質量%水溶液を250質量部(固形分:50質量部)とした以外は実施例4と同様にして、平均粒子径約80μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約10mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:90%の易変形性凝集体(D’−3)を得た。
【0134】
(比較例4)
ポリビニルアルコールの4質量%水溶液を使用せず、シランカップリング剤(信越化学社製「KBM−04」(10質量%溶液):20質量部(固形分:2質量部)を用い、イオン交換水を130質量部とした以外は実施例5と同様にしてスラリーを得、このスラリーを125℃雰囲気下、噴霧乾燥・硬化し、平均粒子径約40μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約42mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:75%の易変形性凝集体(D’−4)を得た。
【0135】
(比較例5)
比較例4と同様のスラリーを得、上記スラリーを、125℃雰囲気下で噴霧乾燥後、窒化ホウ素の融点以上の3000℃で焼結し、平均粒子径約40μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力:約150mN、振とう試験後の平均粒子径の維持率:97%の易変形性凝集体(D’−5)を得た。
【0136】
(比較例6)
実施例1と同様のスラリーを得、このスラリーを125℃雰囲気下で噴霧乾燥後、有機結着剤の分解温度以上の800℃で加熱して易変形性凝集体を得ようとしたが、崩壊し易く、凝集体の態を成さない生成物(D’−6)を得た。
【0137】
実施例1〜16および比較例1〜6における主な製造条件と評価結果を表1に示す。
表1に示すように、凝集体を生成するには、熱伝導性粒子(A)の平均一次粒子径が15μm以下であり、有機結着剤(B)を使用することが必要である。比較例4、5に示すように、シランカップリング剤を有機結着剤として使用したり、アルミナの融点以上で焼結したりするなど、熱伝導性粒子(A)同士を強固に結着させると、易変形性に乏しくなる。
【0138】
【表1】
【0139】
(実施例101)
実施例1で得られた易変形性凝集体(D−1)(平均粒子径15μm)45.0質量部と、バインダー樹脂(E)として、樹脂合成例1で得られたポリウレタンポリウレア樹脂(E−1)の25%MEK溶液20.0質量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1001)の50%MEK溶液2.0質量部とをディスパー攪拌により混合し、溶剤(F)としてイソプロピルアルコール7.1質量部およびトルエン28.4質量部で固形分が50重量%となるように調整した後、超音波脱泡して易変形性凝集体の含有率が70vol%の熱伝導性樹脂組成物(G−1)を得た。
得られた熱伝導性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて剥離処理シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)に塗工し、100℃で2分加熱乾燥し、熱伝導層の厚みが50μmの熱伝導性部材(H−1)を得た。熱伝導率は8(W/m・K)であった。
【0140】
(実施例102)
実施例101で得られた熱伝導性部材(H−1)の熱伝導層上に剥離処理シートを重ね、150℃、2MPaで1時間プレスして、熱伝導層の厚みが48μm、易変形性凝集体の含有量70vol%、熱伝導率10(W/m・K)の熱伝導性部材(I−2)を得た。
【0141】
(実施例103)
実施例2で得られた易変形性凝集体(D−2)(平均粒子径5μm)37.0質量部と、バインダー樹脂(E)として、樹脂合成例1で得られたポリウレタンポリウレア樹脂(E−1)の25%MEK溶液52.0質量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1001)の50%MEK溶液5.2質量部とをディスパー攪拌により混合し、溶剤(F)としてイソプロピルアルコール2.3質量部およびトルエン9.2質量部で固形分が50重量%となるように調整した後、超音波脱泡して易変形性凝集体の含有率が50vol%の熱伝導性樹脂組成物(G−3)を得た。
得られた熱伝導性樹脂組成物(G−3)を、コンマコーターを用いて剥離処理シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)に塗工し、100℃で2分加熱乾燥し、熱伝導層の厚みが60μm、熱伝導率6.5(W/m・K)の熱伝導性部材(H−3)を得た。さらに、熱伝導層上に剥離処理シートを重ね、150℃、2MPaで1時間プレスして、熱伝導層の厚みが55μm、熱伝導率8(W/m・K)の熱伝導性部材(I−3)を得た。
【0142】
(実施例104)〜(実施例121)
表2の組成に基づき、実施例103と同様にして熱伝導組成物(G−4)〜(G−21)、熱伝導性部材(H−4)〜(H−21)、熱伝導性部材(I−4〜I−21)を得た。
【0143】
(比較例101)
窒化ホウ素粉末(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン株式会社製「NX−1」、平均一次粒子径:0.7μm、円形度0.6)45.0質量部と、バインダー樹脂(E)として、樹脂合成例1で得られたポリウレタンポリウレア樹脂(E−1)の25%MEK溶液20.0質量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1001)の50%MEK溶液2.0質量部とをディスパー攪拌により混合し、溶剤(F)としてイソプロピルアルコール7.1質量部およびトルエン28.4質量部で固形分が50重量%となるように調整した後、超音波脱泡して前記窒化ホウ素の含有率が70vol%の熱伝導性樹脂組成物(G‘−1)を得た。
得られた熱伝導性樹脂組成物(G‘−1)を、コンマコーターを用いて剥離処理シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)に塗工し、100℃で2分加熱乾燥し、熱伝導層の厚みが50μm、熱伝導率0.7(W/m・K)の熱伝導性部材(H’−1)を得た。さらに、熱伝導層上に剥離処理シートを重ね、150℃、2MPaで1時間プレスして、熱伝導層の厚みが45μmの熱伝導性部材(I‘−1)を得た。このシートの熱伝導率は0.7(W/m・K)と低いものであった。
【0144】
(比較例102)
比較例1で得られた(D’−1)(凝集体を形成できず)37.0質量部と、バインダー樹脂(E)として、樹脂合成例1で得られたポリウレタンポリウレア樹脂(E−1)の25%MEK溶液52.0質量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1001)の50%MEK溶液5.2質量部とをディスパー攪拌により混合し、溶剤(F)としてイソプロピルアルコール2.3質量部およびトルエン9.2質量部で固形分が50重量%となるように調整した後、超音波脱泡して前記(D’−1)の含有率が50vol%の熱伝導性樹脂組成物(G’−2)を得た。
得られた熱伝導性樹脂組成物(G’−2)を、コンマコーターを用いて剥離処理シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)に塗工し、100℃で2分加熱乾燥し、熱伝導層の厚みが50μm、熱伝導率0.9(W/m・K)の熱伝導性部材(H’−2)を得た。さらに、熱伝導層上に剥離処理シートを重ね、150℃、2MPaで1時間プレスして、熱伝導層の厚みが43μmの熱伝導性部材(I‘−2)を得た。このシートの熱伝導率は1(W/m・K)と低いものであった。
【0145】
(比較例103)〜(比較例110)
表2の組成に基づき、比較例102と同様にして熱伝導組成物(G’−3)〜(G’−10)、熱伝導性部材(H’−3)〜(H’−10)、熱伝導性部材(I’−3〜I’−10)を得たが、いずれの熱伝導性部材(I’)も熱伝導率は0.3〜0.9(W/m・K)と低いものであった。
このとき、比較例109では熱伝導性粒子(D−1)の充填量が過剰となり、連続被膜を形成することができなかった。また、比較例110では、バインダー(E)と溶剤(F)と易変形性凝集体(D−11)を混合している途中に、有機結着剤(B)が溶剤に溶解し、凝集体の崩壊が観察された。
なお、表2中の溶剤(F)は、溶剤として追加したもののみを記載した。
【0146】
【表2】
【0147】
表2中、各記号は以下の成分を表わす。
バイロンUR6100:ポリエステルウレタン樹脂(東洋紡績株式会社製)
ポリゾールAX−590:水系エマルジョン樹脂(昭和電工株式会社製)
ポリゾールAD−11:水系エマルジョン樹脂(昭和電工株式会社製)
AO−509:球状アルミナ(アドマテックス株式会社製、平均一次粒子径が10μm)
【0148】
表2に示すように、本発明の熱伝導性樹脂組成物(G)は、熱伝導率や耐熱性に優れた熱伝導性部材(I)を提供する。
比較例101〜103、107のように熱伝導性樹脂組成物(G)中に熱伝導性粒子を含むが前記熱伝導性粒子が凝集体ではなかったり、比較例104〜106のように熱伝導性樹脂組成物(G)中に熱伝導性粒子の凝集体を含むが前記凝集体が易変形性ではなかったりする場合には、充分な熱伝導率を発現できない。また、比較例104に示すように有機結着剤(B)の量が過剰であると、有機結着剤(B)が熱伝導性を阻害するという点でも充分な熱伝導率を発現できない。
比較
例108に示すように、組成物中の易変形性凝集体(D)の量が不充分であると、充分な熱伝導率を発現できない場合がある。比較例109に示すように、組成物中の易変形性凝集体(D)の量が過剰であると、成膜ができない場合がある。比較例110に示すように、樹脂組成物作製中に、凝集体が崩れても充分な熱伝導率を発現できない。