(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされものであり、本発明の課題は、好ましい打感が得られるとともに、打撃音の小さい打楽器パッド及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべくなされた本発明に係る打楽器パッドは、
エラストマー製のパッド本体、及びこのパッド本体の表面側に積層される伸長可能な繊維シートを備え、
前記パッド本体のエラストマーと前記繊維シートの繊維とが存在する複合層、
前記繊維シートの表面側に積層される樹脂コーティング層、及び
前記樹脂コーティング層と複合層との間に配設され、前記エラストマーが存在せずに前記繊維から構成される中間層
を有する。
【0008】
当該打楽器パッドにあっては、パッド本体のエラストマーと繊維シートの繊維とが存在する複合層を有するので、この複合層によってパッド本体と繊維シートとを強固に接合できる。また、この複合層と樹脂コーティング層との間に位置する中間層は、エラストマーが存在せずに繊維シートの繊維から構成されているので、中間層には繊維同士の間の空隙が存在し、この空隙の存在によって中間層が容易かつ確実に伸長でき、当該打楽器パッドの表層が好ましい柔らかさを有し、このため好ましい打感が得られるとともに打撃音が小さい。さらに、繊維シートの表面に樹脂コーティング層が積層されているので、繊維シートの劣化を抑制することができる。
【0009】
前記エラストマーとしては発泡ポリウレタンが好ましく、これにより繊維シートへの前記エラストマの含浸具合の調整が容易となり当該打楽器パッドのより良好な打感及びより小さい打撃音が得られる。
【0010】
前記繊維シートの平均厚さに対する前記中間層の平均厚さとしては、10%以上70%以下が好ましい。これにより、前述した良好な打感及び小さい打撃音が得られるとともに、繊維シートとパッド本体との接合及び繊維シートと樹脂コーティング層との接合が強固となる。
【0011】
前述のようにエラストマーとして発泡ポリウレタンを用いた場合、前記繊維シートに撥水処理が施されているとよい。これにより、当該打楽器パッドを製造するにあたって、パッド本体を形成するためのエラストマー組成物を繊維シートの裏面側に供給した際に、このエラストマー組成物が繊維シートに完全に含浸しにくく、容易かつ確実に中間層を形成することができる。
【0012】
当該打楽器パッドの製造方法は
伸長可能な繊維シートの表面に樹脂コーティング層を形成する工程、及び
前記繊維シートの裏面側にエラストマー組成物を供給する工程、及び
前記エラストマー組成物が繊維シートに完全に含浸する前にエラストマー組成物を硬化させる工程
を有する。
【0013】
当該打楽器パッドの製造方法によれば、繊維シートの繊維とエラストマーとの複合層、繊維シートの表面側に積層される樹脂コーティング層、及び前記樹脂コーティング層と複合層との間に配設される繊維から構成される中間層を有する当該打楽器パッドを容易かつ確実に製造することができ、このように製造された当該打楽器パッドは前述のように好ましい打感が得られるとともに打撃音が小さい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る打楽器パッドは、好ましい打感が得られるとともに打撃音が小さい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明するが、まず本発明に係る打楽器パッドとして、電子ドラムに用いられ、スティック等で打撃されるドラムパッド1を例にとり図面を参酌しつつ説明する。なお、本発明に係る打楽器用パッドは、ドラムパッド1に限定されるものではなく、その他の打撃入力装置にも適用可能である。
【0017】
[ドラムパッド]
図1のドラムパッド1は、エラストマー製のパッド本体2、このパッド本体2の表面側に積層される伸長可能な繊維シート3、パッド本体2を裏面側から支持する支持体4、及び打撃を感知するセンサー5を備えている。このドラムパッド1は、例えば電子ドラムの10〜14インチのスネアやタムに用いられるものが想定され、具体的には直径が200〜300mmで、厚みが10〜30mm程度のものが挙げられる。また、当該ドラムパッド1は、前記パッド本体2の周囲を囲む略円筒形のシェル(ドラム胴(図示省略))を備えてもよく、このシェルが表面側端部にリムを有してもよい。なお、ドラムパッド1のサイズや用途等は前記のものに限定されるものではない。
【0018】
また、当該ドラムパッド1は、前記支持体4の表面側において、
図2に示すように、エラストマー層11、複合層12、中間層13及び樹脂コーティング層14の多層構造を有している。前記エラストマー層11は、パッド本体2を構成し、エラストマーのみからなる層である。前記複合層12は、エラストマー層11の表面に配設され、前記パッド本体2のエラストマーと前記繊維シート3の繊維とが存在する層である。前記樹脂コーティング層14は、前記繊維シート3の表面側に積層される樹脂層である。前記中間層13は、樹脂コーティング層14と複合層12との間に配設され、前記エラストマーが存在せずに前記繊維のみから構成される層である。
【0019】
(繊維シート)
前記繊維シート3としては、伸長可能なシート状に設けられているものであれば特に限定されず、公知の繊維シート3が用いられる。なお、繊維シート3は、伸縮可能、つまり伸長された際に繊維シート3自体が復元力を有するものが好ましい。ここで、繊維シート3は、シート平面方向のいずれの方向(二次元の任意の方向)に伸縮可能であること(2wayストレッチ)が好ましく、具体的にはニット材(ニット編みされた編物)を採用することが好ましい。
【0020】
また、繊維シート3を構成する繊維は、後述するようにエラストマー組成物が繊維シート3の一部に含浸できるものであれば特に限定されず、天然繊維を採用することも可能であるが、繊維シート3の強度等の観点から合成繊維を用いることが好ましい。この合成繊維としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂からなる繊維、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂からなる繊維及びこれら樹脂の共重合物、変性物及びこれらの組み合わせからなる合成繊維が挙げられる。なお、これらの繊維を単独で用いることも可能であり、また複数種類の繊維を組み合わせて用いることも可能である。
【0021】
さらに、前述のように繊維シート3としてニット材を用いた場合、前記繊維の繊度の下限としては、140dtexが好ましく、150dtexがより好ましい。一方、前記繊維の繊度の上限としては、200dtexが好ましく、190dtexがより好ましい。前記繊度が前記下限未満であると、繊維シート3の強度が不十分となるおそれがある。逆に、前記繊度が前記上限を超えると、繊維シート3が厚くなり過ぎ、却って打感を損ねるおそれがある。
【0022】
また、前記ニット材のゲージの下限としては、50Gが好ましく、55Gがより好ましい。一方、前記ゲージの上限としては、70Gが好ましく、65Gがより好ましい。前記ゲージが前記下限未満であると、繊維シート3の強度が不十分となるおそれがある。逆に、前記ゲージが前記上限を超えると、繊維シート3自体が高額化し、当該ドラムパッド1の高額化を招くおそれがある。
【0023】
さらに、前記ニット材のゲージが前記範囲内であり、かつ前記繊維の繊度が前記範囲内にあることで、繊維シート3は、後述するようにエラストマー組成物が好適に含浸する程度の繊維同士間に隙間を有し、これにより複合層12及び中間層13を容易かつ確実に形成することができる。
【0024】
また、前記繊維シート3の平均厚みの下限としては、250μmが好ましく、400μmがより好ましい。一方、繊維シート3の平均厚みの上限としては、800がμmが好ましく、600μmがより好ましい。前記繊維シート3の平均厚みが前記下限未満であると、前記中間層13の形成が困難となるおそれがある。逆に、繊維シート3の平均厚みが前記上限を超えると、繊維シート3が厚くなり過ぎ、打感を損ねるおそれがある。
【0025】
また、前記繊維シート3は、前記エラストマーがポリウレタン樹脂である場合には、撥水処理が施されていることが好ましい。これにより後述するようにエラストマー組成物を繊維シート3に適度に含浸させることができる。なお、この撥水処理は、繊維をシート状に編成した後に施すことも、編成前に繊維自体に施すことも可能である。また、前記撥水処理としては、公知の処理を適宜採用可能であり、例えばシリコーン撥水剤やフッ素撥水剤等の撥水剤を繊維シート3に塗工又は含浸させる方法を採用可能である。
【0026】
(パッド本体)
前記パッド本体2のエラストマーは、本実施形態においては発泡ポリウレタンである。この発泡ポリウレタン組成物は、公知の材料が使用され、具体的には、例えばポリオール、イソシアネート及び発泡剤を含む組成物が用いられる。なお、この発泡ポリウレタン組成物は、パッド本体2の特性を阻害しない範囲で、必要に応じて、硬化剤、着色剤、光線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、防黴剤、難燃剤等の各種添加剤を含有していてもよい。特に、粘度調製の目的から、前記発泡ポリウレタン組成物に増粘剤やフィラーを含有させるとよい。
【0027】
前記ポリオールは、イソシアネートとウレタン結合できるものであれば特に限定されず、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
【0028】
前記ポリオールの数平均分子量としては200以上10000以下が好ましい。前記数平均分子量が前記下限未満では、反応が速く進むため所望の成形が困難となるおそれがあり、またパッド本体2の柔軟性が不十分となるおれそがある。一方、前記数平均分子量が前記上限を超えると発泡ポリウレタン組成物の粘度が高くなりすぎて成形が困難となるおそれがある。
【0029】
前記イソシアネートは、ポリオールとウレタン結合できるものであれば特に限定されず、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
前記発泡剤は、パッド本体2の成形時に発泡できるものであれば特に限定されず、例えば熱によって発泡する熱分解型発泡剤が挙げられる。この熱分解型発泡剤としては、例えばオキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系や、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系等を用いることができる。この熱分解型発泡剤の分解温度は、パッド本体2の成形の容易性等を考慮すると、100℃以上240℃以下であることが好ましい。
【0031】
(支持体)
前記支持体4は、本実施形態では平板状の円板から構成される。この支持体4の材質は特に限定されず、例えば鉄板、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ板等の金属板等が用いられる。また、支持体4の厚みも、特に限定されるものではなく、支持体4の平均厚みとしては例えば0.5mm以上3mm以下とすることができる。
【0032】
この支持体4の表面には、前記パッド本体2が直接積層されている。つまり、本実施形態においては、支持体4とパッド本体2とは、パッド本体2を構成する発泡ポリウレタンの発泡圧によって接合される。具体的には、支持体4表面において発泡ポリウレタン組成物(パッド本体形成材料)を発泡及び硬化させることで、パッド本体2と支持体4との接合状態が得られている。
【0033】
前記パッド本体2と支持体4との剥離接着強さの下限としては、5N/25mmが好ましく、7N/25mmがより好ましい。前記剥離接着強さが前記下限未満であると、パッド本体2と支持体4との接合状態が不十分であり、パッド本体2と支持体4とが不用意に剥離するおそれがある。なお、前記剥離接着強さは、JIS K6854−1に準じて測定される値である。
【0034】
(センサー)
前記センサー5は、
図1に示すように、前記支持体4の裏面側に付設されている。このセンサー5は、支持体4の裏面に接着剤(図示省略)を介して接着されている。なお、前記センサー5と支持体4の裏面との間に振動吸収材を介在させることも適宜設計変更可能である。また、センサー5の配設位置は特に限定されるものではないが、平面視支持体4の中心に前記センサー5を取付けることが好ましい。なお、前記接着剤はセンサー5を接着できるものであれば特に限定されず、この接着剤としては例えば反応型接着剤等を用いることができる。
【0035】
このセンサー5は、表面に繊維シート3が配設されたパッド本体2への打撃を感知し、打撃検出信号を信号出力線(図示省略)から電子音源(図示省略)に出力するものである。このセンサー5としては、前述のように打撃を感知することができるものであれば特に限定されず、例えば圧電素子や集音マイク等が用いられる。
【0036】
(層構造の説明)
前記樹脂コーティング層14は、繊維シート3の表面側を被覆する層であれば特に限定されず、例えば熱融着可能な伸縮性のあるフィルムを繊維シート3表面に熱融着することで形成することができる。この樹脂コーティング層14の樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びこれら樹脂の共重合物が挙げられる。なお、前記樹脂コーティング層14の厚みは特に限定されず、この樹脂コーティング層14の平均厚みとしては、例えば10μm以上80μm以下とすることができる。なお、この樹脂コーティング層14は、コーティング材料である樹脂と繊維シート3の繊維とが存在する複合層から構成することも可能であり、またコーティング材料の樹脂層とこの裏面側の前記複合層との二層構造から構成することも可能である。
【0037】
前記樹脂コーティング層14の表面の硬度(アスカー硬度C)の下限としては、10が好ましく、30がより好ましい。一方、前記硬度の上限としては、60が好ましく、50がより好ましい。前記硬度が前記下限未満であると、当該ドラムパッド1の表層が軟らかくなり過ぎ、好ましい打感が得られなくなるおそれがある。逆に、前記硬度が前記上限を超えると、当該ドラムパッド1の表層が硬くなり過ぎ、好ましい打感が得られなくなるおそれがある。なお、前記硬度は、JIS K 7312 アスカーC硬度により測定される値である。
【0038】
前記中間層13は、前述のようにパッド本体2のエラストマーが存在せずに繊維シート3の繊維のみから構成される層であり、繊維同士の間に空隙を有している。前記繊維シート3の平均厚みに対する中間層13の平均厚さの下限としては、10%が好ましく、20%がより好ましい。一方、繊維シート3の平均厚みに対する中間層13の平均厚さの上限としては、90%が好ましく、80%がより好ましい。繊維シート3の平均厚みに対する中間層13の平均厚さが前記下限未満であると、中間層13が薄くなり過ぎ、中間層13による打感及び打撃音の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、繊維シート3の平均厚みに対する中間層13の平均厚さが前記上限を超えると、繊維シート3とパッド本体2との接合又は繊維シート3と樹脂コーティング層14との接合が不十分となるおそれがある。
【0039】
前記複合層12は、前述のようにパッド本体2のエラストマーと繊維シート3の繊維とが存在する層であり、この複合層12によってパッド本体2と繊維シート3とが強固に接合される。この複合層12は、後述するようにエラストマー組成物が繊維シート3の一部(裏面)に含浸して硬化することで形成される。前記繊維シート3の平均厚みに対する複合層12の平均厚さの下限としては、10%が好ましく、20%がより好ましい。一方、繊維シート3の平均厚みに対する複合層12の平均厚さの上限としては、90%が好ましく、80%がより好ましい。繊維シート3の平均厚みに対する複合層12の平均厚さが前記下限未満であると、繊維シート3とパッド本体2との接合が不十分となるおそれがある。逆に、繊維シート3の平均厚みに対する複合層12の平均厚さが前記上限を超えると、中間層13が薄くなり過ぎ、中間層13による打感及び打撃音の向上効果が不十分となるおそれがある。
【0040】
前記エラストマー層11は、前述のようにパッド本体2を構成する層であり、このエラストマー層11の裏面が発泡圧によって前記支持体4の表面に接合される。このエラストマー層11の厚みは特に限定されず、このエラストマー層11の平均厚みとしては、例えば5mm以上20mm以下とすることができる。
【0041】
このエラストマー層11及び複合層12の発泡倍率の下限としては、1.2倍が好ましく、1.5倍がより好ましい。なお、発泡倍率とは、エラストマー組成物が大気圧下において発泡した場合に想定される発泡後の体積を、実際に成形されたエラストマー層及び複合層の合計体積で割った値を意味する。一方、前記発泡倍率の上限としては、5.5倍が好ましく、2.5倍がより好ましい。前記発泡率が前記下限未満であると、発泡圧が小さ過ぎることでエラストマー層11と支持体4との接合強度が弱くなるおそれがある。逆に、前記発泡倍率が前記上限を超えると、成形型内での圧力が大きくなりすぎ、成形型が前記圧力に耐えられなくなり、エラストマー層11及び複合層12の成形ができなくなる。また、前記圧力に耐えられる成形型を製作するのには高いコストが必要となる。
【0042】
また、前記エラストマー層11の空隙率の下限としては、30%が好ましく、40%がより好ましい。一方、前記空隙率の上限としては、80%が好ましく、70%がより好ましい。前記空隙率が前記下限未満であると、エラストマー層11が硬くなり過ぎることで当該ドラムパッド1の好ましい打感が得られなくなるおそれがある。逆に、前記空隙率が前記上限を超えると、エラストマー層11が軟らかくなり過ぎることで打撃に対する強度が不足することになる。なお、「空隙率」は、(樹脂比重−見かけ密度)×100によって測定できる。見かけ密度はJIS K 7222 発泡プラスチック及びゴム―見かけ密度の求め方にて算出することが可能である。
【0043】
[当該ドラムパッドの製造方法]
次に、当該ドラムパッド1の製造方法について説明する。
【0044】
当該ドラムパッド1の製造方法は、
伸長可能な繊維シート3の表面に樹脂コーティング層14を形成する工程、
前記繊維シート3の裏面側にエラストマー組成物を供給する工程、
前記エラストマー組成物が繊維シート3に完全に含浸する前に硬化する工程、及び
前記支持体4の裏面にセンサー5を付設する工程
を有する。
【0045】
樹脂コーティング層形成工程においては、例えば熱融着可能な伸縮性のあるフィルムを繊維シート3の表面に熱融着することで樹脂コーティング層14を形成することができる。なお、樹脂コーティング層形成工程として、繊維シート3の表面に樹脂コーティング層形成材料を塗工し、乾燥させる方法を採用することも可能である。
【0046】
前記エラストマー組成物供給工程に際しては、まず
図3に示すようにパッド本体成形用の成形型6に繊維シート3を配設した状態で液状のエラストマー組成物を供給する。なお、図示例では、繊維シート3を底面に位置するよう配設し支持体4が成形型6の蓋を構成するよう図示しているが、支持体4が成形型6の底となり繊維シート3が天面に位置するよう配設することも適宜設計変更可能である。
【0047】
このエラストマー組成物供給工程から前記エラストマー組成物硬化工程までの間において、エラストマー組成物は、繊維シート3に完全に含浸せずに繊維シート3の一部(裏面)のみ含浸する。
【0048】
そして、エラストマー組成物硬化工程では、前述のように成形型6に供給されたエラストマー組成物が硬化する。これにより、パッド本体2が成形されるとともに、前述のような複合層12及び中間層13が形成される。
【0049】
また、このエラストマー組成物硬化工程では、エラストマー組成物は発泡するとともに硬化し、この発泡圧によって支持体4とパッド本体2とが接合される。具体的には、エラストマー組成物は、例えば加熱等によって発泡するとともに、ポリオールとイソシアネートとの重合により硬化することで、パッド本体2が成形されつつ支持体4に接合される。
【0050】
この発泡圧(エラストマー組成物硬化工程における成形型6内の圧力)は、1.2kgf/cm
2以上5.5kgf/cm
2以下が好ましい。前記発泡圧が前記下限未満であると、パッド本体2と支持体4との十分な接合が得られなくなるおそれがある。逆に、前記発泡圧が前記上限を超えると、この圧力に耐え得る成形型6を構成するためにコストを要し、製造コスト増を招くおそれがある。
【0051】
前記センサー付設工程は、前記エラストマー組成物硬化工程の後に行うことも、エラストマー組成物供給工程の前に行うことも可能である。
【0052】
[利点]
当該ドラムパッド1にあっては、中間層13が繊維シート3の繊維のみから構成され、中間層13には繊維同士の間の空隙が存在するため、この空隙の存在によって中間層13が容易かつ確実に伸長でき、当該打楽器パッド1の表層が好ましい柔らかさを有し、これにより当該打楽器パッドは好ましい打感が得られるとともに打撃音が小さい。
【0053】
さらに、当該ドラムパッド1にあっては、パッド本体2の成形時において、成形型6に配設された繊維シート3が成形圧によって厚み方向に押し潰されたとしても、前述のように当該ドラムパッドはエラストマーの存在しない中間層を有するので、成形後に前記繊維シート3が押し潰し状態から復元することができ、前述のように表層が好ましい柔らかさを有することができる。
【0054】
また、パッド本体2が支持体4の表面に直接積層、つまりエラストマー組成物の発泡圧を用いてパッド本体2と支持体4とが接合できるので、パッド本体2と支持体4との間に接着剤層を設ける必要がなく、このため製造コストの抑制を図ることができる。さらに、当該打楽器パッドは、前述のようにパッド本体2と支持体4との間に接着剤層を有さないので、このパッド本体2と支持体4との間の接着剤層の存在によるセンサー5の感知タイミングの遅れがなく、センサー5の感度が良好である。
【0055】
[その他の実施形態]
本実施形態は前記構成からなり、前述の利点を奏するものであったが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【0056】
つまり、前記実施形態では、パッド本体が発泡ポリウレタン製のものについて説明したが、パッド本体を例えばシリコーンゴム等から構成することも可能である。このシリコーンゴムとしては、シロキサン結合を有するシリコーンゴム、例えば発泡性のシリコーンRTVゴム等を用いることができる。
【0057】
また、本発明において前記支持体は必須の構成要件ではなく、さらに当該打楽器パッドが支持体を備える場合にあっても、発泡エラストマーの発泡圧によってパッド本体と支持体とが接合されているものに限定されるものではない。つまり、パッド本体と支持体との間に接着剤層を介在させ、この接着剤層によってパッド本体と支持体とを接合することも可能である。なお、前記接着剤層を構成する接着剤としては、例えばアクリル系粘着剤等を用いることができる。
【0058】
さらに、当該打楽器パッドにあっては、エラストマー層の裏面に不織布等からなる布状材を配設することも可能である。なお、このようにエラストマー層の裏面に布状材を配設する場合にあっては、布状材と支持体との間に接着剤層を介在させることが好ましい。なお、前記接着剤層を構成する接着剤としては、例えばアクリル系粘着剤等を用いることができる。
【0059】
また、当該打楽器パッドにあっては、平面方向全ての領域において繊維のみからなる中間層を設けたものに限定されるものではない。つまり、当該打楽器パッドにあっては、平面方向において、樹脂コーティング層と複合層とが隙間(中間層)をもって配される中間層存在領域、及び樹脂コーティング層と複合層とが接する中間層不存在領域を設けることも可能である。具体的には例えば繊維シートの裏面に平面視部分的に撥水処理を施し、この繊維シートの裏面に発泡ポリウレタン組成物を供給し硬化することで、前記撥水処理を施した部分に対応する領域を前記中間層存在領域とし、その他の部分に対応する領域を中間層不存在領域とすることも可能である。
【0060】
さらには、平面方向において複合層が存在しない領域をさらに備えることも可能である。つまり、当該打楽器パッドにあっては、中間層の裏面側にエラストマーと繊維との複合層を有する領域、及びエラストマー組成物が含浸せずにエラストマー層(エラストマーのみからなる層)と中間層(繊維のみからなる層)との間に複合層が存在しない領域を設けることも可能である。なお、前述のように複合層不存在領域を形成するにあたっては、エラストマー組成物を供給する前に繊維シートの裏面に部分的にシーリングを施す方法を採用可能である。
【0061】
さらに、前記実施形態においては、エラストマー組成物の含浸程度を調節するために、繊維シートに撥水処理を施したものについて説明したが、例えば成形時において繊維シートに気体を供給しておくことでエラストマー組成物の含浸程度を調節することも可能である。また、繊維シートに昇華可能な添加物を含有させておき、成形後に前記添加物を昇華させることで中間層に気体が好適に介在されるよう設けることも可能である。
【0062】
[実施例1]
まず、繊度160dtexのポリエステル樹脂製の繊維を60Gでニット編みしたものに、ポリウレタンフィルムをラミネートすることで、平均厚み20μmの樹脂コーティング層を表面に有する繊維シートを用意した。なお、繊維シートの平均厚みは、500μmである。また、この繊維シートに裏面側に離型剤を塗布することで撥水処理を施した。この離型剤として、フッ素系離型剤、具体的にはダイキン工業株式会社製のダイフリーFB−962を用いて前記撥水処理を行った。
【0063】
成形型の底面に繊維シートを配設した状態で液状のエラストマー組成物を供給し、支持体を成形型の蓋を構成するよう配設することで、成形型を閉塞する。このエラストマー組成物として、ポリオール成分100質量部に対して、イソシアネート成分25質量部、発泡剤0.5質量部、触媒0.5質量部、整泡材1質量部を含有するものを用いた。ポリオール成分として、三菱化学株式会社製のPTMG2000を用いた。イソシアネート成分として、BASF INOAC ポリウレタン株式会社製のカルボジイミド変性MDIを用いた。発泡剤として水を用い、触媒としてはトリエチレンジアミンを用い、整泡材としてシリコン系整泡材を用いた。前記支持体として、0.8mm厚の亜鉛メッキ鋼板を用いた。前記成形型は、成形されるパッド本体の平均厚みが15mmとなるよう設けられている。
【0064】
前述のように閉塞された成形型内で、温度55℃で30分間、パッド本体形成材料を発泡及び硬化させた。ここで、エラストマー組成物は、成形型の体積に対して1.5〜2倍程度フリー発泡する量だけ投入される。具体的には、体積615ccの成形型内に前記エラストマー組成物を250cc投入した。前記エラストマー組成物はフリー発泡した場合には体積が4倍、つまりは1000ccに膨張するが、前記のように成形型内で発泡及び硬化するため、615ccを超えては膨張しない。このため、パッド本体の発泡倍率は、1000cc/615ccによって算出でき、1.62倍である。なお、この発泡倍率は、発泡剤としての水の量を調節することで調節でき、例えば水の量を調節することで発泡倍率を6倍とすることも可能である。また、発泡ポリウレタン組成物は上述のように615ccを超えて膨張しないが、その膨張できなかった分が発泡圧として寄与する。ここで、この発泡圧としては、1.2〜5.5kgf/cm
2となる。また、このパッド本体の空隙率は0.45であり、パッド本体のアスカー硬度Cは40であった。
【0065】
前述のようにエラストマー組成物が発泡及び硬化することでパッド本体が成形され、これにより、前記樹脂コーティング層と複合層との間に、前記エラストマーが存在せずに前記繊維から構成される中間層が形成された。この中間層の平均厚みは、200μmであった。
【0066】
[比較例1]
撥水処理を施さない繊維シートを用いた以外は、前記実施例1と同様の方法によって比較例1のドラムパッドを得た。この比較例1のドラムパッドにあっては、繊維シートに液状のエラストマー組成物が完全に含浸した状態でエラストマー組成物が硬化するため、実施例1のような中間層が存在せず、樹脂コーティング層の裏面に複合層(繊維とエラストマーとからなる層)が直接積層された状態となっている。
【0067】
<打感テスト>
実施例1のドラムパッドは、比較例1のドラムパッドと比較すると好ましい打感が得られた。具体的には、実施例1のドラムパッドは、しっとりとした打撃感触が得られるのに対して、比較例1のドラムパッドは、しっとりとした打撃感触が得られなかった。また、実施例1のドラムパッドは、比較例1のドラムパッドに比べて、打撃音が小さかった。