(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記版胴及び前記インキ掻き取りロールの回転動作に対し、前記圧胴の離接動作が任意のタイミングで実行可能とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の校正機。
インキ供給部から直接又はアニロックスロールを介してインキが供給される版胴と、圧胴と、を備えた校正機を用い、前記圧胴に取り付けた印刷シートに校正印刷を行う校正印刷方法であって、
前記校正機に、前記版胴に圧接して回転するインキ掻き取りロールを設け、
前記印刷シートを前記版胴から離隔させると共に、前記版胴に前記インキが供給されてから前記版胴と前記インキ掻き取りロールとを一回以上回転させる慣らし回転ステップと、
前記慣らし回転ステップを実行した後に、前記版胴を回転させつつ前記印刷シートを前記版胴に圧接して、前記印刷シートに前記インキによる校正印刷を行う校正印刷ステップと、
を含むことを特徴とする校正印刷方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、フレキソ印刷やグラビア印刷などに用いられるインキは、チクソトロピ性を有し、外力の付与により粘度変化が生じ得る。
例えば、従来の校正機のように、インキが、インキ供給ユニットから版胴に供給され、版胴が一回転しない内にすぐに印刷シートに印刷される場合、インキに対して外力がほとんど付与されない。
そのため、校正印刷は、インキの粘度低下がほとんど生じることなく行われる。
【0008】
これに対し、本印刷の印刷機では、一般的に、インキがインキ供給ユニットから版胴へ供給された後、印刷されるまでの間に版胴が複数回、回転する時間がある。
例えばフレキソ印刷の場合、この印刷直前の版胴の複数回の回転において、インキにはアニロックスロールと版胴との圧接等による外力が繰り返し付与される。
また、グラビア印刷の場合、印刷直前の版胴の複数回の回転において、インキパンなどのインキ供給ユニットを通過する際にインキ攪拌による外力が繰り返し付与される。
そして、その外力付与後、印刷シートに印刷される。そのため、本印刷において、インキの粘度は、外力の繰り返し付与により低下しており、本印刷は、インキの粘度が従来の校正機よりも低い粘度で行われる。
【0009】
このような、校正機での校正印刷におけるインキの粘度と本印刷におけるインキの粘度との違いにより、印刷品質の差が生じる場合があった。
そのため、校正印刷でのインキの粘度を、本印刷でのインキの粘度に近づけて、本印刷との印刷品質の差が少ない校正印刷が行えることが望まれている。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、本印刷との印刷品質の差が少ない校正印刷が行える校正機及び校正印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成及び手順を有する。
1) 能動回転し、インキ供給部から直接又はアニロックスロールを介してインキが供給される版胴と、
前記版胴に圧接して前記版胴と共に回転するインキ掻き取りロールと、
前記版胴を押圧する第1の位置と、前記版胴に対し離隔した第2の位置と、の間で離接し、前記版胴と対向する面に印刷シートを取り付け可能とされた圧胴と、
前記圧胴を前記版胴に対し離接させる駆動部と、
を備え
、
前記圧胴が前記第2の位置にあって前記版胴に前記インキが供給された後、前記版胴の回転回数が予め設定された任意のN回(Nは正の整数)を超えたときに、前記圧胴が前記第1の位置に移動するよう構成されている校正機である。
2) 前記インキ掻き取りロールの周面に接触するドクタブレードを備えたことを特徴とする1)に記載の校正機である。
3) 前記圧胴は円筒状を呈し、前記印刷シートは、前記圧胴の周面に取り付け可能とされていることを特徴とする1)又は2)に記載の校正機である。
4) 前記版胴及び前記インキ掻き取りロールの回転動作に対し、前記圧胴の離接動作が任意のタイミングで実行可能とされていることを特徴とする1)〜3)のいずれか一つに記載の校正機である。
5) インキ供給部から直接又はアニロックスロールを介してインキが供給される版胴と、圧胴と、を備えた校正機を用い、前記圧胴に取り付けた印刷シートに校正印刷を行う校正印刷方法であって、
前記校正機に、前記版胴に圧接して回転するインキ掻き取りロールを設け、
前記印刷シートを前記版胴から離隔させると共に、前記版胴に前記インキが供給されてから前記版胴と前記インキ掻き取りロールとを一回以上回転させる慣らし回転ステップと、
前記慣らし回転ステップを実行した後に、前記版胴を回転させつつ前記印刷シートを前記版胴に圧接して、前記印刷シートに前記インキによる校正印刷を行う校正印刷ステップと、
を含むことを特徴とする校正印刷方法である。
6) 前記校正印刷ステップにおいて、
前記版胴に取り付けられた版の所定位置と、前記圧胴に取り付けられた前記印刷シートの所定位置と、を一致させるように前記印刷シートを前記版胴に圧接させることを特徴とする
5)に記載の校正印刷方法である。
7) 前記校正機に、前記インキ掻き取りロールの周面に接触するドクタブレードを設けたことを特徴とする
5)又は
6)記載の校正印刷方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本印刷との印刷品質の差が少ない校正印刷が行える、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により
図1〜
図9を参照して説明する。
【0015】
(実施例1)
図1は、実施例1の校正機51の構成を説明するための模式図である。
実施例1の校正機51は、フレキソ印刷用の校正機である。
校正機51は、ベース1を備え、ベース1は以下の部材を、直接的又は間接的に支持している。すなわち、校正機51は、インキ供給部2と、インキ供給部2からインキが供給されるアニロックスロール3と、アニロックスロール3が圧接回転することでアニロックスロール3のインキが供給される版胴4と、版胴4の上方側に配置されたインキ掻き取り部5と、版胴4の外周面4aに対し、インキ掻き取り部5に対しアニロックスロール3とは反対側の位置において離接する圧胴6と、圧胴6を版胴4に対して離接させる離接駆動部7と、を備えている。
図1において、圧胴6は、実線で版胴4に接触した状態が示され、一点鎖線で離隔した状態が示されている。
【0016】
校正機51は、全体の動作を制御する制御部8と、情報を記憶する記憶部MRと、版胴4を
図1の矢印DR方向に能動回転させるモータ4Mと、圧胴6を
図1の矢印DR1方向に能動回転させるモータ6Mと、を有している。
【0017】
また、ベース1には、作業者がこの校正機51を操作するための入力を行う操作パネルPNが設けられている。
操作パネルPNには、例えば、電源ボタンPN1,印刷ボタンPN2,モードボタンPN3,及び慣らし回転回数設定スイッチPN4などが配置されている。操作パネルPNから入力された情報は、操作情報Jとして制御部8に向け出力される。
【0018】
図2に示されるように、版胴4の外周面4aには、凸版のフレキソ版F1が着脱自在に取り付けられるようになっている。その取り付けの際、外周面4aの周方向の版基準位置P4に、フレキソ版F1の一端部(例えば印刷先頭側)が固定される。
フレキソ版F1の取り付けのために、版胴4側に、見当合わせレジスタや位置決めピンなどの取り付け構造を設けておくとよい。
これにより、外周面4a上のフレキソ版F1の取り付け位置を、高精度で決めることができる。また、フレキソ版F1を繰り返し取り付けた際の位置ずれを、実質的に無視できる程度に小さくすることができる。
版胴4の外周面4aとフレキソ版F1との関係において、外周面4aに、フレキソ版F1が無い部分、又はフレキソ版F1が存在しつつ印刷画像が形成されていない部分、が版基準範囲AR1として形成されるようになっている。
図2には前者のフレキソ版F1が無い部分が形成された例が示されている。
この版基準範囲AR1及び版基準位置P4の周方向位置は、エンコーダ等のセンサ4bにより検出される。センサ4bは、版基準範囲AR1及び版基準位置P4の周方向位置を含む版位置情報J1を、制御部8に向け送出する。
【0019】
校正機51は、版胴4の外周面4aにインキKが付着したか否かを判定するセンサS1を有している。
センサS1の設置位置は、例えば外周面4aにおけるアニロックスロール3とインキ掻き取りロール5aとの間のアニロックスロール3側とされる。
センサS1は、例えば光センサであり、外周面4aにおけるインキKの有無を判定できる検出値を、インキ有無情報J3として制御部8に向け出力する。
検出は、例えば、インキKの有無による反射率の違い等を利用する。
【0020】
図1に戻り、インキ掻き取り部5は、版胴4に接触して従動回転するインキ掻き取りロール5aを有している。
インキ掻き取り部5は、更に、インキ掻き取りロール5aの周面5a1に接触し、インキ掻き取りロール5aに付着した余剰インキK1(
図6参照)を掻き取るドクタブレード5bを有していてもよい。この実施例の校正機51は、ドクタブレード5bを有している。
【0021】
圧胴6は、略円筒状の形状を呈し、離接駆動部7に支持され、版胴4に対して離接するようになっている。離接駆動部7は、駆動源として例えばエアシリンダ7aを備え、エアシリンダ7aのロッド7bが
図1の矢印DR2方向に出入りするようになっている。
ロッド7bの先端部には、先端側が二股となる腕部7cが取り付けられ、腕部7cの先端には圧胴6の軸部6sが固定されている。
従って、圧胴6は、エアシリンダ7aの動作によるロッド7bに出入りに伴って、矢印DR2の方向に往復移動する。
ロッド7bが押し出された延び位置(第1の位置)で、圧胴6は、版胴4に接触すると共に版胴4を押圧する。ロッド7bが引き込まれた引込み位置(第2の位置)で、圧胴6は、版胴4から離隔し、後述する印刷シートF2の取り付け及び交換作業を可能とする。
モータ4M,モータ6M,及びエアシリンダ7aを含む駆動部の動作は、制御部8により制御される。
【0022】
図3に示されるように、圧胴6の外周面6aには、印刷紙や印刷フィルムなどの印刷シートF2が着脱自在に取り付けられるようになっている。
圧胴6には、見当合わせレジスタや位置決めピンなどの取り付け構造を設けておくとよい。これにより、外周面6a上の印刷シートF2の取り付け位置を、高精度で決めることができる。また、印刷シートF2を繰り返し取り付けた際の位置ずれを、実質的に無視できる程度に小さくすることができる。
外周面6aは、版胴4と対向する面となる。
印刷シートF2の取り付けの際には、外周面6aの周方向のシート基準位置P6に、印刷シートF2の一端部(例えば印刷先頭側)が固定される。
圧胴6の外周面6aと印刷シートF2との関係において、外周面6aに、印刷シートF2の無い部分が、シート基準範囲AR2として形成されるようになっている。
このシート基準範囲AR2及びシート基準位置P6の周方向位置は、エンコーダ等のセンサ6bにより検出される。センサ6bは、シート基準範囲AR2及びシート基準位置P6の周方向位置を含むシート位置情報J2を、制御部8に向け送出する。
【0023】
離接駆動部7において、腕部7cには紫外線照射装置7dが取り付けられていてもよい。紫外線照射装置7dは、インキKが紫外線硬化型の場合に、制御部8の指示により、印刷シートF2に印刷されたインキKに紫外線を照射して、インキKを硬化させる。
【0024】
校正機51は、校正をすべきインキKを用いて所定の印刷シートF2の一枚に一回校正印刷するようになっている。校正印刷に際し、版胴4には、予め、校正用のフレキソ版F1をセットしておく。
操作パネルPNに配置された慣らし回転回数設定スイッチPN4は、後述する慣らし回転回数mを、校正印刷に際して作業者が設定するスイッチである。慣らし回転回数mは、例えば0回〜50回の範囲で任意に設定できるようにする。セットされた回転回数mは、記憶部MRに記憶される。
【0025】
上述の校正機51による校正印刷は、例えば次の手順で実行される(
図5を参照)。以下の説明は一例であり、校正機51の動作や動作制御は、この説明で示される構成及び手順で実行されるものに限定されない。
【0026】
(イ)作業者が電源ボタンPN1をONにすると、制御部8は、駆動部(モータ4M,6M及びエアシリンダ7a)に対し、校正機51が初期状態となるように動作を指示する。初期状態は、モータ4M,6Mを停止し、エアシリンダ7aはロッド7bを引き込んだ状態である。これにより、圧胴6は版胴4に対して離れた状態となる(Step1)。
【0027】
(ロ)校正機51が初期状態となったら、作業者は、圧胴6に印刷シートF2をセットする(Step2)。
【0028】
(ハ)作業者は、印刷シートF2をセットしたら、モードボタンPN3により、校正印刷の開始指示を自動で行うか手動で行うかを、モードボタンPN3により切り替える。ここでは、自動を選択したものとする。モードを選択したら印刷ボタンPN2を押し下げる。
制御部8は、操作パネルPNから出力されたこれらの操作情報Jを受け、駆動部に対し、校正機51が準備状態となるように指示する(Step3)。
準備状態は、モータ4Mは駆動、モータ6Mは停止、エアシリンダ7aは引き込みを維持、という状態である。
モータ4Mの駆動により、アニロックスロール3,版胴4,及び掻き取りロール5aが回転する。版胴4の回転方向は、
図1の矢印DR方向である。
準備状態において、圧胴6は、版胴4から離れたまま維持される。
【0029】
(ニ)作業者は、インキ供給部2に校正するインキKを投入する(Step4)。
これにより、アニロックスロール3にインキKが供給されると共に、アニロックスロール3に接触して回転している版胴4のフレキソ版F1にもインキKが供給される。
更に、版胴4に接触して回転している掻き取りロール5aの周面にも、インキKが付着する。
準備状態において、版胴4及び掻き取りロール5aにインキKが供給された状態を、
図6に示す。
版胴4及び掻き取りロール5aは、各周面にインキKが付着して回転している。インキ掻き取り部5においては、掻き取りロール5aにドクタブレード5bが接触して過剰のインキが堰き止められ、溜まり部KTが形成される。溜まり部KTにおいて、
図6の紙面手前側と奥側からは、余剰のインキKが溢れる。溢れた余剰インキK1は、図示しない回収装置により回収してインキ供給部2に還流させるようになっている。
【0030】
(ホ)制御部8は、センサS1からのインキ有無情報J3において、インキが検出されたか否かを判定する(Step5)。
検出されたと判定したら(Yes)、版胴4の回転回数Nを0(ゼロ)と設定し、以降、センサ4bからの版位置情報J1に基づき版胴4の回転回数Nのカウントを開始する(Step6)。すなわち、センサS1によるインキKの検出時点から版胴4が一回転したら回転回数Nを1とし、その後、順次インクリメントする。
制御部8は、カウントしている版胴4の回転回数Nと、予め設定され記憶部MRに記憶されている慣らし回転回数mとを随時比較する。具体的には、回転回数Nが慣らし回転回数mを超えたか否かを判定する(Step7)。
【0031】
制御部8は、超えていない(No)と判定された場合は、超えるまで準備状態を継続維持する。
この状態で、アニロックスロール3,版胴4,及び掻き取りロール5aは、圧胴6が非接触の状態で回転を続ける(以下、この状態を慣らし回転と称する)。インキKは、アニロックスロール3,版胴4,及び掻き取りロール5aそれぞれの間を行き来しつつ、掻き取り部7における溜まり部KTで攪拌もされる。
【0032】
制御部8は、超えている(Yes)と判定された場合は、エアシリンダ7aに対し、ロッド7bを押し出すように指示する。これにより、圧胴6が版胴4に圧接するよう移動し、圧接に伴う圧胴6の従動回転で、圧胴6に巻いた印刷シートF2にインキKにより校正印刷が行われる。
【0033】
制御部8は、このエアシリンダ7aへの指示において、印刷シートF2がフレキソ版F1に接触するタイミングを、圧胴6におけるシート基準範囲AR2又はシート基準位置P6が、最初に版胴4における版基準範囲AR1又は版基準位置P4に接触するよう調整する(
図7参照)。
【0034】
また、回転しているフレキソ版F1に、回転が停止している印刷シートF2がいきなり接触すると、フレキソ版F1には回転を止めようとする力が付与され、印刷シートF2には、急激に回転させようとする力が付与される。これらの力により印刷位置がずれたり、フレキソ版F1や印刷シートF2が回転方向に伸張又は圧縮するなどして、高精度の校正印刷の妨げになる虞がある。
そこで、制御部8は、フレキソ版F1と印刷シートF2とが接触する前に、圧胴6のモータ6Mを駆動させてもよい。
すなわち、制御部8は、圧胴6の回転速度を版胴4の回転速度に概ね一致させてから、シート基準範囲AR2又はシート基準位置P6が、最初に版基準範囲AR1又は版基準位置P4に接触するようモータ6M及びエアシリンダ7aの動作を制御する。
これにより、フレキソ版F1及び印刷シートF2には、回転を止めようとする力や急激に回転させようとする力はもとより、回転速度を変えようとする力も加わることがない。
そのため、印刷の位置ずれなどが生じることはなく、高精度の校正印刷が行われる。
【0035】
インキKが紫外線硬化型の場合、作業者が予め設定することにより、制御部8は、紫外線照射装置7dに対し、校正印刷の実行後、圧胴6が少なくとも一回転する間、印刷シートF2に印刷されたインキKに対し、紫外線を照射するよう指示する。
【0036】
(ヘ)制御部8は、版位置情報J1及びシート位置情報J2に基づいて、フレキソ版F1と印刷シートF2との接触時点から、版胴4及び圧胴6の内、直径が小さい方の胴が一回転したか否かを判定する(Step9)。否(No)の場合は、印刷動作を継続する。一回転した(Yes)と判断したら、圧胴6を版胴4から離隔させて(Step10)、印刷停止状態とする(Step11)。
印刷停止状態は、エアシリンダ7aがロッド7bを引き込み、圧胴6が版胴4から離隔し、圧胴6の回転が停止した状態である。
以上により校正印刷が終了する。
【0037】
この校正印刷の後、再度別の印刷シートF2への校正印刷をする場合は、圧胴6の印刷シートF2を交換し、再度校正印刷の手順を実行する。次回の校正印刷におけるインキKの粘度を、直前回の校正印刷での粘度と合致させる場合は、一旦、版胴4を停止させ、インキKの粘度が定常状態に戻ってから再度校正印刷を実行する。
インキKを交換する場合は、洗浄を行ってから、再度校正印刷を実行する。
【0038】
慣らし回転回数設定スイッチPN4を、手動にセットした場合は、制御部8は、(Step7)を実行せず、準備状態の慣らし回転を継続維持する。
作業者は、目視やタイマー等に基づく判断で、校正印刷実行を印刷ボタンPN2の押し下げにより指示する。この指示を受け、制御部8は(Step8)以降の校正印刷を実行する。
【0039】
校正機51は、慣らし回転回数設定スイッチPN4の設定において、回転回数Nを正の整数とすることで慣らし回転を実行する。このスイッチは、回数0(ゼロ)を選択することもできるようになっている。この場合は、実質的に慣らし回転を行わず、センサFS1がインキKを検知したら直ちに校正印刷が実行される。これは従来と同じ校正印刷である。
【0040】
上述のように、実施例の校正機51は、版胴4及びインキ掻き取りロール5aの回転動作に対し、圧胴6の離接動作を独立して任意のタイミングで実行できるようになっている。
すなわち、インキKを投入してから直ちに校正印刷を行う以外に、インキKの粘度調整のための慣らし回転を行うことができるようになっている。
慣らし回転においては、版胴4に付着したインキKが、版胴4に圧接回転しているアニロックスロール3及び掻き取りロール5aとの間で行き来すると共に、ドクタブレード5bにより形成される溜まり部KTで攪拌等されることで、外力が付与され、チクソトロピ性により粘度が低下する。
特に、ドクタブレード5bを導入して、意図的に溜まり部KTが形成されるようにすると、本印刷の印刷機により近い状態(粘度)での校正印刷ができる。
このように、校正機51によれば、校正印刷直前のインキKの粘度を、本印刷直前の粘度に極めて近い粘度に調整することができ、その調整した粘度で校正印刷を行うことができる。
よって、校正機51を用いた校正印刷は、本印刷との差を少なくすることができる。
【0041】
校正機51では、慣らし回転の回転回数Nを任意に調節することができるようになっている。
これにより、慣らし回転回数の違いによる校正印刷の仕上がり具合の差を確認でき、インキ毎のチクソトロピ性を考慮した本印刷と校正印刷との合致性を追求することができる。
よって、本印刷と校正印刷との差をより少なくすることができる。
【0042】
校正機51は、上述の慣らし回転を行うことで、校正印刷を一枚のみ行う場合(版胴4の一回転のみの印刷の場合)でも、本印刷に極めて近い品質の印刷を行うことができる。また、帯状の印刷シートを用いて校正印刷を連続して複数回行う場合においても、最初の校正印刷から、本印刷に極めて近い品質の印刷を行うことができる。また、その連続した複数回の校正印刷は、印刷品質のばらつきが少なく、回数が多い場合でも、本印刷に極めて近い印刷品質が安定して得られる。
【0043】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0044】
校正機51は、センサS1を必ずしも備えてなくてよい。
センサS1を備えない場合は、
図5のフロー図における(Step4)のインキKの投入後、版胴4及び掻き取りロール5aにインキKが供給されたかの判定は、例えば作業者が目視に基づいて行う。すなわち、(Step5)で制御部8が行う判定を、例えば作業者が行う。
また、版胴4の回転回数Nのカウントも作業者が行い、回転回数Nが慣らし回転回数mを超えたか否かの判定も、例えば作業者が行う。すなわち、(Step6)及び(Step7)で制御部8が行うカウント及び判定を、例えば作業者が行う。
【0045】
校正機51は、センサ4b及びセンサ6bを有して版基準位置P4及びシート基準位置P6の周方向位置を検出できるようになっている。
従って、同一の印刷シートF2に、精度よく繰り返して重ね印刷ができる。版基準位置P4及びシート基準位置P6は、それぞれ版胴に取り付けられたフレキソ版F1の所定位置及び圧胴に取り付けられた印刷シートF2の所定位置、として予め設定される。
また、版基準位置P4及びシート基準位置P6の検出は、センサによるものに限定されない。、機械的に版基準位置P4とシート基準位置P6との位置合わせ行われるように構成してもよい。
この特徴を利用すれば、上述の(Step11)の校正印刷終了後に、印刷シートF2を外さず圧胴6にそのまま取り付けた状態にしておき、インキKを、洗浄を経て別の色に変えることで、多色の校正印刷が可能となる。
【0046】
版胴4は、取り外し可能とされ、異なる径の版胴4を取り付けることができるようにしてもよい。
これに対応して、アニロックスロール3及び掻き取りロール5aの軸位置を版胴4に対し離接方向に調整可能とすれば、異なる直径の版胴4に対しても実施例と同様の動作が行える。
同様に、圧胴6を取り外し可能とし、異なる径の圧胴6を離接駆動部7の腕部7cに装着可能としてもよい。この場合、エアシリンダ7aのロッド7bのストロークを調節可能とし、異なる直径の圧胴6も適切に版胴4に離接するように構成するとよい。
【0047】
インキ掻き取り部5は、インキ掻き取りロール5aのみを備えたものであってもよい。インキ掻き取りロール5aを備えれば、慣らし回転において、少なくとも版胴4とインキ掻き取りロール5aとの間で、インキKの圧接に伴う外力付与を伴う行き来が生じる。そのため、インキKの粘度が低下し、本印刷の粘度に近づけることができる。
【0048】
(変形例)
校正機51は、上述のような円筒状の圧胴6を備え、圧胴6に取り付けられた印刷シートF2に校正印刷をするタイプに限定されない。例えば、変形例として、
図8に示されるようないわゆる平台タイプの校正機51Aとしてもよい。
【0049】
変形例の平台タイプの校正機51Aは、版胴4に対する下方側に、テーブル状の圧胴6Aを備えている。圧胴6Aは、昇降駆動部7Aの動作によって版胴4Aに対し離接するように昇降する(矢印DR3参照)。
圧胴6Aの上面は、例えば水平なテーブル面6Aaとされ、テーブル面6Aaには、印刷シートFA2が着脱自在に取り付けられる。また、印刷シートFA2は、圧胴6Aが上昇した際に版胴4と接触するようになっている。
【0050】
圧胴6Aに対する上方側には、印刷ユニットPUが、駆動装置(図示せず)によって、テーブル面6Aaに沿って
図8の左右方向(矢印DR4参照)に往復移動するようになっている。
印刷ユニットPUは、少なくとも、実施例1の校正機51におけるインキ供給部2,アニロックスロール3,版胴4,及びインキ掻き取りロール5aを備えている。また、インキ掻き取りロール5aに摺接するドクタブレード5bを備えていてもよい。
【0051】
校正機51Aは、校正機51と同様の機能を発揮する制御部8,記憶部MR,及び操作パネルPNを備えている。
【0052】
校正機51Aによる校正印刷の実行に際しては、まず、制御部8は、圧胴6Aを下降させ、印刷シートFA2を版胴4から離隔させる。制御部8は、この離隔状態で、印刷ユニットPUを
図8の右方の印刷開始位置に移動する。
インキKの供給後、制御部8は、この状態で校正機51と同様に所定の慣らし回転を実行させる。所定の回数の慣らし回転が完了したら、圧胴6Aを上昇させると共に印刷ユニットPUを
図8の左方側へ移動させる。これにより、版胴4は、印刷シートFA2上を、矢印DR方向に転動しながら版胴4のインキKを印刷シートFA2に印刷する。
【0053】
この変形例の校正機51Aにおいても、印刷ユニットPUにインキ掻き取りロール5aを備えているので、本印刷との印刷品質の差が少ない校正印刷が行える。更にドクタブレード5bを備えれば、本印刷との印刷品質の差がより少ない校正印刷をすることができる。
【0054】
上述の校正機及び校正印刷方法は、フレキソの校正印刷に適用が限定されるものではなく、例えばグラビア印刷にも適用できる。
【0055】
(実施例2)
図9は、実施例2の校正機51Bの構成を説明するための模式図である。
校正機51Bは、グラビア印刷のための校正機である。
【0056】
校正機51Bは、ベース1Bを備え、ベース1Bは以下の部材を、直接的又は間接的に支持している。すなわち、校正機51Bは、版胴(シリンダ)4Bと、版胴4Bに摺接するドクタブレード2Baを有するインキ供給部2Bと、版胴4Bに対する上方側に配置されたインキ掻き取り部5Bと、版胴4Bの外周面4Baに対し、ドクタブレード2Baを挟みインキ掻き取り部5Bとは反対側の位置において離接する圧胴6Bと、圧胴6Bを版胴4Bに対して離接させる離接駆動部7Bと、を備えている。
図9において、圧胴6Bは、実線で版胴4Bに接触した状態が示され、一点鎖線で離隔した状態が示されている。
【0057】
版胴4Bには、インキ供給部2Bから直接インキKが供給される。詳しくは、インキ供給部2Bが備えるドクタブレード2Baを介してインキKが供給される。版胴4Bの外周面4Baには、凹版であるグラビア版が彫刻されている。
圧胴6Bには、印刷シートFB2が着脱自在に取り付けられる。
インキ掻き取り部5Bは、版胴4Bの外周面4Baに摺接するインキ掻き取りロール5Baを有している。さらに、インキ掻き取りロール5Baに摺接するドクタブレード5Bbを有しているとよい。
【0058】
校正機51Bは、全体の動作を制御する制御部8Bと、情報を記憶する記憶部MRBと、版胴4Bを
図9の矢印DR方向に能動回転させるモータ4BMと、圧胴6Bを
図9の矢印DR1方向に能動回転させるモータ6BMと、を有している。更に、校正機51における操作パネルPNに相当する操作パネルPNBを有している。
校正機51Bは、版胴4Bの外周面4Baの近傍に、外周面4BaにインキKが付着しているか否かを判定するセンサSB1を有しているとよい。
【0059】
校正機51Bの構成は、基本的に実施例1の校正機51からアニロックスロール3を削除したものとされている。
インキKは、インキ供給部2Bにおいて、例えばドクタブレード2Baの上方側から供給される。
校正機51Bは、このインキKの供給後、制御部8Bの制御又は作業者の指示により、圧胴6Bが版胴4Bから離隔した状態で、版胴4B及び掻き取りロール5Baを所定の回転数だけ回転させる慣らし回転を実行する。慣らし回転が完了したら、版胴4Bを回転させつつ印刷シートFB2が取り付けられた圧胴6Bを版胴4Bの外周面4Baに接触させて、インキKによる印刷を行うようになっている。
【0060】
これにより、校正機51Bは、校正機51と同様に、校正印刷直前のインキKの粘度を、本印刷直前の粘度に極めて近い粘度に調整することができ、その調整した粘度で校正印刷を行うことができる。
よって、校正機51Bを用いた校正印刷は、本印刷との差を少なくすることができる。
【0061】
校正機51Bでは、校正機51と同様に、慣らし回転の回転回数Nを任意に調節することができるようになっている。
これにより、慣らし回転回数の違いによる校正印刷の仕上がり具合の差を確認でき、インキ毎のチクソトロピ性を考慮した本印刷と校正印刷との合致性を追求することができる。
よって、グラビア印刷においても、本印刷と校正印刷との差をより少なくすることができる。
【0062】
校正機51Bは、上述の慣らし回転を行うことで、校正印刷を一枚のみ行う場合(版胴4Bの一回転のみの印刷の場合)でも、本印刷に極めて近い品質の印刷を行うことができる。また、帯状の印刷シートを用いて校正印刷を連続して複数回行う場合においても、最初の校正印刷から、本印刷に極めて近い品質の印刷を行うことができる。また、その連続した複数回の校正印刷は、印刷品質のばらつきが少なく、回数が多い場合でも、本印刷に極めて近い印刷品質が安定して得られる。
【0063】
校正機51を平台タイプの校正機51Aにするのと同様に、校正機51Bを平台タイプの校正機にしてもよい。