特許第6221512号(P6221512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221512段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド、これを搭載したロール絞り圧延機、および段付き鋼管の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221512
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド、これを搭載したロール絞り圧延機、および段付き鋼管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 19/10 20060101AFI20171023BHJP
   B21H 1/00 20060101ALI20171023BHJP
   B21B 35/12 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B21B19/10 Z
   B21H1/00 B
   B21B35/12
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-175439(P2013-175439)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-44206(P2015-44206A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 崇
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−167752(JP,A)
【文献】 特開昭63−230211(JP,A)
【文献】 特開2013−052401(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/092532(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第201470674(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 17/00−25/06
B21B 27/00−35/14
B21C 37/00−43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール絞り圧延機を用い、鋼管の外周面に周方向に沿う凹部が長手方向に一定の間隔で形成された段付き鋼管を製造する際に、前記ロール絞り圧延機に搭載される凹部成形用ロールスタンドであって、
当該凹部成形用ロールスタンドは、
外周の孔型溝に周方向に等間隔で凸部が形成された一対の凹部成形用ロールと、
パスラインを間に挟んで互いに平行に配置され、個々に回転可能に支持された基軸部、およびこの基軸部に対して偏芯し、前記凹部成形用ロールを回転自在に支持する偏芯軸部を有するロール支軸と、
前記凹部成形用ロールの回転を互いに同期させる第1の歯車伝達機構と、
前記ロール支軸の前記基軸部のうちのいずれか一方の基軸部に正逆回転の動力を与える動力伝達機構と、
この動力伝達機構から前記一方の基軸部に動力が与えられたときに、前記一方の基軸部の回転に連動して他方の基軸部を回転させ、前記基軸部の回転に伴って前記ロール支軸を前記基軸部を中心に回転させて前記凹部成形用ロールを互いに接近させた状態と離間させた状態とに切り替える第2の歯車伝達機構と、を備えること、
を特徴とする段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド。
【請求項2】
前記第1の歯車伝達機構として、前記凹部成形用ロールの各々に固定された歯車と、これらの歯車に噛み合う中間歯車と、を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド。
【請求項3】
前記第1の歯車伝達機構として、前記凹部成形用ロールの各々に固定されて互いに噛み合う歯車を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド。
【請求項4】
前記第2の歯車伝達機構として、前記ロール支軸の前記基軸部の各々に固定されて互いに噛み合う歯車を備えること、
を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド。
【請求項5】
前記第2の歯車伝達機構の前記歯車の輪郭形状が扇形状であること、
を特徴とする請求項4に記載の段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド。
【請求項6】
鋼管の外周面に周方向に沿う凹部が長手方向に一定の間隔で形成された段付き鋼管を製造する際に用いられ、パスラインに沿って複数段にわたりロールスタンドが搭載されたロール絞り圧延機であって、
当該ロール絞り圧延機は、
最終段のロールスタンドよりも前段で、且つ鋼管の外径減少率が3%以下に達する段のロールスタンドよりも後段に、請求項1から5のいずれかに記載の凹部成形用ロールスタンドが搭載されたこと、
を特徴とする段付き鋼管製造用のロール絞り圧延機。
【請求項7】
パスラインに沿って複数段にわたりロールスタンドが搭載されたロール絞り圧延機を用い、鋼管の外周面に周方向に沿う凹部が長手方向に一定の間隔で形成された段付き鋼管を製造する方法であって、
当該段付き鋼管の製造方法は、
前記ロール絞り圧延機における最終段のロールスタンドよりも前段で、且つ鋼管の外径減少率が3%以下に達する段のロールスタンドよりも後段に、請求項1から5のいずれかに記載の凹部成形用ロールスタンドを搭載する第1工程と、
絞り圧延の開始に際し、前記凹部成形用ロールスタンドにおいて、前記動力伝達機構から前記一方の基軸部に動力を与え、前記第2の歯車伝達機構により、前記凹部成形用ロールを互いに離間させた状態にする第2工程と、
絞り圧延の初期に、前記凹部成形用ロールを離間させた状態で、前記凹部成形用ロールスタンド以外のロールスタンドにおいて、鋼管を長手方向に引張りながら鋼管の外径を次第に減少させる第3工程と、
絞り圧延が定常状態に移行した後、前記凹部成形用ロールスタンドにおいて、前記動力伝達機構から前記一方の基軸部に動力を与え、前記第2の歯車伝達機構により、前記凹部成形用ロールを互いに接近させた状態に切り替える第4工程と、
前記凹部成形用ロールを接近させた状態で、前記凹部成形用ロールスタンド以外のロールスタンドにおいて、鋼管を長手方向に引張りながら鋼管の外径を次第に減少させつつ、前記凹部成形用ロールスタンドにおいて、鋼管の外周面と前記凹部成形用ロールの前記孔型溝との接触に伴い、前記第1の歯車伝達機構により、前記凹部成形用ロールが同期して回転することにより鋼管の外周面に前記凹部を形成する第5工程と、の一連の工程を含むこと、
を特徴とする段付き鋼管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の外周面に規則的に凹部(段部)が形成された段付き鋼管を製造するための技術に関し、特に、段付き鋼管の製造方法、段付き鋼管の製造に用いられるロール絞り圧延機、およびこれに搭載される凹部成形用ロールスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、段付き鋼管の外観を示す平面図である。同図に示すように、段付き鋼管10は、鋼管の外周面に周方向に沿う凹部11が長手方向に一定の間隔で形成されたものであり、土木建築用部材として用いられる。例えば、段付き鋼管は、地盤強化のための鋼管杭として用いられ、ソイルセメントなどと一緒に地中に埋め込まれて土壌やセメントと一体化される。この場合、段付き鋼管の凹部によって土壌やセメントの保持力を大幅に高めることが可能になる。また、段付き鋼管は、独特な外観を有するので、そのままで、または塗装やメッキが施されて、各種構造物の支柱や手すりなどとしても用いられる。
【0003】
このような用途の段付き鋼管は、電縫鋼管や鍛接鋼管や継目無鋼管などの各種鋼管の製造ラインを活用して製造される。
【0004】
一般に、帯鋼を素材とする電縫鋼管または鍛接鋼管の製造ラインでは、帯鋼が一群の成形ロールによって円筒状に連続成形された後、その継目となる帯鋼の端部が電気抵抗溶接または強力な突合せによって接合され、その後に、ロール絞り圧延機(例:ストレッチレデューサ、サイザ)による熱間での絞り圧延を経て所定の外径と肉厚に仕上げられ、最後に所定の長さに順次切断される。また、鋼片を素材とする継目無鋼管の製造ラインでは、例えば、マンネスマン法に代表される熱間圧延製管法による場合、鋼片が穿孔圧延機によって中空素管に成形された後、マンドレルミルやプラグミルなどによって延伸圧延され、その後に、ロール絞り圧延機による熱間での絞り圧延を経て所定の外径と肉厚に仕上げられる。
【0005】
ここで、ロール絞り圧延機は、パスライン(鋼管の搬送路)に沿って複数段にわたりロールスタンド(以下、単に「スタンド」ともいう)が搭載されている。それらの各スタンドには、外周に孔型溝が形成されたロールが、通常、2つまたは3つを一組にして組み込まれている。各スタンドに2つのロール、すなわち一対のロールが組み込まれたロール絞り圧延機は、2ロール方式と称され、各スタンドに3つのロールが組み込まれたロール絞り圧延機は、3ロール方式と称される。絞り圧延では、各スタンドのロールが互いに同期して回転駆動し、鋼管は、各スタンドのロールによって長手方向に引張られつつ搬送されながら、その外径が次第に減少する。ロール絞り圧延機に搭載されるスタンドの数は、ストレッチレデューサの場合は十数基〜二十数基であり、仕上げ外径に応じて適宜決定される。
【0006】
従来、段付き鋼管を製造する際には、鋼管製造ラインの中でロール絞り圧延機の構成が変更される(例えば、特許文献1参照)。具体的には、ロール絞り圧延機に搭載されたスタンドのうちの最終段のスタンドに、通常のロールに代えて、専用の凹部成形用ロールが組み込まれる。凹部成形用ロールは、外周の孔型溝に周方向に等間隔で凸部が形成されている。最終段スタンドの凹部成形用ロールが、他のスタンドのロールと同様に、互いに同期して回転駆動することにより、鋼管の外周面には、凹部成形用ロールの凸部が互いに同期して逐次押し込まれ、その押込みの痕跡として一定の間隔で凹部が形成される。こうして段付き鋼管が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−167752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、段付き鋼管を製造する際、その製造の開始時、すなわちロール絞り圧延機による絞り圧延の開始時には、加工対象の鋼管の材料温度や搬送速度が不安定であるのが実態である。これに起因し、段付き鋼管の製造開始時に、鋼管が凹部成形用ロールの凸部に咬み込んで詰まる事態が生じ得る。
【0009】
このような鋼管詰まりが生じるのを防止するため、2ロール方式の絞り圧延機を用いた実操業においては、予め、凹部成形用ロールのロール軸間のギャップを開いて凹部成形用ロールを互いに離間させた状態にし、この状態で絞り圧延を開始している。すなわち、製造開始時には、凹部成形用ロールを機能させず、凹部成形用ロールに対しては鋼管を素通りさせている。そして、鋼管の材料温度や搬送速度が安定し定常状態に以降した後、凹部成形用ロールのロール軸間のギャップを閉め込んで凹部成形用ロールを互いに接近させた状態に切り替え、これにより段付き鋼管の実質的な成形を行っている。
【0010】
しかし、3ロール方式の絞り圧延機では、その構造上、ロール軸間ギャップの開閉ができないことから、製造開始時の鋼管詰まりへの対応が困難である。
【0011】
本発明の目的は、次の特性を有する段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド、これを搭載したロール絞り圧延機、および段付き鋼管の製造方法を提供することである:
・ロール絞り圧延機を用いて段付き鋼管を製造する際、ロール絞り圧延機の方式に制約されることなく、製造開始時の鋼管詰まりを防止すること。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨は、次の通りである。
【0013】
(I)ロール絞り圧延機を用い、鋼管の外周面に周方向に沿う凹部が長手方向に一定の間隔で形成された段付き鋼管を製造する際に、前記ロール絞り圧延機に搭載される凹部成形用ロールスタンドであって、
当該凹部成形用ロールスタンドは、
外周の孔型溝に周方向に等間隔で凸部が形成された一対の凹部成形用ロールと、
パスラインを間に挟んで互いに平行に配置され、個々に回転可能に支持された基軸部、およびこの基軸部に対して偏芯し、前記凹部成形用ロールを回転自在に支持する偏芯軸部を有するロール支軸と、
前記凹部成形用ロールの回転を互いに同期させる第1の歯車伝達機構と、
前記ロール支軸の前記基軸部のうちのいずれか一方の基軸部に正逆回転の動力を与える動力伝達機構と、
この動力伝達機構から前記一方の基軸部に動力が与えられたときに、前記一方の基軸部の回転に連動して他方の基軸部を回転させ、前記基軸部の回転に伴って前記ロール支軸を前記基軸部を中心に回転させて前記凹部成形用ロールを互いに接近させた状態と離間させた状態とに切り替える第2の歯車伝達機構と、を備えること、
を特徴とする段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンドである。
【0014】
この凹部成形用スタンドは、前記第1の歯車伝達機構として、前記凹部成形用ロールの各々に固定された歯車と、これらの歯車に噛み合う中間歯車と、を備える構成とすることができる。
【0015】
上記の凹部成形用スタンドは、前記第1の歯車伝達機構として、前記凹部成形用ロールの各々に固定されて互いに噛み合う歯車を備える構成としてもよい。
【0016】
また、上記の凹部成形用スタンドは、前記第2の歯車伝達機構として、前記ロール支軸の前記基軸部の各々に固定されて互いに噛み合う歯車を備える構成とすることができる。この場合、前記第2の歯車伝達機構の前記歯車の輪郭形状が扇形状であるのが好ましい。
【0017】
(II)段付き鋼管を製造する際に用いられ、パスラインに沿って複数段にわたりロールスタンドが搭載されたロール絞り圧延機であって、
当該ロール絞り圧延機は、
最終段のロールスタンドよりも前段で、且つ鋼管の外径減少率が3%以下に達する段のロールスタンドよりも後段に、上記(I)の凹部成形用ロールスタンドが搭載されたこと、
を特徴とする段付き鋼管製造用のロール絞り圧延機である。
【0018】
(III)パスラインに沿って複数段にわたりロールスタンドが搭載されたロール絞り圧延機を用い、段付き鋼管を製造する方法であって、
当該段付き鋼管の製造方法は、
前記ロール絞り圧延機における最終段のロールスタンドよりも前段で、且つ鋼管の外径減少率が3%以下に達する段のロールスタンドよりも後段に、上記(I)の凹部成形用ロールスタンドを搭載する第1工程と、
絞り圧延の開始に際し、前記凹部成形用ロールスタンドにおいて、前記動力伝達機構から前記一方の基軸部に動力を与え、前記第2の歯車伝達機構により、前記凹部成形用ロールを互いに離間させた状態にする第2工程と、
絞り圧延の初期に、前記凹部成形用ロールを離間させた状態で、前記凹部成形用ロールスタンド以外のロールスタンドにおいて、鋼管を長手方向に引張りながら鋼管の外径を次第に減少させる第3工程と、
絞り圧延が定常状態に移行した後、前記凹部成形用ロールスタンドにおいて、前記動力伝達機構から前記一方の基軸部に動力を与え、前記第2の歯車伝達機構により、前記凹部成形用ロールを互いに接近させた状態に切り替える第4工程と、
前記凹部成形用ロールを接近させた状態で、前記凹部成形用ロールスタンド以外のロールスタンドにおいて、鋼管を長手方向に引張りながら鋼管の外径を次第に減少させつつ、前記凹部成形用ロールスタンドにおいて、鋼管の外周面と前記凹部成形用ロールの前記孔型溝との接触に伴い、前記第1の歯車伝達機構により、前記凹部成形用ロールが同期して回転することにより鋼管の外周面に前記凹部を形成する第5工程と、の一連の工程を含むこと、
を特徴とする段付き鋼管の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド、これを搭載したロール絞り圧延機、および段付き鋼管の製造方法は、下記の顕著な効果を有する:
・ロール絞り圧延機を用いて段付き鋼管を製造する際、ロール絞り圧延機の方式に制約されることなく、特に3ロール方式の絞り圧延機を用いる場合であっても、製造開始時の鋼管詰まりを防止できること。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】段付き鋼管の外観を示す平面図である。
図2】本発明の凹部成形用ロールスタンドの構成例を示す模式図であり、凹部成形用ロールが互いに接近した状態を示す。
図3】本発明の凹部成形用ロールスタンドの構成例を示す模式図であり、凹部成形用ロールが互いに離間した状態を示す。
図4】本発明の段付き鋼管製造用ロール絞り圧延機の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者は、上記目的を達成するため、段付き鋼管の製造に3ロール方式のロール絞り圧延機を用いる場合であっても、製造開始時には凹部成形用ロールを互いに離間させた状態にし、鋼管の材料温度や搬送速度が安定した後には凹部成形用ロールを互いに接近させた状態に切り替えることが可能な構成について、鋭意検討を重ねた。その結果、以下の知見を得た。
【0022】
(A)従来、凹部成形用ロールが組み込まれる凹部成形用スタンドは、通常のスタンドが共用され、ロールのみが組み替えられたものである。このため、3ロール方式では、上述のとおり、凹部成形用ロールのロール軸間ギャップの開閉ができない。一方、2ロール方式では、その開閉が可能である。このことから、凹部成形用スタンドとしては、一対の凹部成形用ロールが組み込まれた2ロール方式のものが適しているといえる。
【0023】
(B)通常、ロール絞り圧延機は、ロールが回転駆動する構成であり、そのロール回転駆動の動力は、スタンド側の入力軸に接続された圧延機本体側の動力軸から与えられる。その動力軸の配設位置は、2ロール方式と3ロール方式とで異なる。このため、2ロール方式の絞り圧延機に用いられる凹部成形用スタンドは、そのままでは、3ロール方式の絞り圧延機に搭載することはできない。このことから、凹部成形用スタンドに限っては、動力軸の配設位置に依存しない構成、すなわちロールが動力軸から切り離され、回転駆動することなく回転自在な構成にするのが有効である。
【0024】
(C)凹部成形用スタンドとして2ロール方式を採用し、個々の凹部成形用ロールが回転自在である場合、個々の凹部成形用ロールによって鋼管の外周面に形成される凹部の位置が互いにずれる事態が生じ得る。凹部成形用ロールがそれぞれ独立して自由に回転するからである。このため、凹部成形用ロールが個々に回転自在であっても、互いに同期して回転するように、ロール同期機構が必要である。
【0025】
(D)その上で、凹部成形用ロールが互いに離間した状態と接近した状態とを取り得るように、ロール開閉機構が必要である。
【0026】
(E)凹部成形用ロールが回転自在に組み込まれた凹部成形用スタンドが、従来のように最終段スタンドとして搭載された場合、凹部成形用ロールはそれ自身が回転駆動しないので、鋼管を最終的に引張り搬出する力が作用しない。このため、定常状態であっても、鋼管詰まりが発生するおそれがある。そこで、最終段スタンドとしては通常のスタンドを搭載し、この通常スタンドによって鋼管を最終的に引張り搬出する力が作用するようにするのが有効である。ただし、凹部成形用スタンドがあまりに前段に搭載されると、絞り圧延時の鋼管の外径減少率が大きい段階で凹部が形成されるため、その凹部が以降の通常スタンドで引き伸ばされ、所望の凹部形状(深さ、ピッチ)が得られない。したがって、凹部成形用スタンドの搭載位置には適正な位置がある。
【0027】
本発明は、上記(A)〜(E)の知見に基づき完成させたものである。以下に、本発明の段付き鋼管の凹部成形用ロールスタンド、これを搭載したロール絞り圧延機、および段付き鋼管の製造方法の好ましい態様について説明する。
【0028】
1.凹部成形用ロールスタンド
図2および図3は、本発明の凹部成形用ロールスタンドの構成例を示す模式図である。そのうちの図2は凹部成形用ロールが互いに接近した状態を示し、図3は凹部成形用ロールが互いに離間した状態を示す。また、図2および図3のいずれでも、(a)はパスラインに沿った方向の正面図を、(b)は上方から見たときの第1の歯車伝達機構の配置態様を、(c)は同じく上方から見たときの第2の歯車伝達機構の配置態様をそれぞれ示す。
【0029】
図2および図3の(a)、(b)に示すように、凹部成形用スタンド1のハウジング2内には、左右に一対の凹部成形用ロール3A、3Bが配置されている。凹部成形用ロール3A、3Bは、外周の孔型溝3Aa、3Baに周方向に等間隔で凸部3Ab、3Bbが形成されている。
【0030】
ここで、ハウジング2内には、左右に一対のロール支軸4A、4Bが、パスラインLを間に挟んで互いに平行に配置されている。ロール支軸4A、4Bは、基軸部4Aa、4Ba、およびこの基軸部4Aa、4Baに対して軸心が偏芯した偏芯軸部4Ab、4Bbを有する。基軸部4Aa、4Baは、偏芯軸部4Ab、4Bbの上下の両端から突出し、個々にハウジング2に回転可能に支持されている。上記の凹部成形用ロール3A、3Bは、偏芯軸部4Ab、4Bbに回転自在に支持されている。
【0031】
ロール支軸4A、4Bのうちの一方のロール支軸4A(図中では右側のもの)は、上端側の基軸部4Aaが上方に延び出しており、この上端側の基軸部4Aaには図示しない歯車が固定されている。この歯車には、図示しないウォームギアが噛み合っている。このウォームギアは手動により正逆回転し、このウォームギアの正逆回転により、基軸部4Aaは正逆回転の動力が与えられる。
【0032】
凹部成形用ロール3A、3Bの各々の上端には、第1の歯車伝達機構の構成要素として、歯車5A、5Bが取り付けられて固定され、そのロール3A、3Bと歯車5A、5Bは互いに一体化されている。さらに、ハウジング2には、第1の歯車伝達機構の構成要素として、一対の中間歯車6A、6Bが回転自在に支持されている。これらの中間歯車6A、6Bは互いに噛み合い、さらに、凹部成形用ロール3A、3Bと一体の歯車5A、5Bとも噛み合う。これにより、例えば、凹部成形用ロール3A、3Bのうちの一方のロール3Aが回転すると、これと同時にそのロール3Aと一体の歯車5Aが回転する。この回転は、一対の中間歯車6A、6Bを順に介し、他方の凹部成形用ロール3Bと一体の歯車5Bに伝達される。こうして、第1の歯車伝達機構により、偏芯軸部4Ab、4Bbを中心とする凹部成形用ロール3A、3Bの自由な回転は、互いに同期するようになる。
【0033】
一方、図2および図3の(a)、(c)に示すように、ロール支軸4A、4Bの下端側の基軸部4Aa、4Baの各々には、第2の歯車伝達機構の構成要素として、互いに噛み合う歯車7A、7Bが固定され、その基軸部4Aa、4Baと歯車7A、7Bは互いに一体化されている。これにより、上記のウォームギアが手動により正逆回転したとき、これに噛み合う図示しない歯車を介した一方の基軸部4Aaの正逆回転に伴い、その基軸部4Aaと一体の歯車7Aが正逆回転する。この正逆回転は、他方の基軸部4Baと一体の歯車7Bに伝達される。こうして、第2の歯車伝達機構により、基軸部4Aa、4Baが互いに連動して正逆回転し、ロール支軸4A、4Bは、基軸部4Aa、4Baの軸心を中心に互いに連動して正逆回転するようになる。その結果、凹部成形用ロール3A、3Bは、ロール支軸4A、4Bの偏芯軸部4Ab、4Bbに支持されているので、ロール支軸4A、4Bの正逆回転に伴って偏芯移動し、互いに接近した状態と離間した状態とを取るようになる。
【0034】
基軸部4Aa、4Baと一体の歯車7A、7Bは、凹部成形用ロール3A、3Bが互いに接近した状態と離間した状態とを取り得る範囲内で噛み合っていればよいので、全周にわたって歯が形成されている必要はない。このため、図2および図3の(c)に示すように、その歯車7A、7Bの輪郭形状は扇形状にすることができる。このようにすれば、歯車7A、7Bが小さくなることから、ハウジング2を小型化できる点で有用である。
【0035】
もっとも、凹部成形用ロール3A、3Bが互いに接近した状態から離間した状態に偏芯移動すると、凹部成形用ロール3A、3Bと一体の歯車5A、5Bが中間歯車6A、6Bから離れる様相になる。そこで、それらの歯車5A、5Bと中間歯車6A、6Bは、両者が離れても噛合いが外れないように、有効歯たけが大きく設定されている。
【0036】
2.段付き鋼管製造用のロール絞り圧延機
図4は、本発明の段付き鋼管製造用ロール絞り圧延機の構成例を示す模式図である。図4に示すロール絞り圧延機20は、3ロール方式であり、パスラインLに沿って複数段にわたりロールスタンド21が搭載されている。各スタンド21には、外周に孔型溝が形成されたロール23が、3つを一組にして、パスラインLの周りに等間隔で組み込まれている。絞り圧延では、各スタンド21の3つのロール23は、互いに同期して回転駆動する。これにより、鋼管Wは、各スタンド21のロール23によって長手方向に引張られつつ搬送されながら、その外径が次第に減少する。
【0037】
図4には、24基のスタンド21が搭載された例が示されている。各スタンド21は、絞り圧延対象の鋼管Wを絞り圧延機20に導入する入側から順に、第1スタンド(図4中、「#1」と記す)、第2スタンド(図4中、「#2」と記す)、・・・、および最終段スタンド(図4では第24段目のスタンドであり、「#24」と記す)とそれぞれ称される。絞り圧延において、最終段スタンドの数段前のスタンド、例えば、図4中で最終段スタンドの3段前の第21スタンドでは、鋼管の外径減少率が3%以下に達する。鋼管の外径減少率が3%以下に達するスタンド、およびこれよりも後段のスタンド(最終段スタンドを含む)は、仕上げスタンドと総称され、鋼管の外径をほとんど減少させず、鋼管の輪郭を整える。なお、ここでいう鋼管の外径減少率は、各スタンドにおいて、当該スタンドでの絞り圧延前後の鋼管の外径変化量を、当該スタンドでの絞り圧延前の鋼管外径で除算した値の百分率のことである。
【0038】
段付き鋼管を製造する際、ロール絞り圧延機20には、仕上げスタンドとして上記の凹部成形用スタンド1が搭載される。具体的には、凹部成形用スタンド1は、最終段スタンドよりも前段で、且つ鋼管の外径減少率が3%以下に達する段のスタンドよりも後段に、搭載される。例えば、図4に示すように、凹部成形用スタンド1は、第21スタンドと最終段スタンド(第24スタンド)の間にある第22スタンドとして搭載される。第23スタンドとしてもよい。
【0039】
3.段付き鋼管の製造方法
段付き鋼管の製造は、上記のロール絞り圧延機20を用いて行われる。すなわち、先ず、上述のとおりに凹部成形用スタンド1をロール絞り圧延機20に搭載する。次いで、絞り圧延の開始に際し、前記図3に示すように、凹部成形用スタンド1において、手動により上記のウォームギアを一方向に回転させ、これに伴って一方の基軸部4Aaに一方向の回転動力を与え、第2の歯車伝達機構(ロール支軸4A、4Bの基軸部4Aa、4Baと一体の歯車7A、7B)により、凹部成形用ロール3A、3Bを互いに離間させた状態にする。この状態で絞り圧延を開始する。
【0040】
これにより、絞り圧延の初期、鋼管は、凹部成形用スタンド1以外の通常のスタンド21において、各通常スタンド21のロール23によって長手方向に引張られつつ搬送されながら、その外径が次第に減少する。このとき、凹部成形用スタンド1のロール3A、3Bが互いに離間した状態にあるので、鋼管は、凹部成形用ロール3A、3Bと接触することなく、凹部成形用ロール3A、3Bに対しては素通りする。したがって、鋼管の材料温度や搬送速度が不安定な製造開始時であっても、鋼管詰まりは発生しない。
【0041】
その後、鋼管の材料温度や搬送速度が安定し、絞り圧延が定常状態に以降すると、前記図2に示すように、凹部成形用スタンド1において、手動により上記のウォームギアを先の方向とは逆方向に回転させ、これに伴って一方の基軸部4Aaに先の方向とは逆方向の回転動力を与え、第2の歯車伝達機構(ロール支軸4A、4Bの基軸部4Aa、4Baと一体の歯車7A、7B)により、凹部成形用ロール3A、3Bを互いに接近させた状態に切り替える。
【0042】
これにより、鋼管は、凹部成形用スタンド1以外の通常のスタンド21において、各通常スタンド21のロール23によって長手方向に引張られつつ搬送されながら、その外径が次第に減少する。これと同時に、凹部成形用スタンド1においては、凹部成形用ロール3A、3Bが互いに接近した状態にあるので、鋼管の外周面と凹部成形用ロール3A、3Bの孔型溝3Aa、3Baとの接触、さらには鋼管の外周面への凸部3Ab、3Bbの咬み込みに伴い、凹部成形用ロール3A、3Bが偏芯軸部4Ab、4Bbを中心として回転する。このとき、第1の歯車伝達機構(凹部成形用ロール3A、3Bと一体の歯車5A、5B、および中間歯車6A、6B)により、凹部成形用ロール3A、3Bの回転が同期する。このため、鋼管の外周面には、凹部成形用ロール3A、3Bの凸部3Ab、3Bbが互いに同期して逐次押し込まれ、その押込みの痕跡として一定の間隔で凹部が形成される。こうして段付き鋼管が製造される。
【0043】
このように、本発明の凹部成形用スタンドを搭載したロール絞り圧延機を用いて段付き鋼管を製造する際、製造開始時の鋼管詰まりを防止することができる。その上、鋼管の外周面に形成される凹部の位置が互いにずれる事態も生じない。しかも、本発明の凹部成形用スタンドは、ロールが回転駆動することなく回転自在な構成であるため、圧延機本体側の動力軸に接続する必要がなく、ロール絞り圧延機の方式に制約されない。このため、3ロール方式の絞り圧延機に限らず、2ロール方式を始め、あらゆる方式のロール絞り圧延機に対応が可能である。
【0044】
また、本発明の凹部成形用スタンドが、ロール絞り圧延機における最終段スタンドよりも前段に搭載された構成にすれば、定常状態であっても、鋼管詰まりが発生しない。最終段スタンドとして搭載した通常スタンドによって鋼管を最終的に引張り搬出する力が作用するからである。これと合わせ、本発明の凹部成形用スタンドが、鋼管の外径減少率が3%以下に達する段のスタンドよりも後段に搭載された構成にすれば、鋼管の外周面に形成された凹部がそれ以降の通常スタンドで引き伸ばされることはなく、所望の凹部形状が得られる。
【0045】
その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、第1の歯車伝達機構は、上記の実施形態では、凹部成形用ロールと一体の歯車と、これらの歯車に噛み合う中間歯車とから構成されているが、中間歯車を省略し、凹部成形用ロールと一体の歯車が直接互いに噛み合う構成にすることもできる。この場合の歯車は、凹部成形用ロールの偏芯移動に伴って互いに離れる様相になるので、両者が離れても噛合いが外れないように、有効歯たけが大きく設定される。また、凹部成形用ロールを互いに接近した状態と離間した状態とに切り替えるための動力源は、上記の実施形態では手動としているが、電動モータを利用することもできる。
【実施例】
【0046】
本発明の効果を確認するため、電縫鋼管の製造ラインを活用し、外径が76.3mmで肉厚が4.2mmのSTK規格相当の段付き鋼管を製造する試験を実施した。その際、前記図4に示す3ロール方式の絞り圧延機(ストレッチレデューサ)を用いた。絞り圧延機は、スタンド数が24基であり、その仕上げスタンドのうちの第22スタンドに、前記図2および図3に示す凹部成形用スタンドを搭載した。凹部成形用ロールとしては、外周の孔型溝に高さが8.0mmの凸部が形成されたものを用いた。
【0047】
鋼管の加熱温度は、絞り圧延機の入側で一律に1000℃とした。そして、鋼管の搬送速度が絞り圧延機の出側で95m/min、100m/min、および120m/minとなる3つの条件を採用し、各条件で段付き鋼管を100本ずつ作製した。得られた段付き鋼管の凹部について、左右の凹部のズレ量、凹部の長手方向ピッチ、および凹部の深さを測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、凹部の諸寸法は、搬送速度を変更した条件間で有意差は認められなかった。特に、左右の凹部のズレ量は品質上で問題のない2mm以内に収まり、凹部の長手方向ピッチのバラツキもほとんどなく、凹部成形用ロールの回転の同期が確保されていることが実証された。凹部の深さは、凹部成形用ロールの凸部高さの69%程度であり、段付き鋼管の機能・外観上で十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、段付き鋼管の製造に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1:凹部成形用ロールスタンド、 2:ハウジング、
3A、3B:凹部成形用ロール、 3Aa、3Ba:孔型溝、
3Ab、3Bb:凸部、 4A、4B:ロール支軸、
4Aa、4Ba:基軸部、 4Ab、4Bb:偏芯軸部、
5A、5B:歯車、 6A、6B:中間歯車、 7A、7B:歯車、
10:段付き鋼管、 11:凹部、
20:ロール絞り圧延機、 23:ロール、 21:ロールスタンド、
L:パスライン
図1
図2
図3
図4