(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記表面層のJIS Z8741(1997)で規定する60度鏡面光沢度が60%以上であり、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF−SIMS)により測定される、フッ素に由来するF−フラグメントイオン(M/Z=19)が面内で均一に存在し、ジメチルシロキサンに由来するSi(CH3)+フラグメントイオン(M/Z=43)が以下のいずれかで存在することを特徴とする成型材料。
・島状に存在
・網目状に存在
・島状および網目状に存在
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態を説明する前に、従来技術の問題点について本発明者の視点で考察する。
【0021】
まず、指紋の視認メカニズムに関して、特許文献1ではオレイン酸を塗布し、塗布前後の単入射光を正反射のみから色差を評価しているため、実際に人間が視認する状態を再現することができない点に問題がある。また視認性の評価に用いる模擬指紋液として、オレイン酸を用いているが、実際の指紋を構成する液体は指の皮膚から供給される汗に含まれる水と有機塩(尿酸塩等)、皮脂(オレイン酸等)に加えて、生活環境に存在する塵や化粧品に含まれる粒子(砂塵、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ等)を含有したいわゆる分散物であり、特許文献1の方法では粒子の存在による光散乱の影響を評価できなかったものと考えられる。
【0022】
一方、特許文献2の方法は表面に凹凸構造を設けることで、外光の映りこみを低減させ、相対的に指紋を目立ちにくくする技術であるが、指紋付着量そのものを低減させることができず、かつまた本発明が課題とする、光沢感や透明感を得ることも困難である。
【0023】
次に指紋の付着メカニズムに関して、特許文献3の技術は、前述のように指紋付着性のパラメーターとして流動パラフィンの接触角、転落角を用いているが、前者は指紋付着、拭き取りのような液体成分の動的な挙動を見ることができないところに問題があり、後者は液滴の動的な挙動を示すパラメーターであり測定方法の原理から液滴の質量の影響を大きく受けるため、指紋のようなごく微量成分の動的な挙動を表すことができなかったものと考えられる。
【0024】
また、特許文献4の技術は、フッ素の含有量を多くすることにより、表面自由エネルギーを低下させ、指紋汚れの付着量を減量しているが、残った成分が大きな油滴を表面でつくるため、特定の視認角度では目立ちやすくなっていると考えられる。
【0025】
さらに特許文献5の技術は、表面層に多孔質粒子を導入することで毛管力を発生させ、皮脂成分を吸収すると考えられるが、多孔質粒子を用いるため、光沢度や透明性の大幅な低下を引き起こし、さらに皮脂汚れの付着量が多くなるために、皮脂の多い指紋ではほとんど効果が得られなかったと考えられる。
【0026】
そこで、本発明者らは上記課題を解決する方法として以下の方法を考案した。
まず本発明者らは、指紋の液体成分が成型材料表面に付着するときの液体の挙動に着目し、指紋汚れを構成する液体成分が、成型材料上でなす後退接触角を特定の値以上にするとともに、成型材料表面の単位体積あたりの脂肪酸吸収量を特定の値以上にすることが有効であることを見出した。
【0027】
これは、指紋成分が指と成型材料表面との間でどちらに付きやすいかに着目した結果、指紋成分と指、もしくは成型材料表面のなす後退接触角が支配し、成型材料の表面層の後退接触角が特定の範囲を超えると付着しにくくなることを発見し、これにより、前記成型体材料表面に付着した指紋の視認性が低減されることに基づく。
【0028】
さらに、それでも表面層に付着した少量の指紋成分を、表面層内部に浸透、拡散させることでその指紋汚れの視認性をさらに低減することができ、布巾等での拭き取り等の作業を頻繁に行わなくても、指紋汚れを消失させることができることを見出し、さらに、このような特性を発現する表面層は、最表面に撥油材料と親油材料の両方が特定の形態で存在することが好ましいことも見出した。この理由は、本発明の表面層が、指紋成分の付着量を極力少なく、かつ付着した指紋成分を塗膜内に吸収することによって表面から消失させる特性を発現するためには、表面層の最表面がフッ素を含む化合物により面内が均一に被覆されることにより高い撥油性を示すことで、指紋成分の付着量を低減すると同時に、親油的なジメチルシロキサンを含む化合物が微細な島状、もしくは網目状に存在することで、わずかに表面付着した指紋成分が、表面に存在する島状、もしくは網目状の親油的な部分を通って表面層の最表面および表面層内に拡散し、その結果、指紋汚れが消失すると考えている。
【0029】
また、本発明者らは、前述の後退接触角と脂肪酸吸収量を特定の値以上にすることに加えて、特定の形状のごく微細な凹凸構造を、単位面積当たりに一定量設けることが有効であることを見出した。この理由はごく微細な凹凸構造を導入することにより、微量付着した指紋の成分が作る油滴を微細化し、これにより単位体積あたり油滴の、成型材料との接触面積を増加させ、前記指紋成分の浸透を促進するためである。ここで油滴とは、成型材料表面に付着した指紋および模擬指紋を構成する液体および固体の微視的な凝集物をいう。
【0030】
さらに、本発明者らは前述のような凹凸構造を導入することで、前述の溶解度に由来する品位の劣化を軽減できることを見出した。理由は明確ではないが、凹凸構造を構成する粒子成分が、均質な層の構成を補助していると推定している。
【0031】
また、本発明者らは光沢感がある成型材料に前述の実際の指紋の組成に近い模擬指紋を付着させ、付着前後の反射色を正反射光込みと正反射光除去の2つの方法で測定、得られた色差の値を特定の値以下、その経時減少量を特定の値以上にすることによって、光沢感と指紋の視認性低減効果の両立を達成した。これは、人間の目が指紋を光沢感の変化と色味の変化により認識しているという点に着眼し、光沢感の変化は正反射光にて検出されるため正反射光込みの色差で、色味の変化は拡散反射光にて検出されるため正反射光除去の色差で評価することにより、前記色差の両方が一定値以下であれば指紋を視認しにくくなり、さらに一定量以上の減少が生じることで指紋が消失したと認識することを見出したためである。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
まず、本発明の成型材料は、少なくとも一方の面に表面層を有し、その表面層が特定の鏡面光沢度、オレイン酸の後退接触角θ
r、およびオレイン酸吸収係数A
bを有することが好ましい。
【0033】
ここで示す鏡面光沢度はJIS Z8741(1997)に準拠した測定による値で、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。鏡面光沢度が60%未満では光沢感が不十分と感じられる場合がある。
【0034】
また、前記表面層のオレイン酸の後退接触角θ
rは、50°以上が好ましく、60°以上がより好ましく、70°以上が特に好ましい。後退接触角の測定方法と意味については後述するが、後退接触角は高い分には問題なく、一方で50°よりも低くなると指紋成分が付着しやすくなる場合がある。
【0035】
ここで、後退接触角の値には、いくつかの測定方法があるが、転落角法のように原理的に液滴質量の影響を受ける方法は、避けるべきである。ここでは、拡張−収縮法による測定を説明する。拡張−収縮法による後退接触角の値は、表面層上に液体(オレイン酸)を付与して液体を徐々に吐出して液滴を拡張した後、その液滴を吸引し液滴が収縮する過程で、液滴の接触角を連続的に複数回測定し、接触角が一定になったところの平均値で表される。具体的に、例えば1〜50μLの間で液体を吐出−吸引(液滴を拡張収縮)させる場合において、液滴吸引時の50μLから1μLまでの間、1μLの間隔で測定し、液体の拡張、もしくは収縮過程において液滴の接触角がほぼ一定になったところの値を求めることにより決定することができる。拡張収縮法における接触角の測定は、例えば、Drop Master(協和界面科学株式会社)を用いて測定することができる。
【0036】
また、前記オレイン酸吸収係数A
b、すなわち、オレイン酸を付着させた際に、付着直後のオレイン酸付着物の体積および付着面積と、一定時間経過後のオレイン酸付着物の体積および前記成型材料の前記表面層の厚みから算出される、単位体積あたりのオレイン酸吸収係数A
bが30以上であることが好ましく、40以上がより好ましい。
【0037】
オレイン酸吸収係数A
bは、具体的には厚さTの前記表面層にオレイン酸を約2μl滴下し、シリンジからの吐出時の液滴形状から求めた体積(V
1)、着滴時の着滴部の面積(S
1)、25℃、無風状態にて10時間保持後の体積(V
2)から、以下の式(1)により求められる無次元量を指す。
A
b=(V
1−V
2)/(S
1×T)
ここで、V
1、V
2、S
1にはいくつかの測定方法があるが、例えば協和界面化学株式会社接触角測定装置DM500、および同社解析ソフトDropMasterにより測定することができる。測定の詳しい手順については後述する。また前記表面層の厚みTの測定方法についても後述する。
【0038】
また、本発明の成型材料は、少なくとも一方の面に表面層を有し、その表面層が特定の鏡面光沢度を有し、かつ最表面に撥油材料と親油材料の両方が特定の形態で存在することが好ましい。より具体的には前記表面層の飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF−SIMS)により測定される、フッ素に由来するF
−フラグメントイオン(M/Z=19)が面内に「均一に存在」し、ジメチルシロキサンに由来するSi(CH
3)
+フラグメントイオン(M/Z=43)が、「島状に存在」、「網目状に存在」または「島状および網目状に存在」することが好ましく、さらに、F
−フラグメントイオンが面内に「均一に存在し」、かつSi(CH
3)
+フラグメントイオンが、「島状および網目状に存在」することがより好ましい。
【0039】
これは本発明の表面層が、指紋成分の付着量を極力少なく、かつ付着した指紋成分を塗膜内に吸収することによって表面から消失させる特性を発現するためには、表面層の最表面がフッ素を含む化合物により面内が均一に被覆されることにより高い撥油性を示すことで、指紋成分の付着量を低減すると同時に、親油的なジメチルシロキサンを含む化合物が微細な島状、もしくは網目状に存在することで、わずかに表面付着した指紋成分が、表面に存在する島状、もしくは網目状の親油的な部分を通って表面層内に拡散し、その結果、指紋汚れが消失すると考えている。なお、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF−SIMS)による表面層の最表面の測定方法については、実施例の項にて述べる。
【0040】
また、前記「均一に存在」とは、飛行時間型2次イオン質量分析計にて、100μm×100μmの範囲を縦128点×横128点で測定した全測定点における2次イオン強度の変動係数が0.3以内であることを指す。
【0041】
「島状に存在」とは、
図1に示すように、測定を行った測定点のSi(CH
3)
+の2次イオン強度を図示したとき、最大強度の20%に相当する境界値に満たない部分で周りを囲まれている(図の外周にかかるものは除く)ことを指す。なお境界値の詳細については後述する。また島の大きさの上限は、現実的には飛行時間型2次イオン質量分析計による測定範囲内に収まることが条件となり、上述の測定条件においては、その外接円の直径が50μm以下のものを島とする。一方、大きさの下限は上記条件により区分できれば特にないが、実際には測定器の空間分解能に依存し、上述の測定条件においては0.8μm程度と示唆される。
【0042】
「網目状に存在」とは、
図2に示すように、Si(CH
3)
+フラグメントの2次イオン強度を図示したとき、前述の境界値未満の部分が島状に存在していることを指す。
【0043】
「島状および網目状に存在」とは、
図3に示すようにSi(CH
3)
+フラグメントの2次イオン強度を図示したとき、測定範囲内に前記の島状に存在する領域と網目状に存在する領域とが共存していることを指す。Si(CH
3)
+フラグメントイオンの存在形態としては「島状および網目状に存在」することがより好ましいが、これは「島状に存在」する場合と比較すると、指紋汚れの表面層最表面における面方向への拡散性に優れ、「網目状に存在」する場合と比較すると指紋汚れの付着量を低減させる能力に優れるためであると考えられる。
【0044】
さらに、前記ジメチルシロキサンに由来するSi(CH
3)
+フラグメントイオンが存在する部の占有率が30%以上、70%以下であることが好ましく、30%以上、50%以下がより好ましく、30%以上、40%以下が特に好ましい。ここで、占有率とは、全測定点のうち、Si(CH
3)
+フラグメントイオンが境界値以上存在する点の割合を指す。占有率の算出方法については実施例の項にて述べるが、ジメチルシロキサンに由来するSi(CH
3)
+フラグメントイオンの存在する部分が占める割合が30%より少ないと、付着した指紋成分を塗膜内に吸収する能力が不十分で、指紋汚れの消失性が低下する場合があり、70%を超えると指紋汚れの付着量を低減させる能力が低下する場合がある。
【0045】
さらに本発明の成型材料は、模擬指紋の付着前、付着直後の正反射光込みの色差と正反射光除去の色差を特定の値以下で、かつ色差の経時減少量を特定の値以上にすることが好ましい。具体的には以下の通りである。
【0046】
まず、模擬指紋付着前と付着直後の正反射光込みの色差と正反射光除去の色差について、以下の式(4)で表されるパラメーターK
1は3以下が好ましく、2以下がより好ましい。3を超えると指紋付着痕が視認されやすく、かつ十分な前記の付着指紋の浸透効果を得ることが困難となる場合がある。
K
1=[(ΔE
SCI−1)
2+(ΔE
SCE−1)
2]
1/2 式(4)
ここで、前記 ΔE
SCI−1はJIS Z8730(2009)およびJIS Z8722(2009)で規定される正反射光込みの模擬指紋付着前後の色差(ΔE
*ab(di:8°)Sb10W10)を指し、E
SCE−1は正反射光除去の模擬指紋付着前後の色差(ΔE
*ab(de:8°)Sb10W10)を指す。
【0047】
ΔE
*ab(de:8°)Sb10W10とΔE
*ab(de:8°)Sb10W10は等価な次元を有する物理量であり、それぞれの値を軸とした2次元座標系において原点からの距離に相当するパラメーターK
1を小さくすることが模擬指紋付着前後の指紋の視認性を低下させることに相当する。なおパラメーターK
1は小さいほど指紋付着防止性に優れているといえるが、本発明が課題とする高い光沢感と透明感を有する材料において、後述の指紋の経時変化の効果を認識するためには1を超えることが現実的である。
なお、前記模擬指紋付着直後とは後述する模擬指紋の付着方法により成型材料表面に模擬指紋を付着してから30分程度のことを指す。
【0048】
また、色差の経時減少量は、前述の式(3)で表される値が、1以上であることが好ましく、1.2以上がより好ましい。前述の式(3)で表される値が1を下回ると、指紋汚れの消失感を得ることが困難となる場合がある。
K
1−K
2≧1 式(3)
ここで、式(3)中のK
1は前述の通りであり、K
2は以下の式(5)で表される
K
2=[(ΔE
SCI−2)
2+(ΔE
SCE−2)
2]
1/2 式(5)
ここで式(5)中のΔE
SCI−2は、JIS Z8730(2009)およびJISZ8722(2009)で規定される正反射光込みの模擬指紋付着前と、模擬指紋付着後に25℃、無風状態下で静置した後の色差(ΔE
*ab(di:8°)Sb10W10)を指し、ΔE
SCE−2は、同じサンプルの正反射光除去での色差(ΔE
*ab(de:8°)Sb10W10)を指す。
【0049】
ここで、前記模擬指紋とは、JIS K6253(1997)で規定するゴム硬度が50であるシリコーンゴムの表面をJIS B0601(2001)で規定するRaが3μmに粗面化することで作成した転写材を用いて、オレイン酸70質量%と数平均粒子径2μmのシリカ30質量%からなる分散物0.05g/m
2を対象とする面に30KPaで付着させたものを指す。なお、Raは±1μmの変動は許容でき、オレイン酸70質量%と数平均粒子径2μmのシリカ30質量%からなる分散物のシリコーンゴムの表面への付着量は±0.02g/m
2の変動は許容できる。具体的な模擬指紋付着の手順ついては後述する。
【0050】
次に、本発明の成型材料は表面に微細な凹凸を有する層があることが好ましく、特に特定範囲の凹凸が単位面積当たりに存在する個数には好ましい範囲がある。具体的には、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さ(RMS)を超えるピークが、25μm
2あたり500個以上1,500個以下であることが好ましく、800個以上1,200個以下であることがより好ましい。この範囲を外れると、前述の指紋を構成する油滴の大きさを微細化する効果が不十分になる場合がある。
【0051】
ここで、前記2乗平均粗さ(RMS)とは、平均線から測定曲線までの偏差の2乗を平均した値の平方根で、粗さ曲線から求めるものを指し、ピークとは平均線を基準に測定曲線までの距離が前記2乗平均粗さを超えるものを指す。なお、一般的にはJIS R 1683に基づく算術平均荒さ(Ra)が表面形状の指標として用いられるが、Raは表面全域の平均的な深さ情報を表す数値であり、本発明の成型材料が有するような局所的な凹凸構造の形状や数を評価する指標としては不向きである。
【0052】
次に本発明の成型材料上の前記模擬指紋を構成する油滴の形状について、その油滴径は小さくなっていることが好ましい。前記成型材料において表面の油滴付着部分の占める面積が増加する程に指紋の視認性が増加することから、油滴の前記成型材料表面方向への投影像を用いて、油滴径の頻度分布にその面積に応じた重み付けを行った面積基準頻度分布で油滴の形状を評価することができる。前記面積基準頻度分布において、その累積頻度が全体のN%となる直径をD
Nと表記する。このうちNが50の直径を特にメジアン径(以下D
P)と呼ぶ。本発明においては、前記模擬指紋付着直後の面積基準頻度分布から算出されるメジアン径D
P1が80μm以下であることを好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。この値を外れると油滴による光の散乱から指紋が視認されやすくなる場合がある。
【0053】
さらに、前記模擬指紋付着後、25℃、無風状態下において10時間静置した同材料表面の面積基準頻度分布から算出されるメジアン径をD
P2とした際に、メジアン径の時間変化を模擬指紋付着直後のメジアン径D
P1で規格化した値、(D
P1−D
P2)/D
P1には好ましい値が存在する。具体的には0.5以上が好ましく、0.6以上が特に好ましい。この値が0.5より小さいと、時間が経過した後も指紋が視認される状態で残ったままとなる場合がある。
【0054】
以上の特性を有する本発明の成型材料の構成材料は特に限定されないが、その一つの好ましい形態は以下の構成材料を主成分とする層である。
・フッ素化合物A
・化合物B
・バインダー成分
・粒子成分。
【0055】
ここで主成分とは特にことわらない限り、全成分のうち50質量%以上を占める成分であることをいう。この場合はフッ素化合物Aとバインダー成分と粒子との合計が50質量%以上であることを指す。前記フッ素化合物A、化合物B、バインダー成分、粒子の詳細については後述するが、フッ素化合物Aは表面エネルギーを低下させることにより、指紋を構成する液体の接触角を上昇させて付着量を低減させるものであり、化合物Bについては親油性部位を有するオリゴマーもしくはポリマー、特にジメチルシロキサン共重合体からなる有機粒子が好ましく、バインダー成分は粒子を結着させ、実用上必要な耐擦傷性を付与する役目を有する。粒子は前述の微細な凹凸構造の形成に寄与し、一次粒子の数平均粒子径が5nm以上、20nm以下であることが好ましい。一次粒子の数平均粒子径が20nmを超えると必要な光沢度が得られない場合があり、一方で5nmに満たない場合には前述の指紋付着物を構成する油滴を微細化する効果が得られない場合がある。数平均粒子径の測定方法の詳細については後述し、またフッ素化合物A、化合物B、バインダー成分、粒子成分のそれぞれの好ましい比率についても後述する。
【0056】
前記フッ素化合物Aはフルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基およびフルオロオキシアルカンジイル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む部位と一分子中に2つ以上5つ以下の反応性部位を有する化合物が好ましく、より好ましくはフルオロポリエーテル部位を有する材料である。これらの材料を用いることにより、最表面に低表面エネルギーを示す分子を高密度に存在させることができる。前記フルオロポリエーテル部位については後述する。
【0057】
前記バインダー成分は、膜硬度とフッ素化合物Aおよび粒子成分の分散性の観点から、分子中に10以上の反応性部位を持ち、数平均分子量1,500以上3,000以下である原料からなることが好ましい。このバインダー成分については後述する。
【0058】
さらに本発明の成型材料において、前述の粒子成分には好ましい形態があり、具体的には数珠状に連結したおよび/または分岐した形態で存在することが好ましい。この粒子の詳細については後述するが、粒子としてシリカを用いることにより、塗布−乾燥過程にて粒子の表面状態に起因する粒子間相互作用と粒子間に存在する横毛管力によるいわゆる自己組織化が起こり、前記の好ましい凹凸構造を形成しやすい。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0059】
[成型材料、および層]
本発明の成型材料は本発明の特性、およびまたは材料を含む層をその表面に有していれば平面状(フィルム、シート、プレート)、3次元形状(成型体)のいずれであってもよい。ここで、本発明における「層」とは、前記成型材料の表面から厚み方向に向かい、隣接する部位とは元素組成、含有物(粒子等)の形状、物理特性が不連続な境界面を有することにより区別でき、有限の厚さを有する部位を指す。より具体的には、前記成型材料を表面から厚み方向に各種組成/元素分析装置(IR、XPS、XRF、EDAX、SIMS等)、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面により区別され、有限の厚さを有する部位を指す。
前記層は、前述の特性を示すため以下の成分を含むことが好ましい。
・フッ素化合物A
・化合物B
・バインダー成分
・粒子成分
これら成分の詳細については後述する。
【0060】
前記層は耐指紋性に加えて、反射防止、ハードコート、帯電防止、防汚性、導電性、熱線反射、近赤外線吸収、易接着等の他の機能を有してもよい。
【0061】
前記層の厚みは特に限定はないが、1nm以上100μm以下が好ましく、5nm以上50μm以下がより好ましい。
【0062】
[塗料組成物]
本発明の成型材料は支持基材上に後述する塗料組成物を塗布、乾燥、および硬化する一般的な塗布プロセスにより前記「表面層」を形成することが好ましい。この塗料組成物は、常温にて液状の組成物を指し、前述の特性を付与するため以下の成分を含むことが好ましい。
1)フッ素化合物A
2)化合物B
3)バインダー原料
4)粒子成分
これら成分の詳細については後述する。さらに塗料組成物はこのほかに溶媒や、光重合開始剤、硬化剤、触媒などの各種添加剤を含んでもよい。また、前記塗料組成物に含まれるフッ素化合物Aとバインダー原料の溶解度の間には好ましい条件が存在する。
【0063】
具体的にはヒルデブランドの溶解度パラメーターを、分散項σ
d,極性項σ
p,水素結合項σ
hの3成分に分割した、ハンセンの溶解度パラメーターを用いて、条件を表すことができる。分散項σ
dは無極性相互作用による効果、極性項σ
pは双極子間力による効果、水素結合項σ
hは水素結合力の効果を示すものである。
【0064】
フッ素化合物Aのハンセンの溶解度パラメーターの分散項をσ
d、極性項をσ
p、水素結合項をσ
hとし、バインダー成分のハンセンの溶解度パラメーターの分散項をσ
Bd、極性項をσ
Bp、水素結合項をσ
Bhとしたとき、下記の条件を満たすことが好ましい。
・条件1 R=[(σ
d−σ
Bd)
2+(σ
p−σ
Bp)
2+(σ
h−σ
Bh)
2]
1/2により定義されるパラメーターRが3(MPa)
1/2以上、12(MPa)
1/2以下の値を有する。
【0065】
さらに、条件1はパラメーターRが3(MPa)
1/2以上8(MPa)
1/2以下の値を有することがより好ましく、4(MPa)
1/2以上、6(MPa)
1/2以下の値を有することが特に好ましい。このパラメーターRは、ハンセンの溶解度パラメーターの分散項、極性項、および水素結合項を軸とした3次元座標軸における、フッ素化合物Aの座標点(σ
d、σ
p、σ
h)とバインダー成分の座標点(σ
Bd、σ
Bp、σ
Bh)の距離に対応する。そして、この距離が遠いほど両者の混合は困難となり、近いほど両者は容易に混ざり合う。従って、パラメーターRが12(MPa)
1/2を超える場合にはフッ素化合物Aとバインダー成分が十分に混ざり合わず、透明性や光沢感が低下する場合があり、一方パラメーターRが3(MPa)
1/2に満たない場合にはフッ素化合物Aとバインダー成分が完全に混ざり合い、層の形成が困難となり、指紋付着量が増加する場合がある。
【0066】
またフッ素化合物Aのハンセンの溶解度パラメーターの分散項σ
dとバインダー成分のハンセンの溶解度パラメーターの分散項σ
Bdについては以下の条件2の関係を満たすことが望ましい
・条件2 σ
d<σ
Bd
前述のフッ素化合物Aの表面層の最表面への分離、層形成はファンデルワールス相互作用による効果であり、すなわち分散項に由来すると考えられる。従って上記条件を満たさない場合には、前記模擬指紋の付着量を一定値以下にする層を最表面に構成することが困難となり、指紋付着量が増加する場合がある。
【0067】
なお、多くの溶媒や一部の樹脂についてハンセンの溶解度パラメーターの値が調べられており、例えば“Polymer Handbook (fourth Edition)”,J.BRANDRUPら編(JOHN WILEY & SONS)にその値が記載されている。一方、上記のようなデータベースに溶解度パラメーター値が記されていない前述のフッ素化合物Aおよびバインダー成分については、溶解度パラメーターの値が類似するもの同士が溶け合いやすいという性質の下、実施例に示した方法によりパラメーター値が既知である溶媒への溶けやすさを規定することで、Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)ver.3.1.03(http://www.hansen−solubility.com/index.php)を用いて各パラメーターを計算することができる。
【0068】
[フッ素化合物A]
フッ素化合物Aとは、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基およびフルオロオキシアルカンジイル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む部位と反応性部位を有する化合物を指す。
【0069】
ここで、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基とはアルキル基、オキシアルキル基、アルケニル基、アルカンジイル基、オキシアルカンジイル基が持つ水素の一部、あるいは全てがフッ素に置き換わった置換基であり、いずれも主にフッ素原子と炭素原子から構成される置換基であり、構造中に分岐があってもよく、これらの部位が複数連結したダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマー構造を形成していてもよい。
【0070】
また、反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部位を指す。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる、反応性、ハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基、シリルエーテル基あるいはシラノール基や、エポキシ基、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましく、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。また表面エネルギー低減の効果と、成型材料表面の磨耗耐久性とを両立させるには、特に前期の反応性部位を2つ以上5つ以下有することが特に好ましい。指紋拭き取り時の前記表面層の耐久性の観点から、フッ素化合物Aが反応性部位を多く有することが望ましいが、一方で反応性部位が分子中に6以上となると表面エネルギーを低下させる効果が十分に得られない場合がある。
【0071】
フッ素化合物Aの一例は次の一般式で表される化合物である。
R
f1−R
2−D
1 ・・・一般式(1)
(R
f1はフルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基を含む部位を、R
2はアルカンジイル基、アルカントリイル基、およびそれらから導出されるエステル構造、ウレタン構造、エーテル構造、トリアジン構造を、D
1は反応性部位を示す)。
【0072】
一般式(1)の例としては2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリアクリロイル−ヘプタデカフルオロノネニル−ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0073】
また、フッ素化合物Aとして好ましい材料はフルオロポリエーテル部位を有する材料である。前記フルオロポリエーテル部位とは、フルオロアルキル基、オキシフルオロアルキル基、オキシフルオロアルキルジイル基などからなる部位で、一般式(2)、(3)に代表される構造である。
CF
n1H
(3−n1)−(CF
n2H
(2−n2))
kO−
−(CF
n3H
(2−n3))
mO−
・・・一般式(2)
−(CF
n4H
(2−n4))
pO−(CF
n5H
(2−n5))
sO−
・・・一般式(3)
ここで、n1は1〜3の整数を、n2〜n5は1または2の整数を、k、m、p、sは0以上の整数を指す。好ましくはn1は2以上、n2〜n5は1または2の整数であり、より好ましくはn1は3、n2とn4は2、n3とn5は1または2の整数である。
【0074】
このフルオロポリエーテル部位の鎖長には好ましい範囲があり、炭素数が4以上12以下が好ましく、4以上10以下がより好ましく、6以上8以下がより好ましい。炭素数が、4未満では表面エネルギーが低下せず、12超では溶媒への溶解性が低下する。
【0075】
なお、フッ素化合物Aは1分子あたり複数のフルオロポリエーテル部位を有していてもよい。
【0076】
上記フッ素化合物Aの市販されている例として炭素数4以上12以下のフルオロポリエーテル部位を有する材料としては、RS−75(DIC株式会社)、オプツールDSX、オプツールDAC(ダイキン工業株式会社)、C10GACRY、C8HGOL(油脂製品株式会社)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0077】
[化合物B]
本発明の成型材料は指紋浸透性を付与する親脂肪酸性を有する化合物Bを有することが好ましい。成型材料への溶解、分散および保持性の観点から現実的にはオリゴマーもしくはポリマーの形態を有することが好ましい。またその構造の一部に反応性の部位を有することが好ましい。
【0078】
具体的には例えば構造の一部にオルガノシロキサン骨格や、長鎖アルキル基、アルキレングリコール基、リン酸エステル基などを有する材料、もしくはオルガノシロキサン共重合体などの粒子材料が挙げられる。本発明の特に好ましい表面特性を得るためにはジメチルシロキサン重合体からなる有機粒子が好ましく、これを満たす市販品としては信越シリコーン株式会社のシリコーン架橋物KSGシリーズなどがある。
【0079】
[バインダー成分、バインダー原料]
本発明の成型材料は「バインダー成分」を含む層を有することが好ましく、本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物は、「バインダー原料」を含むことが好ましい。
【0080】
ここで「バインダー原料」とは前記塗料組成物中に含まれる化合物であり、前記塗料組成物を塗布、乾燥、硬化処理により形成された前記層に存在する「バインダー成分」の原料である。つまり、前記塗料組成物中に含まれるバインダー原料が、熱や電離放射線などにより硬化して、成型材料、および/または層に含まれるものを、バインダー成分という。なお、一部のバインダー原料については、成型材料中でも塗料組成物中と同様の状態で存在する場合もあり(未反応のまま存在する場合もあり)、その場合でも成型材料中のものはバインダー成分という。
【0081】
前記塗料組成物中のバインダー原料は特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱および/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー原料であることが好ましい。塗料組成物中のバインダー原料は一種類であってもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0082】
また、本発明において粒子を層中に保持する観点より、分子中にアルコキシ基、シラノール基、反応性二重結合、および開環反応可能な官能基を有しているモノマー、オリゴマーがバインダー原料であることが好ましい。さらにUV線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、嫌気性雰囲気下で硬化する方がより好ましい。酸素濃度を下げることにより最表面の硬化状態が向上し、耐薬品耐性が良化する場合がある。
【0083】
このような塗料組成物中のバインダー原料は、具体的には多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー等が好ましく、多官能アクリレートモノマー、オリゴマーがより好ましい。
【0084】
多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートを「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、アクリロイルオキシ基とメタクリロイルオキシ基を総称して、表すものとする(上記以外に化合物中に「(メタ)アクリ・・・」が含まれる場合も同様である)。
【0085】
一方、多官能アクリレートオリゴマーの例としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられるが、本発明の成型材料の表面形状を得るためにはウレタンアクリレートが好ましい。さらに粒子の分散の観点から、ウレタンアクリレートのうちポリオール骨格に脂環式炭化水素(シクロヘキシル、トリシクロデカニル、イソボニル骨格)を有し、かつ1分子中に9(より好ましくは12)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単位構造からなるものが特に好ましい。
【0086】
また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”(登録商標)シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”(登録商標)シリーズなど)、新中村化学株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”(登録商標)など)、東亞合成株式会社;(“アロニックス”(登録商標)シリーズなど)、日本油脂株式会社;(“ブレンマー”(登録商標)シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”(登録商標)シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0087】
[粒子]
本発明の成型材料が有する層、および本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物は前記化合物Bに属する成分とは別に、粒子を含むことが好ましい。ここで、粒子とは無機粒子、有機粒子のいずれでもよいが、耐久性の観点から無機粒子が好ましい。
【0088】
無機粒子の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましい。無機粒子の種類数は1種類以上10種類以下がさらに好ましく、1種類以上3種類以下が特に好ましい。ここで、「無機粒子」とは表面処理を施したものも含む。この表面処理とは、粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)させることによって導入することを指す。
【0089】
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO
2)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO
2−xN
x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の無機粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる粒子(ZnO)であれば、その数平均粒子径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
【0090】
無機粒子は特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩であることが好ましく、2種類の金属、半金属を含む複合酸化物や、格子間に異元素が導入されたり、格子点が異種元素で置換されたり、格子欠陥が導入されていてもよい。
【0091】
無機粒子はSi、Al、Ca、Zn、Ga、Mg、Zr、Ti、In、Sb、Sn、BaおよびCeからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属や半金属が酸化された酸化物粒子であることがさらに好ましい。
【0092】
具体的にはシリカ(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化アンチモン(Sb
2O
3)およびインジウムスズ酸化物(In
2O
3)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物である。特に好ましくはシリカ(SiO
2)である。
【0093】
無機粒子の数平均粒子径は5nm以上20nm以下が好ましい。無機粒子の数平均粒子径が5nmよりも小さくなると、凹凸を形成する能力が不十分になる場合があり、20nmよりも大きくなると光沢感が低下する場合がある。
【0094】
さらに、無機粒子の形態は特に限定するものではないが、シリカが数珠状に連結(複数のシリカが連鎖状につながった形状)した長鎖の構造を有するもの、または、連結したシリカが分岐したものや屈曲したものが好ましい。以降これらを数珠状に連結したおよび/または分岐したシリカと呼ぶ。
【0095】
前記数珠状に連結したおよび/または分岐したシリカは、シリカの一次粒子を2価以上の金属イオンを介在させ粒子−粒子間を結合させたもので、少なくとも3個以上、好ましくは5個以上、更に好ましくは7個以上連結したものをいう。前記数珠状に連結したおよび/または分岐したシリカの連結、分岐、屈曲状態は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて確認することができる。この数珠状に連結したおよび/または分岐したシリカの市販品としては日産化学工業株式会社の、PS−S、PS−M(水分散体)、IPA−ST(IPA分散体)、MEK−ST(MEK分散体)、扶桑化学工業株式会社のPL−1−IPA(IPA分散体)、PL−1−MEK(MEK分散体)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0096】
本発明の特に好ましい表面形状を得るためには、前述の連鎖状シリカがバインダー原料の良溶媒中で安定に分散するのに必要な表面修飾がなされていることが特に好ましい。例えば、バインダー原料としてアクリル系モノマー、オリゴマーを使用する場合には、表面修飾としては炭素数1〜5以内のアルキル基、アルケニル基、ビニル基、(メタ)アクリル基などが必要最低限、表面に導入されていることが好ましい。
【0097】
無機粒子の数平均粒子径は、後述のとおり、成型材料、塗料組成物のいずれにおいても走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡等を用いて一次粒子を観察し、各一次粒子の外接円の直径を等価粒子径とし、その数平均値から求めた値を指す。
【0098】
成型材料の場合には、表面、または断面を観察することにより数平均粒子径を求めることが可能であり、また、塗料組成物の場合には、溶媒で希釈した塗料組成物を滴下、乾燥することによりサンプルを調製して観察することが可能である。
【0099】
[溶媒]
本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物は溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下である。ここで「溶媒」とは、塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な常温、常圧で液体である物質を指す。
【0100】
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
【0101】
[その他の添加剤]
本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物としては、更に光重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。
光重合開始剤及び触媒は、無機粒子間、バインダー原料間、無機粒子とバインダー原料間の反応を促進するために用いられる。該開始剤としては、塗料組成物をラジカル反応等による重合および/またはシラノール縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0102】
該開始剤、該硬化剤、および触媒は、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いてもよいし、単独で用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
【0103】
なお、該開始剤及び該硬化剤の含有割合は、塗料組成物中のバインダー原料の合計100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させてもよい。
【0104】
[各成分の含有量]
本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物は、フッ素化合物A、化合物B、バインダー原料、粒子を含むが、塗料組成物中のそれぞれの質量関係について説明する。
【0105】
塗料組成物100質量%において、フッ素化合物Aが0.025質量%以上7質量%以下、化合物Bが0.02質量%以上30質量%未満、粒子が0.2質量%以上55質量%以下、バインダー原料が0.8質量%以上66質量%以下、溶媒が30質量%以上95質量%以下、開始剤、硬化剤、触媒のその他の成分が0.025質量%以上7質量%以下が好ましく例示される。より好ましくは、フッ素化合物Aが0.05質量%以上6質量%以下、粒子が0.4質量%以上36質量%以下、バインダー原料が3.2質量%以上56質量%以下、溶媒が40質量%以上90質量%以下、開始剤、硬化剤、触媒のその他の成分が0.05質量%以上6質量%以下である。
【0106】
[支持基材]
本発明の成型材料が平面状である場合には、前記「表面層」を設けるため支持基材を必要とする。支持基材に特に限定はなく、ガラス板、プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックレンズ、金属板のいずれでもよい。
【0107】
プラスチックフィルム、プラスチックシートを支持基材に使用する場合の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが含まれるが、これらの中でも得にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0108】
支持基材の表面には、前記層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0109】
[成型材料の製造方法]
本発明の成型材料の表面に形成される前記「表面層」は蒸着、スパッタリング、CVDなどの気相処理、塗布、含浸、めっき、ケン化などの液相処理、転写、貼合などの固相処理、およびこれら処理の組み合わせによって成型材料の表面に形成してもよいが、蒸着による気相処理、塗布による液相処理が好ましく、塗料組成物を支持基材等に塗布することにより形成する液相処理がより好ましい。
【0110】
塗布による成型材料の製造方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗布することにより層を形成することが好ましい。さらに、これらの塗布方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗布方法としてより好ましい。塗料組成物の製造方法については後述する。
【0111】
次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる成型材料中から完全に溶媒を除去することに加え、液膜中の粒子により表面の構造の形成を促進する観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。
【0112】
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。さらに、フッ素化合物Aの表面への移動や配向、粒子の自己組織化の進行を制御する観点からは、輻射伝熱と対流伝熱を併用する乾燥方式が特に好ましい。
【0113】
乾燥過程は一般的に(A)恒率乾燥期間、(B)減率乾燥期間に分けられ、前者は、液膜表面において溶媒分子の大気中への拡散が乾燥の律速になっているため、乾燥速度は、この区間において一定で、乾燥速度は大気中の被蒸発溶媒分圧、風速、温度により支配され、膜面温度は熱風温度と大気中の被蒸発溶媒分圧により決まる値で一定になる。後者は、液膜中での溶媒の拡散が律速となっているため、乾燥速度はこの区間において一定値を示さず低下し続け、液膜中の溶媒の拡散係数により支配され、膜面温度は上昇する。ここで乾燥速度とは、単位時間、単位面積当たりの溶媒蒸発量を表わしたもので、g・m
−2・s
−1の次元からなる。
【0114】
前記乾燥速度には、好ましい範囲があり、10g・m
−2・s
−1以下であることが好ましく、5g・m
−2・s
−1以下であることがより好ましい。恒率乾燥区間における乾燥速度をこの範囲にすることにより、乾燥速度の不均一さに起因するムラを防ぐことができる。
【0115】
0.1g・m
−2・s
−1以上10g・m
−2・s
−1以下の範囲の乾燥速度が得られるならば、特に特定の風速、温度に限定されない。
【0116】
本発明の製造方法では、減率乾燥期間では残存溶媒の蒸発と共に、粒子の配列による緻密化が行われる。この過程においては粒子の配列のための時間を必要とするため、減率乾燥期間における膜面温度上昇速度には好ましい範囲が存在し、5℃/秒以下であることが好ましく、1℃/秒以下であることがより好ましい。
【0117】
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
【0118】
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性、耐アルカリ性が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3,000mW/cm
2、好ましくは200〜2,000mW/cm
2、さらに好ましくは300〜1,500mW/cm
2となる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3,000mJ/cm
2、好ましくは200〜2,000mJ/cm
2、さらに好ましくは300〜1,500mJ/cm
2となる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0119】
[塗料組成物の製造方法]
本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物は、フッ素化合物A、粒子、バインダー原料に加えて溶媒や他添加物(開始剤、硬化剤、触媒等)を混合して得られる。その製造方法は前記成分の処方量を質量、または体積で計量し、これらを攪拌により混合することにより得られる。この時、加えて減圧や逆浸透膜による脱溶媒処理、モレキュレーシーブによる脱水処理、イオン交換樹脂によるイオン交換処理などを行ってもよい。
【0120】
塗料組成物調合時の攪拌条件、攪拌装置は特に限定されないが、液全体が十分混合するのに必要な装置、および回転数であればよく、液中での局所的なせん断速度が1.0×10
4s
−1よりも小さく、かつレイノルズ数が1,000以上である範囲であることが、粒子分散物のせん断破壊による凝集と局所的な滞留による凝集や、混合不良を防ぐために好ましい。
【0121】
粒子は粒子分散物、粉体いずれの形で添加してもよいが、粒子分散物の形で取り扱うことが凝集、異物発生を防止する面で好ましい。粉体を原料として取り扱う場合には、メディア型分散機などの各種分散機により溶媒(分散媒)に分散する工程を経た方が好ましい。粒子分散物として添加する場合の処方量は、粒子分散物の固形分濃度と粒子分散物の質量の積から求めた粒子の質量を用いることできる。
【0122】
この固形分濃度の測定は、粒子分散物を、アルミ皿(この質量をW
1とする)に約2g秤量後(この質量をW
2とする)、120℃の熱風オーブン内で1時間乾燥、デシケーター中で室温まで冷却後、秤量(この質量をW
3とする)し、下記の式に従って固形分濃度を求めることができる。
固形分濃度=(W
3−W
1)/(W
2−W
1)×100
得られた塗料組成物は、塗布する前に適当なろ過処理を行ってもよい。この適当なろ過処理とは、溶媒、粒子の表面の極性状態に合わせたフィルター材料、フィルター目開きを選択し、粒子分散物の分散状態を破壊しないせん断速度、フィルター構造に合わせた圧力条件にてろ過することがより好ましい。
【実施例】
【0123】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0124】
[フッ素化合物A]
[フッ素化合物A1]
フッ素化合物A1としてフルオロポリエーテル変性トリメトキシシラン(“DOW CORNING”2634 COATING 東レ・ダウコーニング株式会社)を使用した。
【0125】
[フッ素化合物A2]
フッ素化合物A2としてフルオロアルキル部位を含む化合物(トリアクリロイル−ヘプタデカフルオロノネニル−ペンタエリスリトール 共栄社化学株式会社)を使用した。
【0126】
[フッ素化合物A3]
フッ素化合物A3としてフルオロポリエーテル部位を含む化合物(MA−78 Miwon Specialty Chemical Co.,Ltd)を使用した。
【0127】
[化合物B]
[化合物B1]
化合物B1としてメタクリル変性シリコーンオイル(X−22−164E 信越化学工業株式会社)を使用した。
【0128】
[化合物B2]
化合物B2としてシリコンセグメントを含むブロックコポリマー(モディパーFS720 日油株式会社)を使用した。
【0129】
[化合物B3]
化合物B3としてジメチコン系シリコーン架橋物(KGS−042Z 信越化学工業株式会社)を使用した。
【0130】
[化合物B4]
化合物B4としてポリジメチルシロキサン化合物(EBECRYL350 ダイセル・オルネックス株式会社)を使用した。
【0131】
[バインダー原料]
[バインダー原料1]
バインダー原料1として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(“KAYARAD”DPHA 日本化薬株式会社)を使用した。
【0132】
[バインダー原料2]
バインダー原料2として、ウレタンアクリレートオリゴマー(“KRM”8452 ダイセル・サイテック株式会社)を使用した。
【0133】
[バインダー原料3]
バインダー原料3として、ウレタンアクリレートオリゴマー(“アートレジン”UN−904 根上工業株式会社)を使用した。
【0134】
[粒子成分]
[粒子1]
粒子1として、オルガノシリカゾル(MEK−ST−UP 日産化学工業株式会社)を使用した。
【0135】
[粒子2]
粒子2として、オルガノシリカゾル(OSCAL 日揮触媒化成株式会社、固形分濃度5質量%)を使用した。
【0136】
[粒子3]
粒子3として、オルガノシリカゾル(MIBK−SD 日産化学工業株式会社)を使用した。
【0137】
[塗料組成物の作成]
[塗料組成物1]
下記材料を混合し塗料組成物1を得た。
フッ素化合物A: フッ素化合物A1 0.2 質量部
化合物B: 化合物B1 1.5 質量部
粒子: 粒子1 30 質量部
バインダー: バインダー原料1 22.3質量部
溶媒: MEK 45.3質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社 ) 0.7 質量部。
【0138】
[塗料組成物2]
表1に示すように前記塗料組成物1に対して、フッ素化合物A1を前記フッ素化合物A2に置き換えた以外は同様にして塗料組成物2を得た。
【0139】
[塗料組成物3]
下記材料を混合し塗料組成物3を得た。
フッ素化合物A: フッ素化合物A2 0.1 質量部
化合物B: 化合物B1 1.0 質量部
粒子: 粒子2 80 質量部
バインダー: バインダー原料1 14.9質量部
溶媒: MEK 3.5 質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社 ) 0.5 質量部。
【0140】
[塗料組成物4、5]
表1に示すように前記塗料組成物3に対して、フッ素化合物A2を前記フッ素化合物A3に、化合物B1を2に置き換えた以外は同様にして塗料組成物4、5を得た。
【0141】
[塗料組成物6]
下記材料を混合し塗料組成物6を得た。
フッ素化合物A: フッ素化合物A3 0.2 質量部
化合物B: 化合物B1 1.5 質量部
粒子: 粒子3 20 質量部
バインダー: バインダー原料1 22.3質量部
溶媒: MEK 55.3質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社) 0.7 質量部。
【0142】
[塗料組成物7]
下記材料を混合し塗料組成物7を得た。
フッ素化合物A: フッ素化合物A3 0.2 質量部
化合物B: 化合物B2 1.5 質量部
バインダー: バインダー原料1 28.3質量部
溶媒: MEK 69.1質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社 ) 0.9 質量部。
【0143】
[塗料組成物8]
下記材料を混合し塗料組成物8を得た。
フッ素化合物A: フッ素化合物A3 0.2 質量部
化合物B: 化合物B1 0.3 質量部
粒子: 粒子1 30 質量部
バインダー: バインダー原料1 23.5質量部
溶媒: MEK 45.3質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社) 0.7 質量部。
【0144】
[塗料組成物9]
下記材料を混合し塗料組成物9を得た。
フッ素化合物A: フッ素化合物A1 0.2 質量部
化合物B: 化合物B3 0.6 質量部
粒子: 粒子1 30 質量部
バインダー: バインダー原料1 23.2質量部
溶媒: MEK 45.3質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社) 0.7 質量部。
【0145】
[塗料組成物10、11]
表1に示すように前記塗料組成物9に対して、バインダー原料1を前記バインダー原料2、3に置き換えた以外は同様にして塗料組成物10、11を得た。
【0146】
[塗料組成物12]
下記材料を混合し塗料組成物12を得た。
フッ素化合物A: フッ素化合物A1 0.2 質量部
化合物B: 化合物B1 4.0 質量部
粒子: 粒子1 30 質量部
バインダー: バインダー原料1 19.8質量部
溶媒: MEK 45.3質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社 ) 0.7 質量部。
【0147】
[塗料組成物13]
下記材料を混合し塗料組成物13を得た。
フッ素化合物A: フッ素化合物A1 0.2 質量部
化合物B: 化合物B4 1.5 質量部
粒子: 粒子1 30 質量部
バインダー: バインダー原料1 22.3質量部
溶媒: MEK 45.3質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社 ) 0.7 質量部。
【0148】
[塗料組成物14]
下記材料を混合し塗料組成物14を得た。
フッ素化合物A: フッ素化合物A1 0.1 質量部
粒子: 粒子2 80 質量部
バインダー: バインダー原料1 15.9質量部
溶媒: MEK 3.5 質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社) 0.5 質量部。
【0149】
[塗料組成物15]
下記材料を混合し塗料組成物15を得た。
化合物B: 化合物B1 1.5 質量部
粒子: 粒子1 30 質量部
バインダー: バインダー原料1 22.5質量部
溶媒: MEK 45.3質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社) 0.7 質量部。
【0150】
[塗料組成物16]
下記材料を混合し塗料組成物16を得た。
粒子: 粒子1 30 質量部
バインダー: バインダー原料1 24 質量部
溶媒: MEK 45.3質量部
光重合開始剤: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184 BASF社) 0.7 質量部。
【0151】
[成型材料の作製]
支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗布されている“ルミラー”(登録商標)、タイプU46(東レ株式会社)を用いた。前記塗料組成物1〜14を搬送速度10m/分の条件で、小径グラビアコーターおよび乾燥室前半部に赤外線パネルヒーターを有する連続塗布装置を用い、固形分塗布膜厚が4μmになるようにグラビア線数、およびグラビアロール速度比を調整して塗布した。塗布から乾燥、硬化までの間に液膜にあたる風の条件は下記の通りである。
【0152】
第1乾燥
送風温湿度 : 温度:45℃、相対湿度:10%
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材に対して平行、反塗布面側:基材に対して垂直
滞留時間 : 1分間
パネルヒーター設定温度:80℃
第2乾燥
送風温湿度 : 温度:100℃、相対湿度:1%
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材に対して垂直、反塗布面側:基材に対して垂直
滞留時間 : 1分間
硬化工程
照射出力 600W/cm
2 積算光量120mJ/cm
2
酸素濃度 0.1体積%
なお、風速、温湿度は熱線式風速計(日本カノマックス株式会社 アネモマスター風速・風量計 MODEL6034)による測定値を使用した。以上の方法により、実施例1〜11、比較例1〜3については赤外線パネルヒーター使用せずに成型材料を作成した。
【0153】
[塗料組成物の評価]
[数平均粒子径(一次粒子)]
走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察、測定した。観察試料は前記塗料組成物を分散媒(イソプロピルアルコール)に固形分濃度0.5質量%に希釈し、超音波にて分散後、導電テープ上に滴下、乾燥して調製した。数平均粒子径は、1視野あたり一次粒子の集合体としての個数が10個以上50個以下になる倍率にて観察を行い、得られた画像から一次粒子の外接円の直径を求めてこれを等価粒子径とし、観察数を増やし一次粒子100個について測定した値から数平均粒子径を求めた。
【0154】
[ハンセンの溶解度パラメーターの測定]
フッ素化合物Aおよびバインダー成分に、溶解度の異なる15種の溶媒、水、アセトン、2−ブタノン、シクロペンタノン、イソプロピルアルコール、エタノール、1−オクタノール、トルエン、ヘキサン、酢酸、酢酸ブチル、アニリン、メタンアミド、2−アミノエタノール、および2−ブトキシエタノールを、それぞれ少量ずつ、完全に溶けきるまで添加した。このときの飽和溶液濃度を元に各溶媒への溶解度を6段階(6:不溶、5:質量パーセント濃度5%未満、4:質量パーセント濃度5%以上10%未満、3:質量パーセント濃度10%以上30%未満、2:質量パーセント濃度30%以上50%未満、1:質量パーセント濃度50%以上)に分類した。こうして得られた各溶媒への溶解度の情報を元にHansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)ver.3.1.17(http://www.hansen−solubility.com/index.php)によってハンセンの溶解度パラメーターを計算した。
【0155】
[パラメーターR]
フッ素化合物Aのハンセンの溶解度パラメーターの分散項をσ
d、極性項をσ
p、水素結合項をσ
hとし、バインダー成分のハンセンの溶解度パラメーターの分散項をσ
Bd、極性項をσ
Bp、水素結合項をσ
Bhとしたとき
R=[(σ
d−σ
Bd)
2+(σ
p−σ
Bp)
2+(σ
h−σ
Bh)
2]
1/2
をパラメーターRの定義とした。前述の方法で算出されたフッ素化合物Aおよびバインダー成分のハンセンの溶解度パラメーターを用いて計算した。
【0156】
[成型材料の評価]
作製した成型材料について、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表2、3に示す。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
【0157】
[60度鏡面光沢度]
成型材料の対象とする面の60度鏡面光沢度は、日本電色工業 VG7000を用いて、成型材料表面の光沢度をJIS Z8741(1997)に準拠した方法で測定し、60%以上を合格とした。
【0158】
[オレイン酸後退接触角]
後退接触角の測定は拡張−収縮法により測定を行い、協和界面科学株式会社 接触角計Drop Master DM−501を用いて、同装置の拡張−収縮法測定マニュアルに従った。具体的にはシリンジからオレイン酸(ナカライ規格一級 ナカライテスク)を初期液滴量50μL、液吐出速度8.5μL/秒で液滴を連続的に吸引し、同液滴の縮小過程の形状を0.5秒毎に30回撮影し、同画像から、同装置付属の統合解析ソフト“FAMAS”を用いてそれぞれの接触角を求めた。液滴の収縮過程の接触角は最初、収縮につれて変化し、次いでほぼ一定になる挙動を示すため、液滴の収縮していく方向に接触角を並べ、その順に連続した5点を選択したとき、連続した5点の標準偏差が最初に1°以下になったときの平均値をその測定の後退接触角とし、この測定を1サンプルについて5回行い、その平均値を試料の後退接触角とした。なお、サンプルによっては液滴の収縮過程の接触角が一定にならず、連続的に低下し続けるものもあるが、これについては後退接触角を0°とした。
【0159】
[オレイン酸吸収係数]
オレイン酸吸収係数の算出に必要な値のうち、表面層にオレイン酸の体積、および付着領域の面積の測定には協和界面科学株式会社 接触角計Drop Master DM−501を用いて、同装置の静的接触角測定マニュアルに従った。具体的にはシリンジ先端にオレイン酸(ナカライ規格一級 ナカライテスク)2μLの液滴を作成し、成型材料表面に着滴させた後、その付着状態の画像を撮影、同装置付属の統合解析ソフト“FAMAS”を用いて体積および接触面積を算出した。なお体積については付着油滴の形状を切断球形として近似し算出され、接触面積については接触線の長さを真円の直径と仮定した際の同真円の面積として算出した。更にこの付着油滴を25℃、無風状態下で10時間静置した後に同様の測定により体積を計測した。
【0160】
また、表面層の厚みTについては成型材料作成時の塗布厚みを元に算出した。一方で塗布厚みが未知である場合には先に記述したとおり、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面の存在を基にその厚みを見積もることができる。
【0161】
[飛行時間型2次イオン質量分析法:TOF−SIMSによるF
−フラグメントイオン(M/Z=19)とジメチルシロキサンに由来するSi(CH
3)
+フラグメントイオンの面内での分布の測定]
ION TOF社製、飛行時間型2次イオン質量分析計TOF−SIMSVおよび同社測定ソフトSURFACE LAB 6を用い、積層フィルムの最表面について、2次イオン質量分析法によってF
−フラグメントイオン(M/Z=19)とジメチルシロキサンに由来するSi(CH
3)
+フラグメントイオンを測定し、面内での各フラグメントイオンの分布を求めた。測定条件は以下の通りである。
・測定条件
一次イオン種 :Bi
+
一次イオン電流:1.000pA
加速電圧 :25kV
検出イオン極性:negative(F
−)、positive(Si(CH
3)
+)
測定範囲 :100μm×100μm
分解能 :128×128
スキャン回数 :36回。
【0162】
測定データの解析については、まず2次イオン質量分析計に内蔵されているソフトウェアを用いて、前記積層フィルムの最表面における2次元の位置情報、および対応する位置での各フラグメントイオンの2次イオン強度の情報を抽出した。2次イオン強度の標準偏差については、抽出した2次イオン強度の値を元に算出することができる。
【0163】
次に2次イオン質量分析計に内蔵されているソフトウェアを用いて、それぞれのフラグメントイオンについて、前述の2次元の位置情報に2次イオン強度を加えた3次元の情報を、
図1あるいは
図2のような平面分布像(マッピング像)に変換した。この際2次イオン強度のスケールは、測定領域における最大値、最小値から上記のソフトウェアにより自動設定される。一方で検出強度が少ない部分については、それぞれフラグメントイオンの由来となる化学種に期待される撥油性および親油性の効果が十分に得られないことから、具体的には2次イオン強度において最大値の20%を境界値とし、この値に満たない領域を、着目している化学種が実質影響しない領域とみなし、前述の境界値未満の領域とした。
【0164】
この結果から得られた、F
−フラグメントイオン(M/Z=19)と、ジメチルシロキサンに由来するSi(CH
3)
+フラグメントイオンの平面分布像およびスケールバーを、画像処理ソフトEasyAccess Ver6.7.1.23 にて画像をグレースケールに変換し、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整、さらに2次イオン分布における前述の境界値が明確に見分けられるようにスケールバーを参照しながらコントラストを調節した。次いで画像解析ソフトImageJ 1.45sを用いて前述の境界を境に画素の2値化を行い、平面分布像のみを切り出した後に、それぞれのフラグメントイオンの分布領域のなす面積を算出した。更に該当領域の面積を測定範囲全域の面積で除算することで、フラグメントイオンが存在する部分の占める割合、占有率を求めた。また、上記画像より、その分布状態を観察し、「均一に存在」、「島状に存在」、「網目状に存在」、「島状および網目状に存在」しているか否かの判断を行った。
【0165】
[耐擦傷性]
反射防止部材に500g/cm
2荷重となるスチールウール(#0000)を垂直に当て、1cmの長さを20往復した際に目視される傷の概算本数を記載し、下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点: 0本
4点: 1本以上 5本未満
3点: 5本以上 10本未満
2点: 10本以上 20本未満
1点: 20本以上。
【0166】
[模擬指紋付着]
本発明の成型材料への模擬指紋の付着は、1.模擬指紋液の調製、2.模擬指紋シートの作成、3.模擬指紋液の前記模擬指紋シートからシリコーンゴムへの転写、4.模擬指紋の前記シリコーンゴムから成型材料表面への付着からなる。
1.の模擬指紋液の調製は下記材料を下記比率で秤量後、30分間マグネチックスターラーにて攪拌して得た。
オレイン酸 14質量部
シリカ(数平均粒子径 2μm) 6質量部
イソプロピルアルコール 80質量部
なお、前記シリカの数平均粒子径は前記シリカ粒子を分散媒(イソプロピルアルコール)に固形分濃度3質量%にて混合、超音波にて分散後、導電テープ上に滴下して観察サンプルを調製した以外は前記方法と同様にして求めた。
2.の模擬指紋シートは、前記指紋コーティング液を支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗布されている“ルミラー”(登録商標)、タイプ:U46(東レ株式会社)上にワイヤーバー(♯3)を用いて塗布し、50℃で2分間乾燥して得た。
3.の模擬指紋のシリコーンゴムへの転写は、JIS K6253(1997)に規定するゴム硬度50のシリコーンゴムを#250の耐水ペーパーで研磨した。この際シリコーンゴム表面のJIS B0601(2001)に規定する表面粗さはRa=2μm以上、4μm以下であった。次いで、前記耐水ペーパーで研磨したシリコーンゴムを一晩オレイン酸中に浸し膨潤させた。続いて、前記研磨および親油化処理を施したシリコーンゴムを30KPaで2.にて作成した模擬指紋シートに押し付けた。シリコーンゴムへの模擬指紋液の付着量(g/m
2)は、シリコーンゴムの面積と付着前後の質量差から求めた値を指し、上記手法で行った結果、いずれも0.03g/m
2以上0.07g/m
2以下であった。
4.の模擬指紋の成型材料表面への付着は、3.にて模擬指紋液が転写されたシリコーンゴムを成型材料表面に30KPaで押し付けて成型材料表面に形成された痕跡を模擬指紋とした。
【0167】
なお模擬指紋付着直後とは概ね付着から30分程度のことを指し、経時変化を観測する際には上記の付着操作の後、25℃、無風状態下において10時間静置した材料を対象とする。本実施例・比較例において特に断らない限り上記の条件を示すものとする。
【0168】
[指紋付着前後の正反射光込み、正反射光除去の色差]
成型材料の対象とする面の反対面に黒ビニールテープを貼り付け、前述の模擬指紋の付着前と付着直後の反射色をコニカミノルタ株式会社 分光測色計CM−3600Aを使用して、JIS Z8722(2009)に基づき、正反射光除去の反射色を鏡面反射光トラップを用いた(de:8°)Sb10W10条件で、正反射光込みの反射色を鏡面反射光トラップを用いない(di:8°)Sb10W10条件で、JIS Z8730(2009)に記載のCIE1976(L
*a
*b
*)にて測定した。
【0169】
さらに、この付着前および付着直後の反射色からJIS Z8730(2009)に記載の計算方法により、付着前後の反射色から(ΔE
*ab(di:8°)Sb10W10、ΔE
SCI−1)と、(ΔE
*ab(de:8°)Sb10W10、ΔE
SCE−1)を求めた。次いで測定値を元に以下の式により定義されるパラメーターK
1を算出し、パラメーターK
1が3以下を合格とした。
パラメーターK
1=[(ΔE
SCI−1)
2+(ΔE
SCE−1)
2]
1/2。
【0170】
[指紋付着前後の正反射光込み、正反射光除去の色差の時間変化]
前記指紋付着前後の正反射光込み、正反射光除去の色差と同様に黒ビニールテープを貼り付け、前述の模擬指紋を付着させた成型材料を25℃、無風状態下において10時間静置した。次いで、前記指紋付着前後の正反射光込み、正反射光除去の色差と同様にして10時間後の反射色を測定した。
【0171】
さらに、付着前および10時間後の反射色からJIS Z8730(2009)に記載の計算方法により、付着前後の反射色から(ΔE
*ab(di:8°)Sb10W10、ΔE
SCI−2)と、(ΔE
*ab(de:8°)Sb10W10、ΔE
SCE−2)を求めた。次いで測定値を元に以下の式により定義されるパラメーターK
2を算出し、パラメーターK
1との差が1以下を合格とした。
パラメーターK
2=[(ΔE
SCI−2)
2+(ΔE
SCE−2)
2]
1/2。
【0172】
[模擬指紋の付着量]
模擬指紋の成型材料表面への付着量は、波長分散型蛍光X線装置(理学電機 走査型蛍光X線分析装置 ZSX−PrimusII)を使用し、模擬指紋液に含まれるケイ素のKα線強度を測定することにより測定した。具体的には、まずPETフィルム上に模擬指紋液を一定量塗布したサンプルについて前記装置にてケイ素のKα線強度の測定を行うことにより、模擬指紋付着量−ケイ素Kα線強度の検量線を作成した。次いで前記方法にて付着させた模擬指紋のケイ素のKα線強度を測定し、前記検量線から付着量を算出した。この結果から得られた指紋の付着量が0.05g/m
2以下を合格とした。
【0173】
[ピーク数の測定]
成型材料を任意の場所で切り出した後、原子間力顕微鏡(SII社 SPI3800)を用いて、観察モード=DFMモード、スキャナー=FS−20A、カンチレバー=DF−3、観察視野=5×5μm
2、分解能1,024×512pixelsにて表面形態観察を行い観察像を得た。次いで2乗平均粗さの100%をピーク閾値にするため、「Peak Thrsh(%rms)」を100%に設定して解析を行い、ピーク数を求めた。
【0174】
[耐指紋性(指紋付着性)]
耐指紋性(指紋付着性)は、成型材料の評価する面を上にして黒画用紙上に置き、指紋を押し付ける指(人差し指)と親指を3回こすってから、前記層の表面にゆっくりと押し付け、付着した指紋の視認性を10点満点で評価した。評価基準は下記のようになっている。
10点: 指紋が視認されない、もしくは未付着部との差がわからない。
7点 : 指紋がほとんど視認できない、もしくは指紋だとは認識されない。
5点 : 指紋が僅かに視認されるが、ほとんど気にならない
3点 : 指紋が視認される
1点 : 指紋が明確に視認され、非常に気になる。
上記評価を10人の対象者について行い、その平均値を求めた。小数点以下については四捨五入して取り扱った。
【0175】
[耐指紋性の経時変化]
前記耐指紋性の評価と同様に指紋を転写した後に25℃、無風状態下で10時間静置した指紋の視認性を10点満点で評価した。評価基準は下記のようになっている。
10点: 指紋が視認されない、もしくは未付着部との差がわからない。
7点 : 指紋がほとんど視認できない、もしくは指紋だとは認識されない。
5点 : 指紋が僅かに視認されるが、ほとんど気にならない
3点 : 指紋が視認される
1点 : 指紋が明確に視認され、非常に気になる。
上記評価を10人の対象者について行い、その平均値を求めた。小数点以下については四捨五入して取り扱った。
【0176】
[油滴径の測定]
前述の模擬指紋付着と同様の方法で成型材料表面に付着させた模擬指紋を対象に、所定の時間、温度条件にてこの成型材料を保管した後に、その油滴の表面投影像を、微分干渉顕微鏡を用いて撮影し、得られた画像に対して画像処理ソフトを用いて油滴径d
pを求め、この結果を基に面積基準頻度分布、およびその累積頻度の推移を求めた。
【0177】
油滴径d
pの具体的な測定手順を以下に記す。
まず模擬指紋を付着させた防指紋成型材料の表面を微分干渉顕微鏡により100倍の倍率で画像を撮影した。続いて画像処理ソフトEasyAccess Ver6.7.1.23 にて画像をグレースケールに変換し、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整、さらに油滴の境界が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。次いで画像解析ソフトImageJ 1.45sを用いて前述の境界を境に画素の2値化を行い、個々の油滴のなす面積を算出し、そこから該当領域の面積を円形近似したときの直径として油滴径を求めた。
【0178】
[面積基準頻度分布]
面積基準頻度分布の算出では、まず前述の処理により得られた油滴径d
pをもとにそのヒストグラムを作成した。この時油滴径は5μm毎に区分し、これに基づいてMicrosoft Excel 2003のヒストグラム機能を用いて層別をおこなった。次いで得られたヒストグラムに対し表面投影像の面積による重み付けをするため、ヒストグラムの各層別の代表面積を各基数の中心値を代表径とした円と仮定して求め、これに各層別の頻度を乗じ、再度総面積で割ることにより、面積基準頻度分布を求めた。さらに前記の面積基準頻度分布について、縦軸を頻度、横軸を油滴径としてその累積頻度をグラフ化し、累積頻度50%における油滴径の値からメジアン径D
Pを求めた。具体的には、累積頻度50%となる点を挟む2つの層をヒストグラムから特定し、該当層の油滴径の中心値と累積頻度とで特定される2座標間を直線で結び、この直線上で累積頻度50%となる点の油滴径としてメジアン径D
Pを算出した。
【0179】
[面積基準頻度分布の経時変化]
前述の模擬指紋付着と同様の方法で模擬指紋を成型材料表面に付着させた後、この成型材料を25℃、無風条件下で30分と10時間静置した。次いで前述の油滴径の測定により30分後の油滴径と10時間後の油滴径を測定した。さらにそこから前記面積基準頻度分布に記載の解析により30分後のメジアン径D
P1および10時間後のメジアン径D
P2を算出した。
【0180】
表1に塗料組成物の組成を、表2、3に得られた成型材料の評価結果をまとめた。評価項目において1項目でも合格とならないものについて、課題未達成と判断した。
【0181】
表3に示すように本発明の実施例は、光沢性と耐指紋性のいずれにおいても合格しており、本発明が解決しようとする課題を達成している。
【0182】
【表1】
【0183】
【表2】
【0184】
【表3】