特許第6221545号(P6221545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221545
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ジェットエンジンのための導電構造
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20171023BHJP
   F02K 3/06 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   F02C7/00 C
   F02C7/00 F
   F02C7/00 D
   F02C7/00 E
   F02K3/06
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-192712(P2013-192712)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-59460(P2015-59460A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大淵 健郎
(72)【発明者】
【氏名】八木 広幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 洋之
(72)【発明者】
【氏名】盛田 英夫
(72)【発明者】
【氏名】稲田 貴臣
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−154320(JP,A)
【文献】 特表2012−527375(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0003100(US,A1)
【文献】 米国特許第03989984(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02366871(EP,A1)
【文献】 米国特許第05314309(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/00−04
F01D 25/00
F02C 7/00
F02K 3/04−06
F04D 29/54
B64D 45/02
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボファンエンジンのバイパスダクト中の出口案内翼のベーン本体を迂回して外部の支持構造に導電するための導電構造であって、
前記ベーン本体の前縁を覆う金属よりなるシースと、
前記シースの一端に対してオーバーラップを有するべく寸法づけられた接点部と、前記支持構造に締結するボルトが挿入可能なワッシャ部と、を備えた前記金属よりなる導電パッドと、を備え、
前記シースの前記一端と前記接点部とは、溶接、スポット溶接、ろう付け、導電ペーストによる接着、圧接よりなる群より選択された一以上の結合により接続されている、導電構造。
【請求項2】
請求項1の導電構造であって、前記金属はチタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、およびステンレス鋼よりなる群より選択された何れか一の金属である、導電構造。
【請求項3】
請求項1または2の導電構造であって、前記オーバーラップは、1mm以上の幅であって10mm以上の長さを有する、導電構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項の導電構造であって、
前記シースと前記ベーン本体との間に介在し、前記導電パッドに電気的に接続された導電ワイヤをさらに備えた、導電構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機が落雷を受けたときにその電流を安全に放電するための導電構造に関し、特にターボファンエンジンにおける出口案内翼を通じて低抵抗で導電するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機が落雷を受けたときには、機体を通してその電流を流し、放電索やその他の手段を通じて空気中に放電することにより、電荷が機体から除去される。局所的に抵抗の大きな部位があれば、機体を通過する電流はそこをバイパスしてスパークを発生させる。このスパークは、機体の各所に損傷を与え、あるいは可燃物を発火させる虞がある。それゆえ落雷による電流が流れうる各経路において、電気抵抗を十分に低減せしめる工夫が必要である。関連する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
ターボファンエンジンは、コアとなるエンジンの周囲にバイパスダクトを有する形式のジェットエンジンである。エンジンが発生するエネルギの一部を利用してファンが駆動され、ファンが発生する空気流の一部はバイパスダクトを介して直接に後方に噴出し、これが推力として利用される。バイパスダクト中には、空気流を整流するため複数のベーンを備えた出口案内翼が設けられるが、出口案内翼は、バイパスダクトを囲むファンケースとコア部とを連結して支持する機能をも担うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012−527375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファンケースとコア部とを専ら出口案内翼が連結する場合には、出口案内翼はファンケースとコア部との間における主要な導電経路である。従来は出口案内翼はアルミニウム合金のごとき良導体よりなるものであったので、落雷対策のためにさほどの注意は必要なかった。近年、導電性においてこれより劣る炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の適用が検討されているが、各ベーンは十分な断面積があるために比較的に低抵抗であり、また複数のベーンが導電経路として作用するので、その電気抵抗が問題になることはないと考えられてきた。ところが本発明者らによる検討によれば、CFRPよりなる出口案内翼を介するときには、ファンケースとコア部との間の電気抵抗は数オームの程度に及ぶことが判明した。これはスパークが発生する虞を疑うべき電気抵抗値である。また落雷の際にはファンケースとコア部との間を瞬間的に100kA以上の電流が流れうる。数オームの程度の電気抵抗の下では、発生するジュール熱は無視しえず、かかるジュール熱は、CFRPのマトリックス樹脂を劣化させる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みて為されたものであって、その一局面によれば、ターボファンエンジンのバイパスダクト中の出口案内翼のベーン本体を迂回して外部の支持構造に導電するための導電構造が提供される。かかる導電構造は、前記ベーン本体の前縁を覆う金属よりなるシースと、前記シースの一端に対してオーバーラップを有するべく寸法づけられた接点部と、前記支持構造に締結するボルトが挿入可能なワッシャ部と、を備えた前記金属よりなる導電パッドと、を備え、前記シースの前記一端と前記接点部とは、溶接、スポット溶接、ろう付け、導電ペーストによる接着、圧接よりなる群より選択された一以上の結合により接続されている。
【0007】
好ましくは、前記金属はチタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、およびステンレス鋼よりなる群より選択された何れか一の金属である。また好ましくは、前記オーバーラップは、1mm以上の幅であって10mm以上の長さを有する。さらに好ましくは、前記導電構造は、前記シースと前記ベーン本体との間に介在し、前記導電パッドに電気的に接続された導電ワイヤをさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
ファンケースとコア部との間において、ベーン本体を迂回して電流を流すことができる低抵抗の導電経路が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ターボファンエンジンの模式的な縦断面図である。
図2図2は、一実施形態による出口案内翼の斜視図である。
図3図3は、ベーンと、ベーンを支持する構造との関係を特に示す出口案内翼の部分断面図である。
図4図4は、特に導電パッドを詳細に示すベーンおよびベーンを支持する構造の斜視図である。
図5図5は、導電パッドの斜視図および立面図である。
図6図6は、ベーン本体とシースとの関係を特に示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の幾つかの実施形態を添付の図面を参照して以下に説明する。図面は必ずしも正確な縮尺により示されておらず、従って相互の寸法関係は図示されたものに限られないことに、特に注意を要する。
【0011】
図1を参照するに、ターボファンエンジン1は、一例として、その中心にファン3を備え、その周囲を囲むナセル5の内壁とコア部7との間にバイパスダクトが確保される。ファン3が生ずる空気流の一部aは、低圧コンプレッサ9内に流入してエンジンの燃焼に利用されるが、他の一部bはバイパスダクトに流入する。バイパスダクトを通過する空気流の一部bは、複数のベーン11よりなる出口案内翼により整流され、後方に噴出する。
【0012】
図2を参照するに、各ベーン11は、整流のためのエアフォイル形状を有する径方向に延びた板状構造体である。各ベーン11の本体は、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)よりなる。その外端は支持構造13により、また内端も類似の支持構造15により、それぞれ支持され、以ってナセル5およびコア部7に対して固定される。
【0013】
支持構造13に隣接して、その縁がベーン11の面に接するように、アウタライナ17が配置される。同様に、支持構造15に隣接して、その縁がベーン11の面に接するように、インナライナ19が配置される。またベーン11とライナ17,19との間には、それぞれ隙間を封ずるためのシール21が介在する。ライナ17,19は、それぞれCFRPよりなるが、アルミニウム合金等の他の素材よりなるものであってもよい。
【0014】
ベーン11とライナ17,19よりなる組合せが、相互に接して周方向に配列されることにより、環状の構造を構成する。円筒状に配列された複数のアウタライナ17はナセル5の内壁の一部を成し、同様に円筒状に配列された複数のインナライナ19はコア部の外壁の一部を成し、アウタライナ17とインナライナ19とでバイパスダクトを囲む。
【0015】
あるいはライナに代わり、アルミニウム合金等よりなるプラットフォームが採用できる。通常、プラットフォームは直接にベーン11に密着して、そのフランジ部分がバイパスダクトを囲む。
【0016】
主に図3を参照するに、ベーン11の内端11eは支持を確実にするべく外方に膨出しており、かかる内端11eが支持構造15により挟まれる。図4を参照するに、支持構造15および内端11eを貫通するようにボルト孔が設けられており、これにボルト41が挿入されて締結され、以って内端11eと支持構造15とが互いに固定される。支持構造15は、さらに他の複数のボルト孔23を有し、これによりコア部7に対して固定される。外端に関しても同様な構造が存し、以ってナセル5に対して固定される。
【0017】
ベーン11の本体の前縁は、適宜の金属よりなるシース31により覆われる。かかるシース31は、砂塵や埃を含む空気流が摩擦することによるベーン11のエロージョンを防止する。シース31の素材は耐エロージョン性および加工性の点から適宜に選択されるが、例えばチタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、およびステンレス鋼を素材として例示することができる。好ましくはシース31は、図6(a)に示されるごとくベーン11の本体の前縁に隙間無く密着せしめる。隙間無く密着する形状は、通常の塑性加工によって実現することができるが、あるいは超塑性加工を利用してもよい。幾つかのチタン合金は、超塑性加工を利用するに適している。また可能ならば鋳造、機械加工等の他の加工方法によってもよい。
【0018】
図4に戻るに、シース31とボルト41との間を連絡するように、導電パッド33が設けられる。導電パッド33は適宜の金属よりなり、好ましくはシース31と同一の素材を適用する。ファン3が吸引する空気は相当程度の水蒸気を含んでいるので、かかる部位は腐食が起こるに十分な湿潤環境に置かれる。シース31と導電パッド33とに同一の素材を適用すれば、異種金属接触腐食を防止することができる。
【0019】
導電パッド33は、図5(a)に示すように、リード部35と、その一端において上方に延びた接点部37と、他端において下方に延びたワッシャ部39とを備える。接点部37は、シース31との接続に利用され、ワッシャ部39はボルト41との接続に利用される。
【0020】
接点部37は、シース31の一端に対して適宜のオーバーラップを有するべく寸法づけられている。図5(b)を参照するに、十分な接触面積を確保するべく、例えばオーバーラップの幅L1は1mm以上であり、長さL2は10mm以上である。電気抵抗を減ずる観点からは、幅L1、長さL2は大きいほど有利だが、共に構造的要因から上限が制約される。例えば、接点部37の上端がバイパスダクト内に突出すれば空気流を乱す要因になりかねないので、幅L1は上端がインナライナ19に達しない程度に制約される。またオーバーラップがシース31の幅を超えることはないので、長さL2もシース31の幅により制約される。
【0021】
シース31の一端と接点部37とは、スポット通電によるスポット溶接により結合してもよい。あるいはスポット溶接に代えて、又はこれに加えて、溶接、ろう付け、導電ペーストによる接着、圧接を施してもよい。これらはシース31と接点部37との間の接触抵抗を下げ、また結合を確実にする点で、有利である。
【0022】
ワッシャ部39は、ボルトが挿入可能な穴を備え、これにボルト41が挿入される。ボルト41がワッシャ部39を貫いて支持構造15に締結されることにより、導電パッド33と支持構造15との電気的接続を確立する。あるいは、ボルト41に代えて、他のボルト、例えばボルト孔23に締結されるボルトと接続されてもよい。あるいは、ボルトによる締結に代わり、又はこれに加えて、ろう付けや溶接のごとき接続を採用してもよい。ただし、点検、整備、補修のために後に分解することがあることを考慮すれば、締結による接続はより合理的である。
【0023】
以上に説明した構造により、導電パッド33と支持構造15とを介してシース31がコア部と電気的に接続される。各接点において十分に低い接触抵抗が期待できるので、かかる導電経路における電気抵抗も十分に低いことが期待できる。
【0024】
同様な導電構造がベーン11の外端にも存し、シース31とファンケースとを電気的に接続している。以ってファンケースとコア部との間は、シース31と導電パッド33とを介し、CFRPよりなるベーン本体を迂回した経路により、低抵抗で電気的に接続される。またかかる導電構造は、複数のベーン11の全てに適用することができる。
【0025】
上述の実施形態によれば、ファンケースとコア部との間の電気抵抗は数十〜数百ミリオームの程度に低減される。これはスパークが発生する虞を低減するに十分な低抵抗である。また電流がベーン11を経由する場合に比べて電気抵抗が十分の一以下であるので、電流は専らベーン本体を迂回して流れると考えてよい。これはCFRPのマトリックス樹脂の劣化を防止するに有利である。
【0026】
また上述の実施形態によれば、インナライナ、アウタライナに電流が流れることを防止している。これらがCFRPよりなる場合でも、その劣化を防止することができる。またインナライナ、アウタライナを導電経路として利用する必要がないので、これらをベーンから絶縁することができる。例えばこれらがアルミニウム合金等よりなる場合には、アノダイズ等の絶縁処理を施すことができる。他の部材にチタン等の異種金属が適用されていても、異種金属接触腐食を起こすことがない。これはライナに代えてプラットフォーム構造が採用される場合でも同様である。
【0027】
上述の実施形態は、種々に変形が可能である。例えば図6(b)に示すごとく、補助的な導電ワイヤ37’を利用することができる。導電ワイヤ37’は、例えばベーン本体とシース31との間の隙間11aに通され、溶接等により接点部37と接続される。あるいはボルト41やその他のボルトへ直接に接続されていてもよい。さらにあるいは、導電ワイヤ37’は、ベーン本体の内部に埋め込まれていてもよい。かかる導電ワイヤ37’は、シース31に代えて、又はこれに加えて、低抵抗の導電経路として作用する。
【0028】
好適な実施形態により本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記開示内容に基づき、当該技術分野の通常の技術を有する者が、実施形態の修正ないし変形により本発明を実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
ファンケースとコア部との間において、ベーン本体を迂回して電流を流すことができる低抵抗の導電経路が確保することができる導電構造が提供される。
【符号の説明】
【0030】
1 ターボファンエンジン
3 ファン
5 ナセル
7 コア部
11 ベーン
11a 隙間
13 ベーンを支持するための構造
15 ベーンを支持するための構造
17 アウタライナ
19 インナライナ
21 シール
23 ボルト孔
31 シース
33 導電パッド
35 リード部
37 接点部
39 ワッシャ部
41 ボルト
L1 オーバーラップの幅
L2 オーバーラップの長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6