(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221547
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】アンダーカバーの取付構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
B62D25/20 N
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-192977(P2013-192977)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-58779(P2015-58779A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】大石 浩二
(72)【発明者】
【氏名】河野 謙
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−219042(JP,A)
【文献】
特開2009−286259(JP,A)
【文献】
特開2010−095045(JP,A)
【文献】
特開2007−283912(JP,A)
【文献】
特開2007−283810(JP,A)
【文献】
実開昭59−135282(JP,U)
【文献】
特開2001−018852(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0139786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下側を覆う平面状の基本面部を有するとともに、後縁部に後部の車体との取付部を有し、該取付部には、前記基本面部の車両前後方向及び車両幅方向に延在する上下方向足部が設けられているアンダーカバーの取付構造において、
前記基本面部及び前記上下方向足部には、前記上下方向足部の車両前後方向面の部分を車両上下方向に切り取った貫通孔が設けられ、前記貫通孔は、前記基本面部と前記上下方向足部との角部を切り取るように、車両前方側の下縁部が前記基本面部にかかる位置から前記上下方向足部の傾斜面に跨って設けられていることを特徴とするアンダーカバーの取付構造。
【請求項2】
前記貫通孔は、車両下方視で車両後方へ向かって広がっており、前記上下方向足部の車両前後方向面の部分の切り取り箇所は、車両下方視で前記貫通孔の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカバーの取付構造。
【請求項3】
前記上下方向足部の車両前後方向面の部分の切り取りは、前記基本面部から前記車体との取付部までとし、前記貫通孔の範囲は、前記車体との取付部まで設定されていることを特徴とする請求項2に記載のアンダーカバーの取付構造。
【請求項4】
前記車体との取付部の前記基本面部には、車両前後方向に延在するビードが前記貫通孔に隣接して設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のアンダーカバーの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の下側を覆うアンダーカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の床下である車体下部は、フラットに設計されており、これによって、車両走行中に導入される床下の空気の流れを速くし、車両として空気抵抗の低減を図っている。そこで、従来から、車両の前方側に位置する車体下部には、
図5〜
図7に示すように、平板状に形成したアンダーカバー51がエンジンルームの下側を覆うように配置されており、このアンダーカバー51によって、車体下部に導入された空気Aの乱れを少なくして空気Aの流れを整え、車両走行中の空気抵抗を低減させている(例えば、特許文献1参照)。なお、
図5〜
図7において、矢印F方向は車両前方を示している。
【0003】
そのため、アンダーカバー51の前端部51aは、空気Aの乱れを低減させるべく、フロントバンパー52と連続して形成され、フロントバンパー52の後端部52aにボルト締めで結合されている。また、アンダーカバー51の後縁部51bは、ボルト53及びナット54によって、後部の車体骨格であるフロントサスペンションフレーム55に安定的に取付けられている。これに伴い、アンダーカバー51の後縁部51bは、フロントサスペンションフレーム55との取付部を複数個有しており、これら取付部には、平面状の基本面部56において車両前後方向及び車両幅方向に延在する上下方向足部57が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3853109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のアンダーカバー51の取付構造では、基本面部56の下面を流れる車速に対応した速い流れの空気A1と、図示しないラジエータ、コンデンサ、排気系統などに接しながらエンジンルームの下側に集められ、下面を流れる空気A1の流量よりも小さくて流れが遅く、各部品により流れが乱れ、かつ暖められている基本面部56の上面を流れる空気A2が合流することになるので、2つの空気A1,A2の速度差による流れの乱れを生じ、車両走行中の空気抵抗を効果的に低減させることができないという問題を有していた。
【0006】
また、従来の取付構造では、
図7に示すように、基本面部56の下面に沿った車両前方からの速く整った流れの空気A1が基本面部56及び上下方向足部57の前後間の角部Bにおける湾曲に引きずられて車両上方へ回り込んだり、あるいは、車両下方視でU字形状の上下方向足部57により基本面部56の上面を流れる空気A2の流れが妨害されたり、フロントサスペンションフレーム55との取付部の後方に生じた負圧領域Cの負圧により基本面部56の下面を流れる空気A1が引かれるなどして、基本面部56の下面の空気A1の流れが乱れてしまい、車両後方への空気A1の流れの整流化が損なわれるおそれがあった。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両前方から導入される空気をアンダーカバーの上下面に沿って円滑に流し、後部の車体との取付部に設けられた上下方向足部で空気流れの整流が妨げられず車両後方へ流し、車両走行中の空気抵抗を低減させることが可能なアンダーカバーの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車体の下側を覆う平面状の基本面部を有するとともに、後縁部に後部の車体との取付部を有し、該取付部には、前記基本面部の車両前後方向及び車両幅方向に延在する上下方向足部が設けられているアンダーカバーの取付構造において、
前記基本面部及び前記上下方向足部には、前記上下方向足部の車両前後方向面の部分
を車両上下方向に切り取った貫通孔が設けられ、前記貫通孔は、前記基本面部と前記上下方向足部との角部を切り取るように、車両前方側の下縁部が前記基本面部にかかる位置から前記上下方向足部の傾斜面に跨って設けられている。
【0009】
また、本発明において、前記
貫通孔は、車両下方視で車両後方へ向かって広が
っており、前記上下方向足部の車両前後方向面の部分の切り取り箇所は、車両下方視で前記貫通孔の範囲内に設定されている。
【0010】
さらに、本発明において、前記上下方向足部の車両前後方向面の部分の切り取りは、前記基本面部から前記車体との取付部までとし、前記貫通孔の範囲は、前記車体との取付部まで設定されている。
【0011】
そして、本発明において、前記車体との取付部の前記基本面部には、車両前後方向に延在するビードが前記貫通孔に隣接して設けられている。
【発明の効果】
【0012】
上述の如く、本発明に係るアンダーカバーの取付構造は、車体の下側を覆う平面状の基本面部を有するとともに、後縁部に後部の車体との取付部を有し、該取付部には、前記基本面部の車両前後方向及び車両幅方向に延在する上下方向足部が設けられており、
前記基本面部及び前記上下方向足部には、前記上下方向足部の車両前後方向面の部分
を車両上下方向に切り取った貫通孔が設けられ、前記貫通孔は、前記基本面部と前記上下方向足部との角部を切り取るように、車両前方側の下縁部が前記基本面部にかかる位置から前記上下方向足部の傾斜面に跨って設けられているので、車両前方から導入される車両走行中の空気をアンダーカバーの基本面部の上下面に沿って円滑に流すことができるとともに、後縁部に設けられる上下方向足部が剛性を確保すべく車両下方視でU字形状に形成されていたとしても、上下方向足部により空気流れの整流が妨げられることなく、車両前方から導入された空気を車両後方へ安定した整流状態で流すことができる。したがって、本発明のアンダーカバーの取付構造によれば、車両走行中に車両前方から導入されて車両後方へ流れる空気の抵抗を低減させることが可能となり、安定した空力特性を得ることができるとともに、空気抵抗の低減によって燃費向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明において、前記
貫通孔は、車両下方視で車両後方へ向かって広が
っており、前記上下方向足部の車両前後方向面の部分の切り取り箇所は、車両下方視で前記貫通孔の範囲内に設定されているので、基本面部の下面に沿って車両前方から整って流れてくる速度の速い空気が、従来の取付構造のように、基本面部及び上下方向足部の前後間の角部に引きずられて車両上方へ回り込んだりすることは起こらず、貫通孔の下縁部より迅速に剥離して大きく乱れることなく整流を保ったまま車両後方へ流すことができる。速度差による空気の流れの乱れを低減させるためには、アンダーカバーの基本面部の上下面を流れる速度の異なる2つの空気の流れをいきなり合流させるのではなく、徐々に合流させて大きな変流を起こさせないことが重要である。したがって、本発明の取付構造のように、車両後方へ向かって広がる貫通孔が設けられていると、アンダーカバーの基本面部の上下面を流れる速度の異なる2つの空気が徐々に合流され、急に大きな乱れが発生することが無くなり、車両後方への空気の流れを迅速に整流に戻すことができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記上下方向足部の車両前後方向面の部分の切り取りは、前記基本面部から前記車体との取付部までとし、前記貫通孔の範囲は、前記車体との取付部まで設定されているので、車体との取付部の剛性を確保しつつ、アンダーカバーの基本面部の上面を流れる空気の流量が大きい場合でも、当該基本面部の上下面に沿って流れる空気を、整流を保った状態で車両後方へ流すことができる。
【0015】
そして、本発明において、前記車体との取付部の前記基本面部には、車両前後方向に延在するビードが前記貫通孔に隣接して設けられているので、基本面部に貫通孔が存在することにより車体との取付部の剛性が低下するという懸念は無くなり、車体との取付部の剛性を確保することができ、車両走行中にアンダーカバーの取付部が変形して空気の流れを乱すことを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るアンダーカバーの取付構造が適用される車両の車体下部を車両下方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るアンダーカバーの後縁部の一部をフロントサスペンションフレームに取付けた状態を車両下方から見た拡大斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアンダーカバーの後縁部の一部をフロントサスペンションフレームに取付けた状態を車両下方から見た拡大平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアンダーカバーの後縁部の一部とフロントサスペンションフレームとの取付部付近を通る空気の流れを説明する車両側方から見た断面図である。
【
図5】従来のアンダーカバーの取付構造が適用される車両の車体下部を車両下方から見た平面図である。
【
図6】従来のアンダーカバーの後縁部の一部をフロントサスペンションフレームに取付けた状態を車両下方から見た拡大平面図である。
【
図7】従来のアンダーカバーの後縁部の一部とフロントサスペンションフレームとの取付部付近を通る空気の流れを説明する車両側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図4は本発明の実施形態に係るアンダーカバーの取付構造を示すものである。なお、
図1〜
図4において、矢印F方向は車両前方を示している。
【0018】
図1〜
図4に示すように、本発明の実施形態に係るアンダーカバーの取付構造が適用される車両の前方側に位置する車体下部1には、主として、車両幅方向に沿って延在して設けられる樹脂製のフロントバンパー2と、該フロントバンパー2の下部の車両後方に設けられ、車体の下側であるエンジンルームEの下部を覆うアンダーカバー3と、該アンダーカバー3の車両後方側に設けれ、車両幅方向に沿って延在するフロントサスペンションフレーム(後部の車体)4などを備えている。このフロントサスペンションフレーム4は、車両幅方向に間隔を空けて配置される左右一対のサスペンションロアアーム5の間に懸架されており、車両走行時において、前輪タイヤなどからの荷重及び振動が当該ロアアーム5を経由して車体下部1側に入力されるようになっている。なお、エンジンルームEの下部には、アンダーカバー3の上方位置で車両後方へ向かって延在し、エンジン排気系システム(マニホールド、触媒、ターボ等)を構成するエキゾーストパイプ(図示せず)が設けられている。
【0019】
本実施形態の取付構造では、
図1に示すように、車両前方からの空気Aの乱れを低減させるために連続して形成されるフロントバンパー2の下部側の後端部2aとアンダーカバー3の前端部3aとが車両下方視で重合して配置され、その重合関係は、フロントバンパー2の後端部2aが車両上側に位置し、アンダーカバー3の前端部3aが車両下側に位置している。フロントバンパー2の後端部2aは、車両後方へ向かって延びる平坦面形状に形成されており、平板状のアンダーカバー3の前端部3aとの重合部分の車両右側領域には、車両上方へ突出する複数個(本実施形態では2個)のダクト用凸部6が所定の間隔を空けながら車両幅方向に設けられ、これらダクト用凸部6によって車両前方視でダクト開口部7が形成されている。このため、車両走行時に車両前方側から流れてくる空気Aの一部は、フロントバンパー2の下部よりダクト開口部7を通り、アンダーカバー3の上面に沿って車両後方側へ流れることになり、車両後方側に位置する排気系統のエキゾーストパイプ(図示せず)などを冷却するようになっている。
しかも、このような重合部分において、ダクト開口部7の左右両側位置では、フロントバンパー2の後端部2aとアンダーカバー3の前端部3aとがボルト締めで結合されている。
【0020】
本実施形態のアンダーカバー3は、
図1〜
図4に示すように、車体下部1に導入された空気Aの乱れを少なくして空気Aの流れを整えて速く送り、車両走行中の空気抵抗を低減させるために設けられるものであり、樹脂製素材、硬質の繊維素材、カーボン素材などを用いて、全体がほぼ平板状に形成されている。そのため、アンダーカバー3は、エンジンルームEの下部を覆うことが可能な大きさに形成され、下面を車速に対応した速い流れの空気A1が流れる平面状の基本面部31と、車両幅方向に所定の間隔を空けながら後縁部3bの複数箇所(本実施形態では4つ)に設けられるフロントサスペンションフレーム4との取付部Dを有している。
【0021】
これら取付部Dには、基本面部31の車両前後方向及び車両幅方向に延在する上下方向足部32が設けられており、上下方向足部32の車両前後方向面の部分32aが、車両上下方向に切り取られている。すなわち、上下方向足部32は、基本面部31から車両上方のフロントサスペンションフレーム4へ向かって突出する凸部であって、下部及び後部が開口する車両下方視でU字形状に形成されており、上下方向足部32の車両前後方向面の部分32aの切り取りは、基本面部31からフロントサスペンションフレーム4との取付部Dまでとして、行われている。
また、フロントサスペンションフレーム4との取付部Dを設けたアンダーカバー3の後縁部3bは、基本面部31及び上下方向足部32によって車両側方視で断面略クランク形状に形成され、基本面部31と上下方向足部32の上面との間に位置する上下方向足部32の前方側は、車両後方へ向かって起立する傾斜面となっている。
【0022】
フロントサスペンションフレーム4との取付部Dであって、上下方向足部32の上面は、
図4に示すように、フロントサスペンションフレーム4の下面に重ね合わせることが可能なように平坦面形状に形成されており、その上面中央箇所には、アンダーカバー3の後縁部3bをフロントサスペンションフレーム4に固定するための締付ボルト8の軸部を挿入する挿入孔33が穿設されている。一方、フロントサスペンションフレーム4には、挿入孔33と対応してボルト孔41が穿設されており、そのフレーム上面には、締付ボルト8のねじ部と螺合する溶接ナット9がボルト孔41と対応する位置で固着されている。
【0023】
また、アンダーカバー3の後縁部3bに位置する基本面部31及び上下方向足部32には、
図2〜
図4に示すように、車両下方視で車両前方側が狭く、車両後方側へ向かって広がり、かつ3つの角部が円弧である三角形状の貫通孔34が設けられており、アンダーカバー3の基本面部31の上面を流れる空気A2の一部が貫通孔34を通って車両後方へ流れるように構成されている。しかも、上下方向足部32の車両前後方向面の部分32aの切り取り箇所は、車両下方視で貫通孔34の範囲内に設定されており、貫通孔34の範囲は、フロントサスペンションフレーム4との取付部Dまで設定されている。すなわち、貫通孔34は、基本面部31と上下方向足部32との角部(
図7符号B参照)を切り取るように、車両前方側の下縁部34aが基本面部31にかかる位置から上下方向足部32の傾斜面に跨って設けられている。
このため、アンダーカバー3の基本面部31の下面に沿って車両前方から流れてくる速度の速い空気A1は、従来の取付構造のように、基本面部31及び上下方向足部32の前後間の角部に引きずられて車両上方へ回り込んだりせず、貫通孔34の下縁部34aより剥離し、整流を保ったまま車両後方へ流れるとともに、アンダーカバー3の基本面部31の上面を流れて貫通孔34から出てくる速度の比較的遅い空気A2と合流し、整流を保ちながら車両後方へ流れるようになっている。
【0024】
さらに、アンダーカバー3の後縁部3b側であって、フロントサスペンションフレーム4との取付部Dの基本面部31には、
図2及び
図3に示すように、車両前後方向に沿って延在する複数本のビード35が貫通孔34に隣接して平行に設けられている。これらビード35は、各貫通孔34を間に挟んで左右両側にそれぞれ配置されており、車両の上向きに突出する凸形状に形成されている。
このようなビード35を設けることにより、フロントサスペンションフレーム4との取付部Dの剛性が確保され、基本面部31に貫通孔34が存在することによるフロントサスペンションフレーム4との取付部Dの剛性低下が抑えられ、車両走行中にアンダーカバー3の後縁部3bに位置するフロントサスペンションフレーム4との取付部Dの変形によって生じる空気A1,A2の流れの乱れが低減されることになる。
【0025】
本発明の実施形態に係るアンダーカバー3の取付構造が適用された車両においては、
図4の矢印で示すように、車両の走行時に車両前方側から車両後方側へ向かって車体下部1を流れる空気Aのうち、空気A1がフロントバンパー2の下面を通ってアンダーカバー3の基本面部31の下面に沿って車速に見合った速い速度で流れ、貫通孔34の下縁部34aより剥離し、整流を保ったまま車両後方へ流れる。また、空気A2がダクト開口部7よりエンジンルームE内に導入され、アンダーカバー3の基本面部31の上面に沿って空気A1よりも遅い速度で流れながら一部が貫通孔34から出て、車両後方へ流れる。その後、アンダーカバー3の基本面部31の上下面を流れる速度の異なる2つの空気A2,A1が徐々に合流され、大きく乱れることがなく、迅速に整流に戻しながら車両後方へ向かって流れることになる。
【0026】
本発明の実施形態に係るアンダーカバー3の取付構造は、車体下部1において、エンジンルームEの下側を覆う平面状の基本面部31を有するとともに、後縁部3bの複数個所にフロントサスペンションフレーム4との取付部Dを有し、これら取付部Dには、基本面部31の車両前後方向及び車両幅方向に延在する上下方向足部32が設けられ、上下方向足部32の車両前後方向面の部分32aが、車両上下方向に切り取られているとともに、基本面部31及び上下方向足部32には、車両下方視で車両後方へ向かって広がる貫通孔34が設けられ、上下方向足部32の車両前後方向面の部分32aの切り取り箇所は、車両下方視で貫通孔34の範囲内に設定されているので、車両前方から導入される車両走行中の空気A1,A2をアンダーカバー3の基本面部31の上下面に沿って円滑に流すことができ、後縁部3bに車両下方視でU字形状の上下方向足部32が設けられていたとしても、上下方向足部32により空気流れの整流が妨げられることなく、車両前方から導入された2つの空気A1,A2を徐々に合流させながら車両後方へ安定した整流状態で流すことができる。したがって、本実施形態のアンダーカバー3の取付構造によれば、車両走行中に車両前方から導入されてアンダーカバー3の基本面部31の上下面に沿って車両後方へ流れる空気A1,A2の抵抗を確実に低減させることができる。しかも、基本面部31の下面に沿って車両前方から整って流れてくる速度の速い空気A1が、基本面部31及び上下方向足部32の前後間の角部に引きずられて車両上方へ回り込んだりせず、貫通孔34の下縁部34aより迅速に剥離して大きく乱れることなく整流を保ったまま車両後方へ流すことができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施の形態におけるビード35は、車両の上向きに突出する凸形状に形成されているが、車両の下向きに突出する凸形状に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 車体下部
2 フロントバンパー
2a 後端部
3 アンダーカバー
3a 前端部
3b 後縁部
4 フロントサスペンションフレーム(後部の車体)
6 ダクト用凸部
7 ダクト開口部
8 締付ボルト
9 溶接ナット
31 基本面部
32 上下方向足部
32a 上下方向足部の車両前後方向面の部分
33 挿通孔
34 貫通孔
34a 下縁部
35 ビード
41 ボルト孔
A,A1,A2 空気
D フロントサスペンションフレームとの取付部
E エンジンルーム