(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221551
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20171023BHJP
F21V 9/08 20060101ALI20171023BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20171023BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20171023BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20171023BHJP
【FI】
F21S2/00 300
F21V9/08
F21V8/00 200
F21Y101:00 300
F21Y115:10
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-194620(P2013-194620)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-60763(P2015-60763A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 敦子
(72)【発明者】
【氏名】岩井 信之
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−051548(JP,A)
【文献】
特開2011−138124(JP,A)
【文献】
特開昭61−075206(JP,A)
【文献】
特開平11−295148(JP,A)
【文献】
特開2001−044548(JP,A)
【文献】
特開2011−164483(JP,A)
【文献】
特開2012−098209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00−19/00
F21V 8/00
G09G 5/00− 5/40
H01L33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長及び該第1波長とは異なる波長である第2波長を設定する波長設定手段と、
光源が発する複色光から前記第1波長の単色光を取り出す第1単色光取り出し手段と、
光源が発する複色光から前記第2波長の単色光を取り出す第2単色光取り出し手段と、
前記第1波長の単色光と前記第2波長の単色光を混色部において混合する混色手段と、
前記混色手段が混合する前記第1波長の単色光及び前記第2波長の単色光の混合比率を調整する混合比率調整手段と、
を有し、
前記混色手段が、前記第1単色光取り出し手段によって取り出された前記第1波長の単色光が、その一端部から入射するように配置された第1光ファイバと、該第1光ファイバの他端部から出射する前記第1波長の単色光を前記混色部において集光させる第1レンズとから成る第1混色手段と、前記第2単色光取り出し手段によって取り出された前記第2波長の単色光が、その一端部から入射するように配置された第2光ファイバと、該第2光ファイバの他端部から出射する前記第2波長の単色光を前記混色部において集光させる第2レンズとから成る第2混色手段とを備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1単色光取り出し手段及び前記第2単色光取り出し手段は、モノクロメータであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
380〜780nmの波長範囲を所定波長で区切り、
前記光源は、少なくとも380nm以上で該所定波長未満の波長範囲内の全ての波長成分を有する第1複色光を発する第1光源と、少なくとも該所定波長以上で780nm以下の波長範囲の全ての波長成分を有する第2複色光を発する第2光源から成り、
前記波長設定手段は、該所定波長未満の第1波長及び該所定波長以上の第2波長を設定し、
前記第1単色光取り出し手段は前記第1複色光から前記第1波長の単色光を取り出し、前記第2単色光取り出し手段は前記第2複色光から前記第2波長の単色光を取り出すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記所定波長は、580nmであることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
380nm又は780nmである第1波長の単色光を発する単色光源と、
380〜780nmの波長範囲のうち前記第1波長以外の波長を少なくとも含む波長範囲内の全ての波長成分を有する複色光を発する第2光源と、
前記第1波長とは異なる波長である第2波長を設定する波長設定手段と、
前記複色光から前記第2波長の単色光を取り出す単色光取り出し手段と、
前記第1波長の単色光及び前記第2波長の単色光の混合比率を調整する混合比率調整手段と、
前記第1波長の単色光と前記第2波長の単色光を混色部において混合する混色手段と、
を有し、
前記混色手段が、前記単色光源が発する前記第1波長の単色光が、その一端部から入射するように配置された第1光ファイバと、該第1光ファイバの他端部から出射する前記第1波長の単色光を前記混色部において集光させる第1レンズとから成る第1混色手段と、前記単色光取り出し手段によって取り出された前記第2波長の単色光が、その一端部から入射するように配置された第2光ファイバと、該第2光ファイバの他端部から出射する前記第2波長の単色光を前記混色部において集光させる第2レンズとから成る第2混色手段とを備えることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置を複数備えたことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光色の異なる複数の光源を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置やディスプレイ、プロジェクタ等に用いられる発光装置では、発光色の異なる複数の光源を組み合わせることで、所望の色の光を得るようにしている(例えば特許文献1)。光の色はR(赤)、G(緑)、B(青)の混合比によって決まる。
【0003】
光の色は、例えば
図1に示すXY色度図を用いて表すことができる。XY色度図は、XY座標空間で色を表したもので、X軸がR(赤)の比率を、Y軸がG(緑)の比率をそれぞれ示している。B(青)の比率は、RとGの比率の和を1から差し引いた値となる。XY色度図上の釣り鐘形状の領域が全ての色を表しており、該領域の境界線(輪郭線)のうち、曲線部分(スペクトル軌跡)は波長380nm〜780nm(紫色〜赤色)の単色光を表し、境界線よりも内側の部分は、単色光の組み合わせである複色光を表わしている(例えば非特許文献1、2)。
【0004】
図1のXY色度図上に示す2つの点(R)と(B)(以下、XY色度図上の点を「色度点」という)が、それぞれ赤色の光源が発する光の色、青色の光源が発する光の色に対応している場合、これら2つの光源を組み合わせて得られる光の色範囲(色域)は、色度点(R)と色度点(B)を結んだ直線となる。各光源の光量の比率(混合比率)を調整することで、その直線上の任意の色の光(混色光)が得られる。
【0005】
さらに色度点(G)で示される光を発する緑色の光源を加えることで、
図2のように、(R)(G)(B)の3つの色度点を結んだ範囲を色域とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-49000号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】株式会社裳華房,"色度図 (Color Diagram)",[online],平成24年12月17日,インターネット<URL:http://www.shokabo.co.jp/sp_opt/spectrum/color3/color-d.htm>
【非特許文献2】ボスインターナショナル株式会社,"液晶用語集",[online],平成24年12月17日,インターネット<URL:http://www.boss-int.com/Develop/sheet/lcdchk02.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に光源として用いられるランプやLED等が発する光は、単色光ではなく、発光スペクトルに一定の広がりを持った複色光である。このような複色光に対応した色度点は、スペクトル軌跡の内側に位置する。それらの色度点に基づく色域は境界線で囲まれた領域よりも狭くなるため、ランプやLED等を光源として用いた発光装置では、XY色度図上において得ることのできない色が存在する。
【0009】
また、スペクトル軌跡付近に色度点が位置するような、発光スペクトル幅の狭い光源を複数用いたとしても、これらの色度点を結んだ領域と、釣り鐘形状の領域を一致させるためには、発色光が異なる多数の光源が必要となり、現実的ではない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、従来の発光装置では得ることができなかった、XY色度図上の境界線付近の色を含む全ての色を得ることを可能とした発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明の発光装置は、
第1波長及び該第1波長とは異なる波長である第2波長を設定する波長設定手段と、
光源が発する複色光から前記第1波長の単色光を取り出す第1単色光取り出し手段と、
光源が発する複色光から前記第2波長の単色光を取り出す第2単色光取り出し手段と、
前記第1波長の単色光
と前記第2波長の単色光を
混色部において混合する混色手段と、
前記混色手段が混合する前記第1波長の単色光及び前記第2波長の単色光の混合比率を調整する混合比率調整手段と、
を有
し、
前記混色手段が、前記第1単色光取り出し手段によって取り出された前記第1波長の単色光が、その一端部から入射するように配置された第1光ファイバと、該第1光ファイバの他端部から出射する前記第1波長の単色光を前記混色部において集光させる第1レンズとから成る第1混色手段と、前記第2単色光取り出し手段によって取り出された前記第2波長の単色光が、その一端部から入射するように配置された第2光ファイバと、該第2光ファイバの他端部から出射する前記第2波長の単色光を前記混色部において集光させる第2レンズとから成る第2混色手段とを備える。
光源は、第1単色光取り出し手段及び第2単色光取り出し手段で共通でもよく、異なる光源でもよい。
【0012】
上記構成の発光装置では、波長設定手段により設定した第1波長及び第2波長の単色光を、第1単色光取り出し手段及び第2単色光取り出し手段が光源の発する複色光よりそれぞれ取り出し、それらを混色手段により混合する。その際、混合比率調整手段により各単色光の混合比率を調整する。
単色光の色度点はXY色度図のスペクトル軌跡上に存在し、波長設定手段で波長を変えると、色度点はスペクトル軌跡上の任意の位置に移動するため、境界線で囲まれた領域にある全ての箇所を、色度点を結んだ領域に含めることができる。
【0013】
前記第1単色光取り出し手段及び第2単色光取り出し手段は、モノクロメータとすることがで
きる。
また、前記混合比率調整手段は、光源への供給電力を調整して光量を増減させる可変電源としてもよいし、第1及び第2単色光を個別に減衰させる減衰器としてもよい。
【0014】
光源には様々なものが存在し、380〜780nmの波長範囲において、比較的短波長側にある波長範囲内の波長成分を主に有する複色光を発する光源もあれば、比較的長波長側にある波長範囲内の波長成分を主に有する複色光を発する光源もある。また、モノクロメータのような単色光取り出し手段や、光ファイバとレンズの組み合わせ等による混色手段は、対象とする波長範囲に応じて個別に設計することが、発光装置の性能向上の観点から望ましい。
【0015】
そこで、本発明の発光装置においては、380〜780nmの波長範囲を所定波長で区切り、
前記光源を、少なくとも380nm以上で該所定波長未満の波長範囲内の全ての波長成分を有する第1複色光を発する第1光源と、少なくとも該所定波長以上で780nm以下の波長範囲の全ての波長成分を有する第2複色光を発する第2光源とで構成し、
前記波長設定手段は、該所定波長未満の第1波長及び該所定波長以上の第2波長を設定し、
前記第1単色光取り出し手段は前記第1複色光から前記第1波長の単色光を取り出し、前記第2単色光取り出し手段は前記第2複色光から前記第2波長の単色光を取り出すようにするとよい。
【0016】
こうすることで、発光装置のうち第1波長に関する部分及び第2波長に関する部分を、それぞれの波長範囲に適した構成とすることができる。
また、所定波長を520nmとすれば、この所定波長の単色光に対応した色度点はスペクトル軌跡のほぼ頂点となるため、所望の色を得る際に、所定波長よりも短い波長の単色光と、所定波長よりも長い波長の単色光のそれぞれの波長及び光量の組み合わせの選択肢が増える。
【0017】
上記発光装置では、第1波長と第2波長をいずれも波長設定手段で設定するようにしているが、一方の波長は固定値としても良い。
【0018】
すなわち、本願発明の別の態様の発光装置は、
380nm又は780nmである第1波長の単色光を発する単色光源と、
380〜780nmの波長範囲のうち前記第1波長以外の波長を少なくとも含む波長範囲内の全ての波長成分を有する複色光を発する第2光源と、
前記第1波長とは異なる波長である第2波長を設定する波長設定手段と、
前記複色光から前記波長設定手段が設定した
前記第2波長の単色光を取り出す単色光取り出し手段と、
前記第1波長の単色光と前記第2波長の単色光を
混色部において混合する混色手段と、
前記混色手段が混色する前記第1波長の単色光及び前記第2波長の単色光の混合比率を調整する混合比率調整手段と、
を有
し、
前記混色手段が、前記単色光源が発する前記第1波長の単色光が、その一端部から入射するように配置された第1光ファイバと、該第1光ファイバの他端部から出射する前記第1波長の単色光を前記混色部において集光させる第1レンズとから成る第1混色手段と、前記単色光取り出し手段によって取り出された前記第2波長の単色光が、その一端部から入射するように配置された第2光ファイバと、該第2光ファイバの他端部から出射する前記第2波長の単色光を前記混色部において集光させる第2レンズとから成る第2混色手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
この場合でも、XY色度図上の境界線で囲まれた領域にある全ての箇所を、色度点を結んだ領域に含めることができる。また、このような構成としたことで、第1波長の単色光の波長を設定する必要がなく、第2波長の単色光についてのみ波長設定手段により波長を設定すれば良いので、発光装置の構成が簡素となり、製造コストも下がる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の発光装置によれば、XY色度図上の境界線で囲まれた領域にある全ての色を得ることができるため、従来の発光装置よりも色域が広がり、表示性能が向上する。また、これまでは再現することが難しかった単色光に近い色も再現できるようになったことで、発光装置の用途も増える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】2つの光源を組み合わせた場合に再現可能な色をXY色度図を用いて説明した図。
【
図2】3つの光源を組み合わせた場合に再現可能な色をXY色度図を用いて説明した図。
【
図4】本発明の発光装置を用いて種々の色を得る動作の第1の例を説明した図。
【
図5】本発明の発光装置を用いて種々の色を得る動作の第2の例を説明した図。
【
図6】本発明の発光装置を用いて種々の色を得る動作の第3の例を説明した図。
【
図7】本発明の発光装置
の別の態様の
概略構成を示す図。
【
図8】本発明の発光装置を用いたディスプレイの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の発光装置の一実施例について添付図面を参照して説明する。
図3は、本発明の発光装置の概略構成図を示す。
【0023】
本実施例の発光装置は、主として、第1波長単色光取り出し部10、第2波長単色光取り出し部20、及び混色部30で構成される。第1波長単色光取り出し部10は光源11から第1波長の単色光(第1単色光)を取り出して混色部30に照射し、第2波長単色光取り出し部20は光源21から第2波長の単色光(第2単色光)を取り出して混色部30に照射する。
【0024】
第1波長単色光取り出し部10は、光源11、スリット12a、ミラー13a、波長分散素子14、ミラー13b、スリット12b、光ファイバ15、レンズ16、
可変電源17及び
駆動手段18などを有する。波長分散素子の例としては、回折格子やプリズム等が挙げられる。
ここでは、波長分散素子14として回折格子を用いることとする。また、ミラー13a、13b、及び後述するミラー23a、23bは使用する波長分散素子の種類や当該素子の配置によっては省略することができる。
【0025】
光源11には、例えばハロゲンランプ、Xeランプ、LED等の白色光源を用いることができる。光源11は可変電源17に接続されており、該可変電源17は光源11に供給する電力を制御することで、光源11の光量を調整する。
【0026】
光源11が発した光は、スリット12aを通過し、ミラー13aで反射された後、回折格子14に入射する。回折格子14は、特定の第1波長の光のみ(第1単色光)をミラー13bに向けて反射する(分光)。該光はさらにミラー13bで反射した後、スリット12bを通過する。
【0027】
回折格子14は回動することでミラー13bに向けて反射する第1単色光の波長を変えることができる。回折格子14には駆動手段18が接続されており、該駆動手段18により回折格子14を
回動させる。駆動手段18は例えばステッピングモーターである。
すなわち、スリット12aからスリット12bの間の各素子がモノクロメータを構成することで、光源11から第1単色光を取り出す。
【0028】
このようにして光源11から取り出した第1単色光を、光ファイバ15の一端より内部に導入する。第1単色光は、光ファイバ15内で全反射を繰り返しながら進み、光ファイバ15の他端よりレンズ16に向けて出射される。
【0029】
レンズ16は、例えば凸型のレンズであり、その集光作用により第1単色光を集光し、後述の混色部30に向けて照射する。
【0030】
第2波長単色光取り出し部20も、第1波長単色光取り出し部10と同様の構成であり、光源21、スリット22a、ミラー23a、回折格子24、ミラー23b、スリット22b、光ファイバ25、レンズ26、可変電源27及び
駆動手段28を有する。光源21にも、光源11と同様にハロゲンランプ等を用いることができる。
【0031】
光源21は可変電源27に接続されており、可変電源27は光源21に供給する電力を制御することで、光源21の光量を調整する。回折格子24には駆動手段28が接続されており、該駆動手段28により回折格子24を
回動させる。
【0032】
可変電源17、27及び駆動手段18、28はそれぞれPC制御部40と通信可能となっている。PC制御部40により、可変電源17、27を制御することで、第1単色光と第2単色光の光量を個別に(すなわち混合比率を)調整できる。また、PC制御部40により、駆動手段18、28を制御することで、第1単色光の波長と第2単色光の波長を個別に調整できる。
このようなPC制御部40の機能は、発光装置のファームウェアで実現することもできる。
【0033】
取り出された第2単色光は、光ファイバ25、レンズ26を介し、第1単色光と同様に混色部30に照射する。レンズ26も、レンズ16と同様に例えば凸型のレンズとするとよい。なお、光ファイバ25及びレンズ26はなくてもよい。また、
第1波長単色光取り出し部10についても、光ファイバ15及びレンズ16はなくても良い。
【0034】
混色部30には、例えば、プロジェクタスクリーン用のシートが配設されている。これにより、混色部30に照射された第1単色光及び第2単色光を混色し、混色光を得る。すなわち、光ファイバ15、25、レンズ16、26及び混色部30は、第1単色光と第2単色光を混色する混色手段となる。
【0035】
次に、
図4を用いて、本実施例の発光装置により種々の色を得る動作について説明する。本実施例では、第1単色光を380〜520nmの波長範囲に、第2単色光を520〜780nmの波長範囲に設定できるようになっている。また、
図4中、A、Bはそれぞれ第1単色光及び第2単色光の色度点を示す。
【0036】
例えば、使用者がPC制御部40上で、第1単色光の波長を380nm、第2単色光の波長を780nmに設定すると、PC制御部40が駆動手段18及び駆動手段28に制御信号を送る。駆動手段18は送られた制御信号に基づいて回折格子14を回動させて第1単色光の波長を380nmに設定し、駆動手段28は送られた制御信号に基づいて回折格子
24を回動させて第2単色光の波長を780nmに設定する。これにより、第1単色光と第2単色光を混合して得られる色は、A(380nm)とB(780nm)を結んだ直線上のいずれかの色となる。
【0037】
さらに、使用者がPC制御部40上で、第1単色光及び第2単色光の光量(或いはそれらの比率)を設定すると、PC制御部40は可変電源17及び可変電源
27に制御信号を送る。可変電源17は送られた制御信号に基づいて光源11に供給する電力を制御し、可変電源27は送られた制御信号に基づいて光源21に供給する電力を制御する。このようにして第1単色光と第2単色光の混合比率を変え、A(380nm)とB(780nm)を結んだ直線上の任意の色を得る。第1単色光の混合比率を大きくすれば、直線上のAに近い位置にある色が得られ、第2単色光の混合比率を大きくすれば、直線上のBに近い位置にある色が得られる。
【0038】
また、使用者がPC制御部40上で、第1単色光の波長を(380+Δλ1)nm、第2単色光の波長を(780-Δλ2)nmに設定する(或いはΔλ1及びΔλ2の値を設定する)と、色度点A、Bはそれぞれ、(380+Δλ1)nmと(780-Δλ2)nmの位置に移動する。この場合も、上記同様に第1単色光及び
第2単色光の光量を変えることで、両色度点を結んだ直線上の任意の色が得られる。このようにして第1単色光及び第2単色光の波長及び光量を変えて行くことで、XY色度図上の所望の色を得る。
なお、波長が520nmの単色光の色度点は、スペクトル軌跡のほぼ頂点になるため、本実施例のように、520nmを境に第1単色光と第2単色光の波長を分けた構成とすることで、所望の色を得る際に、波長の第1単色光及び第2単色光の様々な組み合わせが可能となる。
【0039】
上述のΔλ1とΔλ2は、同じ値(Δλ)とすることもできる。すなわち、使用者がPC制御部40上でΔλの値を設定するだけで、PC制御部40は、第1単色光の波長を(380+Δλ)nmに、第2単色光の波長を(780-
Δλ)nmとして、駆動手段18及び駆動手段28に制御信号を送る。こうすることで、使用者の操作負担を軽減できる。この場合、
図5に示すように、色度点A、Bはそれぞれ、(380+Δλ)nmと(780-Δλ)nmに位置し、両色度点を結んだ直線上の任意の色が得られる。第1単色光及び第2単色光の波長範囲としては、例えば、第1単色光を380nm〜580nmの波長範囲に、第2単色光を580〜780nmの波長範囲に設定できるようにするとよい。580nmは、380nmと780nmの中間の値である。
【0040】
一方、第1単色光の波長を380nmに固定するようにしてもよい。使用者はPC制御部40上で第1単色光の波長を設定する必要がなく、操作負担が軽減される。さらに、駆動手段18も不要となり、発光装置の構成が簡素化され、製造コストを下げることができる。この場合は、
図6に示すように、色度点Bのみがスペクトル軌跡上を移動する。第2単色光の波長は、380〜780nmの波長範囲に設定できるようにする。なお、第1単色光の波長を780nmに固定しても同様の効果が得られる。
【0041】
以上のとおり、本発明の発光装置はXY色度図上の全ての色を得ることができるため、従来の発光装置よりも色域が広がり、表示性能が向上する。特に、これまでは再現することが難しかった単色光に近い色を活用することで、発光装置の用途が増える。
【0042】
上記実施例では、第1波長単色光取り出し部10と第2波長単色光取り出し部20とで、異なる光源としたが、
図7に示すように、光源を共通とすることもできる。この場合は、光源を挟んで両側に第1波長単色光取り出し部と第2波長単色光取り出し部を配置し、これら取り出し部のスリット12a及びスリット22aを同軸上に配置する。また、スリット12bと光ファイバ70、及びスリット22bと光ファイバ71の間にそれぞれ可変アテネータ19及び29を挿入し、各可変アテネータの減衰量をPC制御部40
で制御できるようにするとよい。これにより、第1単色光と第2単色光の光量を個別に減衰させ、両単色光の混合比率を調整することが可能となる。光量調節のためにNDフィルタなどを用いてもよい。
このような構成とすることで、発光装置を小型化し、製造コストを下げることができる。
【0043】
なお、モノクロメータにより光源から単色光を取り出す構成に代えて、単色光を発するレーザを用いた構成とすることもできる。この場合でも、レーザの発振周波数の設定及び供給電力の制御が可能な構成とすれば、本願発光装置と同様の効果が得られる。
【0044】
上述の発光装置は、一点(混色部)において所望の色を得るものであるが、この発光装置を複数台用いれば、多点(各混色部)においてそれぞれ所望の色を得ることができるディスプレイ等の表示装置になる。
【0045】
図8は、本発明の発光装置を用いたディスプレイの一例を示す図面である。このディスプレイ50はM行N列からなる複数の画素60(1,1)〜60(M,N)を有している。ディスプレイの背面には本発明の発光装置が各画素毎に対応して配設されており、各画素が各発光装置の混色部に相当する。
【0046】
このディスプレイ50は、画素毎に異なる色を表示することができ、その色はXY色度図上の全ての色から選択可能なため、従来のディスプレイよりも色域が広く、表示性能に優れる。
【符号の説明】
【0047】
10…第1波長単色光取り出し部
11、21…光源
12a、12b、22a、22b…スリット
13a、13b、23a、23b…ミラー
14、24…回折格子
15、25、70、71…光ファイバ
16、26…レンズ
17、27…可変電源
18、28…駆動手段
19、29…可変アテネータ
20…第2波長単色光取り出し部
30…混色部
40…PC制御部
50…ディスプレイ
60(1,1)、60(M,1)、60(M,N)…画素