特許第6221569号(P6221569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221569
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20171023BHJP
   B60K 31/00 20060101ALI20171023BHJP
   B60W 30/16 20120101ALI20171023BHJP
【FI】
   B60W30/14
   B60K31/00 Z
   B60W30/16
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-200011(P2013-200011)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-66963(P2015-66963A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康啓
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−078735(JP,A)
【文献】 特開2003−025868(JP,A)
【文献】 特開2012−073925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 − 50/16
G08G 1/00 − 99/00
B60K 31/00
B60T 7/12 − 8/1769
B60T 8/32 − 8/96
B60R 21/00
F02D 29/00 − 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速を検出する自車速検出部と、
隣接車線における前記自車両が車線変更先の候補とする車間空間である候補車間空間の後方車両と自車両との車間距離を検出する隣接車間距離検出部と、
前記候補車間空間の後方車両の車速を検出する隣接車速検出部と、
前記自車速検出部が検出した車速、前記隣接車間距離検出部が検出した車間距離、及び前記隣接車速検出部が検出した車速に基づいて、前記自車両が前記候補車間空間へ車線変更した場合に前記自車両と前記候補車間空間の後方車両とが干渉するまでに要する時間である干渉予測時間を算出する干渉予測時間算出部と、
前記干渉予測時間算出部が算出した干渉予測時間及び設定閾値に基づいて、前記自車両が前記候補車間空間へ車線変更できるか否かを判定する車線変更可否判定部と、
前記車線変更可否判定部が前記自車両が前記候補車間空間へ車線変更できないと判定すると、自車線の前方車両と前記自車両との車間距離が現在の当該車間距離よりも大きい設定距離となるように前記自車両の制動駆動力を制御する車間距離制御部と、
前記車間距離制御部が前記自車両の制駆動力の制御を行い、前記自車線の前方車両と前記自車両との車間距離と前記設定距離との差が設定値以下になると、前記自車両が加速するように前記自車両の制駆動力を制御する制駆動力制御部と、
前記制駆動力制御部が前記自車両の制駆動力の制御を行い、前記自車両が加速すると、前記自車両が隣接車線への車線変更を開始するように前記自車両の制御及び運転者への報知の少なくとも一方を行う車線変更支援部と、
前記自車線の前方車両と前記自車両との車間距離を検出する車間距離検出部と、
前記車間距離検出部が検出した車間距離、前記隣接車速検出部が検出した車速、予め定めた設定マージン、及び前記設定閾値に基づいて、前記自車両を隣接車線へ車線変更させるための目標車速を算出する目標車速算出部と、
前記自車速検出部が検出した車速、及び前記目標車速算出部が算出した目標車速に基づいて、前記自車両が前記目標車速まで加速するための必要距離を算出する距離算出部と、
前記車間距離検出部が検出した車間距離、及び前記距離算出部が算出した必要距離に基づいて前記設定距離を算出する距離設定部と、
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記目標車速算出部は、前記隣接車間距離検出部が検出した車間距離に前記設定マージンを加算した加算結果を前記設定閾値で除算し、除算結果を前記隣接車速検出部が検出した車速から減算して、減算結果を前記目標車速とし、
前記隣接車速検出部が検出した車速が低いほど前記設定マージンを小さい値に設定する設定マージン設定部を備えることを特徴とする請求項に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記目標車速算出部は、前記隣接車間距離検出部が検出した車間距離に前記設定マージンを加算した加算結果を前記設定閾値で除算し、除算結果を前記隣接車速検出部が検出した車速から減算して、減算結果を前記目標車速とし、
前記自車両が合流車線を走行している場合に前記自車両から合流車線終点までの距離を検出する終点距離検出部と、
前記終点距離検出部が検出した距離が短いほど前記設定マージンを小さい値に設定する設定マージン設定部と、を備えることを特徴とする請求項に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記車線変更支援部が前記自車両が加速するように前記自車両の制駆動力を制御する際に、前記隣接車線側のウィンカーを点滅させる制御、及び前記自車両が前記隣接車線との境界に沿って走行させる制御の少なくとも一方を行なって、前記自車両の車線変更の意思を周囲に提示する車線変更意思提示部を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転支援装置としては、例えば、特許文献1に記載の従来技術がある。この従来技術では、自車両が隣接車線へ車線変更したときの干渉予測時間を算出する。干渉予測時間としては、例えば、隣接車線を走行する後方車両(以下、隣接後方車両とも呼ぶ)と自車両とが干渉するまでに要する時間がある。続いて、この従来技術では、算出した干渉予測時間が設定閾値以上である場合に、自車両を隣接車線へ車線変更させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−78735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、例えば、隣接車線を走行する車列に比べ、自車線を走行する車列が低速であった場合には、隣接後方車両と自車両との干渉予測時間とが低減する可能性があった。それゆえ、上記従来技術では、隣接後方車両と自車両との干渉予測時間が設定閾値未満となり、自車両を隣接車線へ車線変更不可となる可能性があった。
本発明は、上記のような点に着目したもので、自車両の車線変更に対するより適切な運転支援を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様では、自車両が車線変更先の候補とする車間空間である候補車間空間へ車線変更できるか否かを判定する。続いて、自車両を候補車間空間へ車線変更できないと判定すると、自車線の前方車両と自車両との車間距離が現在の当該車間距離よりも大きい設定距離となるように自車両の制動駆動力を制御する。続いて、自車線の前方車両と自車両との車間距離と前記設定距離との差が設定値以下になると、自車両が加速するように自車両の制駆動力を制御する。続いて、自車両の制駆動力の制御を行い、自車両が加速すると、自車両が隣接車線への車線変更を開始するように自車両の制御及び運転者への報知の少なくとも一方を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、自車線の前方車両と自車両との車間距離を増大させ、増大させた車間距離によって自車両を加速できる。これにより、自車線を走行する車列が比較的低速である場合にも、自車両をより適切に車線変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】運転支援装置を搭載した自車両Aの概略構成を表すブロック図である。
図2】各種状態量を説明するための説明図である。
図3】コントローラ4が実行する運転支援処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る運転支援装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、運転支援装置を搭載した自車両Aの概略構成を表すブロック図である。
図1に示すように、自車両Aは、レーダー部1、ナビゲーション部2、車速検出部3、コントローラ4、制駆動力制御部5、車線変更意思提示部6及び運転支援部7を備える。
【0009】
図2は、各種状態量を説明するための説明図である。
レーダー部1は、自車両Aと他車両との車間距離を検出する。他車両としては、例えば、図2に示すように、自車線の前方車両B、隣接車線の後方車両(以下、隣接後方車両とも呼ぶ)C、及び隣接車線の前方車両(以下、隣接前方車両とも呼ぶ)Dがある。また、車間距離としては、例えば、自車両Aと隣接後方車両Cとの車間距離L1、隣接前方車両Dと隣接後方車両Cとの車間距離L2、自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3がある。また、レーダー部1は、隣接後方車両Cの車速V2を検出する。そして、レーダー部1は、検出結果をコントローラ4に出力する。レーダー部1としては、例えば、自車両Aの周囲(例えば、前方、後方、斜め前方、斜め後方)にレーザー光を出射して反射光を検出するレーザ距離計を採用できる。なお、隣接後方車両Cの車速V2の検出方法としては、例えば、車間距離L1を時間微分して自車両Aと隣接後方車両Cとの相対車速を算出し、算出結果に車速検出部3が検出した自車両Aの車速を加算する方法がある。
【0010】
ナビゲーション部2は、GPS(Global Positioning System)受信機、地図データベース、及び表示モニタを備える。そして、ナビゲーション部2は、GPS受信機、及び地図データベースから自車両Aの位置及び道路情報を取得する。続いて、ナビゲーション部2は、取得した自車両Aの位置及び道路情報に基づいて経路探索を行う。続いて、ナビゲーション部2は、経路探索の結果を表示モニタに表示する。また、ナビゲーション部2は、取得した自車両Aの位置及び道路情報に基づき、自車両Aが合流車線を走行している場合には自車両Aから合流車線終点までの距離L4をコントローラ4に出力する。
【0011】
車速検出部3は、自車両Aの車速V1を検出する。そして、車速検出部3は、検出結果をレーダー部1及びコントローラ4に出力する。車速検出部3としては、例えば、自車両Aの車輪速を検出して自車両Aの車速V1を演算する車輪速センサを採用できる。
コントローラ4は、A/D(Analog to Digital)変換回路、D/A(Digital to Analog)変換回路、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等から構成した集積回路を備える。ROMは、各種処理を実現する1または2以上のプログラムを記憶している。CPUは、レーダー部1、ナビゲーション部2、及び車速検出部3が出力した検出結果等に基づき、ROMが記憶している1または2以上のプログラムに従って各種処理(例えば、運転支援処理)を実行する。運転支援処理では、コントローラ4は、自車両Aを減速させる指令(以下、減速指令とも呼ぶ)を制駆動力制御部5に出力する。また、コントローラ4は、自車両Aを加速させる指令(以下、加速指令とも呼ぶ)を制駆動力制御部5に出力する。さらに、コントローラ4は、自車両Aの車線変更先の隣接車線側のウィンカーを点滅させる指令(以下、意思提示指令とも呼ぶ)を車線変更意思提示部6に出力する。また、コントローラ4は、隣接車線への車線変更の開始を促す音声を出力する指令(以下、車線変更指令とも呼ぶ)を運転支援部7に出力する。コントローラ4が実行する運転支援処理の詳細については後述する。
【0012】
制駆動力制御部5は、コントローラ4が減速指令を出力すると、自車両Aを減速させる。具体的には、制駆動力制御部5は、自車両Aの各車輪の制動力の発生、及び自車両Aの駆動力の低減の少なくともいずれかを実行する。また、運転支援部7は、コントローラ4が加速指令を出力すると、自車両Aを加速させる。具体的には、制駆動力制御部5は、制動力の低減、及び駆動力の増大の少なくともいずれかを実行する。
【0013】
車線変更意思提示部6は、コントローラ4が意思提示指令を出力すると、車線変更しようとしている隣接車線側のウィンカーの点滅制御を行う。これにより、車線変更意思提示部6は、隣接後方車両の運転者に自車両Aの車線変更の意図を伝える。
運転支援部7は、コントローラ4が車線変更指令を出力すると、車線変更の開始を促す音声を出力する。これにより、運転支援部7は、運転者に車線変更の可否を伝える。
【0014】
なお、本実施形態では、運転支援部7が、コントローラ4が車線変更指令を出力すると、車線変更の開始を促す音声を出力する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、運転支援部7が、車線変更の開始を促す画像を表示する構成としてもよく、自車両Aが隣接車線に車線変更を行うように車両制御を行う構成としてもよい。車両制御を行う場合、左右輪を転舵し、自車両Aが隣接車線に車線変更を行う構成としてもよく、左右輪の制動力を制御し、自車両Aが隣接車線に車線変更を行う構成としてもよい。
(運転支援処理)
次に、コントローラ4が実行する運転支援処理について説明する。運転支援処理は、隣接車線を走行する車列に比べ、自車線を走行する車列が低速である場合、つまり、自車両Aの車速V1が隣接後方車両Cの車速V2未満である場合に、運転者が車線変更の意図を表す操作(例えば、ウィンカーレバーの操作)を行うと実行される。
【0015】
図3は、コントローラ4が実行する運転支援処理を表すフローチャートである。
図3に示すように、まず、ステップS101では、コントローラ4は、レーダー部1が出力した自車両Aと隣接後方車両Cとの車間距離L1、及び隣接後方車両Cの車速V2、並びに車速検出部3が出力した自車両Aの車速V1を取得する。続いて、コントローラ4は、取得した自車両Aと隣接後方車両Cとの車間距離L1、隣接後方車両Cの車速V2、及び自車両Aの車速V1に基づき、下記(1)式に従って自車両Aと隣接後方車両Cとの干渉予測時間TTC1を算出する。干渉予測時間TTC1としては、例えば、自車両Aが隣接前方車両Dと隣接後方車両Cとの間の車間空間を、隣接車線における自車両Aが車線変更先の候補とする車間空間である候補車間空間とした場合に、当該候補者間空間へ車線変更した場合に自車両Aと隣接後方車両Cとが干渉するまでに要する時間がある。
【0016】
TTC1=L1/(V2−V1) ………(1)
続いて、コントローラ4は、自車両Aを候補車間空間へ車線変更できるか否かを判定する。具体的には、コントローラ4は、算出した干渉予測時間TTC1が設定閾値(例えば、5秒)以上であるか否かを判定する。そして、コントローラ4は、干渉予測時間TTC1が設定閾値(5秒)以上であると判定した場合には、自車両Aを候補車間空間へ車線変更できると判定し、ステップS105に移行する。一方、コントローラ4は、干渉予測時間TTC1が設定閾値(5秒)未満であると判定した場合には、自車両Aを候補車間空間へ車線変更できないと判定する。続いて、コントローラ4は、自車両Aを候補車間空間へ車線変更できないと判定すると、図2(a)に示すように、レーダー部1が出力した自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3、及び隣接後方車両Cの車速V2を取得する。続いて、コントローラ4は、取得した車速V2及び車間距離L3に基づき、下記(2)式に従って車線変更時目標車速V1’(>現在の自車両Aの車速V1)を算出した後、ステップS102に移行する。車線変更時目標車速V1’としては、例えば、自車両Aを隣接車線へ車線変更させるための自車両Aの目標値(目標車速)がある(例えば、図2(b)に示すように、自車両Aが合流車線を走行している場合には自車両Aが車線変更して隣接車線(本線)に合流するときの自車両Aの車速の目標値がある)。
【0017】
V1’=V2−(L3+Lmargin1)/設定閾値 ………(2)
ここで、第1設定マージンLmargin1は、隣接後方車両Cの車速V2及び自車両Aから合流車線終点までの距離L4の少なくとも一方に基づいて設定する。具体的には、コントローラ4は、隣接後方車両Cの車速V2が低いほど第1設定マージンLmargin1を小さい値に設定する。これにより、コントローラ4は、車線変更時目標車速V1’が増大する。それゆえ、コントローラ4は、自車両Aを隣接車線へ車線変更しやすくなる。
【0018】
また、コントローラ4は、自車両Aから合流車線終点までの距離L4が短いほど第1設
定マージンLmargin1を小さい値に設定する。これにより、距離L4が短いほど車線変更時目標車速V1'が増大する。それゆえ、自車両Aを隣接車線へ車線変更しやすくなる。自車両Aから合流車線終点までの距離L4は、ナビゲーション部2から取得する。
続いてステップS102に移行して、コントローラ4は、車速検出部3が検出した車速V1、及び前記ステップS101で算出した車線変更時目標車速V1'、及び予め定めた設定加速度αに基づき、必要距離ΔLを算出する。必要距離ΔLとしては、例えば、自車両Aを車線変更時目標車速V1'まで加速するまでに要する距離がある。
【0019】
いて、コントローラ4は、図2(c)に示すように、算出した必要距離ΔL及びレーダー部1が出力した自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3に基づき、下記(4
)式に従って車間距離L3の目標値(以下、目標車間距離とも呼ぶ)L3'を算出する。
【0020】
L3’=L3+ΔL ………(4)
続いて、コントローラ4は、自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3が目標車間距離L3’(>現在の車間距離L3)となるように自車両Aの制駆動力を制御する指令(減速指令)を制駆動力制御部5に出力する。これにより、制駆動力制御部5が、制動力の発生及び駆動力の低減の少なくともいずれかを行う。そして、自車両Aが減速し、車間距離L3が増大し、目標車間距離L3’と車間距離L3との差が低減する。
【0021】
続いて、ステップS103に移行して、コントローラ4は、自車両Aの制駆動力の制御を行い、図2(d)に示すように、目標車間距離L3’と車間距離L3との差が設定値(≒0)以下になると、レーダー部1が出力した隣接前方車両Dと隣接後方車両Cとの車間距離L2、及び隣接後方車両Cの車速V2を取得する。続いて、コントローラ4は、取得した隣接前方車両Dと隣接後方車両Cとの車間距離L2、及び隣接後方車両Cの車速V2、並びに前記ステップS101で算出した車線変更時目標車速V1’に基づき、下記(5)式に従って自車両Aと隣接後方車両Cとの干渉予測時間TTC2を算出する。干渉予測時間TTC2としては、例えば、自車両Aの車速V1を車線変更時目標車速V1’とした後に、自車両Aを候補者間空間(隣接車線)に車線変更した場合に、自車両Aと隣接後方車両Cとが干渉するまでに要する時間がある。
【0022】
TTC2=(L2+Lmargin2)/(V2−V1’) ………(5)
ここで、第2設定マージンLmargin2は、予め定めた設定値である。
続いて、コントローラ4は、算出した干渉予測時間TTC2に基づき、自車両Aの車速V1を車線変更時目標車速V1’とした後に、自車両Aを候補車間空間(隣接車線)に車線変更できるか否かを判定する。具体的には、コントローラ4は、干渉予測時間TTC2が設定閾値(例えば、5秒)以上であるか否かを判定する。そして、コントローラ4は、干渉予測時間TTC2が設定閾値(5秒)以上であると判定した場合には、自車両Aを隣接車線へ車線変更できると判定し、ステップS104に移行する。一方、コントローラ4は、干渉予測時間TTC2が設定閾値(5秒)未満であると判定した場合には、自車両Aを隣接車線へ車線変更できないと判定し、前記ステップS101に移行する。
【0023】
前記ステップS104では、コントローラ4は、前記ステップS101で算出した車線変更時目標車速V1’と自車両Aの車速とが一致するように、つまり、自車両Aが加速するように自車両Aの制駆動力を制御する指令(加速指令)を制駆動力制御部5に出力する。これにより、制駆動力制御部5が、制動力の低減及び駆動力の増大の少なくともいずれかを行う。その際、自車両Aの加速度は上記(3)式で算出に用いた設定加速度αに一致させる。そして、自車両Aが加速し、車線変更時目標車速V1’と自車両Aの車速との差が低減する。また、コントローラ4は、隣接車線側のウィンカーを点滅させる制御の指令(意思提示指令)を車線変更意思提示部6に出力する。これにより、車線変更意思提示部6が、図2(e)に示すように、自車両Aの車線変更先の隣接車線側のウィンカーを点滅させる制御を行なって、自車両Aの車線変更の意思を周囲に提示する。そして、隣接後方車両Cの運転者が、自車両Aの車線変更の意図を把握し、自車両Aとの干渉を警戒する。
【0024】
なお、本実施形態では、運転支援部7が、コントローラ4が意思提示指令を出力すると、自車両Aの車線変更先の隣接車線側のウィンカーを点滅させる制御を行う例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、車線変更意思提示部6が、自車両Aを隣接車線との境界に沿って走行させる制御を行って、自車両の車線変更の意思を周囲に提示する構成としてもよい。この場合、左右輪を転舵し、自車両Aを隣接車線との境界に沿って走行させる制御を行う構成としてもよく、左右輪の制動力を制御し、自車両Aを隣接車線との境界に沿って走行させる制御を行う構成としてもよい。これにより、コントローラ4が、隣接後方車両Cに自車両Aの車線変更の意図を伝達できる。
【0025】
続いて、コントローラ4は、自車両Aの制駆動力の制御を行い、車線変更時目標車速V1’に自車両Aの車速が一致すると(自車両Aが加速すると)、レーダー部1が出力した隣接前方車両Dと隣接後方車両Cとの車間距離L2、及び隣接後方車両Cの車速V2を取得する。続いて、コントローラ4は、取得した隣接前方車両Dと隣接後方車両Cとの車間距離L2、及び隣接後方車両Cの車速V2、並びに前記ステップS101で算出した車線変更時目標車速V1’に基づき、下記(6)式に従って自車両Aと隣接後方車両Cとの干渉予測時間TTC3を算出する。干渉予測時間TTC3としては、例えば、自車両Aが隣接車線へ車線変更した場合に自車両Aと隣接後方車両Cとが干渉するまでに要する時間がある。
【0026】
TTC3=(L2+Lmargin3)/(V2−V1’) ………(6)
ここで、第3設定マージンLmargin3は、第1設定マージンLmargin1よりも小さい値に設定する。これにより、コントローラ4は、干渉予測時間TTC3を比較的小さな値とすることができ、自車両Aの隣接車線への合流可能性を向上できる。
続いて、コントローラ4は、自車両Aを隣接車線へ車線変更できるか否かを判定する。具体的には、算出した干渉予測時間TTC3が設定閾値(5秒)以上であるか否かを判定する。そして、コントローラ4は、干渉予測時間TTC3が設定閾値(5秒)以上であると判定した場合には、自車両Aを隣接車線へ車線変更できると判定し、前記ステップS105に移行する。一方、コントローラ4は、干渉予測時間TTC3が設定閾値(5秒)未満であると判定した場合には、自車両Aを隣接車線へ車線変更できないと判定し、前記ステップS101に移行する。これにより、前記ステップS101に移行することで、現在の隣接後方車両Cよりも後方の車両を新しい隣接後方車両Cとして上記フローを繰り返す。
【0027】
前記ステップS105では、コントローラ4は、運転者に隣接車線への車線変更の開始を促す音声を出力する指令(車線変更指令)を運転支援部7に出力した後、この演算処理を終了する。これにより、運転支援部7が、運転者に隣接車線への車線変更の開始を促す音声を出力する。そして、自車両Aの運転者が、ステアリングホイールの操舵操作を開始し、図2(f)に示すように、自車両Aを隣接車線へ車線変更する。
【0028】
なお、本実施形態では、運転支援部7が、車線変更指令を取得すると、運転者に車線変更の開始を促す音声を出力する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、運転支援部7が、運転者に車線変更を促す画像を表示する構成としてもよく、自車両Aが候補車間空間(隣接車線)に車線変更を行うように車両制御を行う構成としてもよい。車両制御を行う場合、左右輪を転舵し、自車両Aが候補車間空間(隣接車線)に車線変更を行う構成としてもよく、左右輪の制動力を制御し、自車両Aが候補車間空間(隣接車線)に車線変更を行う構成としてもよい。
【0029】
(動作その他)
次に、本実施形態の運転支援装置を搭載した車両の動作について説明する。
自車両Aの走行中、図2(a)に示すように、自車線の右側に隣接車線が存在し、隣接車線を走行する車列に比べ、自車線を走行する車列が低速であったとする。そして、自車両Aの運転者が、当該隣接車線への車線変更の意図を表す操作としてウィンカーレバーを操作したとする。すると、コントローラ4が、運転支援処理を実行し、自車両Aと隣接後方車両Cとの車間距離L1、隣接後方車両Cの車速V2、及び自車両Aの車速V1に基づき、自車両Aと隣接後方車両Cとの干渉予測時間TTC1を算出する(図3のステップS101)。ここで、算出した干渉予測時間TTC1が設定閾値(5秒)未満であったとする。すると、コントローラ4が、干渉予測時間TTC1が設定閾値(5秒)未満であると判定し、自車両Aを隣接車線へ車線変更できないと判定する(図3のステップS101「No」)。続いて、コントローラ4が、車速V2及び車間距離L3に基づき、自車両Aが隣接車線へ車線変更するときの車速(車線変更時目標車速V1’)を算出する。
【0030】
続いて、コントローラ4が、算出した車線変更時目標車速V1’及び自車両Aの車速V1に基づき、自車両Aを車線変更時目標車速V1’まで加速するための必要距離ΔLを算出する(図3のステップS102)。続いて、コントローラ4が、図2(c)に示すように、算出した必要距離ΔL及び自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3に基づき、車間距離L3の目標値(目標車間距離L3’)を算出する(図3のステップS102)。続いて、コントローラ4が、算出した目標車間距離L3’と車間距離L3とが一致するように自車両Aの制駆動力を制御する減速指令を制駆動力制御部5に出力する。これにより、制駆動力制御部5が、コントローラ4が減速指令を出力すると、自車両Aが減速し、車間距離L3が増大して、目標車間距離L3’と車間距離L3との差が低減する。
【0031】
続いて、コントローラ4が、図2(d)に示すように、目標車間距離L3’と車間距離L3との差が設定値以下になると、隣接前方車両Dと隣接後方車両Cとの車間距離L2、隣接後方車両Cの車速V2、及び車線変更時目標車速V1’に基づき、自車両Aと隣接後方車両Cとの干渉予測時間TTC2を算出する(図3のステップS103)。ここで、算出した干渉予測時間TTC2が設定閾値(5秒)以上であったとする。すると、コントローラ4が、算出した干渉予測時間TTC2が設定閾値(5秒)以上であると判定し、自車両Aを隣接車線へ車線変更できると判定する(図3のステップS103「Yes」)。続いて、コントローラ4が、車線変更時目標車速V1’に自車両Aの車速が一致するように自車両Aを加速させる加速指令を制駆動力制御部5に出力する(図3のステップS104)。これにより、制駆動力制御部5が、コントローラ4が加速指令を出力すると、自車両Aを加速させる。そして、自車両Aの車速が増大し、車線変更時目標車速V1’と自車両Aの車速との差が低減する。また、コントローラ4が、意思提示指令を車線変更意思提示部6に出力する。これにより、車線変更意思提示部6が、コントローラ4が意思提示指令を出力すると、図2(e)に示すように、隣接車線側のウィンカーを点滅させる制御を行う。そして、隣接後方車両Cの運転者が、自車両Aの車線変更の意図を把握し、隣接後方車両Cとの干渉に警戒する。
【0032】
続いて、コントローラ4が、車線変更時目標車速V1’に自車両Aの車速が一致すると、隣接前方車両Dと隣接後方車両Cとの車間距離L2、隣接後方車両Cの車速V2、及び車線変更時目標車速V1’に基づき、自車両Aと隣接後方車両Cとの干渉予測時間TTC3を算出する。ここで、算出した干渉予測時間TTC3が設定閾値(5秒)以上であったとする。すると、コントローラ4が、干渉予測時間TTC3が設定閾値(5秒)以上であると判定し、自車両Aを隣接車線へ車線変更できると判定する。続いて、コントローラ4が、車線変更指令を運転支援部7に出力する(図3のステップS105)。これにより、運転支援部7が、運転者に隣接車線への車線変更の開始を促す音声を出力する。そして、図2(f)に示すように、運転者が操舵操作を開始し、自車両Aを隣接車線へ車線変更する。
【0033】
このように、本実施形態では、自車両Aが車線変更先の候補とする車間空間である候補車間空間へ車線変更できるか否かを判定する。続いて、本実施形態では、自車両Aを候補車間空間へ車線変更できないと判定すると、自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3が現在の当該車間距離L3よりも大きい目標車間距離L3’となるように自車両Aの制動駆動力を制御する。続いて、本実施形態では、自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3と目標車間距離L3’との差が設定値以下になると、自車両Aが加速するように自車両Aの制駆動力を制御する。続いて、本実施形態では、自車両Aの制駆動力の制御を行い、自車両Aが加速すると、自車両Aが隣接車線への車線変更を開始するように自車両Aの制御、及び運転者への報知の少なくとも一方を行う。それゆえ、本実施形態では、自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3を増大させ、増大させた車間距離L3によって自車両Aを加速できる。これにより、本実施形態では、自車線を走行する車列が比較的低速である場合にも、自車両Aをより適切に車線変更できる。
【0034】
本実施形態では、図1の車速検出部3が自車速検出部を検出する。以下同様に、図1のレーダー部1が隣接車速検出部、隣接車間距離検出部及び車間距離検出部を構成する。また、図1のコントローラ4及び図3のステップS101が干渉予測時間算出部、車線変更可否判定部、目標車速算出部及び設定マージン設定部を構成する。さらに、図1のコントローラ4及び図3のステップS102が車間距離制御部、制駆動力制御部及び距離算出部を構成する。また、図1のコントローラ4及び図3のステップS103〜S105が車線変更支援部を構成する。さらに、車線変更時目標車速V1’が目標車速を構成する。また、図1のナビゲーション部2が終点距離検出部を構成する。さらに、図1のコントローラ4及び図3のステップS103が第2干渉予測時間算出部を構成する。また、図1のコントローラ4及び図3のステップS104が車速制御部、第3干渉予測時間算出部及び車線変更意思提示部を構成する。さらに、図1のコントローラ4及び図3のステップS105が車線変更支援実行部を構成する。
【0035】
(本実施形態の効果)
本実施形態は、次のような効果を奏する。
(1)コントローラ4が、自車両Aが車線変更先の候補とする車間空間である候補車間空間へ車線変更できるか否かを判定する。続いて、コントローラ4が、自車両Aを候補車間空間へ車線変更できないと判定すると、自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3が現在の当該車間距離L3よりも大きい目標車間距離L3’となるように自車両Aの制動駆動力を制御する。続いて、コントローラ4が、自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3と目標車間距離L3’との差が設定値以下になると、自車両Aが加速するように自車両Aの制駆動力を制御する。続いて、コントローラ4が、自車両Aの制駆動力の制御を行い、自車両Aが加速すると、自車両Aが隣接車線への車線変更を開始するように自車両Aの制御、及び運転者への報知の少なくとも一方を行う。
このような構成によれば、自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3を増大させ、増大させた車間距離L3によって自車両Aを加速できる。これにより、自車線を走行する車列が比較的低速である場合にも、自車両Aをより適切に車線変更できる。
【0036】
(2)コントローラ4が、自車両Aを隣接車線へ車線変更させるための車線変更時目標車速V1’及び自車両Aの車速に基づいて、自車両Aを車線変更時目標車速V1’まで加速するための必要距離ΔLを算出する。続いて、コントローラ4が、算出した必要距離ΔLを車間距離L3に加算して目標車間距離L3’とする。
このような構成によれば、自車線の前方車両Bと自車両Aとの車間距離L3を増大でき、自車線の前方車両Bよりも速い速度に自車両Aを加速できる。
【0037】
(3)コントローラ4が、隣接後方車両Cの車速V2が低いほど第1設定マージンLmargin1を小さい値に設定する。
このような構成によれば、隣接後方車両Cの車速V2が小さいほど車線変更時目標車速V1’が増大するため、自車両Aを隣接車線へ車線変更しやすくなる。
(4)コントローラ4が、自車両Aから合流車線終点までの距離L4が短いほど第1設定マージンLmargin1を小さい値に設定する。
このような構成によれば、自車両Aから合流車線終点までの距離L4が短いほど車線変更時目標車速V1’が増大するため、自車両Aを隣接車線へ車線変更しやすくなる。
【0038】
(5)コントローラ4が、自車両Aが加速するように自車両Aの制駆動力を制御する際に、ウィンカーを点滅させる制御、及び自車両Aを隣接車線との境界に沿って走行させる制御の少なくとも一方を行なって、自車両の車線変更の意思を周囲に提示する。
このような構成によれば、隣接後方車両Cに自車両Aの車線変更の意図を伝達できる。
【符号の説明】
【0039】
3 車速検出部(自車速検出部)
1 レーダー部1(隣接車速検出部、隣接車間距離検出部、車間距離検出部)
2 ナビゲーション部(終点距離検出部)
4 コントローラ4(干渉予測時間算出部、車線変更可否判定部、目標車速算出部、設定マージン設定部、車間距離制御部、制駆動力制御部、距離算出部、車線変更支援部、第2干渉予測時間算出部、車速制御部、第3干渉予測時間算出部、車線変更意思提示部、車線変更支援実行部)
図1
図2
図3