特許第6221575号(P6221575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221575
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】トナー用結着樹脂
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20171023BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G03G9/08 325
   C08F212/08
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-202412(P2013-202412)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-68971(P2015-68971A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】筒井 耕介
(72)【発明者】
【氏名】久木元 豊
(72)【発明者】
【氏名】野上 忠彦
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−199207(JP,A)
【文献】 特開平10−063035(JP,A)
【文献】 特開平01−219849(JP,A)
【文献】 特開平08−027229(JP,A)
【文献】 特開平07−306546(JP,A)
【文献】 特開平06−118714(JP,A)
【文献】 特開2007−322477(JP,A)
【文献】 特開2004−245928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/113
C08F 212/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系単量体(A)と、分子内に下記一般式(1)で表される構造を2〜6個有する多官能(メタ)アクリレート(B)からなる混合物を共重合した共重合体からなるトナー用結着樹脂であって、
前記共重合体をラボプラストミルにより90℃で10分間混練した後のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィによる質量分子量分布が、5×10〜4×10と、5×10〜5×10との2つの範囲にそれぞれ極大値を1つ以上有する、トナー用結着樹脂。
−(C2nO)− ・・・(1)
式(1)中、nは2〜12の整数である。
【請求項2】
前記ビニル系単量体(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の質量比((A):(B))が98:2〜99.8:0.2である、請求項1に記載のトナー用結着樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用結着樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法において静電荷像を現像するトナーは、一般に結着樹脂、ワックス、着色剤、荷電制御剤などを主成分とする粒子状のものであって、プリンタ、ファクシミリ、複写機などに使用されている。また、トナーを紙などのシート上に定着させる方法としては定着ロールを使用した定着ロール法が広く普及している。
【0003】
このようなトナーには、定着ロールが低温であっても確実にシート上に定着し(コールドオフセット性)、かつ、定着ロールが比較的高温であっても定着ロールにトナーが付着残留しないこと(ホットオフセット性)、すなわち、使用可能温度範囲(定着可能温度範囲)が広いことが求められている。
そこで、コールドオフセット性およびホットオフセット性に優れ、使用可能温度範囲が広いトナー用を製造可能な結着樹脂として、フィッシャートロプシュワックスの存在下で重合して得られた低分子量のビニル系重合体と、中分子量のビニル系重合体と、高分子量のビニル系重合体とを含む混合液から溶媒を除去して製造した、特定の質量分子量分布を有するトナー用結着樹脂が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−245928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のトナー用結着樹脂を含有するトナーは、コールドオフセット性およびホットオフセット性に対する近年の高い要求レベルを必ずしも十分に満足するものではなく、さらなる向上が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れたコールドオフセット性およびホットオフセット性を発現し、使用可能温度範囲が広いトナーを得ることができるトナー用結着樹脂の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] ビニル系単量体(A)と、分子内に下記一般式(1)で表される構造を1〜25個有する多官能(メタ)アクリレート(B)からなる混合物を共重合した共重合体からなるトナー用結着樹脂であって、前記共重合体をラボプラストミルにより90℃で10分間混練した後のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィによる質量分子量分布が、5×10〜4×10と、5×10〜5×10との2つの範囲にそれぞれ極大値を1つ以上有する、トナー用結着樹脂。
−(C2nO)− ・・・(1)
式(1)中、nは2〜12の整数である。
[2] 前記ビニル系単量体(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の質量比((A):(B))が98:2〜99.8:0.2である、[1]に記載のトナー用結着樹脂。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトナー用結着樹脂によれば、優れたコールドオフセット性およびホットオフセット性を発現し、使用可能温度範囲が広いトナーを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの両方を示すものとする。また、「(メタ)アクリロニトリル」とは、メタクリロニトリルとアクリロニトリルの両方を示すものとする。また、「(メタ)アクリルアミド」とは、メタクリルアミドとアクリルアミドの両方を示すものとする。また、「(メタ)アクリロキシ」とは、メタクリロキシとアクリロキシの両方を示すものとする。また、「EO」はエチレンオキサイドのことであり、「PO」はプロピレンオキサイドのことである。
【0010】
「トナー用結着樹脂」
本発明のトナー用結着樹脂(以下、単に「結着樹脂」という。)は、ビニル系単量体(A)(以下、「(A)成分」という。)と、以下に説明する多官能(メタ)アクリレート(B)(以下、「(B)成分」という。)からなる混合物を共重合した共重合体からなる。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分は、ビニル系単量体(A)である。
(A)成分としては、例えばスチレン、o−、m−、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のスチレン類;ビニルナフタレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性モノカルボン酸およびそのエステル類;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のエチレン性モノカルボン酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のエチレン性ジカルボン酸およびその誘導体;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類;ビニリデンクロリド、ビニリデンクロロフルオリド等のビニリデンハロゲン化物;n−ビニルピロール、n−ビニルカルバゾール、n−ビニルインドール、n−ビニルピロリドン等のn−ビニル化合物類などが挙げられ、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
これらの中で好ましくは、スチレンおよび/ またはn−ブチルアクリレートを用いることであり、さらに好ましくはスチレンとn−ブチルアクリレートとを併用することである。
スチレンとn−ブチルアクリレートとを併用する場合、これらの合計を100質量%としたときに、スチレンの割合は65〜95質量%が好ましく、65〜90質量%がより好ましい。また、n−ブチルアクリレートの割合は5〜35質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましい。スチレンの割合が65質量%より少なく、n−ブチルアクリレートの割合が35質量%より多いと、得られる結着樹脂のガラス転移温度が低くなるためにトナー粒子同士がブロッキングしやすくなり、保存安定性が悪化する。一方、スチレンの割合が95質量%より多く、n−ブチルアクリレートの割合が5質量%より少ないと、得られる結着樹脂のガラス転移温度が高くなり、トナーのコールドオフセット性が悪化する。
【0012】
<(B)成分>
(B)成分は、分子内に下記一般式(1)で表される構造(以下、「構造(1)」という。)を1〜25個有する多官能(メタ)アクリレート(B)である。
−(C2nO)− ・・・(1)
【0013】
式(1)中、nは2〜12の整数である。nが12を超えると、結着樹脂の凝集力が低下してトナーのホットオフセット性が悪化する。一方、nが2未満であると、結着樹脂の凝集力が強すぎてホットオフセット性が悪化する。
【0014】
(B)成分の1分子内に含まれる構造(1)の数(m)は1〜25個である。mが25を超えると、結着樹脂の凝集力が低下してトナーのホットオフセット性が悪化する。
【0015】
(B)成分としては、例えば1,4−ブタンジオールジメタクリレート(n=4、m=1)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=2、m=2)、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=2、m=3)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=2、m=4〜25)、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=3、m=2)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=3、m=3)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=3、m=8〜9)、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=4、m=2)、トリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=4、m=3)、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=4、m=8〜9)、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート(n=2、m=2.6〜10)、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート(n=3、m=4)、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン(n=2、m=2.6)、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(n=2、m=4)、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(n=2、m=10)等の2官能(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート(n=2、m=2)、トリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート(n=2、m=3)、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート(n=2、m=4〜25)、ジプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート(n=3、m=2)、トリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート(n=3、m=3)、ポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート(n=3、m=8〜9)、ジブチレングリコールトリ(メタ)アクリレート(n=4、m=2)、トリブチレングリコールトリ(メタ)アクリレート(n=4、m=3)、ポリブチレングリコールトリ(メタ)アクリレート(n=4、m=2〜25)、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(n=2、m=3〜6)、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(n=3、m=3〜6)等の3官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これら(B)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上述した中でも、トナーの低温での定着性および非ホットオフセット性がより向上する点で、(B)成分としてはEO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0017】
(A)成分と(B)成分の質量比((A):(B))は、98:2〜99.8:0.2であることが好ましい。(B)成分の比率が少ないほど、架橋密度が高くなりすぎるのを抑制でき、低温での樹脂溶融が起こりやすくなる。その結果、コールドオフセット性がより高まる。一方、(A)成分の比率が少ないほど、架橋密度が低くなりすぎるのを抑制でき、高温での樹脂溶融が起こりにくくなる。その結果、ホットオフセット性が向上する。
【0018】
<共重合体の製造方法>
共重合体は、(A)成分と(B)成分からなる混合物を公知の方法で重合することで得られる。
重合方法としては特に制限されないが、後述する共重合体の質量分子量分布を所望の範囲となるように制御しやすいことから、懸濁重合が好ましい。具体的には、イオン交換水にノニオン系分散剤を加えた後、(A)成分と(B)成分からなる混合物および重合開始剤をさらに加え、撹拌しながら、90〜140℃で0.5〜5時間程度保持して重合を行い、共重合体の懸濁液を得る。また、必要に応じて、重合後にアルカリ水溶液を添加するなどして、懸濁液のpHを調整してもよい。
【0019】
ノニオン系分散剤としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド(PEO)などが挙げられる。これらの中でも、特にケン化度が80〜90%、重合度が1500〜5000のPVAが好ましい。
なお、このようなノニオン系分散剤を使用すると、アニオン系またはカチオン系分散剤を使用した場合に比べて、高い分散性を安定して得ることができる。
【0020】
重合開始剤としては特に限定されないが、例えば過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーベンゾエート等の過酸化物系開始剤;2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤などが挙げられる。
【0021】
<共重合体の質量分子量分布>
共重合体は、ラボプラストミルにより90℃で10分間混練した後のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィによる質量分子量分布が、5×10〜4×10と、5×10〜5×10との2つの範囲にそれぞれ極大値を1つ以上有するものである。以下、5×10〜4×10の範囲に存在する極大値を「第一極大値」といい、5×10〜1×10の範囲に存在する極大値を「第二極大値」という。
第一極大値が5×10よりも小さいとホットオフセット性が低下し、4×10よりも大きいとコールドオフセット性が低下する。
一方、第二極大値が1×10よりも小さいとホットオフセット性が低下し、第二極大値が5×10よりも大きいとコールドオフセット性が低下する。
【0022】
共重合体の質量分子量分布は、上述したように懸濁重合により共重合体を製造することで容易に制御できる。また、(A)成分と(B)成分からなる混合物の配合組成や重合開始剤の使用量を調整することでも制御できる。
【0023】
<作用効果>
以上説明した本発明の結着樹脂は、(A)成分と(B)成分からなる混合物を共重合した、特定の質量分子量分布を有する共重合体からなる。よって、本発明の結着樹脂によれば、コールドオフセット性およびホットオフセット性に優れ、使用可能温度範囲が広く、かつトナー定着性にも優れるトナーを得ることができる。特に、(A)成分と(B)成分の質量比が上記範囲内であれば、定着温度の下限がより低く、かつ上限がより高くなり、定着可能な定着可能温度範囲が一層広くなる。
【0024】
<用途>
本発明の結着樹脂は、電子写真法において静電荷像を現像するトナー(以下、単に「トナー」という。)用の結着樹脂として好適である。
トナーは、少なくとも本発明の結着樹脂と、ワックスと、着色剤と、荷電制御剤とを含有する。
【0025】
ワックスとしては、トナー用のワックスとして一般的に用いられるワックスを使用でき、例えばパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバワックス、エステルワックスなどが挙げられる。これらワックス成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
トナー中のワックスの含有量は、本発明の結着樹脂100質量部に対して2〜20質量部が好ましく、4〜15質量部がより好ましい。
【0026】
着色剤としては特に制限されず、トナーの着色剤として一般的に用いられるものを使用できる。例えばカーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG 、ローダミン6G 、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリールメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系染顔料などが挙げられる。これら着色剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色剤の含有量は、本発明の結着樹脂100質量部に対して、3〜10質量部が好ましく、5〜7質量部がより好ましい。
【0027】
荷電制御剤としては、トナーを正荷電トナーとして用いる場合は正荷電制御剤を用い、トナーを負荷電トナーとして用いる場合は負荷電制御剤を用いる。
正荷電制御剤としては、トナーを正荷電性に制御できるものであれば特に制限されず、トナー用の正荷電制御剤として一般的に用いられる荷電制御剤を使用できる。例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシンの変性物、四級アンモニウム塩及び四級アンモニウム塩基を含む高分子体、ホスホニウム塩及びホスホニウム塩基を含む高分子体、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズオキサイド、ジオルガノスズボレートなどが挙げられる。これら正荷電制御剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
負荷電制御剤としては、トナーを負荷電性に制御できるものであれば特に制限されず、トナー用の負荷電制御剤として一般的に用いられる荷電制御剤を使用できる。例えば、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物などが挙げられる。これら負荷電制御剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
トナー中の荷電制御剤の含有量は、本発明の結着樹脂100質量部に対して0.1〜7質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0028】
トナーは、本発明の効果を妨げない範囲内であれば、必要に応じて本発明の結着樹脂以外の結着樹脂(他の結着樹脂)、添加剤を含有していてもよい。
他の結着樹脂としては、トナー用の結着樹脂として一般的に用いられる樹脂を使用でき、例えばポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シクロオレフィン樹脂などが挙げられる。これら他の結着樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
トナー中の他の結着樹脂の含有量は、本発明の結着樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0029】
添加剤としては、ステアリン酸亜鉛等の滑剤;酸化セリウム、炭化ケイ素等の研磨剤;酸化アルミニウム等の流動性付与剤;ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化スズ等の導電性付与剤などが挙げられる。
【0030】
さらに、トナーには必要に応じて適宜磁性粉が添加され、磁性トナーとされてもよい。
また、トナーは、流動性、保存安定性を確保する目的で、コロイダルシリカ、疎水性シリカなどの外添剤により表面処理されてもよい。外添剤の添加量はトナー100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0031】
トナーの平均粒子径は3〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が上記範囲内であれば、帯電性がさらに優れ、キャリアと撹拌混合した際にもスペント化しにくいトナーとすることができる。
ここで「平均粒子径」とは、体積基準のメジアン径のことであり、具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。なお、トナーが外添剤で表面処理されている場合は、表面処理される前の状態のトナーの粒子径を測定する。
【0032】
トナーは、例えば以下の製造方法により製造できる。
まず、本発明の結着樹脂と、ワックスと、着色剤と、荷電制御剤と、必要に応じて他の結着樹脂、添加剤、磁性粉とを混合機にて十分に混合した後、熱混練機中で溶融混練し、冷却固化する。次いで、固化したものを粉砕機で粉砕し、得られた粉砕物を分級し、所定の平均粒子径の粒子を回収して、トナーを得る。さらに、必要に応じて得られたトナーに外添剤を添加してトナーを表面処理する。
混合機としては、例えばヘンシェルミキサー、ボールミルなどが挙げられる。熱混練機としては、例えば加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどが挙げられる。粉砕機としては、例えばハンマーミル、ジェットミルなどが挙げられる。
【0033】
本発明により得られるトナーは、上述した本発明の結着樹脂を含有するので、コールドオフセット性、ホットオフセット性、および定着性に優れる。また、使用可能温度範囲が広い。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」を示す。
【0035】
「実施例1」
<結着樹脂の製造>
イオン交換水200部にノニオン系分散剤(株式会社クラレ製、「PVA235」)0.2部を加えた後、スチレン79.2部と、n−ブチルアクリレート20.0部と、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学株式会社製、「ライトアクリレートTMP−3EO−A」、n=2、m=3)0.8部からなる混合物、および重合開始剤(過酸化ベンゾイル)2.0部を加え、撹拌しながら130℃で2時間保持して懸濁重合を行い、共重合体の懸濁液を得た。
得られた懸濁液を30℃まで冷却し、遠心脱水機で脱水し、50℃、24時間の条件で乾燥させて、結着樹脂を得た。
【0036】
<トナーの製造>
得られた結着樹脂100部と、天然ガス系フィッシャートロプシュワックス(Shell MDS社製、「SX−105」)5部と、着色剤(三菱化学株式会社製、「カーボンブラックMA−100)5部と、荷電制御剤(藤倉化成株式会社製、「FCA−1001−NS」)5部とを小型粉砕機で混合し、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製、容量100cc、回転数70回転)により90℃で10分間混練して混練物を得た。その後、混練物を30℃まで冷却し、ラボジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)で粉砕し、風力分級機(日本ニューマチック工業株式会社製)で分級し、粒子径8〜10μmのトナーを得た。
【0037】
<測定・評価>
(1)結着樹脂の質量分子量分布の測定
結着樹脂を、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製、容量60cc、回転数70回転)により90℃で10分間混練した後、テトラヒドロフランに溶解させ、可溶分の質量分子量をGPC(検出器として昭和電工株式会社製の「Shodex RI−71」、カラムとして昭和電工株式会社製の「Shodex A−806M」を使用)で測定した。その結果、2.1×10(第一極大値)と2.2×10(第二極大値)の2ヶ所に1つずつ極大値を有していた。結果を表1に示す。
【0038】
(2)トナーのコールドオフセット性の評価
株式会社東芝製の市販の複写機を、定着ロールの温度を適宜変更できるように改造し、定着機とした。
この定着機を使用して、A4サイズの上質紙上にID濃度0.9〜1.1程度になるよう調整した均一な画像を形成し、種々の温度(5℃間隔)で定着させた。定着後の文字が定着ロールに残り、オフセットしなくなる最低温度を定着温度の下限とした。なお、試験環境は、20℃−60%湿度の恒温環境とした。結果を表1に示す。
定着温度が140℃以下でオフセットしなければ良好と判断した。
【0039】
(3)トナーのホットオフセット性の評価
(2)と同様の定着機を使用して、A4サイズの上質紙上にID濃度0.9〜1.1程度になるよう調整した均一な画像を形成し、種々の温度(5℃間隔)で定着させた。定着後の文字が定着ロールに残り、オフセットし始める最低温度を定着温度の上限とした。結果を表1に示す。
定着温度が200℃以上でオフセットし始めなければ良好と判断した。
【0040】
(4)トナーの定着率の評価
(2)と同様の定着機を使用して、A4サイズの上質紙上にID濃度0.6〜0.8程度になるよう調整した均一な画像を形成し、種々の温度(5℃間隔)で定着させた。その後、得られた定着画像に対して、堅牢度試験機を使用して、荷重1.0kgで5往復の綿擦り試験を行った。綿擦り試験後の試験前に対するID残存率を求め、定着率とした。そして、定着率が90%以上となる最低温度を定着温度の下限(T)とし、以下の評価基準にてトナーの定着率を評価した。
〇:T≦140℃
△:140℃<T≦150℃
×:150℃<T
【0041】
「実施例2〜7、比較例1〜4」
表1、2に示す組成の混合物を用い、重合開始剤の使用量を表1、2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして結着樹脂を製造し、得られた結着樹脂を用いてトナーを製造し、各測定・評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
各実施例および比較例で用いた(B)成分およびその代替は以下の通りである。
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学株式会社製、「ライトアクリレートTMP−3EO−A」、n=2、m=3)
・PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社製、「アロニックスM−310」、n=3、m=3)
・ジエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、「ライトエステル2EG」、n=2、m=2)
・2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製、「NKエステルA−BPE−4」、n=2、m=4)
・トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学株式会社製、「ライトアクリレートTMP−A」、m=0)
【0045】
表1から明らかなように、各実施例で得られた結着樹脂を含むトナーは、いずれも定着温度の下限が135℃以下、定着温度の上限が205℃以上、定着温度幅が80℃以上であり、優れたコールドオフセット性およびホットオフセット性を発現し、定着率が良好であった。
【0046】
一方、表2から明らかなように、(B)成分の代わりにトリメチロールプロパントリアクリレートを用いた比較例1の場合、定着温度の上限が180℃であり、ホットオフセット性および定着率に劣っていた。
5×10〜1×10の範囲に極大値(第二極大値)を有さない比較例2の場合、定着温度の上限が160℃であり、定着温度幅が40℃であり、ホットオフセット性に劣っていた。
第一極大値が0.4×10である比較例3の場合、定着温度の上限が170℃であり、定着温度幅が50℃であり、ホットオフセット性に劣っていた。
第二極大値が6.0×10である比較例4の場合、定着温度の下限が150℃であり、コールドオフセット性および定着率に劣っていた。