(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱交換器を通過させた室内空気を送風するメインファンと、熱交換器を通過させない室内空気を送風するサブファンとを有する室内機と、回転数制御可能な圧縮機を有する室外機とを備えた空気調和機であって、
前記室内機に、少なくとも前記サブファンの回転数を制御する室内機制御部を備え、
前記室外機に、少なくとも前記室外機で消費される電流値を検出する電流検出部と、前記電流検出部で検出した電流値を監視し、前記電流値が前記サブファンの回転数に応じて設定された前記室外機の電流制限値を超えないように前記圧縮機の回転数を制御する室外機制御部とを備え、
前記室内機制御部または前記室外機制御部は、前記サブファンの回転数に対する前記室外機の電流制限値を定めたテーブルを備え、
前記室内機制御部または前記室外機制御部は、前記サブファンの回転数の変更が指示された場合、前記テーブルに基づいて前記室外機の電流制限値を設定することを特徴とする空気調和機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0013】
図1は、本発明による室内機の外観斜視図であり、
図2は、室内機および室外機の概略構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、空気調和機の室内機20は、本体ユニット263とその両側に左ファンユニット261と右ファンユニット262とを備える。室内機20の本体ユニット263は、主筐体27を備える。主筐体27では、筐体本体28に外装パネル29が覆い被さる。筐体本体28には、中央吹出口30が形成される。外装パネル29の上部には、図示しない吸込口が形成される。中央吹出口30は、下向きに開口している。このような筐体本体28は、例えば室内の壁面に固定することができる。その際、中央吹出口30の前端30aは、後端30bと比べると上方の位置に配置される。その結果、中央吹出口30は、所定の傾斜角αで前上がりの姿勢に形成される。このような傾斜角αの働きで、気流は中央吹出口30から床面に向かって下向きに吹き出すことができるだけでなく、床面に対して平行(水平方向)に吹き出すこともできる。
【0015】
そして、中央吹出口30には、メイン風向変更手段として前後一対の上下風向板31a、31bが配置される。上下風向板31a、31bは、それぞれ水平軸線32a、32b回りで回転することができる。回転に応じて上下風向板31a、31bは、中央吹出口30を開閉することができる。
【0016】
また、筐体本体28の両側面には、個別に左ファンユニット261と右ファンユニット262が配置される。つまり、左ファンユニット261と右ファンユニット262は、筐体本体28の側壁の外側に配置される。左ファンユニット261は、左サイドファン筐体331を備えており、左サイドファン筐体331には左吹出口341が形成され、サイド風向変更手段としてサイドファンの風向を左右に変える左右風向板341aが配置されている。右ファンユニット262は、右サイドファン筐体332を備えており、右サイドファン筐体332には右吹出口342が形成され、サイド風向変更手段としての左右風向板342aが配置されている。この左吹出口341と右吹出口342は、不図示の駆動機構によって水平軸線35回りでそれぞれ回転させることで、サイド風向変更手段としてサイドファンの風向を上下に変えられる。上記した水平軸線32a、32bと水平軸線35とは、
図1に示すように、相互に平行に延びている。左サイドファン筐体331と右サイドファン筐体332の側面には、それぞれ側面吸込口37が形成される。側面吸込口37は、
図1に示すように、例えばスリット状の小開口を集合させている。また、サイドパネル36は、側面吸込口37への空気の吸込みと、サイドファン筐体の回転を妨げないように左サイドファン筐体331と右サイドファン筐体332にそれぞれ覆い被さる。
【0017】
なお、本実施例にかかる空気調和機は、上記した室内機20との間で無線による双方向通信により遠隔から運転操作が行えるリモコン10を備えている。
【0018】
本実施例にかかる空気調和機の室内機20および室外機40は、
図2に示すように構成されている。上記した室内機20の本体ユニット263内には、室内熱交換器264およびメインファン265が組み込まれる。メインファン265はクロスフローファンであって、回転によって気流を生成する。本体ユニット263には、メインファン265の働きにより室内空気が吸い込まれる。吸い込まれた室内空気は室内熱交換器264を通過することで冷媒と熱交換され、冷気または暖気が生成される。この室内熱交換器264を通り抜けた後の冷気または暖気の気流は、本体ユニット263の中央吹出口30から吹き出され、メインファン気流301となる。また、室内熱交換器264を通り抜けた気流の流量は、メインファン265の回転数によって調整される。
【0019】
室外機40の冷凍回路41は、
図2に示すように、四方弁42、圧縮機43、室外熱交換器44、室外ファン44a、膨張弁45、および冷媒管50などで構成されている。例えば、冷凍回路41で冷房運転が設定されると、四方弁42は、第2口42bおよび第3口42cを相互に接続し、第1口42aおよび第4口42dを相互に接続する。これにより、圧縮機43の吐出管43bから高温高圧の冷媒が室外熱交換器44に供給される。冷媒は、室外熱交換器44、膨張弁45および室内熱交換器264を順番に流通する。室外熱交換器44では、冷媒の熱エネルギーが外気に放出される。冷媒は、膨張弁45で低圧まで減圧され、室内熱交換器264において周囲の空気から吸熱する。これにより生成された冷気は、メインファン265の働きで室内空間に吹き出される。室内熱交換器264で吸熱した冷媒は、四方弁42を介して圧縮機43に戻される。
【0020】
また、冷凍回路41で暖房運転が設定されると、四方弁42は、第2口42bおよび第4口42dを相互に接続し、第1口42aおよび第3口42cを相互に接続する。これにより、圧縮機43の吐出管43bから高温高圧の冷媒が室内熱交換器264に供給される。冷媒は、室内熱交換器264、膨張弁45および室外熱交換器44を順番に流通する。室内熱交換器264では、冷媒の熱エネルギーが周囲の空気に放出され、暖気が生成される。暖気は、メインファン265の働きで室内空間に吹き出される。冷媒は、膨張弁45で低圧まで減圧され、室外熱交換器44において周囲の空気から吸熱する。その後、冷媒は圧縮機43に戻される。
【0021】
また、本実施例にかかる空気調和機の左ファンユニット261および右ファンユニット262は、本体ユニット263とは独立して設けられ、両ファンユニットの内部に遠心送風機からなる
図1のサイドファン266(サブファン)と、サイドファン266から送出される気流を吹き出す
図1の左吹出口341および右吹出口342をそれぞれ備え、
図1で説明した駆動機構により水平軸線35回りに回転させると共に、左吹出口341および右吹出口342の左右風向板341a、342aにより各吹出口から吹き出される空気の風向・風量を個別に制御することが可能となる。左吹出口341および右吹出口342から吹き出される左サイドファン気流3411と右サイドファン気流3421は、それぞれの側面吸込口37から吸い込んだ室内空気をそのまま吹き出した気流である。
【0022】
図3は、本発明による空気調和機の制御系の概略構成を示すブロック図である。本実施例にかかる空気調和機は、
図3に示すように、室内機20と室外機40とリモコン10で構成されている。
【0023】
室内機20は、AC電源80から供給される交流電圧を室内機20で使用するDC電源電圧に変換する室内機電源部24と、メインファン265を含む本体ユニット263と、サイドファン266と、室外機40との間で空調運転制御に関する情報を通信する室内機通信部22と、リモコン10との間で双方向通信を行うリモコン送受信部25と、室内機20を制御するプログラムおよび電流制限値、後述するサイドファン回転数に応じた室内機の消費電流値テーブルを記憶する記憶部23と、これら室内機各部を制御する室内機制御部21とを備えている。なお、室内機電源部24は、供給される交流電圧を分岐して室外機40の整流回路494へ電源ライン61、62を介して供給する。
【0024】
また、室外機40は、圧縮機43と、室内機電源部24から電源ライン61、62を介して供給される交流電圧を圧縮機43など室外機40で使用する電源電圧に変換する室外機電源部49と、室内機20の室内制御部21との間で室内機通信部22を介して空調運転制御に関する情報を通信する室外機通信部47と、室外機40を制御するプログラムを記憶する記憶部48と、これら室外機各部を制御する室外機制御部46とを備えている。なお、室外機電源部49は、インバータ491、平滑コンデンサ492、電流検出部としての電流検出部493、および、整流回路494とを備えている。
【0025】
整流回路494は、室内機20側のAC電源80から供給される交流電圧を整流して直流電圧として出力する回路であり、ブリッジダイオード等で構成されている。整流回路494で整流された脈流電圧は、平滑コンデンサ492により平滑化されて、直流電圧になる。
【0026】
インバータ491は、整流回路494で整流され平滑コンデンサ492により平滑化された直流電圧を再び交流電圧に変換して圧縮機43に備えられた図示しないモータ(ブラシレスDCモータ等)を駆動する回路であり、複数のパワートランジスタ等のスイッチング素子や、スイッチング素子を保護するための複数のフライバックダイオードで構成されている。
【0027】
電流検出部493は、室外機40で最も電力を要する圧縮機43に消費される電流を検出するために平滑コンデンサ492とインバータ491との間に設けられている。この電流検出部493は、図示しない内部の電流検出抵抗の両端の電圧値を検出し、検出した電圧値を室外機制御部46に出力する。なお、室外機全体の消費電流を検出する場合には、整流回路494の入力側の電源ライン61にCT(Current Transformer)等の電流検出素子を挿入して検出するようにしてもよい。
【0028】
室外機制御部46は、電流検出部493で検出した入力電流値が後述する電流制限値を超えないように監視するとともに、インバータ491経由で圧縮機43の回転数制御を行っている。また、室外機制御部46は、室外機通信部47から信号ライン60と室内機通信部22とを介し、室内機20の室内機制御部21と空調制御に関する運転情報を通信している。さらに、室外機制御部46は、
図2に示す四方弁42や膨張弁45の開閉制御や室外ファン44aなども制御する。
【0029】
図4は、本発明によるサイドファン回転数に応じた室内機の消費電流値テーブルの一例を示す説明図である。このテーブルは、室内機制御部21がサイドファン266の回転数に応じて室内機20で消費される電流値を参照し、参照した電流値から室外機40へ指示する電流制限値を算出するために用いるものであり、記憶部23に予め記憶されサイドファン266へ新たな動作指示がある度に参照される。
【0030】
消費電流値テーブルの項目は、縦軸に左ファンユニット261への風量設定(例えば、強風、弱風、微風、静音、停止など)毎にそのファンモータに指示される1600rpm〜0rpmの「左サイドファンモータ回転数」と、横軸に右ファンユニット262への風量設定毎にそのファンモータに指示される1600rpm〜0rpmの「右サイドファンモータ回転数」とが記憶されている。
【0031】
また、縦軸と横軸の左右のサイドファンモータ回転数の行と列が交差する位置に、左右のサイドファンモータ回転数の組み合わせに応じて室内機20で消費される電流値が記憶されている。なお、空気調和機は機種によって上限電流値が異なるが、
図4のテーブルの値は上限電流値が15.0Aの機種の一例を示している。
【0032】
室内機制御部21は例えばリモコン10から左ファンユニット261を強風に、右ファンユニット262を弱風に設定する操作を受付けた場合、記憶部23の
図4のテーブルから、強風に該当する縦軸の左サイドファンモータ回転数1600rpmと、弱風に該当する横軸の右サイドファンモータ回転数1300rpmとが交差する位置に記憶された室内機20の消費電流値1.45Aを参照する。そして、当該空気調和機の上限電流値15.0Aから参照した室内機20の消費電流値1.45Aを減じた値13.55Aを算出し、室外機40の電流制限値として室内機通信部22を介して室外機40へ送信する。
【0033】
また、室内機制御部21は例えばリモコン10から左ファンユニット261を強風から微風に、右ファンユニット262を弱風から停止に設定する操作を受付けた場合、記憶部23の
図4のテーブルから、微風に該当する縦軸の左サイドファンモータ回転数1000rpmと、停止に該当する横軸の右サイドファンモータ回転数0rpmとが交差する位置に記憶された室内機20の消費電流値1.15Aを参照する。そして、当該空気調和機の上限電流値15.0Aから参照した室内機20の消費電流値1.15Aを減じた値13.85Aを算出し、室外機40の新たな電流制限値として室内機通信部22を介して室外機40へ送信する。
【0034】
なお、
図4で説明したテーブルは、室外機40の記憶部48に予め記憶するようにしても良い。また、テーブルの値は室内機20の消費電流値に代えて、同消費電流値と当該空気調和機の上限電流値を用いて予め算出した室外機40の電流制限値としても良い。また、テーブルの参照や電流制限値の算出は、室外機制御部46で行うようにしても良い。
【0035】
図4で説明したテーブルを利用することにより、本実施例にかかる空気調和機は、過電流の発生を未然に防止しつつ、各サイドファンの回転数に応じて、室内機側で消費しない電流分を室外機側の運転に使用できるようにすることで、空気調和機の運転能力を高めることが可能となる。
【0036】
図5は、本発明による室内機制御部21の電流制限値に係る処理を説明するフローチャートである。なお、処理が開始される前提条件として、例えばリモコン10などから空気調和機の運転を開始する指示を受付けたものとする。また、
図5のフローチャートに記載のSTはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。
【0037】
室内機制御部21は、空気調和機の運転が開始されると、例えばリモコン10の操作などにより、サイドファンの回転数変更の指示があるか否かを確認する(ST1)。回転数変更の指示が無い場合(ST1−No)、例えばリモコン10の操作などにより、運転停止の指示があるか否かを確認する(ST2)。運転停止の指示がある場合(ST2−Yes)、処理を終了する。一方、運転停止の指示が無い場合(ST2−No)、ST1へ戻る。
【0038】
なお、空気調和機は、サイドファンの風量設定に自動が選択されている場合、空調運転の状況に応じてサイドファンの回転数を自ら変更するための指示を行う。また、運転開始からサイドファンの回転数変更の指示を受付けるまでは、前回運転時のサイドファンの回転数及び室外機40の電流制限値で運転することとなる。
【0039】
室内機制御部21はST1において、サイドファンの回転数変更の指示がある場合(ST1−Yes)、記憶部23の
図4で説明した消費電流値テーブルを参照し、指示されたサイドファンの回転数から室外機40へ指示する電流制限値を算出する(ST3)。続いて、算出した電流制限値が現在の電流制限値と同じであるか否かを確認する(ST4)。電流制限値が異なる場合(ST4−No)、算出した電流制限値が現在の電流制限値よりも低いか否かを確認する(ST5)。算出した電流制限値が低い場合(ST5−Yes)、室内機通信部22を介して算出した電流制限値を室外機40へ送信する(ST6)。続いて、回転数変更の指示に従いサイドファンの回転数を変更する(ST7)。そしてST1へ戻る。
【0040】
室内機制御部21はST4において、算出した電流制限値が現在の電流制限値と同じ場合(ST4−Yes)、ST7へ移行する。また、ST5において、算出した電流制限値が現在の電流制限値よりも高い場合(ST5−No)、回転数変更の指示に従いサイドファンの回転数を変更する(ST8)。続いて、室内機通信部22を介して算出した電流制限値を室外機40へ送信する(ST9)。そしてST1へ戻る。