特許第6221613号(P6221613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221613
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ガスの処理装置及びガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20171023BHJP
   B01D 53/52 20060101ALI20171023BHJP
   B01D 53/40 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B01D53/14 100
   B01D53/52
   B01D53/40
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-215494(P2013-215494)
(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公開番号】特開2015-77548(P2015-77548A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134566
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 和俊
(72)【発明者】
【氏名】徳浦 静雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆
(72)【発明者】
【氏名】堀田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】百合園 英嗣
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−033229(JP,A)
【文献】 特開2013−022498(JP,A)
【文献】 特表2007−516817(JP,A)
【文献】 特開2009−125651(JP,A)
【文献】 特開2003−033625(JP,A)
【文献】 特開2008−221123(JP,A)
【文献】 特開2007−237171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34− 53/96
B01D 53/02− 53/12
B01D 53/14− 53/18
B01J 21/00− 38/74
A61L 9/00− 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿度を高くすることにより被処理ガスの処理能力が高くなる処理剤が配された処理室を有ステンレス製の筐体と、
前記筐体に接続されており、前記処理室に被処理ガスを供給するステンレス製の配管と、
前記処理室に水を供給する水供給機構と、
前記処理室内を負圧にする負圧機構と、
を備え
前記被処理ガスが硫化水素を含み、
前記処理剤が酸化鉄を含む、ガスの処理装置。
【請求項2】
前記水供給機構は、前記処理室内に前記水を噴霧する、請求項1に記載のガスの処理装置。
【請求項3】
記筐体の底壁部と、前記水供給機構から水が供給される部分との間に配された多孔質層をさらに備える、請求項1または2に記載のガスの処理装置。
【請求項4】
前記配管は、前記筐体の前記多孔質層よりも下側に位置する部分に接続されている、請求項3に記載のガスの処理装置。
【請求項5】
前記多孔質層は、前記処理剤を含む、請求項3または4に記載のガスの処理装置。
【請求項6】
前記処理室内において、前記多孔質層よりも下流側に配されており、前記処理剤を含む処理部を備える、請求項3〜5のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項7】
前記多孔質層が、粉体層または連続気泡を有する発泡体により構成されている、請求項3〜6のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項8】
前記処理室内に被処理ガスとは別に気体を供給し、前記処理室における気体の総流量を増大させる気体供給機構をさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項9】
前記水供給機構は、水を間欠的に供給する請求項1〜のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項10】
前記処理剤は、前記被処理ガスと接触したときに発熱する、請求項1〜のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のガスの処理装置を用いてガスを処理する、ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの処理装置及びそれを用いたガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硫化水素を含むガスの処理が行われている。硫化水素含有ガスの処理剤としては、酸化鉄が知られている。特許文献1には、酸化鉄に接触させる硫化水素含有ガスの湿度を30%以上とすることにより硫化水素を効率的に処理することが記載されている。このように、湿度を高めることにより処理効率が高くなる被処理ガスがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−22498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被処理ガスの湿度を高くした場合、処理装置が腐食しやすく、処理装置の寿命が短くなる。このため、被処理ガスを効率的に処理することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明の主な目的は、被処理ガスを効率的に処理し得るガスの処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガスの処理装置は、筐体と、金属製の配管と、水供給機構とを備える。筐体は、処理室を有する。処理室には、湿度を高くすることにより被処理ガスの処理能力が高くなる処理剤が配されている。配管は、筐体に接続されている。配管は、処理室に被処理ガスを供給する。水供給機構は、処理室に水を供給する。
【0007】
本発明に係るガスの処理方法では、上記ガスの処理装置を用いてガスを処理する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被処理ガスを効率的に処理し得るガスの処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
図2】第2の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
図3】第3の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
図4】第5の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0011】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るガスの処理装置1の模式的断面図である。この処理装置1は、は、例えば、人体や環境等に有毒な成分を含むガスを処理し、無害化するための装置である。ガスの処理装置1により処理される被処理ガスは、酸性ガス、例えば、硫化水素、セレン化水素、アルシンなどのヒ化水素、ホスフィンやジホスフィンなどのリン化水素、シランなどの水素化ケイ素、及びボランやジボランなどの水素化ホウ素のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。なかでも、被処理ガスは、硫化水素を含むことが好ましい。
【0013】
処理装置1は、筐体10を備えている。筐体10は、柱状である。筐体10は、円柱状であってもよいし、角柱状であってもよい。本実施形態では、筐体10は、金属製である。筐体10は、被処理ガスに対する耐性を有する材料により構成されていることが好ましい。筐体10は、例えば、ステンレス等により構成されていることが好ましい。
【0014】
筐体10の内部には、被処理ガスを処理するための処理室11が設けられている。筐体10には、導入管12と、排出管13とが接続されている。導入管12と排出管13とのそれぞれは、金属製の配管により構成されている。導入管12と排出管13とは、それぞれ、例えば、ステンレス等により構成されていることが好ましい。
【0015】
本実施形態では、導入管12は、筐体10の下部に接続されている。具体的には、筐体10の側壁部10aの下部に接続されている。導入管12は、処理室11の下部に開口している。この導入管12を経由して被処理ガスが処理室11に導入される。
【0016】
一方、排出管13は、筐体10の上部に接続されている。具体的には、排出管13は、筐体10の天壁部10bに接続されている。排出管13は、処理室11の上部に開口している。この排出管13を経由して、処理室11において処理された処理済みのガスが処理室11外に排出される。
【0017】
処理室11には、処理剤14が配されている。処理剤14は、被処理ガスを処理する薬剤である。具体的には、処理剤14は、被処理ガスに含まれる有害物質の濃度を低減させる。処理剤14は、例えば、被処理ガス中の濃度を低減させようとする物質を吸着する吸着剤であってもよい。処理剤14は、例えば、被処理ガス中の濃度を低減させようとする物質と反応する物質(反応剤)であってもよい。処理剤14は、例えば、被処理ガス中の濃度を低減させようとする物質を反応させる触媒であってもよい。処理剤14は、吸着剤、反応剤及び触媒のうちの少なくとも2つを含んでいてもよい。
【0018】
処理剤14は、被処理ガスの湿度が高くなるほど被処理ガスの処理能力が高くなる薬剤である限りにおいて特に限定されない。また、処理剤14は、被処理ガスと接触したときに発熱するものであることが好ましい。具体的には、処理剤14は、吸着熱を発生させる吸着剤、反応熱を発生させる反応剤等であることが好ましい。例えば、被処理ガスが硫化水素、セレン化水素を含む場合は、処理剤14は、酸化鉄を含むことが好ましい。
【0019】
処理室11には、処理剤14を含む第1及び第2の処理層21,22が設けられている。第1の処理層21が相対的に上流側に設けられており、第2の処理層22が相対的に下流側に設けられている。より具体的には、ガスの流路方向において、第1の処理層21は、導入管12の接続部よりも下流側に設けられている。第2の処理層22は、第1の処理層21と排出管13の接続部との間に設けられている。第1の処理層21と第2の処理層22とは相互に離間して設けられている。第1の処理層21と第2の処理層22との間には、中空層23が設けられている。
【0020】
第1及び第2の処理層21,22は、それぞれ、処理剤14を含む処理粒子が担持された発泡体により構成されている。
【0021】
ところで、被処理ガスの湿度が高くなるほど被処理ガスの処理能力が高くなる反応剤を用いた場合は、被処理ガスに予め水分を含有させておくことが好ましい。従って、水分を含有する被処理ガスを予め生成させ、そのガスを導入管を経由させて処理室に導入することが好ましいと考えられる。
【0022】
しかしながら、水分を含有する被処理ガスを導入口から処理室に導入した場合、導入管において被処理ガスが溶解した腐食性の液体が生じる場合がある。その腐食性の液体により金属製の導入管が腐食し、導入管が損傷することがある。
【0023】
処理装置1では、これに鑑み、処理室11に水供給機構30を配し、処理室11に直接水を供給する。このため、被処理ガスが溶解した腐食性の液体が生じても、その腐食性の液体が導入管12に流入しにくい。よって、導入管12が損傷しにくい。従って、処理装置1によれば被処理ガスを効率的に処理することができる。
【0024】
腐食性の液体が生じにくくする観点から、水供給機構30は、処理室11に水を噴霧する機構であることが好ましい。また、水供給機構30は、水を間欠的に供給する機構であることが好ましい。水供給機構30は、処理室11に水を間欠的に噴霧する機構であることがより好ましい。
【0025】
なお、水供給機構30は、第2の処理層22における被処理ガスの相対湿度が、30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%、特に好ましくは実質的に100%となるように水を供給するものであることが好ましい。
【0026】
また、処理装置1では、金属製の筐体10の底壁部10cと、水供給機構30から水が供給される部分との間に第1の処理層21が配されている。第1の処理層21は、多孔質層である。このため、被処理ガスが溶解した腐食性の液体は、多孔質層である第1の処理層21により保持され、底壁部10cに到達しにくい。よって、腐食性の液体によって筐体10が損傷することも抑制されている。
【0027】
処理装置1では、多孔質層として、処理剤14を含む第1の処理層21が設けられている。このため、処理室11内に占める処理剤14の割合を高くできる。よって、被処理ガスの高い処理能力を実現することができる。
【0028】
本実施形態では、処理剤14が被処理ガスと接触したときに発熱する。このため、第1の処理層21に含まれる処理剤14と被処理ガスとの接触により、第1の処理層21に保持された液体の揮発が促進される。よって、腐食性の液体が底壁部10cにより到達しにくい。従って、腐食性の液体によって筐体10が損傷することがより効果的に抑制されている。
【0029】
さらに、処理装置1では、導入管12は、筐体10の第1の処理層21よりも下側に位置する部分に接続されている。このため、処理室11において、第1の処理層21の下側から上側に向かう気流が生じる。この気流が第1の処理層21を通過することによって第1の処理層21に保持された液体の揮発がさらに促進される。よって、腐食性の液体が底壁部10cにさらに到達しにくい。従って、腐食性の液体によって筐体10が損傷することがさらに効果的に抑制されている。
【0030】
第1の処理層21と第2の処理層22との間の領域に水を供給する場合、第2の処理層22を通過する被処理ガスの湿度は高められるものの、第1の処理層21を通過する被処理ガスの湿度はそれほど高められない。このため、第1の処理層21を小さくし、第2の処理層22を大きくすることが好ましい。但し、第1の処理層21が薄すぎると、第1の処理層21の液体を保持する能力が低くなる場合がある。従って、ガスの流れる方向における第2の処理層22の寸法は、ガスの流れる方向における第1の処理層21の寸法よりも大きいことが好ましく、ガスの流れる方向における第1の処理層21の寸法の0.05倍〜1倍であることが好ましく、0.1倍〜0.3倍であることがより好ましい。
【0031】
なお、本実施形態では、多孔質層である第1の処理層21を設ける例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。第1の処理層21を設ける代わりに、処理剤を含まない多孔質層を設けてもよい。この場合、多孔質層は、例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライト等により構成することができる。
【0032】
本実施形態では、処理粒子が担持された発泡体からなる多孔質層を設ける例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、多孔質層として、処理粒子により構成された粉体層を設けてもよい。また、多孔質層として、処理粒子の焼結体からなる層を設けてもよい。
【0033】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0034】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係るガスの処理装置1aの模式的断面図である。
【0035】
第1の実施形態に係るガスの処理装置1では、導入管12が、筐体10の第1の処理層21よりも下側に位置する部分に接続されている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。図2に示されるガスの処理装置1aのように、導入管12が筐体10の第1の処理層21よりも上側に位置する部分に接続されていてもよい。但し、この場合は、水供給機構30が設けられた中空層23に導入管12が接続される。このため、処理装置1aの方が、処理装置1よりも、被処理ガスが溶解した腐食性の液体が導入管12内に浸入しやすい。従って、第1の実施形態に係る処理装置1のように、水供給機構30が水を供給する中空層23と導入管12とが第1の処理層21により構成された多孔質層により隔離されていることが好ましい。
【0036】
処理装置1aでは、第1の処理層21に被処理ガスが供給されにくい。このため、第1の処理層21に代えて、処理剤を含まない多孔質層を設けても、被処理ガスの処理能力が低下しにくい。
【0037】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係るガスの処理装置1bの模式的断面図である。
【0038】
図3に示されるように、ガスの処理装置1bでは、処理室11の上部に導入管12が接続されており、下部に排出管13が接続されている。このため、被処理ガスは、処理室11内において、上方から下方に向かって流れる。このような場合は、第1及び第2の処理層21,22のうち、主たる処理層である第2の処理層22のみを設け、第2の処理層22の上方に水供給機構30を設けてもよい。処理装置1bでは、導入管12及び筐体10の底壁部10cに、被処理ガスが溶解した腐食性の液体が接触することが抑制されつつ、高い湿度を有する被処理ガスが処理層の全体に供給されるようにすることができる。従って、被処理ガスをより効率的に処理することが可能となる。
【0039】
(第4の実施形態)
第1の実施形態に係るガスの処理装置1に、処理室11内を負圧にする負圧機構をさらに設けてもよい。具体的には、例えば、排出管13に処理室11を減圧するポンプを接続してもよい。負圧機構を設けることにより、液状の水が発生することを抑制することができる。よって、筐体10や導入管12等の腐食をより効果的に抑制することができる。
【0040】
(第5の実施形態)
図4は、第5の実施形態に係るガスの処理装置1cの模式的断面図である。図4に示されるガスの処理装置1cのように、処理室11内に被処理ガスとは別に気体を供給する気体供給機構Pをさらに設けてもよい。気体供給機構Pを設けることにより、処理室11における気体の総流量を増大させることができる。このため、腐食性の液体の気化を促進させることができる。従って、筐体10や導入管12等の腐食をより効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
1、1a、1b、1c:処理装置
10:筐体
10a:側壁部
10b:天壁部
10c:底壁部
11:処理室
12:導入管
13:排出管
14:処理剤
21:第1の処理層
22:第2の処理層
23:中空層
30:水供給機構
図1
図2
図3
図4