(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、
図1乃至
図5を用いて説明する。
図1は、適応デジタルフィルタの構成の概略を示すブロック図である。
図2は、適応デジタルフィルタの機能の構成を示す機能ブロック図である。
図3は、適応デジタルフィルタの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図4は、適応デジタルフィルタの動作を示すフローチャートである。
図5は、適応デジタルフィルタの効果を示すコスト関数のグラフの一例である。
である。
【0018】
本発明の第1の実施形態では、
図1で示すように、第1の信号値から第2の信号の予測値である信号予測値を算出する適応デジタルフィルタ1(情報処理装置)について説明する。本実施形態における適応デジタルフィルタ1は、信号予測値を予測する際に用いる予測係数を逐次的に変更する適応フィルタ部を備えている。このような適応デジタルフィルタ1は、例えば、反響音を含む音声信号から本来の信号を取り出すエコーキャンセラにおいて、過去の音声信号から反響音を予測するために利用される。あるいは、音声や画像、あるいはマルチスペクトル画像データの予測符号化において、周辺の信号値(直前の音声信号値、近傍の画素の信号値、異なる波長で観測された画素の信号値)から符号化対象の信号値を予測するために利用される。
【0019】
(構成)
図2で示すように、本実施形態における適応デジタルフィルタ1は、予測値算出部11と、予測残差算出部12と、第1の予測係数算出部13と、第2の予測算出部14と、予測係数変更部15と、予測係数記憶部16と、を備えている。また、
図3で示すように、予測値算出部11は、装置外部から第1の信号値を入力可能なように構成されており、後述する信号予測値を出力可能なように構成されている。そして、予測残差算出部12は、装置外部から第2の信号値を入力可能なように構成されている。
【0020】
上記のように構成された適応デジタルフィルタ1の各機能は、論理回路などのハードウェアにより実現される。また、中央処理装置(CPU;Central Processing Unit)と記憶装置とを備える情報処理装置のCPUが、後述する
図4で示すフローチャートにより表されるプログラム等を実行することにより、実現しても構わない。
【0021】
なお、以下の説明においては、信号値の適応デジタルフィルタ1への入力順序(時刻)を変数tで表すとする。また、時刻tにおける第1の信号値をx(t)とし、第2の信号値をy(t)とする。そして、第1の信号値x(t)から第2の信号値y(t)を予測する際に用いる予測係数をw(t)で表すとする。
【0022】
また、第1の信号値x及び予測係数wはD次元のベクトル値を取るとする。そして、第2の信号値yは1次元のスカラー値であるとする。そのため、第2の信号値yがベクトル値を取る場合は、本実施形態で説明する適応デジタルフィルタ1を複数並列させることで適用することになる。以下、各構成の詳細について説明する。
【0023】
まず、予測値算出部11について説明する。予測値算出部11は、適応デジタルフィルタ1の適応フィルタ部として機能する部分である。つまり、予測値算出部11は、入力された第1の信号値x(t)から信号予測値y
PRED(t)を算出する。
【0024】
具体的には、予測値算出部11は、後述する予測係数記憶部16から予測係数w(t)を取得する。また、予測値算出部11には、装置外部から第1の信号値x(t)が入力される。そこで、予測値算出部11は、入力された第1の信号値x(t)と現時刻の予測係数w(t)とを用いて、以下で示す式(1)に従い信号予測値y
PRED(t)を算出する。その後、予測値算出部11は、算出した信号予測値y
PRED(t)を装置外部及び予測残差算出部12へと出力する。
【数1】
【0025】
なお、上記式における記号「・」はD次元ベクトルの内積を示す記号である。また、x
i(t)、w
i(t)は、以下の式(2)で示すようにD次元ベクトルの各成分を表している。
【数2】
【0026】
また、式(1)で用いる予測係数w(t)は、前時刻(t−1)において算出された予測係数である。後述するように、適応デジタルフィルタ1は、次時刻の予測係数として選択した予測係数(予測係数更新値)を予測係数記憶部16に記憶する。そのため、上述したように、予測値算出部11は、予測係数記憶部16から計算に使用する予測係数を取得することになる。予測係数の算出及び選択の詳細については、後述する。
【0027】
次に、予測残差算出部12について説明する。予測残差算出部12は、入力された第2の信号値y(t)と予測値算出部11が算出した信号予測値y
PRED(t)との差を求める部分である。予測残差算出部12は、第2の信号値y(t)と信号予測値y
PRED(t)との差を求めることで、予測残差e(t)を算出することになる。
【0028】
具体的には、予測残差算出部12は、予測値算出部11から信号予測値y
PRED(t)を取得する。また、予測残差算出部12には、装置外部から第2の信号値y(t)が入力される。そこで、予測残差算出部12は、入力された第2の信号値y(t)と取得した信号予測値y
PRED(t)とを用いて、以下で示す式(3)に従い予測残差e(t)を算出する。その後予測残差算出部12は、算出した予測残差e(t)を第1の予測係数算出部13及び第2の予測係数算出部14へと出力する。
【数3】
【0029】
次に、第1の予測係数算出部13について説明する。第1の予測係数算出部13は、確率勾配サインアルゴリズムに基づいて第1の予測係数更新値w
1を算出する部分である。
【0030】
具体的には、第1の予測係数算出部13は、予測係数w(t)と、予測残差e(t)と、第1の信号値x(t)と、を取得する。そして、第1の予測係数算出部13は、以下で示す式(4)に従い、第1の予測係数更新値w
1を算出する。その後、第1の予測係数算出部13は、算出した第1の予測係数更新値w
1を予測係数変更部15へと出力する。
【数4】
【0031】
なお、μ
1は予め定められた正の定数であり、ステップサイズパラメータと呼ばれるものである。一般に、小さい数値(例えば、2
−15)が用いられることが多い。
【0032】
また、上述した式(4)におけるsgnは、以下の式(5)で定義された符号関数である。式(4)で示すように、本実施形態においては、式(5)におけるxは予測残差e(t)に相当する。そのため、式(4)の符号関数は、予測残差e(t)の正負の符号(又は0)に応じた数値(符号)を算出することになる。
【数5】
【0033】
次に、第2の予測係数算出部14について説明する。第2の予測係数算出部14は、第1の予測係数更新値w
1よりも予測係数w(t)からの変化量が小さくなるように、第2の予測係数更新値w
2を算出する部分である。
【0034】
具体的には、本実施形態における第2の予測係数算出部14は、予測係数w(t)と、予測残差e(t)と、第1の信号値x(t)と、を取得する。また、第2の予測係数算出部14は、以下の式(6)に従って、取得した第1の信号値(D次元のベクトル値)x(t)の信号電力P
x(t)を算出する。
【数6】
【0035】
そして、第2の予測係数算出部14は、取得した予測係数w(t)と、予測残差e(t)と、第1の信号値x(t)と、算出した信号電力P
x(t)と、を用いて、以下で示す式(7)に従い第2の予測係数更新値w
2を算出する。その後、第2の予測係数算出部14は、算出した第2の予測係数更新値w
2を予測係数変更部15へと出力する。
【数7】
【0036】
なお、本実施形態において第2の予測係数算出部14で用いられる式(7)は、第1の予測係数算出部13が第1の予測係数更新値を算出する際に用いる確率勾配サインアルゴリズムと同様の式から求められるものである。具体的には、式(7)は、以下で示す式(8)に、以下で示す式(9)を代入することで求められる。つまり、式(7)は、第1の予測係数算出部13が第1の予測係数更新値を算出する際に用いる確率勾配サインアルゴリズムのうち、ステップサイズパラメータにあたる部分を変えたものになる。
【数8】
【数9】
【0037】
また、第2の予測係数算出部14による第2の予測係数更新値w
2の算出は、後述する予測係数変更部15による真偽判定以後に行うように、第2の予測係数算出部14を構成しても構わない。例えば、予測係数変更部15が次時刻の予測係数w(t+1)として第2の予測係数更新値w
2を選択した後に、第2の予測係数算出部14が第2の予測係数更新値w
2を算出するように、第2の予測係数算出部14を構成することが出来る。また、予測係数変更部15が次時刻の予測係数w(t+1)を選択する際に、並行して、第2の予測係数算出部14が第2の予測係数更新値w
2を算出するように、第2の予測係数算出部14を構成しても構わない
【0038】
次に、予測係数変更部15について説明する。予測係数変更部15は、次時刻(t+1)の予測係数w(t+1)を、第1の予測係数更新値w
1又は第2の予測係数更新値w
2に変更する部分である。予測係数変更部15は、後述する真偽判定を行った後に、その判定結果に従って、次時刻の予測係数w(t+1)を変更する。
【0039】
具体的には、予測係数変更部15はまず、第1の予測係数更新値w
1と、第1の信号値x(t)と、第2の信号値y(t)と、を取得する。そして、予測係数変更部15は、第1の予測係数更新値w
1と、第1の信号値x(t)と、第2の信号値y(t)と、を用いて、以下に示す式(10)に従って新たに更新予測残差e
1(t)を算出する。
【数10】
【0040】
そして、予測係数変更部15は、上述した真偽判定として、更新予測残差e
1(t)の正負の符号sgn(e
1(t))が元の予測残差e(t)の正負の符号sgn(e(t))と等しい(又は少なくとも一方が0である)か、あるいは異なるか、の判定を行う。具体的には、更新予測残差e
1と予測残差eとの正負の符号が等しい(又は少なくとも一方が0である)場合には、予測係数変更部15は、判定結果が真であると判定する。そして、予測係数変更部15は、第1の予測係数更新値w
1を次時刻の予測係数w(t+1)として選択する。一方、更新予測残差e
1と予測残差eとの正負の符号が異なる場合には、予測係数変更部15は、判定結果が偽であると判定する。そして、予測係数変更部15は、第2の予測係数更新値w
2を次時刻の予測係数w(t+1)として選択する。このような予測係数変更部15により行われる真偽判定の条件を具体的に表すと、式(11)、式(12)のようになる。
【数11】
【数12】
【0041】
つまり、予測係数変更部15は、式(11)が満たされる場合、更新予測残差e
1と予測残差eとの正負の符号が等しい(又は少なくとも一方が0である)と判断し、判定結果は真であると判断する。一方、予測係数変更部15は、式(11)が満たされない場合、更新予測残差e
1と予測残差eとの正負の符号が異なると判断し、判定結果は偽であると判断する。
【0042】
又は、予測係数変更部15は、式(12)が満たされる場合、更新予測残差e
1と予測残差eとの正負の符号が等しい(又は少なくとも一方が0である)と判断し、判定結果は真であると判断する。一方、予測係数変更部15は、式(12)が満たされない場合、更新予測残差e
1と予測残差eとの正負の符号が異なると判断し、判定結果は偽であると判断する。
【0043】
その後、予測係数変更部15は、選択した次時刻の予測係数w(t+1)を予測係数記憶部16へと出力する。そして、次時刻の予測係数w(t+1)は、予測係数記憶部16で記憶されることになる。
【0044】
なお、上述した式(10)は、予測残差算出部12が予測残差を算出する際に用いた式(3)に、予測値算出部11が信号予測値y
PRED(t)を算出する際に用いた式(1)を代入した物と同じものである。そのため、第1の予測係数更新値w
1に基づいた新たな計算(更新予測残差e
1の算出)を予測値算出部11及び予測残差算出部12にさせるように、予測係数変更部15を構成しても構わない。
【0045】
また、式(11)、(12)で示す式は、上述した式(1)、(2)、(4)を用いることで他の条件式に変形することが出来る。例えば、以下の式(13)、(14)、(15)で示す式は、全て式(12)と同等の条件を表す。従って、予測係数変更部15は、以下の式(13)、(14)、(15)を利用して真偽判定を行っても構わない。
【数13】
【数14】
【数15】
【0046】
また、上述したように、予測係数変更部15による真偽判定の後に、第2の予測係数更新値w
2を算出するように第2の予測係数算出部14を構成することが出来る。この場合には、予測係数変更部15は、次時刻の予測係数w(t+1)として第2の予測係数更新値w
2を選択する際に、第2の予測係数算出部14に対して、第2の予測係数更新値w
2の算出を指示することになる。
【0047】
次に、予測係数記憶部16について説明する。予測係数記憶部16は、予測係数を記憶する部分である。予測係数記憶部16は、予測係数変更部15から予測係数w(t+1)を受け取って記憶する。そして、予測係数記憶部16は、次時刻(t+1)で再度信号予測値を算出する際に、記憶している予測係数w(t+1)を予測値算出部11へ出力することになる。
【0048】
なお、予測係数記憶部16は、次時刻の予測係数w(t+1)を受け取った際に、(現時刻の)予測係数w(t)を削除するように構成することが出来る。また、予測係数記憶部16は、適応デジタルフィルタ1が動作を開始した直後においては、予め定められた適当な初期値を記憶している。そのため、予測係数記憶部16は、適応デジタルフィルタ1が動作を開始した直後においては、予め定められた適当な初期値を予測係数として予測値算出部11に出力する。
【0049】
以上が、本実施形態における適応デジタルフィルタ1の構成である。このように構成することで、適応デジタルフィルタ1は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが出来る。
【0050】
なお、本実施形態においては、ステップサイズパラメータμ
1は固定であるとした。しかしながら、ステップサイズパラメータμ
1は、例えば、時間tの経過とともに徐々に減少するように構成しても構わない。また、上述した式(4)における符号関数sgn(x)は、xが0以上の場合は1を算出し、xが0未満の場合は−1を算出するように構成しても構わない。
【0051】
次に、本実施形態における適応デジタルフィルタ1の動作を、
図4を用いて説明する。
【0052】
(動作)
まず、適応デジタルフィルタ1は、動作の開始後、時刻を表す変数tを1に初期化する。また、適応デジタルフィルタ1は、予測係数記憶部16が記憶する予測係数wを所定の初期値w(1)に初期化する(S001)。
【0053】
その後、時刻tにおける第1の信号値x(t)が、装置外部から予測値算出部11へと入力されることになる。すると、予測値算出部11は、入力された第1の信号値x(t)と、予測係数w(1)と、を用いて、信号予測値y
PRED(t)を算出する。そして、予測値算出部11は、算出した信号予測値y
PRED(t)を出力する(S002)。なお、既に後述する予測係数の変更が行われていた場合には、該当する予測係数w(t)を用いて、信号予測値y
PRED(t)を算出することになる。
【0054】
続いて、第2の信号値y(t)が、装置外部から予測残差算出部12へと入力される。また、予測残差算出部12は、予測値算出部11が送信した信号予測値y
PRED(t)を取得する。そこで、予測残差算出部12は、入力された第2の信号値y(t)と信号予測値y
PRED(t)とを用いて、予測残差e(t)を算出する(S003)。
【0055】
その後、第1の予測係数算出部13は、予測残差e(t)を取得する。また、第1の予測係数算出部13は、予測係数w(1)と、第1の信号値x(t)と、を取得する。そこで、第1の予測係数算出部13は、予測残差e(t)と、予測係数(1)と、第1の信号値x(t)と、を用いて、第1の予測係数更新値w
1を算出する(S004)。
【0056】
そして、第1の予測係数算出部13が算出した第1の予測係数更新値w
1を受けて、予測係数変更部15は、真偽判定を行う。その後、予測係数変更部15は、真偽判定の結果を受けて、次時刻の予測係数の選択を行う(S005)。
【0057】
具体的には、予測係数変更部15は、まず、第1の予測係数更新値w
1と、第1の信号値x(t)と、第2の信号値y(t)と、を取得する。そして、予測係数変更部15は、第1の予測係数更新値w
1と、第1の信号値x(t)と、第2の信号値y(t)と、を用いて、更新予測残差e
1(t)を算出する。その後、予測係数変更部15は、予測残差e(t)と更新予測残差e
1(t)との正負の符号の比較を行う。
【0058】
その結果、更新予測残差e
1と予測残差eとの正負の符号が等しい(又は少なくとも一方が0である)場合には、予測係数変更部15は、判定結果が真であると判定する。そして、真偽判定の結果を受けて、予測係数変更部15は、第1の予測係数更新値w
1を次時刻の予測係数w(t+1)として選択する。その後、予測係数変更部15が選択した次時刻の予測係数w(t+1)=w
1を、予測係数記憶部16に記憶することになる(S006)。
【0059】
一方、予測係数変更部15は、更新予測残差e
1と予測残差eとの正負の符号が異なる場合には、判定結果が偽であると判定する。そして、真偽判定の結果を受けて、予測係数変更部15は、第2の予測係数更新値w
2を次時刻の予測係数w(t+1)として選択する。そこで、予測係数変更部15は、第2の予測係数算出部14に対して、第2の予測係数更新値w
2を算出するように指示する。その結果、第2の予測係数算出部14は、予測係数変更部15からの指示を受けて、第2の予測係数更新値w
2の算出を行う(S007)。そして、次時刻の予測係数w(t+1)=w
2を、予測係数記憶部16に記憶することになる(S008)。
【0060】
続いて、適応デジタルフィルタ1は、時刻変数tに1を加算して(S009)、終了判定を行う(S010)。継続する場合は、再度ステップS002に戻り、信号予測値の算出を行うことになる。その後、上述した処理を反復することになる。一方、終了する場合は、適応デジタルフィルタ1はその動作を終了する。
【0061】
なお、第2の予測係数算出部14による第2の予測係数更新値w
2の算出は、予測係数変更部15による次時刻の予測係数の選択前に行われても構わないし、予測係数変更部15による次時刻の予測係数の選択の際に、並列して行われても構わない。
【0062】
以上が、適応デジタルフィルタ1の動作の流れである。このような動作により、適応デジタルフィルタ1は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが出来る。
【0063】
(効果)
ここで、本実施形態における適応デジタルフィルタ1を用いる場合の効果について詳細に説明する。本実施形態における適応デジタルフィルタ1が次時刻の予測係数として出力するw(t+1)は、以下の式(16)で示すコスト関数f(w’)を最小化するw’である。
【数16】
【0064】
コスト関数f(w’)とその最小化の意味を説明する。まず、コスト関数f(w’)の意味について説明する。コスト関数f(w’)で示す式(13)において、第1項は、現時刻の予測係数w(t)から新しい予測係数w’に変更した時の変化量を平方和で評価した項である。また、第2項は、予測係数w(t)をw’に置き換えて、第1の信号値x(t)から第2の信号値y(t)を予測した時の、予測残差の値を絶対値で評価した項である。従って、第1項の最小化は、予測係数の変化を抑制する作用がある。また、第2項の最小化には、予測残差の絶対値最小化の作用がある。
【0065】
コスト関数f(w’)は、このような意味を持つ2つの項を一定比で加算したものになる。そのため、コスト関数f(w’)最小化の基準により次時刻の予測係数w’を定める本実施形態の適応デジタルフィルタ1は、フィルタの状態更新を適度に抑制しつつ予測残差の絶対値の期待値が小さくなるように予測係数を算出することが出来る。
【0066】
次に、本実施形態の適応デジタルフィルタ1が算出する予測係数がコスト関数f(w’)を最小化するw’であることと、本実施形態の適応デジタルフィルタ1の優位性を、信号値x、信号値yが1次元である場合について、
図5を用いて説明する。
【0067】
ここで、
図5で示すグラフの横軸は、予測係数w’の値を表している。また、
図5で示すグラフの縦軸はコスト関数f(w’)の値を表している。
【0068】
また、以下の説明では、現時刻の予測係数w(t)が0であり、ステップサイズパラメータμ
1が1/2である場合について説明する。さらに、第1の信号値x(t)が1であり、第2の信号値y(t)も1である場合について、
図5の(A)を用いて説明する。また、第2の信号値x(t)が3であり、第2の信号値y(t)も3である場合について、
図5の(B)を用いて説明する。
【0069】
まず、上述した条件を式(16)に代入する。すると、
図5の(A)で示す場合(x(t)=1、y(t)=1の場合)においては、コスト関数f(w’)は以下の式(17)で表すことが出来ることが分かる。
【数17】
【0070】
また、同様に、
図5の(B)で示す場合(x(t)=3、y(t)=3の場合)においては、コスト関数f(w’)は以下の式(18)で表すことが出来る。
【数18】
【0071】
そして、式(17)、式(18)で示すように、コスト関数f(w’)は、2つの2次曲線を接続したグラフ曲線を描くことが分かる(
図5参照)。
【0072】
次に、同様の条件を用いて第1の予測係数更新値w
1と第2の予測係数更新値w
2とを算出する。まず、上述した式(4)に同様の条件を代入する。すると、
図5(A)の場合において、第1の予測係数更新値w
1の値は0.5になることが分かる。また、同様に、
図5(B)の場合において、第1の予測係数更新値w
1の値は1.5になることが分かる。続いて、上述した式(7)に同様の条件を代入する。すると、
図5(A)(B)の両方の場合で、第2の予測係数更新値w
2の値は1になることが分かる。ここで、式(17)、式(18)で示すように、コスト関数f(w’)の2つの放物線の接続点の値はともに1である。従って、第2の予測係数更新値w
2が、コスト関数f(w’)の2つの放物線の接続点になることが分かる。
【0073】
以上に従うと、式(17)、式(18)、及び
図5で示すように、第1の信号値x(t)の値が比較的小さい
図5(A)では、第2の予測係数更新値w
2よりも予測係数w(t)に近い左側の放物線上に、コスト関数f(w’)を最小化するw’が存在することが分かる。また、その値は、第1の予測係数更新値w
1と等しいものになる。一方、第1の信号値x(t)の値が比較的大きい
図5(B)では、2つの放物線の接続点でコスト関数f(w’)の最小値をとることが分かる。そして、上述したように、この値は第2の予測係数更新値w
2と等しいものになる。
【0074】
ここで、常に第1の予測係数更新値w
1を次時刻の予測係数として用いた場合を考える。このように、常に第1の予測係数更新値w
1を次時刻の予測係数として用いたとしても、第1の信号値x(t)の値が比較的小さい
図5(A)の場合では、適切な予測係数の算出を行うことが可能である。しかしながら、第1の信号値x(t)の値が比較的大きくなる
図5(B)の場合では、第1の予測係数更新値w
1を用いると、コスト関数f(w’)の観点から不適切な予測係数を選択することになる。のみならず、
図5(B)で示すように、元の予測係数w(t)=0におけるコスト関数f(w)の値よりも悪化することがあることがあることが分かる。
【0075】
一方、本実施形態の適応デジタルフィルタ1を用いると、上述したように、
図5(B)の場合においても、コスト関数f(w’)の観点から適切な予測係数の選択を行うことが可能である。このように、適応デジタルフィルタ1は、コスト関数f(w’)最小化の観点において、常に第1の予測係数更新値w
1を次時刻の予測係数として用いる適応フィルタと比べて優位性を備えていることが分かる。
【0076】
また、信号値xと予測係数wが多次元である一般の場合においては、コスト関数f(w’)の勾配ベクトル∇f(w’)は以下で示す式(19)で表される。
【数19】
【0077】
そして、第1の信号値x(t)の電力p
x(t)が予測残差e(t)の絶対値よりも十分大きく、式(15)の条件を満たす場合(同等の条件を満たす場合)、勾配ベクトルがw’=w
1のとき0となり、かつ、コスト関数f(w’)は最小になる。一方、式(15)の条件を満たさない場合、予測残差が0になる、即ち以下の式(20)を満たすw’の中にf(w’)を最小化するw’があることになる。そして、それは第2の予測係数更新値w
2と等しくなる。
【数20】
【0078】
以上のように、式(15)で示す条件(同等の条件を表す式でもよい)の成立非成立にかかわらず第1の予測係数更新値w
1を次時刻の予測係数にすると、コスト関数f(w’)の観点において最適でないことが分かる。一方、本実施形態の適応デジタルフィルタ1は、コスト関数f(w’)最小化の観点でより好ましく、かつ最良の予測係数を算出することが出来ることが分かる。
【0079】
このように、本実施形態における適応デジタルフィルタ1は、予測値算出部11と、予測残差算出部12と、第1の予測係数算出部13と、第2の予測係数算出部14と、予測係数変更部15と、を備えている。そのため、適応デジタルフィルタ1は、予測残差と更新予測残差とを算出して、真偽判定を行うことができる。そして、適応デジタルフィルタ1は、コスト関数f(w’)の観点からみてより好ましい次時刻の予測係数を選択することができる。その結果、適応デジタルフィルタ1は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが可能になる。
【0080】
また、本実施形態における第2の予測係数算出部14は、式(7)に従って第2の補正係数更新値を算出するように構成されている。そのため、適応デジタルフィルタ1は、コスト関数f(w’)を最小化する補正係数を選択することができる。その結果、適応デジタルフィルタ1は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題をより確実に解決することが可能になる。
【0081】
さらに、本実施形態における適応デジタルフィルタ1は、コスト関数f(w’)を最小化する基準に従い次時刻の予測係数を決定する。そのため、適応デジタルフィルタ1は、予測残差の絶対値の期待値を最小化する適応特性を得ることが出来る。これは特に、予測残差の符号化をゴロム符号に基づいて行う圧縮符号化用途において好ましい特性である。従って、適応デジタルフィルタ1は、圧縮効率の向上の効果も得ることが出来ると考えられる。
【0082】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、
図6図7を用いて説明する。
図6は、本実施形態における適応デジタルフィルタの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図7は、本実施形態における適応デジタルフィルタの動作の一例を示すフローチャートである。
【0083】
(構成)
本実施形態における適応デジタルフィルタ2は、第1の実施形態における適応デジタルフィルタ1とほぼ同様の構成を備えている。つまり、本実施形態における適応デジタルフィルタ2は、予測値算出部11と、予測残差算出部12と、第1の予測係数算出部13と、第2の予測係数算出部24と、予測係数変更部25と、予測係数記憶部16と、を備えている。そして、本実施形態においては、予測値算出部11と、予測残差算出部12と、第1の予測係数算出部13と、予測係数記憶部16と、の機能は、第1の実施形態で説明した各構成の機能とほぼ同様である。そのため、第1の実施形態と同様の構成については、その説明を省略する。なお、後述するように、本実施形態においては、第2の予測係数算出部24を設けなくても構わない。
【0084】
以下、本実施形態における特徴的な部分について説明する。本実施形態では、第2の予測係数算出部24と予測係数変更部25とに特徴がある。そのため、第2の予測係数算出部24と予測係数変更部25とについて重点的に説明する。
【0085】
まず、本実施形態における第2の予測係数算出部24について説明する。本実施形態における第2の予測係数算出部24も、第1の実施形態と同様に、第1の予測係数更新値w
1よりも予測係数w(t)からの変化量が小さくなるように、第2の予測係数更新値w
2を算出する部分である。
【0086】
ただし、本実施形態における第2の予測係数算出部24は、第2の予測係数更新値w
2を算出する際に用いる数式が第1の実施形態と異なっている。具体的には、第2の予測係数算出部24は、以下の式(21)に従って、第2の予測係数更新値w
2を算出する。
【数21】
【0087】
ここで、式(21)におけるステップサイズパラメータμ
3は以下の式(22)に従って求められるものである。また、式(22)におけるcは、予め定められた1よりも小さい正の定数(例えば1/2)である。そのため、第2の予測係数算出部24は、式(21)に従って、第1の予測係数更新値w
1よりも予測係数w(t)からの変化量が小さくなるように、第2の予測係数更新値w
2を算出することが出来る。
【数22】
【0088】
なお、本実施形態における第2の予測係数算出部24は、以下の式(23)に従って、第2の予測係数更新値w
2を算出しても構わない。つまり、第2の予測係数算出部24は、予測係数w(t)と同じ値を、第2の予測係数更新値w
2として算出するように構成することが出来る。また、第2の予測係数算出部24は、第1の予測係数更新値が選択されない条件において、第1の予測係数更新値w
1よりもw(t)に近い予想係数をw
2として得られるならば、他の算出方式を用いても構わない。さらに、上述したように、本実施形態においては、第2の予測係数算出部24を備えなくても構わない。
【数23】
【0089】
次に、本実施形態における予測係数変更部25について説明する。本実施形態における予測係数変更部25も、第1の実施形態と同様に、真偽判定を行った後に、その判定結果に従って、次時刻の予測係数w(t+1)を選択する。
【0090】
具体的な動作も原則としては第1の実施形態と同様である。そのため、詳細な説明については省略する。ただし、上述したように、本実施形態における適応デジタルフィルタ2は、第2の予測係数算出部24を備えていない場合がある。その場合、予測係数変更部25は、上述した式(11)乃至(15)のいずれかの条件を満たさないと判断した場合(真偽判断の結果が偽であると判断した場合)には、次時刻の予測係数w(t+1)を予測係数w(t)から変更しないと決定することになる。
【0091】
具体的に説明すると、予測係数変更部25は、真偽判断の結果が真である場合には、第1の予測係数更新値w
1を次時刻の予測係数w(t+1)として選択する。一方で、予測係数変更部25は、真偽判断の結果が偽である場合には、次時刻の予測係数w(t+1)を予測係数w(t)から変更しない。本実施形態における予測係数変更部25は、このような選択を行うように構成することが可能である。
【0092】
以上が、適応デジタルフィルタ2の構成のうち、本実施形態において特徴的な構成である。次に、本実施形態における適応デジタルフィルタ2の動作を、
図7を用いて説明する。なお、適応デジタルフィルタ2が第2の予測係数算出部24を備えている際の動作は、第1の実施形態で示した適応デジタルフィルタ1の動作と同様の動作になる。そのため、以下においては、適応デジタルフィルタ2が第2の予測係数算出部24を備えていない場合の動作について説明する。
【0093】
まず、第1の予測係数更新値w
1を算出するまでの動作は第1の実施形態と同様である。そのため、第1の実施形態で説明したステップS004までの動作の説明は省略する。
【0094】
次に、ステップ004の後、予測係数変更部25は、真偽判定を行った後に、次時刻の予測係数の選択を行うことになる(S005)。
【0095】
ここで、真偽判定の動作は第1の実施形態と同様である。また、真偽判定の結果が真である場合も、第1の実施形態と同様の動作により次時刻の予測係数w(t+1)=w
1を、予測係数記憶部16に記憶することになる(S006)。
【0096】
一方、真偽判定の結果が偽であった場合、予測係数変更部25は、次時刻の予測係数w(t+1)を予測係数w(t)から変更しない旨の選択を行う(S017)。そのため、予測係数変更部25は、予測係数記憶部16に記憶されている予測係数の変更を行わないことになる。
【0097】
そして、その後の流れは、第1の実施形態と同様である。つまり、適応デジタルフィルタ2は時刻変数tに1を加算して(S009)、終了判定を行うことになる(S010)。
【0098】
以上が、適応デジタルフィルタ2の動作の流れである。このような動作により、適応デジタルフィルタ2は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが出来る。
【0099】
このように、本実施形態における第2の予測係数算出部24は、式(21)などの計算式を備えて構成されている。そのため、第2の予測係数算出部24は、第1の予測係数更新値w
1よりも予測係数w(t)からの変化量が小さくなるように、第2の予測係数更新値w
2を算出することが出来る。
【0100】
ただし、式(21)に従って得られる値は、必ずしもコスト関数f(w’)を最小化する解ではない。そのため、適応デジタルフィルタ2には、常に第1の予測係数更新値w
1を次時刻の予測係数w(t+1)として用いる適応フィルタよりも、良い予測係数算出を行うという保証はない。しかしながら、確率勾配アルゴリズムが適する適応フィルタの用途において、式(15)の条件が成立しない状況の多くは、一時的に不安定な信号入力により信号電力P
x(t)が増大した場合か、偶発的に予測対象の信号に近い予測値が得られた場合である。そして、そのどちらにおいても、予測係数の変化量を第1の予測係数更新値w
1よりも小さくすることで過度の予測係数変動を抑制することができる。その結果、適応フィルタが出力する予測値を安定させることが可能である。
【0101】
以上より、本実施形態における第2の予測係数算出部24が式(21)などの計算式を備えて構成されることで、第1の予測係数更新値w
1よりも予測係数w(t)からの変化量が小さくなるように、第2の予測係数更新値w
2を算出することが出来ることが分かる。そして、第2の予測係数算出部24がそのように第2の予測係数更新値w
2を算出することで、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが出来ることが分かる。
【0102】
<実施形態3>
次に、本発明の第3の実施形態を、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態における適応デジタルフィルタの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【0103】
本実施形態における適応デジタルフィルタ3は、第1、第2の実施形態における適応デジタルフィルタとほぼ同様の構成を備えている。そのため、第1、第2の実施形態と同様の構成については、その説明を省略する。
【0104】
本実施形態における適応デジタルフィルタ3は、
図8で示すように、第1の予測係数算出部、第2の予測係数算出部、予測係数変更部の各機能を統合した、予測係数算出変更部33を備えている。
【0105】
具体的に説明すると、式(4)に従う第1の予測係数更新値w
1の算出処理、式(8)、式(9)に従う第2の予測係数更新値w
2の算出処理、式(15)に従う予測係数選択処理をまとめることで、次時刻の予測係数算出式を式(24)、式(25)で表すことが可能である。そこで、本実施形態における適応デジタルフィルタ3は、式(24)、式(25)を直接行う予測係数算出変更部33を、第1の予測係数算出部、第2の予測係数算出部、予測係数変更部、の代わりに備えている。
【数24】
【数25】
【0106】
このように、本実施形態における適応デジタルフィルタ3は、1、第2の実施形態における適応デジタルフィルタの第1の予測係数算出部、第2の予測係数算出部、予測係数変更部で用いられる数式から求められる数式を備える予測係数算出選択部33を備えている。そのため、予測係数算出変更部33が備える数式を用いて予想係数更新値を求めることで、コスト関数f(w’)の観点からみてより好ましい次時刻の予測係数を算出することができる。その結果、適応デジタルフィルタ3は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが可能になる。
【0107】
<実施形態4>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0108】
本実施形態における適応デジタルフィルタ4は、第1、第2の実施形態における適応デジタルフィルタとほぼ同様の構成を備えている。そのため、第1、第2の実施形態と同様の構成については、その説明を省略する。
【0109】
本実施形態における適応デジタルフィルタ4は、第1、第2の実施形態における適応デジタルフィルタと、第1の信号値x(t)の信号電力P
x(t)を求める際の計算式が異なっている。具体的には、本実施形態における適応デジタルフィルタ4は、以下の式(26)又は式(27)で表される電力算出近似式に従って、電力P
x(t)の算出を行う。
【数26】
【数27】
【0110】
式(26)は、D次元のベクトル信号x(t)の絶対値が最大である成分を取り出し、その2乗の定数倍で電力を近似するものである。ここで、式(26)中の定数k
1には、1以上D値以下の数値を設定するのが好ましい。例えば、定数k
1としては、Dの平方根、あるいは、それに近い値を設定する。
【0111】
また、式(27)は、D次元のベクトル信号x(t)の絶対値の和の2乗の定数倍で電力を近似するものである。ここで、式(27)中の定数k
2には、1未満の数値を設定するのが好ましい。例えば、Dの平方根の逆数、あるいは、それに近い値を設定する。
【0112】
このように、本実施形態における適応デジタルフィルタ4は、信号電力P
x(t)を求める際の計算式として式(26)又は式(27)を備えている。そのため、適応デジタルフィルタ4は、第1の実施形態の適応デジタルフィルタよりも、電力計算に要する乗算の回数を削減することが出来る。その結果、適応デジタルフィルタ4は、第1の実施形態の適応デジタルフィルタよりも、電力計算に要する演算量を少なくすることが可能である。また、適応デジタルフィルタ4は、本装置を回路で実現する際の回路規模を小さくすることが可能になる。
【0113】
<実施形態5>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0114】
本実施形態における適応デジタルフィルタ5は、第1、第2の実施形態における適応デジタルフィルタとほぼ同様の構成を備えている。そのため、第1、第2の実施形態と同様の構成については、その説明を省略する。
【0115】
本実施形態における適応デジタルフィルタ5は、第1、第2の実施形態における適応デジタルフィルタと、第1の予測係数算出部、第2の予測係数算出部、予測係数変更部で用いる数式が異なっている。
【0116】
具体的には、本実施形態における適応デジタルフィルタ5は、第1の予測係数算出部におけるサインアルゴリズムのステップサイズパラメータμ
1として、2のべき乗または2のべき乗の逆数を用いている。そして、ステップサイズパラメータμ
1として2のべき乗または2のべき乗の逆数を用いることで、上述した式(4)の乗算を、正数値もしくは固定小数点数のビットシフト演算や、浮動小数点数の指数部の加減算演算に置き換えている。
【0117】
また、本実施形態における適応デジタルフィルタ5は、上述した式(9)、式(15)の右辺における、予測残差e(t)の絶対値を信号電力で割った数を、それを超えない最大の2のべき乗、もしくは2のべき乗の逆数に置換している。具体的には、本実施形態における適応デジタルフィルタ5は、上述した式(9)を以下で示す式(28)に置き換えている。また、適応デジタルフィルタ5は、上述した式(15)を以下で示す式(29)に置き換えている。
【数28】
【数29】
【0118】
ここで、式(28)、式(29)におけるs(t)は、以下で示す式(30)に基づいて、比較演算と2のべき乗の除算の繰り返しにより算出する。また、式(4)と同様に、式(8)の第2の予測係数更新値算出における乗算を、ビットシフト演算などに置き換えている。
【数30】
【0119】
なお、本実施形態における適応デジタルフィルタ5も、第4の実施形態における適応デジタルフィルタ4と同様の電力算出近似式を用いるように構成しても構わない。
【0120】
このように、本実施形態における適応デジタルフィルタ5は、第1の予測係数算出部、第2の予測係数算出部、予測係数変更部が、第1の実施形態とは別の数式を備えている。そのため、適応デジタルフィルタ5は、第1の実施形態の適応デジタルフィルタよりも、電力計算に要する乗算の回数を削減することが出来る。その結果、適応デジタルフィルタ5は、第1の実施形態の適応デジタルフィルタよりも、電力計算に要する演算量を少なくすることが可能である。また、適応デジタルフィルタ5は、本装置を回路で実現する際の回路規模を小さくすることが可能になる。
【0121】
<実施形態6>
次に、本発明の第6の実施形態について、
図9を用いて説明する。
【0122】
第6の実施形態では、適応フィルタを備える情報処理装置について説明する。なお、本実施形態では、情報処理装置の概略を説明する。
【0123】
図9で示すように、本実施形態における情報処理装置4は、予測値算出部41と、予測残差算出部42と、予測係数算出部43と、予測係数変更部44と、を備えている。また、予測値算出部41は、装置外部から第1の信号値を入力可能なように構成されており、後述する信号予測値を出力可能なように構成されている。そして、予測残差算出部42は、装置外部から第2の信号値を入力可能なように構成されている。
【0124】
予測係数算出部41は、入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出する部分である。予測係数算出部41は、本実施形態において、適応フィルタとしての機能を持つことになる。
【0125】
予測残差算出部42は、入力された第2の信号値と前記予測値算出部が算出した前記信号予測値との差を予測残差として算出する部分である。本実施形態の情報処理装置4は、予測残差算出部42が算出する予測残差と、後述する更新予測残差と、に基づいて、予測係数を後述する予測係数更新値に変更するか否か決定することになる。
【0126】
予測係数算出部43は、予測係数と第1の信号値と予測残差とを変数とするサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出する部分である。なお、サインアルゴリズムのステップサイズパラメータとしては、予め定められた予め定められた正の定数を用いても構わないし、時間tの経過とともに徐々に減少するように構成した値を用いても構わない。
【0127】
予測係数変更部44は、予測残差と、予測係数更新値を用いて新たに算出した更新予測残差と、に基づいて、予測係数を予測係数更新値に変更するか否か決定する部分である。予測係数変更部44が、予測残差と更新予測残差とに基づいて予測係数を予測係数更新値に変更するか否か決定することで、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが出来るようになる。
【0128】
また、情報処理装置4の予測係数変更部44は、予測残差と更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも一方が0である場合に、予測係数を予測係数更新値に変更する、という構成を採ることが出来る。
【0129】
また、情報処理装置4の予測係数変更部44は、予測残差を第1の信号値の信号電力で割った値の絶対値が、予測係数算出部が予測係数更新値を算出する際に用いるサインアルゴリズムのステップサイズパラメータ以上の値になるとき、予測残差と更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも片方が0であると判断し、予測係数を予測係数更新値に変更する、という構成を採ることが出来る。
【0130】
このように、本実施形態における情報処理装置4は、予測値算出部41と、予測残差算出部42と、予測係数算出部43と、予測係数変更部44と、を備えている。このような構成により、情報処理装置4は、予測残差と更新予測残差とを算出することができる。そして、情報処理装置4は、予測残差と更新予測残差とに基づいて、予測係数を予測係数更新値に変更するか否か決定することが出来る。その結果、情報処理装置4は、過度の予測係数の変動を抑制することが可能になる。また、情報処理装置4は、適応フィルタが出力する予測値を安定させることが可能になる。そして、情報処理装置4は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが出来るようになる。
【0131】
なお、入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出する予測値算出部と、入力された第2の信号値と予測値算出部が算出した信号予測値との差を予測残差として算出する予測残差算出部と、予測係数と第1の信号値と予測残差とを変数とするサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出する予測係数算出変更部と、を備え、予測係数算出変更部は、予め定められたステップサイズパラメータの値と、予測残差の絶対値を第1の信号値を2乗した値で割った値と、の小さい方の値を、サインアルゴリズムのステップサイズパラメータの値として選択して予測係数更新値を算出し、予測係数を予測係数更新値に変更する、情報処理装置も、上述した情報処理装置と同様の効果を奏するため、本発明の目的を達成することが出来る。
【0132】
また、上述した情報処理装置により実行される情報処理方法は、入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出し、入力された第2の信号値と信号予測値との差を予測残差として算出し、予測係数と第1の信号値と予測残差とを変数とするサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出し、予測残差と、予測係数更新値を予測係数として用いることで新たに算出した更新予測残差と、に基づいて、前記予測係数を前記予測係数更新値に変更するか否か決定する、という情報処理方法である。このような情報処理方法であっても、上述した情報処理装置と同様の効果を奏するため、本発明の目的を達成することが出来る。
【0133】
また、上述した情報処理装置により実行される情報処理方法としては、入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出し、入力された第2の信号値と信号予測値との差を予測残差として算出し、予測係数と第1の信号値と予測残差とを変数とし、予め定められたステップサイズパラメータの値と、予測残差の絶対値を第1の信号値を2乗した値で割った値と、の小さい方の値を、計算に用いるステップサイズパラメータの値として選択するサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出し、予測係数を前記予測係数更新値に変更する、という情報処理方法もある。このような情報処理方法であっても、上述した情報処理装置と同様の効果を奏するため、本発明の目的を達成することが出来る。
【0134】
また、情報処理装置に、入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出する予測値算出手段と、入力された第2の信号値と予測値算出手段が算出した信号予測値との差を予測残差として算出する予測残差算出手段と、予測係数と第1の信号値と予測残差とを変数とするサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出する予測係数算出手段と、予測残差と、予測係数更新値を予測係数として用いることで新たに算出した更新予測残差と、に基づいて、予測係数を予測係数更新値に変更するか否か決定する予測係数変更手段と、を実現させるためのプログラムを組み込むことによっても、上述した情報処理装置と同様の効果を奏するため、本発明の目的を達成することが出来る。
【0135】
上述した構成を有する情報処理装置、情報処理方法、プログラム、であっても、上記情報処理装置と同様の作用を有するために、上述した本発明の目的を達成することが可能である。
【0136】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における情報処理装置などの概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0137】
(付記1)
入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出する予測値算出部と、
入力された第2の信号値と前記予測値算出部が算出した前記信号予測値との差を予測残差として算出する予測残差算出部と、
前記予測係数と前記第1の信号値と前記予測残差とを変数とするサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出する予測係数算出部と、
前記予測残差と、前記予測係数更新値を前記予測係数として用いることで新たに算出した更新予測残差と、に基づいて、前記予測係数を前記予測係数更新値に変更するか否か決定する予測係数変更部と、を備える、
情報処理装置。
【0138】
この構成によると、情報処理装置は、予測値算出部と、予測残差算出部と、予測係数算出部と、予測係数変更部と、を備えている。このような構成により、情報処理装置は、予測残差と更新予測残差とを算出することができる。そして、情報処理装置は、予測残差と更新予測残差とに基づいて、予測係数を予測係数更新値に変更するか否か決定することが出来る。その結果、情報処理装置は、過度の予測係数の変動を抑制することが可能になる。また、情報処理装置は、適応フィルタが出力する予測値を安定させることが可能になる。そして、情報処理装置は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが出来るようになる。
【0139】
(付記2)
付記1に記載の情報処理装置であって、
前記予測係数変更部は、前記予測残差と前記更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも一方が0である場合に、前記予測係数を前記予測係数更新値に変更する、
情報処理装置。
【0140】
この構成によると、予測係数変更部は、予測残差と更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも一方が0である場合に、予測係数を予測係数更新値に変更するように構成される。このような構成により、情報処理装置は、予測残差と更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも一方が0である場合に、予測係数を予測係数更新値に変更することが出来るようになる。その結果、情報処理装置は、過度の予測係数の変動を抑制することが可能になる。
【0141】
(付記3)
付記1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記予測係数変更部は、前記予測残差を前記第1の信号値の信号電力で割った値の絶対値が、前記予測係数算出部が前記予測係数更新値を算出する際に用いる前記サインアルゴリズムのステップサイズパラメータ以上の値になるとき、前記予測残差と前記更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも片方が0であると判断し、前記予測係数を前記予測係数更新値に変更する、
情報処理装置。
【0142】
この構成によると、予測係数変更部は、予測残差を第1の信号値の信号電力で割った値の絶対値が、予測係数算出部が予測係数更新値を算出する際に用いるサインアルゴリズムのステップサイズパラメータ以上の値になるとき、予測残差と更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも片方が0であると判断し、予測係数を予測係数更新値に変更するように構成される。このような構成により、情報処理装置は、予測残差を第1の信号値の信号電力で割った値の絶対値が、予測係数算出部が予測係数更新値を算出する際に用いるサインアルゴリズムのステップサイズパラメータ以上の値になるときに、予測係数を予測係数更新値に変更することが出来るようになる。その結果、情報処理装置は、過度の予測係数の変動を抑制することが可能になる。
【0143】
(付記4)
付記2又は3に記載の情報処理装置であって、
前記予測係数算出部として、前記サインアルゴリズムに基づいて第1の予測係数更新値を算出する第1の予測係数算出部と、前記第1の予測係数更新値よりも前記予測係数からの変化量が小さくなるように第2の予測係数更新値を算出する第2の予測係数算出部と、を備え、
前記予測係数変更部は、前記予測残差と前記更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも一方が0である場合に、前記予測係数を前記第1の予測係数更新値に変更し、前記予測残差と前記更新予測残差の正負の符号が異なる場合に、前記予測係数を前記第2の予測係数更新値に変更する、
情報処理装置。
【0144】
この構成によると、情報処理装置が、予測係数算出部として第1の予測係数算出部と第2の予測係数算出部とを備えることになる。また、予測係数変更部は、予測残差と更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも一方が0である場合に、予測係数を第1の予測係数更新値に変更し、予測残差と更新予測残差の正負の符号が異なる場合に、予測係数を第2の予測係数更新値に変更するように構成されることになる。このような構成により、情報処理装置は、予測残差と更新予測残差とを算出して、真偽判定を行うことができるようになる。その結果、情報処理装置は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題を解決することが可能になる。
【0145】
(付記4−1)
付記4に記載の情報処理装置であって、
前記第2の予測係数算出部は、前記第1の予測係数算出部が用いるサインアルゴリズムが備えるステップサイズパラメータよりも、小さいステップサイズパラメータを備えるサンアルゴリズムに基づいて、前記第2の予測係数更新値を算出する、
情報処理装置。
【0146】
(付記5)
付記4に記載の情報処理装置であって、
前記第2の予測係数算出部は、前記予測残差を前記第1の信号値の信号電力で割った値に前記第1の信号値を乗じて前記予測係数に加算した値を、前記第2の予測係数更新値として算出する、
情報処理装置。
【0147】
この構成によると、第2の予測係数算出部は、予測残差を第1の信号値の信号電力で割った値に第1の信号値を乗じて予測係数に加算した値を、第2の予測係数更新値として算出するように構成されることになる。このような構成により、情報処理装置は、コスト関数の観点からみてより好ましい次時刻の予測係数を選択することができるようになる。その結果、情報処理装置は、サインアルゴリズムに基づく適応フィルタの予測精度が低下することがあるという問題をより確実に解決することが可能になる。
【0148】
(付記5−1)
付記5に記載の情報処理装置であって、
前記予測残差を前記第1の信号値の信号電力で割った値を、2のべき乗により近似して算出する、
情報処理装置。
【0149】
(付記5−2)
付記5に記載の情報処理装置であって、
前記予測残差を前記第1の信号値の信号電力で割った値を、2のべき乗の逆数により近似して算出する、
情報処理装置。
【0150】
(付記5−3)
付記5−1又は5−2に記載の情報処理装置であって、
除算計算をビットシフト演算に置換した、
情報処理装置。
【0151】
(付記6)
付記3又は5に記載の情報処理装置であって、
前記第1の信号値が多次元のベクトル値をとる場合、
前記信号電力を、前記第1の信号値が含む成分の中で最も絶対値が大きくなる成分の2乗に予め定められた定数をかけることにより求める、
情報処理装置。
【0152】
この構成によると、情報処理装置は、信号電力を前記第1の信号値が含む成分の中で最も絶対値が大きくなる成分の2乗に予め定められた定数をかけることにより求めるよう構成されることになる。このような構成により、情報処理装置は、電力計算に要する乗算の回数を削減することが出来る。その結果、情報処理装置は、電力計算に要する演算量を少なくすることが可能である。また、情報処理装置を回路で実現する際の回路規模を小さくすることが可能になる。
【0153】
(付記6−1)
付記3又は5に記載の情報処理装置であって、
前記第1の信号値が多次元のベクトル値をとる場合、
前記信号電力は、前記第1の信号値の各成分の絶対値の和の2乗に予め定められた定数を乗じることで近似算出することにより求める、
情報処理装置。
【0154】
(付記7)
入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出する予測値算出部と、
入力された第2の信号値と前記予測値算出部が算出した前記信号予測値との差を予測残差として算出する予測残差算出部と、
前記予測係数と前記第1の信号値と前記予測残差とを変数とするサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出する予測係数算出変更部と、を備え、
前記予測係数算出変更部は、予め定められたステップサイズパラメータの値と、前記予測残差の絶対値を前記第1の信号値を2乗した値で割った値と、の小さい方の値を、前記サインアルゴリズムのステップサイズパラメータの値として選択して予測係数更新値を算出し、前記予測係数を前記予測係数更新値に変更する、
情報処理装置。
【0155】
(付記8)
入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出し、
入力された第2の信号値と前記信号予測値との差を予測残差として算出し、
前記予測係数と前記第1の信号値と前記予測残差とを変数とするサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出し、
前記予測残差と、前記予測係数更新値を前記予測係数として用いることで新たに算出した更新予測残差と、に基づいて、前記予測係数を前記予測係数更新値に変更するか否か決定する、
情報処理方法。
【0156】
(付記8−1)
付記8に記載の情報処理方法であって、
前記予測係数更新値として、前記サインアルゴリズムに基づいて算出される第1の予測係数更新値と、前記第1の予測係数更新値よりも前記予測係数からの変化量が小さくなるように算出される第2の予測係数更新値と、を算出し、
前記予測残差と前記更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも一方が0である場合に、前記予測係数を前記第1の予測係数更新値に変更し、前記予測残差と前記更新予測残差の正負の符号が異なる場合に、前記予測係数を前記第2の予測係数更新値に変更する、
情報処理方法。
【0157】
(付記9)
入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出し、
入力された第2の信号値と前記信号予測値との差を予測残差として算出し、
前記予測係数と前記第1の信号値と前記予測残差とを変数とし、予め定められたステップサイズパラメータの値と、前記予測残差の絶対値を前記第1の信号値を2乗した値で割った値と、の小さい方の値を、計算に用いるステップサイズパラメータの値として選択するサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出し、
前記予測係数を前記予測係数更新値に変更する、
情報処理方法。
【0158】
(付記10)
情報処理装置に、
入力された第1の信号値と予測係数とから、第2の信号の予測値を信号予測値として算出する予測値算出手段と、
入力された第2の信号値と前記予測値算出手段が算出した前記信号予測値との差を予測残差として算出する予測残差算出手段と、
前記予測係数と前記第1の信号値と前記予測残差とを変数とするサインアルゴリズムに基づいて、予測係数更新値を算出する予測係数算出手段と、
前記予測残差と、前記予測係数更新値を前記予測係数として用いることで新たに算出した更新予測残差と、に基づいて、前記予測係数を前記予測係数更新値に変更するか否か決定する予測係数変更手段と、を実現させるための、
プログラム。
【0159】
(付記10−1)
付記10に記載のプログラムであって、
前記予測係数算出手段として、前記サインアルゴリズムに基づいて第1の予測係数更新値を算出する第1の予測係数算出手段と、前記第1の予測係数更新値よりも前記予測係数からの変化量が小さくなるように第2の予測係数更新値を算出する第2の予測係数算出手段と、を実現させ、
前記予測係数変更手段は、前記予測残差と前記更新予測残差の正負の符号が同一又は少なくとも一方が0である場合に、前記予測係数を前記第1の予測係数更新値に変更し、前記予測残差と前記更新予測残差の正負の符号が異なる場合に、前記予測係数を前記第2の予測係数更新値に変更するに機能する、
プログラム