(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2プラネタリギヤ、前記第1プラネタリギヤ、前記第3プラネタリギヤおよび前記第4プラネタリギヤは、この順序で前記入力軸側から前記出力軸側に向かって順次並列に配置され、
前記第2〜第4クラッチは、前記ハウジング内の外径側に配置され、
前記第2および第1キャリアは、前記入力軸に直結され前記第2および第1サンギヤの内側を通る入力直結部材に、前記出力軸側で直結され、
前記第2クラッチは、前記第3サンギヤに直結され前記第2および第1リングギヤの外側を通る第2クラッチ連結部材を介して、前記第2サンギヤと前記第3サンギヤとを係脱可能に連結し、
前記第4クラッチは、前記第2クラッチ連結部材に直結された第4クラッチ連結部材を介して、前記第2および第1キャリアと前記第3サンギヤとを係脱可能に連結する請求項1に記載の車両用自動変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される車両用自動変速機10では、
図8のトルク分担比に示すように、1速時は第3クラッチCL13のトルク分担比が「1.875」、5速時は第1クラッチCL11のトルク分担比が「1.974」、6速時は第1クラッチCL11のトルク分担比が「1.571」、リバース時は第2クラッチCL12のトルク分担比が「1.875」と「1.000」を超えており、6つの係合要素のうち3つの係合要素、すなわち第1、第2および第3クラッチCL11,CL12,CL13は大型化となる傾向にある。
【0008】
また、商用車、例えばダンプカーや消防車等における作業機の駆動のために車両駆動用のエンジン動力を取り出すパワー・テイク・オフ(以下単にPTOと称す)を行う場合、エンジンからの入力回転と連結した要素の連結部材に動力外部取出し部材を設ける必要がある。特許文献1に示される車両用自動変速機10では、エンジンからの入力回転と連結した第2キャリアC12が、ハウジングHの内周面近傍に位置しない構成であるため、停車中および走行中といかなる変速段においてもPTOを使用可能とするためには、エンジンと第1プラネタリ機構P11との間にエンジンからの入力回転を直接取り出す機構が必要となり、部品点数の増加並びに軸方向長さも増加せざるを得ない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、大型化するクラッチの数を低減することができる車両用自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る車両用自動変速機は、ハウジングと、第1プラネタリギヤの第1リングギヤと第2プラネタリギヤの第2リングギヤとが互いに直結され、前記第1リングギヤおよび前記第2リングギヤと第4プラネタリギヤの第4サンギヤとが直結され
、第3プラネタリギヤの第3リングギヤと前記第4プラネタリギヤの第4キャリアとが直結されて、前記ハウジングに回転軸線と同軸に支承されたシングルピニオン式の4個のプラネタリギヤと、前記ハウジングに前記回転軸線回りに回転可能に軸承され、前記第1プラネタリギヤの第1キャリアに直結された入力軸と、前記ハウジングに
前記回転軸線回りに回転可能に軸承され、前記第4キャリアに直結された出力軸と、前記第1プラネタリギヤの第1サンギヤを前記ハウジングに係脱可能に固定する第1ブレーキと、前記第4プラネタリギヤの第4リングギヤを前記ハウジングに係脱可能に固定する第2ブレーキと、前記互いに直結された第1、第2リングギヤおよび前記第4サンギヤと前記第3プラネタリギヤの第3キャリアとを係脱可能に連結する第1クラッチと、前記第2プラネタリギヤの第2サンギヤと前記第3プラネタリギヤの第3サンギヤとを係脱可能に連結する第2クラッチと、前記第3キャリアと前記第4リングギヤとを係脱可能に連結する第3クラッチと、互いに直結された前記第1キャリアおよび前記第2プラネタリギヤの第2キャリアと前記第3サンギヤとを係脱可能に連結する第4クラッチと、を備えることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、第1クラッチおよび第2クラッチのトルク分担比が入力トルクと比較して小さくなるようにすることができ、トルク分担比が入力トルクよりも大きくなる場合があるのは第3クラッチのみとなる。よって、大型化するクラッチの数を低減することができ、車両用自動変速機の小型化を図ることができる。
【0012】
上記課題を解決するため、請求項2に係る車両用自動変速機は、請求項1において、前記第1〜第4プラネタリギヤは、この順序で前記入力軸側から前記出力軸側に向かって順次並列に配置され、前記第1キャリアは、前記入力軸に直結され前記第1サンギヤの内側を通る入力直結部材に、前記出力軸側で直結されているとともに、前記第2キャリアに直結され前記第1および第2リングギヤの外側を通るギヤ連結部材に、前記入力軸側で直結され、前記第4クラッチは、前記ギヤ連結部材に直結された第4クラッチ連結部材を介して、前記第1および第2キャリアと前記第3サンギヤとを係脱可能に連結し、前記ギヤ連結部材における前記第1および第2リングギヤより外側に、動力を外部に取り出すための動力外部取出し部材を設けたことを要旨とする。
【0013】
これによれば、第1サンギヤは、第1ブレーキと係合するためのブレーキ連結部材と連結する以外は、他のプラネタリ機構の要素と連結するための連結部材および他の係合要素と係合するための連結部材との連結は不要である。このため、入力軸と直結された第1キャリアに連結されるギヤ連結部材は、ハウジングの内周面近傍に位置する経路を通ることが可能となる。よって、変速段にかかわらず、第1キャリアに連結されるギヤ連結部材から、常に入力回転と同じ回転の動力をPTOとして取り出すことができる。
【0014】
上記課題を解決するため、請求項3に係る車両用自動変速機は、請求項1において、前記第2プラネタリギヤ、前記第1プラネタリギヤ、前記第3プラネタリギヤおよび前記第4プラネタリギヤは、この順序で前記入力軸側から前記出力軸側に向かって順次並列に配置され、前記第2〜第4クラッチは、前記ハウジング内の外径側に配置され、前記第2および第1キャリアは、前記入力軸に直結され前記第2および第1サンギヤの内側を通る入力直結部材に、前記出力軸側で直結され、前記第2クラッチは、前記第3サンギヤに直結され前記第2および第1リングギヤの外側を通る第2クラッチ連結部材を介して、前記第2サンギヤと前記第3サンギヤとを係脱可能に連結し、前記第4クラッチは、前記第2クラッチ連結部材に直結された第4クラッチ連結部材を介して、前記第2および第1キャリアと前記第3サンギヤとを係脱可能に連結することを要旨とする。
【0015】
これによれば、第2クラッチおよび第4クラッチは、ハウジング内の外径側に配置された構成とすることができるので、入力軸から入力されるトルク容量を大きくすることができる。よって、第2クラッチおよび第4クラッチの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の車両用自動変速機を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。実施形態において、車両用自動変速機は、車両に搭載されたエンジンが出力する回転駆動力を変速する装置として用いられる。車両は、車両用自動変速機により変速された回転駆動力が差動装置などを介して駆動輪に伝達され、車両用自動変速機において成立した所定の変速段で前進または後進するように構成されている。
【0018】
<第1実施形態>
車両用自動変速機1の概略構成について
図1を参照して説明する。車両用自動変速機1は、入力側(
図1の左側)から出力側(
図1の右側)に向かって軸方向に並設された4つのプラネタリ機構P1〜P4と、複数の要素同士を選択的に連結可能な4つのクラッチCL1〜CL4と、所定の要素の回転を制動する2つの第2ブレーキB1,B2と、各要素を連結する連結部材3〜8,V1,V2,U11,U12,U21,U22,U31,U32,U41,U42と、入力軸Nと、出力軸Tとを備えて構成される。
【0019】
また、この車両用自動変速機1は、車両の制御ECU2による制御信号に基づいて各クラッチCL1〜CL4、各ブレーキB1,B2からなる係合要素の作動状態を制御される。そして、本実施形態においては、上記の係合要素のうち3つの係合要素を作動させることによって、入力軸Nから入力される回転駆動力を、前進10速段および後進1速段の何れかに変速して、出力軸Tから出力可能な構成となっている。車両用自動変速機1おける係合要素の作動状態と成立する変速段に関する詳細については後述する。
【0020】
入力軸Nおよび出力軸Tは、ハウジングHに、回転軸線L周りに回転可能に軸承されている。入力軸Nは、図略のクラッチ装置などを介してエンジンの回転駆動力を車両用自動変速機1に入力する軸部材である。出力軸Tは、入力軸Nと同軸上に配置され、変速された回転駆動力を図略の差動装置などを介して駆動輪に出力する軸部材である。
【0021】
各プラネタリ機構P1〜P4は、キャリアC1〜C4に回転可能に支持されたピニオンギヤがサンギヤS1〜S4およびリングギヤR1〜R4に噛合するシングルピニオン式であり、入力側から順に第1〜第4プラネタリ機構P1〜P4と称する。そして、各プラネタリ機構P1〜P4の各要素は、第1〜第4サンギヤS1〜S4、第1〜第4リングギヤR1〜R4、第1〜第4キャリアC1〜C4と称する。
【0022】
第1プラネタリ機構P1は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、第1サンギヤS1と第1リングギヤR1とに噛合する第1ピ二オンQ1を支承する第1キャリアC1で構成される。
第2プラネタリ機構P2は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、第2サンギヤS2と第2リングギヤR2とに噛合する第2ピ二オンQ2を支承する第2キャリアC2で構成される。
【0023】
第3プラネタリ機構P3は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、第3サンギヤS3と第3リングギヤR3とに噛合する第3ピ二オンQ3を支承する第3キャリアC3で構成される。
第4プラネタリ機構P4は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とに噛合する第4ピ二オンQ4を支承する第4キャリアC4で構成される。
【0024】
各ブレーキB1,B2は、ハウジングHに設けられ、所定の要素の回転を制動する係合要素である。本実施形態では、各クラッチC1〜C4と同様に、ハウジングHに形成された油路から供給される油圧によって作動する油圧式としている。これにより、各ブレーキB1,B2は、例えば制御ECU2による制御指令に基づいて作動する油圧ポンプから油圧を供給されると、図示しないディスクにパッドを押圧して、対象とする所定の要素の回転を制動する。そして、油圧ポンプによる油圧の供給が遮断されると、ディスクからパッドを離間させて、所定の要素の回転を許容する。
【0025】
各クラッチCL1〜CL4は、複数の要素同士を選択的に連結可能な係合要素である。本実施形態では、各クラッチCL1〜CL4は、常開型であり、供給される油圧によって作動する油圧式としている。これにより、各クラッチCL1〜CL4は、例えば制御ECU2による制御指令に基づいて作動する油圧ポンプから入力軸NやハウジングHに形成された油路を介して油圧を供給されると、図示しない複数のクラッチ板を接触させて、対象の要素間で駆動力が伝達されるように要素同士を連結する。そして、上記の油圧ポンプによる油圧の供給が遮断されると、クラッチ板同士を離間させて、対象の要素間で駆動力が伝達されないように要素同士を離脱させる。
【0026】
入力軸Nは、第1サンギヤS1の内側を通って軸線方向に延在する入力軸連結部材3を介して第1キャリアC1に直結されている。
出力軸Tは、出力軸連結部材4を介して第4キャリアC4に直結されている。
第1キャリアC1および第2キャリアC2は、第1、第2リングギヤR1,R2の外側を通って軸線方向に延在する第1ギヤ連結部材5(本発明の「ギヤ連結部材」に相当)を介して直結されている。そして、第1ギヤ連結部材5には、動力を外部に取り出すための動力外部取出し部材Mが設けられている。
【0027】
第1リングギヤR1および第2リングギヤR2は、第2ギヤ連結部材6を介して直結されている。そして、第1、第2リングギヤR1,R2および第4サンギヤS4は、第2ギヤ連結部材6に直結され第2、第3サンギヤS2,S3の内側を通って軸線方向に延在する第3ギヤ連結部材7を介して直結されている。
第3リングギヤR3および第4キャリアC4は、第4ギヤ連結部材8を介して直結されている。
【0028】
第1ブレーキB1は、第1ブレーキ連結部材V1に直結されている第1サンギヤS1の回転を、第1ブレーキ連結部材V1を介して制動する。
第2ブレーキB2は、第2ブレーキ連結部材V2に直結されている第4リングギヤR4の回転を、第2ブレーキ連結部材V2を介して制動する。
第1ブレーキB1は第1プラネタリ機構P1側に、第2ブレーキB2は第4プラネタリ機構P4側に離間して配置されているので、第1、第2ブレーキB1,B2間に、第1〜第4クラッチCL1〜CL4を配置することができる。
【0029】
第1クラッチCL1は、出力軸T側で第1クラッチ連結部材U11を介して、第3キャリアC3に直結され、第2、第3サンギヤS2,S3の内側を通って軸線方向に延在する第1クラッチ連結部材U12を介して、第3キャリアC3と第1、第2リングギヤR1,R2とを係脱可能に連結する。
第2クラッチCL2は、第2クラッチ連結部材U21を介して、第2サンギヤS2に直結され、第2クラッチ連結部材U22を介して、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とを係脱可能に連結する。
【0030】
第3クラッチCL3は、第3リングギヤR3の外側を通って軸線方向に延在する第3クラッチ直結部材U31を介して、第4リングギヤR4に直結され、入力軸N側で第3クラッチ連結部材U32を介して、第4リングギヤR4と第3キャリアC3とを係脱可能に連結する。第3クラッチCL3は、第2プラネタリ機構P2と第3プラネタリ機構P3との間のハウジングHの内周面Ha側に配置することができる。よって、第3クラッチCL3自体を小型化することができる。
第4クラッチCL4は、第4クラッチ直結部材U41を介して、第1ギヤ連結部材5に直結され、第2クラッチ連結部材U22に直結されている第4クラッチ連結部材U42を介して、第1、第2キャリアC1,C2と第3サンギヤS3とを係脱可能に連結する。
【0031】
以上のように構成された車両用自動変速機1は、第1〜第4クラッチCL1〜CL4を選択的に係脱し、第1および第2ブレーキB1,B2を選択的に作動して第1〜第4プラネタリ機構P1〜P4の要素の回転を規制することにより、前進10段、後進1段の変速段を成立することができる。
図2において、各変速段に対応する各クラッチCL1〜CL4、各ブレーキB1,B2のトルク分担比を示しており、欄に数値が付されている場合、クラッチCL1〜CL4であれば接続状態、ブレーキB1,B2であれば回転規制状態にあることを示す。各欄の数値は、入力トルクを「1.000」としたときのトルク分担比である。
【0032】
一般的に、シングルピ二オン式プラネタリ機構においては、サンギヤの回転数Ns、キャリアの回転数Nc、リングギヤの回転数Nrと遊星歯車機構のギヤ比λとの関係は、式(1)で示され、各変速段におけるギヤ比は、式(1)に基づいて算出される。第1〜第4プラネタリ機構P1〜P4の第1〜第4サンギヤS1〜S4の歯数をZs1〜Zs4、第1〜第4リングギヤR1〜R4の歯数をZr1〜Zr4とすると、第1〜第4プラネタリ機構P1〜P4のギヤ比λ1〜λ4は、λ1=Zs1/Zr1、λ2=Zs2/Zr2、λ3=Zs3/Zr3、λ4=Zs4/Zr4である。
Nr=(1+λ)Nc−λNs・・・(1)
【0033】
第1、第2ブレーキB1,B2を選択的に作動し、第1〜第4クラッチCL1〜CL4を選択的に接続したとき、第1〜第4プラネタリ機構P1〜P4の各要素の速度比は、
図3に示す速度線図のようになる。速度線図は、プラネタリ機構のサンギヤ、キャリア、リングギヤからなる各要素を横軸方向にギヤ比に対応させた間隔で配置し、縦軸方向に各要素に対応してその速度比を取ったものである。
【0034】
すなわち、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが、第2クラッチCL2を介して連結されるので、S2,S3が付された1本の縦線上に、連結される第2サンギヤS2および第3サンギヤS3の速度比を表す。また、第2リングギヤR2と第3キャリアC3と第4サンギヤS4とが、第1クラッチCL1を介して連結されるので、R2,C3,S4が付された1本の縦線上に、連結される第2リングギヤR2、第3キャリアC3および第4サンギヤS4の速度比を表す。そして、C2が付された1本の線上に、第2キャリアC2の速度比を表す。また、第3キャリアC3と第4リングギヤR4とが、第3クラッチCL3を介して連結されるので、C3,R4が付された1本の縦線上に、連結される第3キャリアC3および第4リングギヤR4の速度比を表す。
【0035】
そして、第2プラネタリ機構P2は、シングルピニオン型であるので、第2サンギヤS2の縦線と第2キャリアC2の縦線との間隔を1とみなし、第2リングギヤR2の縦線を第2キャリアC2の縦線から第2サンギヤS2の縦線の反対側に間隔λ2だけ離して配置する。第3プラネタリ機構P3は、シングルピニオン型であるので、第3サンギヤS3の縦線と第3キャリアC3の縦線との間隔を1とみなし、第3リングギヤR3の縦線を第3キャリアC3の縦線から第3サンギヤS3の縦線の反対側に間隔λ3だけ離して配置する。第4プラネタリ機構P4は、シングルピニオン型であるので、第4サンギヤS4の縦線と第4キャリアC4の縦線との間隔を1とみなし、第4リングギヤR4の縦線を第4キャリアC4の縦線から第4サンギヤS4の縦線の反対側に間隔λ4だけ離して配置する。
【0036】
例えば、車両用自動変速機1における第1速段は、係合表によると、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2および第2ブレーキB2の作動状態がONである。第2クラッチCL2の係合により、第2サンギヤS2および第3サンギヤS3が一体回転し、第1クラッチCL1の係合により、第2リングギヤR2、第3キャリアC3および第4サンギヤS4が一体回転する。第4リングギヤR4は第2ブレーキB2により制動されているので、第2キャリアC2に入力された回転駆動力は、第2〜第4プラネタリ機構P2〜P4の歯数に応じた変速比で減速され、第4キャリアC4から出力軸連結部材72を介して出力軸Tに回転駆動力を伝達する。
【0037】
車両用自動変速機1が第1速段から第2速段に移行するには、第2クラッチCL2および第2ブレーキB2の作動状態を維持しつつ、作動させる係合要素を第1クラッチCL1から第4クラッチCL4に切り換える。このような係合状態では、先ず、第2クラッチCL2および第4クラッチCL4により第1、第2プラネタリ機構P1,P2が一体となり、第2リングギヤR2に入力された入力軸Nの回転駆動力が、第4サンギヤS4に伝達される。第4リングギヤR4は第2ブレーキB2により制動されているので、第4サンギヤS4から入力された回転駆動力を歯数に応じた変速比で減速し、第4キャリアC4から出力軸連結部材72を介して出力軸Tに回転駆動力を伝達する。
【0038】
このように、車両用自動変速機1は、6つの係合要素のうち3つの係合要素を選択的に作動させることによって、
図3の速度線図に示すように、それぞれ異なる変速比となる変速段を成立可能としている。また、変速装置1は、
図2の係合表に示すように、作動させる3つの係合要素のうち1つを切り換えることによって、隣り合う変速段に移行可能としている。
【0039】
ここで、一般的に、キャリア上に設けられるクラッチは、大型化となる傾向にある。クラッチの大型化を回避するためには、クラッチのトルク分担比が小さくなるように車両用自動変速機1を構成すればよい。クラッチのトルク分担比の演算方法を従来の車両用自動変速機10および本実施形態の車両用自動変速機1における第1変速段の場合で説明する。
【0040】
先ず、従来の車両用自動変速機10における第1変速段の場合について
図7および
図8を参照して説明する。第1変速段においては、第3クラッチCL13、第4クラッチCL14および第2ブレーキB12の作動状態がONである。なお、第1,2サンギヤS11,S12、第1,2リングギヤR11,R12の各歯数をZ
11s,Z
12s,Z
11r,Z
12rとしたとき、第1,2プラネタリ機構P11,P12のギヤ比ρ
11,ρ
12をZ
11r/Z
11s,Z
12r/Z
12sとする。また、第1,2サンギヤS11,S12、第1,2リングギヤR11,R12、第1,2キャリアC11,C12の各トルク分担比をT
11s,T
12s,T
11r,T
12r,T
11c,T
12cとする。
【0041】
入力軸Nの回転駆動力(「1.000」とする)は、第2キャリアC12に入力されるので、T
12cは次式(1)で表される。よって、T
12rは次式(2)で表され、T
12sは次式(3)で表される。
【0042】
T
12c=−1・・・(1)
T
12r=ρ
12/(ρ
12+1)・・・(2)
T
12s=1/(ρ
12+1)・・・(3)
【0043】
第1,2サンギヤS11,12は直結されているので、T
11sは次式(4)で表され、T
11cは次式(5)で表される。
【0044】
T
11s=−T
12s=−1/(ρ
12+1)・・・(4)
T
11c=−T
11s・(ρ
11+1)=(ρ
11+1)/(ρ
12+1)・・・(5)
【0045】
よって、第3クラッチCL13のトルク分担比Tcl
13は、次式(6)で表される。
【0046】
Tcl
13=T
12r+T
11c=(ρ
11+ρ
12+1)/(ρ
12+1)・・・(6)
【0047】
式(6)で表される第3クラッチCL13のトルク分担比Tcl
13に所定の数値を代入することで、
図8に示すように「1.875」となる。以下、同様の演算方法を各変速段について適用することにより、第1〜第3クラッチCL11〜13のトルク分担比が「1.000」以上となり、第1〜第3クラッチCL11〜13が大型化する。
【0048】
次に、本実施形態の車両用自動変速機1における第1変速段の場合について
図1および
図2を参照して説明する。第1変速段においては、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2および第2ブレーキB2の作動状態がONである。なお、第1,2サンギヤS1,S2、第1,2リングギヤR1,R2の各歯数をZ
1s,Z
2s,Z
1r,Z
2rとしたとき、第1,2プラネタリ機構P1,P2のギヤ比ρ
1,ρ
2をZ
1r/Z
1s,Z
2r/Z
2sとする。また、第1,2サンギヤS1,S2、第1,2リングギヤR1,R2、第1,2キャリアC1,C2の各トルク分担比をT
1s,T
2s,T
1r,T
2r,T
1c,T
2cとする。
【0049】
入力軸Nの回転駆動力(「1.000」とする)は、第2キャリアC2に入力されるので、T
2cは次式(7)で表される。よって、T
2sは次式(8)で表される。
【0050】
T
2c=−1・・・(7)
T
2s=−T
2c/(ρ
2+1)=1/(ρ
2+1)・・・(8)
【0051】
よって、式(8)は、第2クラッチCL2のトルク分担比Tcl
2を表す。
また、第2,3サンギヤS2,3は連結されているので、T
3sは次式(9)で表され、T
3cは次式(10)で表される。
【0052】
T
3s=−T
2s=−1/(ρ
2+1)・・・(9)
T
3c=−T
3s・(ρ
3+1)=(ρ
3+1)/(ρ
2+1)・・・(10)
【0053】
よって、式(10)は、第1クラッチCL1のトルク分担比Tcl
1を表す。
式(8)、式(10)で表される第2,第1クラッチCL2,CL1の各トルク分担比Tcl
2,Tcl
1に所定の数値を代入することで、
図2に示すように「0.238」、「0.952」となる。以下、同様の演算方法を各変速段について適用することにより、第1、第2クラッチCL1,CL2のトルク分担比Tcl
2,Tcl
1が「1.000」未満となり、第1、第2クラッチCL1,CL2を小型化することができる。
【0054】
第1実施形態の車両用自動変速機1によると、第1クラッチCL1および第2クラッチCL2のトルク分担比Tcl
2,Tcl
1が入力トルク「1.000」と比較して小さくなるようにすることができ、トルク分担比Tcl
3が入力トルク「1.000」よりも大きくなる場合があるのは第3クラッチCL3のみとなる。よって、大型化するクラッチの数を低減することができ、車両用自動変速機1の小型化を図ることができる。
【0055】
また、従来の
図7に示される車両用自動変速機10では、エンジンからの入力回転と連結される要素は、第2キャリアC12である。この第2キャリアC12と駆動的に連結された第2リングギヤR12は、第1キャリアC11と駆動的に連結され、第1キャリアC11は、入力軸N側で第2クラッチCL12と係脱可能に連結されている。そして、第2クラッチCL12は、ハウジングHの内周面に固定された第2ブレーキB12と係脱可能に連結されている。また、第2リングギヤR12は、第3クラッチCL13と係脱可能に連結され、第1リングギヤR11は、第4クラッチCL14と係脱可能に連結されている。
【0056】
一方、第2キャリアC12と駆動的に連結された第2サンギヤS12および第1サンギヤS11は、入力軸N側で第1連結部材11を介して、ハウジングHの内周面に固定された第1ブレーキB11と係脱可能に連結されている。このように、エンジンからの入力回転と連結した第2キャリアC12が、ハウジングHの内周面近傍に位置しない構成であるため、停車中および走行中といかなる変速段においてもPTOを使用可能とするためには、エンジンと第1プラネタリ機構P11との間にエンジンからの入力回転を直接取り出す機構が必要となり、部品点数の増加並びに軸方向長さも増加せざるを得ない。
【0057】
しかし、第1実施形態の車両用自動変速機1では、第1サンギヤS1は、第1ブレーキB1と係合するための第1ブレーキ連結部材V1との連結が可能である以外に、他のプラネタリ機構P2〜P4の要素と連結するための連結部材および他の係合要素B2,CL1〜CL4と係合するための連結部材との連結は不要である。このため、入力軸Nと直結された第1キャリアC1に連結される第1ギヤ連結部材5は、ハウジングHの内周面Ha近傍に位置する経路を通ることが可能となる。よって、変速段にかかわらず、第1キャリアC1に連結される第1ギヤ連結部材5から、常に入力回転と同じ回転の動力を動力外部取出し部材Mにて取り出すことができ、PTOの機能を発揮する。
【0058】
<第2実施形態>
第2実施形態の車両用自動変速機21は、第1実施形態における車両用自動変速機1における第1プラネタリ機構P1と第2プラネタリ機構P2とを入れ替え、連結部、クラッチ、ブレーキの繋ぎは据え置いた構成であり、第1実施形態における車両用自動変速機1と異なる構成について
図4〜
図6に基づいて説明する。
【0059】
この車両用自動変速機21では、第2クラッチCL2および第4クラッチCL4は、回転軸線LよりハウジングHの内周面Haに近い位置に配置されている。
第2クラッチCL2は、第2、第1リングギヤR2,R1の外側を通って軸線方向に延在し、さらに回転軸線L側に延在する第2クラッチ連結部材U23を介して、第3サンギヤS3に直結され、回転軸線L側に延在する第2クラッチ連結部材U24を介して、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とを係脱可能に連結する。
【0060】
第4クラッチCL4は、第2クラッチ連結部材U23に直結されている第4クラッチ直結部材U43を介して、第3サンギヤS3に直結され、第4クラッチ連結部材U44を介して、第1、第2キャリアC1,C2と第3サンギヤS3とを係脱可能に連結する。
【0061】
以上のように構成された第2実施形態の車両用自動変速機21においても、第1実施形態の車両用自動変速機1と同様に第1〜第4クラッチCL1〜CL4を選択的に係脱し、第1、第2ブレーキB1,B2を選択的に作動して第1〜第4プラネタリ機構P1からP4の要素の回転を規制することにより、前進10段、後進1段の変速段を成立することができる。
図5に示す第2実施形態の車両用自動変速機21の各変速段におけるブレーキおよびクラッチの作動状態を示す図、および
図6に示す第2実施形態の車両用自動変速機21の各変速段におけるプラネタリ機構の各要素の回転比を示す速度線図は、
図2および
図3と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0062】
第2実施形態の車両用自動変速機21によると、第1クラッチCL1および第2クラッチCL2のトルク分担比Tcl
2,Tcl
1が入力トルク「1.000」と比較して小さくなるようにすることができ、トルク分担比Tcl
3が入力トルク「1.000」よりも大きくなる場合があるのは第3クラッチCL3のみとなる。よって、大型化するクラッチCL1,CL2の数を低減することができ、車両用自動変速機21の小型化を図ることができる。
【0063】
また、第2クラッチCL2および第4クラッチCL4は、ハウジングH内の外径側に配置された構成とすることができる。よって、入力軸Nから入力されるトルク容量を大きくすることができる。そして、トルク容量を大きくせずに既存のトルク容量と同一にするときは、第2クラッチCL2および第4クラッチCL4を小型にすることができるので、車両用自動変速機21の小型化を図ることができる。
【0064】
なお、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。