【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態を詳細に説明する。
【0036】
(実施例1)
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニル50質量部と、4,4’−ビフェニルジイルビス(グリシジルエーテル)50質量部のエポキシ化合物として平均エポキシ当量175の混合物A(以下混合物Aとする)を用意した。
【0037】
次に、エポキシ化合物のエポキシ基の数100に対して1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼン(東京化成工業株式会社製、分子量351)のアミノ基の活性水素の数が60となるように、エポキシ化合物の混合物Aを100質量部と、硬化剤としての1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼン20質量部とをすり鉢で攪拌粉砕し、粉体状の混合物を調製した。そして、この混合物に対して、硬化触媒2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製 2E4MZ)1質量部をさらに混ぜ合わせ、すり鉢にて攪拌混合し紛体状の樹脂組成物を得た。
【0038】
この樹脂組成物をあらかじめ200℃に加熱していた円筒形の金型に入れて溶融させ、さらに2時間200℃の温度で保持することで成形硬化し、実施例1の樹脂硬化物を得た。
【0039】
(実施例2〜7)
エポキシ化合物のエポキシ基の数100に対して、1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンのアミノ基の活性水素の数が80、100、200、250、320、400となるように、エポキシ化合物の混合物Aを100質量部と、硬化剤としての1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンをそれぞれ、27、33、67、84、107、134質量部添加してすり鉢で攪拌混合した以外は実施例1と同様にして実施例2〜7の樹脂硬化物を得た。
【0040】
(実施例8)
エポキシ化合物のエポキシ基の数100に対して、1,3,5−トリス(4―ヒドロキシフェニル)ベンゼン(分子量354)のヒドロキシ基の活性水素の数が100となるように、エポキシ化合物の混合物Aを100質量部と、硬化剤としての1,3,5−トリス(4―ヒドロキシフェニル)ベンゼン67質量部を添加しすり鉢にて攪拌混合した以外は実施例1と同様にして実施例8の樹脂硬化物を得た。
【0041】
(実施例9)
エポキシ化合物のエポキシ基の数100に対して、1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンのアミノ基の活性水素の数が100となるように、エポキシ化合物のN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを100質量部と、硬化剤としての1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼン50質量部添加しすり鉢で攪拌混合し、混合物を調整した。そして、この混合物に対して、硬化触媒2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製 2E4MZ)1質量部をさらに混ぜ合わせ、すり鉢にて攪拌混合し樹脂組成物を得た。
【0042】
次に混合工程で得られた樹脂組成物をあらかじめ200℃に加熱していた円筒形の金型に入れて溶融させ、さらに2時間200℃の温度で保持することで成形硬化し、実施例9の樹脂硬化物を得た。
【0043】
(実施例10)
実施例3の硬化前の樹脂組成物134質量部をメチルエチルケトンと混合し固形分が20質量%の液状の樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物に対してアルミナビーズ(電気化学工業社製 商品名DAW−7)350質量部を加え、せん断型撹拌機で撹拌し分散させ、樹脂−フィラー分散液を作製した。さらに乾燥工程では、この樹脂−フィラー溶液を厚さ0.05mm、布重量50g/m
2のガラス繊維織布に含浸し、100℃にて加熱乾燥して布重量が350g/m
2樹脂シートを得た。
【0044】
次に成形工程では、得られた樹脂シートを6枚重ねて温度170℃、1MPaの条件で平板によるプレスにて20分、加熱、加圧後、さらに200℃、4MPaにて1時間、加熱、加圧を行い、厚さ0.9mmの基板を得た。
【0045】
(比較例1〜2)
エポキシ化合物のエポキシ基の数100に対して、1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンのアミノ基の活性水素の数が40および450となるように、エポキシ化合物の混合物Aを100質量部と、硬化剤としての1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンを13質量部および151質量部添加して攪拌混合した以外は実施例1と同様にして樹脂硬化物を得た。
【0046】
(比較例3)
エポキシ化合物のエポキシ基の数100に対して、4,4’’−ジアミノ−p−ターフェニルのアミノ基の活性水素の数が100となるように、エポキシ化合物の混合物Aを100質量部と、硬化剤としての4,4’’−ジアミノ−p−ターフェニル(東京化成工業株式会社製、分子量260)37質量部を攪拌混合した以外は、実施例1と同様の条件として樹脂組成物の試作を行った。
【0047】
(比較例4)
エポキシ化合物のエポキシ基の数100に対して、4,4’’−ジヒドロキシ−3−メチル−p−ターフェニルのヒドロキシ基の活性水素の数が100となるように、エポキシ化合物の混合物Aを100質量部と、硬化剤としての4,4’’−ジヒドロキシ−3−メチル−p−ターフェニル(本州化学工業株式会社製、分子量276)79質量部とを攪拌混合した以外は、実施例1と同様の条件として樹脂組成物の試作を行った。
【0048】
(比較例5)
混合物A100質量部に4,4’−ジヒドロキシビフェニル(水酸基当量93)28質量部を仕込み、165℃にて10時間加熱して融解させ、三つ口フラスコにて撹拌しながら反応させた後、室温に冷却しプレポリマーAを作成した。 このプレポリマーAのエポキシ基の数100に対して、活性水素の数の比を100となるように、プレポリマーA、100質量部と1,5−ジアミノナフタレン(活性水素当量79、融点=187℃)8質量部をすり鉢にて攪拌混合し混合物を作成した以外は、実施例1と同様にして比較例5の樹脂硬化物を得た。
【0049】
(比較例6)
比較例5の硬化前の樹脂組成物109質量部をメチルエチルケトンと混合し固形分が20質量%の液状の樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物に対する質量比率が実施例10と同じとなるようにアルミナビーズ(電気化学工業社製 商品名DAW−7)284質量部を加え、せん断型撹拌機で撹拌し分散させ、樹脂−フィラー分散液を作製した。さらに乾燥工程では、この樹脂−フィラー溶液を厚さ0.05mm、布重量50g/m
2のガラス繊維織布に含浸し、100℃にて加熱乾燥して布重量が350g/m
2樹脂シートを得た。
【0050】
次に成形工程では、得られた樹脂シートを6枚重ねて温度170℃、1MPaの条件で平板によるプレスにて20分加熱加圧後、さらに200℃、4MPaにて1時間、加熱、加圧を行い、厚さ0.9mmの基板を得た。
【0051】
実施例および比較例の各サンプルについて樹脂組成物の溶融温度および樹脂硬化物および基板の熱伝導率、ガラス転移点を測定した。結果は表1に示す。各評価方法は、以下の通りである。
【0052】
(溶融温度の評価)
溶融温度の評価は、樹脂組成物をホットプレート上でヘラで混合して、目視において混合物が溶融する最低温度を溶融温度とした。
【0053】
(熱伝導率の評価)
樹脂硬化物および基板の熱伝導率測定を、熱伝導性の評価として実施した。樹脂硬化物および基板を直径10mm、厚さ0.9mmの円盤状に加工し、測定用サンプルを作成した。得られた測定用サンプルを、熱伝導率測定装置(アルバック理工社製 TCシリーズ)を用いて、熱拡散係数α(cm
2/s)の測定を行った。比熱Cp(J/g・K)は、サファイアを標準サンプルとして示差熱分析(DSC)にて測定を行った。密度r(g/cm
3)は、アルキメデス法を用いて測定した。
下記式(1)に得られた測定値を用い、熱伝導率λ(W/(m・K))を算出した。
λ=α・Cp・r …式(1)
α:熱拡散率(cm
2/s)
Cp:比熱(J/g・K)
r:密度(g/cm
3)
【0054】
(ガラス転移点の評価)
樹脂硬化物および基板の耐熱特性の評価には、DMA法を用いてガラス転移点の評価を行い判断した。ここで、ガラス転移点が120℃以上を示したサンプルは、十分な耐熱特性が得られると判断した。
【0055】
(DMA法)
樹脂硬化物および基板を3mm×25mmに切りだしサンプルを作製した。そして、動的粘弾性測定装置(レオロジー株式会社製、DVE−V4型)を用いて、昇温速度5℃/minで25℃から300℃の雰囲気で、貯蔵弾性率を測定し、貯蔵弾性率の変曲点をガラス転移点(Tg)とした。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1〜7および実施例9の結果から、エポキシ化合物と、1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンを硬化剤として含む樹脂組成物において、硬化剤の主骨格となる1,3,5−トリスフェニルベンゼンの含有率が樹脂組成物中の全有機物中の15質量%以上50質量%以下の範囲とすることで樹脂組成物の溶融温度が200℃以下であり樹脂硬化物のガラス転移点が120℃以上かつ熱伝導率も0.3W/(m・K)以上となることを確認できた。
【0058】
また、実施例8の結果から、エポキシ化合物と1,3,5−トリス(4―ヒドロキシフェニル)ベンゼンを硬化剤とした樹脂組成物において、硬化剤の主骨格となる1,3,5−トリスフェニルベンゼンの含有率が樹脂組成物中の全有機物中の35質量%で樹脂組成物の溶融温度が200℃以下で樹脂硬化物のガラス転移点が120℃以上かつ熱伝導率も0.3W/(m・K)以上となることを確認できた。
【0059】
また、実施例3および10の結果から、エポキシ化合物と1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンを硬化剤とした樹脂組成物において、樹脂硬化物の熱伝導率は0.32W/(m・K)であり、無機フィラーとしてアルミナビーズを添加して作製した基板の熱伝導率は、2.6W/(m・K)であり、基板の熱伝導率において好ましい1.5W/(m・K)以上となり、十分な熱伝導性を示すことが確認できた。
【0060】
比較例1では、エポキシ化合物と、1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンを硬化剤として含む樹脂組成物において、硬化剤の主骨格となる1,3,5−トリスフェニルベンゼンの含有率が樹脂組成物中の全有機物中の10質量%であり、樹脂硬化物の熱伝導率が0.3W/(m・K)を満たさない結果となった。
【0061】
比較例2では、エポキシ化合物と、1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンを硬化剤として含む樹脂組成物において、硬化剤の主骨格となる1,3,5−トリスフェニルベンゼンの含有率が樹脂組成物中の全有機物中の52.5質量%であり、樹脂硬化物の熱伝導率が0.3W/(m・K)を満たさない結果となった。
【0062】
比較例3および比較例4では、硬化剤の主骨格として1,3,5−トリスフェニルベンゼンを有しない硬化剤を用いたので樹脂組成物の溶融温度が高く、あらかじめ200℃に加熱していた円筒形の金型に入れて溶融させようとしたが、溶融しなかった。
【0063】
比較例5では、4,4’−ジヒドロキシビフェニルのエポキシ化により、樹脂組成物の溶融温度が200℃以下になることは確認できたが、樹脂硬化物のガラス転移点が110℃と樹脂硬化物を備える基板において、その使用が期待される環境温度である120℃を下回り、また、樹脂硬化物の熱伝導率が0.3W/(m・K)を満たさない結果となった。
【0064】
比較例5および6の結果から、4,4’−ジヒドロキシビフェニルのエポキシ化により、樹脂組成物の溶融温度が200℃以下になることは確認できたが、樹脂硬化物のガラス転移点が110℃と樹脂硬化物を備える基板等において、その使用が期待される環境温度である120℃を下回り、また、樹脂硬化物の熱伝導率が0.3W/(m・K)を満たさないため、無機フィラーとしてアルミナビーズを添加して作製した基板の熱伝導率は、1.4W/(m・K)であり、基板の熱伝導率において好ましい1.5W/(m・K)を満たさなかった。
【0065】
以上の結果より、エポキシ化合物と、1,3,5−トリス(4―アミノフェニル)ベンゼンおよび1,3,5−トリス(4―ヒドロキシフェニル)ベンゼンから選ばれる硬化剤を含む樹脂組成物において、硬化剤の主骨格となる1,3,5−トリスフェニルベンゼンの含有率を樹脂組成物中の全有機物中の15質量%以上50質量%以下とすることで、樹脂組成物の溶融温度を成形に適する200℃以下とすることができる。また、これらの樹脂組成物を硬化することにより、高い耐熱性を有する樹脂硬化物を得ることができる。さらにまた、これらの樹脂組成物を含む樹脂シートは、樹脂組成物の溶融温度が200℃以下であり、優れた成形性を有し、この樹脂シートを複数枚積層して成形硬化すれば、高熱伝導性と高耐熱性を有する基板を得ることができる。