(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の技術には,次のような問題があった。すなわち,読み取った画像の画像データに基づいて別の画像データを生成する場合,読み取った画像の画像データを一時的に記憶するための記憶部が必要となる。近年,高解像度のカラー読み取り等,画像データのデータサイズが大きくなる傾向にあるが,大容量の記憶部はコストアップを招く。特許文献1にはこの記憶部の節約については言及されておらず,改善の余地がある。
【0005】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,画像読取装置に関して,画像データを記憶する記憶部の効率的な利用が期待できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた画像読取装置は,原稿を読み取る読取部と,記憶部と,制御部とを備え,前記制御部は,前記読取部によって読み取られた画像の画像データである第1画像データを,前記記憶部に記憶させる記憶処理と,前記第1画像データが前記記憶部に1ページ分記憶される前から,前記第1画像データに基づく互いに異なる画像処理を実行し,各画像処理に対応する画像データである複数種類の第2画像データを生成する生成処理と,前記記憶部に記憶されている第1画像データのうち1ページ分よりも小さい所定量分を,前記生成処理にて当該所定量分に対応する第2画像データの生成が完了したことを条件として,前記生成処理にて第1画像データの1ページ分に対応する第2画像データの生成が完了する前に,前記記憶部から消去する消去処理とを実行することを特徴としている。
【0007】
本明細書に開示される画像読取装置は,読み取られた画像の画像データである第1画像データを記憶部に記憶し,第1画像データに基づく互いに異なる画像処理を実行して複数種類の第2画像データを生成する。第1画像データは,例えば,1ピクセルごとの画情報を複数ビットで記憶したデータであって,RGBデータや,YCbCrデータが該当する。第2画像データは,第1画像データに基づいて,例えば,グレースケール等の色変換が施されたデータ,2値化処理が施されたデータ,JPEG等の圧縮処理が施されたデータが該当する。そして,画像読取装置は,記憶部に記憶されている第1画像データのうち1ページ分よりも小さい所定量分を,当該所定量分に対応する第2画像データの生成が完了したことを条件として,第1画像データの1ページ分に対応する第2画像データの生成が完了する前に,記憶部から消去する。
【0008】
すなわち,本明細書に開示される画像読取装置では,第1画像データに基づいて複数種類の第2画像データを生成する際,第1画像データの1ページ分に対応する第2画像データの生成が完了する前であっても,所定量分に対応する第2画像データの生成が完了した場合には,当該所定量分を記憶部から消去する。これにより,第1画像データを記憶部に記憶するデータ量が削減され,記憶部の利用量を節約できる。
【0009】
また,前記互いに異なる画像処理には,カラー画像データを生成する画像処理と,グレー画像データを生成する画像処理と,モノクロ画像データを生成する画像処理と,のうち少なくとも2つが含まれるとよい。この構成によれば,原稿の画像の色数に応じてより好ましい種類の画像データを選択できる。その結果として,必要に応じてデータサイズを小さくできる。
【0010】
また,前記互いに異なる画像処理には,三値以上の多値画像データを生成する画像処理と,二値画像データを生成する画像処理とが含まれるとよい。この構成によれば,原稿の画像に応じてより好ましい種類の画像データを選択できる。その結果として,必要に応じてデータサイズを小さくできる。
【0011】
また,前記互いに異なる画像処理には,所定の圧縮方式による圧縮を行う画像データを生成する画像処理と,前記所定の圧縮方式による圧縮を行わない画像データを生成する画像処理とが含まれるとよい。この構成によれば,原稿の画像に応じてより好ましい種類の画像データを選択できる。その結果として,必要に応じてデータサイズを小さくできる。
【0012】
また,前記互いに異なる画像処理には,下地色を除去した画像データを生成する画像処理と,下地色を除去していない画像データを生成する画像処理とが含まれるとよい。この構成によれば,原稿の画像に応じてより好ましい種類の画像データを選択できる。その結果として,必要に応じてデータサイズを小さくできる。
【0013】
また,前記記憶部の容量は,前記読取部が許容する最大原稿サイズかつ最高解像度のカラー画像の1ページ分のデータ量よりも小さいとよい。このような記憶部の容量が小さい構成に本発明を適用すると,好適に作用する。
【0014】
また,前記制御部は,前記第1画像データが前記記憶部に1ページ分記憶される前から前記生成処理と並行して実行され,当該第1画像データに基づいて,出力対象となる第2画像データの種類を決定する決定処理と,前記決定処理にて決定された種類の第2画像データを,出力先の装置に出力する出力処理とを実行するとよい。決定処理を生成処理と並行して実行することで,生成処理と決定処理とを順に実行する形態と比較して,第2画像データの出力完了までの時間を短縮できる。なお,生成処理と決定処理とが並行して実行とは,同時に実行されている期間があればよく,両処理の実行開始が同時である必要はない。また,実行開始順序も,どちらを先に実行開始してもよい。
【0015】
また,前記制御部は,前記生成処理による前記複数種類の第2画像データの生成が完了する前に前記決定処理にて種類が決定した場合に,前記出力処理にて,前記決定処理によって決定された種類の生成済み分の第2画像データの出力を開始するとよい。複数種類の第2画像データの生成が完了する前に出力対象の種類が決定した場合には,その種類の生成済み分の第2画像データについては出力を開始する方が,より早期に出力を完了させることができる。
【0016】
また,前記制御部は,前記生成処理による前記複数種類の第2画像データの生成が完了する前に前記決定処理にて種類が決定した場合に,前記生成処理にて,前記決定処理にて決定された種類の第2画像データ以外の第2画像データの生成を中止するとよい。複数種類の第2画像データの生成が完了する前に出力対象の種類が決定した場合には,その種類以外の種類の第2画像データについては生成を中止する方が,処理の無駄を省き,装置の処理負荷を軽減できる。
【0017】
また,本明細書には,原稿を読み取る読取部と,記憶部と,制御部とを備え,前記制御部は,前記読取部によって読み取られた画像の画像データである第1画像データを,前記記憶部に記憶させる記憶処理と,前記第1画像データが前記記憶部に1ページ分記憶される前から,前記第1画像データに基づく互いに異なる画像処理を実行し,各画像処理に対応する画像データである複数種類の第2画像データを生成する生成処理と,前記記憶部に記憶されている第1画像データのうち1ページ分よりも小さい所定量分を,前記生成処理にて当該所定量分に対応する第1画像データの取得が完了したことを条件として,前記生成処理にて第1画像データの1ページ分に対応する第2画像データの生成が完了する前に,前記記憶部から消去する消去処理とを実行する画像読取装置が開示されている。
【0018】
また,本明細書には,画像読取装置によって原稿の画像を読み取らせる画像読取方法であって,前記画像読取装置に原稿の画像を読み取らせる読取ステップと,前記読取ステップにて読み取らせた画像の画像データである第1画像データを,前記画像読取装置の記憶部に記憶させる記憶ステップと,前記第1画像データが前記記憶部に1ページ分記憶される前から,前記第1画像データに基づく互いに異なる画像処理を実行し,各画像処理に対応する画像データである複数種類の第2画像データを生成する生成ステップと,前記記憶部に記憶されている第1画像データのうち1ページ分よりも小さい所定量分を,前記生成ステップにて当該所定量分に対応する第2画像データの生成が完了したことを条件として,前記生成ステップにて第1画像データの1ページ分に対応する第2画像データの生成が完了する前に,前記記憶部から消去する消去ステップとを含むことを特徴とする画像読取方法が開示されている。
【0019】
また,本明細書には,画像読取装置によって原稿の画像を読み取らせる画像読取方法であって,前記画像読取装置に原稿の画像を読み取らせる読取ステップと,前記読取ステップにて読み取らせた画像の画像データである第1画像データを,前記画像読取装置の記憶部に記憶させる記憶ステップと,前記第1画像データが前記記憶部に1ページ分記憶される前から,前記第1画像データに基づく互いに異なる画像処理を実行し,各画像処理に対応する画像データである複数種類の第2画像データを生成する生成ステップと,前記記憶部に記憶されている第1画像データのうち1ページ分よりも小さい所定量分を,前記生成ステップにて当該所定量分に対応する第1画像データの取得が完了したことを条件として,前記生成ステップにて第1画像データの1ページ分に対応する第2画像データの生成が完了する前に,前記記憶部から消去する消去ステップとを含むことを特徴とする画像読取方法が開示されている。
【0020】
また,本明細書には,原稿の画像を読み取る画像読取装置に,読み取られた画像の画像データである第1画像データを,前記画像読取装置の記憶部に記憶させる記憶処理と,前記第1画像データが前記記憶部に1ページ分記憶される前から,前記第1画像データに基づく互いに異なる画像処理を実行し,各画像処理に対応する画像データである複数種類の第2画像データを生成する生成処理と,前記記憶部に記憶されている第1画像データのうち1ページ分よりも小さい所定量分を,前記生成処理にて当該所定量分に対応する第2画像データの生成が完了したことを条件として,前記生成処理にて第1画像データの1ページ分に対応する第2画像データの生成が完了する前に,前記記憶部から消去する消去処理とを実行させることを特徴とするプログラムが開示されている。
【0021】
また,本明細書には,原稿の画像を読み取る画像読取装置に,読み取られた画像の画像データである第1画像データを,前記画像読取装置の記憶部に記憶させる記憶処理と,前記第1画像データが前記記憶部に1ページ分記憶される前から,前記第1画像データに基づく互いに異なる画像処理を実行し,各画像処理に対応する画像データである複数種類の第2画像データを生成する生成処理と,前記記憶部に記憶されている第1画像データのうち1ページ分よりも小さい所定量分を,前記生成処理にて当該所定量分に対応する第1画像データの取得が完了したことを条件として,前記生成処理にて第1画像データの1ページ分に対応する第2画像データの生成が完了する前に,前記記憶部から消去する消去処理とを実行させることを特徴とするプログラムが開示されている。
【0022】
また,本明細書には,原稿を読み取る読取部と,記憶部と,制御部とを備え,前記制御部は,前記読取部によって読み取られた画像の画像データである第1画像データを,前記記憶部に記憶させる記憶処理と,前記第1画像データが前記記憶部に1ページ分記憶される前から,当該第1画像データに基づく互いに異なる画像処理を実行し,各画像処理に対応する画像データである複数種類の第2画像データを生成する生成処理と,前記第1画像データが前記記憶部に1ページ分記憶される前から前記生成処理と並行して実行され,当該第1画像データに基づいて,出力対象となる第2画像データの種類を決定する決定処理と,前記決定処理にて決定された種類の第2画像データを,出力先の装置に出力する出力処理とを実行することを特徴とする画像読取装置が開示されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば,画像読取装置に関して,画像データを記憶する記憶部の効率的な利用が期待できる技術が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下,本発明にかかる画像読取装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,カラー読み取りが可能なスキャナに本発明を適用したものである。
【0026】
本形態のスキャナ100は,
図1に示すように,スキャナ100本体を覆う筐体6と,筐体6の後方かつ上方に位置して左右方向に延びる回動軸心X周りに回動可能に筐体6に支持された原稿載置トレイ91と,筐体6の下方に位置して前後方向に出し入れ可能に筐体6に収容される排紙トレイ92とを備えている。また,スキャナ100は,筐体6の上面に,各種のボタン(例えば,スタートキー,ストップキー,テンキーの各ボタン)によって構成されるボタン群41と,液晶ディスプレイからなる表示部42とを備えた操作パネル40を備えている。なお,
図1では,排紙トレイ92側をスキャナ100の前側とし,排紙トレイ92と対向した際の,左手側を左側とし,右手側を右側とし,前後左右の方向を規定する。
【0027】
図2は,スキャナ100の内部構成を示している。スキャナ100の内部(すなわち筐体6の内側)には,原稿が搬送される経路として,原稿載置トレイ91と排紙トレイ92とを連結する搬送路61が設けられている。そして,スキャナ100の内部には,搬送路61上に沿って,その上流側から,供給ローラ62,第1搬送ローラ63,シート検知センサ71,イメージセンサ21,22,第2搬送ローラ64が配置されている。本形態では,これら画像読み取りに利用される要素をまとめて画像読取部20とする。
【0028】
イメージセンサ21,22は,一方が原稿の一方の面の画像を読み取り,他方が原稿の他方の面の画像を読み取る。イメージセンサ21,22は,左右方向(
図2の奥行き方向)に光学素子が一列に並んで配置されており,原稿からの反射光を電気信号に変換して出力する。イメージセンサ21,22としては,例えば,CIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Device)が適用可能である。本形態のイメージセン
サ21,22は,カラー,グレースケール,およびモノクロでの読み取りが可能である。
イメージセンサ21,22は,読取部の一例である。
【0029】
原稿載置トレイ91上に載置された原稿9は,
図1および
図2中の矢印Dの方向に向かって,原稿載置トレイ91から排紙トレイ92に搬送される。具体的には,スキャナ100には,読み取りを実行するにあたって,
図2に示したように,ユーザによって原稿載置トレイ91上に原稿9が載置される。原稿載置トレイ91上に載置された原稿9は,自重によって供給ローラ62まで移動し,供給ローラ62によって1枚ずつ搬送路61の下流側に搬送される。搬送路61を移動する原稿9は,画像読取部20を通過する際にイメージセンサ21ないしイメージセンサ22によって読み取られる。そして,読み取り後の原稿9は,排紙トレイ92上に排出される。
【0030】
なお,スキャナ100の内部には,画像読取部20等の他,画像読取部20等を制御するコントローラ10や,各種構成要素への電力の供給を制御する給電部50が収容されている。コントローラ10の詳細については後述する。
【0031】
続いて,スキャナ100の電気的構成について説明する。スキャナ100は,
図3に示すように,CPU11と,ROM12と,RAM13と,NVRAM(Non Volatile RAM)14と,ASIC15とを有するコントローラ10を備えている。また,スキャナ100は,画像読取部20と,操作パネル40と,給電部50と,コントローラ10と,外部デバイスと接続するための通信インターフェースとなるUSBインターフェース17およびネットワークインターフェース16とを備え,これらがCPU11によって制御される。なお,
図3中のコントローラ10は,CPU11等,スキャナ100の制御に利用されるハードウェアを纏めた総称であって,実際にスキャナ100に存在する単一のハードウェアと表すとは限らない。
【0032】
ROM12には,スキャナ100を制御するための制御プログラムであるファームウェアや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM13は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0033】
CPU11は,ROM12から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM13またはNVRAM14に記憶させながら,スキャナ100の各構成要素を制御する。CPU11は,制御部の一例である。なお,コントローラ10が制御部であってもよいし,ASIC15が制御部であってもよい。
【0034】
USBインターフェース17は,他の装置との通信を可能にするハードウェアである。スキャナ100は,例えば,USBインターフェース17にフラッシュメモリが接続されている場合には,読み取った画像データをそのフラッシュメモリに対して出力することができる。USBインターフェース17の接続先は,フラッシュメモリに限らず,例えばパーソナルコンピュータ(PC)やプリンタであってもよい。接続先がPCの場合には,スキャン実行命令や設定変更命令等の各種の命令も受け付けることができる。
【0035】
ネットワークインターフェース16も,USBインターフェース17と同様に,他の装置との通信を可能にするハードウェアである。スキャナ100は,例えば,USBインターフェース17と同様に,読み取った画像データをネットワークインターフェース16を介して接続する外部デバイスに対して出力することができる。また,ネットワークインターフェース16を介して外部デバイスからの命令を受け付けることができる。
【0036】
続いて,スキャナ100のカラー読み取りの動作概要について,
図4を参照しつつ説明する。以下の動作は,コントローラ10のCPU11が,ROM12に記憶されているプログラム,RAM13,NVRAM14,およびASIC15を利用することによって実現される。
【0037】
具体的に,本形態のスキャナ100のコントローラ10は,イメージセンサ21にて読み取られた画像に基づいて画像データを出力する上で,スキャン回路31と,変換回路32と,各種の画像データを生成する生成系151,152,153と,色数判定回路38と,セレクタ36と,メモリ131,132とを備えている。生成系151は,カラー画像データを生成および記憶するものであり,JPEGエンコーダ331と,メモリ133とを有している。
【0038】
生成系152は,グレー画像データを生成および記憶するものであり,グレー変換回路341と,JPEGエンコーダ332と,メモリ134とを有している。生成系153は,モノクロ画像データを生成および記憶するものであり,グレー変換回路342と,2値化回路35と,メモリ135とを有している。これらの回路等は,ASIC15によって構成される。なお,一部の機能をROM12に記憶されるプログラムによって実現してもよい。
【0039】
図4中のメモリ131,132,133,134,135は,RAM13を構成する揮発性メモリであり,各々が別体であってもよいし,1つの記憶装置であって別々に割り当てられたメモリ領域であってもよい。また,生成系151,152,153も,各々が別体であってもよいし,1つの基板で実現されるものであってもよい。イメージセンサ22にて読み取った場合も同様の構成になる。
【0040】
本形態のスキャナ100は,イメージセンサ21にてカラー読み取りを行った場合,読み取られた画像がカラー画像かグレー画像かあるいはモノクロ画像かを判別し,判別結果に適したフォーマットの画像データを出力する。具体的には,カラー画像あるいはグレー画像の場合,データの肥大化を抑制するため,JPEG方式によって圧縮した画像データであるJPEGデータを出力する。一方,モノクロ画像であれば,データサイズが小さいことから,2値化した画像データであって非圧縮の画像データであるビットマップデータを出力する。画像データの出力先としては,PC,フラッシュメモリ,プリンタ等の外部デバイスが該当する。
【0041】
上述したカラー読み取り動作を実現するために,スキャナ100は,始めに,イメージセンサ21から出力された信号を,スキャン回路31を介してRGBデータに変換し,メモリ131に記憶する。
【0042】
RGBデータがメモリ131に記憶されると,変換回路32がそのRGBデータをYCbCrデータに変換する。変換回路32は,RGBデータからYCbCrデータへの変換の他,ノイズ除去等を行うためのフィルタ処理も実行する。変換回路32は,変換後のYCbCrデータをメモリ132に記憶する。このRGBデータからYCbCrデータへの変換は,RGBデータが所定量メモリ131に記憶される度に逐次行われる。以下,変換回路32から出力されるYCbCrデータを「原画像データ」とする。原画像データは,第1画像データの一例であり,メモリ132は,記憶部の一例である。
【0043】
データの圧縮に必要なライン数である圧縮ライン数分の原画像データがメモリ132に記憶されるごとに,生成系151では,JPEGエンコーダ331がその圧縮ライン数分の原画像データをJPEGデータに変換する。そして,変換後のJPEGデータであるカラー画像データをメモリ133に記憶する。
【0044】
また,カラー画像データの生成処理と並行して,1ライン分の原画像データがメモリ132に記憶されるごとに,生成系152では,グレー変換回路341がカラーデータである原画像データをグレースケールデータに変換する。その後,JPEGエンコーダ332が圧縮ライン数分のグレースケールデータをJPEGデータに変換する。そして,変換後のJPEGデータであるグレー画像データをメモリ134に記憶する。なお,本形態では,2つのJPEGエンコーダ331,332を,カラー画像データの生成系151とグレー画像データの生成系152とで別々に設けているが,1つのJPEGエンコーダを,両生成系で共用してもよい。
【0045】
また,カラー画像データおよびグレー画像データの生成処理と並行して,生成系153では,グレー変換回路342が原画像データをグレースケールデータに変換する。その後,2値化回路35がグレースケールデータを1ラインごとに2値化する。そして,2値化後のビットマップデータであるモノクロ画像データをメモリ135に記憶する。なお,本形態では,2つのグレー変換回路341,342を,グレー画像データの生成系152とモノクロ画像データの生成系153とで別々に設けているが,1つのグレー変換回路を,両生成系で共用してもよい。
【0046】
カラー画像データ,グレー画像データ,およびモノクロ画像データは,出力対象となり得る画像データであり,これらを総称して「出力候補画像データ」とする。出力候補画像データは,第2画像データの一例である。生成系151,152,153は,1ライン分のあるいは圧縮ライン数分の原画像データに基づく出力候補画像データの生成が完了する度に,変換回路32に生成完了を通知する。変換回路32は,メモリ132に記憶されている原画像データのうち,生成を継続している生成系から生成完了の通知を受け付けた部分のライン数が,メモリ132の解放を許可するライン数である削除ライン数に到達した場合,すなわち全ての生成系で削除ライン数分の原画像データが不要となった場合に,その削除ライン数分だけメモリ132を解放する。
【0047】
さらに,スキャナ100は,各出力候補画像データの生成処理と並行して,色数の判定に必要なライン数である判定ライン数分の原画像データが変換されるごとに,色数判定回路38がその判定ライン数分の原画像データに基づいて,カラー画像か否か,カラー画像でなければグレー画像か否かを判定する。
【0048】
そして,セレクタ36は,色数判定回路38の判定結果に応じて,出力候補画像データを選択する。スキャナ100は,セレクタ36によって選択された出力候補画像データを,出力先の外部デバイスに出力する。
【0049】
具体的に,カラー画像と判定された場合には,メモリ133に記憶されているカラー画像データを選択する。さらに,カラー画像と判定された時点で,外部デバイスに出力される出力候補画像データがカラー画像データに確定するため,1ページ分のカラー画像データの生成が完了する前であっても,生成済み分のカラー画像データの出力を開始する。さらに,グレー画像データおよびモノクロ画像データが不要となることから,それらの生成を中止し,メモリ134,135を解放する。なお,メモリ133については,カラー画像データの出力完了後に解放する。
【0050】
また,色数判定回路38が1ページ分の色数判定を行ってグレー画像と判定された場合には,メモリ134に記憶されているグレー画像データを選択する。なお,1ページ分の色数判定が完了する前にグレー画像と判定された場合であっても,後続するラインの判定によってカラー画像と判定される可能性がある。そのため,1ページ分の色数判定が完了するまでグレー画像データの出力を開始しない。グレー画像データの出力完了後にメモリ134を解放し,グレー画像データの出力開始後にメモリ133,135を解放する。
【0051】
また,1ページ分の色数判定を行ってもカラー画像ともグレー画像とも判定されていない場合には,モノクロ画像と判断し,メモリ135に記憶されているモノクロ画像データを出力する。モノクロ画像データもグレー画像データと同様に,1ページ分の色数判定が完了するまでモノクロ画像データの出力を開始しない。モノクロ画像データの出力完了後にメモリ135を解放し,モノクロ画像データの出力開始後にメモリ133,134を解放する。
【0052】
なお,圧縮ライン数と,削除ライン数とは,同じ値であってもよいし,別の値であってもよい。本形態では,圧縮ライン数≦削除ライン数の関係を満たす。
【0053】
また,各出力候補画像データの生成処理と色数判定処理とが並行して実行されるとは,両処理が同時に実行されている期間があればよく,実行開始が同時である必要はない。カラー画像データ,グレー画像データ,およびモノクロ画像データの各生成処理が並行して実行されることについても同様に,それらの処理が同時に実行されている期間があればよく,実行開始が同時である必要はない。
【0054】
続いて,前述したスキャナ100のカラー読み取り時の動作を実現する読取出力処理の手順を,
図5のフローチャートを参照しつつ説明する。読取出力処理は,読取開始が指示され,スキャナ100が原稿の搬送動作を開始したことを契機に,CPU11によって実行される。なお,以下の説明では,イメージセンサ21を利用する片面カラー読み取りが指示されたものとする。
【0055】
読取出力処理では,先ず,カラー画像であることを記憶するカラーフラグをオフにする(S101)。S101の後,イメージセンサ21よりも上流側に位置するシート検知センサ71によって,原稿の先端を検知したか否かを判断する(S102)。原稿の先端を検知していない場合には(S102:NO),原稿の先端を検知するまで待機する。
【0056】
原稿の先端を検知した場合には(S102:YES),その検知タイミングに基づいてイメージセンサ21に読み取り動作を開始させる(S103)。この読み取り動作によって,メモリ132に原画像データが記憶される。
【0057】
S103の後,判定ライン数分の原画像データへの変換が完了したか否かを判断する(S111)。原画像データは,色数判定回路38にも出力されており,色数判定回路38が取得した原画像データのライン数が判定ライン数に到達すれば,判定ライン数分の変換が完了したと判断する。判定ライン数分の変換が完了している場合には(S111:YES),色数判定回路38による色数判定処理を実行する(S112)。
【0058】
図6に,S112の色数判定処理の手順を示す。色数判定処理では,変換回路32から取得した判定ライン数分の原画像データ(YCbCrデータ)に基づいて,カラー画像か否か,カラー画像でなければグレー画像か否かを解析する(S151)。そして,S151の解析結果,カラー画像であったか否かを判断する(S152)。
【0059】
そして,カラー画像であった場合(S152:YES),カラーフラグをオンにする(S153)。S153の後,あるいはカラー画像でなければ(S152:NO),色数判定処理を終了する。なお,色数判定回路38は,判定が完了する度に,判定完了分の原画像データを色数判定回路38から消去する。
【0060】
図5の説明に戻り,S112の色数判定処理の後,あるいは判定ライン数分の変換が完了していない場合には(S111:NO),各生成系による画像データ生成処理を実行する(S113)。なお,
図5では,説明の便宜上,S112とS113とが順次に行われるように記載されているが,実際には,S112とS113とは同時に動作可能であり,一方の処理中に他方の処理の実行を開始してもよい。
【0061】
図7に,S113の画像データ生成処理の手順を示す。画像データ生成処理では,先ず,カラー画像データの生成を開始する(S171)。そして,カラーフラグがオンか否かを判断する(S172)。
【0062】
カラーフラグがオンの場合には(S172:YES),出力される画像データがカラー画像データに確定するため,セレクタ36によってカラー画像データを選択し,生成済みのカラー画像データについて出力先の外部デバイスへの出力を開始する(S181)。すなわち,生成済みのカラー画像データがあれば,1ページ分のカラー画像データの生成完了を待たずに,そのカラー画像データの逐次出力を行う。
【0063】
S181の後は,グレー画像データの生成を中止する(S182)。さらに,モノクロ画像データの生成を中止する(S183)。S183の後は,画像データ生成処理を終了する。なお,S182とS183は逆順であっても同時であってもよい。また,S181とS182およびS183とは逆順であっても同時であってもよい。
【0064】
一方,カラーフラグがオフの場合には(S172:NO),グレー画像データの生成を開始する(S173)。さらに,モノクロ画像データの生成を開始する(S174)。S174の後は,画像データ生成処理を終了する。なお,S173とS174は逆順であっても同時であってもよい。S171,S173,S174は,生成処理の一例である。
【0065】
図5の説明に戻り,S113の画像データ生成処理の後,生成が中止されていない生成系の全てで,削除ライン数分の原画像データに基づく出力候補画像データの生成が完了しているか否かを判断する(S114)。削除ライン数分の原画像データに基づく出力候補画像データの生成が完了している場合には(S114:YES),当該削除ライン数分だけメモリ132を解放する(S121)。S121は,消去処理の一例である。
【0066】
S121の後,あるいは削除ライン数分の原画像データに基づく出力候補画像データの生成が完了していない場合には(S114:NO),シート検知センサ71によって,原稿の後端を検知したか否かを判断する(S115)。原稿の後端を検知していない場合には(S115:NO),S111に移行して色数判定ないし画像データの生成を継続する。
【0067】
原稿の後端を検知した場合には(S115:YES),その検知タイミングに基づいてイメージセンサ21の読み取り動作を終了する(S131)。その後,生成が中止されていない全ての出力系について,1ページ分の出力候補画像データの生成が完了したか否かを判断する(S132)。1ページ分の出力候補画像データの生成が完了していない場合には(S132:NO),S113に移行して出力候補画像データの生成を継続する。
【0068】
1ページ分の出力候補画像データの生成が完了した場合には(S132:YES),色数判定回路38によって判別された出力候補画像データの出力が,開始されているか否かを判断する(S133)。すなわち,1ページ分の出力候補画像データの生成が完了する前であっても色数判定回路38によってカラー画像と判定された場合には,当該ページがカラー画像に確定する。そのため,1ページ分の出力候補画像データの生成が完了する前から,S181にてカラー画像データの出力が開始される。一方,色数判定回路38によってカラー画像と判定されるまでは,1ページ分の画像がカラーか否かが確定しない。つまり,グレー画像あるいはモノクロ画像の場合,1ページ分の色数判定が完了するまで確定しない。このことから,1ページ分の出力候補画像データの生成が完了したとしても,グレー画像データないしモノクロ画像データの出力が開始されていない。そのため,グレー画像あるいはモノクロ画像のような,出力候補画像データの出力が開始されていない場合には(S133:NO),判定結果に対応する出力候補画像データの出力を開始する(S141)。S141の後,あるいは1ページ分の出力候補画像データの生成が完了する前にS112の色判定処理にてカラー画像と判定され,出力候補画像データの出力が開始されている場合には(S133:YES),読取出力処理を終了する。
【0069】
以上詳細に説明したように本形態のスキャナ100では,原画像データに基づいて複数種類の出力候補画像データを生成する際,1ページ分の出力候補画像データの生成が完了する前でも,削除ライン数分に対応する出力候補画像データ生成が完了した場合には,当該削除ライン数分をメモリ132から解放する。つまり,1ページよりも小さい単位でメモリ132を解放させながら複数種類の出力候補画像データを生成する。これにより,原画像データの1ページ分をメモリ132に記憶して出力候補画像データを生成するものと比較して,メモリ132の利用量を節約できる。
【0070】
例えば,YCbCrデータは,輝度および色差情報を1ピクセルごとに保持するデータであることから,圧縮されたデータであるカラー画像データないしグレー画像データや,1ピクセルごとの情報が2値化情報であるモノクロ画像データと比較して,データサイズがかなり大きい。そのため,1ページ分の原画像データをメモリ132に記憶しようとすると,メモリ132はメモリ133等と比較して大容量である必要がある。
【0071】
本形態のスキャナ100では,メモリ132に1ページ分の原画像データが記憶される前に,メモリ132を出力候補画像データの生成が終了している部分だけ解放することから,メモリ132の容量を1ページ分の原画像データを記憶する容量よりも小さくできる。つまり,メモリ132の容量が,画像読取部20が許容する最大原稿サイズかつ最高解像度のカラー画像の1ページ分のデータ量よりも小さい場合であっても,1ページ分の画像データを出力することができる。
【0072】
また,原画像データに基づいて,複数の出力候補画像データの生成処理と出力候補画像データの決定処理とを行うスキャナにおいて,両処理を順次に行うと,最終的に出力候補画像データの出力が完了するまでに時間がかかる。本形態のスキャナ100では,原画像データの色数判定処理と,カラー画像データ等の出力候補画像データの生成処理とを並行して実行している。そのため,複数の出力候補画像データの生成処理と出力候補画像データの決定処理とを順次に実行するものと比較して,出力画候補像データの出力完了までの時間短縮が期待できる。この効果を発揮するには,色数判定処理と生成処理とを並行して実行すればよく,メモリの解放は削除ライン数分ごとに行う必要はなく,例えば全ての出力候補画像データの生成完了後にメモリを解放してもよい。
【0073】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像読取装置は,スキャナに限らず,複写機,複合機,FAX等,読取機能を備えるものであれば適用可能である。
【0074】
また,実施の形態では,イメージセンサを固定し,原稿を移動させることで原稿の画像を読み取る構成であるが,原稿を原稿載置台に配置し,イメージセンサを移動させることで原稿の画像を読み取る構成であってもよい。
【0075】
また,実施の形態では,生成が中止されていない複数種類の出力候補画像データの全てにおいて,削除ライン数分の原画像データに基づく出力候補画像データの生成が完了したことを契機に,即時に削除ライン数分のメモリ132を解放しているが,メモリ132の解放タイミングは,他の条件と組み合わせてもよい。例えば,削除ライン数分の原画像データに基づく出力候補画像データの生成が完了したことに加え,メモリ132の空き容量が閾値以下となった場合に,削除ライン数分のメモリ132を解放するとしてもよい。
【0076】
また,実施の形態では,複数種類の出力候補画像データとして,カラー画像データ,グレー画像データ,モノクロ画像データを生成しているが,必ずしも全てを生成する必要はなく,これらのうち少なくとも2つを生成すればよい。なお,これらの出力候補画像データは,色数によって区別されるだけではなく,例えば,データ圧縮の有無,多値情報か2値情報か,によっても区別される。
【0077】
また,実施の形態では,色数判定の結果に基づいて,実際に出力される出力候補画像データを決定しているが,これに限るものではない。例えば,メモリ132に記憶された原画像データに基づいて,下地色を除去した除去画像データと,下地色を除去していない非除去画像データとを並行して生成する構成であれば,これらを出力候補画像データとしてもよい。下地色は,固定色であってもよいし,ユーザ指定色であってもよい。この構成であっても,変換回路32は,出力候補画像データの生成を継続している全ての生成系で削除ライン数の原画像データが不要となった場合に,メモリ132をその削除ライン数分だけ解放すればよい。さらには,各出力候補画像データの生成処理と並行して,判定ライン数分の原画像データに基づいて,下地色の除去が必要か否かを判定する下地判定回路を設け,下地判定回路の判定結果に応じて,出力候補画像データを選択してもよい。なお,下地判定回路では,例えば,判定ライン数分の原画像データのうち,下地色が所定割合以上であれば下地色の除去が必要と判断すればよい。
【0078】
また,実施の形態では,色数判定によって複数の出力候補画像データの中から出力対象の出力候補画像データをスキャナ100が選択しているが,出力される出力候補画像データは1つに限らず,複数の出力候補画像データを全て出力してもよいし,そのうち幾つかを出力してもよい。また,出力される画像データを,必ずしも色数判定に基づいて1つの出力候補画像データに限定する必要はなく,生成される全ての画像データを出力してもよい。この場合,出力先の装置にて,ユーザに画像データを選択させてもよい。
【0079】
また,実施の形態では,カラー画像データおよびグレー画像データについては,圧縮データとしているが,非圧縮データであってもよい。ただし,これらのデータはデータサイズが大きくなることが予想されるため,圧縮データとする方が好ましい。
【0080】
また,実施の形態では,原画像データの所定量分(削除ライン数分)に対応する出力候補画像データ全ての生成完了したことを条件として,メモリ132をその所定量分解放しているが,所定量分のメモリの解放は,その所定量分の原画像データが不要になったことを条件に実行すればよく,それよりも前のタイミングで解放してもよい。例えば,原画像データの所定量分をメモリ132からバッファに取り込み,そのバッファから出力候補画像データを生成する場合には,S114にて原画像データの所定量分についてメモリ132からバッファへの取り込みが完了したか否かを判断し,完了したと判断した時点で,メモリ132をその所定量分解放してもよい。バッファは,全ての生成系で共用するものであってもよいし,各生成系が有するものであってもよい。
【0081】
また,実施の形態に開示されている処理は,単一のCPU,複数のCPU,ASICなどのハードウェア,またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また,実施の形態に開示されている処理は,その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体,または方法等の種々の態様で実現することができる。