(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分の少なくとも80モル%が芳香族ジカルボン酸であり、該芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸から選ばれる一種以上からなることを特徴とする請求項1に記載のLED反射板用ポリエステル樹脂組成物。
ポリエステル樹脂(A)を構成するグリコール成分の95〜100モル%が1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、5〜0モル%がその他のグリコールであり、その他のグリコールがエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、及び1,4−ブタンジオールから選ばれる一種以上である請求項1または2に記載のLED反射板用ポリエステル樹脂組成物。
非繊維状かつ非針状の充填材(D)がタルクであり、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してタルク0.1〜5質量部の割合で含有する請求項1〜3のいずれかに記載のLED反射板用ポリエステル樹脂組成物。
さらに、ポリエステル樹脂(A)とは異なるポリエステル樹脂(E)を、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大50質量部含有している請求項1〜4のいずれかに記載のLED反射板用ポリエステル樹脂組成物。
ポリエステル樹脂(E)が、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンナフタレートから選ばれる一種以上であり、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して1〜30質量部含有している請求項5に記載のLED反射板用ポリエステル樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(発光ダイオード)は、低消費電力、長寿命、高輝度、小型化可能などの特徴を活用して、照明器具、光学素子、携帯電話、液晶ディスプレイ用バックライト、自動車コンソールパネル、信号機、表示板などに応用されている。また、意匠性、携帯性を重視する用途では、軽薄短小化を実現するために表面実装技術が使用されている。
【0003】
表面実装型LEDは一般に、発光するLEDチップ、リード線、ケースを兼ねた反射板、封止樹脂から構成されているが、電子基板上に実装された部品全体を非鉛化ハンダで接合するために、各部品がハンダ付けリフロー温度260℃に耐えられる材料で形成されることが必要である。材料の融点(融解ピーク温度)としては、280℃以上が必要とされる。特に反射板に関しては、これら耐熱性に加え、光を効率的に取り出すための表面反射率、熱や紫外線に対する耐久性が求められる。かかる観点から、セラミックや半芳香族ポリアミド、液晶ポリマー、熱硬化性シリコーン等の種々の耐熱プラスチック材料が検討されており、なかでも、半芳香族ポリアミドやポリエステルに酸化チタン等の高屈折フィラーを分散させた樹脂組成物は、量産性、耐熱性、表面反射率などのバランスが良く、最も汎用的に使用されている。最近では、LEDの汎用化にともない、反射板には加工性や信頼性のさらなる向上が必要となっており、長期の耐熱着色性、耐光性の向上が求められている。
【0004】
LED反射板用のポリエステル樹脂組成物としては、例えば特許文献1〜4が提案されている。
特許文献1では、(a)テレフタル酸残基と1,4−シクロヘキサンジメタノール残基とが結合した繰返し単位がポリマー中の80モル%を占めるポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂100重量部、(b)ポリエーテルアミドおよび/またはポリエーテルエステル0.05〜20重量部および、(c)少なくとも1つのP−O結合が炭素数6から30の芳香族基と結合している有機ホスファイト、またはホスホナイト化合物を0.05〜4重量部からなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物が開示されているが、耐熱性、耐光性に問題がある。
【0005】
特許文献2、3、4では(A)テレフタル酸を主たる酸成分とし、シクロヘキサンジメタノールを主たるグリコール成分とする繰返し単位からなり、かつ少なくとも0.5dl/gの固有粘度を有するポリエステル、(B)酸化チタン、および(C)ガラスフレークを含み、(A)+(B)+(C)=100重量%に対して、(B)1〜30重量%および(C)10〜40重量%であることを特徴とする高耐熱高反射率樹脂組成物が開示されているが、耐熱性、成形性に問題がある。
【0006】
特許文献5では、少なくとも、2種以上のポリエステルから構成され、無機粒子を50〜70重量%含む層(A層)と、無機粒子を0〜25重量%含有するポリエステル層(B層)の2層を有し、全光線透過率が3%以下であることを特徴とする積層延伸ポリエステルフィルムが開示されているが、耐熱性、成形性、機械的強度、反射率に問題がある。
【0007】
特許文献6、7では、(a)i)テレフタル酸残基70〜100モル%;ii)炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基0〜30モル%;及びiii)炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸残基0〜10モル%を含むジカルボン酸成分;並びに(b)i)2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基1〜99モル%;及びii)1,4−シクロヘキサンジメタノール残基1〜99モル%を含むグリコール成分(ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、グリコール成分の総モル%は100モル%である)が開示されているが、機械的強度、反射率に問題がある。また、特許文献8では(A)ポリエステル樹脂100質量部に対し、(B)アニオン部分がホスフィン酸のカルシウム塩又はアルミニウム塩であるホスフィン酸塩2〜50質量部、(C)二酸化チタン0.5〜30質量部、及び(D)極性基を有するポリオレフィン樹脂0.01〜3質量部を配合したことを特徴とする、半導体発光素子を光源とする照明装置反射板用難燃性ポリエステル樹脂組成物が開示されているが、金/錫ハンダ耐熱性、耐熱性、耐光性に問題がある。また、特許文献9では、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル100質量部、焙焼工程を含む製法で得られた酸化チタン97〜85質量%を酸化アルミニウム(水和物を含む)3〜15質量%(両者を合わせて100質量%とする。)で表面処理してなる酸化チタン粒子8〜42質量部、ガラス繊維25〜50質量部、およびその他の無機充填材0〜8質量部からなり、二軸混練機を使用して、前記ガラス繊維の少なくとも一部を、二軸混練機のシリンダーの全長に対して30%以上下流側の位置から供給する工程を含む溶融混練工程を経て得られる樹脂組成物が開示されているが、耐熱性、耐光性に問題がある。
【0008】
特許文献10では、不飽和ポリエステル樹脂、重合開始剤、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材を少なくとも含む乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、前記組成物全体量に対して14〜40質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計が、前記組成物全体量に対して44〜74質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計に占める前記白色顔料の割合が30質量%以上であり、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものであることを特徴とするLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物が開示されているが、成形性、耐光性に問題がある。また、これまで表面実装型LED用反射板としては、各種ポリアミドが使用されてきたが、耐熱着色性、耐光性、低吸水性に問題があった。
【0009】
以上のように、従来提案されているポリエステルやポリアミドでは、耐熱着色性、耐光性、成形性に課題を抱えながら使用している実情がある。
【0010】
さらに、近年では、照明用途への展開も積極的に行われている。照明用途への展開を考えた場合、コストダウンやハイパワー化、寿命の向上、長期信頼性の向上がさらに求められている。そのため、信頼性の向上策として、リードフレームとLEDチップの接合には、従来のエポキシ樹脂/銀ペーストではなく、劣化が少なく、熱伝導率の高い金/錫共晶ハンダが使用されつつある。しかしながら、金/錫共晶ハンダの加工には、280℃以上290℃未満の温度がかかるため、使用される樹脂には、工程に耐えるために290℃以上の融点が求められる。また、金/錫共晶ハンダの加工時においても、樹脂中の水分により成型品の表面に膨れ(ブリスター)の発生を防ぐために、樹脂には低吸水であることが求められる。
【0011】
以上の通り、表面実装型LED用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物としては、必要とされる融点(融解ピーク温度)が280℃以上、好ましくは290℃以上と高く、かつ芳香環濃度が高いことが好ましい。しかしながら、これらを満足した表面実装型LED用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物は、これまで報告されていない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、表面実装型LED用反射板に使用することを意図するものである。表面実装型LEDには、プリント配線板を用いたチップLED型、リードフレームを用いたガルウィング型、PLCC型などが挙げられるが、本発明のポリエステル樹脂組成物はこれらの全ての反射板を射出成形により製造することができる。
【0021】
本発明のLED反射板用ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、酸化チタン(B)、繊維状強化材及び針状強化材からなる群より選択される少なくとも1種の強化材(C)、及び非繊維状かつ非針状の充填材(D)を含有し、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して酸化チタン(B)0.5〜100質量部、強化材(C)0〜100質量部、及び非繊維状かつ非針状の充填材(D)0〜50質量部の割合で含有するポリエステル樹脂組成物であって、ポリエステル樹脂(A)が、芳香族ジカルボン酸を主体とするジカルボン酸成分と1,4−シクロヘキサンジメタノールを主体とするジオール成分とからなるポリエステルであって、1,4−シクロヘキサンジメタノールが全ジオール成分中の70モル%以上であり、前記式(1)で示されるモノアルデヒド基末端が30当量/t以下を満たすポリエステル樹脂であるLED反射板用ポリエステル樹脂組成物である。
【0022】
ポリエステル樹脂(A)は、高い信頼性を付与するために、高融点、低吸水性に加えて、優れた耐UV性を実現するために配合されるものであり、ポリエステル樹脂(A)が、芳香族ジカルボン酸成分と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主体とするグリコール成分を構成成分とすることを特徴とする。1,4−シクロヘキサンジメタノールは、トランス型とシス型が存在するが、本発明においては、一般的に市販されているトランス型とシス型の混合物である1,4−シクロヘキサンジメタノールがそのまま使用可能である。一般的には、トランス型:シス型の混合比(モル)は、65:35〜67:33である。
【0023】
ポリエステル樹脂(A)は、1,4−シクロヘキサンジメタノールが含まれており、ポリエステル樹脂(A)を構成するグリコール成分の70〜100モル%であることが好ましい。より好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノールが80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは95モル%以上である。1,4−シクロヘキサンジメタノールが70モル%以上含まれないと成形性、ハンダ耐熱性、耐光性が低下する傾向にある。
1,4−シクロヘキサンジメタノール以外のその他のグリコ−ルは、ポリエステル樹脂(A)を構成するグリコール成分の30〜0モル%であることが好ましい。より好ましくはその他のグリコールが20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下、最も好ましくは5モル%以下である。その他のグリコ−ルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族グリコールなどが挙げられる。これらの中では、耐熱性、重合性、成形、コストなどからエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオールから選ばれる一種または二種以上の混合物が好ましい。更に好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールのいずれかである。なお、グリコール成分にエチレングリコールを用いた場合、ポリエステル樹脂(A)の製造時に、ジエチレングリコールが副生し、共重合成分となることがある。また、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価ポリオールを併用しても構わない。
【0024】
ジカルボン酸成分とは、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などが挙げられ、これらの中では、重合性、コスト、耐熱性の点から芳香族ジカルボン酸が好ましく、ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分の少なくとも80モル%を占めることが重要である。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸が好ましい。ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分の80〜100モル%が、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸から選ばれる一種以上であることが好ましい。また、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸などの多価カルボン酸及びその無水物を併用しても構わない。
【0025】
また、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等の金属塩、または2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオール等の金属塩などのスルホン酸金属塩基を含有するジカルボン酸またはジオールを全ジカルボン酸成分または全グリコール成分の20モル%以下の範囲で使用してもよい。
【0026】
ポリエステル樹脂(A)を製造するに際に使用する触媒として、特に限定されないが、Ge、Sb、Ti、Al、MnまたはMgの化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が用いられることが好ましい。これらの化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコール溶液、エチレングリコールのスラリー等として反応系に添加される。
【0027】
ポリエステル樹脂(A)は、前記式(1)で示されるモノアルデヒド基末端が30当量/t以下である。モノアルデヒド基末端は、好ましくは25当量/t以下、より好ましくは20当量/t以下である。モノアルデヒド基末端が30当量/tを超えると、耐候性、ハンダ耐熱性が低下する傾向にある。前記式(1)で示されるモノアルデヒド基は、ほとんどがポリエステル樹脂(A)の末端に存在し、一部はモノマー(シクロヘキサンジメタノールの一つのアルコールがアルデヒド基に変換した化合物)として存在するが、本発明においてモノアルデヒド基末端は、これらの合計量を指す。
【0028】
前記の特性を持つポリエステルは、次のようにして製造されるが、製造方法はこれらに限定されるものではない。
溶融重合時の酸素濃度を下げる方法や、好ましくは、前記溶融重合で得られたポリエステルに固相重合を行う方法が上げられる。基本的な考え方として、製造時においてポリエステルの水酸基末端の酸化を抑制するため、溶融重合時の酸素濃度を下げたり、溶融重合時の熱履歴を出来るだけ少なくして、熱履歴の少ない固相重合を併用したりする製造方法を採用する。好ましい固相重合条件としては、極限粘度(IV)が0.60dl/g以下、より好ましくは0.55dl/g以下、さらに好ましくは0.50dl/g以下の溶融重合ポリエステルを固相重合することが好ましい。
【0029】
具体的には、直接エステル化法により溶融重縮合ポリエステルを製造する場合は、テレフタル酸またはそのエステル誘導体1モルに対して1.02〜2.0モル、好ましくは1.03〜1.4モルの1,4−シクロヘキサンジメタノールと必要によりエチレングリコールが含まれたスラリーを調整し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
スラリー調合槽やスラリー貯蔵槽の気相部分には、酸素濃度が5ppm以下、好ましくは3ppm以下、より好ましくは2ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下の不活性気体を流通させて、原料と一緒に系内に混入する酸素を除去すると同時に空気が混入しないようにすることが望ましい。前記気相中の酸素濃度は、100ppm以下が好ましく、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下、最も好ましくは10ppm以下に維持することが望ましい。
【0030】
特に、高純度テレフタル酸は通常粉末状であり、この粒子等の合間に空気を含んでおり、スラリー調合槽やスラリー貯蔵槽に酸素を持ち込むため、十分に酸素を追い出すか、テレフタル酸の貯蔵サイロ内の雰囲気を酸素濃度200ppm以下、好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに一層好ましくは30ppm以下、最も好ましくは10ppm以下の不活性気体雰囲気にしておくことが望ましい。
【0031】
また、1,4−シクロヘキサンジメタノールにも酸素が溶存しているため、1,4−シクロヘキサンジメタノールは予め酸素濃度が5ppm以下、好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、最も好ましくは1ppm以下の不活性ガスでバブリングしておき、またスラリー調合槽やスラリー貯蔵槽はスラリー調合後に上記の様な不活性ガスでバブリングすることも好ましい。
エステル化反応は、1個のエステル化反応器から成る一段式装置、または、少なくとも2個のエステル化反応器を直列に連結した多段式装置を用いて1,4−シクロヘキサンジメタノールが還流する条件下で、気相部分には酸素濃度が5ppm以下、好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、最も好ましくは1ppm以下の不活性気体を流通させ、反応によって生成した水またはアルコールを精留塔で系外に除去しながら実施する。気相中の酸素濃度は、100ppm以下、好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに一層好ましくは30ppm以下、最も好ましくは10ppm以下に維持することが好ましい。
【0032】
多段式装置を用いる場合、第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は0.2〜3kg/cm
2G、好ましくは0.5〜2kg/cm
2Gである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜280℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜1.5kg/cm
2G、好ましくは0〜1.3kg/cm
2Gである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜5000程度の低次縮合物が得られる。
【0033】
次いで、得られた低次縮合物は多段階の液相縮重合工程に供給される。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は500〜20Torr、好ましくは200〜30Torrで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.5Torrである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。なお、重縮合反応には一段式重縮合装置を用いてもよい。
【0034】
前記の重縮合反応条件で、なるべく低温で、かつ、短時間で重縮合反応が進むように減圧度を上げることが好ましい。重縮合反応時間としては1〜7時間であることが好ましく、270℃以上の温度を経過するのは5時間以内であることが好ましい。
【0035】
溶融重縮合反応器は、設計段階から系内への空気の漏れが出来るだけ起こらない設備にしておくことは当然であり、また定修時などの定期的なオーバーホールの際に、溶融重縮合反応時の減圧下における空気の漏れを最大限度に防止するような対策をしておくことが肝要である。特に攪拌軸や反応槽間の輸送に用いられるポンプ等の可動部のシール部分からの空気のリークの影響は大きく、漏れの少ないシール構造にするほか、シール部分には酸素濃度が5ppm以下、好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、最も好ましくは1ppm以下の不活性気体を流しておくことが好ましい。
【0036】
また、重縮合の2段目以降、特に最終段階の重縮合反応器としては、ポリエステルの滞留が少なく、反応器に導入された中間段階の重合度のポリエステルが順次重縮合されて最終重縮合物として排出されるプラグフロー性の高いものが好ましい。このためには、最適の攪拌翼の形状とし、攪拌翼の回転数を適切に設定することが好ましく、また二軸の攪拌翼を設置した反応器も好ましい。
【0037】
また、溶融重縮合後にダイスの細孔からポリエステル溶融体を大気中に押出した後、冷却水で冷却しながらカットする方式によってチップ化する場合には、不活性気体をダイスの細孔から出てくる溶融ポリマーに吹き付け、冷却水に接触するまでに高温の樹脂に酸素が吸着しないようにすることも好ましい。吹き付ける不活性ガスの酸素濃度は5ppm以下、好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、最も好ましくは1ppm以下が好ましい。
また、冷却水を溶融樹脂にシャワー状に吹き付けて冷却する方法を採用する場合には、冷却水に酸素が溶解し、溶存酸素濃度上がるため、冷却工程の気相中の酸素濃度を、500ppm以下、好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、さらに一層好ましくは50ppm以下、最も好ましくは10ppm以下に維持、またその変動巾を30%以内、好ましくは20%以内に抑えることが好ましい。冷却工程での気相中の酸素濃度をコントロールする方法としては、溶融ポリマーに吹き付ける不活性ガスをそのまま冷却工程に流すことが好ましい。
【0038】
次いで、前記溶融重縮合ポリエステルは、式(1)で示されるモノアルデヒド基末端を低減させるために固相重合(以下、SSPと表記することがある)工程で処理されることが好ましい。
前記の溶融重縮合ポリエステルチップは、酸素濃度が好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、最も好ましくは20ppm以下の不活性気体雰囲気下において、少なくとも1段階の連続結晶化装置、好ましくは2段階以上の連続式結晶化装置で予備結晶化されることが好ましい。1段目の予備結晶化では100〜180℃の温度で1分〜5時間で、次いで2段目の予備結晶化では160〜210℃の温度で1分〜3時間の条件で、さらに2段目以上の予備結晶化では180〜210℃の温度で1分〜3時間の条件で、順次、段階的に結晶化することが好ましい。結晶化後のチップの結晶化度は30〜65%、好ましくは35〜63%、さらに好ましくは40〜60%の範囲であることが好ましい。なお、結晶化度はチップの密度より求めることができる。
【0039】
次いで、酸素濃度が好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、最も好ましくは20ppm以下の不活性ガス雰囲気下に前記溶融重縮合ポリエステルに最適な温度に於いて、固相重合による極限粘度の増加が0.10デシリットル/グラム以上になるようにして固相重合を行う。例えば、固相重合の温度としては、上限は215℃以下が好ましく、さらには210℃以下、特には208℃以下が好ましく、下限は190℃以上が好ましく、より好ましくは195℃以上である。
【0040】
また、安定剤として、燐酸、ポリ燐酸やトリメチルフォスフェート等の燐酸エステル類、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物を使用するのが好ましい。
【0041】
ポリエステル樹脂(A)の酸価としては、1〜40eq/tonであることが好ましい。酸価が40eq/tonを超えると、耐光性が低下する傾向にある。また、酸価が1eq/ton未満では、重縮合反応性が低下して生産性が悪くなる傾向にある。
【0042】
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度(IV)は、0.10〜0.70dl/gであることが好ましい。IVの下限は、0.20dl/gがより好ましく、0.25dl/gがさらに好ましく、0.40dl/gが特に好ましく、0.50dl/gが最も好ましい。IVの上限は、0.65dl/gがより好ましく、0.60dl/gがさらに好ましい。
【0043】
ポリエステル樹脂(A)は、本発明のポリエステル樹脂組成物において25〜90質量%、好ましくは40〜75質量%の割合で存在する。ポリエステル樹脂(A)の割合が上記下限未満であると、機械的強度が低くなり、上記上限を超えると、酸化チタン(B)や強化材(C)の配合量が不足し、所望の効果が得られにくくなる。
【0044】
酸化チタン(B)は、反射板の表面反射率を高めるために配合されるものであり、例えば硫酸法や塩素法により作製されたルチル型およびアナターゼ型の二酸化チタン(TiO
2)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti
2O
3)などが挙げられるが、特にルチル型の二酸化チタン(TiO
2)が好ましく使用される。酸化チタン(B)の平均粒径は、一般に0.05〜2.0μm、好ましくは0.15〜0.5μmの範囲であり、1種で使用しても良いし、異なる粒径を有する酸化チタンを組み合わせて使用しても良い。酸化チタン成分濃度としては、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上である。また、酸化チタン(B)は、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア等の金属酸化物、カップリング剤、有機酸、有機多価アルコール、シロキサン等で表面処理を施されたものを使用することができる。
【0045】
酸化チタン(B)の割合は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.5〜100質量部、好ましくは10〜80質量部である。酸化チタン(B)の割合が上記下限未満であると、表面反射率が低下し、上記上限を超えると、物性の大幅な低下や流動性が低下するなど成形加工性が低下するおそれがある。
【0046】
強化材(C)は、ポリエステル樹脂組成物の成形性と成形品の強度を向上するために配合されるものであり、繊維状強化材及び針状強化材から選択される少なくとも1種を使用する。繊維状強化材としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、金属繊維などが挙げられ、針状強化材としては、例えばチタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、ワラストナイトなどが挙げられる。ガラス繊維としては、0.1mm〜100mmの長さを有するチョップドストランドまたは連続フィラメント繊維を使用することが可能である。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面及び非円形断面のガラス繊維を用いることができる。円形断面ガラス繊維の直径は20μm以下、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また、物性面や流動性より非円形断面のガラス繊維が好ましい。非円形断面のガラス繊維としては、繊維長の長さ方向に対して垂直な断面において略楕円形、略長円形、略繭形であるものをも含み、偏平度が1.5〜8であることが好ましい。ここで偏平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。ガラス繊維の太さは特に限定されるものではないが、短径が1〜20μm、長径2〜100μm程度である。また、ガラス繊維は繊維束となって、繊維長1〜20mm程度に切断されたチョップドストランド状のものが好ましく使用できる。さらには、ポリエステル樹脂組成物の表面反射率を高めるためには、ポリエステル樹脂との屈折率差が大きいことが好ましいため、ガラス組成の変更や表面処理により、屈折率を高めたものを使用することが好ましい。
【0047】
強化材(C)の割合は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0〜100質量部、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜60質量部である。強化材(C)は必須成分ではないが、その割合が5質量部以上であると、成形品の機械的強度が向上して好ましい。強化材(C)の割合が上記上限を超えると、表面反射率、成形加工性が低下する傾向がある。
【0048】
非繊維状かつ非針状の充填材(D)としては、目的別には強化用フィラーや導電性フィラー、磁性フィラー、難燃フィラー、熱伝導フィラー、熱黄変抑制用フィラーなどが挙げられ、具体的にはガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、タルク、カオリン、マイカ、アルミナ、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉄、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、赤燐、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫酸バリウム、および針状ではないワラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられる。充填材(D)としては、酸化チタンは含まない。これら充填材は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いても良い。これらの中では、タルクが結晶化を速める効果を有し、成形性が向上することから好ましい。充填材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大50質量部を添加することが可能であるが、樹脂組成物の機械的強度の観点から、0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。タルクを使用する場合、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜3質量部である。また、繊維状強化材、充填材はポリエステル樹脂との親和性を向上させるため、有機処理やカップリング剤処理したものを使用するか、または溶融コンパウンド時にカップリング剤と併用することが好ましく、カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤のいずれを使用しても良いが、その中でも、特にアミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤が好ましい。
【0049】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、従来のLED反射板用ポリエステル樹脂組成物の各種添加剤を使用することができる。添加剤としては、安定剤、衝撃改良材、難燃剤、離型剤、摺動性改良材、着色剤、蛍光増白剤、可塑剤、結晶核剤、ポリエステル以外の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0050】
安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などの有機系酸化防止剤や熱安定剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系等の光安定剤や紫外線吸収剤、金属不活性化剤、銅化合物などが挙げられる。銅化合物としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨウ化第二銅、燐酸第二銅、ピロリン酸第二銅、硫化銅、硝酸銅、酢酸銅などの有機カルボン酸の銅塩などを用いることができる。さらに銅化合物以外の構成成分としては、ハロゲン化アルカリ金属化合物を含有することが好ましく、ハロゲン化アルカリ金属化合物としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどが挙げられる。これら添加剤は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いても良い。安定剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大5質量部を添加することが可能である。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、ポリエステル樹脂(A)とは異なるポリエステル樹脂(E)をハンダ耐熱性が低下しない範囲で添加することが出来、更には、成形性を付与するポリエステル樹脂を添加することが望ましい。
具体的には、ブレンド後の融点が280℃以上を有して、更には、ブレンド後の樹脂組成物の融解ピーク温度(Tm)、降温時結晶化温度(Tc2)の差がブレンド前より、小さい方が、成形性が良好な傾向を示す。ブレンドするポリエステル樹脂(E)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリトリメチレンナフタレート(PTN)等々のホモポリエステル、ポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体や上記ホモポリエステルに、本文記載の酸やグリコールを共重合したポリエステルを添加しても良い。好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体、更に好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体、最も好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が、成形性が良好になる傾向を示す。また、添加部として好ましくは、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大50質量部を添加することが可能であるが、樹脂組成物の耐熱性の観点から、1〜30質量部が好ましく、より好ましくは5〜25質量部である。50質量部を超えると成形性が低下する傾向になり、1部未満では、成形性が向上しにくい傾向を示す。
【0052】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(E)とは異なる熱可塑性樹脂を添加しても良い。例えば、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリサルホン(PSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、溶融混練により、溶融状態でブレンドすることも可能であるが、熱可塑性樹脂を繊維状、粒子状にし、本発明のポリアミド樹脂組成物に分散しても良い。熱可塑性樹脂の添加量は最適な量を選択すれば良いが、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大50質量部を添加することが可能である。
【0053】
衝撃改良剤としては、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、アクリル酸エステル共重合体等のビニルポリマー系樹脂、ポリブチレンテレフタレートまたはポリブチレンナフタレートをハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコールまたはポリカプロラクトンまたはポリカーボネートジオールをソフトセグメントとしたポリエステルブロック共重合体、ナイロンエラストマー、ウレタンエラストマー、アクリルエラストマー、シリコンゴム、フッ素系ゴム、異なる2種のポリマーより構成されたコアシェル構造を有するポリマー粒子などが挙げられる。衝撃改良剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大30質量部を添加することが可能である。
【0054】
本発明のポリエステル樹脂組成物に対して、ポリエステル樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂および耐衝撃改良材を添加する場合にはポリエステルと反応可能な反応性基が共重合されていることが好ましく、反応性基としてはポリエステル樹脂の末端基である水酸基及び/又はカルボキシル基と反応しうる基である。具体的には酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基、イソシアネート基等が例示されるが、それらの中でもエポキシ基、イソシアネート基が最も反応性に優れている。このようにポリエステル樹脂と反応する反応性基を有する熱可塑性樹脂はポリエステル中に微分散し、微分散するがゆえに粒子間の距離が短くなり耐衝撃性が大幅に改良されるという報告もある。
【0055】
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤と難燃助剤の組み合わせが良く、ハロゲン系難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体、臭素化スチレン無水マレイン酸重合体、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモビフェニル、臭素化ポリカーボネート、パークロロシクロペンタデカン及び臭素化架橋芳香族重合体等が好ましく、難燃助剤としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、錫酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、モンモリロナイトなどの層状ケイ酸塩、フッ素系ポリマー、シリコーンなどが挙げられる。中でも、熱安定性の面より、ハロゲン系難燃剤としては、ジブロムポリスチレン、難燃助剤としては、三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、錫酸亜鉛のいずれかとの組み合わせが好ましい。また、非ハロゲン系難燃剤としては、メラミンシアヌレート、赤リン、ホスフィン酸の金属塩、含窒素リン酸系の化合物が挙げられる。特に、ホスフィン酸金属塩と含窒素リン酸系化合物との組み合わせが好ましく、含窒素リン酸系化合物としては、メラミンまたは、メラム、メレム、メロンのようなメラミンの縮合物とポリリン酸の反応生成物またはそれらの混合物を含む。その他難燃剤、難燃助剤としては、これら難燃剤の使用の際、金型等の金属腐食防止として、ハイドロタルサイト系化合物やアルカリ化合物の添加が好ましい。難燃剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して最大50質量部を添加することが可能である。
【0056】
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコーン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などが挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミドなどが挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。離型材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大5質量部を添加することが可能である。
【0057】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、DSC測定において融解ピーク温度(Tm)が280℃以上であることが好ましく、より好ましくは、290℃以上、更に好ましくは300℃以上、特に好ましくは310℃以上である。本発明のポリエステル樹脂組成物のTmの上限は、次の理由により340℃以下であることが好ましい。Tmが上記上限を超える場合、本発明のポリエステル樹脂組成物を射出成形する際に必要となる加工温度が極めて高くなるため、加工時にポリエステル樹脂組成物が分解し、目的の物性や外観が得られない場合がある。逆に、Tmが上記下限未満の場合、結晶化速度が遅くなり、いずれも成形が困難になる場合があり、さらには、ハンダ耐熱性の低下を招く恐れがある。Tmが310℃以上であると、280℃のリフローハンダ耐熱性を満足し、金/錫共晶ハンダ工程にも適応可能になるので好ましい。
【0058】
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物は、DSC測定において融解ピーク温度(Tm)と降温結晶化温度(Tc2)差が50℃以下であることが好ましく、より好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下である。降温結晶化温度(Tc2)とは、DSC測定に於いて、ポリエステル樹脂の融点より10℃以上高い温度から降温させた際に、結晶化し始める温度である。融解ピーク温度(Tm)と降温結晶化温度(Tc2)差が50℃以下では、容易に結晶化が進行し、寸法安定性や物性などを十分に発揮することができる。一方、融解ピーク温度(Tm)と降温結晶化温度(Tc2)差が50℃を超える場合、LED用反射板は射出成形の短いサイクルで成形するため、十分に結晶化が進まないことがあり、離型不足等の成形難を引き起こしたり、十分に結晶化が終了していないため、後工程の加熱時に変形や結晶収縮が発生し、封止材やリードフレームから剥離する問題が発生し、信頼性に欠ける。
【0059】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、高融点や成形性に加え、低吸水性や流動性のバランスに優れ、さらには耐光性に優れる。このため、かかるポリエステル樹脂(A)から得られる本発明のポリエステル樹脂組成物は、表面実装型LEDの反射板の成形においては、280℃以上の高融点、低吸水であることに加え、薄肉、ハイサイクルな成形が可能である。
【0060】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述の各構成成分を従来公知の方法で配合することにより製造されることができる。例えば、ポリエステル樹脂(A)の重縮合反応時に各成分を添加したり、ポリエステル樹脂(A)とその他の成分をドライブレンドしたり、または、2軸スクリュー型の押出機を用いて各構成成分を溶融混練する方法を挙げることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は、以下の方法によって測定したものである。
【0062】
(1)ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中、ウベローデ粘度管を用いて30℃での溶液粘度から求めた。
(2)酸価
ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに加熱溶解した後、0.1NのNaOHのメタノール/ベンジルアルコール(1/9容積比)の溶液を使用して滴定して求めた。指示薬は、フェノールレッドを用い、黄緑色から淡紅色に変化したところを終点とした。
(3)ポリエステル樹脂組成物の融解ピーク温度(Tm)、降温時結晶化温度(Tc2)セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定した。昇温速度20℃/分で昇温し、330℃で3分間保持したのち、330℃から130℃までを10℃/分で降温した。昇温時に観察される融解ピ−クの頂点温度を融点(Tm)、降温時に観察される結晶化ピ−クの頂点温度を降温時結晶化温度(Tc2)とした。
(4)式(1)で示されるモノアルデヒド基末端量の測定
式(1)のモノアルデヒド基末端は、ヘキサフルオロイソプロパノール(d2)と、重水素化クロロホルムの混合溶液(容量比3/7)にポリマーを約2重量%の濃度で溶解し、ピリジン(d5)約30μlおよび約20mgのシフト試薬Pr(FOD)3 を添加し、1H−NMRを測定し、モノアルデヒド基中のプロトン積算値から定量分析した。
【0063】
(5)成形性
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂組成物の融点+20℃、金型温度は120℃に設定し、フィルムゲートを有する縦100mm、横100mm、厚み1mmtの平板作成用金型を使用し、射出成形を実施した。射出速度50mm/秒、保圧30MPa、射出時間10秒、冷却時間10秒で成型を行い、成形性の良悪は以下のような評価を行った。
○:問題なく成型品が得られる。
△:時々スプルーが金型に残る。
×:離型性が不十分であり、成型品が金型に貼り付いたり変形する。
【0064】
(6)ハンダ耐熱性と着色性
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂組成物の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、長さ127mm、幅12.6mm、厚み0.8mmtのUL燃焼試験用テストピースを射出成形し、試験片を作製した。試験片は85℃、85%RH(相対湿度)の雰囲気中に72時間放置した。試験片はエアリフロー炉中(エイテック製 AIS−20−82C)、室温から150℃まで60秒かけて昇温させ予備加熱を行った後、190℃まで0.5℃/分の昇温速度でプレヒートを実施した。その後、100℃/分の速度で所定の設定温度まで昇温し、所定の温度で10秒間保持した後、冷却を行った。設定温度は240℃から5℃おきに増加させ、表面の膨れや変形が発生しなかった最高の設定温度をリフロー耐熱温度とし、ハンダ耐熱性の指標として用いた。
ハンダ耐熱性;
◎:リフロー耐熱温度が280℃以上
○:リフロー耐熱温度が260℃以上280℃未満
×:リフロー耐熱温度が260℃未満
ハンダ耐熱時の着色性;
○:目視判断 黄変なし
△:目視判断 若干黄変
×:目視判断 黄変している
【0065】
(7)飽和吸水率
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂組成物の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、縦100mm、横100mm、厚み1mmの平板を射出成形し、評価用試験片を作製した。この試験片を80℃熱水中に50時間浸漬させ、飽和吸水時及び乾燥時の重量から以下の式より飽和吸水率を求めた。
飽和吸水率(%)={(飽和吸水時の重量−乾燥時の重量)/乾燥時の重量}×100
【0066】
(8)流動性
東芝機械製射出成形機IS−100を用い、シリンダー温度は330℃、金型温度は120℃に設定し、射出圧設定値40%、射出速度設定値40%、計量35mm、射出時間6秒、冷却時間10秒の条件で、幅1mm、厚み0.5mmの流動長測定用金型で射出成形し、評価用試験片を作製した。流動性の評価として、この試験片の流動長さ(mm)を測定した。
【0067】
(9)シリコーン密着性
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂組成物の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板を射出成形し、評価用試験片を作製した。この試験片の片面に、シリコーン封止材(信越シリコーン社製、ASP−1110、封止材硬度D60)をコーティング厚み約100μmになるようにコーティングし、100℃×1時間のプレヒーティング後、150℃×4時間の硬化処理をして試験片の片面に封止材皮膜を形成させた。
次いで、試験片上の封止材皮膜に対して、JIS K5400に基づく碁盤目試験(1mm幅クロスカット100マス)で密着性を評価した。
○:剥離マス目数10以下
×:剥離試験前のマス目形成時に剥離あり
【0068】
(10)耐光性
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂組成物の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板を射出成形し、評価用試験片を作製した。この試験片について、促進耐候試験機「QUV」を用い、63℃50%RHの環境下、50mW/UV照射を実施した。試験片の波長460nmの光反射率を、照射前と照射60時間後に測定した。照射前試験片の光反射率に対する、照射後試験片の光反射率の保持率を下記の基準で評価した。
○:保持率90%以上
△:保持率90%未満〜85%以上
×:保持率85%未満
【0069】
(合成例1)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、スラリー調合槽で調整した高純度テレフタル酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールのスラリーを連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm
2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm
2で所定の反応度まで反応を行った。また、チタンブトキサイドの1,4−シクロヘキサンジメタノール溶液および燐酸の1,4−シクロヘキサンジメタノール溶液を別々に第2エステル化反応器に連続的に供給した。なお、これらの調合槽や各反応器には酸素濃度が1ppm以下の窒素ガスを流通させて、スラリー調合槽の気相中の酸素濃度は30ppm、第1及び第2エステル化反応器の気相中の酸素濃度は30ppm以下に維持した。また、調合した触媒溶液や燐酸溶液には酸素濃度が約1ppm以下の窒素ガスをバブリングさせ、触媒溶液槽および燐酸溶液槽には同様の窒素ガスを流通させた。このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応器に供給し、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重縮合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに最終重縮合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで重縮合させた。溶融重縮合ポリマーの極限粘度は0.50dl/gであった。
【0070】
得られた溶融重縮合ポリマーを連続固相重合装置の貯蔵槽(酸素濃度20ppm以下の窒素ガスを流通)を経由して結晶化装置に送り、酸素濃度60ppm以下の窒素ガス流通下に約155℃で3時間連続的に結晶化し、次いで塔型固相重合器に投入し、酸素濃度50〜80ppm以下の窒素ガス流通下、約210℃で連続的に固相重合(SSP)し、固相重合ポリエステル樹脂を得た。貯蔵槽、固相重合にはサイロ型の容器を用い下部の角度は樹脂の安息角より5度大きく取り、バッフルコーンを設置した。固相重合後、篩分工程およびファイン除去工程で連続的に処理した。
【0071】
なお、溶融重縮合反応器及び固相重合反応器の攪拌機のシール部には酸素濃度が1ppmの酸素濃度の窒素ガスを流した。
また、固相重合に使用した窒素ガスは固形物除去後、冷却し、スクラバーにおいて冷エチレングリコールと気液接触させて洗浄し、このようにして洗浄された窒素ガスに新しい窒素ガスを補給し、これを予熱して固相重合反応塔に供給する。この際、スクラバーでは、使用済み窒素ガス/洗浄エチレングリコールの気液比やスクラバーでの洗浄エチレングリコールに対する新エチレングリコールの補給割合は適正な範囲とした。 また、洗浄後の窒素ガスには10%の新鮮な窒素ガスを補給し、固相重合装置に供給する窒素ガス中の酸素濃度は50ppm以下であった。
なお、窒素ガス中の酸素濃度は、テレダインアナリティカルインスツルメンツ社製のユナイテッドアナライザー形式310により、また、露点は東洋テクニカ社製のハイグロテックMMY150低露点計により測定した。
このようにして、極限粘度が0.60デシリットル/グラム、モノアルデヒド基末端が12当量/tのポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の特性値などを表1に示す。
【0072】
(合成例2〜5)
使用する原料の量や種類を変更する以外は、合成例1のポリエステル樹脂の重合と同様にして、各ポリエステル樹脂を得た。得られた各ポリエステル樹脂の特性値などを表1に示す。
(合成例6)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、スラリー調合槽で調整した高純度テレフタル酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールのスラリーを連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm
2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm
2で所定の反応度まで反応を行った。また、チタンブトキサイドの1,4−シクロヘキサンジメタノール溶液および燐酸の1,4−シクロヘキサンジメタノール溶液を別々に第2エステル化反応器に連続的に供給した。なお、これらの調合槽や各反応器には酸素濃度が1ppm以下の窒素ガスを流通させて、スラリー調合槽の気相中の酸素濃度は30ppm以下、第1及び第2エステル化反応器の気相中の酸素濃度は30ppm以下に維持した。また、調合した触媒溶液や燐酸溶液には酸素濃度が約1ppm以下の窒素ガスをバブリングさせ、触媒溶液槽および燐酸溶液槽には同様の窒素ガスを流通させた。このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応器に供給し、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重縮合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに最終重縮合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで2時間重縮合させた。溶融重縮合ポリマーの極限粘度は0.65dl/g、モノアルデヒド基末端が28当量/tであった。得られたポリエステル樹脂の特性値などを表1に示す。
【0073】
(ポリエステル樹脂(E)の合成例)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)
攪拌機付き20リッターステンレス製オートクレーブに、高純度ジメチルテレフタル酸を1409g、その4倍モル量の1,4−ブタンジオール、チタンブトキサイド2gを仕込みエステル交換後、60分間かけて240℃まで昇温しつつ、反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに240℃、13.3Paで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを水中にストランド状に吐出して冷却後、カッターで切断して長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。得られたポリエステルの極限粘度は、0.60dl/g、樹脂組成は、
1H−NMR測定により、テレフタル酸が100モル%、1,4−ブタンジオールが100モル%であった。得られたポリエステル樹脂の特性値などを表1に示す。
【0074】
ポリブチレンナフタレート(PBN)
攪拌機付き20リッターステンレス製オートクレーブに、高純度2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを1409g、その4倍モル量の1,4−ブタンジオール、チタンブトキサイド2gを仕込みエステル交換後、60分間かけて300℃まで昇温しつつ、反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに310℃、13.3Paで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを水中にストランド状に吐出して冷却後、カッターで切断して長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。得られたポリエステルの極限粘度は、0.60dl/g、樹脂組成は、
1H−NMR測定により、2,6−ナフタレンジカルボン酸が100モル%、1,4−ブタンジオールが100モル%であった。得られたポリエステル樹脂の特性値などを表1に示す。
【0075】
(比較合成例1)
攪拌機付き20リッターステンレス製オートクレーブに、高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下250℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を行い、エステル化率が約95%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)を得た。加圧エステル化時スラリーの酸素濃度は120ppmであった。このBHET混合物に重合触媒として、二酸化ゲルマニウム(Geとして100ppm)を加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Paで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを水中にストランド状に吐出して冷却後、カッターで切断して長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。得られたPETのIVは0.61dl/gで、樹脂組成は、
1H−NMR測定により、テレフタル酸が100モル%、エチレングリコールが98.0モル%、ジエチレングリコール2.0モル%であった。得られたポリエステル樹脂の特性値などを表2に示す。
【0076】
(比較合成例2)
使用する原料の種類を変更する以外は、比較合成例1のポリエステル樹脂の重合と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の特性値などを表2に示す。
【0077】
(比較合成例3)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、スラリー調合槽で調整した高純度テレフタル酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールのスラリーを連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm
2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm
2で所定の反応度まで反応を行った。また、チタンブトキサイドの1,4−シクロヘキサンジメタノール溶液および燐酸の1,4−シクロヘキサンジメタノール溶液を別々に第2エステル化反応器に連続的に供給した。なお、これらの調合槽や各反応器には酸素濃度が1ppm以下の窒素ガスを流通させて、スラリー調合槽の気相中の酸素濃度は140ppm、第1及び第2エステル化反応器の気相中の酸素濃度は30ppm以下に維持した。また、調合した触媒溶液や燐酸溶液には酸素濃度が約1ppm以下の窒素ガスをバブリングさせ、触媒溶液槽および燐酸溶液槽には同様の窒素ガスを流通させた。このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応器に供給し、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重縮合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに最終重縮合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで重縮合させた。溶融重縮合ポリマーの極限粘度は0.62dl/g、モノアルデヒド基末端が38当量/tであった。得られたポリエステル樹脂の特性値などを表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
(実施例1〜13、比較例1〜3)
表3、4に記載の成分と質量割合で、コペリオン(株)製二軸押出機STS−35を用いて、樹脂の融点+15℃で溶融混練し、実施例1〜13、比較例1〜3のポリエステル樹脂組成物を得た。表3、4中、ポリエステル樹脂以外の使用材料は以下の通りであり、各材料の数値は質量部である。
酸化チタン(B):石原産業(株)製 タイペークCR−60、ルチル型TiO
2、平均粒径0.2μm
強化材(C):ガラス繊維(日東紡績(株)製、CS−3J−324)、針状ワラスト((株)NYCO製、NYGLOS8)
充填材(D):タルク(林化成(株)製 ミクロンホワイト5000A)
離型剤:ステアリン酸マグネシウム
安定剤:ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャリティーケミカルズ製、イルガノックス1010)
【0081】
実施例1〜13、比較例1〜3で得られたポリエステル樹脂組成物を各種特性の評価に供した。その結果を表3、4に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
表3から、ポリエステル樹脂組成物のDSCによる融解ピーク温度が280℃以上の場合は、リフローハンダ工程に適応可能であり、さらに融解ピーク温度が310℃以上の場合は、リフロー耐熱温度が280℃以上であることから、金/錫共晶ハンダ工程にも適応可能なハンダ耐熱性を示すとともに、LED用途で重要な特性である封止材との密着性、表面反射率に優れ、さらには成形性、流動性、寸法安定性、低吸水性、耐光性にも優れるという、格別な効果が確認できた。一方、比較例では、これら特性を全て満足させることはできなかった。