(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1Aは本発明の一実施形態に係る燃料電池の製造方法を構成する積層体の積層について示す工程ブロック図、
図1Bは同積層体の積層について示すフローチャート、
図2(A)から
図2(F)は本発明の一実施形態に係る燃料電池の製造方法を示す概略説明図、
図3(A)は同実施形態に係る燃料電池の製造装置を示す斜視図、
図3(B)は正面図、
図4は同製造装置における上部構造物及び塗布部を取り除いた状態での平面図である。
図5(A)はセパレータにシール部材及び位置決め部材を塗布した状態を示す正面図、
図5(B)はMEAにシール部材及び位置決め部材を塗布した状態を示す正面図である。
図6(A)から
図6(D)は同製造装置を構成するMEA用ロボットアームを示す正面図、側面図、平面図、及び斜視図、
図7(A)から
図7(D)は同製造装置を構成するセパレータ用ロボットアームを示す正面図、側面図、平面図、及び斜視図である。
【0012】
本実施形態に係る燃料電池は、MEAの両側にセパレータを配置した燃料電池セルを複数積層して構成される。本実施形態に係る燃料電池の製造方法について図面を参照して概説すれば、セパレータを配置してシール部材を配置し、シール部材よりも速乾性の高い位置決め部材を配置する(
図1A、1BのステップST1,2,3、
図2(A)参照)。そして、MEAを配置すると、上記で配置した位置決め部材が即座に硬化してセパレータとMEAとが位置決めされる(
図1A,1BのステップST5)。そして、さらにシール部材及び位置決め部材を配置し(
図1のステップST6,7、
図2(B)参照)、シール部材を硬化させる(
図1のステップST8、
図2(C)参照)。さらにMEAに位置決め基準を作成し(
図1のステップST10)、所定の積層枚数積層するまで積層を続ける(
図2(E)、(F)参照)。
【0013】
上記工程の中でも、シール部材配置工程は、
図2(A)や
図5(A)、5(B)に示すように燃料電池100を構成するMEA11やセパレータ13,14を積層する際に発電が行われる発電領域よりも外方であって、セパレータ13,14やMEA11の積層方向においてセパレータ13と隣接するセパレータ14との間、又はセパレータ13(14)と隣接するMEA11との間にセパレータ13と隣接するセパレータ14、又はMEA11の外周をシールするシール部材30を配置する。また、位置決め部材配置工程は、
図2(A)や
図5(A)、5(B)に示すように、MEA11における発電領域よりも外方であって、シール部材30が配置された範囲よりも内方にセパレータ13と隣接するセパレータ14又はMEA11との間に隣接する部材の位置決めを行なう位置決め部材40を配置する。本実施形態では、セパレータ13とセパレータ14とが予め接合されてセパレータアセンブリ12として構成されているが、これに限定されない。詳細は後述する。
【0014】
次に本実施形態に係る製造方法を使用する燃料電池の製造装置について説明する。燃料電池の製造装置200は、シール部材30及び位置決め部材40の塗布部210、MEA用ロボットアーム220と、セパレータ用ロボットアーム230と、接着剤硬化用クランプ240と、上記構成部材の設置部250と、を有する。
【0015】
塗布部210は、シール部材30を塗布する塗布機211と、位置決め部材40を塗布する塗布機212と、を有する。塗布部210は、例えばガンの形状をしたインジェクションタイプのものを挙げることができるが、これに限定されない。塗布部210は、設置部250の構成要素である上部壁252に設置されたアーム(不図示)に上下左右方向に移動可能に取り付けられている。
【0016】
MEA用ロボットアーム220は、
図6(A)から
図6(D)に示すように、移動アーム221、222と、保持部材223、224と、カッター225と、カメラ226と、搬送部材227と、を有する。
【0017】
移動アーム221は、保持部材223の上部に上下方向に移動可能に取り付けられている。移動アーム222は、保持部材223の下部に上下方向に移動可能に取り付けられている。保持部材223は、移動アーム221、222が移動するためのレールなどを備えている。移動アーム221、222が上下方向に移動することによって、移動アーム221、222は接近離間し、MEA11の把持及び把持の解除が行われる。また、移動アーム221、222の高さは、セパレータ13と隣接するセパレータ14又はMEA11との間の間隔と同一に設定されており、これによって位置決め部材40を硬化させる際の隙間ゲージとして機能するようにも構成されている。
【0018】
保持部材224は、移動アーム221、222及び保持部材223を
図6(B)の左右方向に移動可能に保持する。保持部材224が
図6(B)の左右方向に移動可能であることによって、MEA用ロボットアーム220をワークであるMEA11に対して面方向に接近離間させることができ、MEA11を把持した状態で搬送部材227の方向へ移動させれば、MEA11を長辺方向に引っ張った状態にすることができる。
【0019】
カッター225は、移動アーム221の先端に取り付けられる。カッター225は、移動アーム221と独立に移動する。これによって、移動アーム221、222はMEA11を把持でき、さらに把持後にカッター225を動作させることによってMEA11の端部をカットして
図5(B)に示すように隣接するセパレータ13,14との位置合わせ部位となる切り欠き11dを形成することができる。
【0020】
カメラ226は、保持部材223に取り付けられている。カメラ226は、ワークであるMEA11を撮影してMEA11との距離を算出し、不図示の制御部に送信する。カメラ226によって求められたMEA11との距離に基づいてMEA用ロボットアーム220の位置の調整が行われる。
【0021】
搬送部材227は、MEA用ロボットアーム220を設置台251のレール252〜255のいずれかに沿って面方向に移動させる。搬送部材227には移動のための不図示のローラーなどが設けられ、ローラーが設置台251に形成されたレール252〜255のいずれかに沿って移動することによってMEA用ロボットアーム220の移動が行われる。本実施形態においてMEA用ロボットアーム220は、
図4に示すように、MEA11を把持する辺の方向に沿ってMEA用ロボットアーム220a,220bとMEA用ロボットアーム220c,220dとが対向して配置して構成している。MEA用ロボットアーム220aと220b、及びMEA用ロボットアーム220cと220dは、搬送部材227によって互いに離れるように移動させれば、MEA11を当該方向に引っ張ることができる。なお、MEA用ロボットアーム220aから220dは、設置した台数に応じてアルファベットを付したのみで、構成は同様である。
【0022】
セパレータ用ロボットアーム230は、
図7(A)から
図7(D)に示すように、移動アーム231、232と、保持部材233、234と、位置合わせ部235と、カメラ236と、搬送部材237と、を有する。
【0023】
移動アーム231、232は、移動アーム221、222と同様の構成であり、保持部材233に取り付けられることによって、接近離間し、セパレータ13,14の把持及び把持の解除を行う。保持部材233は、保持部材223と同様の構成であり、移動アーム231、232を上下方向に移動可能に保持する。また、移動アーム231,232の高さについても移動アーム221、222と同様に、セパレータ13と隣接するセパレータ14又はMEA11との間隔と同一に設定され、位置決め部材40の硬化の際の隙間ゲージとして機能するように構成されている。
【0024】
保持部材234は、保持部材224と同様の構成であり、移動アーム231、232、及び保持部材233を
図7(B)の左右方向に移動可能に保持する。位置合わせ部235は、セパレータ13,14との位置合わせを行なう。セパレータ13,14には、精度よく積層を行うためにセパレータ用ロボットアーム230への位置合わせを行なうにあたって、
図5(A)に示すように切り欠き13a、14aが設けられている。位置あわせ部235は、切り欠き13a、14aと合致し、これによってセパレータ13,14がセパレータ用ロボットアーム230に位置合わせされる。位置合わせ部235は、セパレータ13、14の切り欠き13a、14aに対応して三角柱のような凸型の形状をしている。
【0025】
カメラ236は、移動アーム231に設けられて周囲を撮像し、撮像結果を送信する。制御部は、撮像結果を画像解析してセパレータの形状を特定してセパレータ用ロボットアーム230との距離を算出し、セパレータ用ロボットアーム230を移動させてセパレータとの距離を調整する。
【0026】
搬送部材237は、搬送部材227と同様にセパレータ用ロボットアーム230を設置台251のレール252〜255に沿って面方向に移動させる。また、セパレータ用ロボットアーム230においても、セパレータアセンブリ12を把持する辺の方向に沿ってセパレータ用ロボットアーム230a、230bとセパーレタ用ロボットアーム230c,230dとが対向して配置して構成している。なお、セパレータ用ロボットアーム230aから230dについても設置した台数に応じてアルファベットを付したのみで、構成は同様である。
【0027】
接着剤硬化用クランプ240は、
図4や
図12などに示すように、クランプ241と、支持部242から245と、を有する。クランプ241には挟持機能だけでなく、クランプ自体を冷却する機能もあり、これにより位置決め部材40の硬化が促進される。支持部242から245はクランプ241を上下方向に移動可能に支持する棒状の部材である。
【0028】
設置部250は、燃料電池の製造装置の構成部品をする構成であり、設置台251と、上部設置構造物252と、を有する。設置台251は、ワークであるセパレータアセンブリ12やMEA11、MEA用ロボットアーム220.セパレータ用ロボットアーム230を設置する構造物である。設置台251には
図4に示すようにレール252、253、254,255が形成されている。レール252、253はMEA用ロボットアーム220、及びセパレータ用ロボットアーム230がセパレータアセンブリ12やMEA11を把持する際にMEA用ロボットアーム220やセパレータ用ロボットアーム230が位置する。レール254、255は、MEA用ロボットアーム220又はセパレータ用ロボットアーム230が他方のロボットアームにワークを把持させる際に暫定的に退避する部位などとして使用される。上部設置構造物252は、不図示の支柱などに支持された設置台251と同様の構造物である。上部設置構造物252は、塗布部210を取り付けたり、設置台251におけるレール252〜255と同様にMEA用ロボットアーム220及びセパレータ用ロボットアーム230が移動できるレールを有している。
【0029】
また、制御部は、CPU、RAM、ROMなどによって構成され、塗布部210やMEA用ロボットアーム220、セパレータ用ロボットアーム230、及び接着剤硬化用クランプ240の動作を制御する。
【0030】
次に上記製造装置によって製造される燃料電池について説明する。
図8は燃料電池を示す斜視図、
図9は同燃料電池の構成を示す分解斜視図、
図10は同燃料電池の一部を示す分解斜視図、
図11は同燃料電池の燃料電池セルを構成するセパレータ及びMEAを示す断面図である。燃料電池100は、燃料電池セル10aを複数積層した積層体10を主要な構成要素として有している。燃料電池セル10aは、MEA11の両側面にセパレータアセンブリ12を配置して構成される。
【0031】
MEA11は、電解質膜11aの片側にアノード11b、もう片側にカソード11cが接合されている。セパレータアセンブリ12は、2枚のセパレータ13,14を有する。また、積層体10の積層方向における両端部には集電板16,17が設けられている。また、燃料電池100は、筐体20を有している。筐体20は、一対の締結板21、22と補強板23、24、及びエンドプレート25,26を有している。
【0032】
セパレータ13,14は、
図5(A)や
図11に示し、積層された複数の燃料電池セル10aにおいて隣り合うMEA11を隔離しつつ、MEA11で発生した電力を通電させている。セパレータ13,14は、アノード側セパレータ13とカソード側セパレータ14とに分類される。アノード側セパレータ13は、MEA11のアノード11bに当接させている。アノード側セパレータ13は、導電性材料を有する金属からなり、アノード11bよりも大きい薄板状に形成している。セパレータ13,14はまとめてセパレータアセンブリ12と称することもある。
【0033】
アノード側セパレータ13の中央には、
図11に示すように、燃料ガス(水素)と冷却水等の冷却流体とを隔てて流す流路を構成するように複数の凹凸を一定の間隔で形成した波形形状13gを設けている。アノード側セパレータ13は、凹凸形状のうち、アノード11bと接触して形成された閉空間を、アノード11bに対して水素を供給するアノードガス流路13hとして用いている。一方、アノード側セパレータ13は、断面が複数の凹凸形状からなる波形形状13gと、カソード側セパレータ14の波形形状14gとの間に形成された閉空間を、冷却水を供給する冷却流体流路13j(14j)として用いている。
【0034】
アノード側セパレータ13は、長方形状からなり、その長手方向の一端に、カソードガス供給口13a、冷却流体供給口13b、およびアノードガス供給口13cに相当する貫通孔を開口している。同様に、アノード側セパレータ13は、その長手方向の他端に、アノードガス排出口13d、冷却流体排出口13e、およびカソードガス排出口13fに相当する貫通孔を開口している。
【0035】
カソード側セパレータ14は、MEA11のカソード11cに当接している。カソード側セパレータ14は、導電性材料を有する金属からなり、カソード11cよりも大きい薄板状に形成している。
【0036】
カソード側セパレータ14の中央には、
図11に示すように、酸化剤ガス(酸素を含有した空気または純酸素)と冷却水とを隔てて流す流路部を構成するように断面が複数の凹凸形状からなる波形形状14gを設けている。カソード側セパレータ14は、凹凸形状のうち、カソード11cと接触して形成された閉空間を、カソード11cに対して酸化剤ガスを供給するカソードガス流路14hとして用いている。一方、カソード側セパレータ14は、凹凸形状のうち、アノード側セパレータ13との間に形成された閉空間を、冷却水を供給する冷却流体流路14j(13j)として用いている。
【0037】
カソード側セパレータ14は、長方形状からなり、その長手方向の一端に、カソードガス供給口14a、冷却流体供給口14b、およびアノードガス供給口14cに相当する貫通孔を開口している。同様に、カソード側セパレータ14は、その長手方向の他端に、アノードガス排出口14d、冷却流体排出口14e、およびカソードガス排出口14fに相当する貫通孔を開口している。セパレータ14はセパレータ13と接合され、供給口14a〜14c及び排出口14d〜14fはセパレータ13の供給口13a〜13c及び排出口13d〜13fと連通する。また、セパレータ13、14には、
図4(A)に示すように、外周の一部に積層時の位置決め形状として切り欠き13k、14kが形成されている(
図9、
図10では便宜上省略している)。
【0038】
MEA11は、
図5(B)や
図11に示し、供給された酸素と水素を化学反応させて電力を生成する。MEA11は、電解質膜11aの片側にアノード11bを接合し、もう一方の側にカソード11cを接合して形成している。電解質膜11aは、たとえば、固体の高分子材料からなり、薄板状に形成している。
【0039】
固体高分子材料には、たとえば、水素イオンを伝導し、湿潤状態で良好な電気伝導性を有するフッ素系樹脂を用いている。アノード11bは、電極触媒層、撥水層、およびガス拡散層を積層して構成し、電解質膜11aよりも若干小さい薄板状に形成している。カソード11cは、電極触媒層、撥水層、およびガス拡散層を積層して構成し、アノード11bと同様の大きさで薄板状に形成している。
【0040】
アノード11bおよびカソード11cの電極触媒層は、導電性の担体に触媒成分が担持された電極触媒と高分子電解質を含んでいる。アノード11bおよびカソード11cのガス拡散層は、たとえば、充分なガス拡散性および導電性を有する炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロス、カーボンペーパ、またはカーボンフェルトから形成している。
【0041】
MEA11は、フレーム部材15を備えている。フレーム部材15は、積層した電解質膜11a、アノード11b、およびカソード11cの外周を一体に保持している。フレーム部材15は、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂からなり、セパレータ13,14の外周部分の外形形状と同様の外形形状で形成している。フレーム部材15は、その長手方向の一端に、カソードガス供給口15a、冷却流体供給口15b、およびアノードガス供給口15cに相当する貫通孔を開口している。同様に、フレーム部材15は、その長手方向の他端に、アノードガス排出口15d、冷却流体排出口15e、およびカソードガス排出口15fに相当する貫通孔を開口している。また、MEA11のフレーム部材15には、積層時に隣接するセパレータ13,14との位置合わせを行なうための形状として
図5(B)に示すような切り欠き11dが後述する製造工程の際に形成される(
図9、
図10では図示の便宜上省略している)。また、平面視した際のセパレータ13,14の波形形状13g、14gとMEA11の部分は発電が行われる発電領域に当る。
【0042】
上記の燃料電池セル10aは、互いに密封した状態で複数積層する必要がある。このため、積層する燃料電池セル10aの中でもMEA11とセパレータ13及びセパレータ14との間及びセパレータ13とセパレータ14との間は、外周にシール部材30を塗布することによって封止している。シール部材30は、たとえば、熱硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂は、たとえば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等から選択する。また、後述する積層の際に隣接するセパレータ13、14又は隣接するセパレータ13とMEA11との位置決めを行なう位置決め部材40は短時間で隣接する部材を接着する必要性から、シール部材30よりも硬化時間の速い瞬間接着剤によって構成している。本実施形態において瞬間接着剤は、シアノアクリレート系接着剤などから構成されるが、これに限定されない。また、瞬間接着剤などから構成される位置決め部材の硬化時間は長くても5分程度である。
【0043】
一対の集電板16,17は、
図9に示し、燃料電池セル10aで生成された電力を外部に取り出す。
【0044】
一対の集電板16,17は、燃料電池セル10aが複数積層された積層体10の両端にそれぞれ配設している。一対の集電板16,17の外形形状は、一部の形状を除いて、層厚を少し厚くしたMEA11のフレーム部材15と同様である。一対の集電板16,17は、その長手方向の一端に、カソードガス供給口16a、17a、冷却流体供給口16b、17b、およびアノードガス供給口16c、17cに相当する貫通孔を開口している。同様に、長手方向の他端には、アノードガス排出口16d、17d、冷却流体排出口16e、17eおよびカソードガス排出口16f、17fに相当する貫通孔を開口している。一対の集電板16、17は、その中央に集電部16h(集電板17についても同様)を備えている。
【0045】
一対の集電板16,17の集電部16h等は、たとえば、ガスを透過させない緻密質カーボンのような導電性部材からなり、アノード11bおよびカソード11cの外形よりも若干小さい薄板状に形成している。一対の集電部16h等は、複数積層した最外層の燃料電池セル10aに設けたMEA11のアノード11bまたはカソード11cに当接している。集電部16h等は、その一面から導電性を備えた円柱形状の突起部16g等を突出して設けている。突起部16g等は、後述する筺体20の一対のエンドプレート25、26の貫通孔25g等を挿通して、外部に臨んでいる。また、集電板16の突起部16gに当る形状は集電板17についても同様に設けられている。
【0046】
筺体20は、
図9に示し、複数積層した燃料電池セル10aおよび一対の集電板16,17を互いに密着させた状態で保持している。
【0047】
筺体20は、上記のように一対の締結板21、22、一対の補強板23,24、および一対のエンドプレート25,26、及びネジ27を含んでいる。以下、筺体20に含まれた各部材について説明する。
【0048】
一対のエンドプレート25,26は、複数積層された燃料電池セル10aの両端に配設した一対の集電板16,17を挟持して付勢している。一対のエンドプレート25,26の外形形状は、一部の形状を除いて、層厚を増したMEA11のフレーム部材15と同様である。一対のエンドプレート25,26は、たとえば、金属からなり、一対の集電板16,17と当接する部分に絶縁体を設けている。
【0049】
一対のエンドプレート25,26は、その長手方向の一端に、カソードガス供給口25a、26a、冷却流体供給口25b、26b、およびアノードガス供給口25c、26cに相当する貫通孔を開口している。同様に、その長手方向の他端には、アノードガス排出口25d、26d、冷却流体排出口25e、26eおよびカソードガス排出口25f、26fに相当する貫通孔を開口している。
【0050】
セパレータ13,14、フレーム部材15、集電板16,17、及びエンドプレート25,26のカソードガス供給口13a〜17a、25a、26a、冷却流体供給口13b〜17b、25b、26b、アノードガス供給口13c〜17c、25c、26c、アノードガス排出口13d〜17d、25d、26d、冷却流体排出口13e〜17e、25e、26e、及びカソードガス排出口13f〜17f、25f、26fは、セパレータ13,14、MEA11、集電板16,17、及びエンドプレート25,26を位置合わせした際に連通するように構成されている。一対のエンドプレート25,26は、前述した一対の集電板16,17の突起部16g等を挿通させる貫通孔25g、26gを有している。
【0051】
一対の締結板21、22は、たとえば、金属からなり、板状に形成している。一対の締結板21、22は、縁部が一部立ち上げて形成されており、組み付けた際に一対のエンドプレート25、26の面と接触する。また、締結板21,22においてエンドプレート25,26と接触する面にはネジ27を挿通させる穴が設けられており、当該穴に取り付けたネジ27を締め付けることによってエンドプレート25、26、集電板16,17、及び積層体10が積層方向に加圧される。
【0052】
一対の補強板23、24は、たとえば、金属からなり、一対の締結板21、22よりも細長い板状に形成している。一対の補強板23、24は、長手方向における端部が一部立ち上げて形成されており、当該部分にはネジ27を挿通させる穴が設けられている。当該穴はネジ27を積層方向に通すように形成されており、ネジ27を取り付けて締結することによって、締結板21,22と同様にエンドプレート25,26、集電板16,17、及び積層体10が積層方向に加圧される。このように、一対の締結板21、22および一対の補強板23、24は、ネジ27を締結することによって、エンドプレート25、26、集電板16,17、及び積層体10を積層方向に加圧している。
【0053】
次に本実施形態に係る燃料電池の製造方法について、燃料電池を構成するセパレータとMEAを積層して積層体を形成する工程について説明する。その他の工程については従来と同様の方法を用いるため、説明を省略する。
図12は本発明の一実施形態に係る燃料電池の製造方法におけるセパレータ配置工程を示す説明図、
図13は同製造方法におけるシール部材配置工程及び位置決め部材配置工程を示す説明図である。
図14は同製造方法におけるMEA配置工程を示す説明図、
図15は同製造方法におけるシール部材配置工程及び位置決め部材配置工程を示す説明図、
図16は同製造方法における位置決め部材硬化工程及び位置決め基準作成工程を示す説明図である。本実施形態に係る燃料電池100を構成する積層体10の積層は、
図1A,1Bに示すように、セパレータ又はMEAの配置工程(ステップST1,5)と、シール部材配置工程(ステップST2、6)と、位置決め部材配置工程(ステップST3、7)と、位置決め部材硬化工程(ステップST8)と、位置決め基準作成工程(ステップST10)と、を有する。
【0054】
まず、セパレータ又はMEAの配置工程において、
図2(A)及び
図12に示すように、制御部がセパレータ用ロボットアーム230を動作させ、不図示の部品設置場所からセパレータアセンブリ12を取り出す。その際には、カメラ236を使用して位置合わせ部235によってセパレータアセンブリ12を位置合わせして把持し、設置台251の設置位置まで搬送し、配置する(
図1BのステップST1)。
【0055】
次にシール部材配置工程において、
図5(A)及び
図13に示すように、制御部によって塗布部210を動作させ、セパレータアセンブリ12の外周にシール部材30を塗布する(
図1BのステップST2)。なお、セパレータ13、14の外周には切り欠き13k、14kが設けられているため、切り欠き13k、14kにシール部材30を塗布すれば、シール部材30が設置台251に垂れるなどして品質が低下する場合が考えられる。そのため、切り欠き13k、14kにはシール部材30を塗布しないように塗布部210を制御する。
【0056】
次に位置決め部材配置工程において、
図5(A)及び
図13に示すように、制御部によって塗布部210を動作させ、セパレータアセンブリ12におけるシール部材30を塗布した部位よりも内方であって発電が起こる領域よりも外方に位置決め部材40を塗布する(
図1BのステップST3)。なお、
図12、13においてセパレータアセンブリ12よりも下にはMEA11が隣接していないため、シール部材硬化工程は行われないが、MEA11が隣接して配置している場合には後述するように位置決め部材硬化工程が行われる。
【0057】
所定枚数の積層が終了していない場合(
図1BのステップST4:NO)、積層を継続し、本実施形態では次にMEA11を積層する(
図1BのステップST5)。MEA配置工程では、
図2(B)及び
図14に示すように、制御部によってMEA用ロボットアーム220を動作させ、部品設置場所からMEA11を取り出し、カメラ226を使用してMEA11を把持し、設置台251まで搬送する。MEA11は薄膜状の部品であるため、セパレータ13,14に比べ皴ができやすい。よって、MEA用ロボットアーム220a〜220dによってMEA11を引っ張った状態でMEA11をセパレータ上に位置決めする。これによって、強度のないMEAであっても皴をつくることなく積層でき、それによって後述するMEA11の位置決め基準を精度よく形成できる。そのため、セパレータ13,14との位置合わせを高精度に行なうことができる。
【0058】
次にシール部材配置工程において、
図5(B)及び
図15に示すように、切り欠き13k、14kを避けながら制御部によって塗布部210を制御し、MEA11のフレーム部材15の周囲にシール部材30を塗布する(
図1BのステップST6)。そして、位置決め部材配置工程において、制御部によって塗布部210を制御し、シール部材30を配置した範囲よりも内方であって発電領域よりも外方に位置決め部材40を塗布する(
図1BのステップST7)。
【0059】
次に位置決め部材硬化工程において、
図5(B)及び
図16に示すように、クランプ241によってワークであるセパレータアセンブリ12及びMEA11を積層方向に押圧する(
図1BのステップST8)。この際に、MEA用ロボットアーム220は、MEA11をセパレータアセンブリ12に接近離間させ、セパレータアセンブリ12とMEA11との間隔を所定の値に調整する。
【0060】
セパレータアセンブリ12とMEA11との間隔が所定の値になったら、当該位置にてクランプ241の冷却機構を動作させ、クランプ241と接触するMEA11の熱を奪って冷却し、シール部材30及び位置決め部材40を硬化させる。位置決め部材40は瞬間接着剤によって構成されているため、数分程度で即座に硬化することができる。そのため、シール部材30の硬化に時間がかかっても積層したワークの位置を迅速に決めることができ、積層の精度を確保しつつタクトタイムを短縮することができる。
【0061】
次に、最後に積層した部材がMEAである場合(
図1BのステップST9:YES)、位置決め基準作成工程を行う(
図1BのステップST10)。最後に積層した部材がセパレータアセンブリ12の場合(
図1BのステップST9:NO)、位置決め基準作成工程は行わない。MEA11の位置決め基準作成工程において、
図5(B)に示すように、MEA用ロボットアーム220のカッター225を動作させ、MEA11に基準となる切り欠き11dを形成する。MEA11を積層する際はセパレータアセンブリ12を積層する際と異なり、位置決め部材を硬化させた後に位置決め基準を形成する。このようにMEA11が隣接するセパレータアセンブリ12に位置決めされた状態で位置決め基準を形成することによって、皴の生じやすいMEAであっても精度よく位置決め基準を形成することができ、積層時の精度の低下を防止できる。
【0062】
その後は、燃料電池セル10aの積層枚数が所定の数になるまで
図1BのステップST5〜ステップST10を繰り返す。燃料電池セル10aが所定数積層できたら(
図1BのステップST4:YES)、筐体20を構成する締結板21、22、補強板23,24、エンドプレート25,26を配置してボルト27で締結して燃料電池が形成される。
【0063】
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。燃料電池を構成するセパレータやMEAの間は発電に必要な燃料や酸化剤を漏れないように流通させる必要があるため、MEAやセパレータの外周にシール剤が塗布される。また、セパレータやMEAには燃料電池の積層方向に燃料や酸化剤を流通させるために貫通孔が形成されるが、積層の態様によっては円滑に流通できなくなる場合があるため、積層の精度が要求される。上記のシール剤は通常硬化に一時間程度かかってしまうため、量産で要求されるような生産効率を達成することは難しい。また、タクトタイムを重視してシール剤が硬化する前に積層を行うとセパレータやMEAの位置がずれてしまい、積層の精度とサイクルタイムとを両立させることが難しい。
【0064】
これに対し、本実施形態ではシール部材30に加えて隣接するセパレータ13,14又は隣接するセパレータアセンブリ12とMEA11との位置合わせを行なう位置決め部材40を配置し、位置決め部材40をシール部材30よりも内方に配置するようにしている。このように位置決め部材40を配置することによって、隣接するMEA11やセパレータアセンブリ12を短時間で位置決めでき、シール部材30の硬化を待つことなく短時間で次の積層を行うことができる。また、シール部材30は従来通りセパレータアセンブリ12やMEA11の外周に塗布されているため、シール性が損なわれることなく、積層精度とサイクルタイムとの両立を達成することができる。
【0065】
また、位置決め部材40は、シール部材30よりも硬化時間が速い瞬間接着剤などによって構成したため、隣接するセパレータやMEA同士の位置合わせを即座に行うことができ、サイクルタイムの短縮に貢献することができる。
【0066】
また、シール部材30を塗布した状態で位置決め部材硬化工程を行なうことによって、位置決め部材硬化工程では位置決め部材40だけでなくシール部材30の硬化をも行うことができる。よって、この後でシール部材を硬化させるエージング工程の前に予めシール部材30の硬化を開始することができ、その分、エージング工程においてシール部材30の硬化に必要な時間を短縮することができる。
【0067】
また、MEA11を積層する際には、MEA用ロボットアーム220によってMEA11を引っ張った状態で積層するように構成している。そのため、薄膜であるMEA11においても皴を発生させずに積層することができ、皴の発生による積層の精度の低下を防止することができる。
【0068】
また、位置決め基準作成工程では、MEA11を積層後にMEA11に位置決めの基準となる切り欠き11dをカッター225によって形成している。MEA11は上記のように薄膜であるため、皴が発生し易いものの、位置決め部材40を塗布した状態でMEA11を積層した後であればMEA11が隣接するセパレータアセンブリ12に十分に固定されているため、皴が発生することもなく位置決め基準となる切り欠き形状を形成でき、積層精度の向上に寄与することができる。
【0069】
なお、本発明は上述した実施形態のみに限定されず、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
【0070】
位置決め部材40は、
図6に示すようにシール部材30の内方においてピンポイントで塗布する実施形態について説明したがこれに限定されない。位置決め部材40はシール部材30と同様に一定の範囲において線や面を形成するように塗布することもできる。また、シール部材30及び位置決め部材40は、隣接するセパレータアセンブリ12とMEA11との間に配置する実施形態について説明したが、これに限定されない。つまり、セパレータ13,14を予め接合してセパレータアセンブリ12とせずに、シール部材30と位置決め部材40とによってセパレータ13とセパレータ14とを接合してセパレータアセンブリ12としてもよい。
【0071】
また、クランプ241は位置決め部材40を硬化させるための冷却機能をも併せ持つと記載したが、これに限定されず、クランプ機能のみを有し、別部材に位置決め部材の硬化を行わせることもできる。また、MEA用ロボットアーム220、セパレータ用ロボットアーム230の移動アーム221、222,231,232は位置決め部材を硬化する際の隙間ゲージとしての機能をも有すると記載したが、これに限定されず、別部材に隙間ゲージとしての機能を付与することもできる。
【0072】
また、
図14から
図16においてセパレータアセンブリ12とMEA11との位置決めの際には、
図15に示すように、セパレータアセンブリ12とMEA11の間だけでなくMEA11の上にもシール部材30と位置決め部材40を塗布すると記載したが、これに限定されない。
図15ではMEA11の上にシール部材30及び位置決め部材40を塗布せずにクランプ241によって位置決め部材40の硬化を行なう。そして、その後にMEA11にシール部材30及び位置決め部材40を塗布し、セパレータアセンブリ12を積層して位置決め部材硬化工程を行なうようにすることもできる。また、セパレータ13,14には位置決めのための切り欠き13k、14kが予め設けられている実施形態について説明したが、これに限定されない。MEA用ロボットアーム220と同様にセパレータ用ロボットアーム230についても切り欠きを形成するためのカッターを設け、
図1BのステップST9の条件分岐を行なわず、位置決め部材硬化工程の後にセパレータにおいても位置決め基準作成工程を行うようにしてもよい。また、セパレータ13,14における切り欠き13k、14k及びMEA11のフレーム部材15における切り欠き11dは、
図5(A)、
図5(B)において平面視した際の長辺に設けられているが、これに限定されず、短辺に設けてもよい。