特許第6221703号(P6221703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221703荷室全高目印器、貨物車両、及び貨物車両の荷室全高確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221703
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】荷室全高目印器、貨物車両、及び貨物車両の荷室全高確認方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/06 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   B60R1/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-251999(P2013-251999)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-107756(P2015-107756A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】岩男 眞由美
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−56561(JP,A)
【文献】 特開2002−240623(JP,A)
【文献】 特開2002−240622(JP,A)
【文献】 実開昭61−155247(JP,U)
【文献】 特開2009−143537(JP,A)
【文献】 実開昭60−186255(JP,U)
【文献】 特開2015−107755(JP,A)
【文献】 特開2015−107754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に運転室と、後方に該運転室の全高以上の全高を有する荷室とを備えた貨物車両の前記運転室内で、且つ前記運転室の外に備えられた車体外後写鏡に映る範囲に設けられた荷室全高目印を備え、
前記運転室内から前記車体外後写鏡を見たときに、前記車体外後写鏡に映った前記荷室全高目印が、鏡像上の前記荷室全高目印と鏡像上の前記荷室の後上端角部とを結ぶ鏡像上の仮想目印線を示し、鏡像上の前記後上端角部の目印となることを特徴とする荷室全高目印器。
【請求項2】
前記荷室全高目印が、複数の発光体を前記仮想目印線に沿って並べて形成されることを特徴とする請求項1記載の荷室全高目印器。
【請求項3】
前記荷室全高目印が、前記車体外後写鏡の鏡像上の前記後上端角部の位置に合わせて前記運転室内を移動可能に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷室全高目印器。
【請求項4】
前記車体外後写鏡の鏡像上の水平線を示して該水平線の目印となる水平線目印を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の荷室全高目印器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の荷室全高目印器を設けることを特徴とする貨物車両。
【請求項6】
前方に運転室と、後方に該運転室の全高以上の全高を有する荷室とを備えた貨物車両の前記運転室内で、且つ前記運転室の外に備えられた車体外後写鏡に映る範囲に設けられた荷室全高目印を、前記運転室内から視認可能に前記車体外後写鏡に映し、前記車体外後写鏡の鏡像上の前記荷室全高目印が示す鏡像上の前記荷室全高目印と鏡像上の前記荷室の後上端角部とを結ぶ鏡像上の仮想目印線により前記後上端角部を確認させて、前記荷室の全高位置を把握させることを特徴とする貨物車両の荷室全高確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室全高目印器、貨物車両、及び貨物車両の荷室全高確認方法に関し、より詳細には、前方に運転室と、後方に運転室の全高以上の全高を有する荷室とを備えた貨物車両の荷室の全高を確認することができる荷室全高目印器、それを設けた貨物車両、及び貨物車両の荷室全高確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物を運搬する貨物車両は、キャブ(運転室)の全高以上の全高を有するボディ(荷室)を備えており、そのボディの後上端角部の接触事故が多いことが問題となっている。このボディの後上端角部が、高所にある構造物や障害物と接触する原因は、運転手がサイドミラー(車体外後写鏡)に映っているはずのボディの後上端角部を一目見ただけで把握できないため、荷室の全高が分かり難くなっていることにある。
【0003】
その理由は、第一に、貨物車両のキャブに設けられているサイドミラーが、広範囲を映す必要性から鏡面の曲率を普通乗用車よりも大きくしているため、サイドミラーに映る鏡像上でボディの後上端角部の形状が角に見えないことにある。第二に、サイドミラーが運転手から物理的に遠くにあるため、サイドミラーに映る鏡像が小さくなることにある。第三に、貨物車両のボディの上端角部を、接触防止の予防策として丸めて形成しているために後上端角部を認識し難くなっていることにある。そして、第四に、貨物車両においては、キャブ幅よりもボディ幅の方が広い場合が多く、このこともサイドミラーの鏡像上でボディの後上端角部の把握を複雑困難にしている。
【0004】
これに関して、普通車両の後端の位置、詳しくは後部バンパーの位置を確認するための車両用コーナーポール(例えば、特許文献1参照)や、後端位置確認装置(例えば、特許文献2参照)が提案されている。これらの装置によって、運転席から車両の後端の位置を容易に確認し、後退操作を容易にするものであるが、それらの装置は、車両の全高の目印とはなり得ない。
【0005】
また、貨物車両の後退時の接触事故の防止策として、バックアイモニタやアラウンドビューモニタなどの間接視界を表示する装置、あるいは貨物車両と構造物や障害物との距離に応じた報知音を発する装置などが提案されている。どの装置も、運転手自身の確認行動を助けるものであるが、実際にどこを確認すべきかがわかり難い。また、貨物車両の運転の自動化が進めば、貨物車両側で周囲の構造物や障害物を察知して、操舵や速度の制御もできるようになるが、それにはコストが掛かってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−42851号公報
【特許文献2】特開平10−315852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その課題は、安価に製造することができ、且つ運転手が車体外後写鏡を一目見ただけで、荷室の後上端角部を確認して、荷室の全高を把握することができる荷室全高目印器、貨物車両、及び貨物車両の荷室全高確認方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の荷室全高目印器は、前方に運転室と、前方に運転室と、後方に該運転室の全高以上の全高を有する荷室とを備えた貨物車両の前記運転室内で、且つ前記運転室の外に備えられた車体外後写鏡に映る範囲に設けられた荷室全高目印を備え、前記運転室内から前記車体外後写鏡を見たときに、前記車体外後写鏡に映った前記荷室全高目印が、鏡像上の前記荷室全高目印と鏡像上の前記荷室の後上端角部とを結ぶ鏡像上の仮想目印線を示し、鏡像上の前記後上端角部の目印として構成される。
【0009】
なお、ここでいう荷室の後上端角部とは、貨物車両の運転室を前方、及び荷室を後方とすると共に、地面側を下方、及びその反対側を上方とした場合の荷室の後上端の角のことをいう。また、ここでいう仮想目印線とは、車体外後写鏡の鏡像上の仮想の線であり、実際には見えない線のことである。この仮想目印線を荷室全高目印から辿った先が荷室の後上端角部となる。
【0010】
また、この荷室全高目印としては、貨物車両の荷室や運転室の色と異なる色を塗布して形成したもの、貨物車両の荷室や運転室の色と異なる色を塗布した部材を設けたもの、鏡などの反射体を設けたもの、又はランプなどの発光体を設けたものを用いることができる。但し、車体外後写鏡の鏡像上では、運転室内が暗く映るため、ランプなどの発光体が望ましい。
【0011】
この構成によれば、車体外後写鏡に映る範囲の運転室内に設けた荷室全高目印が仮想目印線を示すので、車体外後写鏡の鏡像上の荷室全高目印から仮想目印線を辿った先が、荷室の後上端角部となる。これにより、運転手が車体外後写鏡を一目見るだけで、荷室の後上端角部を確認して、荷室の全高位置を把握することができるので、ひさしや看板などの高所にある構造物や障害物と貨物車両の荷室との接触事故を防ぐことができる。
【0012】
また、貨物車両の後退時に、バックアイモニタやアラウンドビューモニタなどの間接視界表示、あるいは構造物や障害物との距離に応じた報知音の発生などの従来技術と比べて、車体外後写鏡に映る範囲の運転室内に色や光などで荷室の後上端角部の目印となる仮想目印線を示す荷室全高目印を設けるだけの構成のため、安価に製造することができる。
【0013】
加えて、車体外後写鏡に貨物車両が映り込む領域は、通常車体外後写鏡の幅の1/4〜1/3程度であり、貨物車両のボディであることを示す以外に使用されていない領域であるため、荷室全高目印をその領域に映り込ませても、運転の邪魔にはならない。
【0014】
更に、運転室内に荷室全高目印を設けることで、荷室全高目印が貨物車両の外側から直接見えづらくなるので、意匠性を損なわずに、荷室の全高位置を示すことができる。
【0015】
また、上記の荷室全高目印器において、前記荷室全高目印が、複数の発光体を前記仮想目印線に沿って並べて形成されると、鏡像上の複数の発光体の並びで示される仮想目印線上を辿った先が荷室の後上端角部となるので、車体外後写鏡の鏡像上で荷室の後上端角部から遠い運転室内に荷室全高目印器を設けても、容易に荷室の後上端角部を確認して、荷室の全高を把握することができる。また、発光体を用いることで、昼夜問わずに活用することができる。
【0016】
なお、荷室全高目印を複数の発光体で形成した場合は、貨物車両が後退するとき、詳しくは変速機のギア段がリバースになったときにその発光体を点灯させるように構成することが望ましい。また、荷室全高目印を、運転室内の運転室の後方の背面板に設けると、より貨物車両の外側から直接見え難くできると共に、フロントガラスとの距離が長くなり、フロントガラスへの映り込みを回避することができる。
【0017】
加えて、上記の荷室全高目印器において、前記荷室全高目印が、前記車体外後写鏡の鏡像上の前記後上端角部の位置に合わせて前記運転室内を移動可能に構成されると、運転手の体格や運転姿勢などの個人差に合わせて、荷室全高目印の位置を調節することができ、車体外後写鏡を運転手に合わせて位置を調整しても、荷室全高目印が車体外後写鏡の鏡像上の荷室の後上端角部を示すようにできる。
【0018】
例えば、荷室全高目印を移動可能にする機構として、荷室全高目印がスライドするスライド機構や、荷室全高目印の示す仮想目印線の角度を可変する回動機構を用いることができる。
【0019】
更に、上記の荷室全高目印器において、前記車体外後写鏡の鏡像上の水平線を示して該水平線の目印となる水平線目印を備えるように構成されると、車体外後写鏡が動いた場合でも、水平線目印を車体外後写鏡の鏡像上の水平線に合わせれば、荷室全高目印が車体外後写鏡の鏡像上の荷室の後上端角部を示すようになるので、容易に車体外後写鏡と荷室全高目印器との位置合わせを行うことができる。
【0020】
そして、上記の課題を解決するための貨物車両は、上記に記載の荷室全高目印器を設けて構成される。この構成によれば、荷室全高目印器により、運転手が車体外後写鏡を一目見ただけで荷室の全高を把握し、構造物や障害物との接触事故を回避することができる。
【0021】
また、荷室の後上端角部に荷室全高目印器を設けるだけでよく、安価に製造することができると共に、従来技術の貨物車両にも後付することができる。
【0022】
そして、上記の課題を解決するための貨物車両の荷室全高確認方法は、前方に運転室と、後方に該運転室の全高以上の全高を有する荷室とを備えた貨物車両の前記運転室内で、且つ前記運転室の外に備えられた車体外後写鏡に映る範囲に設けられた荷室全高目印を、前記運転室内から視認可能に前記車体外後写鏡に映し、前記車体外後写鏡の鏡像上の前記荷室全高目印が示す鏡像上の前記荷室全高目印と鏡像上の前記荷室の後上端角部とを結ぶ仮想目印線により前記後上端角部を確認させて、前記荷室の全高位置を把握させることを特徴とするものである。
【0023】
この方法によれば、運転手が車体外後写鏡を一目見ただけで、荷室全高目印の示す仮想目印線を辿って、車体外後写鏡の鏡像上の荷室の後上端角部を認識することができる。これにより、荷室の全高を把握することができるので、荷室の後上端角部を構造物や障害物に接触することを回避することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の荷室全高目印器、貨物車両、及び貨物車両の荷室全高確認方法によれば、車体外後写鏡に映る範囲の運転室内に設けた荷室全高目印器の荷室全高目印が、車体外後写鏡の鏡像上の仮想目印線を示すので、その仮想目印線を辿ることで、荷室の後上端角部を認識することができる。これにより、運転手が車体外後写鏡を一目見るだけで、荷室の後上端角部を確認して、荷室の全高位置を把握することができるので、ひさしや看板などの高所にある構造物や障害物と貨物車両の荷室との接触事故を防ぐことができる。
【0025】
また、運転室内に色や光などで荷室の後上端角部の目印となる荷室全高目印を設けるだけの構成のため、安価に製造することができると共に、従来技術の貨物車両に容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る第一の実施の形態の荷室全高目印器を設けた貨物車両を示した図である。
図2図1に示す荷室全高目印器が車体外後写鏡に映る様子を示した図である。
図3図1に示す荷室全高目印器の貨物車両の運転室内に設けた荷室全高目印を示した拡大図である。
図4図1に示す荷室全高目印器の車体外後写鏡に設けた水平線目印を示した断面図である。
図5】本発明に係る第二の実施の形態の荷室全高目印器を設けた貨物車両を示した図である。
図6図5に示す荷室全高目印器が車体外後写鏡に映る様子を示した図である。
図7図5に示す荷室全高目印器の貨物車両の運転室内に設けた荷室全高目印を示した拡大図である。
図8】貨物車両の荷室の全高把握状況の評価実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施の形態の荷室全高目印器、貨物車両、及び貨物車両の荷室全高確認方法について、図面を参照しながら説明する。なお、図1における左右方向で貨物車両の後方から前方へ向かう方向をx1とし、右左方向で貨物車両の前方から後方へ向かう方向をx2とし、上下方向で鉛直下向きの方向をy1とし、下上方向で鉛直上向きの方向をy2とする。また、図2、及び図6のサイドミラー(車体外後写鏡)に映る鏡像上の部材については、符号に「’」を付けて区別した。加えて、左のサイドミラーは貨物車両の左側を映し、右のサイドミラーは貨物車両の右側を映しており、左右で同符号の部材は、貨物車両の左側と右側の両方に設けられていることを示す。
【0028】
まず、本発明に係る第一及び第二の実施の形態の荷室全高目印器を備える貨物車両の構成について、図1を参照しながら説明する。図1に示すように、貨物車両1は、前方x1側にキャブ(運転室)2と、図示しないエンジンなどを支持するシャーシ(基台)3と、後方x2側にボディ(荷室)4とを備える。
【0029】
キャブ2には、シート(座席)6が二席設けられ、その一方(国内仕様では右側)は運転手が搭乗して貨物車両の運転を操作するところである。このキャブ2には、左右にサイドミラー(車体外後写鏡)5A及び5Bが設けられており、運転手はシート6に座ったままこのサイドミラー5A及び5Bに映る鏡像を見て、貨物車両1の後方や側方を確認している。
【0030】
ボディ4は、貨物を収容するところである。このボディ4の全高h1は、キャブ2の全高h2よりも高くなっている。このボディ4の全高h1が貨物車両1の全高であり、ボディ4の全幅b1が貨物車両1の全幅となる。なお、ここでいう全幅とは、サイドミラー5A及び5Bを除いた部分となっている。
【0031】
このボディ4は、前方x1側の前面4a、両側の側面4b(図示していない反対側の面も含む)、上方y2側の上面4c、下方y1側の底面4d、及び後方x2側の背面4eにより、箱状に形成されている。
【0032】
このボディ4の側面4bと上面4cとの角の上端角部4fには、衝突防止策として、丸みが設けられており、側面4bと上面4cと背面4eの角の後上端角部4gにも、その丸みが設けられている。
【0033】
サイドミラー5A及び5Bは、貨物車両1の後方x2側を映す鏡であり、ボディ4の後
方x2側を含む広範囲を映す必要性から曲率が大きく設定されている。曲率とは曲率半径の逆数のことである。つまり、このサイドミラー5A及び5Bは、曲率半径の小さい凸曲面に形成されている。
【0034】
乗用車のサイドミラーの曲率半径は1000R〜1200Rに設定されるが、貨物車両1のサイドミラー5A及び5Bの曲率半径は1000R〜400Rに設定され、貨物車両1のボディ4の大きさによっては800R〜600Rに設定される。また、このサイドミラー5A及び5Bは、曲率半径の異なる複数の鏡面を組み合わせたもの、例えば、曲率半径600Rと曲率半径400Rを組み合わせたものもある。
【0035】
以上の構成は第一及び第二の実施の形態について共通の構成である。
【0036】
図2に示すように、この貨物車両1は、運転手がサイドミラー5A及び5Bに映る鏡像からボディ4の後上端角部4gが分かり難いという問題がある。その理由は、第一に、サイドミラー5A及び5Bが、広範囲を映す必要性から鏡面の曲率を普通乗用車よりも大きくしているため、サイドミラー5A及び5Bに映る鏡像上でボディ4’の後上端角部4g’の形状が角に見えないことにある。第二に、サイドミラー5A及び5Bが運転手から物理的に遠くにあるため、特にサイドミラー5Aに映る鏡像が小さくなることにある。第三に、貨物車両1のボディ4の上端角部4fを、接触防止の予防策として丸めて形成していることにある。そして、第四に、貨物車両においては、キャブ幅よりもボディ幅の方が広い場合が多く、このこともサイドミラーの鏡像上でボディの後上端角部の把握を複雑困難にしている。以上の理由から、サイドミラー5A及び5Bに映る鏡像上のボディ4’の後上端角部4g’の形状が角に見えず、運転手がサイドミラー5A及び5Bの鏡像上で後上端角部4g’を認識し難くなっている。
【0037】
そこで、本発明に係る第一の実施の形態のキャブ内側後面マーカ(荷室全高目印器)10は、図1に示すように、キャブ2内で、且つサイドミラー5A及び5Bに映る範囲に設けられ、図2に示すように、キャブ2内のシート6に座った運転手がサイドミラー5A及び5Bを見たときに、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上の後上端角部4g’を示してボディ4の全高位置の目印としてサイドミラー5A及び5Bに映る荷室全高目印11を備えて構成される。
【0038】
このキャブ内側後面マーカ10の荷室全高目印11は、サイドミラー5A及び5Bに映った荷室全高目印11’が、鏡像上の荷室全高目印11’と鏡像上のボディ4’の後上端角部4g’とを結ぶ仮想目印線ML’を示し、鏡像上の後上端角部4g’の目印として構成される。
【0039】
また、このキャブ内側後面マーカ10は、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上の水平線HL’を示して、その水平線HL’の目印となる水平線目印12を備えて構成される。
【0040】
なお、図1では、サイドミラー5Bの映る範囲に設けられているキャブ内側後面マーカ10は図示しないが、設けられているものとする。
【0041】
図3に示すように、荷室全高目印11は、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上の荷室全高目印11’と鏡像上のボディ4’の後上端角部4g’とを結ぶ仮想目印線ML’を示すように、複数のLEDランプ(発光体)13A〜13Cを仮想目印線ML’に沿って並べて形成される。
【0042】
加えて、この荷室全高目印11は、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上のボディ4’の後上端角部4g’の位置に合わせてキャブ2内を移動可能に構成されており、LEDラン
プ13A〜13Cが固定されたスライド部材14と、スライド部材14をレールに沿ってキャブ2内の下方y1方向、及び上方y2方向に移動可能に支持する支持部材15とを備えて構成される。
【0043】
LEDランプ13A〜13Cは、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上で、LEDランプ13A’〜13C’が、鏡像上の後上端角部4g’の水平方向になるように、その水平方向の仮想目印線ML’に沿って順に並べられている。また、このLEDランプ13A〜13Cは、制御装置16に接続されている。この制御装置16は、図示しない変速機のギア段がリバースにシフトされたときに、LEDランプ13A〜13Cを点灯させる制御を行っている。よって、このLEDランプ13A〜13Cは、貨物車両1を後退させる場合に点灯するので、通常走行中には点灯しないため、貨物車両1の運転の邪魔にはならない。
【0044】
支持部材15は、キャブ2のシート6の後方x2側で、フロントガラスに対向する面である後面2aに固定されている。支持部材15をキャブ2の後面2aに固定することで、荷室全高目印11とフロントガラスとの距離が長くなり、LEDランプ13A〜13Cのフロントガラスへの映り込みを回避することができる。また、この支持部材15は、スライド部材14の位置を固定するロック機構を備え、貨物車両1の走行中にスライド部材14が支持部材15に対してスライドしないように構成される。
【0045】
図2に示すように、上記の構成の荷室全高目印11が、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上で、LEDランプ13A’〜13C’が仮想目印線ML’に沿って並んでいることから、LEDランプ13A’〜13C’が仮想目印線ML’を示すことができ、その仮想目印線ML’を視線で辿り易くなっている。そして、その仮想目印線ML’を辿った先が鏡像上の後上端角部4g’となるように構成される。
【0046】
また、運転手の体格や運転姿勢などが変わったときに、鏡像上の荷室全高目印11’のLEDランプ13A’〜13C’の示す仮想目印線ML’の延長線上に後上端角部4g’が位置するように、スライド部材14を支持部材15に対して下方y1方向、あるいは上方y2方向にスライドすることができるので、運転手の体格や運転姿勢などの個人差に合わせることができる。
【0047】
図2に示すように、キャブ2内のシート6から運転手がサイドミラー5A及び5Bを見たときに、水平線目印12は、サイドミラー5A及び5Bには映ることなく、鏡面外でサイドミラー5A及び5Bの鏡像上の水平線HL’を示すように構成される。
【0048】
図4に示すように、サイドミラー5Aは、ミラー筐体5aと鏡面ガラス5bと鏡面ガラス5bに蒸着された金属5cから構成され、ミラー筐体5aに鏡面ガラス5bを嵌め込んで形成される。
【0049】
そこで、この水平線目印12は、ミラー筐体5aの色とは異なる色に塗布された目印クリップ(目印取付具)12aと、ミラー筐体5aの色と同じ色の伸縮性の素材で形成された伸縮部材12bとを備えて構成される。この水平線目印12は、一方の目印クリップ12aをミラー筐体5aのどちらか一方に引っ掛け、伸縮部材12bを伸ばしてミラー筐体5aの鏡面ガラス5bの反対側である裏側を通して、他方の目印クリップ12aをミラー筐体5aの他方に引っ掛けることで、サイドミラー5Aに固定されている。
【0050】
貨物車両1の走行中などにサイドミラー5A及び5Bの位置がずれた場合に、水平線目印12をサイドミラー5A及び5Bの鏡像上の水平線HL’の水平方向になるように、サイドミラー5A及び5Bの位置を合わせると、鏡像上の荷室全高目印11’により、鏡像上のボディ4’の後上端角部4g’を示すことができる。
【0051】
本発明に係る第二の実施の形態のキャブ内側後面マーカ20は、図5に示すように、キャブ2内で、且つサイドミラー5A及び5Bに映る範囲に設けられ、図6に示すように、キャブ2内のシート6に座った運転手がサイドミラー5A及び5Bを見たときに、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上の後上端角部4g’を示してボディ4の全高位置の目印としてサイドミラー5A及び5Bに映る荷室全高目印21を備えて構成される。
【0052】
また、このキャブ内側後面マーカ20は、第一の実施の形態と同様のサイドミラー5A及び5Bの鏡像上の水平線HL’を示して、その水平線HL’の目印となる水平線目印12を備えて構成される。
【0053】
図7に示すように、荷室全高目印21は、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上の荷室全高目印21’とボディ4の後上端角部4g’とを結ぶ仮想目印線ML’を示すように、複数のLEDランプ(発光体)23A〜23Cを仮想目印線ML’に沿って並べて形成される。
【0054】
加えて、この荷室全高目印21は、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上のボディ4の後上端角部4g’の位置に合わせてキャブ2内を移動可能に構成されており、LEDランプ23A〜23Cが固定された回動部材24と、回動部材24の回動の中心となる回動軸25とを備えて構成される。
【0055】
LEDランプ23A〜23Cは、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上で、LEDランプ23A’〜23C’が、鏡像上の後上端角部4g’に向かう仮想目印線ML’に沿って順に並べられている。また、このLEDランプ23A〜23Cは、第一の実施の形態と同様の制御装置16に接続されている。
【0056】
図7に示すように、上記の構成の荷室全高目印21は、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上で、LEDランプ23A’〜23C’が仮想目印線ML’に沿って並んでいることから、LEDランプ13A’〜13C’が仮想目印線ML’を示すことができ、その仮想目印線ML’を視線で辿り易くなっている。そして、その仮想目印線ML’を辿った先が鏡像上の後上端角部4g’となる。
【0057】
また、運転手の体格や運転姿勢などが変わったときに、鏡像上の荷室全高目印21’のLEDランプ23A’〜23C’の示す仮想目印線ML’の延長線上に後上端角部4g’が位置するように、回動部材24を回動軸25を中心に回動させて、回動部材24の角度、つまり鏡像上のLEDランプ23A’〜23C’が示す仮想目印線ML’の角度を変えることができるので、運転手の体格や運転姿勢などの個人差に合わせることができる。
【0058】
上記の第一及び第二の実施の形態のキャブ内側後面マーカ10及び20を設けた貨物車両1の荷室全高確認方法について説明する。図2及び図6に示すように、運転手がキャブ2内のシート6からサイドミラー5A及び5Bを見たときに、キャブ内側後面マーカ10及び20の荷室全高目印11及び21が、サイドミラー5A及び5Bに映る。運転手が貨物車両1を後退させる場合に、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上の荷室全高目印11’及び21’を視認し、その荷室全高目印11’及び21’の示す仮想目印線ML’方向に視線を辿った先にボディ4’の後上端角部4g’を確認する。運転手は、後上端角部4g’を確認することで、ボディ4の全高位置を把握する。そして、高所にある構造物や障害物とその鏡像上の後上端角部4g’とを見比べて、鏡像上の後上端角部4g’が構造物や障害物に接触しないように貨物車両1を後退させる。
【0059】
上記の第一及び第二の実施の形態のキャブ内側後面マーカ10及び20と、それを設け
た貨物車両1と、貨物車両1の荷室全高確認方法によれば、図2、及び図6に示すように、キャブ内側後面マーカ10及び20の荷室全高目印11及び21が、サイドミラー5A及び5Bに映り、鏡像上の仮想目印線ML’を示すので、その仮想目印線ML’を辿った先にボディ4’の後上端角部4g’を確認することができる。これにより、運転手がサイドミラー5A及び5Bを一目見るだけで、ボディ4の全高位置を把握できるので、ひさしや看板などの高所にある構造物や障害物と貨物車両1のボディ4との接触事故を防ぐことができる。
【0060】
また、貨物車両1の後退時に、バックアイモニタやアラウンドビューモニタなどの間接視界表示、あるいは構造物や障害物との距離に応じた報知音の発生などの従来技術と比べて、上記に説明した通り、キャブ2内に荷室全高目印11及び21を取り付けるだけの構成のため、安価に製造することができると共に、従来技術の貨物車両にも容易に取り付けることができる。
【0061】
加えて、ボディ4の全高位置を容易に把握することができるので、ボディ4の上端角部4fの丸みを無くしたり、サイドミラー5A及び5Bの曲率を小さくしたりといった変更が不要になるため、従来技術の貨物車両1に適用することができるので、仕様を変えることがない。そのため、操作性が変わらない。
【0062】
更に、荷室全高目印11及び21がサイドミラー5A及び5Bに貨物車両1が映り込む領域は、通常サイドミラー5A及び5Bの幅の1/4〜1/3程度であり、貨物車両1のボディ4であることを示す以外に使用されていない領域であるため、その領域に映り込ませても運転の邪魔にはならない。また、水平線目印12及び22は、そもそもサイドミラー5A及び5Bには映らないため、運転の邪魔にはならない。
【0063】
その上、キャブ2内に荷室全高目印11及び21を設けることで、発光する荷室全高目印11及び21が貨物車両1の外側から直接見えづらくなるので、意匠性を損なわずに、ボディ4の全高位置を示すことができる。
【0064】
また、複数のLEDランプ13A〜13C及び23A〜23Cを用いることで、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上でボディ4の後上端角部4g’から遠く、且つ暗いキャブ2内に荷室全高目印11及び21を設けても、LEDランプ13A〜13C及び23A〜23Cの光により容易に鏡像上の仮想目印線ML’を辿って後上端角部4g’を確認して、ボディ4の全高を把握することができると共に、昼夜問わずに活用することができる。
【0065】
また、荷室全高目印11及び21を、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上の後上端角部4g’の位置に合わせてキャブ2内を移動させることができるので、別の運転手に代わった場合でも、その位置を調節すれば、鏡像上の荷室全高目印11’及び21’が鏡像上のボディ4’の後上端角部4g’を示すようになるので、運転手の体格や運転姿勢などの個人差に合わせて対応することができる。
【0066】
また、水平線目印12を備えることで、貨物車両1の走行中にサイドミラー5A及び5Bが動いた場合でも、水平線目印12をサイドミラー5A及び5Bの鏡像上の水平線HL’に合わせれば、荷室全高目印11’及び21’の示す仮想目印線ML’の延長線上が鏡像上のボディ4’の後上端角部4g’とすることができるので、容易にサイドミラー5A及び5Bと荷室全高目印11及び21との位置合わせを行うことができる。
【0067】
次に、上記の第一及び第二の実施の形態の各マーカ10及び20に相当する効果を生じる目印を用いて、ボディの全高位置を示す目印が無い場合とボディの全高位置を示す目印がある場合で、実際のボディの全高位置と運転手の認識するボディの全高位置とにズレが
あるかを測定した実験結果について図8を参照しながら説明する。
【0068】
この実験は、ボディの全高よりも高い場所からその中程まで除々に降下する測定器をキャブとボディとの間に設けて行った。具体的には、運転手にサイドミラーを見てもらい、サイドミラーに映る測定器の位置がボディの後上端角部、つまり全高位置と判断した位置になったときに測定器の降下を止める。そして、そのときの測定器の測定位置と正しい全高位置を示す正解位置との誤差を測定したものである。また、ボディの全高位置を示す目印としては、ボディの後上端角部から10cm程度突出させたものを用いて行った。
【0069】
図8の条件Aは、ボディの全高位置を示す目印が無い場合で測定した結果である。条件Bは、ボディの全高位置を示す目印がある場合で測定した結果である。条件Cは、条件Bを行った後に、再度、ボディの全高位置を示す目印が無い場合で測定した結果である。
【0070】
なお、この実験結果の測定器の測定位置と正解位置との誤差は、測定器を設けた位置での誤差である。よって、この誤差を実際の後退作業に当てはめると、ボディの全高位置と構造物や障害物との間の長さはその誤差の約三倍の値となる。例えば、実験における誤差が+100mmの場合は、実際のボディの全高位置と構造物や障害物との間の長さが300mm程度になり、実験における誤差が−100mmの場合は、実際のボディの全高位置が構造物や障害物よりも300mm程度高い位置になり、ボディと構造物や障害物とが接触することになる。
【0071】
条件Aの場合は、貨物車両のボディの全高の目印がなく、ボディの後上端角部が分かり難いことから、測定器の測定位置と正解位置との誤差がマイナスの値になる頻度が高い。一方、条件Bでは、測定器の測定位置と正解位置との誤差がマイナスの値になることが無かった。
【0072】
また、条件Cの場合は、条件Aと比較すると測定器の測定位置と正解位置との誤差がマイナスになる頻度が少なくなるが、条件Bのばらつきと比べて、ばらつきが大きい。先に条件Bを行って、ある程度の目安がついた状態でも測定器の測定位置と正解位置との誤差がマイナスの値になることは、後退作業の都度、認識のズレを補正する情報提供が必要と考える根拠となる。
【0073】
図8に示す実験結果より、ボディの全高位置の目印となるものがあれば、運転手はサイドミラーを一目見て、ボディの全高位置を把握することが可能となることが分かる。よって、上記の第一及び第二の実施の形態のキャブ内側後面マーカ10及び20を設けた貨物車両1では、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上の荷室全高目印11’及び21’からそれらの示す仮想目印線ML’に沿って視線を辿ると、鏡像上のボディ4’の後上端角部4g’を容易に確認して、ボディ4の全高h1を把握することができる。これにより、後退作業の都度、運転手の認識のズレを補正することができるので、ボディ4の後上端角部4gが構造物や障害物と接触することを回避できることが分かる。
【0074】
なお、上記の実施の形態では、左右のサイドミラー5A及び5Bの両方に映るように、各マーカ10及び20を設けた例を説明したが、本発明はこれに限定されずに、例えば、左右のどちらか一方のサイドミラーに映るように各マーカ10及び20を設けてもよい。
【0075】
また、上記の実施の形態において、荷室全高目印11及び21を、LEDランプなどの発光体で形成した例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、キャブ2の後面2aと異なる色を塗布するだけの構成や、夜間に発光する夜光塗料を塗布するだけの構成としてもよい。但し、前述した通り、サイドミラー5A及び5Bにはキャブ2内は暗く映るので、発光体や反射鏡などの光るものが望ましい。
【0076】
また、上記の実施の形態において、水平線目印12を、サイドミラー5A及び5Bに設ける構成を例に説明したが、本発明はこの水平線目印12を設けない構成としてもよく、また、設ける場合でも、上記の構成に限定されずに、例えば、水平線目印を、荷室全高目印11及び21と同様にキャブ2内に複数のLEDランプなどの発光体を鏡像上の水平線HL’に沿って並べて形成してもよい。
【0077】
また、上記の実施の形態では、LEDランプ13A〜13C及び23A〜23Cを並べて、仮想目印線ML’を示すようにしたが、荷室全高目印11及び21が仮想目印線ML’を示すことができればよく、例えば、発光面が矢印形状に形成されたものを用いてもよい。
【0078】
また、上記の実施の形態では、荷室全高目印11及び21をキャブ2内で移動可能にする機構として、スライド機構や回動機構を用いた例を説明したが、この移動可能にする機構は、荷室全高目印11及び21をキャブ2内で移動でき、且つ鏡像上の荷室全高目印11’及び21’の示す仮想目印線ML’の延長線上が鏡像上の後上端角部4g’になればよく、上記の構成に限定されない。例えば、LEDランプを設けた部材を磁石でキャブ2の後面2aに自由に固定できるように構成することもできる。
【0079】
また、上記の実施の形態では、荷室全高目印11及び21のLEDランプ13A〜13C及び23A〜23Cを制御装置16及び26で、貨物車両1を後退させるときに点灯するように構成したが、本発明はこれに限定されずに、常に点灯させるようにしてもよい。但し、常に点灯させておくと運転中に煩わしい可能性があるため、好ましくは貨物車両1の後退時にのみ点灯するようにするとよい。
【0080】
また、上記の実施の形態の荷室全高目印11のスライド部材14、及び荷室全高目印21の回動部材24に、キャブ2内の後面2aと異なる色を塗布すると、昼間の間は、LEDランプ13A〜13C及び23A〜23Cを点灯させなくても、ボディ4の全高を把握することができる。
【0081】
また、上記の実施の形態の荷室全高目印11及び21のLEDランプ13A〜13C及び23A〜23Cの発光色は特に限定されるものではないが、一般的に車両に使用されるランプなどの発光色とは異なる発光色にすると、サイドミラー5A及び5Bの鏡像上で目立つので、好ましい。例えば、緑色などがある。
【0082】
また、第二の実施の形態では、荷室全高目印21を、図6のサイドミラー5Aでは図中の左上がりになる仮想目印線ML’を、サイドミラー5Bでは図中の右上がりになる仮想目印線ML’を示すようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、サイドミラーの鏡像上の荷室全高目印が分かり易くなる、具体的には、鏡像上の荷室全高目印が大きく見えたり、仮想目印線の傾きがはっきり見えたりすれば、左のサイドミラーでは図中の左下がり、右のサイドミラーでは図中の右下がりになるようにしてもよいまた、左右のサイドミラーにおける仮想目印線の傾きを統一の方向にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の荷室全高目印器は、安価に製造することができ、且つ運転手が車体外後写鏡を一目見ただけで、荷室の全高を把握することができるので、特に前方に運転室と、後方に運転室の全高以上の全高を有する荷室とを備えたトラックなどの貨物車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 貨物車両
2 キャブ(運転室)
4 ボディ(荷室)
4a 前面
4b 側面
4c 上面
4d 底面
4e 背面
4f 上端角部
4g 後上端角部
5a、5b サイドミラー(車体外後写鏡)
10、20 キャブ内側後面マーカ(荷室全高目印器)
11、21 荷室全高目印
12、22 水平線目印
ML’ 仮想目印線
HL’ 水平線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8