(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221737
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ランプハウジング組付構造
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/26 20060101AFI20171023BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20171023BHJP
F21S 8/10 20060101ALI20171023BHJP
F21W 101/02 20060101ALN20171023BHJP
F21W 101/14 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
B60Q1/26 A
B60Q1/00 E
F21S8/10 540
F21W101:02
F21W101:14
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-268124(P2013-268124)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-123812(P2015-123812A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
【審査官】
丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−041456(JP,U)
【文献】
実開昭60−050042(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00 − 1/56
F21S 8/10 − 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部のバックドアと、ランプを収容し前記バックドアに組み付けられるランプハウジングとを備え、該ランプハウジングは前記ランプが取り付けられる取付部を含み、該取付部の前面が前記バックドアに対面し該取付部の後面に前記ランプが取り付けられるランプハウジング組付構造において、
長尺なブラケットと、
弾性体からなり前記ブラケットを該ブラケットの両端の間で回転可能に支持して前記取付部の前面にシーソー状に取り付ける支点部材とをさらに備え、
前記支点部材は前記ブラケットを付勢し、前記支点部材を境とした前記ブラケットの一端を前記ランプハウジングに当接させ、他端を前記バックドアに近付け、
前記バックドアは、
前記ランプハウジングが前記バックドアに押し付けられたときに前記ブラケットの他端を押し返すストッパと、
前記押し付けられたランプハウジングを該押し付けられた方向と異なる方向にスライドさせて解放することにより前記ブラケットの一端と干渉する係止片とを有することを特徴とするランプハウジング組付構造。
【請求項2】
前記ランプハウジングに取り付けられた弾性体からなる止水部材をさらに備え、
前記止水部材は、前記係止片のうち前記ブラケットの一端と接触する面の反対側の面に圧接されることを特徴とする請求項1に記載のランプハウジング組付構造。
【請求項3】
前記係止片の端部は該係止片に干渉する前記ブラケットに向かって屈曲していることを特徴とする請求項1もしくは2に記載のランプハウジング組付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバックドアに取り付けられるランプハウジングの組付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のバックドアには、ランプを収容するランプハウジングが組み付けられる。ランプはリアランプとも称され、他の車両から自分の車両の視認性を向上させて安全性を確保するために組み付けられる。またランプハウジングは、ランプの破損を防ぐとともに意匠部品でもあるため、組み付けたときに外観不良が発生しないよう留意しつつ、組み付けやすい構造である必要がある。
【0003】
例えば特許文献1には、弾性係合部材を設けた車両用灯具と、車体に設けられた取付穴の縁に係合部を設けて組み付ける方法が記載されている。具体的には、車両用灯具を取付穴に通し、係合部に弾性係合部材を弾性係合させることで弾性作用が働き、車両用灯具が取付穴の縁に当接して組み付けられる技術である。特許文献1では、かかる構成により組付作業を容易にすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−64521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、バックドアにはランプハウジングを取り付けるスペースが狭いことが多い。そのため、ランプハウジングを組み付ける構造を外観上現れないように設けることは難しい。また、ランプハウジングの形状を複雑化させてしまうと、ランプハウジングの成形が困難になるおそれもある。また、組み付けるためにボルトなどの組付部品を用いると、ランプハウジングに組付部品を取り付けるための部位が必要となる。したがって、ランプハウジングの大型化や意匠性を損なうとともに、組付作業が複雑になってしまう。
【0006】
また車両には、走行中などに衝撃や振動が頻繁にかかる。そのため特許文献1に記載の技術では、弾性な部材であることにより車両用灯具の位置がずれたり外れたりするおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、バックドアへの組付作業が容易ながら強固に組み付けられ、意匠性を損なうこともなく小型化も可能なランプハウジングを実現するランプハウジング組付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるランプハウジング組付構造の代表的な構成は、車両後部のバックドアと、ランプを収容しバックドアに組み付けられるランプハウジングとを備え、ランプハウジングはランプが取り付けられる取付部を含み、取付部の前面がバックドアに対面し取付部の後面にランプが取り付けられるランプハウジング組付構造において、長尺なブラケットと、弾性体からなりブラケットをブラケットの両端の間で回転可能に支持して取付部の前面にシーソー状に取り付ける支点部材とをさらに備え、支点部材はブラケットを付勢し、支点部材を境としたブラケットの一端をランプハウジングに当接させ、他端をバックドアに近付け、バックドアは、ランプハウジングがバックドアに押し付けられたときにブラケットの他端を押し返すストッパと、押し付けられたランプハウジングを押し付けられた方向と異なる方向にスライドさせて解放することによりブラケットの一端と干渉する係止片とを有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ランプハウジングをバックドアの所定位置に押し付けると、バックドアに近いブラケットの他端がストッパによって押し返される。同時に、支点部材を境としたブラケットの一端は当接していたランプハウジングから離れ、バックドアに近付く。しかる後、ランプハウジングをバックドアに押し付けた方向と異なる方向にスライドさせて解放すると、ブラケットの一端は支点部材の付勢力によって再びランプハウジングへ向かって戻ろうとし、その途中で係止片に干渉する。これにより、ランプハウジングがバックドアに組み付けられる。
【0010】
したがって本発明によれば、ランプハウジングをバックドアに対して押し付けた後にスライドさせるという車外からの作業のみによって、ランプハウジングを容易にバックドアに組付可能である。また本発明によれば、ランプハウジングをバックドアに組み付けるボルトなどの取付部品を要しない。そのため、取付部品用の部位をランプハウジングに設ける必要がなくなり、ランプハウジングを小型化可能である。またブラケットなどのランプハウジングをバックドアに組み付ける部材は、ランプが取り付けられる取付部の後面の裏側である前面に設けられているため、ランプの発する光が遮られることもない。さらに、組み付ける構造が外観上に現れないためランプハウジングの意匠性も損なわれない。加えて、ブラケットがランプの取付部というランプに非常に近い位置で軸支されているため、ランプが強固に組み付けられて安定し、ランプの揺れも防止可能である。
【0011】
当該ランプハウジング組付構造は、ランプハウジングに取り付けられた弾性体からなる止水部材をさらに備え、止水部材は、係止片のうちブラケットの一端と接触する面の反対側の面に圧接されるとよい。
【0012】
上記構成によれば、止水部材によってランプハウジングとバックドアとの隙間に水などの流体が入り込むことを防止可能である。また弾性体からなる止水部材は、ランプハウジングをバックドアに組み付けると係止片に圧接され、係止片をバックドア側へ付勢する。そのため係止片はブラケットの一端と止水部材とによって挟まれ、双方向から付勢されるため、ランプハウジングをバックドアへ強固に組付可能である。
【0013】
上記係止片の端部は係止片に干渉するブラケットに向かって屈曲しているとよい。かかる構成によれば、バックドアに組み付けられたランプハウジングを外す方向へスライドさせようとすると、ブラケットの一端が係止片の屈曲した端部に干渉する。そのためブラケットが係止片から外れ難くなり、ランプハウジングがバックドアから外れ難くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バックドアへの組付作業が容易ながら強固に組み付けられ、意匠性を損なうこともなく小型化も可能なランプハウジングを実現するランプハウジング組付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態によるランプハウジング組付構造を適用した車両のバックドアを示す斜視図である。
【
図2】
図1におけるランプハウジング組付構造のA−A断面図である。
【
図3】
図2のランプハウジングをバックドアに組み付ける方法を示す図である。
【
図4】
図3に続いてランプハウジングをバックドアに組み付ける方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態によるランプハウジング組付構造100を適用した車両102のバックドア104を示す斜視図である。
図1に示すように、車両102のバックドア104には、ランプ106(
図2参照)を収容しているランプハウジング110、112が組み付けられる。ランプハウジング110、112は、バックドア104の両側端で車両側面の後端部108に設けられたランプ(リアコンビランプ)114、116と隣接する位置でバックドア104に左右一対で設けられている。
【0018】
図2は
図1におけるランプハウジング組付構造100のA−A断面図である。
図2では、説明の便宜上、ランプハウジング110が組み付けられる前の状態を示している。ランプハウジング110は、ランプ106が取り付けられる取付部130を含んでいる。取付部130の前面はバックドア104に対面し、取付部130の後面にはランプ106が取り付けられる。またランプハウジング110は、取付部130から後方に向かって形成される傾斜面132、134によって末広がりに形成されている。ランプハウジング110の車外側に露出する面は、ランプ106の光を透過するレンズ136で形成されている。また、ランプハウジング110は弾性体からなる止水部材140、142を有している。
【0019】
図2に示すように、本実施形態のランプハウジング組付構造100は、車幅方向に長尺なブラケット120と支点部材122とをさらに備えている。支点部材122は、弾性体からなりブラケット120をブラケット120の両端の間で回転可能に支持し、取付部130の前面にシーソー状に取り付けている。また支点部材122は、矢印123で示すように、ブラケット120をランプハウジング110へ向けて付勢している。これによって支点部材122を境としたブラケット120の一端124がランプハウジング110に当接し、ブラケット120の他端126はバックドア104に近付いている。本実施形態では、ランプハウジング110の形状に合わせてブラケット120を屈曲させているが、上述した作用を有する形状であれば、屈曲していなくてもよい。
【0020】
図3および
図4は、
図2のランプハウジング110をバックドア104に組み付ける方法を示す図である。
図3では、
図2の矢印145で示す方向へランプハウジング110をバックドア104に車両前方へ押し込んだ後、
図2の矢印147で示す車両外側へスライドさせた状態を示している。
図4は、その後にランプハウジング110を解放した状態を示している。以下、本実施形態におけるランプハウジング110をバックドア104に組み付ける方法を説明する。
【0021】
図3に示すように、バックドア104はストッパ146と、係止片150とを有している。ストッパ146は、ランプハウジング110が
図2の矢印145で示したようにバックドア104の所定位置に後方より押し付けられた際に、
図3に示すように、ブラケット120のうちバックドア104に近い他端126を押し返している。同時に、ブラケット120の一端124は矢印149で示すように、当接していたランプハウジング110から離れ、バックドア104へ近付いている。
【0022】
しかる後、ランプハウジング110をバックドア104に押し付けた
図2の矢印145の方向と異なる矢印147の方向である車両外側にスライドさせたのが
図3の状態である。そして
図4で示すようにランプハウジング110を解放すると、ストッパ146に他端126を接触させているブラケット120が支点部材122の付勢力によって回転することによって、ランプハウジング110は、矢印153で示す車両後方へわずかに移動する。一方、ブラケット120の一端124は、矢印151で示すように支点部材122の付勢力によって再びランプハウジング110へ向かって戻ろうとする。その途中でブラケット120の一端124は、バックドア104に設けられた係止片150に干渉する。これにより、ランプハウジング110がバックドア104に組み付けられる。
【0023】
したがって本実施形態によれば、ランプハウジング110をバックドア104に対して車両前方に向けて押し付けた後に車両外側へスライドさせるという車外からの作業のみによって、ランプハウジング110を容易にバックドア104に組付可能である。
【0024】
なお、本実施形態では、ランプハウジング110は、押し込んだ後に車両外側へスライドさせているが、これに限らず、スライドさせる方向を車両の内側、上側、下側など、いずれの方向に動かす構造としてもよい。
【0025】
また本実施形態によれば、ランプハウジング110をバックドア104に組み付けるボルトなどの取付部品を要していない。そのため、取付部品用の部位をランプハウジング110に設ける必要がなくなり、ランプハウジング110の小型化を可能にしている。
【0026】
さらに本実施形態によれば、ブラケット120などのランプハウジング110をバックドア104に組み付ける部材は、ランプ106が取り付けられる取付部130の後面の裏側である前面に設けられているため、ランプ106の発する光が遮られることもない。さらに、組み付ける構造が外観上に現れていないためランプハウジング110の意匠性も損なわれない。加えて、ブラケット120がランプ106の取付部130というランプ106に非常に近い位置で軸支されているため、ランプ106が強固に組み付けられて安定し、ランプ106の揺れも防止している。
【0027】
図4で示すように、係止片150の端部152は、係止片150に干渉するブラケット120の一端124に向かって屈曲している。したがって、バックドア104に組み付けられたランプハウジング110を外す方向へスライドさせようとすると、ブラケット120の一端124が係止片150の屈曲した端部152に干渉する。そのためブラケット120の一端124が係止片150から外れ難くなり、ランプハウジング110がバックドア104から外れ難くなる。
【0028】
また
図4に示すように、組付が完了したとき一方の止水部材140は、係止片150のうちブラケット120の一端124と接触する面の反対側の面に圧接され、もう一方の止水部材142は、バックドア104に圧接されている。したがって、止水部材140、142によってランプハウジング110とバックドア104との隙間に水などの流体が入り込むことを防止している。
【0029】
また止水部材140、142は弾性体からなる。そのため、止水部材140は、ランプハウジング110をバックドア104に組み付けると係止片150に圧接され、係止片150をバックドア104側へ付勢している。そのため係止片150はブラケット120の一端124と止水部材140とによって挟まれ、双方向から付勢されるため、ランプハウジング110をバックドア104に強固に組み付けている。
【0030】
ここで
図4について補足説明する。ランプハウジング110を解放した当初、ブラケット120の他端126がストッパ146に接触しているためにランプハウジング110が矢印153で示す車両後方へわずかに移動することを既に述べた。このとき、圧接されていた止水部材140、142が復元することによっても、ランプハウジング110は、矢印153で示す車両後方へ移動する。
図4に示すように、ブラケット120の他端126がストッパ146から離れているのは、そのためである。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車両のバックドアに取り付けられるランプハウジングの組付構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
100…ランプハウジング組付構造、102…車両、104…バックドア、106…ランプ、108…車両側面の後端部、110、112…ランプハウジング、114、116…ランプ(リアコンビランプ)、120…ブラケット、122…支点部材、124…ブラケットの一端、126…ブラケットの他端、130…取付部、132、134…傾斜面、136…レンズ、140、142…止水部材、146…ストッパ、150…係止片、152…係止片の端部