(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
前記非常送の無線システムに用いられる無線受信機では、着呼時に、無線送信機の送信周波数に対する自局の受信周波数のずれによる送受信の周波数偏差を速やかに検出し、補正しなければ、着呼率が低下する。特に、業務用陸上移動無線通信機(Land Mobile Radio:LMR)のように、同一周波数を使用し、一方が送信中は他方が受信するプレストーク方式で音声による通信を繰り返すような使い方が多い通信システムでは、都度、周波数偏差を速やかに補正して正しいシンボルを抽出し、音声データの検出および復調を行わなければ、通話の始めの部分が欠落する話頭切断が発生し、正常な通話が不可能となる。
【0003】
たとえば400MHz帯のデジタル無線機のように、前記FSK変調方式やPSK変調方式を用いる受信機の場合、復調(検波)は、遅延検波を用いて、周波数−電圧変換で行われる。そのため、復調信号としては、2値や4値の複数の周波数に対応したレベルの電圧が出力され、前記周波数偏差は、前記復調信号に重畳したDCオフセットとして現れる。そこで、従来から、前記の周波数偏差を除去する手法として、高速引き込み処理と、低速引き込み処理との2つの手法が主に用いられている。
【0004】
高速引き込み処理とは、受信し、復調した信号の所定数分のシンボルパターンの直流値と、既知の同期信号のシンボルパターンの直流値との差分から求めた前記DCオフセットを、復調信号から減算するという手法である。その様子を模式的に
図17に示す。(a)はそのままの復調信号で、1回の呼は、所定長さの複数のフレームから構成され、各フレームは、概略的に、同期ワードおよびプリアンブルから成る前記同期信号と、音声や非音声のデータとを備えて構成される。高速引き込み処理では、前記同期信号の部分から、復調信号の周波数偏差Δfに対応して、(b)で示す直流値(DCオフセット)が求められ、その直流値を補正値として前記復調信号から減算することで、(c)で示すように、シンボルを素早く抽出し、最初のデータから復調できている。
【0005】
しかしながら、この高速引き込み処理は、雑音環境下では、得られる直流値の信頼性が低く、誤った補正をそのまま行ってしまうと、シンボルデータの再生時にビット誤りが生じる可能性が高くなる。また、周波数偏差があっても、復調信号からのDCオフセットの減算を行うだけで、局部発振器の発信周波数自体は補正しないので、
図18で示すように、受信信号の一部が、中間周波段階のチャネル帯域制限用のバンドパスフィルタによって失われてしまうこともある。そうすると、
図19で示すように、復調信号が歪み、得られる直流値の信頼性が低くなるので、フレーム同期確立の精度(着呼率)が低下する。
【0006】
図18は、高周波信号を周波数変換して、復調用のデジタル・シグナル・プロセッサに取り込んで、さらに直交復調や低周波に変換後の復調(シンボル再生)直前の信号と、バンドパスフィルタとの周波数特性を示すグラフである。そして、周波数偏差が無い場合(Δf=0)、信号は前記バンドパスフィルタの通過帯域(12kHz)内に収まっているが、周波数偏差が有る場合(
図18では高周波側にΔf=500Hz)は、信号の一部(高周波側)が、バンドパスフィルタでカットされ、失われてしまうことを示している。なお、受信機全体および復調回路の詳細については、実施形態で説明する。
【0007】
そのため、ノイズの影響を考慮する場合、前記プリアンブルや同期ワードから成る同期信号の部分から求めた補正値を複数回に分けて作用させてゆくことも行われている。その様子を、模式的に
図20に示す。
図20は、
図17と同様に、(a)はそのままの復調信号、(b)は補正値、(c)は補正された復調信号を示している。この
図20では、最初に求めた補正値の1/4ずつ、フレーム毎に補正を行っている。したがって、雑音下でも、行き過ぎた補正を行ってしまう可能性は小さいものの、データを正しく復調できるまでに、複数のフレームを要している。
【0008】
一方、低速引き込み処理は、復調信号の移動平均や、前記復調信号の振幅最大値と最小値との中点の移動平均等から、直流値、すなわち前記DCオフセットを求めて、局部発振器の発振周波数を補正する手法である。その様子を模式的に
図21に示す。
図21は、
図17および
図20と同様に、(a)はそのままの復調信号、(b)は補正値、(c)は補正された復調信号を示している。この
図21では、最初のフレームのデータについては、直前のプリアンブルや同期ワードの部分から求めた不正確な補正値を設定するものの、データの受信および以降のフレームの受信が続くと、前記移動平均によって、補正値が徐々に適正な値に補正されてゆき、2フレーム目では一部のデータに誤りがあるもののデータの復調が可能になり、3フレーム目で全データを正しく復調できている。
【0009】
この低速引き込み処理は、雑音下でも、正しい補正を行え、歪みも少なくなるものの、データを取得するまでに、複数のフレームを要している。そのため、応答に遅延が生じ、前記の話頭切断が発生する恐れがある。
【0010】
そこで、特許文献1には、同期信号からDCオフセットを求めて復調信号から減算する高速引き込み処理を行い、段落[0025]に記載のように、同期が確立すると、データビットの開始位置を判定し、その開始位置から(
図2の例では次のフレームのデータビットから)、前記DCオフセットに対応して局部発振器の発振周波数を変化する低速引き込み処理に移ることで、段落[0026]に記載のように、データ復調中のように局部発振器の発振周波数を変化してはならないタイミングでの移行を防止し、前記話頭切断のような応答性の低下を抑え、迅速な同期確立とデータ復調とを可能にした無線通信機が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1では、高速引き込み処理で用いた、最初の同期信号のみから求めたDCオフセットを、そのまま用いて、低速引き込み処理で、局部発振器の発振周波数を補正している。そのため、DCオフセットが大きい場合、大幅な発振周波数の変化を伴うので、上述のように、低速引き込み処理への移行を、データ復調中を避けたタイミングで行うようにしている。したがって、低速引き込み処理へ移行するまでの間、局部発振器の発振周波数はずれたままであるので、前述の
図18で示すように、受信信号の一部がフィルタによって失われ、感度劣化が生じる。
【0013】
さらに、特に弱信号下において、段落[0031]に示されるように、ノイズによる誤動作が発生する。つまり弱信号下で前記同期信号にノイズが重畳してしまうと、得られたDCオフセットの値の信頼性が低くなる。そのため、前記DCオフセットを数フレーム(
図5では4フレーム)に亘って平均した値に対応して、局部発振器の発振周波数を順次補正している。
【0014】
しかしながら、やはり低速引き込み処理には、高速引き込み処理で用いた最初の同期信号のみから求めたDCオフセットをそのまま用いているので、ノイズによる影響が生じていると、その影響を解消するには、平均値が求められるまでの数フレームを要しており、低速引き込み処理のみの場合と、大差が無い。また、低速引き込み処理は、全シンボルを対象として平均値を求めるので、該低速引き込み処理の初期はデータによる差が生じ、精度が悪い。
【0015】
本発明の目的は、受信時の感度劣化を抑えつつ、ノイズ耐性を高めることができる無線受信機およびその周波数補正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の無線受信機は、無線送信機との周波数ずれが復調信号の DCオフセットとして現れる変調方式の無線受信機において、前記復調信号の所定数分のシンボルパターンの直流値と、既知の同期信号のシンボルパターンの直流値との差分から求めた前記DCオフセットを、前記復調信号から減算することで、高速引き込み処理を行う第1の補正手段と、前記DCオフセットを、前記第1の補正手段からの復調信号の平均値から求め、局部発振器の発振周波数を補正することで、低速引き込み処理を行う第2の補正手段とを備え、前記第1の補正手段が、前記高速引き込み処理を行った後、前記復調信号から減算するDCオフセットを、予め定める時間毎に、該時間の経過に伴い減少させてゆくことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の無線受信機の周波数補正方法は、無線送信機との周波数ずれが復調信号の DCオフセットとして現れる変調方式の無線受信機における周波数補正方法において、前記復調信号の所定数分のシンボルパターンの直流値と、既知の同期信号のシンボルパターンの直流値との差分から前記DCオフセットを求める第1のオフセット算出ステップと、前記第1のオフセット算出ステップで求めたDCオフセットを 前記復調信号から減算することで、高速引き込み処理を行う第1の補正ステップと、前記DCオフセットを、前記第1の補正ステップで補正された復調信号の平均値から求める第2のオフセット算出ステップと、前記第2のオフセット算出ステップで求めたDCオフセットによって局部発振器の発振周波数を補正することで、低速引き込み処理を行う第2の補正ステップとを備え、前記第1のオフセット算出ステップは、前記復調信号から減算するDCオフセットを、予め定める時間毎に、該時間の経過に伴い減少させてゆくことを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、FSKやQPSKなどの復調信号に無線送信機との周波数のずれがDCオフセットとして現れる変調方式の無線受信機において、そのDCオフセットを補正するにあたって、第1の補正手段による高速引き込み処理と、第2の補正手段による低速引き込み処理とを併用する。
【0019】
前記高速引き込み処理は、第1の補正手段が、第1のオフセット算出ステップにおいて、前記DCオフセットを、前記復調信号の所定数分のシンボルパターンの直流値と、予め定めるシンボルが連続する同期信号のシンボルパターンの既知である直流値との差分から求め、第1の補正ステップにおいて、前記復調信号から減算する。前記同期信号は、プリアンブルや同期ワードから成る。したがって、シンボルを素早く抽出し、最初のフレームのデータから復調可能である。
【0020】
一方、低速引き込み処理は、第2の補正手段が、第2のオフセット算出ステップにおいて、前記DCオフセットを、前記復調信号の平均値から求め、第2の補正ステップにおいて、局部発振器の発振周波数を補正する、すなわちバンドパスフィルタの中心周波数に合わせる。したがって、時間が掛かるものの、正確なデータの復調が可能である。
【0021】
本発明では、これらの高速引き込み処理と、低速引き込み処理とを併用するにあたって、第1の補正手段による補正を行った復調信号を第2の補正手段に与え、かつ第1の補正手段は、前記復調信号から減算するDCオフセットを、予め定める時間毎に、該時間の経過に伴い減少させてゆく。
【0022】
つまり、第1の補正手段による高速引き込み処理を行うことで、呼の最初のフレームから音声/非音声のデータなどを復調することができ、話頭切断などが生じることなく、フレーム同期確立の精度(着呼率)を向上することができる。さらに、第1の補正手段は、高速引き込み処理で復調信号から減算するDCオフセットの値を時間とともに漸減させていくことで、第2の補正手段による低速引き込み処理に占める高速引き込み処理の影響を相対的に小さくしていき、最終的に、低速引き込み処理による復調信号の平均値のみに基づく正確な局部発振周波数の補正を行うので、ノイズ耐性を高めることができ、受信信号の一部が帯域制限用のバンドパスフィルタによって欠けてしまうこと(感度の劣化)を防止することができる。
【0023】
さらにまた、本発明の無線受信機では前記第1の補正手段によるDCオフセットの減少の時定数は、前記第2の補正手段における平均値の変化の時定数より大きいことを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、ノイズ耐性を高めるためには、信頼性が高い平均値の影響を早目に大きくすることが考えられるが、前記平均値の変化の応答が遅いので、該平均値が充分に立ち上がって来るまで、第1の補正手段によるDCオフセットの影響を維持する。これによって、より適切に局部発振器の発振周波数の補正を行うことができる。
【0025】
また、本発明の無線受信機では、前記変調方式は、π/4シフトQPSK変調方式であることを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、QPSK変調方式は、FSK変調方式に比べて、パワーアンプの消費電力が増加するものの、(フレームフォーマットの違いもあるが)同じ占有帯域当りにおける伝送ボーレートを2倍に高めることができ、多くのデータを通信することができ、或いは短時間で通信を行うことができる。しかしながら、その分、FSK変調方式では、占有帯域の1/2程度の周波数帯域しか使用していないのに対して、QPSK変調方式では、占有帯域のほぼ全周波数帯域を使用するので、局部発振器の発振周波数にずれが生じていると、送信した場合、隣接チャネルに漏洩してしまう可能性がある。そのため、本発明は、QPSK変調方式で、特に効果的である。中でも、前記QPSK変調方式の位相を45°ずらして振幅変動を小さくしたπ/4シフト(以下、π/4Dと言う)QPSK変調方式は、パワーアンプの消費電力を少なくすることができ、より好適である。
【0027】
さらにまた、本発明の無線受信機では、ノイズレベルを検出するスケルチ回路と、前記スケルチ回路で検出されたノイズレベルが予め定める閾値より大きい場合には、前記第1の補正手段による高速引き込み処理を休止させる第3の補正手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0028】
上記の構成によれば、ノイズによる誤ったオフセット補正を防止することができる。
【0029】
また、本発明の無線受信機は、アンテナと、前記アンテナで受信された信号を直交変換する直交変換器と、前記直交変換器で得られたI成分、Q成分を直交検波し、前記復調信号を得る検波回路とを備えて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の無線受信機およびその周波数補正方法は、以上のように、FSKやQPSKなどの復調信号に無線送信機との周波数のずれがDCオフセットとして現れる変調方式の無線受信機において、DCオフセットを復調信号からそのまま減算する高速引き込み処理と、前記DCオフセットを復調信号の平均値から求め、局部発振器の発振周波数を補正する低速引き込み処理とを併用するにあたって、最初に第1の補正手段による高速引き込み処理を行うことで、呼の最初のフレームから音声/非音声のデータなどを復調することができ、話頭切断などが生じることなく、フレーム同期確立の精度(着呼率)を向上することができる。さらに、第1の補正手段は、高速引き込み処理で復調信号から減算するDCオフセットの値を時間とともに漸減させていくことで、第2の補正手段による低速引き込み処理に占める高速引き込み処理の影響を相対的に小さくしてゆき、最終的に、低速引き込み処理による復調信号の平均値のみに基づく正確な局部発振周波数の補正を行うので、ノイズ耐性を高めることができ、受信信号の一部が帯域制限用のバンドパスフィルタによって欠けてしまうこと(感度の劣化)を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の実施の一形態に係る無線受信機の電気的構成を示すブロック図である。この
図1のブロック図のレベルでは、無線受信機1は、FSK変調方式とPSK変調方式とで共通であるが、以降は、好適なπ/4DQPSK変調方式を前提として説明する。また、以下の説明では、アンテナ3から高周波回路および中間周波回路まで、1組の構成で説明しているが、複数組設けられて、空間ダイバシティー受信を行うようにしてもよい。
【0033】
無線受信機1は、ダブルスーパーヘテロダイン方式で構成され、アンテナ3で受信された信号は、バンドパスフィルタ4を介して、たとえば440MHzのπ/4DQPSK高周波信号の成分が濾波され、アンプ5で増幅された後、1段目の混合器6に入力される。混合器6では、局部発振器7からの、たとえば486.35MHzの発振信号と混合され、得られた、たとえば46.35MHzの中間周波信号(第1の中間周波信号)は、バンドパスフィルタ8によって、その中間周波成分が濾波され、アンプ9で増幅された後、2段目の混合器10に入力される。
【0034】
混合器10では、前記中間周波信号は、局部発振器11からの、たとえば45.9MHzの発振信号と混合され、得られた、たとえば450kHzの中間周波信号(第2の中間周波信号)は、バンドパスフィルタ12によって、その中間周波成分が濾波され、アンプ(中間周波アンプ)13で増幅された後、アナログ/デジタル変換器14に入力される。アナログ/デジタル変換器14では、入力信号が、たとえば30kHzでダウンサンプリングされ、96ksps(sample per second)のレートのデジタル値に変換されて、復調回路21に入力される。
【0035】
復調回路21は、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)などから成り、この復調回路21では、音声信号が復調されて、デジタル/アナログ変換器15でアナログ変換され、スピーカ16から音響化される。また、前記復調回路21は、その入力信号レベルに応じたデータをデジタル/アナログ変換器17に出力し、アナログ変換されて、RFアンプ5、中間周波アンプ9,13のゲイン制御が行われる。
【0036】
図2は、前記復調回路21の一構成例を示すブロック図である。前記アナログ/デジタル変換器14からの信号は、周波数変換器22に入力され、先ずハイパスフィルタ221によって高周波成分が濾波され、混合器222において、局部発振器223からの、たとえば18kHz、96kspsのレートの発振信号と混合され、得られた12kHz、96kspsの信号は、バンドパスフィルタ224によってその信号成分が濾波された後、コンバータ23において、1/2間引き、すなわち1/2の周波数(48kHz)にダウンサンプルされて、直交変換器24に入力される。前記コンバータ23は、直交変換器24での処理を軽減するために設けられているものであり、前記直交変換器24での処理が対応可能な場合、省略されてもよい。
【0037】
直交変換器24では、入力された信号は2分配され、それぞれ混合器241,242に入力され、混合器241では局部発振器243からの、たとえば12kHz、48kspsの発振信号と混合され、混合器242では局部発振器243からの発振信号が移相器244で90°位相がシフトされた後混合され、直交変換されたそれぞれ48kspsのI成分、Q成分の信号となる。前記I成分、Q成分の信号は、ルート・レイズド・コサイン(RRC)フィルタ245,246を介して出力され、位相検出器29に入力される。
【0038】
位相検出器29は、前記I,Q成分から、I=cosθ、Q=sinθとして、θ=tan
-1(Q/I)の演算を行い、信号の位相を求める。求められた位相は、周波数検出器30の加算器301において、遅延器302で遅延された所定サンプル前の位相が減算され、位相の微分量である前記位相差の量が求められる。前記所定サンプルは、伝送ボーレートの違いおよびQPSK変調方式の場合、マイナスシンボルとの位相差を求めるため、QPSK変調方式の場合で10サンプル、FSK変調方式の場合で1サンプルになる。こうして、位相検出器29および周波数検出器30は、検波回路を構成し、これらによって遅延検波を行い、その出力には、シンボルレート(4.8kHz)の10倍のサンプリングレート(48kHz)でオーバーサンプルされた復調信号が得られる。その復調信号は、π/4DQPSKシンボル再生回路33および同期ワードパターン検出回路34に入力される。
【0039】
前記π/4DQPSKシンボル再生回路33では、復調信号の振幅値(位相差)から、前記π/4DQPSKのシンボルデータが復調される。その復調にあたっては、このπ/4DQPSKシンボル再生回路33は、後述するようにして内部でシンボルクロックを発生し、前記4.8kHzのそのシンボルクロックのタイミングで、前記振幅値(位相差)を取込んでマップ判定することで、前記振幅値(位相差)がπ/4DQPSKにおける「00」,「01」,「10」,「11」の何れのシンボル値に該当するかを判断し、シンボルデータの再生を行う。このπ/4DQPSKシンボル再生回路33には、後述するように、同期ワードパターン検出回路34から、同期ワードパターンの検出タイミングでリセット信号が入力され、前記内部のシンボルクロックのタイミング調整が行われる。
【0040】
前記π/4DQPSKシンボル再生回路33で復調されたシンボルデータは、4値につき2ビットで、前記シンボルレートの4.8kspsの信号としてフレーム生成回路35へ出力される。フレーム生成回路35では、前記同期ワードパターン検出回路34で、後述するように同期ワードパターンが検出されている、すなわち正常に受信が行われていると、前記シンボルデータを所定のフレームに構成して、音声復調部36へ出力する。なお、この同期ワードパターン検出回路34によるシンボルクロックの補正およびπ/4DQPSKシンボル再生回路33でのシンボルデータの再生については、後に詳述する。同期ワードパターン検出回路34は、同期ワードおよびそれに続くプリアンブル等から成る特許請求の範囲における同期信号を検出するもので、本実施形態では、特許請求の範囲における同期信号を、同期ワードと称する。
【0041】
得られたシンボルデータは、前記音声復調部36において、サンプル周波数が前記24.8kHzの4値のデータから、所定の音声コーデック回路を使用して、圧縮されていた信号が伸長され、8kHz,16ビットのPCM音声信号に復調される。そのPCM音声信号は、コンバータ37において6倍の周波数(48kHz)でオーバーサンプルされ、ローパスフィルタ38を通過した後、デジタル/アナログ変換器39(15)に入力され、アナログ音声信号に復調され、アンプ40で増幅された後、スピーカ41から音響化される。
【0042】
一方、前記アナログ/デジタル変換器14からの変換データはまた、コンバータ45において、1/24の周波数(4kHz)にダウンサンプルされてRSSI回路46に入力され、ハイパスフィルタ461において、前記アナログ/デジタル変換器14で混入した直流成分が除去された後、絶対値回路462で絶対値が求められ、さらにローパスフィルタ463で平均化されてRSSIレベルが求められ、図示しないインジケータなどに与えられるとともに、AGC演算回路42に入力される。AGC演算回路42は、前記RSSIレベルに基づいてIFゲインを演算し、そのデータは前記デジタル/アナログ変換器39(17)でアナログ変換され、前記RFアンプ5、中間周波アンプ9,13のゲイン制御が行われる。
【0043】
また、前記加算器301からの位相差量のデータは、スケルチ回路43に与えられ、ハイパスフィルタ431でノイズ成分が抽出され、絶対値回路432でそのノイズの絶対値が求められ、さらにローパスフィルタ433で平均化されることで、スケルチレベルが求められている。補正制御回路52は、前記スケルチレベル(ノイズレベル)が予め定める閾値より大きい場合は、後述のDCオフセット補正回路50による高速引き込み処理を禁止させる。これによって、ノイズによる誤った補正を防止している。
【0044】
上述のように構成される無線受信機1において、注目すべきは、概略的に、同期ワードパターン検出回路34が周波数偏差情報(DCオフセット)Δfを求め、DCオフセット補正回路50は、その周波数偏差情報(DCオフセット)Δfの値を、時間経過に伴い減算してゆき、その減算された周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’を 用いて、π/4DQPSKシンボル再生回路33が復調シンボルデータのオフセット補正を行う高速引き込み処理を行うとともに、DCオフセット補正回路51が、復調(検波)信号の平均値から局部発振回路223または243(
図2の例では223)の局部発振周波数を変化させる低速引き込み処理を行うにあたって、前記π/4DQPSKシンボル再生回路33からの前記周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’でオフセット補正された復調(検波)信号の平均値から低速引き込み処理を行うことである。こうして、高速引き込み処理と低速引き込み処理とを併用するにあたって、相対的にオフセット補正に占める高速引き込み処理の影響を小さくしてゆき、最終的に、低速引き込み処理のみを行う。
【0045】
したがって、同期ワードパターン検出回路34およびDCオフセット補正回路50は、第1のオフセット算出ステップを行い、DCオフセット補正回路50およびπ/4DQPSKシンボル再生回路33は、第1の補正手段を構成する。また、DCオフセット補正回路51は、第2のオフセット算出ステップを行い、DCオフセット補正回路51および局部発振器223または243(
図2の例では223)は、第2の補正手段を構成する。以下に、そのような本発明に係るオフセット補正について詳述する。
【0046】
図3は、高速引き込み処理による補正の様子を示す波形図である。前記周波数検出器30からは、前記復調信号として、
図3で示すような波形のデータが、シンボルレート(4.8kHz)の10倍の前記48kHzでオーバーサンプリングされた状態(48ksps)で出力されており、それが前記π/4DQPSKシンボル再生回路33において、前記シンボルレートの4.8kHzでサンプリングされると、たとえば
図3において丸印で示すサンプル値(位相)が得られる。なお、この
図3および後述の
図5では、スケールは信号の位相で表しているが、実際に周波数検出器30から出力されるのは、この
図3で示すようなDC波形であり、説明を分り易くするために、そのDC値を、π/4DQPSKにおける位相に読替えて表示している。
【0047】
先ず、高速引き込み処理は、同期信号による着呼率の向上、およびフレーム内のFEC(一方向誤り訂正)能力の向上を目的とし、同期外れ中、すなわち呼の最初のフレームのみにおいて実行される。
【0048】
表1で示すように、π/4DQPSKにおけるシンボル値から求めたデジタルデータは、「00」,「01」,「10」,「11」の4値であり、前記シンボル値は、直前のシンボル判定点との変化(位相差)によって表される。たとえば、前回のシンボル判定点が0°位置の場合の各値のシンボル位置は、
図4(a)で示す通りであり、45°位置の場合の各値のシンボル位置は、
図4(b)で示す通りである。
【0050】
そして、高速引き込み処理は、呼の最初のフレームにおいて、フレーム先頭部分で予め定められているシンボルパターンが連続する前記同期ワードを検出し、その同期ワードの部分における復調信号の直流値(シンボル信号値)と、既知である当該同期ワードの部分におけるシンボルデータの直流値との差分から前記DCオフセット(受信周波数偏差)を求め、シンボル信号値から減算することで、補正を行う。前記同期ワードは、
図3において実線で示すように、+135°と−45°との規定のパターンを繰り返している。そこで、本実施形態では、後述するように、前記同期ワードと規定のパターンとの誤差を求め、誤差が一番小さくなると前記同期ワードを検出したと判定し、DCオフセットを求める。
【0051】
具体的には、前記同期ワードにおける所定数のシンボル値の平均値を求める。送信側のキャリア周波数f0に受信側のキャリア周波数F0が一致している受信周波数偏差が無い状態(f0−F0’=Δf=0)では、前記同期ワードにおけるシンボル値は、+135°と−45°とを交互に繰り返し、平均値(中点)は+45°になる。その+45°からのずれがDCオフセット(受信周波数偏差Δf)となる。
図3の例では、仮想線で示すずれの有る信号は、+100°と−80°とを繰り返しているので、平均値(中点)は+10°となり、ずれを補正するために、+45°−(+10°)=+35°の補正を行うことになる。
【0052】
一方、
図5は、低速引き込み処理の補正の様子を示す波形図である。低速引き込み処理は、フレーム同期の有無に拘わらず、所定期間(シンボル数)に亘る総てのシンボルの平均値(直流値)から、受信周波数偏差を求め、前記の局部発振器223,243の何れか(
図2では1段目の223)の発振周波数を制御することで、受信周波数偏差を±200Hz程度有していても、受信信号をバンドパスフィルタ224の中心周波数にシフトさせることができる。
【0053】
そのため、前記局部発振器223(または243)は、デジタルVCOから成り、DCオフセット補正回路50は、発振波形の基となるsinテーブルから波形(振幅レベルを表す)データを読出すタイミングを変化させることで、発振周波数を変化させることができ、その読出しタイミングを、現在の発振周波数より所定周波数だけ高い、或いは低い発振周波数とするタイミングに変更する。このような補正動作によって、
図5において仮想線となっていたシンボル値が実線にシフトされ、π/4DQPSKシンボル再生回路33での判定精度が向上する。
【0054】
具体的に、
図5の例は、データが、振幅最大値の+135°と振幅最小値の−135°とを規則的に繰返す波形を示しており、実線で示す受信周波数偏差が無い状態では、前記振幅最大値の+135°と振幅最小値の−135°とで、平均値は0°になる。その0°からのずれがDCオフセット(受信周波数偏差)となる。一例として、ずれの有る状態を、仮想線で示す振幅最大値は+155°、振幅最小値は−115°としている。したがって、平均値は+20°となり、ずれを補正するために、0°−(+20°)=−20°の補正を行うことになる。
【0055】
なお、前記周波数変換器22は、後段での処理を軽減するために設けられており、省略されてもよい。その場合、局部発振器243は、30kHz、96kspsの発振信号を出力し、前記低速引き込み処理(周波数偏差によるDCオフセット補正)は、この局部発振器243の発振周波数を制御することで行われることになる。
【0056】
前記のπ/4DQPSKシンボル再生回路33およびDCオフセット補正回路50によるDCオフセット補正動作およびオフセット補正されたシンボル値によるπ/4DQPSKシンボル再生回路33によるシンボル再生動作を説明する前に、
図6を参照して、フレーム同期検出回路である同期ワードパターン検出回路34による同期ワードパターンの検出動作を説明する。
図6は、前記同期ワードパターン検出回路34の動作を説明するためのフローチャートである。前記周波数検出器30から、前述の
図3や
図5で示すようなDC波形として入力されるπ/4DQPSK復調信号は、この同期ワードパターン検出回路34において、前記所定期間、たとえば10シンボル期間分に亘り、所定数、たとえば10倍にオーバーサンプルされて、そのオーバーサンプル値が記憶されている。
【0057】
そして、ステップS1では、現在のオーバーサンプルのシンボル値を基準として、過去10シンボル分の復調信号(検波データ)が抽出される。つまり、上述の例では、10サンプル×10倍=100サンプルのデータから、連続する10サンプルのデータではなく、各シンボル期間における10個のデータの内、同じタイミングのデータが抽出される。ステップS2では、その抽出されたデータの移動平均が求められ、ステップS3で、既知である理想の同期ワードの移動平均値が減算され、仮の周波数偏差情報Δf、つまりDCオフセットが求められる。
【0058】
ステップS4では、仮の周波数偏差情報Δfの絶対値が求められ、ステップS5において、許容できる周波数偏差の範囲(前記の200Hz)が減算されて、周波数誤差f errが求められる。ステップS6では、その周波数誤差f errが正であるか否か、すなわち、前記仮の周波数偏差情報Δfが許容範囲を超えているか否かが判断される。ステップS6で、仮の周波数偏差情報Δfが許容範囲を超えている場合にはステップS7に移って、前記同期ワードのパターン検出ができておらず、そのため周波数偏差情報Δfも得られていないものと判断する。そして、ステップS8で、後述の1サンプル前の誤差積算値を表すerr sum delayが最大値の32767(=2
15−1)にセットされて処理を終了する。
【0059】
一方、ステップS6で仮の周波数偏差情報Δfが許容範囲を超えていない場合にはステップS11に移って、前記ステップS1で求めた過去10シンボル分の復調信号(検波データ)が抽出され、ステップS12では、それらのデータから、それぞれ前記仮の周波数偏差情報Δfが減算されて、オフセット補正が行われる。
【0060】
ステップS13では、シンボルのサンプルタイミングを表す変数nが0にリセットされ、ステップS14では、後述の今回の誤差積算値を表すerr sumが0にリセットされる。そして、ステップS15では、現在のサンプルタイミングから、nサンプルだけ以前の復調信号(検波データ)が抽出され、そのデータから、ステップS16で、既知の理想のn番前のシンボルデータが減算される。ステップS17では、ステップS16での減算値の絶対値が求められ、ステップS18では、その絶対値から、許容できるシンボル誤差の範囲が減算されて、シンボル誤差errが求められる。
【0061】
ステップS19では、そのシンボル誤差errが正であるか否か、すなわちn番前のシンボルデータの理想値からの誤差errが許容範囲を超えているか否かが判断される。ステップS19で、シンボルデータの誤差が許容範囲を超えている場合には前記ステップS7に移って、パターン検出ができておらず、そのため周波数偏差情報Δfも得られていないものとする。
【0062】
これに対して、ステップS19で、シンボルデータの誤差errが許容範囲内である場合には、ステップS20で前記変数nに1が加算されて更新され、ステップS21で、誤差積算値err sumに、前記の誤差errが加算されて更新される。ステップS22では、変数nが10に達しているか否かが判断され、達してない場合には前記ステップS15に戻る。こうして、現在のオーバーサンプルのシンボルデータを基準として、過去10シンボル分のシンボルデータの理想パターンとの誤差積算値err sumが求められる。
【0063】
求められた誤差積算値err sumは、ステップ23において、1オーバーサンプル前のシンボルデータから同様にして求めた誤差積算値err sum delayとの差Diffが求められ、ステップS24では、その差Diffが0以上であるか否かが判断される。前記ステップS24において、差Diffが0未満である場合、すなわち今回の誤差積算値err sumより前回の誤差積算値err sum delayの方が大きい場合には、ステップS25に移って、パターン検出ができておらず、そのため周波数偏差情報Δfも得られていないものとして、ステップS26で、誤差積算値err sum delayが誤差積算値err sumで更新され、処理を終了する。
【0064】
ここで、前記ステップS8において、誤差積算値err sum delayは最大値にセットされており、そのため前記ステップS24において、差Diffが0以上である場合、すなわち今回の誤差積算値err sumが前回の誤差積算値err sum delay以上、つまり今回の誤差積算値err sumが、それまでの最小値となると、ステップS31に移って、パターン検出ができたものと判定し、前記仮の周波数偏差情報Δfを実際の周波数偏差情報Δfに設定する。ただし、誤差が最小となったシンボルは1オーバーサンプル周期分前のシンボルであるので、前記ステップS3で求められた周波数偏差情報Δfは、ステップS32において、予め1オーバーサンプル周期分遅延されている。その後、誤差積算値err sum delayが最大値にセットされて処理を終了する。
【0065】
このような処理を1オーバーサンプル毎のシンボル値に繰り返してゆくことで、同期ワードパターン検出回路34は、前記10シンボルの比較から、精度良く、かつ相関演算のような複雑な演算を行うことなく、理想の同期ワードに最も近いパターンを検出し、前記π/4DQPSKシンボル再生回路33やフレーム生成回路35のタイミングを制御することができる。
図7には、その1オーバーサンプルずつデータをずらしてパターン検出してゆく様子を、模式的に示す。シンボル値は、参照符号P1〜P10で示している。
【0066】
同期ワードパターン検出回路34は、π/4DQPSKシンボル再生回路33に、同期ワードパターンの検出タイミングでリセット信号を与え、内部のシンボルクロックのタイミング調整を行う。また、同期ワードパターン検出回路34は、シンボルクロック検出時点の周波数偏差情報(DCオフセット)Δfを、DCオフセット補正回路50に与え、通信終了まで、後述するようにしてDCオフセット補正を行わせる。
【0067】
さらに、同期ワードパターン検出回路34は、ステップS31で同期ワードパターンが検出されると、前記π/4DQPSKシンボル再生回路33およびフレーム生成回路35に、同期ワードパターンが検出されている、すなわち正常に受信が行われていることを通知し、前記π/4DQPSKシンボル再生回路33でのシンボル再生およびフレーム生成回路35でのフレーム構成、すなわち音声出力を許可する。一方、同期ワードパターン検出回路34は、ステップS7,S25で同期ワードパターンの検出とならなかったときは、前記のような制御出力は行わない。
【0068】
そして、同期ワードパターン検出回路34は、ステップS15以降の理想のシンボルデータとの比較前に、ステップS12において、周波数偏差情報(DCオフセット)Δfを除去しているので、ステップS24で同期ワード検出と判定する閾値(ステップS8,S33で初期セットされる誤差積算値err sum delay)を厳しくすることができ(
図6の例では15ビットの最大値)、またその誤差積算値の差(err sum−err sum delay)だけで同期ワード検出を判定するのではなく、ステップS18からS19で、個々のシンボル点総てについて、誤差が一定の範囲にあることも検出条件とするので、結果的に、フレーム同期の確立を、速やかに、かつ高精度に行うことができる。
【0069】
前記DCオフセット補正回路50は、同期ワードパターン検出回路34で求められた周波数偏差情報(DCオフセット)Δfを、時間経過に伴い減少させてゆく処理を行う。具体的には、
図8で示すように、ステップS51で前記周波数偏差情報(DCオフセット)Δfを取得し、ステップS52で、それが0である場合、すなわち周波数偏差が無い場合はステップS54に移り、0で無い場合、すなわち周波数偏差が有る場合は、その周波数偏差情報(DCオフセット)Δfに応じた減分Aがセットされた後、ステップS54に移る。ステップS54では、周波数偏差情報(DCオフセット)Δfが補正された周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’にセットされて処理を終了する。この
図8で示す処理は、前記周波数偏差情報(DCオフセット)Δfが、同期ワードパターン検出回路34で求められ、DCオフセット補正回路50にセットされた時点のみで行われる。前記減分Aの例は、たとえば表2および
図9で示される。
【0071】
そして、DCオフセット補正回路50は、
図10で示す処理を繰り返すことで、前記周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’を、時間経過に伴い減少させてゆく。詳しくは、ステップS61で前記周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’が0であるか否かを判断し、0である場合はそのまま処理を終了し、0で無い場合はステップS62で前記減分Aを減算して更新した後、処理を終了する。こうして得られた補正された周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’が、前記π/4DQPSKシンボル再生回路33およびDCオフセット補正回路50に与えられる。
【0072】
その周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’を用いて、前記π/4DQPSKシンボル再生回路33において、前記
図7におけるサンプル値(周波数偏差)P1〜P10を得るシンボルクロックの補正が行われるとともに、サンプル値(周波数偏差)P1〜P10から前記周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’を直接減算して補正する高速引き込み処理が行われる。
【0073】
図11は、そのπ/4DQPSKシンボル再生回路33の一構成例を示すブロック図である。このπ/4DQPSKシンボル再生回路33では、前記周波数検出器30からのシンボルレートの10倍にオーバーサンプルされた復調信号は、引算器330に入力され、前記DCオフセット補正回路50で得られた周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’が減算されて、前記高速引き込み処理のための補正が行われた後、シフトレジスタ331−1に入力される。シフトレジスタ331−1には、2段のシフトレジスタ331−2,331−3が縦続接続されており、新たなサンプルデータが入力されると、順次シフトされてゆく。したがって、前記オーバーサンプルの周期で、最も新しいデータがシフトレジスタ331−1に、古いデータがシフトレジスタ331−3に、3サンプル分保持される。
【0074】
なお、前記引算器330での周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’の減算は、同期ワードパターン検出回路34において、ステップS24で同期ワードパターンが検出された時点以降に限られ、それ以前の仮の周波数偏差情報を使用している状態では、同期ワードパターン検出回路34からこの引算器330へは、Δf’=0がセットされる。これによって、同期ワードパターン検出回路34で同期ワードパターンが検出された時点から、周波数偏差情報(DCオフセット)Δfによる補正、すなわち高速引き込み処理が行われ、素早く、前記周波数偏差情報(DCオフセット)Δfの補償を行うことができる。
【0075】
前記各シフトレジスタ331−1〜3のストア内容は、ゲート回路332によって、タイマ333で発生された前記シンボルクロックのタイミングで、シフトレジスタ334−1〜3にそれぞれ取込まれる。したがって、各シフトレジスタ334−2,334−1,334−3には、
図12で示すような、理想のシンボル点P付近のサンプル点T2およびその前後のサンプル点T1,T3でのサンプリング値がストアされる。そして、サンプル点T2でのサンプリング値がシンボル判定部335に入力され、そのサンプル点T2でのサンプリング値から推定される実際のシンボル点Pのシンボル値として、前記「00」,「01」,「10」,「11」の何れが最も確からしいか判定され、その判定結果が前記2ビット、4.8kspsの信号としてフレーム生成回路35へ出力される。
【0076】
また、シンボル判定部335からは、その判定結果のシンボル値に対応した理想の振幅レベルが出力され、引算器336−1〜3において、前記各シフトレジスタ334−1〜3でのストア内容から減算される。その減算結果、すなわち前記理想の振幅レベルからの誤差(差分値)の大きさV1〜V3の内、シフトレジスタ334−1,3、すなわちサンプル点T1,T3でのサンプリング値での誤差V1,V3の大きさがセレクタ337に入力されて、どちらの誤差が大きいか判断され、誤差の小さい方、すなわち
図12ではサンプル点T3を、サンプル点T2を移動させるべき方向のデータ(指標)として、タイミング補正回路338へ出力される。
【0077】
一方、前記タイミング補正回路338には、前記引算器336−2での誤差の大きさV2が、補正量のデータとして入力されており、このタイミング補正回路338は、その補正量のデータに対応したカウント値に、補正方向のデータとして符号を組合わせて、タイミング制御信号として、ループフィルタ339を介して前記タイマ333へ出力する。前記ループフィルタ339は、IIRフィルタなどのローパスフィルタから構成され、前記シンボルクロックが、時定数が大きくなる程安定となり、小さくなる程追従性が良くなる。
【0078】
前記タイマ333は、デジタルVCOなどの自走式のカウンタから成り、その発振周波数は、シンボル周波数に設定されており、シンボル周期(シンボルタイミング)となった時点で、桁溢れ分を除き、リセットしてカウント動作を再開する。そして、シンボルタイミングは、そのデジタルVCOの位相が0°を通過したタイミングとなる。たとえば、VCOの位相の0〜360°(1シンボル周期)をカウンタの0〜30000のカウント値に対応させると、タイマ333は、1つのオーバーサンプル点T毎に3000を加算してゆくことで、48kspsのオーバーサンプルのデータから、4.8kspsのシンボルレートのシンボル値をサンプリング可能なシンボルクロックを再生することができる。
【0079】
そして、タイマ333は、前記
図12の場合、次回のシンボルクロックを、補正方向として、サンプル点T3方向、すなわち進ませる方向に、補正量として前記サンプル点T2での誤差V2に対応して、たとえば500カウントだけ進ませるように、前記デジタルVCOの位相が0°でのカウント値を500に初期設定する。すると、その500カウントする間だけ、シンボルタイミングが速められ、次回のサンプル点T2が、実際のシンボル点Pに近付くことになる。具体的には、カウント動作の繰返しの中で、前記500のカウント値を補正すると、タイマ333は、30500でオーバーフローし、この時リセットされて、桁溢れ分を除いた500に、今回の補正値500が加算されてカウント動作を再開し、次は31000でオーバーフローする。こうして、補正値の合計が3000になると、1サンプル分、サンプリングタイミングが速められることになる。
【0080】
図13には、前記タイマ333のカウント動作の例として、初期値に負の値を設定し、シンボルタイミングを遅らせる場合を示す。このタイマ333の最大値を大きくすれば分解能が高くなり、オーバーサンプルのサンプリングレートを上げれば補正精度が向上する。なお、前記サンプル点T2での誤差V2が所定値より小さい場合は、上述のようなタイミング補正を行わないような不感帯を設けることで、安定性を向上することができる。また、このタイマ333は、前記同期ワードパターン検出回路34からの前記リセット信号によって、同期ワードパターンの検出タイミングで、強制的に0リセットされ、カウント動作を再開する。
【0081】
そして、前記同期ワードパターン検出回路34が同期ワードパターンを検出し、このπ/4DQPSKシンボル再生回路33のタイマ333が0リセットされた後は、該π/4DQPSKシンボル再生回路33における上述の通常のシンボル再生で同期ワードを検出できるので、前記同期ワードパターン検出回路34は、その通信(呼)が終了するまで、同期ワードパターンの検出処理を行わない。
【0082】
こうして、前記π/4DQPSKシンボル再生回路33は、復調信号を予め定めるシンボル点でサンプリングし、得られたシンボルデータの振幅値から復調データを再生するにあたって、前記復調信号をシンボルクロックよりも高い周波数でオーバーサンプリングしたシンボルデータの内、前記シンボル点Pに近いサンプル点T2と、その前後のサンプル点T1,T3との3点のシンボルデータについて、シフトレジスタ331−1〜3、ゲート回路332、シフトレジスタ334−1〜3、シンボル判定部335および引算器336−1〜3によって、シンボル点Pにて得られるべき理想の振幅レベルとの差分値V1〜V3を求め、前後のサンプル点T1,T3の内、前記差分値V1,V3が小さい方の測定点を選択手段であるセレクタ337で選択し、タイミング補正回路338が、前記セレクタ337で選択されたサンプルT3側に、前記サンプル点T2における差分値V2に対応した時間だけ、自走する前記タイマ333の次回のシンボル点のサンプリングタイミングを移動させる。
【0083】
したがって、たとえば「00」,「01」,「10」,「11」の4値の変調波の場合、「00」と「01」、或いは「10」と「11」のように、中央値を跨がないような遷移や、「00」と「10」、「01」と「11」のように、中央値を跨いでも、その中央値からの偏差が不均等な遷移の場合にも、サンプリングタイミングは、最大でオーバーサンプリングの周期ずつでずれが修正されてゆく。また、サンプリングタイミングに、180°近くの大きなずれが生じていても、タイミングを修正すべき方向は検知できる。こうして、多値変調波から、安定したシンボルクロックを再生することができる。また、アイパターンの開口率に依存しないため、ロールオフ率の変更に対して対応が容易である。さらにまた、タイミング演算は、シンボル点P付近のサンプル点T2と、その前後のサンプル点T1,T3との3点程度で行われるので、演算量を削減することもできる。このようなシンボルクロックの再生方法は、位相変調に限らず、周波数変調などのアイパターンが存在する種々の変調方式に適用することができる。
【0084】
また、自走する前記タイマ333およびループフィルタ339は、前記同期ワードパターン検出回路34での同期ワードパターンの検出タイミングで、強制的にリセットされるので、本体データ(トラヒックチャンネル)の先頭から、精度の高いシンボルクロックを再生することができる。さらにまた、引算器330において、復調信号から、周波数偏差情報(DCオフセット)Δf’の補正を行うので、サンプル点T2で得られるシンボルデータを、前記理想の振幅レベルに近付けることができ、より安定したクロックを再生することができる。
【0085】
そして、前記π/4DQPSKシンボル再生回路33の高速引き込み処理によって補正された復調信号は、低速引き込み処理を行うDCオフセット補正回路51に与えられる。DCオフセット補正回路51は、入力された復調信号の平均値から、DCオフセットを求め、局部発振器223,243(
図2の例では223)の発振周波数を補正する。
【0086】
したがって、このように構成される無線受信機1のトータルのオフセット補正は、数式で示すと、以下の通りとなる。
fc(t) :自局シンボル判定時の受信周波数中心(DCオフセットによるずれ有)
frx :相手局送信周波数の中心(固定値)
Adj local (t) :低速引き込みによる受信周波数偏差補正値
Adj DC :高速引き込みによる受信周波数偏差補正値(同期検出で設定の固定値)
Adj Del(t) :実質的に高速引き込みから低速引き込みに引き渡すことになる受信周波数補正量
とすると、
fc(t) = frx- (Adj local(t)+ Adj Del(t))- (Adj DC- Adj Del(t)) ・・・(1)
である。
【0087】
すなわち、(Adj DC - Adj Del(t))の補正が高速引き込み処理で、(Adj local(t) + Adj Del(t)) の補正が低速引き込み処理である。上述の説明と対比すると、Adj DC=Δf、Adj Del(t) =A、Adj DC - Adj Del(t) =Δf’となる。
【0088】
また、上式を、
図2から主要部を抜き出し、簡略化した機能的ブロック図で示すと、
図14のようになる。
図14では、復調処理部101に入力された中間周波信号は、混合器1011において、局部発振器1012からの局部発振信号と混合されて周波数変換され、検波処理部1013において、バンドパスフィルタ処理によって検波されて、復調(検波)信号が得られる。
【0089】
その復調(検波)信号は、高速引き込み処理部102に入力され、パターン検出部1021において、同期ワードパターンが検出されるとともに、受信周波数偏差補正値Adj DCが求められる。そして、前記受信周波数偏差補正値Adj DCからは、後段の周波数偏差減算処理部1022において、受信周波数補正量Adj Del(t)が減算されることで、該受信周波数偏差補正値Adj DCは、時間経過に伴い減少してゆく。こうして求められた高速引き込み処理のための補正値(Adj DC - Adj Del(t))が、減算器103において、前記復調(検波)信号から減算されることで高速引き込み処理が行われ、処理後の復調(検波)信号が、後段の低速引き込み処理部104に入力される。
【0090】
低速引き込み処理部104では、前記復調(検波)信号はシンボルクロック再生部1041に入力され、再生されたクロックのタイミングで、サンプラ1042において、該復調(検波)信号がサンプリングされ、シンボルデータとして出力される。一方、その復調(検波)信号は、自動受信周波数補正部1043によって、局部発振器1012にフィードバックされ、低速引き込み処理が行われる。
【0091】
したがって、前述の式およびこの
図14から明らかなように、高速引き込み処理では、基本の受信周波数偏差補正値Adj DC(=Δf)から、受信周波数補正量Adj Del(t) (=A)を減算してゆくことで、復調信号に占める高速引き込み処理の影響は時間経過に伴い減少してゆく。そして、後段で低速引き込みによる受信周波数偏差(Adj local(t) + Adj Del(t))を局部発振器1012にフィードバックして補正を行うと、結果的に、上述のように、受信周波数補正量Adj Del(t) (=A)が、高速引き込み処理から低速引き込み処理に引き渡され、低速引き込み処理でDCオフセットが検出されるようになるので、局部発振器223(243)の発振周波数の補正が行われる。
【0092】
こうして、DCオフセットを素早く抽出し、最初のフレームのデータから復調可能な高速引き込み処理と、時間が掛かるものの、正確なDCオフセットの検出が可能である低速引き込み処理とを併用するにあたって、高速引き込み処理で求めたDCオフセットを漸次減少させつつ低速引き込み処理に引き渡してゆくので、話頭切断などが生じることなく、フレーム同期確立の精度(着呼率)を向上することができ、最終的に、低速引き込み処理による復調信号の平均値のみに基づく正確な局部発振周波数の補正を行うことができるので、ノイズ耐性や受信感度を高めることができる。
【0093】
上述の
図14において、[a]〜[g]で示す各点の模式的な波形を、
図15に示す。[a]で示すように、自局の受信周波数中心fc(t)が相手側の送信周波数中心frxから周波数偏差Δfを有する場合、[b]で示すように、受信帯域幅W、すなわち検波処理部1013のバンドパスフィルタの通過帯域幅からはみ出す部分には、歪みを生じることになる。
【0094】
しかしながら、本実施形態では、パターン検出部1021において、[c]で示すように、同期ワードパターンが検出され、[e]で示すように、受信周波数偏差補正値 Adj DCが求められると、高速引き込み処理によって、直ちに復調(検波)信号から減算されて、音声/非音声のデータが復調される。なお、[c]の高速引き込み処理後の出力と、[d]の低速引き込み処理後の出力とは、実質、サンプラ1042によるサンプリングの有無だけが相違するので、
図15のレベルでは、同様に現れている。
【0095】
そして、[f]で示すように、受信周波数偏差補正値Adj DCは、周波数偏差減算処理部1022において、受信周波数補正量Adj Del(t)ずつ減算されてゆき、高速引き込み処理のための補正値(Adj DC - Adj Del(t))は、時間経過に伴い減少してゆく。続いて、減算器103で、高速引き込み処理のための補正値(Adj DC - Adj Del(t))が前記復調(検波)信号から減算されることで、高速引き込み処理が行われる。一方、高速引き込み処理で補正された復調(検波)信号が、自動受信周波数補正部1043によって、[g]で示すように局部発振器1012にフィードバックされることで、前記受信周波数補正量Adj Del(t)は、低速引き込み処理に引き渡されることになる。
【0096】
こうして、[b]で示すように、復調(検波)信号が、受信帯域幅W内に入ってゆくことで歪みが減少されてゆき、最終的に自局の受信周波数中心fc(t)を相手側の送信周波数中心frxに合わせ込み、歪みを無くすことができる。
【0097】
なお、同期検出前のフレーム先頭より前は、ノイズが多く、前記スケルチ回路43および補正制御回路52によるDCオフセット補正回路50の高速引き込み処理の禁止によって、何らの補正も行われない。また、高速引き込み処理によって前記受信周波数補正量Adj Del(t)を減算した直後の復調(検波)信号には、一瞬、周波数偏差が生じることになるが、前記受信周波数補正量Adj Del(t)(=減分A)は、自動受信周波数補正部1043におけるシンボル判定に影響を与えない値に設定されている。その一瞬の周波数偏差は、低速引き込み処理による局部発振回路1012のフィードバック制御にて、次の受信周波数補正量Adj Del(t)の減算処理までに補正されて、周波数偏差が蓄積されてゆくようなことはない。
【0098】
図15では、図面の簡略化のために、1フレーム期間に9回の補正を行うことを示しているが、実際は、たとえば1フレーム期間は40msecで、減算処理周期、すなわち前記
図10の演算周期は0.4〜4msec(2〜20シンボル)で、9〜100回程度の補正が行われ、前記表2および
図9の減分A(=受信周波数補正量Adj Del(t))が±100Hzの設定の場合、高速引き込み処理は、最大でも、前記1フレーム期間以内の40msec程度で終了する(Δf’=0になる)
ここで、従来の単純な高速引き込み処理と低速引き込み処理とを組合わせた構成について説明する。そのような構成は、
図14において、高速引き込み処理部102から、周波数偏差減算処理部1022を除いた構成に相当する。したがって、パターン検出部1021で求められた受信周波数偏差補正値Adj DC(=Δf)は、呼が終了するまで、そのまま使用され、変化しない。したがって、そのような構成におけるオフセット補正を、前述の式1と同様に式で表せば、下記のようになる。
【0099】
fc(t) = (frx-Adj local(t))-Adj DC・・・(2)
また、そのような構成による模式的な波形を示すと、
図16のようになる。
図16は、
図15と同様に、
図14の[a]〜[e][g]で示す各点の波形を示している。
図15と
図16とを比較して明らかなように、前記受信周波数偏差補正値Adj DCによる高速引き込み処理が或る程度適正に行われると、[g]で示すように、低速引き込み処理のために局部発振器1012へフィードバックされる受信周波数偏差補正値Adj local (t)は、ほぼ0になり、実質的に低速引き込み処理が機能しない。そのため、受信信号は[b]で示すように、受信帯域幅Wからはみ出したままとなり、そのはみ出した部分が前述の
図18で示すように、フィルタ処理によって失われ、
図19で示すように、復調信号が歪んでしまう。こうして、感度劣化が生じるとともに、得られる直流値の信頼性が低くなり、フレーム同期確立の精度(着呼率)も低下する。本実施形態(
図15)と、
図17,20,21の従来技術と比較しても同様である。
【0100】
上述の実施形態では、受信周波数補正量Adj Del(t)は、高速引き込み処理と低速引き込み処理に共通であったが、高速引き込み処理での受信周波数補正量Adj Del(t)(DCオフセット)の減少の時定数が、低速引き込み処理における平均値(Adj local (t))の変化の時定数より大きいことが好ましい。その場合、自動受信周波数補正部1043は、減算器103による減算前の復調(検波)信号を取り込み、前記受信周波数偏差補正値Adj DCを減算し、さらにその受信周波数偏差補正値Adj DCに基づき、前記受信周波数補正量Adj Del(t)よりも前記時定数の大きな受信周波数補正量Adj Del’(t)を求めて加算した復調(検波)信号からフィードバック値を求めるようにすればよい。具体的には、前記受信周波数補正量Adj Del’(t)については、表2のテーブルの読み出しを、1段以上低い値とすればよい。
【0101】
このように構成することで、ノイズ耐性を高めるためには、信頼性が高い平均値の影響、すなわち低速引き込み処理の影響を早目に大きくすることが考えられるが、前記平均値の変化の応答が遅いので、該平均値が充分に立ち上がって来るまで、高速引き込み処理の影響を維持することで、より適切に局部発振器12の発振周波数の補正を行うことができる。
【0102】
また、本実施形態の無線受信機1では、変調方式は、π/4DQPSK変調方式であることが好ましい。それは、QPSK変調方式は、FSK変調方式に比べて、パワーアンプの消費電力が増加するものの、(フレームフォーマットの違いもあるが)同じ占有帯域当りにおける伝送ボーレートを2倍に高めることができ、多くのデータを通信することができ、或いは短時間で通信を行うことができるためである。しかしながら、その分、FSK変調方式では、占有帯域の1/2程度の周波数帯域しか使用していないのに対して、QPSK変調方式では、占有帯域のほぼ全周波数帯域を使用するので、周波数にずれが生じていると、送信した場合、隣接チャネルに漏洩してしまう可能性がある。そのため、本発明は、QPSK変調方式で、特に効果的である。中でも、前記QPSK変調方式の位相を45°ずらして振幅変動を小さくしたπ/4DQPSK変調方式は、パワーアンプの消費電力を少なくすることができ、より好適である。
【0103】
さらにまた、本実施形態の無線受信機1では、スケルチ回路43で検出されたノイズレベルが予め定める閾値より大きい場合には、補正制御ブロック52はDCオフセット補正回路50による高速引き込み処理を休止させるので、特にビット同期が取れていないような状態にいて、ノイズによる誤ったオフセット補正を防止することができる。
【0104】
なお、本件発明者は、特許文献2として、特許第5304089号公報を提案している。その先行技術は、多値(実施の形態では4値)のFSK受信機において、復調信号の振幅最大値および最小値を逐次更新して取得してゆき、所定の閾値以上になると、前記多値で真の最大値および最小値が得られたものと判定して、それらの中央値でDCオフセットを求め、前記復調信号の補正や、局部発振器の発信周波数の補正を行うものである。そして、高速引き込み処理と低速引き込み処理とを併用し、最初の同期ワードのみから求めたDCオフセットを、以降、呼が終了するまで復調信号から減算するとともに、逐次更新される平均値を用いて、局部発振周波数を補正している。したがって、適切な振幅最大値および最小値を求める点を除いて、前述の
図16で示す従来技術に近い。