特許第6221798号(P6221798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6221798-蓄電装置用電極 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221798
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】蓄電装置用電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20171023BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20171023BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01G11/52
   H01G11/26
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-22592(P2014-22592)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-149237(P2015-149237A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 庄太
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/073011(WO,A1)
【文献】 特開2008−027634(JP,A)
【文献】 特開2010−225545(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/117169(WO,A1)
【文献】 特開2010−160982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 2/16
H01G 11/26
H01G 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の少なくとも一方の面上に形成された活物質層の表面に保護層が形成された蓄電装置用電極であって、
前記保護層は、電気的絶縁性を有し平均粒径の異なる大粒子と小粒子とを主成分として構成され、前記小粒子の粒径(A)と前記大粒子の粒径(B)との比(A/B)が1/3〜1/10であり、
前記大粒子は平均粒径D50が3〜5μmであり、前記小粒子は平均粒径D50が0.5〜1μmであり、
前記大粒子の平均粒径は、前記活物質層を構成する粒子状の活物質の平均粒径よりも小さく、
前記大粒子は、前記活物質層の表面において隣り合う前記活物質の間に入り込んでおり、前記小粒子は、前記大粒子及び前記大粒子で覆われなかった活物質層の表面を覆うように堆積して、小粒子の層が形成されていることを特徴とする蓄電装置用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置用電極に係り、詳しくは集電体に形成された活物質層の表面が保護層で覆われた蓄電装置用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電極として、図3に示すように、集電体(金属箔)50と、集電体50上に形成された活物質層52と、活物質層52上に形成された保護層54とを備え、保護層54は、有機粒子と無機粒子とを含有し、有機粒子及び無機粒子の平均粒径D50がいずれも0.10〜4.0μmであるリチウムイオン二次電池用電極が提案されている。有機粒子は溶融温度が100〜200℃であり、保護層54における有機粒子の含有量と無機粒子の含有量との比が質量比で1:1〜1:4である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−225545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活物質層を保護する保護層54は、なるべく薄くすることが望まれる。保護層54を薄くする方法として、保護層54を構成する粒子の粒径を小さくすることが考えられる。ところで、電極の活物質層52の表面に保護層54が一体に形成された構成では、保護層54を構成する粒子の粒径が活物質の粒径に比べて小さすぎる場合、保護層54を薄くすると、図4に模式的に示すように、保護層54の一部に凹部56が生じる。凹部56は、活物質層52が露出したり、保護層54の厚さが極端に薄い状態となったりした箇所である。そのため、凹部56が生じると、蓄電装置の使用時に凹部56に電流が集中して蓄電装置の性能が低下したり、蓄電装置の寿命が短くなったりする。
【0005】
特許文献1では、保護層54を構成する粒子の粒径と、活物質の粒径との関係に関しては記載がない。しかし、例えばリチウムイオン二次電池では、活物質の粒径は20μm程度で小さくても10μm程度である。また、保護層は表面の凹凸ができるだけ小さい方が望ましく、凹凸を小さくするには保護層を構成する粒子の粒径を小さくする必要がある。そのため、特許文献1のように、保護層を構成する粒子として、粒径が0.10〜4.0μmの粒子使用して保護層を薄く形成した場合は、凹部が少なく、かつ凹凸が小さな状態の保護層を形成することが難しい。
【0006】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、電極を構成する活物質層上に電気的絶縁性粒子を主成分とする保護層を薄く設けても、保護層の凹部の発生を抑制することができ、蓄電装置の性能低下を防止することができる蓄電装置用電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する蓄電装置用電極は、集電体の少なくとも一方の面上に形成された活物質層の表面に保護層が形成された蓄電装置用電極であって、前記保護層は、電気的絶縁性を有し平均粒径の異なる大粒子と小粒子とを主成分として構成され、前記小粒子の粒径(A)と前記大粒子の粒径(B)との比(A/B)が1/3〜1/10であり、前記大粒子は平均粒径D50が3〜5μmであり、前記小粒子は平均粒径D50が0.5〜1μmであり、前記大粒子の平均粒径は、前記活物質層を構成する粒子状の活物質の平均粒径よりも小さく、前記大粒子は、前記活物質層の表面において隣り合う前記活物質の間に入り込んでおり、前記小粒子は、前記大粒子及び前記大粒子で覆われなかった活物質層の表面を覆うように堆積して、小粒子の層が形成されている。ここで、「大粒子と小粒子とを主成分として」とは、大粒子と小粒子の他に、例えば、バインダ等を含むことを意味する。
【0008】
この構成によれば、大粒子が活物質層の表面における活物質の隙間を効率良く埋め、その表面を小粒子が覆うことにより、保護層の表面は小粒子で形成された状態となる。小粒子の粒径が小さすぎると表面エネルギーが大きくなるために2次凝集体を形成して粒径が大きくなってしまう。しかし、小粒子の粒径(A)と大粒子の粒径(B)との比(A/B)を1/3〜1/10とすることにより、小粒子が2次凝集体を形成し難く、保護層の表面は2次凝集体のない小粒子で構成される状態となる。したがって、電極を構成する活物質層上に電気的絶縁性粒子を主成分とする保護層を薄く設けても、保護層の凹部の発生を抑制することができ、蓄電装置の性能低下を防止することができる。
【0009】
また、小粒子が2次凝集体を形成することが無く、保護層の表面がより平坦になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電極を構成する活物質層上に電気的絶縁性粒子を主成分とする保護層を薄く設けても、保護層の凹部の発生を抑制することができ、蓄電装置の性能低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は一実施形態の電極を幅方向に切断した断面図、(b)は保護層と活物質層の部分拡大模式図。
図2】電極の製造工程の一部を示す概略図。
図3】従来技術の電極の模式断面図。
図4】保護層を構成する粒子の粒径が小さすぎる場合の保護層の部分模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を蓄電装置用電極としてのリチウムイオン二次電池用の帯状電極に具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、帯状電極10は、集電体としての金属箔11と、金属箔11の少なくとも一方の面上に形成された活物質層12と、活物質層12上に形成された保護層13とを備えている。活物質層12は、帯状電極10の幅方向両側に活物質合剤非塗布部14が存在するように金属箔11上に形成されている。なお、この実施形態では、活物質層12は、金属箔11の両面上に形成されている。
【0013】
活物質層12及び保護層13を模式的に示すと、図1(b)に示すように、活物質層12は、多数の粒子状の活物質15が充填された状態で構成されている。活物質15は、平均粒径が20μm程度である。
【0014】
保護層13は、電気的絶縁性を有し平均粒径の異なる小粒子16と大粒子17とで構成されている。小粒子16及び大粒子17はセラミック粒子で構成されている。大粒子17の粒径は保護層13の厚さ以下で、かつ活物質層12の表面に存在する隣り合う活物質15の隙間を効率良く埋める大きさに設定されている。例えば、保護層13は、膜厚が5μmに形成され、大粒子17は平均粒径D50が3〜5μmに形成されている。そして、模式的には、大粒子17は活物質層12の表面に存在する隣り合う活物質15の隙間に1個ずつ入った状態で1層を構成している。即ち、大粒子17同士は互いに接触せずに配置されている。
【0015】
小粒子16は、活物質15及び大粒子17を覆う状態で、保護層13の表面の凹凸が小さくなる粒径に設定されている。保護層13の表面は小粒子16のみで構成されている。小粒子16は平均粒径D50が0.5〜1μmに形成されている。即ち、小粒子16の粒径Aと大粒子17の粒径Bとの比A/Bが1/3〜1/10に設定されている。
【0016】
なお、図1(b)では、活物質層12、保護層13、活物質15、小粒子16、大粒子17の関係を分かり易く図示するため、活物質15、小粒子16及び大粒子17の粒径の比は正確には図示していない。
【0017】
帯状電極10の活物質層12を覆う保護層13は、できるだけ薄くかつ平坦なことが望ましい。保護層13が平坦になるには小粒子16の粒径が小さい必要がある。しかし、小粒子16の粒径が小さすぎると表面エネルギーが大きくなるために、2次凝集体を形成して粒径が大きくなってしまう。また、隙間なく平坦な塗膜を形成するには、小粒子16が大粒子17の1/10の大きさで十分であり、小粒子16をそれより小さく必要はない。そして、小粒子16の粒径Aと大粒子17の粒径Bとの比A/Bが1/3〜1/10に設定されているため、2次凝集体を形成し難く、隙間なく平坦な塗膜を形成することができる。
【0018】
次に前記のように構成された帯状電極10の製造方法を説明する。
帯状電極10の製造方法は、先ず金属箔11上に活物質層12が形成された帯状の金属箔11を形成した後、その金属箔11に保護層13を形成する。活物質層12の形成は公知の方法で実施できるため、活物質層12が形成された帯状の金属箔11に対して保護層13を形成する方法について説明する。
【0019】
図2に示すように、保護層形成工程においては、両面に活物質層12(図示せず)を有する帯状の金属箔11が供給リール20から繰り出され、ダンサーロール21a及びガイドロール22aを経て保護層形成材料供給用のスリットダイ23と対向する位置に案内される。そして、スリットダイ23から吐出されるスラリー状の保護層形成材料24が金属箔11の一方の面の活物質層12上に塗布された後、水平に移動し、乾燥装置25を通過して保護層形成材料24がある程度乾燥されて保護層13が形成される。その後、ガイドロール22b及びダンサーロール21bを経て巻取リール27に巻取られる。なお、保護層形成材料24は、小粒子16及び大粒子17がバインダを含む溶液に分散されたスラリーで構成されている。
【0020】
次に一方の面の活物質層12上に保護層13が形成された金属箔11が巻き取られた巻取リール27を供給リール20として使用して、前述と同様にその金属箔11の他方の面の活物質層12上に保護層13が形成されて帯状電極10が完成する。
【0021】
スラリー状態の保護層形成材料24が活物質層12上に塗布された状態で、金属箔11が水平に移動する間に、溶媒が揮発するとともに小粒子16及び大粒子17は活物質層12に向かって沈降するが、小粒子16は大粒子17に比べて沈降し難く、大粒子17が先に活物質層12の表面に到達する。保護層形成材料24中の大粒子17の量は、大粒子17が活物質15の間に入った状態で1層を形成する量に設定されているため、大部分の大粒子17は、図1(b)に示すように、活物質15の間に入り込んだ状態となる。そして、小粒子16が大粒子17及び大粒子17で覆われなかった活物質層12の表面を覆うように堆積して小粒子16の層が形成される。そのため、保護層13の表面は、小粒子16により凹凸の少ない状態に形成される。
【0022】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)蓄電装置用電極(帯状電極10)は、集電体(金属箔11)の少なくとも一方の面上に形成された活物質層12の表面に保護層13が形成された蓄電装置用電極であって、保護層13は、電気的絶縁性を有し平均粒径の異なる大粒子17と小粒子16とを主成分として構成され、小粒子16の粒径Aと大粒子17の粒径Bとの比A/Bが1/3〜1/10である。したがって、電極を構成する活物質層12上に電気的絶縁性粒子を主成分とする保護層13を薄く設けても、保護層13の凹部の発生を抑制することができ、蓄電装置の性能低下を防止することができる。
【0023】
(2)大粒子17は平均粒径D50が3〜5μmであり、小粒子16は平均粒径D50が0.5〜1μmである。この構成によれば、小粒子16が2次凝集体を形成することが無く、保護層13の表面がより平坦になる。
【0024】
(3)大粒子17の粒径は保護層13の厚さ以下で、かつ活物質層12の表面に存在する隣り合う活物質15の隙間を効率良く埋める大きさに設定されている。したがって、大粒子17の粒径が保護層13の厚さより大きな場合に比べて、保護層13の表面の凹凸を小さくすることができる。
【0025】
(4)保護層13の表面は小粒子16のみで構成されている。したがって、保護層13の表面を小粒子16及び大粒子17が混在する状態で構成する場合に比べて、保護層形成材料24を構成する小粒子16と大粒子17との混合割合の自由度が高くなる。
【0026】
(5)活物質層12の上に保護層13を形成する場合、粒径比及び粒径が所定の関係を有する小粒子16及び大粒子17を所定の割合で含むスラリー状の保護層形成材料24を、水平に移動する金属箔11上の活物質層12上に塗布する。この構成によれば、保護層用の粒子として大粒子17のみを含む保護層形成材料と、保護層用の粒子として小粒子16のみを含む保護層形成材料とを2回に分けて塗布する必要が無く、塗布工程が簡単になるとともに保護層13の製造に要する時間の短縮を図ることができる。
【0027】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 保護層13は、電気的絶縁性を有し平均粒径の異なる大粒子17と小粒子16とを主成分として構成され、小粒子16の粒径Aと大粒子17の粒径Bとの比A/Bが1/3〜第1/10であればよく、保護層13の表面が小粒子16だけで形成されずに、小粒子16と大粒子17とで形成されていてもよい。
【0028】
○ 蓄電装置用電極(帯状電極10)は、負極及び正極のいずれであってもよい。正極の場合、活物質15の粒径は負極の場合に比べて、一般的に小さくなる。
○ 蓄電装置用電極(帯状電極10)は、集電体(金属箔11)の片面に活物質層12及び保護層13が形成された構成であってもよい。
【0029】
○ 蓄電装置用電極は、帯状電極10に限らず、積層型の電極組立体に使用される電極であってもよい。
○ 蓄電装置は、リチウムイオン二次電池に限らず、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のようなキャパシタであってもよい。
【0030】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記大粒子は、平均粒径が前記保護層の膜厚以下である。
【0031】
(2)集電体の少なくとも一方の面上に形成された活物質層の表面に保護層が形成された蓄電装置用電極の製造方法であって、前記活物質層が形成された前記集電体に対して前記保護層を形成する保護層形成工程において、電気的絶縁性を有しかつ平均粒径が異なり、粒径比が1/3〜1/10となる小粒子と大粒子とを含むスラリー状の保護層形成材料を、水平に移動する前記集電体上に塗布する蓄電装置用電極の製造方法。
【符号の説明】
【0032】
A…小粒子の粒径、B…大粒子の粒径、11…集電体としての金属箔、12…活物質層、13…保護層、16…小粒子、17…大粒子。
図1
図2
図3
図4