(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
三相変調方式適用時の三角波キャリア信号の周波数が、二相変調方式適用時の三角波キャリア信号の周波数の1/√2倍であることを特徴とする請求項2記載のインバータの制御方法。
三相変調方式適用時の三角波キャリア信号の周波数が、二相変調方式適用時の三角波キャリア信号の周波数の1/2倍であることを特徴とする請求項2記載のインバータの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の内容を記述する前に、まず基本となる従来技術例として可変速駆動装置のV/F制御方式について記載しておく。
【0015】
各種の座標系は
図2のように定義する。主回路の三相交流出力における各相をU相,V相,W相とし、U相を基準とする固定座標系の二軸座標をαβ座標、また、角周波数指令ω
*を積分した位相角θと同期した回転座標系の二軸座標をdq座標とする。ここで、回転座標の初期位相は、時刻t=0のときにα軸とd軸が一致するものとする。
【0016】
PWM制御により、主回路の出力である相電圧は、V
p=+V
dc/2とV
n=−V
dc/2の2値のレベルが時分割で出力され、それが三相分あるので三相電圧の組み合わせとしては合計8種類のPWMパターンの状態が存在する。以降では、
図11のようなαβ座標上で表した8種類の電圧ベクトルを定義して、PWMパターンの代わりにこれと等価な電圧ベクトルとして表現することにする。
【0017】
図1は、一般的な「V/F制御」と呼ばれる制御方式の制御ブロック図である。ここでは、原理が分かりやすいように連続形(アナログ系)の例で示しており、下記に構成要素を列記する。
【0018】
(1) 二軸電圧指令演算部1
入力指令は回転速度に相当する角周波数指令ω
*であり、二軸電圧指令演算部1において、角周波数指令ω
*にほぼ比例した電圧振幅成分|V
*|と任意の位相角成分ψ
vより二軸電圧指令V
d*,V
q*を生成する。これは、
図2で定義した回転座標系(dq座標)の二軸成分である。このように、角周波数と電圧をほぼ比例させた制御方式をV/F制御と呼んでいる。
【0019】
(2)キャリア発生部 2
PWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wを生成するために必要な三角波キャリア信号Cryを発生する。これは、
図3のようなキャリア周波数指令f
*cを周波数とし、振幅を±1とする三角波の信号とする。そして、三角波キャリア信号Cryの頂点時刻を後述する離散系のサンプルタイミングS
smplに設定し、三角波キャリア信号のUp/Down状態はキャリアUP/Down信号S
updwで出力する。
【0020】
(3) 相電圧指令生成部3
回転座標系の二軸電圧指令V
d*,V
q*に対して、回転座標変換(P
-1)してαβ座標の電圧成分に変換し、さらに、二相/三相変換(C
-1)して三相正弦波の交流電圧指令(以下、三相電圧指令と称する)V’
u,V’
v,V’
wに変換する。この三相電圧指令V’
u,V’
v,V’
wは、さらに三次高調波を含む零相成分を同じ量だけ三相に加算するという「零相電圧補正(以下、零相変調と称する)」を適用して、新たな電圧指令V
u,V
v,V
wに変換している。
【0021】
(4) PWM比較器4
サンプルホールド回路通過後の電圧指令V
u_pwm,V
v_pwm,V
w_pwmと三角波キャリア信号Cryの大小比較を行って、各相の電圧指令と等価なPWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wを生成する。ここで、
図4に示すように、電圧指令を直流リンク電圧V
dc相当に正規化したのちに三角波キャリア信号Cryと比較してPWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wに変換している.
(5) デッドタイム生成/ゲート駆動部5
ここでは、PWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wを各スイッチング素子をオンオフ制御するためのゲート信号g
_u,g
_v,g
_w,g
_x,g
_y,g
_zに変換する。ここで、上下アームのスイッチング素子が同時にONしないように、これらのゲート信号にデッドタイムが挿入される。
【0022】
(6) 主回路部6
実際に出力するPWM電圧を生成するインバータ回路部であり、ここでは、
図1に示すような、三相の6アームブリッジ回路を使用している。
【0023】
相電圧指令生成部3では、次のような演算を行っている。
【0024】
図2に、三相交流軸(u,v,w)と固定座標系の直交二軸座標(α−β軸)および回転座標系の直交二軸座標(d−q)の関係を示す。電圧指令は振幅が|V
*|およびd軸からみた位相角がψ
V、そして角周波数指令ω
*(電気角周波数)として与えられるものとする。この電圧指令は以下の(1)式により回転座標系の二軸電圧指令v
d*,v
q*として表すことができる。さらに、以下の(2)式のように角周波数指令ω
*を積分して得られる位相θを用いて、(3)式の回転座標変換を適用すれば固定座標系の二軸成分となり、さらに、(4)式の二相三相変換を適用すれば三相電圧指令v
u’,v
v’,v
w’に変換できる。
【0026】
dq軸成分の二軸電圧指令の(1)式に対して、回転座標変換の(3)式と二相三相変換の(4)式を適用すれば交流成分の三相電圧指令v
u’,v
v’,v
w’に変換できる。
【0028】
ここで、(3)式と(4)式に使用した三相成分から二軸座標系への変換行列Cと、その逆変換行列C
-1は、以下の(5)式となる。
【0030】
二軸座標系において、固定座標系から回転座標系に変換する変換行列Pと、その逆行列P
-1は、以下の(6)式となる。
【0032】
(4)式の三相電圧指令v
u’,v
v’,v
w’は対称な正弦波成分になるが、現在のPWM方式では、一般的に[零相変調]を適用することにより最大出力電圧を拡大させている。この零相変調の代表的な方式として、「三相変調」と「二相変調」がある。
【0033】
[三相変調]では、(4)式の三相成分から(7)式のように最大電圧v
maxと最小電圧v
minを選択し、(8)式のように、この 最大電圧v
maxと最小電圧v
minの中間値を零相変調の補正電圧V
ofs_3phとしている。そして、(9)式のように(4)式に零相変調の補正電圧V
ofs_3phを加算、つまり、三相電圧に対して同じ補正電圧V
ofs_3phを加算している。
【0035】
図5が「三相変調」を適用した例の波形チャートであり、零相変調の補正電圧V
ofs_3phは三角波状の形状になり、補正後の電圧指令V
u_pwm,V
v_pwm,V
w_pwmは、正弦波の最大値付近がへこんだ形状となり、補正後の三相成分の最大値と最小値の振幅は常に0レベルに対して正負対称な値になっていることが特徴である。
【0036】
もう一方の「二相変調」では、(7)式と(8)式の代わりに、(10)式と(11)式により零相変調の補正電圧V
ofs_2phを計算し、三相変調と同様に(12)式にて全相に対して補正を行う。
【0038】
図6が「二相変調」と呼ばれる零相変調を適用したときの波形例であり、補正後の三相の電圧指令V
u_pwm,V
v_pwm,V
w_pwm は、最大値が直流リンク電圧のP電位+Vdc/2に一致するPモード(Pmode)と、最小値が直流リンク電圧のN電位−V
dc/2に一致するNモード(Nmode)の2種類の期間が存在しており、この60degごとのモードの切り換えに応じて補正電圧V
ofs_2phも不連続な変化をしている。
【0039】
P電位またはN電位に電圧指令が一致している相では、三相の電圧指令V
u_pwm,V
v_pwm,V
w_pwmと三角波キャリア信号Cryの頂点とが同一レベルとなるため、その相ではPWMパルスが発生せずにスイッチングが休止する。これにより三相の各相では、この休止期間が一周期に対して1/6の期間が2回ずつ発生する。こうなると、キャリア周波数とパワー素子の動作周波数が一致しなくなるため、下記のような平均スイッチング周波数を新たに定義しておく。
【0040】
[ 平均スイッチング周波数の定義]
・各相の出力電位がP電位の場合を[Pモード],N電位の場合を「Nモード」と呼ぶことにする。
・同様に、三相変調つまり三相の最大値と最小値が等しい振幅になる場合を「Cモード」とする。
・スイッチング回数はL→H変化とH→L変化の2種類の組み合わせを1回(サイクル)とする。
・「各相の平均スイッチング周波数」は、基本波周期間におけるスイッチング回数を周期で除したものとする。
・相を指定しないで「平均スイッチング周波数」と呼ぶときには、三相分を平均したものとする。
【0041】
以上が、一般的な零相変調も考慮したPWMのための電圧指令の生成方法である。
【0042】
[1.PWMパターンによる電流リプル成分の差異と2相変調時の問題点]
従来技術の動作例として、「電圧指令と三角波キャリア信号」,「PWMパターン」そして、「抵抗とインダクタンスおよび起電力を直列に構成した負荷に流れる電流波形」の各成分を示したものが
図7,
図8,
図9である。
図7では、三相変調方式(f
c*=1.5kHz,平均スイッチング周波数が二相変調と等しくするため)を示し、
図8では二相変調方式(f
c*=3kHz,平均スイッチング周波数≒1.5kHz,三角波キャリア信号Cryの上頂点でP→Nモード,下頂点でN→Pモードに変化する制限を適用)を示し、
図9では二相変調方式(f
c*=3kHz,平均スイッチング周波数≒1.5kHz,三角波キャリア信号Cryの上頂点でN→Pモード,下頂点でP→Nモードに変化する制限を適用)を示している。ここでは、理想的なスイッチング素子であると仮定し、デッドタイムも挿入していない条件でシミュレーションしている。
【0043】
なお、
図8,
図9では説明をわかりやすくするために上記の制限を適用しているが、実際のインバータの動作ではこれらの制限がなく、三角波キャリア信号Cryの上頂点および下頂点でのモード切換が、それぞれ、N→PモードとP→Nモードの両方が混在する場合もある。
【0044】
この3種類の波形を比較すると、次のことが分かる。
(ア)三相変調と二相変調では三相交流の電流リプル成分はほぼ同等に見えるが、d軸とq軸成分に分離してみるとq軸の電流リプルIqについては三相変調の方が小さく、d軸の電流リプルIdについては二相変調の方が少ない。
(イ)二相変調では、
図8,
図9の(b)三相PWMパターンの点線部に示すように、モード切換時に幅の狭いPWMパルスが発生する。その時のq軸の電流リプル成分Iqは通常の半分になり、周期性が無くなるためキャリア周期分を平均すると短時間ではあるがリプル状の歪み(変移)が生じる。
(ウ)
図8と
図9では、三角波キャリア信号Cryの上下の頂点とモードの変化方向の組み合わせを制限してある。これにより二相変調におけるモード切換時のq軸の電流リプルIqのオフセット成分の変移方向は条件により差異があり、この制限を設定しないと不規則な方向に変移する。
【0045】
このように二相変調を適用するとモード切換時に短時間だが負荷電流に外乱が発生する。さらに
図8と
図9では、二相変調のモード切換方向と三角波キャリア信号Cryの上下の頂点との組み合わせにより、q軸の電流Iqのひずみの変移方向が異なっている。そのため、このモードの発生条件を適切に制御しないと、変移方向が不確定となってしまう。
【0046】
また、この電流を制御系がどのように認識するかを示すために
図7〜
図9の(d)には、「キャリア同期サンプル方式」を適用した場合の電流波形を頂点タイミングS
smplでサンプルホールドしたサンプル波形i
u_smpl,i
v_smpl,i
w_smplも示してある。電流波形と重なると区別しにくいため、サンプル波形i
u_smpl,i
v_smpl,i
w_smplを下方向にオフセットを加えて描いている。このサンプル波形i
u_smpl,i
v_smpl,i
w_smplには、上記のモード切換時に生じるq軸の 電流リプルIqのオフセット成分は現れていない。この電流外乱が検出することができなければ制御で補正することもできない。
【0047】
この成分を検出して補正するためには、キャリア同期サンプル方式よりも、もっと高速なサンプルやA/D変換などが必要性になる。このようにキャリア周期程度の短時間で、かつ、PWM制御による電流リプル幅よりも少ない成分ではあるが、電流外乱が不確定な方向に発生すること、および、それを簡単には検出できないことが課題といえる。
【0048】
本願 発明において改善したい内容は、この二相変調方式のモード切換時に発生する際に生じる電流リプルの変移成分を抑制することである。
【0049】
[2.PWMパターン生成方法の定義]
ここでは、モード切換時に電流リプルがこのような挙動をする原因を説明する。三相の電圧指令V
u_pwm,V
v_pwm,V
w_pwmや三角波キャリア信号CryおよびPWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wについて
図10および下記に示すような記号や変数を定義する。以降の説明では、電圧指令の位相が
図11のV
4からV
6方向の30°までの区間に存在する例とする。他の位相でも相順や正負の極性を入れ換えれば等価になるので、これを代表例として示しておく。
【0050】
Cry:三角波キャリア信号
DOWN期間:三角波キャリア信号が負方向に変化する期間
UP期間:三角波キャリア信号が正方向に変化する期間
t
(n),t
(m),t
(n+1),t
(m+1):三角波キャリア信号Cryの頂点の時刻であり、離散系で構成した制御のサンプル(更新)タイミングである。キャリア周期に二回発生するため、上頂点をn,下頂点をmとし、次の周期では(n+1)および(m+1)のように数値を加算することにより周期を区別している。
【0051】
v
u_pwm(n),v
v_pwm(n),v
w_pwm(n):PWM比較器4において、三角波キャリア信号Cryと比較する三相電圧指令であり、t
(n),t
(m),t
(n+1),t
(m+1)の各時刻でサンプルし、次のサンプル時刻まで保持する。例えば、t
(n)でサンプルした電圧指令は、t
(m)のサンプルで更新されるタイミングまでは保持する。そこで、サンプルホールドされた電圧指令v
u_pwm(n)のようにサンプルタイミングの記号を付加して区別する。
【0052】
θ
v(n),θ
v(m),θ
v(n+1),θ
v(m+1):各サンプル時刻の電圧指令V
u_PWM,V
v_PWM,V
w_PWMを固定座標系の電圧ベクトルと表現した場合の位相角をθ
vとする。そして、時間を区別するためにサンプルタイミングの記号を付加している。これは回転座標系の基準位相θ(t(n))と回転座標基準からみた電圧ベクトルの位相ψ
v(t(n))の合成位相θ
v(n)=θ(t(n))+ψ
vに相当する.
t
u(n),t
v(n),t
w(n):電圧指令v
u_pwm(n),v
v_pwm(n),v
w_pwm(n)と三角波キャリア信号Cryとの交点の時刻である。u,v,wは電圧指令の相を、n,m,(n+1),(m+1)はその電圧指令がサンプルされたタイミングを示す。
【0053】
pwm
u,pwm
v,pwm
w:各相の電圧指令v
u_pwm(n),v
v_pwm(n),v
w_pwm(n)と三角波キャリア信号Cryとの大小比較の結果のPWMパターンである。各相のPWMパターンは、時刻t
a(n),t
b(n),t
c(n)においてpwm
u,pwm
v,pwm
wに変化する。このPWMパターンは
図11のように8種類存在する。
【0054】
このPWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wは、v
u_pwm(n)>Cryの期間は“H”を、v
u_pwm(n)<Cryの期間は“L”を出力する。“H”の場合には上アームの素子がONつまり直流電源のP電位(+V
dc/2)が出力され、“L”の場合には下アームの素子がONして直流電源のN電位(−V
dc/2)が出力される。
【0055】
T
0(n),T
λ(n),T
μ(n),T
7(n):t
(n)からt
(m)というキャリア半周期を考えると、この間に3回のスイッチング時刻(t
a(n),t
b(n),t
c(n))が生じ、この時刻で区切られた4個の期間(出力時間)に区分できる。この出力時間の時間幅を発生順にT
0(n),T
λ(n),T
μ(n),T
7(n)とする。この電圧指令および三角波キャリア信号CryとPWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wの関係を表1に示しておく。PWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wは
図11のように8種類存在するが、キャリア半周期間に発生するPWM状態は表1のように4種類に限定され、かつ、その発生順序も決まる。電圧指令の位相角が
図11のようにV4〜V6の間に存在する場合には、V
λ=V
4,V
μ=V
6となる。
【0056】
この出力時間T
0(n),T
λ(n),T
μ(n),T
7(n)の添字記号(0,λ,μ,7)の順番は三角波キャリア信号CryがDOWN期間の場合であり、三角波キャリア信号CryがUP期間ではPWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wの発生順序が逆になるため、逆の(7,μ,λ,0)の順序になる。PWMパターンはDOWN期間とUP期間のどちら場合でも、μとλの記号がついた期間では同じ電圧ベクトルを出力する。
【0058】
[ 3.PWMパターンによる電流ベクトル軌跡と電流リプル成分]
2項[PWMパターン生成方法の定義]では電圧指令v
u_pwm(n),v
v_pwm(n),v
w_pwm(n)と三角波キャリア信号Cryを比較して生成されるPWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wの電圧ベクトルと出力時間幅を定義した。次に、このPWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wによりどのような電流リプルが生じるか説明し、これを利用して2相変調の課題であるモード切換時の電流外乱成分の発生原理を説明する。
【0059】
(固定座標系での電流リプル成分)
PWM電圧が供給される負荷の一例として同期電動機を選定すると、固定座標系の直交二軸座標系(αβ座標)で現した電圧電流方程式は(13)式となる。
【0061】
電圧指令[v
*α v
*β]が与えられると、これと等価なPWMパターンpwm
u,pwm
v,pwm
wとして複数の電圧ベクトルV
0,V
λ,V
μ,V
7に時分割してする。このV
0,V
λ,V
μ,V
7の順で変化する電圧ベクトルを固定座標上の電圧ベクトル成分[v
α(t) v
β(t)]
Tという時間変化する一般的な変数として表すことにする。ここで時間によって変化する変数には“(t)”を付記して明示する。
【0062】
次に、キャリア周波数f
cが角周波数指令ω
*よりも十分に高く、サンプル期間に回転する位相角の変位量θ
v(n)→θ
v(m)は小さいので無視できるものと仮定する。さらに、RとLとによる逆起電力は同期機の速度起電力[e
α(t) e
β(t)]
Tよりも小さいものと仮定して、速度起電力[e
α(t) e
β(t)]
Tは電圧指令と等しいものと近似する。この近似は、(14)式のように置き換えられることを意味している。この近似は少し誤差が大きいが、電流リプル特性を説明することが目的であるため、 この簡略化を適用して取り扱うことにした。
【0064】
(14)式の近似を(13)式に適用し、そして微分項を左辺に移動すると、(15)式のような状態方程式に変換できる。
【0066】
さらに、抵抗Rの電圧降下成分も小さいものとして無視すると、電流リプル微分変化量は(16)式のようにPWM電圧[v
α(t) v
β(t)]
Tと速度起電力[e
α(t) e
β(t)]
Tとの差分ベクトルに比例し、これを積分系に変換すると(17)式のような初期値と簡単な積分演算に近似できる。
【0068】
そして、(17)式から初期電流ベクトル[i
α i
β]
Tを除いたものである(18)式の[i
α0 i
β0]
Tを以降では「電流リプルのべ クトル軌跡」または「電流リプル」と呼ぶことにする。「初期電流ベクトルを除く」ことは電流波形から基本波成分を差し引いて、高周波リプル成分だけ抽出することを意味する。
【0070】
ここでは、同期機を例に取って説明しているが、起電力成分を一定と近似さえできれば誘導機や系統連携機器などでも同様に取り扱うことができることは明らかである。
【0071】
(18)式のPWM電圧[v
α(t) v
β(t)]
Tは前述した出力電圧指令[v
*α(t) v
*β(t)]
Tと等価なPWMパターンのことであり、4種類の電圧ベクトルV
0,V
λ,V
μ,V
7を出力時間T
0,T
λ,T
μ,T
7にて時分割して出力する。したがって、(18)式の右辺の電位差も4個の区間に分離でき、各区間内では電流リプルの微分変化量は一定であると近似する。
【0072】
これを(17)式のように積分すると電流リプルは4本の直線から構成される電流リプルのベクトル軌跡になる。具体的にキャリア周期に生じる電流リプルのベクトル軌跡の例を示したものが表2である。
【0074】
左欄より電圧指令のサンプル時刻,PWMパターンが出力する4種類の電圧ベクトル,この電圧ベクトルの出力時間に変化する電流ベクトルの変化量(電流リプルのベクトル軌跡)と、そして電流ベクトルの初期値をi
n=0として積分したPWMリプル成分である。表2の上半分はDOWN期間の半周期を示しており、この期間では電流リプルのベクトル軌跡はΔi
0(n),Δi
λ(n),Δi
μ(n),Δi
7(n)の4個の電流ベクトル成分を順に連結した軌跡となり、初期値がi
n=0,連結点(電流ベクトルの変化点)がi
na,i
nb,i
nc,そして終点がI
mのベクトル成分となる。
【0075】
同様に表2の下半分は、三角波キャリア信号CryがUP期間の半周期に生じる電流リプルのベクトル軌跡が継続して、Δi
7(m),Δi
μ(m),Δi
λ(m),Δi
0(m)の順番に発生することを示している。
【0076】
この表2の電流リプルのベクトル軌跡を図示したものが、
図13と
図14である。これらは、
図12のように電圧指令の位相角が0°<θ
v<30°の例で、かつ、三相変調を適用したものが
図13であり、二相変調を適用したものが
図14である。
【0077】
図12の電圧指令は、V
4=V
λとV
6=V
μおよびV
0,V
7の4種類の電圧を時分割して出力するものであり、(18)式の電位差成分は(V
0−e
0)=(V
7−e
0)=−e
0と(V
λ−e
0)および(V
μ―e
0)の3種類の成分となる。
【0078】
この電位差成分と出力期間T
0(n),T
λ(n),T
μ(n),T
7(n)より、三相変調の三角波キャリア信号CryのDOWN期間では表2のようにΔi
0(n),Δi
λ(n),Δi
μ(n),Δi
7(n)の4個の電流ベクトルの変化が順番に発生する。また、三角波キャリア信号CryのUP期間ではΔi
7(m),Δi
μ(m),Δi
λ(m),Δi
0(m)の順番に発生する。
【0079】
三角波キャリア信号CryのDOWN期間もUP期間も電圧指令が等しければ、Δi
μ(n)=Δi
μ(m)とΔi
λ(n)=Δi
λ(m)のように同じ電圧ベクトルによる電流変化量は等しくなる。さらに(14)式の近似を適用したため、詳細説明は省略するがこの8個の電流リプル成分を連結した電流リプルのベクトル軌跡の始点と終点は等しくなる。その結果、この
図13の電流リプルのベクトル軌跡は、平行四辺形となり2つのその対角対を結ぶ線分の交点(中間点)が始点と終点に相当する。これにより、始点と終点を仮の中心点O’とすると、変化点i
naとi
ma,i
nbとi
mb,i
ncとi
mcとはお互いに点対称な位置に存在する。
【0080】
2相変調、かつ、Nモードの場合には、電圧指令の最小相がN側の電位−V
dc/2と常に一致しているため、T
7(n)=0とT
7(m)=0のように零電圧ベクトルの片方の成分であるV
7電圧を出力する時間幅が零になりV
7はスキップされて出力しない。その代わりに、三相変調に比べるともう一方の零ベクトルであるV
0電圧の出力時間T
0(n),T
0(m)の方が2倍になる。
【0081】
この結果、電流リプルのベクトル軌跡は
図14のように、電流リプルのベクトル軌跡Δi
0(n)の長さが
図13の成分よりも2倍に拡大し、そのあとに
図13と同じ電流リプルのベクトル軌跡Δi
λ(n)とΔi
μ(n)が連結され、最後の電流リプルのベクトル軌跡はΔi
7(n)=0となる。したがって、この三角波キャリア信号CryのDOWN半周期の電流リプルのベクトル軌跡は
図13の三相変調と似た三角形になるが、始点と終点は三角形の頂点に位置するという違いが生じる。また、三角波キャリア信号CryのUP半周期の電流リプルのベクトル軌跡と三角波キャリア信号CryのDOWN半周期の電流リプルのベクトル軌跡とは、始点O’に対して点対称の配置となる。
【0082】
三相変調(
図13)の場合には2個の三角形状の軌跡が平行四辺形を形成するが二相変調(
図14)の場合には三角形の頂点に対して対象な配置になる。これが、二相変調のモード切り換え時にだけ生じる電流歪みの根本的な要因である。
【0083】
図12に対して、次のキャリア周期では電圧指令ベクトルの位相が進んで30°<θ
vの領域に達した場合を考え、
図14にこの次のキャリア周期の電流リプルのベクトル軌跡を追加したものが
図16である。次のキャリア半周期では二相変調のNモード→Pモードの切り換わりが起きているため、電圧ベクトル出力順序はV
μ(n+1)=V
6からV
λ(n+1)=V
4の順に入れ変わり、零電圧ベクトルの出力期間も三相変調の場合に比較してΔi
0(n+1)=0、および、Δi
7(n+1)が2倍になる。
【0084】
したがって、
図14ですでに示しているNモードの電流リプルのベクトル軌跡を実線の2個の三角形で描き、それに続くPモードのキャリア周期における電流リプルのベクトル軌跡を破線で示すと、Pモードの電流リプルのベクトル軌跡と線対称な2個の三角形状の軌跡になる。
図17はこれを拡大して 描いたものであり、1〜4の順で4個の三角形状の電流リプルが発生することを示している。キャリア半周期分である1と2の各辺は同じ成分で構成されているため、幾何学的な平均がこのキャリア周期の平均値となる。したがって、2個の三角形が点対称であるため、始点O’が平均値になる。そのため、u,v,w相の電流リプルについても点対称な波形になる。
【0085】
しかしながら、キャリア半周期遅れた2と3によるキャリア周期においては、電流リプルの平均値は始点O’に一致しなくなり、つまり、この区間では電流リプル成分に変移が生じることになる。その次の3と4による期間ではまた対称性が復活して始点O’が平均値になる。そのため、モード切換時にだけ電流リプルの平均値の変移が発生することになる。
【0086】
同様に、今度は電圧指令P→Nモードヘの遷移について描いたものが
図18である。Pモードの電流リプルのベクトル軌跡を実線の2個の三角形で描き、それに続くNモードのキャリア周期における電流リプルのベクトル軌跡を破線で示している。
【0087】
今度は三角波キャリア信号CryのUP期間から始まっているため、1の三角形から始めているが、やはり、同様に1と2および3と4の組み合わせは点対称であるため、平均値は始点O’に一致するが、2と3を組み合わせた場合の平均値は始点O’から変移が発生する。
【0088】
また、この
図18の2と3を組み合わせた場合の平均値の変移の発生方向は始点O’から左方向であり、
図17の発生方向(右方向)とは逆になっている。これが
図8と
図9のように三角波キャリア信号Cryの上頂点と下頂点およびP→Nモードの変化と逆の変化との組み合わせによってq軸電流の変移の方向が異なった理由である。
【0089】
以上のように、二相変調を適用した場合には、モード切換時のキャリア周期間では電流リプルのベクトル軌跡は点対称ではなく線対称になる。三相交流電流の波形にもこのキャリア半周期のリプル成分が点対称から線対称になるという違いが生じるため、正弦波に対して歪みが生じてしまったものである。
【0090】
以上が、2相変調における電流の歪み成分という問題点と、その発生要因である。
【0091】
[実施形態1]
まず、本願発明における実施形態1の基本原理について説明する。
【0092】
図17に示す電流リプルのベクトル軌跡に、本実施形態1を適用することにより、
図19のような電流リプルの挙動に変更させる。電流リプルのベクトル軌跡は三角波キャリア信号Cryの半周期単位で三角形状の軌跡を描くため、ここではこの「三角形状の電流リプルのベクトル軌跡」を省略して「軌跡」として表現する。
【0093】
図19の細い実線で示した三角形の軌跡1と軌跡2については、
図17と同じ成分である。この直後に2相変調のモード切り換えを行いたいが、このときに強制的にキャリア半周期分だけ三相変調を挿入すると太い実線で示したような軌跡3が発生する。それからモードが切り換わって2相変調に移行すると破線で示したような軌跡4と軌跡5が順に発生する。
【0094】
ここで、軌跡3は辺の中間点が初期値O’に一致する三角形であるため、
図19の「軌跡2と軌跡3」によるキャリア周期間の平均値は、
図17の「軌跡2と軌跡3」の平均値よりも初期値O’の点に近づけさせることができる。また、
図19の「軌跡3と軌跡4」の平均値も同様に
図17の軌跡2と軌跡3の平均値よりも初期値O’の点に近づけさせることができる。つまり、二相変調に三相変調の軌跡を挿入することにより、モード切り換え時の電流リプルの歪みを抑制することができる。これが実施形態1の原理である。
【0095】
以降にて、この実施形態1の原理を実現する方法について具体的に説明する。
【0096】
従来の二相変調の制御ブロック図を
図21に示す。これは,
図1の構成を離散系に変換して、さらに零相変調の部分に2相変調方式を適用したものである。離散系であるため、dq軸で与えられる二軸電圧指令v
d*,v
q*の入力信号および角周波数指令ω
*とキャリア周波数f
c*は、それぞれS10,S11,S12のサンプルホールド回路により更新される。このサンプルホールド回路S10,S11,S12はキャリア発生部2で生成したサンプルタイミング信号S
smplにより動作する。
【0097】
角周波数指令ω
*とキャリア半周期の時間成分1/(2f
c*)を乗算して電圧指令の位相進み角Δθ^を計算し、これを前回の電圧位相θに加算して電圧指令の位相θ^を更新する。この位相θ^は、次のサンプル周期までサンプルホールド回路S21によりθとして保持しておく。
【0098】
そして、dq軸で与えられる二軸電圧指令v
d*,v
q*が、この位相θ^を用いて逆回転座標変換されたのち、2相/3相変換により三相電圧指令V
*u,V
*v,V
*wに変換され、その次に零相変調制御部9により、二相変調方式の零相変調を適用する。二相変調では、電圧指令の三相交流のうち最大電圧成分を直流リンク電圧のP側電位に一致させるPモードと、最小電圧成分を直流リンク電圧へN側電位に一致させるNモードの2種類がある。
【0099】
そして、中間電圧指令の大きさに基づいて切換判定部15により、どちらか一方を選択して出力する。この機能を
図21中では、「P側変調部Pmode」でv
*2ph_Pを出力し、「N側変調部Nmode」でv
*2ph_Nを出力しておき、「mode選択」による切換判定部15のモード出力信号S
*PNと切換セレクタS
el_PNにより、2種類の零相変調出力から電圧指令を選択する例として示している。こうして、二相変調という零相変調補正が適用された結果の電圧指令v
u,v
v,v
wはサンプルホールド回路S20により、三角波キャリア信号Cryの頂点タイミングに同期してPWM比較器4への入力信号として更新される。
【0100】
三角波キャリア信号Cryについても、キャリア周波数指令f
c*のサンプルホールド回路S22によって三角波キャリア信号Cryの頂点のタイミングで更新することにより、三角波キャリア信号Cryと電圧指令v
u,v
v,v
wの更新タイミングを同期させている。このように、各成分の更新タイミングを揃えることにより、以降のPWM比較器4にて正確なPWMパターンPWM
u,PWM
v,PWM
wが生成できるようになる。
【0101】
この
図21に対して、実施形態1を適用したものが
図22である。
【0102】
これは、
図21に対して次のような機能を追加したものである。
【0103】
[実施形態1の追加機能]
(a)三相変調と二相変調の2種類の零相変調制御部9a,9bを設け、これらをセレクタS
el_23により選択する。この選択信号はS23であり、この機能は後述する「モード切換状態遷移16」により制御する。
【0104】
(b)二相変調内のモード選択出力信号S
*PNは
図21では切換セレククS
el_PNに入力していたが、
図22では切換要求信号として「モード切換状態遷移16」への入力に変更する。そして、(c)に示すような状態遷移処理により新しい切換信号S
PNを出力し、これにより切換セレクタS
el_PNを制御するように変更した。
【0105】
(c)「モード切換状態遷移16」には、切換判定部15のモード選択出力信号S
*PNだけでなく、三角波キャリア信号Cryが上頂点か下頂点かを判別するためのキャリアUp/Down信号も入力する。このキャリアUp/Down信号により、現在計算中の電圧指令がPWM比較器4に転送される更新タイミングにおいて、三角波キャリア信号Cryが上頂点と下頂点のどちらになっているかを予測できる。キャリアUp期間中であれば次の更新タイミングでは上頂点(Top)になり、キャリアDown期間中であれば次は下頂点(Bottom Btm)になると判断すればよい。
【0106】
実施形態1を適用することによる作用としては、
図19のようにモード切換時に三相変調の電流リプルのベクトル軌跡を挿入することにより、前述のようにモード切換時に発生する電流歪みを抑制することができる。しかし、単純に三相変調を挿入してしまうと
図24の7や3のようにパルス幅が狭くなる場合があるため、その条件の時にはモード切換をキャリア半周期だけ遅延させてTop/Bottomの条件が入れ換わるまで待ってからモード切換や三相変調の挿入を行うことにより、最小パルス幅の制限にかかりにくくする。
【0107】
上記の[モード切換状態遷移16]に関しては、その動作を
図24のようなタイムチャートを用いて説明する。
【0108】
図24のタイムチャートを状態遷移図で表したものが
図25であり、さらにこの状態遷移を論理表で表したものが表3である。ここで、
図22で示した制御ブロック図中の「モード切換状態遷移16」に入力される信号はキャリアUP/Down信号であるが、
図25や表3では
図24のタイムチャートとの整合性を考えてTop/Bottomに置き換えた。実際に実装する場合にはTop/BottomをUP/Down信号に置き換えればよい。
【0110】
図24のタイムチャートでは、2相変調のモード選択出力信号S
*PNが、“n”,“(m+1)”,“(m+3)”,“(n+6)”の更新タイミングにてPmodeとNmodeとに交互に切り換わっている。ここで、“n”と“(m+1)”のグループと、“(m+3)”と“(n+6)”のグループでは挙動が異なっている。
【0111】
“n”の三角波キャリア信号Cryが上頂点(Top)の時刻では、従来例ではNmodeからPmodeに切り換わっていたが、実施形態1を適用すると強制的に3相変調が挿入される。それにより、最大値であるu相のPWMパターンは8のパルス波形のように従来例では点線のような狭いパルス幅であったものが実線で示すように少し幅の広いパルスに変化する。また、三角波キャリア信号Cryが下頂点となっている次の時刻“m”でも、三相変調からPmodeに切り換わる際には、最小値であるw相のPWMパターンが2のように 、点線から実線のようにパルス幅が変化する。2の実線のパルス幅は点線のパルス幅より短くなっているが、8の実線のパルス幅と同程度のパルス幅を保っている。
【0112】
同様に時刻“(m+1)”のように三角波キャリア信号Cryが下頂点(Bottom)の時刻にてPmodeからNmodeに切り換わる際に強制的に3相変調に切り換えてしまっても最小値であるw相のPWMパターンは2のように点線から実線のように8の実線のパルス幅と同程度のパルス幅に変化する。また、そのキャリア半周期後の“(n+2)”において三相変調からNmodeに切り換わっても、最大値であるu相のPWMパターンも6のようにパルス幅が拡大するため、問題は生じない。
【0113】
パワー半導体素子にはスイッチング遅れなどの要因により最小パルス幅の限界があるが、これらの変化は最小パルス幅制限に対して余裕が増える方向であるので問題ない。
【0114】
ところが、三角波キャリア信号Cryの上/下頂点とモード切換方向の組み合わせが逆になると、パルス幅が狭くなる問題が生じる。三角波キャリア信号Cryが下頂点(Bottom)である時刻“(m+3)”のときにNmodeから三相変調に切り換わると、7の点線のように狭いパルス幅が発生してしまう。このままでは最小パルス幅の制限を満たせない可能性があるため、このBottomにてNmode→Pmode切換指令が生じた場合には、その指令自体を保留してキャリア半周期だけNmodeを継続させ、前述のようなパルス幅が狭くならない条件になってから三相変調を挿入してモード切換を行うことにする。
【0115】
動作タイミングがずれるが、パワー半導体素子の制約である最小パルス幅の制限が回避することを優先するものである。同様に時刻“(n+6)”にてキャリアTopのときにPmode→Nmodeへの切換指令についてもキャリア半周期分の保留を適用してPmodeを継続させ、次のBottomの時に三相変調を挿入してモード切換を行うことにする。
【0116】
このモード切換状態遷移16では、二相変調におけるモード切換時に三相変調を挿入するだけでなく、三角波キャリア信号CryのTop/Bottomの条件と(Nmode→Pmode)/(Pmode→Nmode)という切換方向との組み合わせによっては、必要に応じてキャリア半周期分だけモード切換の遅延を挿入して三相変調の挿入もその遅延後に動作するように制御する。
【0117】
これを、入力信号と状態遷移および出力信号の波形で示したものが、
図24の下段にある5本の信号である。モード切換状態遷移16は、三角波キャリア信号Cryの状態であるキャリアUP/Down信号S
updwとモード選択出力信号S
*PNがモード切換要求を入力とし、3段目のように3種類のモードを状態遷移する制御を適用し、三相変調と二相変調の選択信号S
23および二相変調内のモード選択出力信号S
PNを出力する。
【0118】
これを状態遷移で表したものが
図25であり、さらに制御を実装するために論理表として表すと表3のようになる。なお、
図25および表3の1と5の期間は、
図24には図示していない。
【0119】
実施形態1の効果を確認するために、シミュレーションして得られたタイムチャート例を
図26に示す。
【0120】
ここで、
図7,
図8,
図9と同じ条件とし、電圧指令の零相変調制御部9に対して実施形態1で示した追加機能を適用している。
【0121】
図26の波形を
図8や
図9と比較すると、点線で囲った部分のように三相変調が挿入されていることがわかる。そして、この時のPWMパターンPWMu,PWMv,PWMwの幅が狭くなっていないことも確認できる。このことは、本実施形態1を用いることでPWMパターンPWMu,PWMv,PWMwの最少パルス幅の確保が容易にできることを示しており、さらに、本発明の課題である二相変調のモード切換時の電流リプルの歪みの低減ができることを意味している。
【0122】
[実施形態2]
図19において、実施形態1を適用する前の軌跡2と軌跡4および挿入された軌跡3という3個の三角形の平均値は初期値O’には一致しない。そこで、軌跡2・軌跡3・軌跡4の3個の平均値を初期値O’に近づけるために
図20のように軌跡3の大きさを拡大する方法が考えられる。軌跡3の大きさを
図19に対して単純に2倍にすれば、この平面図上では幾何学的な平均値が初期値O’の点になる。
【0123】
しかし、実際にはこの電流ベクトルは時間的に移動しており、[電流軌跡と時間の積]という時間の重みを考慮した平均値を平衡させて、この重心を初期値O’に一致させたい。そのためには、
図20の軌跡3の大きさを
図19に対して1/√2倍に補正すればよい。このように実施形態1にて挿入した軌跡の大きさを拡大することが実施形態2の原理である。
【0124】
[実施形態2の追加機能]
(e)実施形態1に対して、さらに
図23のキャリア周波数補正演算部17を追加した構成である。このキャリア周波数補正演算部17は、二相変調の方のキャリア補正係数は1倍を設定し、もう一方の三相変調キャリア補正定数をk
fc3ph(例えば、1/√2倍)に設定する。そして、三相変調と二相変調の選択信号S
23に応じてキャリア補正係数を選択し、基準となるキャリア周波数指令f
c*に乗算して、最終的にキャリア発生部2に入力するキャリア周波数設定を補正する。この三相変調キャリア補正係数k
fc3phは(1/√2)などの値をとる。
【0125】
(f)上記のキャリア周波数が変更された場合には、電圧更新タイミングの時間間隔も変化する。そのため、基本波周波数の位相進み角△θもこれに対応させて補正しないと正確な周波数が出力できない。そこで、キャリア周波数補正後の補正周波数f
c’を正規化(1/2・fcを乗算)して、角周波数指令ω
*に乗算し、位相進み角Δθを計算し直し、前回の位相角θ
oに加算し直して次回の位相角θを修正し、これをサンプルホールド回路S21により次回まで保持する機能を追加した。
【0126】
また、実施形態2の作用は、三相変調が適用される際のキャリア周波数を例えば1/√2倍に低減させることにより、
図20のように、この期間の電流リプルのベクトル軌跡の大きさを拡大することである。これにより、モード切換時にP/C(三相変調)/Nの3つのキャリア半周期における電流リプルの平均値を平衡させる。ここで、サンプル信号は三角波キャリア信号Cryと同期させているため、キャリア周波数が変化すると離散系のサンプル間隔も変化してしまう。これに関しても位相進み角の補正演算を適用することにより、基本波周波数に対して影響を与えないようにしている。
【0127】
実施形態2の効果を確認するために、シミュレーションして得られたタイムチャートを
図27に示す。
【0128】
三相変調に対するキャリア周波数の補正係数はk
fc3ph=1/√2に設定している。
図28は効果を比較するために三相変調キャリア補正係数k
fc3ph=1/2に設定したものである。
図27と
図28ではキャリア周波数を低減させているため、破線で囲った部分の三角波キャリア信号Cryの傾きが緩やかになっており、頂点間の時間間隔も長くなっている。この図では解像度が低いのでパルス幅には差が無いように見えるが、実際にはキャリア周期が長くなった分だけ、
図26と比較してパルス幅は広くなっている。電流リプルを確認すると、
図27(k
fc3ph=1√2)ではd軸電流もq軸電流もほぼ均等な幅になっている。厳密には、d軸電流のリプルが下方向に少し伸びているが、両隣の電流リプルとの平均をとれば電流の歪みはキャンセルされて、平均的には零に近い値となっている。
【0129】
図28は、三相変調キャリア補正係数k
fc3ph=1/2と周波数低減量を大きくしたものであるが、三相変調部分のd軸電流リプルが下方向に伸びているこ とが分かる。一方で、q軸電流のリプル幅はほぼ一定になっている。つまり、出力トルクに影響を与えるq軸電流のリプル幅は一定になっているが、逆にd軸電流のリプル成分が短時間ではあるが電流リプル自体が大きくなってしまい、これが歪みとなっている。
【0130】
この波形比較から、
図27のk
fc3ph=1/√2の方が実用性が高いものと想定する。実施形態2にてk
fc3phを変 数として取り扱ったのは、用途に応じてk
fc3ph の値を選択できるように一般系として取り扱いたかったためである。もし、 トルクリプルを優先する場合には、k
fc3ph=1/2も採用できるように考慮したものである。