(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
像保持体と、前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を静電荷像現像用現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を含み、
前記転写手段は、請求項1に記載のベルト搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置10は、画像形成装置本体12を有し、この画像形成装置本体12内に像形成部14と、シート供給装置54とが設けられている。また、画像形成装置本体12の上部に画像形成がなされたシートが排出されるシート排出部15が設けられている。シート供給装置54によって、記録媒体としてのシートが像形成部14に供給される。
【0015】
図1に示す像形成部14は、カラー画像を形成する電子写真方式のもので、ブラックの現像剤を用いてブラック画像を形成する像形成部18Bと、イエローの現像剤を用いてイエロー画像を形成する像形成部18Yと、シアンの現像剤を用いてシアン画像を形成する像形成部18Cと、マゼンタの現像剤を用いてマゼンタ画像を形成する像形成部18Mとを有している。これらの画像形成部は、搬送部材として用いられるベルト46(以下、搬送ベルト46と称する場合がある)に沿って、シート搬送方向上流である重力方向下方から順に、像形成部18B、像形成部18Y、像形成部18C、像形成部18Mの順に配置されている。搬送ベルト46の詳細については、後述する。
【0016】
像形成部18B、18Y、18C、18Mは、形成する画像の色が異なるものの同じ構成であるので、以下、像形成部18として構成を説明する。各像形成部18は、像保持体として用いられる感光体22と、感光体22を帯電する帯電手段として用いられる帯電装置24と、感光体22に潜像を形成する潜像形成手段として用いられる光書き込み装置26と、感光体22に形成された潜像を現像剤で現像して、トナー像を形成する現像手段として用いられる現像装置28と、感光体22に形成されたトナー像をシート(記録媒体)に転写する転写手段として用いられる転写ユニット42の転写ロール50と、転写ロール50による転写がなされた後に、感光体22の表面に残留したトナー像を除去する現像剤除去手段として用いられるクリーニング装置30とを、それぞれが有している。光書き込み装置26は、例えばレーザー露光装置であり、レーザー光を発し各感光体22にそれぞれ静電潜像を書き込むようになっている。
【0017】
本実施形態では、像形成部18が有する部材のうち感光体22、帯電装置24、現像装置28及びクリーニング装置30は、色ごとに像形成構造体32として一体型となっており、画像形成装置本体12に着脱自在に装着されている。また、像形成構造体32には、現像装置28に供給される現像剤(トナー)を収容する現像剤収容器(交換ユニット)としてのトナーカートリッジ(トナーボトル)34と、クリーニング装置30により除去された現像剤(トナー)を回収する現像剤回収容器としての排トナーボトル36とが、像形成構造体32と一体に又は着脱自在に設けられている。
【0018】
本実施形態の転写ユニット42は、画像形成装置本体12から脱着自在に装着されており、転写ロール50B、50Y、50C、50Mと、駆動ロール44、従動ロール45、搬送ベルト46を備えるベルト搬送装置と、搬送ベルト46にシートを吸着させる吸着手段として用いられる吸着ロール48と、を有している。
【0019】
搬送ベルト46は、一方の面の外周面47及び他方の面の内周面49を備え、外周面47でシートを保持し、搬送する。
図1に示す搬送ベルト46は、例えば端部を有しない無端ベルト等である。外周面47には、吸着手段として用いられる吸着ロール48が圧接されている。吸着ロール48は、搬送ベルト46に電荷を注入し、搬送ベルト46を帯電させ、帯電した搬送ベルト46にシートを吸着させる。
【0020】
転写ユニット42では、搬送ベルト46の外周面47に保持されたシートに、感光体22B、22Y、22C、22Mの表面に形成されたトナー像が、それぞれ転写ロール50B、50Y、50C、50Mによって転写され、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のトナー像が重ねられたフルカラーのトナー像がシートに形成される。
【0021】
搬送ベルト46に対して、像形成構造体32Y、32M、32C、32Bが設けられている側と反対側には、清掃装置100が設けられている。清掃装置100は、搬送ベルト46の外周面47に付着した現像剤を除去し、搬送ベルト46を清掃するために用いられる。
【0022】
清掃装置100は、中空部が形成された筺体からなる清掃装置本体102を支持部材として有し、清掃装置本体102に、例えばクリーニングブレード等の清掃部材104と、除電フィルム106とが支持されている。清掃装置本体102内には、搬送ベルト46から除去された現像剤が回収される。
【0023】
清掃部材104は、例えば一端部が、搬送ベルト46の外周面47に接触していて、搬送ベルト46の外周面47から掻きとるようにして現像剤が除去される。除電フィルム106は、例えば一端部が搬送ベルト46に接触していて、搬送ベルト46及び搬送ベルト46に付着した現像剤の除電に用いられている。
【0024】
シート供給装置54は、シートを収容する収容容器56と、収容容器56に収容されたシートを像形成部14に向けて搬送する搬送ロール58と、シートを捌いて、シートの重送を防止する捌きロール59とを有している。
【0025】
画像形成装置本体12内の上部には、シートに転写された現像剤像をシートへと定着する定着装置52が設けられている。定着装置52は、加熱ロール52aと加圧ロール52bとを有し、加熱ロール52aと加圧ロール52bとの間を通過するシートを加熱及び加圧することで、シートに現像剤像が定着される。
【0026】
画像形成装置本体12内には、シート供給装置54から供給されたシートをシート排出部15まで搬送する搬送路60が設けられており、搬送路60に沿って、シート搬送方向上流側から順に、レジストロール62、転写ユニット42、定着装置52及び排出ロール40が配置されている。排出ロール40によって、定着装置52から搬送されたシートがシート排出部15へ排出される。
【0027】
図2は、
図1のA−A線におけるベルト搬送装置の構成の一例を示す模式断面図である。
図2に示すベルト搬送装置11は、回転駆動される搬送ベルト46、搬送ベルト46を回転可能に支持する複数の支持ロールとしての駆動ロール44及び従動ロール45を備えている。
図2の搬送ベルト46は、搬送ベルト46の内周面49側が示されている。駆動ロール44は、軸64によって、例えば転写ユニット42のフレーム(図示せず)に支持されている。軸64には、例えばモータ等の駆動源65が連結され、軸64は、駆動源65からの駆動伝達を受けて回転されて、駆動ロール44に回転駆動力が伝達される。駆動源65は、例えば、転写ユニット42側に取り付けられても良いし、画像形成装置本体12側に取り付けられても良い。
【0028】
従動ロール45は、軸66によって、例えば転写ユニット42のフレーム(図示せず)に回転可能に支持され、搬送ベルト46の回転に従動して回転される。
【0029】
搬送ベルト46の内周面49には、後述する案内部材72の案内溝73内に配置されるリブ部材70が、搬送ベルト46の搬送方向に形成されている。リブ部材70は、搬送ベルト46の内周面49の少なくとも片側端に沿って設けられている。リブ部材70は、搬送ベルト46と異なる材料であっても良いし、搬送ベルト46と同じ材料であってもよい。また、リブ部材70は、搬送ベルト46の内周面49に、例えば接着剤等によって貼り付けられても良いし、リブ部材70及び搬送ベルト46が一体成形されていても良い。
【0030】
図2に示す案内部材72は、従動ロール45の一端側に設けられているが、駆動ロール44の一端側に設けられていても良い。案内部材72は、例えばプーリー等であって、従動ロール45に固定し、従動ロール45とともに回転するようにしても良いし、従動ロール45とは独立として、軸66に支持された状態で回転するようにしても良い。本実施形態では、案内部材72が、案内部材72と従動ロール45とは独立して回転するように、従動ロール45に設けられている。
【0031】
図3は、
図2に示す案内部材及び搬送ベルトの拡大模式図である。案内部材72は、搬送ベルト46に設けられるリブ部材70に接触し、搬送ベルト46の移動を案内する案内溝73を有している。
図3に示す案内溝73は、両端部側から中央部側に向って径が小さくなる2つの円錐部73aと、2つの円錐部73a間に挟まれる円筒部73bとを有する。本実施形態では、円錐部73aの円錐面が、案内溝73の傾斜面74として形成され、この傾斜面74が、リブ部材70と接触するリブ接触面となる。また、本実施形態では、円筒部73bの側面が、案内溝73の底面75として形成され、この底面75が、リブ部材70が接触しないリブ非接触面となる。なお、案内溝73は、搬送ベルト46の移動を案内する溝形状であれば、その形状は特に限定されるものではないが、後述するように、搬送ベルト46の片寄りを抑制する点等から、
図3に示すような円錐形状であることが好ましい。
【0032】
図2に示すように、本実施形態のベルト搬送装置11は、案内溝73の傾斜面74等を摺動する清掃部材68が設けられている。清掃部材68は、たとえばスポンジ等によって形成され、傾斜面74を摺動することによって、傾斜面74に付着したトナー等の異物が除去される。
【0033】
また、本実施形態のベルト搬送装置11では、少なくともリブ部材70と接触する接触面である傾斜面74に、グリス、オイル等の潤滑剤が塗布される。潤滑剤の塗布方法は特に制限されるものではないが、例えば、清掃部材68に潤滑剤を染み込ませ、清掃部材68が傾斜面74を摺動することによって、傾斜面74に潤滑剤を塗布する方法、潤滑剤を傾斜面74等に注射注入する方法、潤滑剤に案内部材72を浸漬させる方法等が挙げられる。
【0034】
本実施形態のベルト搬送装置11では、傾斜面74(リブ接触面)を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.3(cal/cm
3)
1/2以上であり、底面75(リブ非接触面)を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.5(cal/cm
3)
1/2以下である。溶解度パラメータの差が大きいほど、部材と潤滑剤との親和性が低く、部材から潤滑剤が滲み出し易くなると考えられる。また、溶解度パラメータの差が小さいほど、部材と潤滑剤との親和性が高く、部材に潤滑剤が吸収され易くなると考えられる。なお、本実施形態では、傾斜面74全体をリブ接触面としているが、リブ部材70や案内溝73の寸法によっては、傾斜面74の一部をリブ接触面とし、リブ接触面以外の傾斜面74及び底面75をリブ非接触面としてもよい。
【0035】
溶解度パラメータは、化学構造の原子または原子団の蒸発エネルギー(Δei)とモル体積(Δvi)から、下記のFedorsの計算式により算出される値である。
(ΣΔei/ΣΔvi)
1/2
【0036】
溶解度パラメータは、リブ接触面やリブ非接触面を形成する部材の種類、及び潤滑剤の種類によって調整される。本実施形態の案内部材72を作製する場合、例えば、潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が、2.3(cal/cm
3)
1/2以上となる樹脂を成形して、案内部材を作製した後、潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が1.5(cal/cm
3)
1/2以下となる樹脂シートを案内溝73の底面75(リブ非接触面)に巻きつけることによって、案内部材72が作製される。また、例えば、潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が1.5(cal/cm
3)
1/2以下となる樹脂を成形して、案内部材を作製した後、潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が2.3(cal/cm
3)
1/2以上となる樹脂シートを案内溝73の傾斜面74(リブ接触面)に巻きつけることによって、案内部材72が作製される。また、例えば、潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が、2.3(cal/cm
3)
1/2以上となる樹脂を成形して、円錐部73aを作製し、また、潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が1.5(cal/cm
3)
1/2以下となる樹脂を成形して、円筒部73bを作製し、円筒部73b及び円錐部73aを接合することによって、案内部材72が作製される。
【0037】
以下に、案内部材72の作用について説明する。
【0038】
ベルト搬送装置11を稼働させ、搬送ベルト46を回転させると、搬送ベルト46が搬送ベルト46の幅方向における一方の方向に片寄りながら移動したり、搬送ベルト46の幅方向における両方向に蛇行しながら移動したりして、搬送ベルト46の片寄りが発生する場合がある。搬送ベルト46の片寄りが発生した際には、リブ部材70が案内溝73の傾斜面74に接触することによって、搬送ベルト46が移動した側とは反対方向側に押し戻される等して、搬送ベルト46の片寄りが抑制される。
【0039】
ここで、搬送ベルト46の片寄りによって、リブ部材70が傾斜面74(リブ接触面)に接触した際に、リブ部材70と傾斜面74との間の摩擦が大きくなると、リブ部材70の摩耗、搬送ベルト46端部への応力による搬送ベルト46の損傷等が考えられる。そこで、リブ部材70と傾斜面74との間の摩擦が大きくなることを抑制するために、傾斜面74(リブ接触面)には、潤滑剤が塗布されるが、経時的に余剰の潤滑剤が案内溝73外へと移動し、周辺部材(例えば、搬送ベルト46、駆動ロール44、従動ロール45等)が潤滑剤で汚染されたり、搬送ベルト46上のシートに潤滑剤が飛散したりする場合がある。
【0040】
しかし、本実施形態のベルト搬送装置11のように、傾斜面74(リブ接触面)を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.3(cal/cm
3)
1/2以上であり、底面75(リブ非接触面)を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.5(cal/cm
3)
1/2以下であると、潤滑剤との親和性が底面75(リブ非接触面)より低い傾斜面74(リブ接触面)では、リブ部材70が傾斜面74に接触することで、傾斜面74から潤滑剤が滲み出るが、滲み出た余分な潤滑剤は、潤滑剤との親和性が傾斜面74より高い底面75で吸収されると考えられる。したがって、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を2.3(cal/cm
3)
1/2以上とし、リブ非接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を1.5(cal/cm
3)
1/2以下とした方が、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を2.3(cal/cm
3)
1/2以上とし、リブ非接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を1.5(cal/cm
3)
1/2超とした場合より、リブ接触面から滲み出た余分は潤滑剤が、リブ非接触面でより多く吸収されるため(案内溝73内に潤滑剤がより多く保持されるため)、案内溝73外への潤滑剤の移動が抑制されると考えられる。その結果、搬送ベルト46等の周辺部材への潤滑剤の汚染、シートへの潤滑剤の飛散等が抑制されると考えられる。
【0041】
また、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を2.3(cal/cm
3)
1/2未満とした場合、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を2.3(cal/cm
3)
1/2以上とした場合と比較して、リブ接触面を形成する部材内に潤滑剤がより多く吸収されて、部材が膨潤した状態となると考えられる。そして、膨潤した部材から周辺部材へと潤滑剤が流れ出る場合等があるため、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を2.3(cal/cm
3)
1/2以上とした方が、案内溝73外への潤滑剤の移動が抑制されると考えられる。
【0042】
また、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を2.3(cal/cm
3)
1/2以上とし、リブ非接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を1.5(cal/cm
3)
1/2以下とすることで、上記範囲を満たさない場合と比較して、案内溝73外への潤滑剤の移動が抑制される(案内溝73内に潤滑剤がより多く保持される)ため、リブ部材70とリブ接触面との間の摩擦(実質的には摩擦係数)が低くなると考えられる。その結果、リブ部材70の摩耗、搬送ベルト46端部への応力による搬送ベルト46の損傷等が抑制されると考えられる。また、リブ部材70が摩耗していくと、搬送ベルト46の片寄りが大きくなるため、シートに転写された画像の印刷位置ずれ(レジずれ)が発生する場合がある。しかし、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を2.3(cal/cm
3)
1/2以上とし、リブ非接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値を1.5(cal/cm
3)
1/2以下とすることで、上記範囲を満たさない場合と比較して、リブ部材70の摩耗が抑制されるため、レジずれの発生も抑制されると考えられる。
【0043】
本実施形態のベルト搬送装置11では、リブ接触面(傾斜面74)を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値は、2.3(cal/cm
3)
1/2以上であればよいが、2.3(cal/cm
3)
1/2以上7.2(cal/cm
3)
1/2以下の範囲であることが好ましく、3.9(cal/cm
3)
1/2以上7.2(cal/cm
3)
1/2以下の範囲であることがより好ましい。リブ接触面(傾斜面74)を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が、7.2(cal/cm
3)
1/2を超えると、潤滑剤が馴染まずはじいてしまう場合がある。
【0044】
また、本実施形態のベルト搬送装置11では、リブ非接触面(底面75)を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.5(cal/cm
3)
1/2以下であればよいが、0.1(cal/cm
3)
1/2以上1.5(cal/cm
3)
1/2以下の範囲であることが好ましく、0.8(cal/cm
3)
1/2以上1.5(cal/cm
3)
1/2以下の範囲であることがより好ましい。リブ非接触面(底面75)を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が、0.1(cal/cm
3)
1/2未満であると、潤滑剤を吸収した部材が膨潤して、部材が損傷する場合がある。
【0045】
本実施形態に用いられる潤滑剤としては、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータとの差(絶対値)が2.3以上、リブ非接触面を形成する部材の溶解度パラメータとの差(絶対値)が1.5以下となる潤滑剤であれば特に制限されるものではないが、例えば、フッ素系潤滑剤、エステル系潤滑剤等が挙げられる。フッ素系潤滑剤としては、ハナール(関東化成工業株式会社製)、エステル系潤滑剤としては、エキセパールBS(花王社製)等が挙げられる。ハナールの溶解度パラメータは、6.5(cal/cm
3)
1/2であり、エキセパールBSの溶解度パラメータは、8.1(cal/cm
3)
1/2である。
【0046】
リブ接触面を形成する部材は、潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が、2.3以上となる部材であれば特に制限されるものではないが、例えば、溶解度パラメータが6.5(cal/cm
3)
1/2のハナールや溶解度パラメータが8.1(cal/cm
3)
1/2エキセパールBSを用いる場合、溶解度パラメータが10.4(cal/cm
3)
1/2のポリアセタール、溶解度パラメータが13.7のナイロン66等が用いられる。
【0047】
リブ非接触面を形成する部材は、潤滑剤の溶解度パラメータとの差(絶対値)が、1.5以下となる部材であれば特に制限されるものではないが、例えば、溶解度パラメータが6.5(cal/cm
3)
1/2のハナールや溶解度パラメータが8.1(cal/cm
3)
1/2エキセパールBSを用いる場合、溶解度パラメータが8.0であるエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、溶解度パラメータが7.3であるフッ素ゴム等が用いられる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<ポリアミドイミド製の搬送ベルト>
溶剤可溶型ポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡製 バイロマックス16NN 溶媒NMP 固形分率17質量%)とカーボンブラック(Degussa社製「スペシャルブラック4」)36質量部を添加した溶液を湿式ジェットミル(ジーナス製「ジーナスPY」、圧力200MPaでφ0.1mmのオリフィスを5回通過)を用いて分散させた。次に、30rpmで回転させたφ149mmのアルミ製パイプ表面に、この溶液をφ3mmのノズル先端より吐出させると同時に、SUS製ブレードを押し付け、平滑化処理を行いながら100mm/minで横方向に走査させることで、アルミ製パイプ表面に均一なアミドイミド樹脂溶液膜を形成した。このアルミ製パイプを10rpmで回転させながら130℃で20分、250℃で30分乾燥させ、該パイプ上の皮膜を抜き取る事で厚み78μmのポリアミドイミド製円筒状部材を得た。得られた円筒状部材を幅234mmにカットしポリアミドイミド製の搬送ベルトとした。
【0050】
厚み1.0mmでデュロメータの硬さがA70のウレタンシート(タイガースポリマー製「TR−100−70」)の片面を研磨することで表面層を剥離し、表面粗さをRz60μmに調整した厚み0.9mmのウレタンシートを準備した。このウレタンシートの未研磨側に厚さ0.09mmのPTFE製テープ(住友スリーエム製「5480」)を貼り付けた。このウレタンシートから、長さ499.5mm、幅5mmの短冊状のリブ部材を作製した。この短冊状のリブ部材の研磨側にセメダイン製「スーパーX No.8008」を塗布し、前述のポリアミドイミド製の搬送ベルトに貼り付けた。
【0051】
<実施例1>
溶解度パラメータが10.4であるポリアセタールから作製された案内部材(MISUMI社製、円錐部の最大径φ18.1mm、円筒部の径φ10mm、傾斜面の傾斜角45°、底面の長さ5mm)を準備した。次に、溶解度パラメータが8.0のEPDMゴムのシート(亜木津社製、幅5mm、長さ30mm)の表面にスリーボンド7797(スリーボンド社製)を塗布し、また、上記案内部材の案内溝の底面に、スリーボンド7797を塗布・乾燥させ、更にスリーボンド7721(スリーボンド社製)を塗布した後、案内溝の底面に、EPDMゴム製のシートを貼り付けた。そして、EPDMゴム製シートの外周にセロテープ(登録商標)を貼り付け、一日放置した後、溶解度パラメータが6.5であるハナール(関東化成工業株式会社製、潤滑成分:PTFE)中に浸漬させた。そして、ハナールから案内部材を取り出した後、セロテープを剥がし、潤滑剤が含浸された案内部材を得た。すなわち、実施例1の案内部材は、リブ接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が3.9であり、リブ非接触面を形成するEPDMゴムの溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が1.5である。
【0052】
<実施例2>
実施例2では、ハナールに代えて溶解度パラメータが8.1であるエキセパールBS(花王社製、潤滑成分:ステアリン酸ブチル)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、潤滑剤が含浸された案内部材を作製した。すなわち、実施例2の案内部材は、リブ接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとエキセパールBSの溶解度パラメータとの差が2.3であり、リブ非接触面を形成するEPDMゴムの溶解度パラメータとエキセパールBSの溶解度パラメータとの差が0.1である。
【0053】
<実施例3>
実施例3では、ハナールに代えて溶解度パラメータが8.1であるエキセパールBS(花王社製)を用いたこと、EPDMゴム製シートに代えて溶解度パラメータが7.3であるフッ素ゴムのシートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、潤滑剤が含浸された案内部材を作製した。すなわち、実施例3の案内部材は、リブ接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとエキセパールBSの溶解度パラメータとの差が2.3であり、リブ非接触面を形成するフッ素ゴムの溶解度パラメータとエキセパールBSの溶解度パラメータとの差が0.8である。
【0054】
<実施例4>
実施例4では、ポリアセタールから作製された案内部材を準備する代わりに、溶解度パラメータが13.7であるナイロン66から作製された案内部材(MISUMI社製、円錐部の最大径φ18.1mm、円筒部の径φ10mm、傾斜面の傾斜角45°、底面の長さ5mm)を準備したこと以外は、実施例1と同様の条件で、潤滑剤が含浸された案内部材を作製した。すなわち、実施例4の案内部材は、リブ接触面を形成するナイロン66の溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が7.2であり、リブ非接触面を形成するEPDMゴムの溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が1.5である。
【0055】
<実施例5>
実施例5では、ポリアセタールから作製された案内部材を準備する代わりに、溶解度パラメータが13.7であるナイロン66から作製された案内部材を準備したこと、EPDMゴム製シートに代えて溶解度パラメータが7.3であるフッ素ゴムのシートを用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、潤滑剤が含浸された案内部材を作製した。すなわち、実施例5の案内部材は、リブ接触面を形成するナイロン66の溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が7.2であり、リブ非接触面を形成するフッ素ゴムの溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が0.8である。
【0056】
<比較例1>
比較例1では、溶解度パラメータが10.4であるポリアセタールから作製された案内部材(MISUMI社製、円錐部の最大径φ18.1mm、円筒部の径φ10mm、傾斜面の傾斜角45°、底面の長さ5mm)を準備した。次に、案内部材の案内溝の底面に、セロテープ(登録商標)を貼り付けた後、溶解度パラメータが8.1であるエキセパールBS(花王社製)中に浸漬させた。そして、エキセパールBSから案内部材を取り出した後、セロテープを剥がし、潤滑剤が含浸された案内部材を得た。すなわち、実施例1の案内部材は、リブ接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が3.9であり、リブ非接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が3.9である。
【0057】
<比較例2>
比較例2では、溶解度パラメータが10.4であるポリアセタールから作製された案内部材(MISUMI社製、円錐部の最大径φ18.1mm、円筒部の径φ10mm、傾斜面の傾斜角45°、底面の長さ5mm)を準備し、これを比較例2の案内部材とした(潤滑剤が含浸されていない案内部材)。
【0058】
<比較例3>
比較例3では、ハナールに代えて溶解度パラメータが8.1であるエキセパールBS(花王社製)を用いたこと以外は、比較例1と同様の条件で、潤滑剤が含浸された案内部材を作製した。すなわち、比較例3の案内部材は、リブ接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとエキセパールBSの溶解度パラメータとの差が2.3であり、リブ非接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとエキセパールBSの溶解度パラメータとの差が2.3である。
【0059】
<比較例4>
比較例4では、ハナールに代えて溶解度パラメータが10.8であるエキセパールPE−MO(花王社製、潤滑成分:ペンタエリスリトールモノオレエート)を用いたこと以外は、比較例1と同様の条件で、潤滑剤が含浸された案内部材を作製した。すなわち、比較例4の案内部材は、リブ接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとエキセパールPE−MOの溶解度パラメータとの差が0.4であり、リブ非接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとエキセパールPE−MOの溶解度パラメータとの差が0.4である。
【0060】
<比較例5>
比較例5では、ハナールに代えて溶解度パラメータが10.8であるエキセパールPE−MO(花王社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、潤滑剤が含浸された案内部材を作製した。すなわち、比較例5の案内部材は、リブ接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとエキセパールPE−MOの溶解度パラメータとの差が0.4であり、リブ非接触面を形成するEPDMの溶解度パラメータとエキセパールPE−MOの溶解度パラメータとの差が2.8である。
【0061】
<比較例6>
比較例6では、溶解度パラメータが13.7であるナイロン66から作製された案内部材(MISUMI社製、円錐部の最大径φ18.1mm、円筒部の径φ10mm、傾斜面の傾斜角45°、底面の長さ5mm)を準備した。次に、案内部材の案内溝の底面に、セロテープ(登録商標)を貼り付けた後、溶解度パラメータが6.5であるハナール中に浸漬させた。そして、ハナールから案内部材を取り出した後、セロテープを剥がし、潤滑剤が含浸された案内部材を得た。すなわち、比較例6の案内部材は、リブ接触面を形成するナイロン66の溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が7.2であり、リブ非接触面を形成するナイロン66の溶解度パラメータとハナールの溶解度パラメータとの差が7.2である。
【0062】
<比較例7>
比較例7では、ハナールに代えて溶解度パラメータが8.1であるエキセパールBS(花王社製)を用いたこと、EPDMゴム製シートに代えて溶解度パラメータが9.7であるポリ塩化ビニルを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、潤滑剤が含浸された案内部材を作製した。すなわち、比較例7の案内部材は、リブ接触面を形成するポリアセタールの溶解度パラメータとエキセパールBSの溶解度パラメータとの差が2.3であり、リブ非接触面を形成するポリ塩化ビニルの溶解度パラメータとエキセパールBSの溶解度パラメータとの差が1.6である。
【0063】
表1に、実施例1〜5及び比較例1〜7のリブ接触面を形成する部材、リブ非接触面を形成する部材、及び潤滑剤の溶解度パラメータ等をまとめた。
【0064】
【表1】
【0065】
富士ゼロックス社製の画像形成装置DocuPrint CP100を用いて試験を行った。この画像形成装置には、
図2に示すベルト搬送装置を搭載し、該ベルト搬送装置には、上記のポリアミドイミド製の搬送ベルトと、実施例1〜5の案内部材又は比較例1〜7の案内部材とを組み付けた。そして、画像形成装置を稼働させ、普通紙を100000枚印刷した後、ベルト搬送装置における潤滑剤の移動、リブ部材のリブ摺擦幅、画像欠陥を以下の条件で評価し、表2にまとめた。
【0066】
(潤滑剤の移動)
○:案内溝外への潤滑剤の移動が目視により観察されなかった。
△:案内溝外への潤滑剤の移動が目視により観察された。
×:案内溝外への潤滑剤の移動が目視により観察され、普通紙への潤滑剤の飛散も観察された。
【0067】
(リブ摺擦幅:リブ接触面との摩擦によりリブ部材が削られた幅)
○:リブ摺擦幅が0.05mm以下。
△:リブ摺擦幅が0.05mm超0.1mm以下。
×:リブ摺擦幅が0.1mm超。
【0068】
(画像欠陥)
○:普通紙上の画像の印刷位置ずれ(レジずれ)なし。
×:普通紙上の画像の印刷位置ずれ(レジずれ)あり。
【0069】
【表2】
【0070】
表2から分かるように、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.3(cal/cm
3)
1/2以上であり、リブ非接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.5(cal/cm
3)
1/2以下である実施例1〜7は、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.3(cal/cm
3)
1/2以上であるが、リブ非接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.5(cal/cm
3)
1/2を超える比較例1,3,6,7と比較して、案内溝外への潤滑剤の移動が抑制され、普通紙に潤滑剤が飛散することが抑制された。また、実施例1〜7は、比較例1,3,6,7と比較して、リブ摺擦幅の増加が抑えられ、印刷位置ずれも発生しなかった。これは、実施例1〜7の方が、比較例1,3,6,7と比べて、案内溝外への潤滑剤の移動が抑制され(すなわち、案内溝内に潤滑剤がより多く保持され)、リブ部材とリブ接触面との摩擦の増加が抑制されたためであると考えられる。
【0071】
また、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.3(cal/cm
3)
1/2未満である比較例4,5は、案内溝外への潤滑剤の移動は抑制されるが、リブ摺擦幅は0.05mm以上となり、画像の印刷位置ずれが発生した。リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.3(cal/cm
3)
1/2未満である比較例4,5は、リブ接触面を形成する部材の溶解度パラメータと潤滑剤の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.3(cal/cm
3)
1/2以上である実施例1〜7と比較して、リブ接触面を形成する部材と潤滑剤の親和性が強いため、リブ接触面への潤滑剤供給量が少なくなり、実施例1〜7と比較して、リブ部材とリブ接触面との摩擦が高くなり、搬送ベルトに応力が掛かったため、リブ摺擦幅は大きくなり、画像の印刷位置ずれが発生したと考えられる。
【0072】
なお、潤滑剤を含浸しない案内部材を用いた比較例2では、普通紙を25000枚印刷したところで、搬送ベルトが破断した。その際のリブ摺擦幅は0.1mm超であった。