特許第6221849号(P6221849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221849露光方法、微細周期構造体の製造方法、グリッド偏光素子の製造方法及び露光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221849
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】露光方法、微細周期構造体の製造方法、グリッド偏光素子の製造方法及び露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20171023BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G03F7/20 505
   G02B5/30
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-45697(P2014-45697)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-170780(P2015-170780A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】矢島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野本 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】那脇 洋平
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−044158(JP,A)
【文献】 特開2013−130649(JP,A)
【文献】 特開2006−093644(JP,A)
【文献】 特開2004−014866(JP,A)
【文献】 特開2002−162750(JP,A)
【文献】 特開2007−316204(JP,A)
【文献】 特表2011−508443(JP,A)
【文献】 特開2006−210923(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0311531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G02B 5/00−5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光源の出力光を2以上に分岐した光を所定の干渉角度で交差させて干渉光を発生し、当該干渉光の基板への照射と前記基板の搬送とを繰り返して前記基板を露光する露光方法であって、
矩形状又は略矩形状の光透過部を有する遮光部材を前記基板の上に所定ギャップを設けて配置することで、1ショットで前記干渉光が照射される基板上の領域である干渉光照射領域を、矩形状又は略矩形状に整形するとともに、前記干渉光照射領域の端部に、前記2以上に分岐した光の一部である非干渉光が照射する非干渉光照射領域を形成し、
前記基板をステップ的に搬送しながら露光するに際し、基板搬送方向に隣接する前記干渉光照射領域の端部に形成された非干渉光照射領域同士を重畳させるか、又は前記干渉光照射領域を、基板搬送方向に隣接する前記干渉光照射領域の端部に形成された前記非干渉光照射領域に重畳させ、各ショットでの前記干渉光照射領域同士を、前記基板上で基板搬送方向に重畳させずに隣接させることを特徴とする露光方法。
【請求項2】
前記請求項に記載の露光方法により前記基板を露光し、該基板に前記干渉光のパターンに対応する物性を付与し、または形状を形成する工程を備えることを特徴とする微細周期構造体の製造方法。
【請求項3】
前記請求項に記載の露光方法により前記基板を露光する工程と、
露光後の前記基板を現像し、前記基板に前記干渉光のパターンに対応する形状を形成する工程と、を備えることを特徴とする微細周期構造体の製造方法。
【請求項4】
透明基板上に無機誘電体からなる無機誘電体層を形成する工程と、
前記無機誘電体層の上に感光性材料からなる感光層を形成する工程と、
前記請求項に記載の露光方法により前記感光層を露光する工程と、
露光後の前記感光層を現像し、前記感光層に前記干渉光のパターンに対応する形状を形成する工程と、
前記感光層に形成したパターンに従って、前記無機誘電体層をエッチングにより除去し、微細周期構造を有する無機誘電体からなるグリッド層を形成する工程と、を備えることを特徴とするグリッド偏光素子の製造方法。
【請求項5】
前記干渉光照射領域の面積に対する非干渉光照射領域の面積の割合が、0.4%未満となるように露光することを特徴とする請求項に記載のグリッド偏光素子の製造方法。
【請求項6】
コヒーレント光を出力する光源と、
前記光源の出力光を2以上に分岐した光を所定の干渉角度で交差させて干渉光を発生する光学系素子と、
基板の上に所定ギャップを設けて配置され、前記光学系素子によって発生した干渉光が透過する矩形状又は略矩形状の光透過部を有する遮光部材と、
前記遮光部材の光透過部を透過した前記干渉光の基板への照射と前記基板の搬送とを繰り返し、前記基板を露光する基板搬送制御部と、を備え、
前記基板搬送制御部は、前記遮光部材の光透過部を介して矩形状又は略矩形状に整形された前記干渉光が照射される基板上の干渉光照射領域を、各ショットにおいて基板上で基板搬送方向に重畳させずに隣接させるべく、前記基板をステップ的に搬送するに際し、基板搬送方向に隣接する前記干渉光照射領域の端部に形成された、前記2以上に分岐した光の一部である非干渉光が照射する非干渉光照射領域同士を重畳させるか、又は前記干渉光照射領域を、基板搬送方向に隣接する前記干渉光照射領域の端部に形成された前記非干渉光照射領域に重畳させることを特徴とする露光装置。
【請求項7】
前記光学系素子は、
前記光源の出力光を2以上に分岐する光分岐素子と、
前記光分岐素子で分岐したそれぞれの光を所望の干渉角度で交差させるべく、分岐したそれぞれの光を前記基板へ向けて偏向する角度可変ミラーと、を備えることを特徴とする請求項に記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細周期パターンを基板上に実現するための露光方法、それを用いた微細周期構造体の製造方法、グリッド偏光素子の製造方法、及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細加工を実現する方法として、二光束干渉露光方法が用いられている。二光束干渉露光方法とは、2本のレーザービームを所定の角度で交差させることにより、当該レーザービームの波長と同程度のピッチ或いはそれ以下のピッチの明暗(光強度分布)を有する干渉光(干渉縞)を発生し、これを基板に照射する方法である。この二光束干渉露光方法では、レーザーなどの干渉性の強い光源からの光を2つに分岐し、それぞれを干渉させることで、微細マスクを用意することなく、微細かつ周期的な露光照度分布を得ることができる。
【0003】
このような二光束干渉露光方法を採用したものとして、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、レーザー光源からの光を回折型ビームスプリッタによって0次光と±1次光に分岐し、±1次光をそれぞれ集光レンズ、空間フィルタ、ミラーを介してステージに支持された基板上で互いに干渉させ、基板上の感光性膜を感光させるものである。ここで、ステージは回転自由度を有しており、2回露光を行うことで円柱や円錐などが周期的に配置された平面パターンを得ることができるようになっている。
【0004】
また、同様に二光束干渉露光方法を採用したものとして、例えば特許文献2に記載の技術がある。この技術は、ステージをステップ的に駆動し、複数回の露光をワーク上においてオーバーラップさせることで、ワークのある範囲で露光強度分布が一定となるようにするものである。ここでは、複数回の露光において干渉縞のパターン同士が重なり合うように各露光内の干渉縞を走査制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4389791号公報
【特許文献2】特許第4514317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、集光レンズと空間フィルタとによってビーム径が拡大されたレーザー光を基板に照射する構成であるため、基板に照射されるビームが球面波となっている。そして、このとき形成される干渉パターンは、ピッチの累積誤差が露光エリアのフチに向かうほど増大したものとなる。そのため、等間隔のラインパターンが必要とされる回折格子作製などの用途では、露光有効エリアはビームの中央付近に限定される。したがって、この場合、大面積を露光するには空間フィルタから基板までの距離を大きくする必要があり、装置が大型化し、コストが嵩む。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術にあっては、干渉縞を走査制御するためには、干渉ピッチと同程度の精度でステージを制御する必要がある。すなわち、微細な干渉ピッチでオーバーラップ露光するためには、ステージにサブミクロン〜nmオーダーの停止安定性および繰り返し精度が求められ、制御ハードルが高い。また、干渉光が照射される露光有効エリアをオーバーラップさせるため、基板へのショット回数が多くなり、スループットが低下する。
【0008】
さらに、露光有効エリアをオーバーラップさせるには干渉パターンのピッチが安定している必要がある。二光束干渉露光において、干渉ビームの波面の乱れはピッチ誤差を増大させるため、理想平面波が必要となる。一般にレンズは収差を持っているため、理想平面波を得るには、ビーム径を絞り、レンズ中央部分のみを使用する必要がある。すなわち、露光有効エリアを小さくする必要がある。これはショット数の増加の一因となり、スループット低下につながる。
そこで、本発明は、スループットが高く、且つ低コストでワークへの微細加工を実現することができる露光方法、微細周期構造体の製造方法、グリッド偏光素子の製造方法及び露光装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る露光方法の一態様は、コヒーレント光源の出力光を2以上に分岐した光を所定の干渉角度で交差させて干渉光を発生し、当該干渉光の基板への照射と前記基板の搬送とを繰り返して前記基板を露光する露光方法であって、矩形状又は略矩形状の光透過部を有する遮光部材を前記基板の上に所定ギャップを設けて配置することで、1ショットで前記干渉光が照射される基板上の領域である干渉光照射領域を、矩形状又は略矩形状に整形するとともに、前記干渉光照射領域の端部に、前記2以上に分岐した光の一部である非干渉光が照射する非干渉光照射領域を形成し、前記基板をステップ的に搬送しながら露光するに際し、基板搬送方向に隣接する前記干渉光照射領域の端部に形成された非干渉光照射領域同士を重畳させるか、又は前記干渉光照射領域を、基板搬送方向に隣接する前記干渉光照射領域の端部に形成された前記非干渉光照射領域に重畳させ、各ショットでの前記干渉光照射領域同士を、前記基板上で基板搬送方向に重畳させずに隣接させる。
【0010】
このように、基板をステップ的に搬送しながら小区画ずつ露光するので、装置を大型化することなく大面積への露光が可能となる。そのため、装置の大型化に伴うコストを削減することができる。また、二光束干渉露光において露光エリアを矩形に整形するので、各ショットの干渉光照射領域同士を重畳させずに基板上に並べることができる。したがって、干渉光照射領域をオーバーラップさせる露光方法と比較してショット数を減少することができると共に、基板を搬送するステージの整定回数を減らすことができる。その結果、基板全体への露光時間を短縮し、スループットを向上することができる。
【0012】
さらに、非干渉光照射領域を重ね合わせに使用するので、干渉光照射領域同士の重ね合わせ、即ちオーバー露光を防止することができる。また、非干渉光照射領域を、干渉光照射領域を並べるときの指標として使用することもできる。さらに、遮光部材と基板との間にギャップを設けるので、両者が密着することに起因してパーティクル等が付着するのを防止することができる。
【0014】
また、非干渉光照射領域を重ね合わせに使用するので、干渉光照射領域同士の重ね合わせ、即ちオーバー露光を防止することができる。また、基板搬送方向に隣接する非干渉光照射領域と干渉光照射領域とを重畳させるため、基板搬送方向に隣接する干渉光照射領域間に介在する非干渉光照射領域(デッドゾーン)を極力少なくすることができる。さらに、遮光部材と基板との間にギャップを設けるので、両者が密着することに起因してパーティクル等が付着するのを防止することができる。
【0016】
また、本発明の微細周期構造体の製造方法の一態様は、上記の露光方法により基板を露光し、該基板に前記干渉光のパターンに対応する物性を付与し、または形状を形成する工程を備える。
これにより、スループットが高く且つ低コストで微細周期構造体を製造することができる。
さらに、本発明の微細周期構造体の製造方法の一態様は、上記の露光方法により前記基板を露光する工程と、露光後の前記基板を現像し、前記基板に前記干渉光のパターンに対応する形状を形成する工程と、を備える。
これにより、スループットが高く且つ低コストで微細周期構造体を製造することができる。
【0017】
さらに、本発明のグリッド偏光素子の製造方法の一態様は、透明基板上に無機誘電体からなる無機誘電体層を形成する工程と、前記無機誘電体層の上に感光性材料からなる感光層を形成する工程と、上記の露光方法により前記感光層を露光する工程と、露光後の前記感光層を現像し、前記感光層に前記干渉光のパターンに対応する形状を形成する工程と、前記感光層に形成したパターンに従って、前記無機誘電体層をエッチングにより除去し、微細周期構造を有する無機誘電体からなるグリッド層を形成する工程と、を備える。
これにより、スループットが高く且つ低コストでグリッド偏光素子を製造することができる。
【0018】
また、上記のグリッド偏光素子の製造方法において、前記干渉光照射領域の面積に対する非干渉光照射領域の面積の割合が、0.4%未満となるように露光することが好ましい。
これにより、実用上問題のない水準の消光比を得ることができ、グリッド偏光素子としての性能を確保することができる。
【0019】
さらに、本発明の露光装置の一態様は、コヒーレント光を出力する光源と、前記光源の出力光を2以上に分岐した光を所定の干渉角度で交差させて干渉光を発生する光学系素子と、基板の上に所定ギャップを設けて配置され、前記光学系素子によって発生した干渉光が透過する矩形状又は略矩形状の光透過部を有する遮光部材と、前記遮光部材の光透過部を透過した前記干渉光の基板への照射と前記基板の搬送とを繰り返し、前記基板を露光する基板搬送制御部と、を備え、前記基板搬送制御部は、前記遮光部材の光透過部を介して矩形状又は略矩形状に整形された前記干渉光が照射される基板上の干渉光照射領域を、各ショットにおいて基板上で基板搬送方向に重畳させずに隣接させるべく、前記基板をステップ的に搬送するに際し、基板搬送方向に隣接する前記干渉光照射領域の端部に形成された、前記2以上に分岐した光の一部である非干渉光が照射する非干渉光照射領域同士を重畳させるか、又は前記干渉光照射領域を、基板搬送方向に隣接する前記干渉光照射領域の端部に形成された前記非干渉光照射領域に重畳させる
【0020】
このように、基板をステップ的に搬送しながら小区画ずつ露光するので、装置を大型化することなく大面積への露光が可能となる。そのため、装置の大型化に伴うコストを削減することができる。また、二光束干渉露光において露光エリアを矩形に整形するので、干渉光照射領域を重畳させずに並べることができる。したがって、干渉光照射領域をオーバーラップさせる露光方法と比較してショット数を減少することができる。そのため、基板を搬送するステージの整定回数を減らすことができる。その結果、基板全体への露光時間を短縮し、スループットを向上することができる。
【0021】
また、上記の露光装置において、前記光学系素子は、前記光源の出力光を2以上に分岐する光分岐素子と、前記光分岐素子で分岐したそれぞれの光を所望の干渉角度で交差させるべく、分岐したそれぞれの光を前記基板へ向けて偏向する角度可変ミラーと、を備えることが好ましい。
このように、光分岐素子で分岐した2つの光の干渉角度を所望の角度に変更することができるので、基板に形成されるストライプ状の干渉パターンのピッチを自在に変更することができ、様々な用途に適用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板をステップ的に搬送しながら露光する、所謂ステップアンドリピート方式を採用するので、装置を小型化することができ低コストを実現することができる。また、二光束干渉露光において、1ショットの露光エリア(干渉光照射領域)を矩形に整形するので、各ショットの干渉光照射領域同士を重畳させることなく基板搬送方向に並べて露光することができる。そのため、干渉光照射領域を重畳させる方式と比較してショット数を減少させることができ、その結果、スループットを向上することができる。
このように、スループットが高く且つ低コストで基板への微細加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態の露光装置を示す概略構成図である。
図2】有効照射領域が形成される様子を示す図である。
図3】有効照射領域における干渉領域と非干渉領域との分布を示す図である。
図4】露光ショットレイアウトイメージである。
図5】第1の実施形態における露光方法を示す図である。
図6】本実施形態の露光パターンを示す図である。
図7】従来の露光パターンを示す図である。
図8】従来の露光パターンの問題点を説明するための図である。
図9】従来の露光パターンを示す図である。
図10】周期的な物性の変化を有する構造の製造方法を示す図である。
図11】グリッド偏光素子の製造方法を示す図である。
図12】非干渉領域(デッドゾーン)の面積比と消光比との関係を示す図である。
図13】デッドゾーン幅とデッドゾーン面積比との関係を示す図である。
図14】第2の実施形態における露光方法を示す図である。
図15】第3の実施形態における露光方法を示す図である。
図16】第4の実施形態における露光方法を示す図である。
図17】多光束干渉露光方法の概略図である。
図18】第5の実施形態の露光装置を示す概略構成図である。
図19】角度可変ミラーの機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の露光装置を示す概略構成図である。
図中、符号1は露光装置である。露光装置1は、光源2と、ビームエキスパンダ3と、打ち下ろしミラー4と、シャッター5と、ビーム分岐素子6と、折り返しミラー7a,7bと、集光レンズ8a,8bと、ピンホール9a,9bと、コリメートレンズ10a,10bとを備える。また、露光装置1は、ステージ11と、吸着盤12と、マスク13と、ギャップセンサ14と、コントローラ20と、ステージ駆動回路21とを備える。
【0025】
光源2は、コヒーレント光を出射するコヒーレント光源であり、例えば、波長λが266nmのレーザー光を出射する半導体励起固体レーザーである。光源2が出射したレーザー光B0は、ビームエキスパンダ3によってビーム径が拡大され、打ち下ろしミラー4によってその光路が偏向される。
シャッター5は、レーザー光出射のON/OFFを切り替えるためのものであり、ミラー4とビーム分岐素子6との間に配置する。このシャッター5の開閉は、コントローラ20が制御する。
【0026】
ビーム分岐素子6は、1本のレーザー光を分岐して2本のレーザー光を生成するものである。このビーム分岐素子6は、例えば、石英等の表面に施した微細な凹凸形状による形状効果を用いてその機能を実現する凹凸型回折素子である。
ビーム分岐素子6により生成された2本のレーザー光B1,B2は、それぞれ折り返しミラー7a,7bによって光路偏向され、集光レンズ8a,8bに入射する。
【0027】
集光レンズ8aによる集光後のレーザー光はピンホール9aに入射され、そのビーム径が拡大された後、コリメートレンズ10aでコリメートされる。このようにして、コリメートされたレーザー光B3を得る。同様に、集光レンズ8bによる集光後のレーザー光はピンホール9bに入射され、そのビーム径が拡大された後、コリメートレンズ10bでコリメートされる。このようにして、コリメートされたレーザー光B4を得る。
【0028】
ここで、ピンホール9a,9bは、空間フィルタとして機能し、集光レンズ8a,8bまでの光路で生じたビーム波面の乱れを取り除くために用いる。また、コリメートレンズ10a,10bは、レーザー光の波面を理想的な平面波とするために用いる。
2本のレーザー光B3,B4は、図2に示すように、所定の干渉角度2θで交差させる。これにより、ワーク(基板)Wの上部で二つのレーザー光B3,B4の干渉による干渉縞を生成し、これをワークWに露光光として照射する。すなわち、ワークW上にストライプ状のラインアンドスペースのパターンを転写する。
【0029】
このように、ビームエキスパンダ3、打ち下ろしミラー4、シャッター5、ビーム分岐素子6、折り返しミラー7a,7b、集光レンズ8a,8b、ピンホール9a,9b及びコリメートレンズ10a,10bから構成される光学系素子によって、光源2の出力光を2分岐した光を干渉角度2θで交差させ、干渉光を発生する。この光学系素子のうち、ビーム分岐素子6からワークWまでの間の素子一式は対になるように設けられており、ビーム分岐素子6で分岐した2本のレーザー光をそれぞれワークWまで誘導、整形し、ワークW上で干渉させるようになっている。
【0030】
図1に戻って、ワークWは、ステージ11に設けられた吸着盤12上に固定されている。ここで、ワークWとしては、例えば、レジスト膜を塗布した基板、ガラス基板、SAM膜を塗布した基板等を用いることができる。このようなワークWを干渉光で露光することにより、基板上に誘電体細線からなるグリッドパターンを形成したり、回折格子を形成したり、有機トランジスタ素子等を形成したりすることができる。
【0031】
ステージ11は、ワークW面に対してXY方向に移動する自由度を有しており、コントローラ20は、ステージ駆動回路21を駆動制御することで、ステージ11をXY方向に移動することが可能となっている。すなわち、ワークWは、ステージ11をXY方向に移動することでXY方向に移動する。ここで、X方向とは図1の左右方向であり、Y方向とは図1の紙面垂直方向である。
【0032】
本実施形態では、レンズの収差を考慮し、コリメートレンズ10a,10bの中央付近から取り出される光のみを用いてワークWへの露光を行う。具体的には、ワークWの上面に矩形開口(光透過部)を有するマスク13を配置し、当該マスク13を介してコリメートレンズ10a,10bを通過した光の中央付近のみにより形成された干渉光を露光光としてワークWに照射する。
【0033】
マスク13は、矩形状の光透過部を有する遮光部材によって構成する。ここで、マスク13としては、金属製基板の略中央に矩形開口を形成したものを用いる。なお、マスク13として、ガラス等の透明基板上に、当該透明基板が露出する矩形状の光透過部を形成した遮光膜を形成したものを用いることもできる。ここで、遮光膜としては、例えばクロムからなる膜を用いる。また、光透過部は、矩形に近い形状(略矩形状)であればよい。
【0034】
ワークWの上部にこのようなマスク13を配置することで、マスク13に対して干渉角度2θで二光束を入射したとき、1ショットで干渉光が照射されるワークW上の領域を矩形に整形することができる。このマスク13の矩形開口により区切られてワークWに光照射される領域を、以下、有効照射領域という。
マスク13の矩形開口は、コリメートレンズ10a,10bを通過した光のワークW上の照射領域よりも小さく形成されている。この矩形開口のサイズは、有効照射領域と略同サイズであり、例えば20.5mm×13.8mmとする。
【0035】
最適なマスクの矩形開口のサイズは露光条件によって異なる。例えば、波長λ=266nm、干渉角度θ=47.6°(干渉パターンL&Sピッチ180nm)、照射エリア(ビームの1/e2直径)φ82mm、干渉パターンのコントラスト70%、レーザー出力100mW、レジストの感光閾値を5mJ/cm2、ワークとして8インチウェハを使用し、面積の90%を露光エリアとする。目標線幅をL=60±10nmとする場合には、マスクの矩形開口のサイズは8mm×5mmから36mm×24mmの範囲であることが好ましい。特に、目標線幅をL=60±5nm、タクトを10min/枚以下とする場合には、18mm×12mmから24mm×16mmの範囲とするのがより好ましい。
【0036】
なお、マスクの矩形開口の長辺をA、短辺をBとすると、A=B/cosθの関係が成り立つとき、1ショットの有効照射領域の面積を最大とすることができる。
レーザー光B3,B4のビーム径(1/e2)は、ビームエキスパンダ3や集光レンズ8a,8b、コリメートレンズ10a,10bでの倍率によって任意に決めることができる。したがって、マスク13のサイズは、当該ビーム径の大きさをはじめ、用途に合わせて適宜交換する。
【0037】
また、このマスク13は、図2に示すように、ワークWに対してギャップDを設けて配置する。図1に示すように、ステージ11及び吸着盤12には、ギャップセンサ14が埋め込まれており、このギャップセンサ14によって吸着盤12とマスク13との間の距離が測定可能となっている。
また、マスク13は、吸着盤12からの距離を調整可能なホルダに保持されており、ワークWへの露光に先立って、吸着盤12に固定するワークWの厚みに応じて任意のギャップDを設けるように、吸着盤12とマスク13との間の距離が調整される。
【0038】
マスク13をワークWの上部にギャップDを設けて配置することで、図2に示すように、ワークW上にはレーザー光B3,B4の干渉光が照射される領域と、レーザー光B3,B4の何れか一方のみが照射される領域とが生じる。すなわち、有効照射領域は、干渉光が照射される干渉光照射領域E1(以下、単に「干渉領域」という)と、干渉領域E1のX方向両側に形成される、光線の幾何学的回り込みによる非干渉光照射領域E2(以下、単に「非干渉領域」という)とからなる。非干渉領域E2の幅は、ギャップDと干渉角度θとに依存し、2D・tanθである。
【0039】
図3は、ワークW上の有効照射領域E0を示す平面図である。ここで、図3の左右方向がX方向、図3の上下方向がY方向である。この図3に示すように、有効照射領域E0のX方向中央部に干渉領域E1が形成され、その両側に非干渉領域E2が形成される。干渉領域E1においては干渉縞が形成され、非干渉領域には干渉縞は形成されない。
例えば、光源2の波長λ=266nm、干渉角度15°≦θ≦60°とした場合、干渉領域E1では、隣接するライン間のピッチが154nm〜514nmであるストライプ状の干渉縞が形成される。干渉縞のピッチは、干渉角度θ、光源2の波長λ及び露光環境の屈折率nに依存し、λ/(2n・sinθ)である。すなわち、干渉縞のピッチは、n=1(空気中での露光)とすると、光源2のレーザー光の波長λの半分近くまで短くすることができる。
【0040】
また、本実施形態では、ステップアンドリピート方式によりワークW全体を露光する。ここで、ステップアンドリピート方式とは、基板の露光領域を複数の小区画に分割し、基板の搬送と露光を繰り返して、分割した小区画ごとに順次露光する方式である。
ステップアンドリピート方式を採用した露光工程では、コントローラ20は、ステージ11のステップ駆動と、シャッター5の開閉制御とを行う。すなわち、コントローラ20は、ワークWを搭載したステージ11を所定位置に移動し、シャッター5を開いてステップ露光した後、シャッター5を閉じてステップ露光を終了し、ステージ11を一定距離移動する。この動作を、予め設定した露光領域を露光するまで繰り返し実行する。このコントローラ20は、基板搬送制御部として動作する。
【0041】
例えば、図4に示すように、ワークWの右上の位置から露光を開始し、先ず+X方向(図4の右方向)にワークWを搬送して、有効照射領域E0をワークWに対して相対的に移動させながら一列目を露光する。すなわち、ワークWの右上の位置から−X方向に順次露光エリアを移動しながら一列目を露光する。このとき、図5(a)に示すように、m回目の露光における有効照射領域E0内の干渉領域E1と、(m−1)回目の露光における有効照射領域E0内の干渉領域E1とがワークW上で重畳せず、且つm回目の露光における有効照射領域E0内の非干渉領域E2と、(m−1)回目の露光における有効照射領域E0内の非干渉領域E2とがワークW上で重畳するようにワークWを搬送する。
【0042】
このように、ステップアンドリピート方式により、矩形状に整形された干渉領域E1を重畳させずに基板搬送方向(X方向)に並べながら露光する。このとき、X方向において、干渉領域E1に形成された非干渉領域E2同士を重畳させる。すなわち、X方向において隣接する各干渉領域E1の間に、非干渉領域E2を介在させる。図5(b)に干渉パターンの照度分布を示すように、この非干渉領域E2はデッドゾーンとなる領域であり、極端に大きいと、製品性能低下の要因となる。そのため、非干渉領域E2の面積をA、干渉領域E1の面積をBとしたとき、デッドゾーン面積比=[(A/B)×100](%)が実用上問題のない値となるように、用途に応じてギャップDや干渉角度θを設定するものとする。
【0043】
ワークWの一列目を露光した後は、ワークWを+X方向且つ+Y方向(図4の下方向)に搬送し、有効照射領域E0が二列目の左端に位置するようにする。そして、−X方向(図4の左方向)にワークWを搬送して、有効照射領域E0をワークWに対して相対的に移動させながら二列目を露光する。すなわち、二列目については、左端の位置から+X方向に順次露光エリアを移動しながら露光する。このとき、一列目の露光と同様に、X方向については干渉領域E1を重畳させない。また、Y方向についても干渉領域E1を重畳させないようにする。なお、Y方向において隣接する有効照射領域E0(干渉領域E1)の間には、僅かな隙間を設けてもよい。
【0044】
以上の動作をワークWのY方向上端から下端まで繰り返し、ワークW全体を露光する。この露光方式では、n列目の露光におけるワークWの搬送方向と、(n−1)列目の露光におけるワークWの搬送方向とは180°相違する。
以上のように、本実施形態では、二光束干渉露光において、干渉領域E1を矩形に整形し、ステップアンドリピート方式によりステージ11上に載置した基板(ワークW)をステージ駆動により搬送しながら、大面積への干渉露光を可能とする。干渉領域E1が矩形であるため、図4に示すように、容易に大面積の基板へのパターン露光が可能となる。
【0045】
図6は、本実施形態の露光方法を示す図であり、(a)は装置構成、(b)は露光パターン、(c)は照度分布を示す。このように、ワークWの上部にマスク13を設け、パターン有効エリア(干渉領域E1)を矩形に整形するため、図6(b)に示すように、パターン有効エリア同士を重畳させることなく、当該パターン有効エリアを基板搬送方向に並べることができる。これにより、図6(c)に示すように、略一定の照度分布を得ることができる。
【0046】
ところで、二光束干渉露光方法としては、本実施形態のようにステップアンドリピート方式を採用しない方法もある。以下、本実施形態と先行文献1とを対比して説明する。
先行文献1では、図7(a)に示すように、ガウシアンビームを分岐素子によって2本に分岐し、これらの光をそれぞれミラーで偏向し、集光レンズで集光したあと、ピンホールを通してそのビーム径を拡大し基板に照射する。しかしながら、この場合、基板に照射されるビームは球面波であるため、このとき形成される露光パターンは、ピッチの類型誤差が露光エリアの縁に向かうほど増大する状態となり、図7(b)に示すように、双曲線状となる。等間隔のラインパターンが必要とされる用途では、ピッチの累積誤差はピッチの1/10以下に抑えることが好ましいことから、図7(b)の点線に示すように、パターン有効エリアはビームの中央付近に限定することが好ましい。
【0047】
また、ガウシアンビームは、図8(a)に示すように、ビームの中央から周辺部に向かって照度が低下していく。そのため、図8(b)の上段に示すように、ビーム中央付近ではレジスト感光閾値THが干渉パターンの照度分布に対して比較的低い位置にあるが、図8(c)の上段に示すように、ビーム周辺部ではレジスト感光閾値THが干渉パターンの照度分布に対して比較的高い位置にくる。したがって、現像後のレジストパターンは、ビーム中央部とビーム周辺部とで線幅が異なることになる。例えば、図8(b)の下段及び図8(c)の下段にそれぞれ示すように、レジストがポジ型(感光した箇所が現像時に溶解する)であれば、ビーム中央部では線幅は細く、ビーム周辺部では線幅が太くなる。
【0048】
このように、ビーム中央部とビーム周辺部とで、形成されるパターンの線幅に差が生じるため、線幅の変動を抑えて露光するためには、やはり図7(b)に示すように、パターン有効エリアをビームの中央付近に限定することが好ましい。パターン有効エリアは、用途に応じて異なるが、一般にビーム中央付近10%〜50%(より好ましくは10%〜30%、さらに好ましくは20%)であることが好ましい。
【0049】
パターン有効エリアがビーム中央付近に限定されると、図7(c)に示すように、照度有効エリアがその分狭くなるため、大面積を露光するには空間フィルタ(ピンホール)から基板までの距離を大きくする必要があり、装置を小型化しにくい。例えばピッチ130nmの干渉パターンを8インチウェハ(=φ200mm)全面に一括露光するために、λ=248nm、θ=72°、集光レンズNA=0.20、露光有効エリア10%とすると、ピッチの累積誤差は最大で7.5μm程度となり、空間フィルタから基板までの距離は約5100mm程度必要になる。また、このように基板までの距離が長くなることで環境変動の影響を受けやすくなるということも懸念される。具体的には、環境温度変化による屈折率nの変化が生じることで、露光中に干渉縞のピッチが変動し、露光異常となることが懸念される。
【0050】
これに対して、本実施形態では、上述したようにステップアンドリピート方式を採用し、基板をステージ駆動により搬送しながら小区画ずつ露光する。したがって、光学系素子から基板までの距離を短く設定することができ、装置を大型化することなく大面積の露光が可能となる。また、環境変動の影響も受けにくい。
別の例として、以下、本実施形態と先行文献2とを比較して説明する。先行文献2の様態を図9(a)に示す。この方式は、ステップアンドリピート方式を採用した二光束干渉露光方法において、本実施形態のようにマスク13によって露光エリアを矩形に整形しない場合の装置構成である。
【0051】
この場合、図9(c)に示すように一定の照度分布を得るためには、露光パターンは、図9(b)に示すように、基板搬送方向においてパターン有効エリアを互いに重畳させる方式となる。このとき、各露光での照射エネルギーは、重ね合わせ回数に応じて減らす必要がある。そのため、パターン有効エリアが本実施形態と同等である場合、本実施形態のように露光エリアを矩形に整形する場合と比較して、重ね合わせ回数に応じて基板へのショット回数が増加する。これにより、基板のX方向及びY方向へのトータルの移動距離が増大し、かつ基板が所定位置に配置されるように整定する(ステージの振動等が無い状態とする)ための整定回数自体も増加することになるため、スループットが低下する。
【0052】
また、干渉光を重畳させるには、干渉パターンのピッチが安定している必要がある。二光束干渉露光において、干渉ビームの波面の乱れはピッチ誤差を増大させるため、基板に転写される干渉パターンは完全な直線ではなく、前述したような双曲線状や、波打ったような形状となる。したがって、ピッチ誤差が干渉ピッチの寸法以上に大きい状態では、干渉光を重畳させることは原理的に不可能となる。これを解消するためには、干渉ビームを理想平面波にする必要がある。しかし、一般にレンズは収差を持っているため、理想平面波を得るためには、ビーム径を小さく絞り、レンズ中央部分のみを使用する必要がある。すなわち、露光有効エリアを小さくする必要がある。これはショット数の増加の一因となり、スループット低下につながる。一方、大口径の理想平面波を得る方法としては、低NAかつ長焦点距離のレンズを用いるか、収差補正された高精度レンズを用いる方法などが考えられるが、装置設計や製造コスト、光学素子設計の面でハードルが高い。
【0053】
また、干渉光を重畳させるには、干渉縞をつなぎ合わせるべく干渉縞を走査制御する必要がある。この場合、干渉パターンのライン同士が重畳しないなどの不具合が生じないように、基板搬送用のステージには、干渉ピッチと同程度の精度で制御可能な、極めて高い位置決め精度が必要となる。すなわち、微細な干渉ピッチでオーバーラップ露光するためには、ステージにサブミクロン〜nmオーダーの停止安定性及び繰り返し精度が求められるため、制御ハードルが高い。
【0054】
これに対して、本実施形態では、矩形開口を有するマスクを使用しパターン有効エリアを矩形状に整形するため、ステップアンドリピート方式により、パターン有効エリアを互いに重畳させることなく、当該パターン有効エリアを基板搬送方向に並べることができる。したがって、図9の露光方法のように、パターン有効エリアを互いに重畳させる方式に比べ、基板へのショット回数を減少させることができる。その結果、基板全体への露光時間を短縮し、スループットを向上することができる。
【0055】
例えば、基板サイズが8インチ、パターン有効エリアが20.5mm×13.8mmである場合、パターン有効エリアを重畳させない本実施形態では、基板へのショット回数は88回となる。一方、基板サイズおよびパターン有効エリアの面積が上記と同じで、パターン有効エリアをX方向及びY方向において重畳させる図9の露光方法では、X方向及びY方向への重ね合わせ回数を2回(ある点を露光するのに必要なエネルギーが2回のショットに分けられる)とすると、基板へのショット回数は352回となる。
【0056】
また、本実施形態では、パターン有効エリアを互いに重畳させないため、干渉パターンの形状にそれほど高い精度が必要とされない。なぜなら、理想平面波が得られず、ピッチ誤差が干渉ピッチの寸法以上であっても、干渉パターン同士を重畳させる必要がないため、原理的な制限がないためである。したがって、ピッチ誤差をある程度許容できる用途に対しては、露光有効エリアを大きくしてもよく、ショット数を減少させ、スループットを向上させることができる。もちろん、ピッチ誤差が許容できない用途に対しては、理想平面波が得られる光学系を採用してもよい。
【0057】
さらに、本実施形態では、パターン有効エリアを互いに重畳させないため、基板搬送用のステージにそれほど高い位置決め精度が必要とされない。すなわち、制御系構築に必要なコストを抑えることができる。具体的には、基板搬送用ステージに要求される位置決め精度が0.5μm以上でもよい。ただし、位置決め精度があまりに低いと、デッドゾーンの面積比が増加する要因となるため、位置決め精度は5μm以下であることが望ましい。
以上のように、本実施形態では、二光束干渉露光においてステップアンドリピート方式を採用するので、装置を大型化することなく大面積への露光が可能となる。したがって、装置の大型化に伴うコストを削減することができる。
【0058】
また、二光束干渉露光において干渉光が照射される干渉領域を矩形に整形するので、当該干渉領域を基板搬送方向に重畳させずにステップアンドリピート方式による露光が可能となる。したがって、干渉領域を重畳させる方式に比べて基板へのショット回数を減少することができ、スループットを向上することができる。
このように、スループットが高く且つ低コストにて、ワークWへの微細加工を実現することができる。
【0059】
さらに、干渉領域の基板搬送方向両側に非干渉領域を形成し、当該非干渉領域を基板搬送時の重ね合わせに使用するので、干渉領域同士が重畳されることによるオーバー露光を防止することができる。また、この非干渉領域は、干渉領域を基板上に並べて配置するときの指標として使用できるため、容易且つ適切に基板を露光することができる。
また、矩形状の光透過部を有する遮光部材であるマスク13を基板上に配置するので、比較的容易に干渉領域を矩形に整形することができる。さらに、このとき、基板とマスク13との間にギャップDを設けるため、両者が密着することに起因するパーティクル等の付着を防止することができる。
【0060】
上記の露光方法は、例えばファイバブラッググレーティング(以下、FBG)の製造方法に適用することができる。
FBGは光ファイバセンサの一種で、温度や歪みの計測に用いられている。FBGは光ファイバなどに形成された屈折率の周期構造であり、図10(b)に示すように、屈折率nと、nとは異なる屈折率n’が交互に並んだ状態となっている。この構造は、ファイバ内を伝播する光のうち、ある特定の波長の光のみを反射させ、それ以外の波長の光を透過させる性質を持っている。また、反射する波長λbは屈折率の周期Λとファイバの有効屈折率neに依存し、λb=2neΛの関係が成り立つ。したがって、温度や歪みなどによって周期構造に変化が生じると、ファイバ内を伝播する光の波長の変調として温度や歪みなどを計測することができ、温度センサ、または歪みセンサとして利用することができる。
【0061】
FBGのような屈折率の周期構造を製造するには、感光性のある材料に、強度が周期的に分布している光を照射すればよい。図10(a)は感光前のファイバを、図10(b)は感光後のファイバの屈折率分布を、それぞれ示している。このような構造を製造する方法としては、二光束干渉露光が適している。本実施形態では二光束干渉露光によって、高スループットで大面積への露光が可能となるため、FBG製造の際には複数のファイバを高速に処理するといったことが可能となる。
【0062】
FBG製造には、このように干渉光のパターンに対応した物性を付与する方法が用いられるが、その他の用途として、干渉光のパターンに対応した形状を形成する方法も考えられる。例えば高出力パルスレーザーによるレーザーアブレーションを利用して、干渉光のパターンを直接基板に加工する方法や、光硬化性樹脂を露光し、硬化させて、干渉光のパターンに対応した微細構造を得る方法などである。これらは基板の表面改質や、フォトニック結晶製造などに適用できる。本実施形態では二光束干渉露光によって、高スループットで大面積への露光が可能となるため、大面積ワークの表面改質や、フォトニック結晶製造の高速化などが可能となる。
【0063】
また、上記の露光方法は、例えばグリッド偏光素子の製造方法に適用することができる。
偏光光を得る偏光素子は、偏光サングラスのような身近な製品を始めとして偏光フィルタや偏光フィルム等の光学素子として各種のものが知られており、液晶ディスプレイ等のディスプレイデバイスでも使用されている。偏光素子には、偏光光を取り出す方式から幾つかのものに分類されるが、その一つにワイヤーグリッド偏光素子がある。
【0064】
ワイヤーグリッド偏光素子は、透明基板上にアルミのような金属より成る微細な縞状の格子を設けた構造のものである。格子を成す各線状部の離間間隔(格子間隔)を偏光させる光の波長以下とすることで偏光素子として機能する。直線偏光光のうち、格子の長さ方向に電界成分を持つ偏光光にとってはフラットな金属と等価なので反射する一方、長さ方向に垂直な方向に電界成分を持つ偏光光にとっては透明基板のみがあるのと等価なので、透明基板を透過して出射する。このため、偏光素子からは格子の長さ方向に垂直な方向の直線偏光光が専ら出射する。偏光素子の姿勢を制御し、格子の長さ方向が所望の方向に向くようにすることで、偏光光の軸(電界成分の向き)が所望の方向に向いた偏光光が得られることになる。
【0065】
以下、説明の都合上、格子の長さ方向に電界成分を持つ直線偏光光をs偏光光と呼び、格子の長さ方向に垂直な方向に電界成分を持つ直線偏光光をp偏光光と呼ぶ。通常、入射面(反射面に垂直で入射光線と反射光線を含む面)に対して電界が垂直なものをs波、平行なものをp波と呼ぶが、格子の長さ方向が入射面と平行であることを前提とし、このように区別する。
このような偏光素子の性能を示す基本的な指標は、消光比ERと透過率TRである。消光比ERは、偏光素子を透過した偏光光の強度のうち、s偏光光の強度(Is)に対するp偏光光の強度(Ip)の比である(Ip/Is)。また、透過率TRは、通常、入射するs偏光光とp偏光光の全エネルギーに対する出射p偏光光のエネルギーの比である(TR=Ip/(Is+Ip))。理想的な偏光素子は、消光比ER=∞、透過率TR=50%ということになる。
【0066】
なお、格子が金属製である偏光素子はワイヤーグリッド偏光素子と呼ばれるが、格子が金属製でないものを含めて、以下、単に「グリッド偏光素子」と呼ぶ。
図11は、グリッド偏光素子の製造方法を示す概略図である。
先ず、図11(a)に示すように、透明基板30上に格子用薄膜40を作成する。ここで、格子用薄膜40の材質は、例えば無機誘電体である。次に、図11(b)に示すように、格子用薄膜40の上にフォトレジスト50を塗布する。
そして、この状態で本実施形態の露光方法によりフォトレジスト50を露光し、現像を行う。これにより、図11(c)に示すように、フォトレジストのパターン51を得る。このパターン51は格子状となっている。
【0067】
次に、レジストパターン51の側からエッチャントを供給し、レジストパターン51で覆われていない箇所の格子用薄膜40をエッチングする。エッチングは、格子用薄膜40の厚さ方向に電界を印加しながら行う異方性エッチングである。これにより、図11(d)に示すように、格子用薄膜40がパターン化され、パターン41を得る。
最後に、図11(e)に示すように、レジストパターン51を除去する。すると、格子42が得られ、グリッド偏光素子が完成する。格子42は、一定の方向に延びるパターン41を、間隔をおいて平行に多数配置した構造であるので、ラインアンドスペースとしばしば呼ばれる。
【0068】
上述した図5に示すように、基板搬送方向において隣接する有効照射領域E0内の非干渉領域E2同士を重畳させる場合、基板搬送方向において隣接する各干渉領域E1の間に非干渉領域E2が介在する。この非干渉領域は、デッドゾーンとなる領域であり、極端に大きいと、グリッド偏光素子では偏光性能の指標である消光比(ER)が低下する等の不具合が生じる。そのため、グリッド偏光素子として実用上問題ない水準の消光比を得るように、デッドゾーン面積比を用途に応じて適宜設定する必要がある。
【0069】
以下、デッドゾーンの面積比について検討する。
図12は、デッドゾーンが無い場合の消光比を横軸にとり、デッドゾーンを含めた場合の消光比を縦軸にとった場合の、消光比の推移を示すグラフである。ここでは、1ショットの大きさを20.5mm×13.8mm、透過率をいずれの場合も40%としている。
図12において、符号aはデッドゾーンの面積比が0%、符号bは面積比0.1%、符号cは面積比0.2%、符号dは面積比0.3%、符号eは面積比0.4%、符号fは面積比0.5%、符号gは面積比0.6%、符号hは面積比0.7%、符号iは面積比0.8%、符号jは面積比0.9%、符号kは面積比1.0%、符号lは面積比2.0%、符号mは面積比3.0%、符号nは面積比4.0%、符号oは面積比5.0%の消光比の推移を示している。
この図12からも分かるように、デッドゾーンの面積比が0%である場合には消光比ERは200となり、面積比が0.4%である場合には消光比ERが100程度に低下する。
【0070】
さらに、干渉角度θを15〜60°、ギャップDを0〜20μm、デッドゾーン幅(非干渉領域)2D・tanθを0〜70μmの範囲で変化させたときの、デッドゾーン幅とデッドゾーン面積比の関係を図13に示す。この図13では、デッドゾーン幅を横軸にとり、デッドゾーン面積比を縦軸にとっている。この図13に示すように、デッドゾーン幅が0〜70μmとした場合に、デッドゾーン面積比が0%〜0.4%となる。
以上から、干渉角度θが15°〜60°、デッドゾーン(非干渉領域)幅が0〜70μm、デッドゾーンの面積比を0.4%未満とすることにより、グリッド偏光素子の消光比を100以上とすることができることがわかる。
一般に、グリッド偏光素子として実用上問題ない水準の消光比は100以上とされていることから、非干渉領域の面積をA、干渉領域の面積をBとしたとき、デッドゾーン面積比=[(A/B)×100]が0.4%未満となるようにすればよい。
【0071】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、上述した第1の実施形態において、基板搬送方向に有効照射領域E0を並べる際、干渉領域E1同士は重畳させず、非干渉領域E2同士を重畳させているのに対し、非干渉領域E2を隣接する干渉領域E1に重畳させるようにしたものである。
図14は、第2の実施形態における露光方法を示す図である。
図14(a)に示すように、m回目の露光における有効照射領域E0内の干渉領域E1と、(m−1)回目の露光における有効照射領域E0内の干渉領域E1とは重畳せず、且つm回目の露光における有効照射領域E0内の干渉領域E1と、(m−1)回目の露光における有効照射領域E0内の非干渉領域E2、及びm回目の露光における有効照射領域E0内の非干渉領域E2と、(m−1)回目の露光における有効照射領域E0内の干渉領域E1とが重畳するようにワークWを搬送する。
【0072】
この場合、図14(b)に干渉パターンの照度分布を示すように、レジスト感光閾値や照度分布の条件次第で、干渉領域E1と非干渉領域E2とが重畳している領域E3にはパターンが形成される。
この第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様に、基板搬送方向において隣接する各有効照射領域E0の各干渉領域E1同士は重畳させないため、各干渉領域E1同士を重畳させる図9の露光方法に比べ、ショット回数を減少させることができ、スループットを向上させることができる。
【0073】
また、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と比較してデッドソーンを小さくすることができ、製品性能を確保することができる。
なお、この場合にも、基板搬送方向において隣接する各干渉領域E1の間には非干渉領域E2が介在する場合がある。この非干渉領域E2はデッドゾーンとなるため、デッドソーンの存在が問題視される用途においては、非干渉領域E2を可能な範囲で小さくすることが望ましい。
【0074】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態は、上述した第1及び第2の実施形態において、マスク13をワークW上にギャップDを設けて配置しているのに対し、ギャップDを設けずにマスク13をワークW上に直接配置するようにしたものである。
本実施形態では、マスク13をワークW上に接触させた状態で露光を行う。この場合、図2で説明したような光線の回り込みがなされないため、干渉領域E1の両エッジに非干渉領域E2は形成されない。すなわち、有効照射領域E0と干渉領域E1とは同面積となる。
【0075】
ステップアンドリピート方式で露光する場合には、図15に示すように、基板搬送方向において隣接する干渉領域E1(=有効照射領域E0)同士が重畳されないようにする。このとき、隣接する各干渉領域E1の間に多少の隙間が設けられてもよい。なお、この隙間はデッドソーンとなるため、デッドソーンの存在が問題視される用途においては、この隙間を可能な範囲で小さくすることが望ましい。
このように、マスク13をワークWにコンタクトさせた状態で配置するので、上述した第1及び第2の実施形態と比較して、非干渉領域E2分だけ露光有効エリアを広くすることができる。したがって、その分ショット回数を少なくすることができ、スループットを向上させることができる。
【0076】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
この第4の実施形態は、上述した第1〜第3の実施形態において、ストライプ状の干渉パターンを基板に照射しているのに対し、格子状の干渉パターンを基板に照射するようにしたものである。
本実施形態では、図16(a)に示すように、往路(実線矢印)と復路(破線矢印)とでそれぞれ干渉パターンを照射する。往路では、第1〜第3の実施形態における露光方法と同様に、Y方向に伸びるストライプ状の干渉パターンを基板の全体に照射する(図16(b))。この往路で基板に照射されるパターンを第1の干渉パターンとする。
【0077】
その後、復路では、往路において基板に照射したストライプ状の干渉パターンを90°回転させた状態で、基板にX方向に伸びるストライプ状の干渉パターンを照射する。この復路で基板に照射されるパターンを第2の干渉パターンとする。
このように、第1の干渉パターンと第2の干渉パターンとが重畳して照射された部分は、格子状のパターンが照射されることになる。
【0078】
以下、本実施形態の露光方法についてより具体的に説明する。
往路では、第1〜第3の実施形態の露光方法と同じ方法で第1の干渉パターンを基板に照射する。復路では、図16(a)に示すように、往路で最後の列(n列目)を照射する際の基板搬送方向が+X方向であった場合、基板を−X方向に搬送しつつ、n列目に対して第2の干渉パターンを照射する。そして、往路において基板を+Y方向に順次に搬送していた場合、n列目の照射が終了すると−Y方向に基板を搬送し、(n−1)列目に対する第2の干渉パターンの照射を開始する。このとき、(n−1)列目に対しては、+X方向(往路と180°反対方向)に基板を搬送しつつ第2の干渉パターンを照射する。この(n−1)列目に対しても、往路で照射した干渉パターンに対して90°回転した干渉パターンを照射する。
【0079】
上記の操作を繰り返すことにより、基板の全面に格子状の干渉パターンを形成することができる。例えば、基板に塗布された感光性材料膜(レジスト等)が、光照射部分が現像液に溶解するポジ型である場合は、この露光方法を用いて露光することにより、格子状に光照射された箇所が溶解して、円柱、角柱、円錐、角錐などが残存したパターンを形成することができる。一方、感光性材料膜が、光照射部分が架橋して現像液に溶解しなくなるネガ型である場合は、この露光方法を用いて露光することにより、格子状に光照射された箇所が現像後に残存し、四角や丸等の形状の凹部を有するパターンを形成することができる。
このように、容易に基板上に格子状のパターンを形成することができる。
【0080】
このような格子状のパターンを得るためには、露光ビームの分岐方法を変更してもよい。すなわち、ビームを2以上に分岐させ、それらを一度に基板へと照射してもよい。このような方法を多光束干渉露光と呼ぶ。分岐手段には、例えば、レーザーを複数のビームに分岐させる回折光学素子を用いてもよい。多光束干渉露光で、上記のように、2つのビームの干渉パターンを90°回転させて重畳させる方法と同様の結果を得るためには、図17に示すように、ビームを4分岐させて、分岐ビームと基板の法線がなす4つの面が90°ずつ配向し、かつ、基板に入射する際に向かい合う2つの分岐ビームがなす角度が所定の干渉角度となるように、光学部品を配置すればよい。
【0081】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
この第5の実施形態は、上述した第1〜第4の実施形態において、折り返しミラー7a,7bが固定ミラーであったのに対し、角度可変ミラーとしたものである。
図18は、第5の実施形態の露光装置を示す概略構成図である。
この露光装置1は、図1の露光装置1において折り返しミラー7a,7bを角度可変ミラー7a´,7b´としたことを除いては、図1に示す露光装置1と同様の構成を有する。したがって、ここでは図1と同一構成を有する部分には同一符号を付し、構成の異なる部分を中心に説明する。
【0082】
角度可変ミラー7a´,7b´は、光入射面の角度を変更可能に構成されており、当該光入射面の角度を変更することで干渉角度θを所望の角度に変化させる。干渉角度θを変えることにより、基板に形成されるストライプ状の干渉パターンのピッチを自在に変更することができる。
図19は、角度可変ミラー7a´及び7b´の機構を示す図である。角度可変ミラー7a´と7b´とは同一構成を有するため、ここでは角度可変見ミラー7a´の機構についてのみ図示している。
【0083】
角度可変ミラー7a´(以下、単に「ミラー」という)は、干渉角度θを任意の角度に調整するための素子で、ビーム分岐素子6で分岐されたビーム(分岐ビーム)B1がなす直線上を移動し、且つ紙面垂直軸周りに角度を変えることができる。当該ミラー7a´で反射されたビーム(ミラー反射ビーム)B5は、ワークW上の所定の位置に向けられ、もう片方のミラーからのミラー反射ビームとワークW上で結合し、干渉縞を形成する。すなわち、ミラー7a´の法線は、分岐ビームB1とミラー反射ビームB5とがなす角の二等分線となる。
【0084】
ミラー7a´の法線を所定の方向に保ったまま干渉角度θを調整する方法として、例えば、図19(a)及び(b)に示すようなT字型のフレームTを持つリンク機構を用いる方法がある。T字フレームTには3つのスライダSが設けられ、そのうちの2つは分岐ビームB1及びミラー反射ビームB5がなす直線上をそれぞれ移動し、残りの1つにはミラー7a´が取り付けられ、T字フレームT上を移動する。
【0085】
また、ミラー7a´の回転軸は分岐ビームB1及びミラー反射ビームB5の交点位置で拘束されている。干渉角度θを調整する際には、図19(a)から図19(b)のように、ミラー7a´の法線方向が、分岐ビームB1とミラー反射ビームB5とがなす角の二等分線を維持したまま、所定の方向へ変化する。
この干渉角度θは、駆動部(アクチュエータ)22を用いて調整する。駆動部22は、ミラー反射ビームB5のなす直線上に配置されたフレームに作用し、干渉角度θを調整する。なお、駆動部22は、T字フレームTに作用して干渉角度θを調整する構成であってもよい。
【0086】
このように、本実施形態の露光装置は、ビーム分岐素子6で2以上に分岐した光が所望の角度で交差するように、分岐したそれぞれの光を基板へ向けて偏向する角度可変ミラー7a´,7b´を備えるので、基板に形成されるストライプ状の干渉パターンのピッチを自在に変更することができ、様々な用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…露光装置、2…光源、3…ビームエキスパンダ、4…打ち下ろしミラー、5…シャッター、6…ビーム分岐素子、7a,7b…折り返しミラー、8a,8b…集光レンズ、9a,9b…ピンホール、10a,10b…コリメートレンズ、11…ステージ、12…吸着盤、13…マスク(遮光部材)、14…ギャップセンサ、20…コントローラ(基板搬送制御部)、21…ステージ駆動回路、30…透明基板、40…格子用薄膜、41…パターン、42…格子、50…フォトレジスト、51…パターン、W…ワーク(基板)
図1
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