(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,従来の吸収性パッドは,使い捨ておむつの吸収部分と同程度の大きさであるか,若しくは使い捨ておむつの吸収部分よりも少し大きめに形成されることが一般的であった。他方,着用者によっては,使い捨ておむつの一部にのみ吸収性パッドを重ねて,局所的にクッション性を高めたいとの要望もある。しかしながら,従来の吸収パッドは,その大きさを調節することが難しいものであった。例えば吸収性パッドはその内部にSAPやポリマーなどの細かい素材を含むため,ハサミ等によって切断してその大きさを調節することはできない。また,吸収性パッドを折り畳んで局所的に使用することも考えられるが,吸収性パッドを折り畳むとその分厚みが増すこととなり,使い捨ておむつの着用感が損なわれる。
【0006】
また,上記のように吸収性パッドの大きさの調節は困難であることから,例えば着用者がごく少量の尿を排泄して吸収性パッドの一部のみが湿潤した場合であっても,その尿を処理するためには吸収性パッド全体を交換する必要がある。このため,吸収性パッドの交換頻度が高くなるとともに,吸収性パッドの交換コストが嵩む恐れがあった。
【0007】
また,従来の吸収性パッドは,一般的にパルプ層とSAPから構成された吸収体を含むため,尿などの液体は迅速に吸収することができるものの,軟便のような粘土の高い排泄物については,その内部に閉じ込めにくくなっている。つまり,従来の吸収性パッドの吸収体は,内部の空隙率が比較的低いため,高粘性の排泄物の吸収速度が遅い。また,従来の吸収性パッドは,体圧が分散しにくくなっているため,粘土の高い排泄物を吸収しても,局所的に体圧が掛かったときには,吸収した排泄物が滲み出ることがあり,適切に排泄物を閉じ込めておくことができないものであった。
【0008】
そこで,現在では,着用者の要望に応じて大きさを適宜調節することができ,使い勝手が良く,また,軟便などのような高粘性の排泄物を適切に内部に封じることのできる補助物品が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで,本発明の発明者は,従来の問題の解決手段について鋭意検討した結果,2層のシートの間に複数個の立体編物を介在させ,各立体編物の周囲を囲うように2層のシートを接合し,その接合部分にミシン目などの切断可能線を設けるという構造を見出した。このような構造によれば,ミシン目に従って,2層のシートに挟まれた立体編物(吸収パネル)を個別に切り取って使用することができるようになる。このような吸収パネルは,個別に使い捨ておむつに重ねて使用することができる。例えば,吸収パネルは,おむつのクッション性を部分的に向上させる用途として利用できる。また,吸収パネルは,おむつに部分的に重ねて使用されるものであるため,着用者が尿を排泄したときには,その尿を吸収した吸収パネルのみを交換すれば済むようになる。さらに,各吸収パネルには,立体編物が含まれる。立体編物は,空隙率が高く,立体方向に排泄物を貯留するための空間を有する。また,立体編物は,耐圧分散性が高い。従って,吸収パネルのそれぞれが立体編物を含むことで,軟便などの粘土の高い排泄物を適切に封じ込めることが可能となる。
そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0010】
本発明は,吸収補助物品に関する。
本発明の吸収補助物品は,液透過性の上層シート10と,液透過性の下層シート20と,これらのシートの間に介在する複数の立体編物30と,を備える。
また,上層シート10と下層シート20が複数の立体編物30同士の間において接合されることにより,シール部40が形成されている。
さらに,シール部40には,ミシン目などの切断可能線50が形成されている。
【0011】
上記のように,吸収補助物品は,複数の吸収パネルが連なった構造を有する。ここで,「吸収パネル」とは,上層シート10と下層シート20の間に一つの立体編物30が介在する部材を意味する。つまり,吸収補助物品に形成された切断可能線50に沿って上層シート10と下層シート20を切断することで,吸収パネルを個別に切り離すことができるようになっている。例えば,吸収補助物品から1つの吸収パネルを切り離したり,連続した2つ以上の吸収パネルを切離したりするなど,その吸収パネルの大きさを適宜調節できる。従って,例えば使い捨ておむつの内面の一部に吸収パネルを重ねるなど,使用者が,その使用目的に応じて適宜吸収パネルの大きさを調節できるようになる。このため,使い勝手の良い吸収補助物品を提供できる。
【0012】
本発明の吸収補助物品において,立体編物30は,上層編地31と,下層編地32と,複数の連結繊維33とを含むことが好ましい。上層編地31は,上層シート10側に位置し,複数の上層開口部31aが形成されている。下層編地32は,下層シート20側に位置し,複数の下層開口部32aが形成されている。連結繊維33は,上層編地31と下層編地32を,間隔をあけて連結する複数の繊維である。
【0013】
具体的には,立体編物30は,上層編地31と下層編地32の一方の編地において,開口部を画定する複数の編目のうちの少なくとも1つから,他方の編地において対向する位置の開口部を画定する編目に,4本以上の連結繊維33が延在していることが好ましい。これにより,上層編地31と下層編地32の開口部を確定する編目同士が,4本以上の連結繊維33によって互いに連結されていることが好ましい。
【0014】
上記のように,本発明の吸収補助物品に含まれる立体編物30は,2枚の編地31,32を縦方向(立体方向)に連結する連結繊維33を備えているため,縦方向に空間が形成され,その空間の中に軟便などの高粘性排泄物を取り込むことができる。また,立体編物30は,縦方向に対するクッション性が高く,局所的に付与される体圧を効率的に分散できる。従って,立体編物30は,その空間の中に軟便を取り込んでいる状態で,局所的な体圧を受けた場合であっても,その体圧を分散できるため,軟便が外部に滲みだすような事態を防止できる。また,連結繊維33として復元力の高い繊維を用いることにより,体圧分散性を安定的なものとすることが可能である。また,立体編物30を構成する2枚の編地31,32には開口部が形成されており,しかもこれらの編地は繊維を編み込むことによって形成されているため,立体編物自体が良好な通気性を有している。さらに,立体編物30は,複数の繊維を編み込むことで構成されているため,横方向及び縦方向に対する強度が高く,結果として吸収性物品の耐久性が向上する。従って,吸収体に立体編物の構造を組み込むことにより,例えば褥瘡の発生を効果的に防止することができる。
【0015】
本発明に係る吸収補助物品において,上層シート10には,孔部11が複数箇所に形成されていることが好ましい。なお,下層シート20に小孔を形成することも可能である。
【0016】
上記のように,上層シート10の複数箇所に孔部11を形成することで,高粘性の排泄物を,その孔部11を介して立体編物30の立体空間内に導くことができる。従って,排泄物を,立体編物30内に貯留しやすくなる。
【0017】
本発明に係る吸収補助物品において,下層シート20の外面側に,滑り止め部材60が配置されていることとしてもよい。
【0018】
上記構成のように,下層シート20に滑り止め部材60を取り付けることで,吸収補助物品を使い捨ておむつに重ねて配置したときに,吸収補助物品の位置がずれにくくなる。
【0019】
本発明に係る吸収補助物品において,立体編物30は,周囲の一部分,複数部分,又は全部分が切断されることにより,その形状が成型されたものであり,当該切断された部分に,解れ防止部が形成されていることが好ましい。
【0020】
上記構成のように,立体編物30の周囲を切断してその形状を成型したときに,その切断部分に,接着剤を塗布したり,熱融着を行ったり,糸によって縫製したりすることによって,解れ防止部を形成する。これにより,立体編物30の切断面において,構成繊維が解けたり,繊維の屑が発生することを防止できる。つまり,立体編物30は,切断加工によりその形状が成型されたものであっても,その切断部分に解れ防止部を有するため,立体編物の切断面において,構成繊維が解けたり,繊維の屑が発生することを防止することができる。よって,立体編物を含む吸収体を,様々な形状に加工することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば,着用者の要望に応じて大きさを適宜調節することができ,使い勝手が良く,また,軟便などのような高粘性の排泄物を適切に内部に封じることのできる吸収補助物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
なお,本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
【0024】
図1は,本発明に係る吸収補助物品100の一例を示した平面図である。また,
図2は,
図1に示したA−A線における断面図である。
図1及び
図2に示されるように,吸収補助物品100は,上層シート10と下層シート20の間に,複数個の立体編物30が挟み込まれた構造となっている。
【0025】
上層シート10と下層シート20は,共に,液透過性のシート部材によって形成されている。例えば,上層シート10と下層シート20は,不織布などの柔軟性が高い液透過性材料で形成されていることが好ましい。液透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,上層シート10と下層シート20は,例えば,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリエステル,又はナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維に親水化処理を施して,不織布にしたものを用いることとしてもよい。また,上層シート10と下層シート20を構成する不織布としては,綿等の天然繊維を,スパンボンド法,エアスルー法,スパンレース法,サーマルボンド法,メルトブローン法,又はニードルパンチ法等の加工法によって加工したものが挙げられる。
【0026】
図1及び
図2に示されるように,上層シート10と下層シート20の間には,複数個の立体編物30が介在している。立体編物30は,複数の繊維を平面方向及び立体方向に編み込むことにより構成され,立体方向に対するクッション性を持つ部材である。
図2に示されるように,本実施形態において,立体編物30は,上層編地31と,下層編地32と,それぞれの編地31,32を一定以上の間隔をあけて互いに連結する複数の連結繊維33とにより構成される。立体編物30は,平面視したときに,四角形状で構成されていることとしてもよいし,円形状,楕円形状,三角形状,五角形状,又はその他多角形状で構成されていてもよい。なお,複数個の立体編物30は,それぞれ形状が異なるものであってもよい。立体編物30の構成は,後ほど詳しく後述する。
【0027】
図1に示されるように,複数個の立体編物30は,間隔を空けて配置されている。
図1に示した例では,
図1の横方向と縦方向にそれぞれ複数個ずつ並べられている。立体編物30は,n行×m列で配置することができる。例えば,
図1に示した例では,立体編物30は,3行×3列の合計9個並べられている。ただし,立体編物30は,1列に複数個連なって並べられたものであってもよい。立体編物30同士の間の間隔は,適宜調節することができる。例えば,立体編物30同士の間の間隔は,少なくとも1mm以上であることが好ましく,1mm〜50mm,5mm〜40mm,又は10mm〜30mmであってもよい。
【0028】
図2に示されるように,複数の立体編物30の間において,上層シート10と下層シート20は互いに接合されている。すなわち,上層シート10と下層シート20は,各立体編物30の周囲を囲うようにして,接合されている。これにより,各立体編物30は,上層シート10と下層シート20の間に封入されることとなる。このように,上層シート10と下層シート20が接合されることにより,その接合箇所がシール部40となる。上層シート10と下層シート20は,ホットメルト接着剤等の接着剤によって接着されていてもよいし,超音波シールやヒートシールによって互いに融着されていてもよい。シール部40は,立体編物30同士の間において,全面的に形成することもできるが,接合部と非接合部が交互に連続するように間欠的に形成することも可能である。
【0029】
また,
図1及び
図2に示されるように,吸収補助物品100のシール部40には,切断可能線50が形成されている。つまり,切断可能線50は,複数個並べられた立体編物30のそれぞれの間を区切るようにして形成される。切断可能線50は,
図1に示すように,ミシン目線であってもよいし,二本のミシン目線が平行に形成された切取帯であってもよい。このように,シール部40に切断可能線50が形成されていることで,上層シート10と下層シート20の間に封入された状態の立体編物30を,それぞれ個別に切り離すことができる。ここで,本願明細書において,上層シート10と下層シート20の間に一つの立体編物30が介在する部材を,便宜的に「吸収パネル」(100´)と称する。
図1では,右下に位置する吸収パネル100´が,切断可能線50に沿って切り離された様子を示している。
【0030】
このような構造によれば,切断可能線50に従って,必要な数や必要な大きさの吸収パネル100´を個別に切り取って使用することができるようになる。例えば,吸収パネル100´は,個別に使い捨ておむつに重ねて使用することができる。例えば,吸収パネルは,おむつのクッション性を部分的に向上させる用途として利用できる。また,吸収パネル100´は,おむつに部分的に重ねて使用することができるため,着用者が尿を排泄したときには,その尿を吸収した吸収パネル100´のみを交換すれば済むようになる。これにより,着用者は,使用目的に応じて,適切な大きさの適切な数の吸収パネル100´を使用でき,その使い勝手が良いものとなる。
【0031】
また,
図2の断面図に示されうるように,吸収補助物品100の下層シート20の外面側には,滑り止め部材60が取り付けられていてもよい。滑り止め部材60としては,例えば,公知の粘着テープや面ファスナー(メカニカルテープ)を利用することができる。特に,滑り止め部材60は,吸収パネル100´ごとに設けられていることが好ましい。滑り止め部材60を設けることで,各吸収パネル100´を使い捨ておむつの内面に重ねて配置したときに,この吸収パネル100´がずれにくくなる。
【0032】
また,
図3は,吸収パネル100´を拡大して示した平面図である。
図3は,吸収パネル100´を,上層シート10側から見た状態を示している。
図3に示されるように,上層シート10には,複数の孔部11が形成されていることが好ましい。孔部11の形状は,
図3に示すように,円形であってもよいし,楕円形であってもよいし,多角形であってもよい。各孔部11の開口面積は,例えば,5mm
2〜200mm
2であることが好ましい。また,一つの吸収パネル100´における上層シート10の面積を100%としたときに,この上層シート10に形成される複数の孔部11の開口面積の合計(開口率)は,10〜90%であればよい。このように,上層シート10に,複数の孔部11を形成することで,この孔部11を介して,軟便などの高粘性の排泄物が立体編物30内に導入されやすくなる。また,詳しくは後述するが,上層シート10の各孔部11の開口面積は,立体編物30の上層編地31に形成される上層開口部31aの開口面積よりも,大きいものであることが好ましい。なお,図示は省略するが,上層シート10に形成した孔部11と同様に,下層シート20にも複数の孔部を形成することができる。
【0033】
また,
図3において,符号Yは,立体編物30の縦方向の長さを示し,符号Xは,立体編物30の横方向の長さを示している。立体編物30は,縦方向の長さYと,横方向の長さXが実質的に等しくてもよいし,異なっていてもよい。例えば,縦方向の長さYと横方向の長さXは,50mm〜350mmであることが好ましく,70mm〜150mmであってもよい。
【0034】
続いて,
図4〜
図6を参照して,立体編物30の構造について詳しく説明する。
図4は,立体編物30の構造を模式的に示した斜視図である。
図4に示されるように,立体編物30は,上層編地31と,下層編地32と,それぞれの編地31,32を一定以上の間隔をあけて互いに連結する複数の連結繊維33とにより構成される。上層編地31及び下層編地32のそれぞれは,複数の構成繊維を平面方向に連結して編み込むことで形成されており,上層編地31には上層開口部31aが画定され,下層編地32には下層開口部32aが画定されている。また,複数の連結繊維33は,上層編地31及び下層編地32のうちの一方から他方へと延在するように立体方向に編み込まれており,4本〜50本毎の繊維束となっている。本発明に用いられる立体編物30は,各繊維間の間隔が狭小となっており,上層編地31,下層編地32,及び連結繊維33を構成する繊維の表面張力や,各繊維によってもたらされる毛細管現象によって,各繊維の間に液体を保持することができる。特に,軟便のような粘性の高い排泄物は,複数の連結繊維33に付着して,立体編物30の内部空間によって保持されやすくなっている。
【0035】
図4に示されるように,上層編地31及び下層編地32のうちの一方の編地において,一の開口部を画定する編地が有する少なくとも一つの編目から,他方の編地において対向する一の開口部を画定する編地が有する編目に,4本以上の連結繊維が延在している。これにより,上層編地31及び下層編地32は,互いの開口部が連通するようになっており,束状の連結繊維33により,開口部を画定する編地同士が連結される。このようにして,上層編地31の上層開口部31aと,これに対向する下層編地32の下層開口部32aとを連通させることにより,気体や液体が流通する通路を確保することができるため,吸収体の通気性及び通液性が向上する。
【0036】
また,
図4に示されるように,複数の連結繊維33が,曲線状となった状態で上層編地31と下層編地32とを連結することとしてもよい。例えば,各連結繊維の長さを,上層編地31と下層編地32の間の間隔よりも長く形成することで,各連結繊維33を曲線状の形態とすることができる。このように,上層編地31と下層編地32を曲線状の連結繊維33によって連結することで,立体方向からの押圧が加わったときに各連結繊維33が弾性変形し易くなるため,立体編物30のクッション性が向上する。
【0037】
ただし,複数の連結繊維33は直線状となって上層編地31と下層編地32を連結するものであってもよい。この場合,各連結繊維33は,各編地31,32に対し直交するように延びるものであってもよいし,各編地31,32に対し傾斜して延びるものであってもよいし,各編地を構成する繊維と交差するものであってもよい。各連結繊維33が各編地31,32に対し傾斜するものである場合,その傾斜角度は一定である必要はなく,異なる角度で傾斜する連結繊維33を混在することとしてもよい。各編地31,32に対する連結繊維33の傾斜角度は,例えば45度〜90度であることが好ましく,60度〜80度であってもよい。
【0038】
立体編物30を構成する繊維の材料としては,例えば,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル,ウレタン,ナイロン,ガラス繊維,炭素繊維,又はその他剛性の高いプラスチック繊維などが挙げられる。立体編物30の構成繊維のうち,上層編地31を構成する繊維と,下層編地32を構成する繊維と,連結繊維33は,必ずしも材料を統一して形成される必要はなく,例えば各編地31,32と連結繊維33は異なる種類の繊維で構成されるものであってもよい。また,立体編物30を構成する繊維材料としては,親水加工,消臭加工,抗菌加工,肌ケア加工の一種類又は二種類以上の加工を施したものを用いることもできる。例えば,親水加工の方法としては,ポリエチレングリコールを,立体編物を構成する繊維の表面に塗布することができる。また,消臭加工としては,構成繊維に公知の消臭性組成物を含有させたり付着させたりすればよい。また,抗菌加工としては、公知の抗菌剤(例えば各種有機シリコーン系第4級アンモニウム塩)を構成繊維の表面に塗布すればよい。さらに,肌ケア加工としては,グリセリン,尿素,コラーゲン及びヒアルロン酸ナトリウム等の保湿剤を配合した肌ケア剤を,構成繊維の表面に塗布すればよい。
【0039】
連結繊維33の単繊維の断面の外周は,45μm以上であることが好ましい。具体的に説明すると,連結繊維33の単繊維の断面の外周は,例えば45μm〜450μmであることが好ましく,80μm〜300μmであってもよいし,100μm〜250μmであってもよい。連結繊維33の単繊維の外周は統一されたものである必要はなく,異なる外周を有する単繊維が複合されて用いられていてもよい。また,連結繊維33としては,断面形状が,円形,楕円形,三角形,四角形,W型,I型,その他多角形,又は中空となっているものを適宜採択して使用できる。また,連結繊維33の繊度は,1〜500dtとすればよい。特に,連結繊維33の繊度は,1〜20dt,3〜15dt,又は5〜10dtであることが好ましい。上記構成の連結繊維を使用することにより,上層編地31及び下層編地32の間隔を適切に保つことができる。また,上記構成の連結繊維を使用することにより,立体編物30のクッション性及び復元力が高まり,安定的な体圧分散性が得られる。
【0040】
図4に示された実施形態において,立体編物30は,上層編地31及び下層編地32のそれぞれに,略正六角形の上層開口部31a及び下層開口部32aが複数形成されている。また,これらの各編地31,32は,連結繊維33により,一定以上の間隔をあけて互いに連結されている。
図4において,符号Lは,各編地31,32に形成された開口部31a,32aの最長直線長さを示している,また,符号Tは,立体編物30の立体方向における厚さ,すなわち上層編地31と下層編地32の間隔を示している。開口部31a,32aの最長直線長さLは,例えば3mm〜15mm,5mm〜12mm,又は8mm〜10mmとすることが好ましい。また,立体編物30の厚さTは,例えば2mm〜50mm,5mm〜40mm,又は8mm〜30mmとすることが好ましい。
【0041】
また,本発明において,立体編物30の上層編地31に形成される上層開口部31aは,その開口面積が,上層シート10に形成される孔部11の開口面積よりも小さいことが好ましい。これにより,上層シート10の孔部11を通過した排泄物を,立体編物30内に適切に導入することができる。また,上層編地31の上層開口部31aと,下層編地32の下層開口部32aは,その開口面積と開口率が,実質的に同一であってもよいし,異なっていてもよい。特に,層編地32の下層開口部32aの開口面積は,上層編地31の上層開口部31aよりも大きいことが好ましい。
【0042】
図5は,
図4に示された立体編物30の部分的な拡大斜視図である。すなわち,
図5の拡大斜視図は,上層編地31に含まれる一つの上層開口部31aを画定する上層開口形成部31bと,下層編地32に含まれる一つの下層開口部32aを画定する下層開口形成部32bと,複数の連結繊維33の構造を拡大して示している。
【0043】
図5に示されるように,上層開口形成部31bは,複数の繊維部材が編み込まれて環状の形状をなしており,繊維部材の繋ぎ目には,編目31cが形成されている。また,同様に,下層開口形成部32bも,複数の繊維部材が編み込まれて環状をなし,繊維部材の繋ぎ目には,編目32cが形成されている。ここで,上層編地31の上層開口形成部31bに含まれる複数の編目31cのうちの一つからは,4本ずつに束ねられた束状の連結繊維33が,下層編地32の下層開口形成部32bに含まれる編目32cに延在している。これにより,対向する上層開口形成部31bと下層開口形成部32bが互いに連結される。上層開口形成部31bの一つの編目31cから,下層開口形成部32bの編目32cへと延在する連結繊維33は,例えば4本〜50本,10本〜40本,又は20本〜30本の束状とすればよい。
【0044】
また,上述した通り,上層開口形成部31bと下層開口形成部32bには,複数の編目31c,32cが含まれている。上層開口形成部31bと下層開口形成部32bは,全ての編目31c,32cにおいて束状の連結繊維33により繋がっていることが好ましい。ただし,上層開口形成部31bと下層開口形成部32bは,必ずしも全ての編目31c,32cが連結繊維33の束により連結されている必要はなく,少なくとも一つの編目31c,32cが連結繊維33の束により連結されていればよい。
【0045】
また,
図5に示されるように,上層開口形成部31bの一つ編目31cから延在する複数の連結繊維33は,下層開口形成部32bの複数の編目32cへと分散するようにして,連結されている。同様に,下層開口形成部32bの一つ編目32cから延在する複数の連結繊維33は,上層開口形成部31bの複数の編目31cへと分散するようにして,連結されている。このとき,上層編地31と下層編地32を連結する複数の連結繊維33は,交差するものであってもよい。このような構成とすることにより,複数の連結繊維33同士の間に形成される間隙が拡大する。複数の連結繊維33の間の間隙を広げることで,高粘性の排泄物を,各連結繊維33の間に保持しやすくなる。
【0046】
また,
図4及び
図5に示された実施形態において,立体編物30は,上層開口形成部31bの編目31cと,下層開口形成部32bの編目32cとの間の距離寸法よりも,これらの編目31c,32cを連結する連結繊維33の長さが長くなるように設計されている。このように設計することで,複数の連結繊維33が曲線状に湾曲する。連結繊維33を曲線状とすることで,立体編物30に対し立体方向の押圧が負荷されたときに,連結繊維33が柔軟に湾曲するようになるため,立体編物30のクッション性が高まる。また,連結繊維33を曲線状とすることで,隣接する連結繊維33間の間隙を拡大させることができるため,高粘性の排泄物を連結繊維33の間に保持し易くなる。また。上層開口形成部31bに含まれる編目31cのうちの一つから4本以上の連結繊維33が延在している形態において,各連結繊維33の曲率を変化させることもできる。例えば,硬さの異なるポリエステルとナイロンの繊維を束ねて連結繊維33とすることにより,各連結繊維33の曲率を変化させることとしてもよい。
【0047】
また,
図5に示されるように,上層編地31及び下層編地32を構成する複数の繊維を編み込むことにより,上層編地31には上層開口部31aが形成され,下層編地32には下層開口部32aが形成されている。ここで,
図6は,各編地31,32に形成される開口部31a,32aの形状を模式的に示した平面図である。
図6(a)に示されるように,各開口部31a,32aの形状は,六角形又は正六角形とすることとしてもよい。また,
図6(b)は,画定された各開口部31a,32aの形状が,四角形又は正方形である場合の例を示している。さらに,
図6(c)は,画定された各開口部31a,32aの形状が,菱形である場合の例を示している。
図6(a)〜(c)に示された例のように,各開口部31a,32aの形状を六角形,四角形,又は菱形とすることで,編地一面にわたって同一形状の開口部を画定できる。複数の開口部が異なる形状となっていると,立体編物30によって体圧を均等に分散できなくなったり,尿などの液体が均等に分散されなくなる恐れがある。この点,編地に同一形状の開口部を連続的に形成することで,立体編物30は,安定的な体圧分散性及び液体の流通性能を得ることができる。
【0048】
また,本発明において,立体編物30を形成する構成繊維によって,高吸水性ポリマー(SAP)や吸水性パルプなどの吸収性部材を保持することもできる。例えば,高吸水性ポリマーは,架橋構造を持つ親水性のポリマーであり,自重の10倍〜1000倍程度の吸水力を有する。また,吸水性パルプは,複数の粉砕パルプを集積することにより層状に形成される。粉砕パルプの例は,機械パルプ,化学パルプ,又は溶解パルプ等の木材から得られるセルロース繊維や,レーヨン又はアセテート等の人工セルロース繊維である。
【0049】
ただし,本発明において,立体編物30には,実質的に,高吸水性ポリマーや吸水性パルプを介在させないことが好ましい。立体編物30内に高吸水性ポリマーや吸水性パルプを介在させると,これらの吸水性材料が膨張して,この立体編物30内での尿など液体の流動性を悪化させる。本発明は,使い捨ておむつと併用される吸収補助物品であるため,なるべく立体編物30内での液体の流動性を維持しておき,軟便のような高粘性の排泄物のみその繊維構造によって一時的に貯留するようにすることが好ましい。
【0050】
また,立体編物30を吸収補助物品100の構成物品として利用するためには,その立体編物30を切断加工して,所望の形状に成型する必要がある。例えば,本発明の一実施形態では,立体編物30は,その周囲が切断されて,平面四角形に成形される。ただし,立体編物30は,上述の通り,複数の繊維を編み込むことにより形成されたものであるため,その周囲を切断すると,その切断部分において,立体編物の構成繊維が解けてたり,繊維の屑が発生する恐れがある。そこで,本発明では,立体編物30の切断部分に,解れ防止部を形成し,立体編物の構成繊維が解けることを防止することが好ましい。なお,本発明において,立体編物30は,必ずしもその全周囲を切断加工したものである必要はなく,その周囲の一部分,又は複数部分を切断したものであればよい。
【0051】
例えば,解れ防止部は,立体編物30の切断面に,接着剤を塗布することにより形成することができる。接着剤は,立体編物30の切断面において固化する。すなわち,接着剤は,切断部位において,立体編物30の上層編地31と下層編地32とを固着させるものであることが好ましく,さらに,上層編地31と下層編地32の間に位置する複数の連結繊維33をも固着させるものであることが好ましい。接着剤の種類は特に限定されるものではないが,例えばホットメルト接着剤や,その他流動性のある接着剤を用いることが好ましい。
【0052】
また例えば,立体編物30の切断部分において,立体編物30の上層編地31と下層編地32を熱融着させることにより,解れ防止部を形成することもできる。上述したように,立体編物30の構成繊維は,例えば,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル,ウレタン,又はナイロン等の熱可塑性樹脂を含む材料により構成されている。このため,公知のヒートシール装置や超音波シール装置を用いて,立体編物30の上層編地31と下層編地32を加熱しつつ,互いを圧接することにより,上層編地31と下層編地32の樹脂が溶融して,互いに融着するようになる。このようにして,立体編物30の切断面を含む領域において,上層編地31と下層編地32を熱融着させればよい。また,上層編地31と下層編地32の間に連結繊維33が存在している場合,上層編地31と下層編地32と共に,連結繊維33を熱融着することとしてもよい。
【0053】
また例えば,立体編物30の切断部分において,立体編物30の上層編地31と下層編地32を,糸によって縫い合わせることによっても,解れ防止部を形成することができる。縫製に用いられる糸の種類は特に限定されず,天然繊維や化学繊維を複数本引き揃えて撚ったもの用いればよい。例えば,天然繊維の糸としては,木綿,麻,リンネル,羊毛,又は絹等を用いることができる。また,化学繊維の糸としては,ポリエステル繊維,ポリアミド繊維,セルロース系半合成繊維,タンパク質系半合成繊維,ガラス繊維,又は炭素繊維等を用いることができる。また,このような糸は,公知のミシン装置等を用いて,立体編物30の上層編地31と下層編地32の間に縫い込むようにすればよい。また,糸を縫製する方法は特に限定されず,例えば,まつり縫いや,なみ縫い,返し縫い,又はかがり縫い等,公知の縫い方によって,立体編物30の上層編地31と下層編地32の間に,糸を縫い込むようにすればよい。
【0054】
図7は,
図1に示した形態とは別の形態の吸収補助物品100を示している。
図7に示された実施形態では,吸収補助物品100に含まれる立体編物30に,上層編地31と下層編地32を連通する開口空間部34が形成されている。この開口空間部34の開口面積は,上層編地31に形成された上層開口部31aや,下層編地32に形成された下層開口部32aの面積よりも大きくなっている。例えば,開口空間部34の開口面は,編地31,32に形成された各開口部31a,32aの面積に対して,300%以上であることが好ましい。ただし,開口空間部34が形成される面積は,立体編物30の編地31,32全体の面積に対し,5%〜50%,10%〜40%,又は15%〜30%程度とすることが好ましい。
【0055】
また,開口空間部34の形状は,適宜設計することができる。例えば,開口空間部34の形状は,円形,楕円形,三角形,四角形,六角形,その他多角形とすればよい。また,
図7に示されるように,吸収補助物品100には,複数の立体編物30が含まれる。複数の立体編物30は,それぞれ異なる形状の開口空間部34を有することとしてもよいし,同じ形状の開口空間部34を有することとしてもよい。また,吸収補助物品100には,開口空間部34が形成されていない立体編物30が含まれていてもよい。
【0056】
図7に示されるように,立体編物30に開口空間部34を形成することで,例えば,着用者は自身の傷や褥瘡が生じた部分に立体編物30が触れないように,吸収パネル100´を使い捨ておむつの上に配置することができる。また,吸収補助物品100に,多様な形状の開口空間部34を有する複数の立体編物30を設けておくことで,着用者は自身の傷の大きさや形状などを考慮して,適切な立体編物30を選択して使用することが可能となる。また,吸収補助物品100には,開口空間部34が形成されていない立体編物30が含まれていてもよい。これにより,着用者の多様なニーズに応えることが可能となる。
【0057】
図8は,吸収補助物品100を包装箱Bに収納した状態の一例を示している。例えば,
図8に示されるように,吸収補助物品100を長尺のシート状に形成する場合,その吸収補助物品100をロール状に巻回して,包装箱B内に収納しておくことができる。この場合には,使用者は,使用する分だけ吸収補助物品100を包装箱B内から引き出して,適宜,切断可能線50で吸収パネル100´を切り離して使用することができる。また,使用しない分については,包装箱Bの中に収納しておくことで,衛生状態を保つことができる。
【0058】
また,図示は省略するが,吸収補助物品100を包装箱Bの中に収納するときには,ロール状に巻回する他に,例えば一列ごとに折り畳んで収納することも可能である。
【0059】
また,図示は省略するが,吸収補助物品100は,
図8に示したようなシート状のものに限定されず,例えば2行×2列や3行×3列のように比較的短めに形成しておき,包装袋によって個包装することもできる。また,包装袋内には,2行×2列等の吸収補助物品100を複数段積み上げてまとめて包装することも可能である。
【0060】
図9は,吸収補助物品100から切り離した吸収パネル100´の使用例を示している。
図9に示されるように,吸収パネル100´は,使い捨ておむつDの内面側(肌対向面側)に重ねて配置して使用することが好適である。例えば,
図9に示されるように,吸収パネル100´は複数個繋げた状態で使用することもできる。また,吸収パネル100´は,一つ一つ個別に使用することもできる。吸収パネル100´の使用態様は,着用者が自身の好みや使用目的に合わせて適宜工夫することができる。
【0061】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。