(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の終端構造では、n型半導体層にp型半導体のドーパント(不純物)が拡散することによって、n型半導体層の電気的特性が劣化する(例えば、チャネル長およびオン抵抗の増加)という課題があった。特に、イオン注入によってp型半導体を形成することが困難である半導体(例えば、窒化ガリウム(GaN)に代表されるIII族窒化物半導体)に、特許文献1の終端構造を適用する場合、比較的に高温かつ長時間となる熱拡散(例えば、900℃、60分)が必要になるため、n型半導体層における電気的特性の劣化が顕著であった。
【0005】
そのため、p型半導体をフローティング領域として形成した終端構造を有する窒化ガリウム(GaN)系の半導体装置において電気的特性を向上させることが可能な技術が望まれていた。そのほか、半導体装置においては、微細化、低コスト化、省資源化、製造の容易化、使い勝手の向上、耐久性の向上などが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の第1の形態は、半導体装置の製造方法であって、
窒化ガリウム(GaN)から主に成る基板に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成るn型半導体層を結晶成長によって積層する工程と、
前記基板に積層されたn型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成るp型半導体層を結晶成長によって積層する工程であって、積層される前記p型半導体層の厚さがth2である工程と、
前記p型半導体層から前記n型半導体層に至る第1のエッチングによって、前記p型半導体層を、第1のp型半導体層と、前記第1のp型半導体層より前記半導体装置の終端側に位置する第2のp型半導体層とに分離する工程であって、前記第1のエッチングの深さがdp5である工程と、
前記第1のエッチングを行った後、前記n型半導体層、前記第1のp型半導体層および前記第2のp型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成るn型半導体を結晶成長させることによって、前記n型半導体層を、前記第1のp型半導体層および前記第2のp型半導体層が埋もれたn型半導体層へと再成長させる工程であって、再成長させる前記n型半導体層の厚さがth3であり、再成長させた前記n型半導体層の上面と前記第1のp型半導体層の上面との距離がdp1となるように、再成長させる工程と、
再成長させた前記n型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成る他のp型半導体層を結晶成長によって積層する工程と、
前記他のp型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成る他のn型半導体層を結晶成長によって積層する工程と、
再成長させた前記n型半導体層の一部に対する第2のエッチングによって、前記第1のp型半導体層が前記n型半導体層に埋もれた状態を維持しつつ、前記第1のp型半導体層より前記半導体装置の終端側に位置する前記第2のp型半導体層を前記n型半導体層から露出させる工程であって、前記第2のエッチング深さがdp2である工程と、
前記他のn型半導体層から前記他のp型半導体層を貫通し前記n型半導体層に至る第1の溝部を形成する工程と、
前記第1の溝部に絶縁膜を介して第1の電極を形成する工程と、
を備える。
ただし、積層される前記p型半導体層の厚さth2と、前記第1のエッチング深さdp5と、再成長させる前記n型半導体層の厚さth3と、再成長させる前記n型半導体層の上面と前記第1のp型半導体層の上面との距離dp1と、前記第2のエッチング深さdp2と、は以下の式(1)から式(3)式を満たす。
dp1<dp2<dp1+th2・・・式(1)
th2<dp5≦1.0μm・・・式(2)
dp5<th3≦4.0μm・・・式(3)
本発明の第2の形態は、
半導体装置の製造方法であって、
窒化ガリウム(GaN)から主に成る基板に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成るn型半導体層を結晶成長によって積層する工程と、
前記基板に積層されたn型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成るp型半導体層を結晶成長によって積層する工程であって、積層される前記p型半導体層の厚さがth2である工程と、
前記p型半導体層から前記n型半導体層に至る第1のエッチングによって、前記p型半導体層を、第1のp型半導体層と、前記第1のp型半導体層より前記半導体装置の終端側に位置する第2のp型半導体層とに分離する工程であって、前記第1のエッチングの深さがdp5である工程と、
前記第1のエッチングを行った後、前記n型半導体層、前記第1のp型半導体層および前記第2のp型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成るn型半導体を結晶成長させることによって、前記n型半導体層を、前記第1のp型半導体層および前記第2のp型半導体層が埋もれたn型半導体層へと再成長させる工程であって、再成長させる前記n型半導体層の厚さがth3であり、再成長させた前記n型半導体層の上面と前記第1のp型半導体層の上面との距離がdp1となるように、再成長させる工程と、
再成長させた前記n型半導体層の一部に対する第2のエッチングによって、前記第1のp型半導体層が前記n型半導体層に埋もれた状態を維持しつつ、前記第1のp型半導体層より前記半導体装置の終端側に位置する前記第2のp型半導体層を前記n型半導体層から露出させる工程であって、前記第2のエッチング深さがdp2である工程と、
再成長させた前記n型半導体層における上面であって、前記基板から前記n型半導体層に向かう積層方向を向くとともに前記第1のp型半導体層より前記積層方向に位置する上面に、電極を形成する工程と、を備える。
ただし、積層される前記p型半導体層の厚さth2と、前記第1のエッチング深さdp5と、再成長させる前記n型半導体層の厚さth3と、再成長させる前記n型半導体層の上面と前記第1のp型半導体層の上面との距離dp1と、前記第2のエッチング深さdp2と、は以下の式(1)から式(3)式を満たす。
dp1<dp2<dp1+th2・・・式(1)
th2<dp5≦1.0μm・・・式(2)
dp5<th3≦4.0μm・・・式(3)
本発明の第3の形態は、
半導体装置であって、
窒化ガリウム(GaN)から主に成る基板と、
窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記基板に積層された第1領域と、前記第1領域の上に積層された第2領域と、を含むn型半導体層であって、
前記第2領域は、
前記基板から前記n型半導体層に向かう積層方向を向いた第1の上面と、
前記第1の上面より前記基板側、かつ、前記第1の上面より前記半導体装置の終端側に形成され、前記積層方向を向いた第2の上面と
を有するn型半導体層と、
窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記n型半導体層における前記第1の上面より前記基板側に埋もれた第1のp型半導体層と、
窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記第2の上面に露出した第2のp型半導体層と、
を備える。
ただし、
前記第1の上面から前記第1のp型半導体層までの距離dp1と、前記第1の上面から前記第2の上面までの距離dp2と、前記第1のp型半導体層から前記基板までの距離dp3と、前記第2のp型半導体層から前記基板までの距離dp4と、前記第1のp型半導体層の上面から前記第1領域と前記第2領域との界面までの距離dp5と、前記第1のp型半導体層の厚さth2と、前記第1領域と前記第2領域との界面から前記第1の上面までの前記第2領域の厚さth3と、は以下の式(1)から(4)を満たす。
dp1<dp2<dp1+th2・・・式(1)
th2<dp5≦1.0μm・・・式(2)
dp5<th3≦4.0μm・・・式(3)
dp3=dp4・・・式(4)
また、本発明は以下の形態としても適用可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。この半導体装置の製造方法は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る基板に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成るn型半導体層を結晶成長によって積層する工程と;前記基板に積層されたn型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成るp型半導体層を結晶成長によって積層する工程と;前記p型半導体層から前記n型半導体層に至る第1のエッチングによって、前記p型半導体層を、第1のp型半導体層と、前記第1のp型半導体層より前記半導体装置の終端側に位置する第2のp型半導体層とに分離する工程と;前記第1のエッチングを行った後、前記n型半導体層、前記第1のp型半導体層および前記第2のp型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成るn型半導体を結晶成長させることによって、前記n型半導体層を、前記第1のp型半導体層および前記第2のp型半導体層が埋もれたn型半導体層へと再成長させる工程と;再成長させた前記n型半導体層に対する第2のエッチングによって、前記第2のp型半導体層を前記n型半導体層から露出させる工程とを備える。この形態によれば、GaN系の半導体装置において、イオン注入および熱拡散を用いることなく、n型半導体層の各部における電界集中を緩和する第1のp型半導体層および第2のp型半導体層を形成できる。その結果、GaN系の半導体装置の電気的特性を向上させることができる。また、n型半導体層を再成長させる際に第1のp型半導体層とともに第2のp型半導体層をn型半導体層に埋め込むため、第2のp型半導体層の形成に伴う製造工程の増加を抑制できる。その結果、半導体装置の製造コストを抑制できる。
【0008】
(2)上記形態における半導体装置の製造方法において、前記第2のp型半導体層を前記n型半導体層から露出させる工程は、前記第1のp型半導体層が前記n型半導体層に埋もれた状態を維持しつつ、前記第2のp型半導体層を前記n型半導体層から露出させる工程であってもよい。この形態によれば、n型半導体層に埋もれたフローティング領域として第1のp型半導体層を形成できる。
【0009】
(3)上記形態における半導体装置の製造方法は、更に、前記第2のエッチングを行う前に、再成長させた前記n型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成る他のp型半導体層を結晶成長によって積層する工程と;前記第2のエッチングを行う前に、前記他のp型半導体層に対して、窒化ガリウム(GaN)から主に成る他のn型半導体層を結晶成長によって積層する工程と;前記他のn型半導体層から前記他のp型半導体層を貫通し前記n型半導体層に至る溝部を形成する工程と;前記溝部に絶縁膜を介して電極を形成する工程とを備えてもよい。この形態によれば、溝部に発生する電界集中を緩和するフローティング領域として第1のp型半導体層を形成できる。
【0010】
(4)上記形態における半導体装置の製造方法は、更に、再成長させた前記n型半導体層における界面であって、前記基板から前記n型半導体層に向かう積層方向を向くとともに前記第1のp型半導体層より前記積層方向に位置する界面に、電極を形成する工程を備えてもよい。この形態によれば、n型半導体層の界面と電極とが接するショットキー接合界面に発生する電界集中を緩和するフローティング領域として第1のp型半導体層を形成できる。
【0011】
(5)上記形態における半導体装置の製造方法において、前記第2のp型半導体層を前記n型半導体層から露出させる工程は、前記第1のp型半導体層とともに、前記第2のp型半導体層を前記n型半導体層から露出させる工程であり、更に、前記第1のp型半導体層および前記第2のp型半導体層が露出した前記n型半導体層の界面における前記第1のp型半導体層が配置された領域に電極を形成する工程を備えてもよい。この形態によれば、n型半導体層の界面と電極とが接するショットキー接合界面に発生する電界集中を緩和するフローティング領域として第1のp型半導体層を形成できる。
【0012】
(6)上記形態における半導体装置の製造方法において、前記第1のエッチングによる加工深さは、前記p型半導体層の厚さより深いとともに1.0μm以下であってもよい。この形態によれば、第1のp型半導体層と第2のp型半導体層とを確実に分離できるとともに、再成長させたn型半導体層における表面の平坦性を十分に確保できる。その結果、半導体装置の歩留まりを向上できる。
【0013】
(7)上記形態における半導体装置の製造方法において、前記n型半導体層を再成長させる厚さは4μm以下であってもよい。この形態によれば、第1のp型半導体層によって電界集中を十分に緩和できる。
【0014】
本発明の一形態によれば、半導体装置が提供される。この半導体装置は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る基板と;窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記基板に積層されたn型半導体層であって、前記基板から前記n型半導体層に向かう積層方向を向いた第1の界面と、前記第1の界面より前記基板側、かつ、前記第1の界面より前記半導体装置の終端側に形成され、前記積層方向を向いた第2の界面とを有するn型半導体層と;窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記n型半導体層における前記第1の界面より前記基板側に埋もれた第1のp型半導体層と;窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記第2の界面に露出した第2のp型半導体層とを備え、前記第1の界面から前記第1のp型半導体層までの距離は、前記第1の界面から前記第2の界面までの距離より短く、前記第1のp型半導体層から前記基板までの距離は、前記第2のp型半導体層から前記基板までの距離と同一である。この形態によれば、GaN系の半導体装置において、イオン注入および熱拡散を用いることなく形成可能な第1のp型半導体層および第2のp型半導体層によって、n型半導体層の各部における電界集中を緩和できる。その結果、GaN系の半導体装置の電気的特性を向上させることができる。
【0015】
本発明は、半導体装置およびその製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、上記形態の半導体装置が組み込まれた電気機器、上記形態の半導体装置を製造する製造装置などの形態で実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の半導体装置の製造方法によれば、GaN系の半導体装置において、イオン注入および熱拡散を用いることなく、n型半導体層の各部における電界集中を緩和する第1のp型半導体層および第2のp型半導体層を形成できる。その結果、GaN系の半導体装置の電気的特性を向上させることができる。また、n型半導体層を再成長させる際に第1のp型半導体層とともに第2のp型半導体層をn型半導体層に埋め込むため、第2のp型半導体層の形成に伴う製造工程の増加を抑制できる。その結果、半導体装置の製造コストを抑制できる。
【0017】
本願発明における半導体装置によれば、GaN系の半導体装置において、イオン注入および熱拡散を用いることなく形成可能な第1のp型半導体層および第2のp型半導体層によって、n型半導体層の各部における電界集中を緩和できる。その結果、GaN系の半導体装置の電気的特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態
A−1.半導体装置の構成
図1は、第1実施形態における半導体装置10の構成を模式的に示す断面図である。半導体装置10は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置10は、トレンチゲート型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。本実施形態では、半導体装置10は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。
【0020】
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸のうち、X軸は、
図1の紙面左から紙面右に向かう軸である。+X軸方向は、紙面右に向かう方向であり、−X軸方向は、紙面左に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Y軸は、
図1の紙面手前から紙面奥に向かう軸である。+Y軸方向は、紙面奥に向かう方向であり、−Y軸方向は、紙面手前に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Z軸は、
図1の紙面下から紙面上に向かう軸である。+Z軸方向は、紙面上に向かう方向であり、−Z軸方向は、紙面下に向かう方向である。
【0021】
半導体装置10は、基板100と、半導体層110と、半導体層120と、半導体層130と、半導体層141と、半導体層142とを備える。半導体装置10は、これらの半導体層に形成された構造として、トレンチ220と、リセス240とを有する。半導体装置10は、更に、絶縁膜300と、ソース電極410と、ゲート電極420と、ドレイン電極430とを備える。本実施形態では、半導体装置10は、Z軸に平行な軸線SCを中心に対称な構造を成す。
【0022】
半導体装置10の基板100は、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成す。本実施形態では、基板100は、窒化ガリウム(GaN)から主に成るn型半導体層である。本実施形態では、基板100は、ケイ素(Si)をドナーとして含有する。
【0023】
半導体装置10の半導体層110は、基板100の+Z軸方向側に積層され、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成すn型半導体層である。半導体層110は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、半導体層110は、ケイ素(Si)をドナーとして含有する。
【0024】
半導体層110は、領域111と、領域112とを有する。半導体層110の領域111は、基板100の+Z軸方向側に対して結晶成長によって形成された部分である。半導体層110の領域112は、領域111より+Z軸方向側に位置し、領域111の界面115に対して結晶の再成長によって形成された部分である。領域111の界面115は、領域112に接する境界面であり、領域111の+Z軸方向側に位置する。界面115は、領域111を結晶成長させた後であって、領域112を再成長させる前に、領域111に対するエッチングによって形成される。
【0025】
半導体層110は、界面116と、界面117と、界面118とを有する。半導体層110の界面116は、基板100から半導体層110に向かう積層方向(+Z軸方向)を向いた界面である。半導体層110の界面117は、積層方向(+Z軸方向)を向いた界面である。界面117は、界面116より半導体層110、かつ、界面116より半導体装置10の終端側(界面118側)に形成されている。すなわち、界面117は、軸線SCを中心として界面116より外側に位置する。半導体層110の界面118は、Z軸に直交する方向を向いた界面であり、半導体装置10の終端を構成する。界面118は、SCを中心として界面117より外側に位置する。
【0026】
半導体装置10の半導体層120は、半導体層110における界面116の+Z軸方向側に積層され、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成すp型半導体層である。半導体層120は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、半導体層120は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含有する。
【0027】
半導体装置10の半導体層130は、半導体層120の+Z軸方向側に積層され、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成すn型半導体層である。半導体層130は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、半導体層130は、ケイ素(Si)をドナーとして含有する。
【0028】
半導体装置10の半導体層141は、半導体層110における界面116より基板100側(−Z軸方向側)に埋もれた第1のp型半導体層である。半導体層141は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、半導体層141は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含有する。本実施形態では、半導体層141の数は、1つである。他の実施形態では、半導体層141の数は、2つ以上であってもよい。
【0029】
半導体装置10の半導体層142は、半導体層110の界面117に露出した第2のp型半導体層である。半導体層142は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、半導体層142は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含有する。半導体層141のアクセプタ濃度は、半導体層142のアクセプタ濃度と同一である。本実施形態では、半導体層142の数は、3つである。他の実施形態では、半導体層142の数は、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0030】
半導体装置10では、半導体層110の界面116から半導体層141までの距離dp1は、界面116から半導体層142までの距離dp2より短い。半導体層141から基板100までの距離dp3は、半導体層142から基板100までの距離dp4と同一である。
【0031】
半導体装置10のトレンチ220は、半導体層130の+Z軸方向側から半導体層120を貫通し半導体層110に至る溝部である。本実施形態では、トレンチ220は、軸線SCを中心に落ち込んだ形状を成す。本実施形態では、トレンチ220は、基板100に積層された半導体層110,120,130に対するエッチングによって形成されている。
【0032】
半導体装置10のリセス240は、トレンチ220とは異なる位置に形成され、半導体層130の+Z軸方向側から半導体層120に至るまで落ち込んだ凹部である。本実施形態では、リセス240は、軸線SCを中心としてトレンチ220より外側に位置する。本実施形態では、リセス240は、基板100に積層された半導体層120,130に対するエッチングによって形成される。
【0033】
半導体装置10の絶縁膜300は、電気絶縁性を有し、トレンチ220の表面を覆う。本実施形態では、絶縁膜300の材質は、二酸化ケイ素(SiO
2)である。
【0034】
半導体装置10のソース電極410は、導電性を有し、リセス240に形成された電極である。本実施形態では、ソース電極410は、チタン(Ti)から成る層にアルミニウム(Al)から成る層を積層した後に熱処理によって合金化した電極である。
【0035】
半導体装置10のゲート電極420は、導電性を有し、絶縁膜300を介してトレンチ220に形成された電極である。本実施形態では、ゲート電極420の材質は、アルミニウム(Al)である。
【0036】
半導体装置10のドレイン電極430は、導電性を有し、基板100の−Z軸方向側にオーミック接合された電極である。本実施形態では、ドレイン電極430は、チタン(Ti)から成る層にアルミニウム(Al)から成る層を積層した後に熱処理によって合金化した電極である。
【0037】
A−2.半導体装置の製造方法
図2は、半導体装置10の製造方法を示す工程図である。本実施形態では、製造者は、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を実現するMOCVD装置を用いて、半導体装置10の各半導体層を形成する。
【0038】
まず、半導体装置10を製造する際には、製造者は、エピタキシャル成長(結晶成長)によって、基板100に対して、n型半導体層として半導体層110の領域111を積層する(工程P112)。本実施形態では、製造者は、MOCVD装置における反応室のサセプタに基板100を配置した後、半導体層110の元となる原料ガスを反応室に導入することによって、基板100上に半導体層110の領域111を結晶成長させる。
【0039】
本実施形態では、基板100のキャリア濃度は、約3×10
18cm
−3であり、基板100の厚さは、約300マイクロメートル(μm)である。本実施形態では、領域111の結晶成長において、サセプタの温度は、1050℃である。本実施形態では、半導体層110の元となる原料ガスは、III族原料であるトリメチルガリウム(TMGa:Tri-Methyl-Gallium)と、V属原料であるアンモニア(NH
3)と、ドーパント原料であるシラン(SiH
4)とを含有する。本実施形態では、領域111のドナー濃度は、約8×10
15cm
−3である。
【0040】
半導体層110の領域111を結晶成長させた後(工程P112)、製造者は、エピタキシャル成長によって、半導体層110の領域111に対して、p型半導体装置として半導体層140を積層する(工程P114)。半導体層140は、半導体層141および半導体層142の元となる半導体層である。本実施形態では、製造者は、領域111の結晶成長に引き続き、MOCVD装置において、半導体層140の元となる原料ガスを反応室に導入することによって、半導体層110の領域111に対して半導体層140を結晶成長させる。
【0041】
本実施形態では、半導体層140の元となる原料ガスは、III族原料であるトリメチルガリウム(TMGa)と、V属原料であるアンモニア(NH
3)と、ドーパント原料であるビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp
2Mg)とを含有する。本実施形態では、半導体層140のドーパント濃度は、約4×10
18cm
−3である。
【0042】
図3は、製造途中にある半導体装置10a1を示す説明図である。半導体装置10a1は、基板100に対して半導体層110の領域111を形成する工程(工程P112)と、半導体層110の領域111に対して半導体層140を形成する工程(工程P114)とを経て作製される。本実施形態では、半導体層110の領域111を結晶成長させる厚さth1は、約10μmである。本実施形態では、半導体層140を結晶成長させる厚さth2は、0.5μm以下である。
【0043】
図2の説明に戻り、半導体層140を結晶成長させた後(工程P114)、製造者は、半導体層140から半導体層110の領域111に至るエッチングによって、半導体層140を半導体層141と半導体層142とに分離する(工程P120)。これによって、半導体層110の領域111には、界面115が形成される。本実施形態では、製造者は、MOCVD装置から半導体装置10a1を取り出した後、半導体装置10a1に対してエッチングを実施する。本実施形態では、半導体層140に対するエッチングは、誘電結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)ドライエッチングである。他の実施形態では、半導体層140に対するエッチングは、他のドライエッチングであってもよいし、ウェットエッチングであってもよい。
【0044】
図4は、製造途中にある半導体装置10b2を示す説明図である。半導体装置10b2は、半導体装置10a1に対するエッチングによって半導体層140を半導体層141と半導体層142とに分離する工程(工程P120)を経て作製される。半導体装置10b2では、エッチングによる半導体層141および半導体層142の形成に伴って、半導体層110の領域111には、界面115が形成されている。半導体装置10a1に対するエッチングによる加工深さdp5は、半導体層140の厚さth2より深い。本実施形態では、加工深さdp5は1.0μm以下である。半導体装置10b2において、半導体層141から基板100までの距離dp3は、半導体層142から基板100までの距離dp4と同一である。距離dp3および距離dp4は、半導体層110の領域111を結晶成長させた厚さth1に等しい。
【0045】
図2の説明に戻り、半導体層140を分離した後(工程P120)、製造者は、半導体層110の領域111における界面115、並びに、半導体層141および半導体層142に対して、n型半導体である領域112を結晶成長させることによって、半導体層110を、半導体層141および半導体層142が埋もれたn型半導体層へと再成長させる(工程P130)。本実施形態では、製造者は、MOCVD装置における反応室のサセプタに半導体装置10b2を配置した後、半導体層110の元となる原料ガスを反応室に導入することによって、半導体層110を再成長させる。
【0046】
本実施形態では、領域112の結晶成長において、サセプタの温度は、領域111の結晶成長と同様に、1050℃である。本実施形態では、領域112の結晶成長における半導体層110の元となる原料ガスは、領域111の結晶成長における原料ガスと同様である。本実施形態では、領域112のドナー濃度は、約8×10
15cm
−3である。
【0047】
図5は、製造途中にある半導体装置10a3を示す説明図である。半導体装置10a3は、半導体装置10a3における半導体層110を再成長させる工程(工程P130)を経て作製される。半導体層110の領域112を界面115に対して結晶成長させる厚さth3は、半導体装置10a1に対するエッチングによる加工深さdp5より大きい。半導体装置10a3における半導体層110には、十分な平坦性を有する界面116が形成されている。界面116に十分な平坦性を確保する観点から、厚さth3は、加工深さdp5より大きく、かつ、4μm以下であることが好ましい。
【0048】
図2の説明に戻り、半導体層110を再成長させた後(工程P130)、製造者は、エピタキシャル成長によって、半導体層110の界面116に対して半導体層120をp型半導体装置として積層した後、半導体層120に対して半導体層130をn型半導体層として積層する(工程P140)。本実施形態では、製造者は、領域112の結晶成長に引き続き、MOCVD装置において、半導体層120の元となる原料ガスを反応室に導入することによって、半導体層110の界面116に対して半導体層120を結晶成長させる。その後、製造者は、半導体層120の結晶成長に引き続き、MOCVD装置において、半導体層130の元となる原料ガスを反応室に導入することによって、半導体層120に対して半導体層130を結晶成長させる。
【0049】
本実施形態では、半導体層120の元となる原料ガスは、半導体層120の原料ガスと同様である。本実施形態では、半導体層140のドーパント濃度は、約4×10
18cm
−3である。本実施形態では、半導体層140を結晶成長させる厚さは、約0.7μmである。
【0050】
本実施形態では、半導体層130の元となる原料ガスは、ドーパント原料の分量が異なる点を除き、半導体層110の原料ガスと同様である。本実施形態では、半導体層130のドナー濃度は、約3×10
18cm
−3である。本実施形態では、半導体層130を結晶成長させる厚さは、約0.2μmである。
【0051】
図6は、製造途中にある半導体装置10a4を示す説明図である。半導体装置10a4は、半導体層120および半導体層130を結晶成長させる工程(工程P140)を経て作製される。半導体装置10a4では、半導体層110の界面116に半導体層120が積層され、半導体層120の+Z軸方向側に半導体層130が積層されている。
【0052】
図2の説明に戻り、半導体層120および半導体層130を結晶成長させた後(工程P140)、製造者は、半導体層110の領域112に対するエッチングによって、半導体層142を半導体層110から露出させる(工程P150)。本実施形態では、製造者は、MOCVD装置から半導体装置10a4を取り出した後、半導体装置10a4に対してエッチングを実施する。本実施形態では、半導体層142を露出させるエッチングは、ICPドライエッチングである。他の実施形態では、半導体層142を露出させるエッチングは、他のドライエッチングであってもよいし、ウェットエッチングであってもよい。本実施形態では、製造者は、エッチングによって半導体層142を露出させる工程(工程P140)に併せて、半導体層130から半導体層110の領域112に至るトレンチ220をエッチングによって形成するとともに、半導体層130から半導体層120に至るリセス240をエッチングによって形成する。
【0053】
図7は、製造途中にある半導体装置10a5を示す説明図である。半導体装置10a5は、エッチングによって半導体層142を露出させる工程(工程P150)を経て作製される。半導体装置10a5における半導体層110には、半導体層142が露出した界面117が形成されている。半導体装置10a5において、半導体層110の界面116から半導体層141までの距離dp1は、界面116から半導体層142までの距離dp2より短い。
【0054】
図2の説明に戻り、エッチングによって半導体層142を露出させた後(工程P150)、製造者は、トレンチ220に絶縁膜300を形成する(工程P170)。本実施形態では、絶縁膜300を形成する手法は、原子層体積法(ALD:Atomic Layer Deposition)である。
【0055】
絶縁膜300を形成した後(工程P170)、製造者は、ソース電極410、ゲート電極420およびドレイン電極430を形成する(工程P180)。これらの工程を経て、半導体装置10が完成する。
【0056】
A−3.効果
以上説明した第1実施形態によれば、GaN系の半導体装置10において、イオン注入および熱拡散を用いることなく、n型半導体層である半導体層110の各部における電界集中を緩和するp型半導体層として半導体層141および半導体層142を形成できる。その結果、GaN系の半導体装置10の電気的特性を向上させることができる。また、半導体層110を再成長させる際に半導体層141とともに半導体層142を半導体層110に埋め込むため、半導体層142の形成に伴う製造工程の増加を抑制できる。その結果、半導体装置10の製造コストを抑制できる。
【0057】
また、半導体層141が半導体層110に埋もれた状態を維持しつつ、半導体層142を半導体層110から露出させるため、半導体層110に埋もれたフローティング領域として半導体層141を形成できる。さらに、この半導体層141を、トレンチ220に発生する電界集中を緩和するフローティング領域として形成できる。
【0058】
また、半導体装置10a1に対するエッチング(工程P120)において、加工深さdp5は、半導体層140の厚さth2より深いとともに1.0μm以下である。そのため、半導体層141と半導体層142とを確実に分離できるとともに、再成長させた半導体層110の表面である界面116の平坦性を十分に確保できる。その結果、半導体装置10の歩留まりを向上できる。
【0059】
また、半導体層110の再成長(工程P130)において、半導体層110を再成長させる厚さth3は、4μm以下であるため、半導体層142によって電界集中を十分に緩和できる。
【0060】
B.第2実施形態
図8は、第2実施形態における半導体装置10Bの構成を模式的に示す断面図である。半導体装置10Bは、保護膜350とフィールドプレート電極450とをさらに備える点を除き、第1実施形態の半導体装置10と同様である。
【0061】
半導体装置10Bの保護膜350は、電気絶縁性を有し、ゲート電極420から半導体層130を経て半導体層110の界面117に至る各界面を被覆する。保護膜350は、ソース電極410に至る開口部352を有する。本実施形態では、保護膜350は、二酸化ケイ素(SiO
2)から成る層に、酸化アルミニウム(Al
2O
3)から成る層を積層した膜である。
【0062】
半導体装置10Bのフィールドプレート電極450は、ソース電極410に接触し、保護膜350の開口部352を埋めつつ、保護膜350に沿って界面117側へと広がる電極である。これによって、フィールドプレート電極450は、半導体層110および半導体層120との間に保護膜350を挟むフィールドプレート構造を形成する。本実施形態では、フィールドプレート電極450の材質は、アルミニウム(Al)である。
【0063】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、GaN系の半導体装置10Bの電気的特性を向上させることができる。また、第1実施形態と同様に、半導体装置10Bの製造コストを抑制できる。
【0064】
C.第3実施形態
図9は、第3実施形態における半導体装置10Cの構成を模式的に示す断面図である。第3実施形態の半導体装置10Cは、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置10Cは、縦型ショットキーバリアダイオードである。
【0065】
半導体装置10Cは、基板100と、半導体層110Cと、半導体層141Cと、半導体層142とを備える。半導体装置10Cは、更に、ショットキー電極460Cと、裏面電極470Cとを備える。本実施形態では、半導体装置10Cは、Z軸に平行な軸線SCを中心に対称な構造を成す。半導体装置10Cの基板100は、第1実施形態と同様に、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成す。
【0066】
半導体装置10Cの半導体層110Cは、領域111Cと、領域112Cとを有するn型半導体層である。半導体層110Cの領域111Cは、半導体層141に代えて複数の半導体層141Cが形成されている点を除き、第1実施形態の領域111と同様の構成である。半導体層110Cの領域112Cは、半導体層141に代えて複数の半導体層141Cが形成されている点を除き、第1実施形態の領域112と同様の構成である。領域111Cの界面115Cは、領域112Cに接する境界面であり、領域111Cの+Z軸方向側に位置する。界面115Cは、領域111Cを結晶成長させた後であって、領域112Cを再成長させる前に、領域111Cに対するエッチングによって形成される。
【0067】
半導体装置10Cの半導体層141Cは、半導体層110Cにおける界面116より基板100側(−Z軸方向側)に埋もれた第1のp型半導体層である。第3実施形態の半導体層141Cは、半導体層141Cの数が複数である点を除き、第1実施形態の半導体層141と同様である。
【0068】
半導体装置10Cの半導体層142は、半導体層110Cの界面117に露出した第2のp型半導体層である。第3実施形態の半導体層142は、第1実施形態と同様である。
【0069】
第3実施形態の半導体装置10Cでは、第1実施形態と同様に、半導体層110Cの界面116から半導体層141Cまでの距離dp1は、界面116から半導体層142(界面117)までの距離dp2より短い。半導体層141Cから基板100までの距離dp3は、第1実施形態と同様に、半導体層142から基板100までの距離dp4と同一である。
【0070】
半導体装置10Cのショットキー電極460Cは、導電性を有し、半導体層110Cの界面116にショットキー接合された電極である。本実施形態では、ショットキー電極460Cの材質は、ニッケル(Ni)である。
【0071】
半導体装置10Cの裏面電極470Cは、導電性を有し、基板100の−Z軸方向側にオーミック接合された電極である。本実施形態では、裏面電極470Cは、チタン(Ti)から成る層にアルミニウム(Al)から成る層を積層した後に熱処理によって合金化した電極である。
【0072】
半導体装置10Cの製造方法において、半導体層110C、半導体層141Cおよび半導体層142を形成する工程は、第1実施形態において半導体層110、半導体層141および半導体層142を形成する工程(工程P112,P114,P120,P130,P150)と同様である。半導体装置10Cの製造方法では、半導体層110C、半導体層141Cおよび半導体層142を形成した後、製造者は、ショットキー電極460Cおよび裏面電極470Cを形成する。これらの工程を経て、半導体装置10Cが完成する。
【0073】
以上説明した第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、GaN系の半導体装置10Cの電気的特性を向上させることができる。また、第1実施形態と同様に、半導体装置10Cの製造コストを抑制できる。また、半導体層141Cが半導体層110Cに埋もれた状態を維持しつつ、半導体層142を半導体層110から露出させるため、半導体層110Cに埋もれたフローティング領域として半導体層141Cを形成できる。さらに、半導体層110Cとショットキー電極460Cとが接するショットキー接合界面である界面116に発生する電界集中を緩和するフローティング領域として、半導体層141Cを形成できる。
【0074】
D.第4実施形態
図10は、第4実施形態における半導体装置10Dの構成を模式的に示す断面図である。第4実施形態の半導体装置10Dは、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置10Dは、縦型ショットキーバリアダイオードである。
【0075】
半導体装置10Dは、基板100と、半導体層110Dと、半導体層141Dと、半導体層142とを備える。半導体装置10Dは、更に、ショットキー電極460Dと、裏面電極470Dとを備える。本実施形態では、半導体装置10Dは、Z軸に平行な軸線SCを中心に対称な構造を成す。半導体装置10Dの基板100は、第1実施形態と同様に、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成す。
【0076】
半導体装置10Dの半導体層110Dは、領域111Dと、領域112Dとを有するn型半導体層である。半導体層110Dの領域111Dは、半導体層141に代えて複数の半導体層141Dが形成されている点を除き、第1実施形態の領域111と同様の構成である。半導体層110Dの領域112Dは、半導体層141に代えて複数の半導体層141Dが形成されている点、並びに、界面117Dが形成されている点を除き、第1実施形態の領域112と同様の構成である。領域112Dの界面117Dは、積層方向(+Z軸方向)を向いた界面であり、領域112Dの全域にわたって形成されている。領域111Dの界面115Dは、領域112Dに接する境界面であり、領域111Dの+Z軸方向側に位置する。界面115Dは、領域111Dを結晶成長させた後であって、領域112Dを再成長させる前に、領域111Dに対するエッチングによって形成される。
【0077】
半導体装置10Dの半導体層141Dは、半導体層110Dの界面117Dに露出した第1のp型半導体である。第4実施形態の半導体層141Dは、半導体層141Dの数が複数である点、並びに、半導体層141Dが界面117Dに露出している点を除き、第1実施形態の半導体層141と同様の構成である。
【0078】
半導体装置10Dの半導体層142は、半導体層110Dの界面117Dに露出した第2のp型半導体層である。第4実施形態の半導体層142は、第1実施形態と同様の構成である。
【0079】
半導体装置10Dのショットキー電極460Dは、導電性を有し、半導体層141Dが露出する半導体層110Dの界面117Dにショットキー接合された電極である。本実施形態では、ショットキー電極460Dの材質は、ニッケル(Ni)である。
【0080】
半導体装置10Dの裏面電極470Dは、導電性を有し、基板100の−Z軸方向側にオーミック接合された電極である。本実施形態では、裏面電極470Dは、チタン(Ti)から成る層にアルミニウム(Al)から成る層を積層した後に熱処理によって合金化した電極である。
【0081】
半導体装置10Dの製造方法において、半導体層110D、半導体層141Dおよび半導体層142を形成する工程は、半導体層142を露出させる工程(工程P150)において半導体層142とともに半導体層141Dを露出させ界面117Dを形成する点を除き、第1実施形態において半導体層110、半導体層141および半導体層142を形成する工程(工程P112,P114,P120,P130)と同様である。半導体装置10Dの製造方法では、半導体層110D、半導体層141Dおよび半導体層142を形成した後、製造者は、ショットキー電極460Dおよび裏面電極470Dを形成する。これらの工程を経て、半導体装置10Dが完成する。
【0082】
以上説明した第4実施形態によれば、第1実施形態と同様に、GaN系の半導体装置10Dの電気的特性を向上させることができる。また、第1実施形態と同様に、半導体装置10Dの製造コストを抑制できる。また、半導体層110Dとショットキー電極460Dとが接するショットキー接合界面である界面117Dに発生する電界集中を緩和するフローティング領域として、半導体層141Dを形成できる。
【0083】
E.他の実施形態
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0084】
上述の実施形態において、基板100およびの材質は、窒化ガリウム(GaN)に限らず、ケイ素(Si)、サファイア(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)などであってもよい。
【0085】
上述の実施形態において、各半導体層の材質は、窒化ガリウム(GaN)に限らず、他のIII族窒化物(例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN))のほか、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、ヒ化ガリウム(GaAs)、酸化亜鉛(ZnO)などであってもよい。
【0086】
上述の実施形態において、n型半導体層に含まれるドナーは、ケイ素(Si)に限らず、ゲルマニウム(Ge)、酸素(O)などであってもよい。
【0087】
上述の実施形態において、p型半導体層に含まれるアクセプタは、マグネシウム(Mg)に限らず、亜鉛(Zn)、炭素(C)などであってもよい。
【0088】
上述の実施形態において、絶縁膜300の材質は、電気絶縁性を有する材質であればよく、二酸化ケイ素(SiO
2)の他、窒化ケイ素(SiNx)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸窒化ジルコニウム(ZrON)、酸窒化ハフニウム(HfON)などの少なくとも1つであってもよい。絶縁膜300は、単層であってもよいし、2層以上であってもよい。絶縁膜300を形成する手法は、ALDに限らず、ECRスパッタであってもよいし、ECR−CVDであってもよい。
【0089】
上述の実施形態において、トレンチ220およびリセス240を形成する手法は、ICPドライエッチングに限らず、電子サイクロトロン共鳴−反応性イオンエッチング(ECR−RIE:Electron Cyclotron Resonance - Reactive Ion Etching)など他のドライエッチングであってもよい。上述の実施形態において、製造者は、ドライエッチングによって形成されたトレンチ220およびリセス240に対して、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH:Tetramethylammonium hydroxide)を用いたウェットエッチングによって表面処理を行ってもよい。
【0090】
上述の実施形態において、各電極の材質は、上述の材質に限らず、他の材質であってもよい。例えば、ショットキー電極の材質は、ニッケル(Ni)に限らず、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)などであってもよい。