特許第6221868号(P6221868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221868
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】電子モジュールの放熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20171023BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20171023BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01L23/40 D
   H01L33/00 H
   H01L31/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-56568(P2014-56568)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-179743(P2015-179743A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 久志
(72)【発明者】
【氏名】沖野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】北井 敦
(72)【発明者】
【氏名】新井 宏之
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−153469(JP,A)
【文献】 特許第4998249(JP,B1)
【文献】 実開昭54−84061(JP,U)
【文献】 特開2009−81157(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/158615(WO,A1)
【文献】 特開平07−202084(JP,A)
【文献】 特開2010−205830(JP,A)
【文献】 特開2009−212452(JP,A)
【文献】 特開2005−150454(JP,A)
【文献】 特開平07−318758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/40
H01L 31/02
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、上部に開口部を有し、側部から電子モジュールを挿抜自在に収容するケージと、
前記ケージの前記上部に固定され、前記開口部から前記ケージ内に露出した底部を有するヒートシンクと、
前記ヒートシンクの前記底部に熱伝導シートを介して固定された固定端部と屈曲部によって前記ケージ内方向に屈曲した自由端部とを有し、前記電子モジュールの収容時に前記自由端部が熱伝導シートを介して前記電子モジュールの上面に当接する板ばねと、を有することを特徴とする電子モジュールの放熱装置。
【請求項2】
前記板ばねは、前記ケージ内に設けられた領域であるケージ内領域と、前記ケージから突出した領域である突出領域とを有し、
前記突出領域には、前記基板に向かって屈曲した把持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放熱装置。
【請求項3】
前記ケージ内には前記電子モジュールの収容時に前記電子モジュールを固定するコネクタが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱装置。
【請求項4】
前記板ばねは銅又は銅合金からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の放熱装置。
【請求項5】
前記電子モジュールは光トランシーバであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の放熱装置。
【請求項6】
前記ヒートシンクの前記露出した底部は、前記基板に垂直な方向から見たとき、その全体が前記板ばねの前記ケージ内領域を囲むように形成されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1つに記載の放熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュール、特に、回路基板に対して挿抜可能な電子モジュールの放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器などの産業機器には、様々な電子回路が用いられており、電子回路は様々な電子モジュールから構成されている。一般に、電子モジュールは使用(通電)時に発熱するため、電子モジュールの設計時には放熱構造を検討する必要がある。中でも、例えば光トランシーバなど、回路基板に対して挿抜可能な(プラガブルな)電子モジュールにおいては、放熱構造の検討時に挿抜方法も考慮する必要がある。
【0003】
特許文献1には、ヒートシンクとトランシーバ筐体との接触面が傾斜面として形成され、当該接触面のいずれかに熱伝導シートが貼りつけられており、トランシーバ筐体の最終挿入位置で当該接触面が圧接される光トランシーバの放熱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4998249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子モジュールから発生した熱を効率よく放熱するためには、放熱経路の途中に熱伝導率の小さい部分がないことが望ましい。例えば、発熱源である電子モジュールと放熱部材であるヒートシンクとの間に空気層が存在する場合、電子モジュールからヒートシンクに向かう放熱経路が空気層によって遮断されてしまい、高効率で放熱することができない。
【0006】
また、ヒートシンクと電子モジュールとを接触させる場合、ヒートシンクと電子モジュールとが接触する面積は大きいことが望ましい。具体的には、ヒートシンクや電子モジュールは厳密には平坦な面ではない。従って、両者を直接接触させたとしても、厳密には面接触ではなく、多数の点接触によって接触される。両者の接触面積を増大させるためには、例えば、その接触面に軟質な熱伝導シートを介在させることが考えられる。
【0007】
しかし、熱伝導シートは、その軟質な特性から、電子モジュールを挿抜する際に摺動され、破損及び脱落してしまう。従って、挿抜を行うことを考慮すると、熱伝導シートを接触面に用いることは困難である。また、モジュールとヒートシンクとの直接接触によって良好な面接触を実現することは困難である。
【0008】
また、特許文献1においては、トランシーバ筐体の上面を傾斜させるため、トランシーバの部品実装容積が制限され、例えば部品の高さが制限されてしまう。
【0009】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、挿抜自在な電子モジュールの放熱経路を容易に確保することが可能な電子モジュールの放熱装置を提供することを目的としている。また、モジュールの実装面積を犠牲にすることなく、また、モジュール及び放熱部材を直接接触させることなく良好な放熱経路を形成することが可能な電子モジュールの放熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による電子モジュールの放熱装置は、基板と、基板上に設けられ、上部に開口部を有し、側部から電子モジュールを挿抜自在に収容するケージと、ケージの上部に固定され、開口部からケージ内に露出した底部を有するヒートシンクと、ヒートシンクの底部に熱伝導シートを介して固定された固定端部と屈曲部によってケージ内方向に屈曲した自由端部とを有し、電子モジュールの収容時に自由端部が熱伝導シートを介して電子モジュールの上面に当接する板ばねと、を有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、実施例1に係る電子モジュールの放熱装置の斜視図であり、(b)は、実施例1に係る電子モジュールの放熱装置の上面図である。
図2】(a)は、実施例1に係る電子モジュールの放熱装置の断面図であり、(b)は、実施例1に係る電子モジュールの放熱装置における放熱経路を示す図である。
図3】実施例1に係る電子モジュールの放熱装置における板ばね及び熱伝導シートの構造を示す断面図である。
図4】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ電子モジュールの未挿入時、挿抜時及び収容時における放熱装置の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1(a)は、実施例1に係る電子モジュールの放熱装置(以下、単に放熱装置という)10の斜視図である。図1(b)は、放熱装置10の上面図である。図1(a)及び(b)は、電子モジュール(以下、単にモジュールという)20が挿入された状態の放熱装置10を示している。モジュール20は、例えば光トランシーバである。
【0014】
放熱装置10は、配線(図示せず)が施された基板11と、基板11上に設けられた金属製のケージ12を有している。ケージ12は、その側部からモジュール20を挿抜自在に収容する。ケージ12の上面には、放熱フィンを有するヒートシンク13が設けられている。なお、図1(b)においては、図の明確さのため、ヒートシンク13の放熱フィンの図示を省略してある。ヒートシンク13は、例えばアルミニウムや銅などの熱伝導率の大きな金属材料からなる。ヒートシンク13は、例えば熱伝導性を有するテープやクリップなど(図示せず)によってケージの上面に固定されている。
【0015】
ケージ12は、その上部に開口部12APを有している(図1(b)参照)。ヒートシンク13は、ケージ12の開口部12APからケージ12内に露出した底部(以下、露出底部という場合がある)13BPを有している。
【0016】
放熱装置10は、モジュール20の収容時にヒートシンク13とモジュール20とを物理的に接続する板ばね14を有している。板ばね14は、その一端においてヒートシンク13のケージ12内に露出した底部13BPに固定されている。また、板ばね14の他端はケージ12内方向に屈曲しており、モジュール20の収容時にはモジュール20の上面に当接する。板ばね14は、モジュール20から発生した熱をヒートシンク13に伝達する熱伝導部材として機能する。板ばね14は、例えば銅又は銅合金など、熱伝導率の大きな金属材料からなる。
【0017】
図1(b)に示すように、板ばね14は、ケージ12内に設けられた領域であるケージ内領域14IRと、ケージ12からモジュール20の挿入領域に向かって突出した領域である突出領域14PJとを有している。板ばね14の突出領域14PJは、モジュール20の挿抜時において板ばね14をヒートシンク13側に屈曲させる力を加える部分として機能する。また、ヒートシンク13の露出底部13BP(すなわちケージ12の開口部12AP)は、基板11に垂直な方向から見たとき、その全体が板ばね14のケージ内領域14IRを囲むように形成されている。
【0018】
図2(a)は、図1(b)のV−V線に沿った断面図であり、放熱装置10の構造を示す断面図である。図2(b)は、放熱装置10内の放熱経路を示す図である。図2(a)及び(b)は、モジュール20が挿入された状態の放熱装置10を示している。なお、図2(b)は、図2(a)と同様の断面図であるが、図の明確さのため、一部のハッチングを省略しており、また、一部の構成要素を破線で示している。
【0019】
図2(a)に示すように、ケージ12内には基板11の配線に接続されたコネクタCNが設けられている。コネクタCNは、モジュール20の収容時にモジュール20をケージ12内に固定する機能を有している。また、このコネクタCNにモジュール20のプラグ(図示せず)が接続されることで、モジュール20が通電状態となる。例えばモジュール20が光トランシーバである場合は、光トランシーバとホスト装置(図示せず)などとの間で通信(信号の送受信)が確立する。
【0020】
板ばね14は、ヒートシンク13の露出底部13BPに熱伝導シート15を介して固定された固定端部14Aと、屈曲部によってケージ12内方向に屈曲した自由端部14Bとを有している。板ばね14の自由端部14Bは、モジュール20の収容時に、熱伝導シート16を介してモジュール20の上面に当接する。熱伝導シート15及び16は、例えばシリコンやアクリル材料を用いて形成され得る。従って、図2(b)に示すように、モジュール20から、熱伝導シート16、板ばね14及び熱伝導シート15を介して、ヒートシンク13への放熱経路TPが形成される。放熱経路TPは全て熱伝導性部材によって形成されており、例えば空気層などが介在していない。従って、良好な放熱経路を確保することが可能となる。
【0021】
なお、本実施例においては、ヒートシンク13の露出底部13BPは、上面視において板ばね14のケージ内領域14IRを囲むように設けられている。すなわち、ケージ12内においては、板ばね14の直上の全体にヒートシンク13が露出している。換言すれば、板ばね14のケージ内領域14IRは、その全体がヒートシンク13の露出底部13BPに面している。従って、板ばね14の固定端部14A、すなわち熱伝導シート15を介したヒートシンク13への放熱経路TPのみならず、一部のケージ内領域14IRにおける自由端部14Bを介したヒートシンク13への補助的な放熱経路STPが形成される。従って、より高効率で放熱を行うことができる。
【0022】
また、固定端部14Aのヒートシンク13に当接する部分及び自由端部14Bのモジュール20に当接する部分は、平面として形成されており、接触面内において均一な圧力で当接されていることが望ましい。例えば固定端部14Aのヒートシンク13との接触面内に接触圧のバラつきがあると、一部において面接触ではなくなったり、熱伝導シートと板ばね14及びヒートシンク13との接触界面において部分的に空隙が発生し、放熱経路が妨げられたりするおそれがあるからである。
【0023】
図3は、板ばね14、熱伝導シート15及び16の詳細構造を示す断面図である。板ばね14は、例えば薄板状の金属材料を曲げ加工又はプレス加工することによって形成することができる。板ばね14の自由端部14Bは、屈曲部BPによって固定端部14Aからケージ12内方向、すなわち基板11方向に屈曲している。屈曲部BPは、例えばR状の湾曲部又はL状の屈折部として構成されることができる。板ばね14の繰り返しの上げ下げ動作又は弾性運動による応力集中を抑制することを考慮すると、屈曲部BPは、湾曲部として構成されていることが望ましい。
【0024】
また、板ばね14の突出領域14PJ、本実施例においては自由端部14Bの屈曲部BPとは反対側の端部には、基板11方向に屈曲した把持部GPが設けられている。把持部GPは、モジュール20の挿抜時において板ばね14の自由端部14Bをヒートシンク13に向かって押し上げ、モジュール20の挿抜領域を確保するのに用いられる。把持部GPが基板11方向に屈曲していることによって、板ばね14を持ち上げる際に容易に指と係合すること、また、モジュール20が意図せずにコネクタから外れた場合に脱落防止機能を持たせることが可能となる。
【0025】
板ばね14の固定端部に設けられた熱伝導シート15は、基材15Bが粘着材15A及び15Cに挟まれた構造を有している。従って、粘着材15A及び15Cによって、板ばね14とヒートシンク13とが固定される。板ばね14の自由端部14に設けられた熱伝導シート16は、板ばね14側から粘着材16A及び基材16Bが積層された構造を有している。熱伝導シート16は板ばね14に貼りつけられている。従って、熱伝導シート16は、モジュール20に当接する側には粘着材は設けられておらず、自由端部14Bを熱伝導シート16とともにモジュール20から容易に離間(離脱)させることが可能な構成となっている。
【0026】
次に、図4(a)乃至(c)を用いて、モジュール20の挿抜手順について説明する。図4(a)はモジュール20の未収容時における放熱装置10を示している。モジュール20がケージ12に収容されていない状態では、板ばね14の固定端部14Aは熱伝導シート15を介してヒートシンク13に固定されており、自由端部14Bはケージ12と基板11との間で無負荷状態(弾性力が働いていない状態)を維持している。モジュール20を挿入する際には、把持部GPを用いて自由端部14Bに上向きの力を加え、モジュール20の高さ以上の高さまで自由端部14Bを持ち上げる。
【0027】
図4(b)は、自由端部14Bを持ち上げた状態でモジュール20を挿入した状態を示している。自由端部14Bを持ち上げる際には、屈曲部BPを支点として、自由端部14Bが弾性運動を行う。図4(b)に示すように、挿入時に板ばね14はモジュール20に接触しない。この状態で自由端部14Bに加えていた力を解くと、図4(c)に示すように、自由端部14Bが熱伝導シート16を介してモジュール20の上面に当接し、収容状態となる。モジュール20の収容時においては、自由端部14Bに残存する弾性力がモジュール20方向に働いている。従って、自由端部14Bとモジュール20との接触面積を確保(維持)することができる。
【0028】
なお、モジュール20をケージ12から抜去する際には、まず、図4(b)に示すように自由端部14Bを持ち上げて自由端部14Bをモジュール20から離間させる。そして、モジュール20を抜去し、自由端部14Bに加えていた力を解き、図4(a)に示す状態とする。従って、抜去する際にも熱伝導シート16がモジュール20の上面において摺動することはない。
【0029】
上記したように、本実施例においては、板ばねを、熱伝導部材かつ挿抜部材として用い、その熱伝導部材としての機能を熱伝導シートによって強化する。従って、確実に放熱経路を形成することができ、放熱効率が大幅に向上する。また、熱伝導シートの利点である接触面積を増加するという点を生かし、かつ熱伝導シートの欠点である摺動時の破損を解消することができる。また、モジュールの実装容積や高さが放熱装置によって制限されることがなく、規格の上限でモジュールを設計することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
10 放熱装置
11 基板
12 ケージ
13 ヒートシンク
14 板ばね
14A 固定端部
14B 自由端部
14IR ケージ内領域
14PJ 突出領域
15 熱伝導シート
16 熱伝導シート
BP 屈曲部
GP 把持部
図1
図2
図3
図4