【実施例1】
【0013】
図1(a)は、実施例1に係る電子モジュールの放熱装置(以下、単に放熱装置という)10の斜視図である。
図1(b)は、放熱装置10の上面図である。
図1(a)及び(b)は、電子モジュール(以下、単にモジュールという)20が挿入された状態の放熱装置10を示している。モジュール20は、例えば光トランシーバである。
【0014】
放熱装置10は、配線(図示せず)が施された基板11と、基板11上に設けられた金属製のケージ12を有している。ケージ12は、その側部からモジュール20を挿抜自在に収容する。ケージ12の上面には、放熱フィンを有するヒートシンク13が設けられている。なお、
図1(b)においては、図の明確さのため、ヒートシンク13の放熱フィンの図示を省略してある。ヒートシンク13は、例えばアルミニウムや銅などの熱伝導率の大きな金属材料からなる。ヒートシンク13は、例えば熱伝導性を有するテープやクリップなど(図示せず)によってケージの上面に固定されている。
【0015】
ケージ12は、その上部に開口部12APを有している(
図1(b)参照)。ヒートシンク13は、ケージ12の開口部12APからケージ12内に露出した底部(以下、露出底部という場合がある)13BPを有している。
【0016】
放熱装置10は、モジュール20の収容時にヒートシンク13とモジュール20とを物理的に接続する板ばね14を有している。板ばね14は、その一端においてヒートシンク13のケージ12内に露出した底部13BPに固定されている。また、板ばね14の他端はケージ12内方向に屈曲しており、モジュール20の収容時にはモジュール20の上面に当接する。板ばね14は、モジュール20から発生した熱をヒートシンク13に伝達する熱伝導部材として機能する。板ばね14は、例えば銅又は銅合金など、熱伝導率の大きな金属材料からなる。
【0017】
図1(b)に示すように、板ばね14は、ケージ12内に設けられた領域であるケージ内領域14IRと、ケージ12からモジュール20の挿入領域に向かって突出した領域である突出領域14PJとを有している。板ばね14の突出領域14PJは、モジュール20の挿抜時において板ばね14をヒートシンク13側に屈曲させる力を加える部分として機能する。また、ヒートシンク13の露出底部13BP(すなわちケージ12の開口部12AP)は、基板11に垂直な方向から見たとき、その全体が板ばね14のケージ内領域14IRを囲むように形成されている。
【0018】
図2(a)は、
図1(b)のV−V線に沿った断面図であり、放熱装置10の構造を示す断面図である。
図2(b)は、放熱装置10内の放熱経路を示す図である。
図2(a)及び(b)は、モジュール20が挿入された状態の放熱装置10を示している。なお、
図2(b)は、
図2(a)と同様の断面図であるが、図の明確さのため、一部のハッチングを省略しており、また、一部の構成要素を破線で示している。
【0019】
図2(a)に示すように、ケージ12内には基板11の配線に接続されたコネクタCNが設けられている。コネクタCNは、モジュール20の収容時にモジュール20をケージ12内に固定する機能を有している。また、このコネクタCNにモジュール20のプラグ(図示せず)が接続されることで、モジュール20が通電状態となる。例えばモジュール20が光トランシーバである場合は、光トランシーバとホスト装置(図示せず)などとの間で通信(信号の送受信)が確立する。
【0020】
板ばね14は、ヒートシンク13の露出底部13BPに熱伝導シート15を介して固定された固定端部14Aと、屈曲部によってケージ12内方向に屈曲した自由端部14Bとを有している。板ばね14の自由端部14Bは、モジュール20の収容時に、熱伝導シート16を介してモジュール20の上面に当接する。熱伝導シート15及び16は、例えばシリコンやアクリル材料を用いて形成され得る。従って、
図2(b)に示すように、モジュール20から、熱伝導シート16、板ばね14及び熱伝導シート15を介して、ヒートシンク13への放熱経路TPが形成される。放熱経路TPは全て熱伝導性部材によって形成されており、例えば空気層などが介在していない。従って、良好な放熱経路を確保することが可能となる。
【0021】
なお、本実施例においては、ヒートシンク13の露出底部13BPは、上面視において板ばね14のケージ内領域14IRを囲むように設けられている。すなわち、ケージ12内においては、板ばね14の直上の全体にヒートシンク13が露出している。換言すれば、板ばね14のケージ内領域14IRは、その全体がヒートシンク13の露出底部13BPに面している。従って、板ばね14の固定端部14A、すなわち熱伝導シート15を介したヒートシンク13への放熱経路TPのみならず、一部のケージ内領域14IRにおける自由端部14Bを介したヒートシンク13への補助的な放熱経路STPが形成される。従って、より高効率で放熱を行うことができる。
【0022】
また、固定端部14Aのヒートシンク13に当接する部分及び自由端部14Bのモジュール20に当接する部分は、平面として形成されており、接触面内において均一な圧力で当接されていることが望ましい。例えば固定端部14Aのヒートシンク13との接触面内に接触圧のバラつきがあると、一部において面接触ではなくなったり、熱伝導シートと板ばね14及びヒートシンク13との接触界面において部分的に空隙が発生し、放熱経路が妨げられたりするおそれがあるからである。
【0023】
図3は、板ばね14、熱伝導シート15及び16の詳細構造を示す断面図である。板ばね14は、例えば薄板状の金属材料を曲げ加工又はプレス加工することによって形成することができる。板ばね14の自由端部14Bは、屈曲部BPによって固定端部14Aからケージ12内方向、すなわち基板11方向に屈曲している。屈曲部BPは、例えばR状の湾曲部又はL状の屈折部として構成されることができる。板ばね14の繰り返しの上げ下げ動作又は弾性運動による応力集中を抑制することを考慮すると、屈曲部BPは、湾曲部として構成されていることが望ましい。
【0024】
また、板ばね14の突出領域14PJ、本実施例においては自由端部14Bの屈曲部BPとは反対側の端部には、基板11方向に屈曲した把持部GPが設けられている。把持部GPは、モジュール20の挿抜時において板ばね14の自由端部14Bをヒートシンク13に向かって押し上げ、モジュール20の挿抜領域を確保するのに用いられる。把持部GPが基板11方向に屈曲していることによって、板ばね14を持ち上げる際に容易に指と係合すること、また、モジュール20が意図せずにコネクタから外れた場合に脱落防止機能を持たせることが可能となる。
【0025】
板ばね14の固定端部に設けられた熱伝導シート15は、基材15Bが粘着材15A及び15Cに挟まれた構造を有している。従って、粘着材15A及び15Cによって、板ばね14とヒートシンク13とが固定される。板ばね14の自由端部14に設けられた熱伝導シート16は、板ばね14側から粘着材16A及び基材16Bが積層された構造を有している。熱伝導シート16は板ばね14に貼りつけられている。従って、熱伝導シート16は、モジュール20に当接する側には粘着材は設けられておらず、自由端部14Bを熱伝導シート16とともにモジュール20から容易に離間(離脱)させることが可能な構成となっている。
【0026】
次に、
図4(a)乃至(c)を用いて、モジュール20の挿抜手順について説明する。
図4(a)はモジュール20の未収容時における放熱装置10を示している。モジュール20がケージ12に収容されていない状態では、板ばね14の固定端部14Aは熱伝導シート15を介してヒートシンク13に固定されており、自由端部14Bはケージ12と基板11との間で無負荷状態(弾性力が働いていない状態)を維持している。モジュール20を挿入する際には、把持部GPを用いて自由端部14Bに上向きの力を加え、モジュール20の高さ以上の高さまで自由端部14Bを持ち上げる。
【0027】
図4(b)は、自由端部14Bを持ち上げた状態でモジュール20を挿入した状態を示している。自由端部14Bを持ち上げる際には、屈曲部BPを支点として、自由端部14Bが弾性運動を行う。
図4(b)に示すように、挿入時に板ばね14はモジュール20に接触しない。この状態で自由端部14Bに加えていた力を解くと、
図4(c)に示すように、自由端部14Bが熱伝導シート16を介してモジュール20の上面に当接し、収容状態となる。モジュール20の収容時においては、自由端部14Bに残存する弾性力がモジュール20方向に働いている。従って、自由端部14Bとモジュール20との接触面積を確保(維持)することができる。
【0028】
なお、モジュール20をケージ12から抜去する際には、まず、
図4(b)に示すように自由端部14Bを持ち上げて自由端部14Bをモジュール20から離間させる。そして、モジュール20を抜去し、自由端部14Bに加えていた力を解き、
図4(a)に示す状態とする。従って、抜去する際にも熱伝導シート16がモジュール20の上面において摺動することはない。
【0029】
上記したように、本実施例においては、板ばねを、熱伝導部材かつ挿抜部材として用い、その熱伝導部材としての機能を熱伝導シートによって強化する。従って、確実に放熱経路を形成することができ、放熱効率が大幅に向上する。また、熱伝導シートの利点である接触面積を増加するという点を生かし、かつ熱伝導シートの欠点である摺動時の破損を解消することができる。また、モジュールの実装容積や高さが放熱装置によって制限されることがなく、規格の上限でモジュールを設計することが可能となる。