特許第6221883号(P6221883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221883電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221883
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/06 20060101AFI20171023BHJP
   G03G 5/14 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G03G5/06 372
   G03G5/06 312
   G03G5/06 313
   G03G5/14 101E
   G03G5/14 101F
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-62454(P2014-62454)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-184571(P2015-184571A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌彦
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−242483(JP,A)
【文献】 特開2012−203033(JP,A)
【文献】 特開2010−015147(JP,A)
【文献】 特開2013−200417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00 − 5/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、
下引層と、
結着樹脂を含有し、且つヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を層中において47体積%以上54体積%以下含有する電荷発生層と、
下記式(A)で表されるトリアリールアミン化合物を含有し、且つ平均膜厚が30μm以上40μm以下である電荷輸送層と、
をこの順に有する電子写真感光体。
【化1】

【請求項2】
前記電荷輸送層の平均膜厚が34μm以上である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記下引層が、金属酸化物粒子および下記一般式(1)で表されるアントラキノン誘導体を含有する請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体。
【化2】


(一般式(1)中、n1およびn2は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々独立に0または1の整数を表す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。)
【請求項4】
前記一般式(1)におけるRおよびRの少なくとも一方が炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
請求項1請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項6】
請求項1請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において用いられる感光体としては、有機の光導電性材料を用いた有機感光体が主流となっている。有機感光体を製造する場合、例えば、導電性基体の上に下引層を形成し、その後感光層、特に電荷発生層および電荷輸送層を備えた感光層を形成したものが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、導電性基体上に中間層を介して感光層を有する電子写真感光体において、該中間層が特定のポリアミド樹脂を含有する電子写真感光体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、感光体に形成されたトナー像を記録媒体に転写して画像を形成する画像形成装置において、前記感光体は、導電性基体と、前記導電性基体の周囲に形成された中間層と、前記中間層の周囲に形成された感光層と、を有し、前記中間層は、平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子を結着樹脂中に含有する画像形成装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、電荷発生材料とバインダー高分子との重量比が2:1から1:10の範囲にある単層型感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−11483号公報
【特許文献2】特開2002−123028号公報
【特許文献3】特開平3−274562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、画像における焼付きの発生が抑制された電子写真感光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
導電性基体と、
下引層と、
結着樹脂を含有し、且つヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を層中において47体積%以上54体積%以下含有する電荷発生層と、
下記式(A)で表されるトリアリールアミン化合物を含有し、且つ平均膜厚が30μm以上40μm以下である電荷輸送層と、
をこの順に有する電子写真感光体である。
【0009】
【化1】

【0010】
請求項2に係る発明は、
前記電荷輸送層の平均膜厚が34μm以上である請求項1に記載の電子写真感光体である。
請求項に係る発明は、
前記下引層が、金属酸化物粒子および下記一般式(1)で表されるアントラキノン誘導体を含有する請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体である。
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(1)中、n1およびn2は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々独立に0または1の整数を表す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。)
【0013】
請求項4に係る発明は、
前記一般式(1)におけるRおよびRの少なくとも一方が炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す請求項3に記載の電子写真感光体である。
請求項に係る発明は、
請求項1請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジである。
【0014】
請求項に係る発明は、
請求項1請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、電荷発生層でのヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有量が47体積%未満である場合に比べ、画像における焼付きの発生が抑制された電子写真感光体が提供される。
請求項に記載の発明によれば、一般式(1)で表されるアントラキノン誘導体以外のアクセプター化合物のみを用いる場合に比べ、画像における焼付きの発生が抑制された電子写真感光体が提供される。
【0016】
請求項、又はに係る発明によれば、電荷発生層でのヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有量が47体積%未満である電子写真感光体を備える場合に比べ、画像における焼付きの発生が抑制された画像形成装置又はプロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成を示す概略断面図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図3】本実施形態に係る画像形成装置の他の態様を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[電子写真感光体]
本実施形態に係る電子写真感光体(以下単に「感光体」とも称す)は、導電性基体と、下引層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、をこの順に有する。
前記電荷発生層は、結着樹脂を含有し、且つヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を電荷発生層中において47体積%以上60体積%以下含有する。
前記電荷輸送層は、下記式(A)で表されるトリアリールアミン化合物を含有し、且つ平均膜厚が30μm以上40μm以下である。
【0020】
【化3】

【0021】
従来から、感光体の使用を継続するうちに電荷輸送層の摩耗が生じ、非露光部においても導電性基体から電荷輸送層表面にまで電荷が移動し、そのために色点が発生することがあり、この色点抑制の観点で電荷輸送層の膜厚を厚くすることがあった。また、電荷輸送層が感光体の最表面層でない場合であっても、やはり電荷輸送層の膜厚を厚くすることがあった。
【0022】
但し、電荷輸送層の膜厚を30μm以上の厚さとした場合、露光部に該当する電荷輸送層中を移動する電荷が、層中の深さ方向にだけでなく横方向にも拡散することで静電潜像にぼやけが生じ、そのため形成される画像において粒状性の悪化が発生していた。
【0023】
尚、画像における上記の粒状性を改善するためには電荷輸送層中における電荷の移動度を速めることが求められ、具体的には電荷輸送層中に含まれる電荷輸送材料として前記式(A)で表されるトリアリールアミン化合物を用いることで、粒状性を改善し得る。
【0024】
しかしながら、電荷輸送層に式(A)で表されるトリアリールアミン化合物を含有させて電荷の移動度を速めることで、同一の画像を連続出力した際に、露光部の電荷発生層と電荷輸送層の界面に電荷が蓄積しやすくなる。その結果、露光部の帯電電位が低下することで、同一画像の連続出力後に更に全面ハーフトーン画像を出力した際、連続露光された部分の表面電位が低下し、「焼付き」と称するポジゴーストが連続して発生することがあった。
【0025】
これに対し本実施形態では、電荷発生層において電荷発生材料として含まれるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有量を上記の範囲とすることで、上記焼付きの発生が抑制される。
これは、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を上記下限値以上含有することによって、界面での電荷の蓄積が抑制され、その結果露光部の帯電電位の低下が抑制される為と推察される。
【0026】
次いで、本実施形態に係る感光体の構成について図1を参照して説明するが、本実施形態は図1によって限定されるものではない。
【0027】
図1は、本実施形態に係る感光体の層構成を示す模式断面図である。
図1に示す感光体は、導電性基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2Bがこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの2層から構成される。図1に示す感光体においては電荷輸送層2Bが最外表面を構成する最表面層である。
尚、図1では電荷輸送層2Bが最表面層である態様を示したが、更に電荷輸送層2Bの外周面側に保護層等の他の層を設けた態様であってもよい。また、図1では導電性基体1上に下引層4を介して電荷発生層2Aを設けた態様を示したが、下引層4がない態様であってもよい。
【0028】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0029】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0030】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0031】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0032】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0033】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0034】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0035】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0036】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0037】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0038】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0039】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0040】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0041】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0042】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましい、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0043】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0046】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0047】
・金属酸化物粒子
無機粒子の中でも特に金属酸化物粒子がよい。金属酸化物粒子としては、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の粒子が挙げられる。
これらの中でも、金属酸化物粒子としては、残留電位の上昇抑制の観点から、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛の粒子がよい。
【0048】
金属酸化物粒子としては、望ましくは粒径が100nm以下、特に10nm以上100nm以下の導電粉が望ましく用いられる。ここでいう粒径とは、平均1次粒径を意味する。金属酸化物粒子の平均1次粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)により観察し測定される値である。
金属酸化物粒子の粒径が10nm以上であることにより、金属酸化物粒子の表面積が大きくなり過ぎず、分散液におけるムラの発生が抑制される。一方、金属酸化物粒子の粒径が100nm以下であることにより、2次粒子、またはそれ以上の高次粒子が1μm程度の粒径になることが効果的に抑制され、下引層内で金属酸化物粒子の存在する部分と存在しない部分、いわゆる海島構造となることが抑制され、ハーフトーン濃度のムラなどの画質欠陥の発生が抑制される。
【0049】
金属酸化物粒子としては10Ω・cm以上1010Ω・cm以下の粉体抵抗とすることが望ましい。これにより、下引層は、電子写真プロセス速度に対応した周波数で適切なインピーダンスを得ることが実現され易くなる。
【0050】
金属酸化物粒子は、分散性等の諸特性の改善の目的で、前記無機粒子についても説明したごとく表面処理されていることが好ましく、少なくとも1種のカップリング剤で表面処理されていることがよい。
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、およびアルミネート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種であることがよい。
具体的なカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)、イソプロピルトリ(N―アミノエチルーアミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0051】
カップリング剤の処理量は、金属酸化物粒子に対して、0.1質量%以上3質量%以下であることがよく、望ましくは0.3質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。
【0052】
なお、カップリング剤の処理量は、次のように測定する。
FT−IR法、29Si固体NMR法、熱分析、XPSなどの分析法があるが、FT−IR法が最も簡便である。FT−IR法では通常のKBr錠剤法でも、ATR法でもよい。少量の処理済金属酸化物粒子をKBrと混合し、FT−IRを測定することで、カップリング剤の処理量を測定する。
【0053】
金属酸化物粒子は、上記カップリング剤で表面処理後、抵抗値の環境依存性等の改善のために熱処理を行ってもよい。熱処理温度は、例えば、150℃以上300℃以下、処理時間は30分以上5時間以下がよい。
【0054】
金属酸化物粒子の含有量は、電気特性維持の観点から、下引層中において30質量%以上60質量%以下が望ましく、35質量%以上55質量%以下がより望ましい。
【0055】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0056】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0057】
・アントラキノン誘導体
前記電子受容性化合物(アクセプター化合物)の中でも好ましい、アントラキノン誘導体(アントラキノン構造を有する化合物)は、下引層に含有される金属酸化物の表面と化学反応する材料、または金属酸化物の表面に吸着する材料であり、金属酸化物の表面に選択的に存在し得る。
アントラキノン誘導体としては、残留電位の上昇抑制の観点から、下記一般式(1)で示される化合物が望ましい。
【0058】
【化4】

【0059】
一般式(1)中、n1およびn2は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々独立に0または1の整数を表す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。
【0060】
一般式(1)で示されるアントラキノン誘導体の中でも、残留電位の上昇抑制の観点から、RおよびRの少なくとも一方が炭素数1以上10以下のアルコキシ基を示す化合物がよい。尚、m1およびm2の少なくとも一方が1であることがよい。
【0061】
ここで、一般式(1)中、RおよびRが表す炭素数1以上10以下のアルキル基としては、直鎖状、または分鎖状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルキル基としては、望ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基、より望ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基である。
およびRが表す炭素数1以上10以下のアルコキシ基(アルコキシル基)としては、直鎖状、または分鎖状のいずれでもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルコキシ基としては、望ましくは炭素数1以上8以下のアルコキシル基、より望ましくは炭素数1以上6以下のアルコキシル基である。
【0062】
また、アントラキノン誘導体としては、下記一般式(2)で表される化合物であってもよい。
【0063】
【化5】

【0064】
一般式(2)中、n1、n2、n3、およびn4は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。また、n3およびn4の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n3およびn4が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々0または1の整数を示す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。rは、1以上10以上の整数を表す。
【0065】
ここで、一般式(2)中、RおよびRが表す炭素数1以上10以下のアルキル基としては、直鎖状、または分鎖状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルキル基としては、望ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基、より望ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基である。
およびRが表す炭素数1以上10以下のアルコキシ基(アルコキシル基)としては、直鎖状、または分鎖状のいずれでもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルコキシ基としては、望ましくは炭素数1以上8以下のアルコキシル基、より望ましくは炭素数1以上6以下のアルコキシル基である。
rは、更に2以上10以下であることが好ましい。
【0066】
ここで、アントラキノン誘導体の具体例を下記に示す。但し、これらに限定されるものではない。
尚、下記具体例化合物を以下においては「例示化合物」と称し、例えば下記(1−1)の化合物であれば「例示化合物(1−1)」と称す。
【0067】
【化6】

【0068】
【化7】

【0069】
本実施形態においては、特に電荷の蓄積を抑制し、その結果焼付きの発生より効果的に抑制し得るとの観点から、前記例示化合物(1−9)がより好ましい。
【0070】
アントラキノン誘導体の含有量は、化学反応または吸着する相手である金属酸化物の表面積および含有量と、各材料の電子輸送能力から決められるが、通常は下引層中において0.01質量%以上20質量%以下の範囲がよく、より望ましくは0.1質量%以上10質量%以下の範囲である。
アントラキノン誘導体の含有量が0.1質量%以上であることにより、アクセプター物質の効果が効率的に発現される。また、アントラキノン誘導体の含有量が20質量%以下であることにより、金属酸化物粒子同士の凝集が抑制され、金属酸化物粒子の下引層内での分布のムラが抑制され、良好な導電路が形成される。
【0071】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0072】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着せる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0073】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0074】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0075】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0076】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0077】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0078】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0079】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0080】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0081】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0082】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0083】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0084】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0085】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0086】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0087】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0088】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0089】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0090】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0091】
(中間層)
図示は省略するが、下引き層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0092】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0093】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0094】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0095】
(電荷発生層)
電荷発生層は、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。尚、本実施形態では、少なくとも上記電荷発生材料としてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を含有する。
【0096】
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料
ヒドロキガリウムシフタロシアニン顔料の含有量は、電荷発生層に対して47体積%以上60体積%以下である。
含有率が47体積%より少ない場合は、電荷の蓄積が抑制されず焼付きの抑制効果が得られない。また、電荷発生機能の低下により求められる光感度が得られない。一方、60体積%を超えると、電荷発生層内部に存在する内因電荷が増加し、電子写真感光体表面の電荷を打ち消すことにより、非画像領域に色点が発生する。
【0097】
尚、ヒドロキガリウムシフタロシアニン顔料の含有量は、電荷発生層に対して更に48体積%以上58体積%以下であることが好ましく、さらには49体積%以上57体積%以下であることがより好ましい。
【0098】
尚、電荷発生層中におけるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有量は、以下の方法により測定される。
まず、電子写真感光体の感光層の内、電荷発生層より上層を溶剤などで除去することで、電荷発生層を表出させる。その後、電荷発生層をスパチュラ等の金属片により物理的に削り取り、電荷発生層単層の分析用試料を得る。得られた電荷発生層単層の分析用試料を、NMR、ガスクロマトグラフィー、液クロマトグラフィー等で分析し、結着樹脂構造を特定する。次に、特定された結着樹脂を別途用意し、この結着樹脂を溶解し得る溶剤に溶解し、得られた結着樹脂液2μLを15mgのKBr粉末に混合させ、メノウ鉢で十分にすりつぶして、粉末試料を得る。得られた粉末試料を用いて、圧縮成型を行い、FT−IR測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルでFT−IR分析を行い、結着樹脂に固有のピーク波数を特定する。
次に、特定された結着樹脂にヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を、それぞれ40体積%、45体積%、50体積%、55体積%、60体積%、65体積%、70体積%となるよう混合したものに、結着樹脂が溶解する溶剤を選択して分散を行う。分散方法については特に制限はなく、ペイントシェイカーやボールミル、ロールミルなどの公知の手段が用いられる。得られた各ヒドロキシガリウムフタロシアニンの樹脂分散液を、それぞれ2μLを15mgのKBr粉末に混合させ、メノウ鉢で十分にすりつぶして、各ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料含有率ごとの粉末試料を得る。得られた粉末試料を用いて、圧縮成型を行い、FT−IR測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルでFT−IR分析を行い、各ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料含有率ごとのFT−IR波形を得る。
得られた結果から、結着樹脂の固有ピークの面積と、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料固有ピーク(1454cm−1から1519cm−1)の面積を計算し、横軸にヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料含有率を、縦軸に結着樹脂固有ピークの面積とヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料固有ピークの面積の比をとったグラフを作成し、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料含有率の検量線を得る。
さらに、最初に電子写真感光体から物理的に削り取った電荷発生層粉末2μLを15mgのKBr粉末に混合させ、メノウ鉢で十分にすりつぶした後、圧縮成型を行い電荷発生層分析用試料を得る。得られた分析用試料をFT−IRで分析し、得られた結果から、結着樹脂の固有ピークの面積と、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料固有ピーク(1454cm−1から1519cm−1)の面積を計算し、さらに両者の面積比を計算し、先に作成しておいたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料含有率の検量線に当てはめて、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有率を確定する。
【0099】
電荷発生層に含有される電荷発生材料は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料単独であっても、また他の電荷発生材料を併用してもよい。
但し、電荷発生層に含まれる電荷発生材料の内、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が占める割合は、47体積%上であることが好ましく、更に48体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることが更に好ましい。
【0100】
併用される電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等、公知の電荷発生材料が挙げられる。
【0101】
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択される。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーが挙げられる。
これらの中でも、ポリビニルアセタール樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられる。
ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。これらの結着樹脂は1種を単独あるいは2種以上を混合して用いられる。
【0102】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0103】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0104】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0105】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0106】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0107】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0108】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料をはじめとする電荷発生材料は、分散性を向上させるため、表面処理を施してもよい。表面処理剤としてはカップリング剤などが用いられるが、これに限定されるものではない。カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、1−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0109】
また、カップリング剤の他に、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどの有機ジルコニウム化合物を配合してもよい。また、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどの有機チタン化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などの有機アルミニウム化合物も用いてもよい。
【0110】
(電荷輸送層)
・膜厚
電荷輸送層は、平均膜厚が30μm以上40μm以下に制御される。尚、電荷輸送層の平均膜厚は、好ましくは30μm以上38μm以下であり、より好ましくは30μm以上37μm以下である。
電荷輸送層の平均膜厚が30μmより薄いと、長期に渡る使用において電荷輸送層が摩耗し、非画像領域において帯電電位を維持し得なくなり、色点が発生する。また、平均膜厚が40μmを超えると、露光による静電潜像形成時に、電荷輸送層中を電荷が移動する際に、横方向へも電荷が移動することにより潜像のぼやけが発生し、結果として出力画像においてトナーのドットがぼやけ、粒状性の悪化を引き起こす。
【0111】
尚、電荷輸送層の平均膜厚は、以下の方法により測定される。測定装置として渦電流式膜厚測定機FISCHERSCOPE社製、MULTIMEASURING SYSTMを用い、電荷輸送層の任意の12箇所について測定を行い、その平均値を上記平均膜厚とする。
【0112】
・電荷輸送材料
また、電荷輸送層には、電荷輸送材料として前述の式(A)で表されるトリアリールアミン化合物が含有される。
【0113】
尚、電荷輸送層に含有される電荷輸送材料は、上記式(A)で表されるトリアリールアミン化合物単独であっても、また他の電荷輸送材料を併用してもよい。
但し、電荷輸送層に含まれる電荷輸送材料の内、上記式(A)で表されるトリアリールアミン化合物が占める割合は、10質量%以上であることが好ましく、更に20質量%以上であることがより好ましく、23質量%以上であることが更に好ましい。
【0114】
他の電荷輸送材料としては、具体的には、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニルピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニルN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル]−(1−ナフチル)−フェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリルキナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質が挙げられる。また、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送物質も使用し得る。さらに、上記化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体を用いてもよい。
【0115】
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
【0116】
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0117】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0118】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0119】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0120】
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0121】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0122】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、−OH、−OR[但し、Rはアルキル基を示す]、−NH、−SH、−COOH、−SiRQ13−Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1〜3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0123】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0124】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0125】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0126】
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0127】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0128】
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0129】
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0130】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0131】
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0132】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0133】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0134】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0135】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0136】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0137】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0138】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0139】
なお、図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0140】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0141】
−帯電装置−
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0142】
−露光装置−
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0143】
−現像装置−
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0144】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0145】
−クリーニング装置−
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0146】
−転写装置−
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0147】
−中間転写体−
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0148】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例】
【0149】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」および「%」は質量基準を意味する。以下に示す実施例11〜13は、本発明に対する参考例として示すものである。
【0150】
〔実施例1〕
・下引層の形成
酸化亜鉛(商品名:MZ300、テイカ株式会社製)100部、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランの10%のトルエン溶液を10部、トルエン200部を混合して攪拌を行い、2時間還流を行った。その後10mmHgにてトルエンを減圧留去し、135℃で2時間焼き付け表面処理を行った。
表面処理した酸化亜鉛:33部、ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):6部、前述の例示化合物(1−9):1部、メチルエチルケトン:25部を30分間混合し、その後ブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−1、積水化学社製):5部、シリコーンボール(商品名:トスパール120、東芝シリコーン社製):3部、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:SH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製):0.01部を添加し、サンドミルにて3時間の分散を行い、下引層形成用塗布液を得た。
さらに、この塗布液を浸漬塗布法にて直径40mm、長さ357mm、肉厚2mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
【0151】
・電荷発生層の形成
次に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、結着樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)、およびn−酢酸ブチルからなる混合物を、容量100mLガラス瓶中に、1.0mmφガラスビーズ(充填率50%)と共に入れてペイントシェーカーを用いて2.5時間分散処理し、電荷発生層形成用塗布液を得た。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の混合物に対して、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有率を47.0体積%とし、分散液の固形分は6.0%とした。尚、含有率は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の比重を1.606g/cm、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の比重を1.35g/cmとして計算した。
得られた電荷発生層形成用塗布液を、上記の下引層上に浸漬塗布し、100℃で5分間乾燥して、膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0152】
・電荷輸送層の形成
さらに、下記式(A)で表されるトリアリールアミン化合物2部、下記式(B)で表される化合物2部、およびビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量4万)6部をテトラヒドロフラン60部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この電荷輸送層形成用塗布液を前記の電荷発生層上に浸漬塗布し、150℃で30分の乾燥を行うことにより膜厚34μmの電荷輸送層を形成した。
【0153】
【化8】

【0154】
【化9】

【0155】
−評価−
得られた電子写真感光体を、電子写真式画像形成装置(富士ゼロックス社製:700 Digital Color Press)に搭載し、画質評価を行った。
画質評価は、A3サイズの用紙に格子パターンを1000枚連続して出力した後、20%濃度の全面ハーフトーン画像(Cyan)を1枚出力し、焼付きと粒状性の評価を行った。さらにその後、全面白色画像を1枚出力し、色点の評価を行った。
画質評価後、さらに20%濃度の全面ハーフトーン画像(Cyan)を1万枚連続出力した後、A3サイズの用紙に格子パターンを1000枚連続して出力し、20%濃度の全面ハーフトーン画像(Cyan)を1枚出力し、焼付きと粒状性の評価を行った。さらにその後、全面白色画像を1枚出力し、色点の評価を行った。
【0156】
焼付きと色点の評価は目視にて行い、グレード(G)判定を行った。粒状性の評価はルーペでドットを観察し、グレード(G)判定を行った。
グレード判定はG0乃至G5をG0.5刻みで行い、Gの数値が小さい方が評価結果が良好であることを示す。また、焼付き、粒状性および色点の許容G範囲はG3.5以下である。結果を表1に示す。
【0157】
〔実施例2〜19、比較例1〜10〕
実施例1において、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有率と電荷輸送層の膜厚を、表1に示す値とした以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0158】
【表1】
【符号の説明】
【0159】
1 導電性基体、2 感光層、2A 電荷発生層、2B 電荷輸送層、4 下引層、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑材、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置
図1
図2
図3