(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
以下、撓み噛み合い式歯車装置に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1〜
図3に示すように、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1は、径方向外側に延びるフランジ2aを有した扁平略円筒状のハウジング2と、このハウジング2の軸方向一端側(
図3中、左側)に形成された開口部2bを閉塞する略円板状の蓋部材3と、を備えている。
【0017】
また、
図3〜
図5に示すように、これらのハウジング2及び蓋部材3が形成するケース10内には、異なる歯数を有して同軸に並置された第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12が設けられている。更に、撓み噛み合い式歯車装置1は、これら第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の内側に配置される撓み外歯歯車20を備えている。尚、本実施形態では、この撓み外歯歯車20は、樹脂を用いて形成されている。そして、この撓み外歯歯車20の内側には、当該撓み外歯歯車20を略楕円形状に撓ませて上記第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12に対して部分的に噛合させるとともに、その撓められた楕円形状(撓み形状)を回転させることが可能な波動発生器30が設けられている。
【0018】
詳述すると、
図3に示すように、ハウジング2の底部2cには、貫通孔31が形成されている。また、この貫通孔31には、一端側(
図3中、左側)に略円板状のフランジ33aを有した第1軸状部材33が挿通されている。そして、本実施形態の第1内歯歯車11は、そのフランジ33aの周縁を囲む態様で上記第1軸状部材33と一体に形成されている。
【0019】
具体的には、本実施形態の第1軸状部材33は、そのフランジ33aをケース10内に配置する状態で、貫通孔31内に設けられた軸受(滑り軸受)2e,2fに軸支されている。そして、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1は、これにより、その第1軸状部材33と一体に設けられた第1内歯歯車11が、ケース10内において同軸回転するように構成されている。
【0020】
また、本実施形態の第2内歯歯車12は、蓋部材3と一体に形成されている。尚、本実施形態では、この蓋部材3は、その開口部2bが形成されたハウジング2の軸方向端部に締結されるようになっている。そして、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1は、これにより、そのケース10内に配置された第2内歯歯車12が、回転不能な状態で上記第1内歯歯車11と同軸に配置されるように構成されている。
【0021】
さらに詳述すると、
図1〜
図3に示すように、本実施形態では、蓋部材3の中央部には、貫通孔35が設けられている。また、この貫通孔35には、第2軸状部材36が挿通されている。そして、本実施形態の波動発生器30は、この第2軸状部材36と一体に回転する回転体としてのキャリヤ38と、このキャリヤ38により回転自在に支持された複数のローラ40と、を備えて構成されている。
【0022】
具体的には、
図3〜
図6に示すように、本実施形態のキャリヤ38は、第2軸状部材36に対して相対回転不能に固定される軸部38aと、この軸部38aの一端から径方向外側に延設された腕部38bと、この腕部38bから軸部38aの軸線方向(
図3中、左右方向)に延設された支持軸38cと、を備えている。
【0023】
本実施形態のキャリヤ38において、軸部38aは、貫通孔35に設けられた軸受(滑り軸受)3aによって回転自在に支持されている。また、この軸部38aは、スプライン嵌合により上記第2軸状部材36と同軸に固定されている。そして、この軸部38aを軸方向に貫通する第2軸状部材36の先端は、上記第1軸状部材33のフランジ33aに設けられた軸受(滑り軸受)33bに軸支されている。
【0024】
また、本実施形態のキャリヤ38において、腕部38bは、上記軸部38aを中心とする回転対称形状、詳しくは長尺略菱形状に形成されている。そして、この腕部38bには、周方向に均等間隔(180°間隔)で配置された二つの支持軸38cが設けられている。
【0025】
一方、本実施形態のローラ40は、樹脂を用いて略円柱状に形成されている。そして、本実施形態の波動発生器30は、上記各支持軸38cに軸支された二つのローラ40を備えている。
【0026】
即ち、本実施形態の波動発生器30は、その二つのローラ40が撓み外歯歯車20の内周面20sに当接することにより、当該撓み外歯歯車20を略楕円形状に撓ませて上記第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に噛合させる。そして、駆動トルクの入力に基づくキャリヤ38の回転により各ローラ40の当接位置が周方向移動することにより、その撓み外歯歯車20の撓み形状を回転させることが可能な構成となっている。
【0027】
ここで、本実施形態の第2内歯歯車12には、第1内歯歯車11の歯数よりも僅かに大きな歯数が設定されている。尚、この第1内歯歯車11と第2内歯歯車12との間の歯数差は、例えば、二歯程度に設定される。そして、撓み外歯歯車20には、第1内歯歯車11と等しい歯数が設定されている。
【0028】
つまり、上記のように波動発生器30が撓み外歯歯車20の撓み形状を回転させることで、その第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12に対する噛合位置もまた周方向に移動する。そして、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1は、これにより、その歯数差に基づいて、第1内歯歯車11と第2内歯歯車12とが相対回転する構成になっている。
【0029】
尚、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1は、そのフランジ2aを利用してハウジング2を固定することにより、当該ハウジング2とともにケース10を構成する蓋部材3と一体に形成された第2内歯歯車12が固定要素となるように構成されている。そして、これにより、その波動発生器30に連結された第2軸状部材36を入力軸とし、第1内歯歯車11と一体に形成された第1軸状部材33を出力軸とする減速装置として機能するようになっている。
【0030】
(撓み外歯歯車の強化構造)
次に、本実施形態における撓み外歯歯車の強化構造について説明する。
図7に示すように、撓み外歯歯車20は、その軸線方向(
図7中、左右方向)に跨る態様で上記のように同軸に並置された第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に噛合する。換言すると、撓み外歯歯車20は、その軸線方向における一端側(
図7中、右側)に第1内歯歯車11に対する噛合領域(第1噛合領域α1)を有し、他端側(
図7中、左側)に第2内歯歯車12に対する噛合領域(第2噛合領域α2)を有している。そして、本実施形態の撓み外歯歯車20は、その軸線方向における第1噛合領域α1よりも第2噛合領域α2側に、その歯部20aを除いた筒形状の厚み、即ちリム厚の厚い厚肉部50を備えている。
【0031】
詳述すると、本実施形態の撓み外歯歯車20は、その第2噛合領域α2におけるリム厚D2が、第1噛合領域α1を含め、他の部分のリム厚D1よりも厚くなるように形成されている(D2>D1)。つまり、本実施形態では、その第2噛合領域α2に厚肉部50が形成されている。具体的には、
図6に示すように、この厚肉部50は、撓み外歯歯車20の内周面20s側に当該撓み外歯歯車20の全周に亘る帯状の突出部51を形成する態様で形成されている。そして、本実施形態では、これにより、その優れた可撓性を確保しつつ、撓み外歯歯車20の剛性を高めることが可能となっている。
【0032】
また、
図8に示すように、本実施形態では、波動発生器30側の当接部材を構成する各ローラ40には、その撓み外歯歯車20の内周面20sに対する当接面40sに、上記厚肉部50の設定により撓み外歯歯車20の内周面20sに形成された突出部51に対応する凹部52が形成されている(
図6参照)。
【0033】
具体的には、本実施形態のローラ40は、上記第1噛合領域α1において撓み外歯歯車20の内周面20sに当接する部分(第1当接領域β1)の直径R1よりも上記第2噛合領域α2において撓み外歯歯車20の内周面20sに当接する部分(第2当接領域β2)の直径R2が小さくなるように形成されている(R2<R1)。そして、本実施形態では、この直径差(ΔR=R1−R2)の二分の1、つまりは「凹部52の深さ」を撓み外歯歯車20に設定されたリム厚差(ΔD=D2−D1)と略等しい値(ΔR/2≒ΔD)に設定することで、その第1当接領域β1及び第2当接領域β2を略均等な面圧で撓み外歯歯車20の内周面20sに当接させることが可能となっている。
【0034】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)即ち、歯数の異なる第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に噛合する撓み外歯歯車20においては、その歯数の等しい第1内歯歯車11に対する噛合領域(第1噛合領域α1)と比較して、歯数の異なる第2内歯歯車12に対する噛合領域(第2噛合領域α2)側に、より大きな負荷が加わることになる。従って、その軸線方向における第1噛合領域α1よりも第2噛合領域α2側に限定してリム厚を厚くすることにより、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20の剛性を高めることができる。
【0035】
つまり、撓み外歯歯車20の剛性を高めることで、異なる歯数を有した第2内歯歯車12と間に噛み合い位相のズレ(所謂「歯飛び」)が生じ難くなる。そして、これにより、そのトルク伝達容量の向上と耐用期間の延長を図ることができる。また、その優れた可撓性によって、撓み外歯歯車20を撓め、及びその撓み形状を保持するために必要な力が小さくなる。そして、これにより、高いトルク伝達効率を確保することができる。更に、第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12に対する十分な噛み合い代を確保することができる。そして、これにより、その撓み噛み合い式歯車装置1を安定的に動作させることができる。
【0036】
(2)撓み外歯歯車20は、第2噛合領域α2におけるリム厚D2が、第1噛合領域α1を含め、他の部分のリム厚D1よりも厚くなるように形成される(D2>D1)。
上記構成によれば、歯数の異なる第2内歯歯車12との噛み合いにより大きな負荷が加わる第2噛合領域α2に厚肉部50が形成される。その結果、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20の剛性を高めることができる。
【0037】
(3)波動発生器30側の当接部材を構成する各ローラ40の当接面40sには、上記厚肉部50の設定により撓み外歯歯車20の内周面20sに形成された突出部51に対応する凹部52が形成される。
【0038】
上記構成によれば、撓み外歯歯車20の軸線方向に設定されたリム厚差に依らず、略均等な面圧で当該撓み外歯歯車20の内周面20sに各ローラ40を当接させることが可能になる。そして、これにより、その撓み外歯歯車20を軸線方向の全域に亘って略均一に撓め、及びその均一な撓み形状を維持したまま回転させることができる。また、その撓み外歯歯車20の内周面20sに形成された突出部51と各ローラ40側の当接面40sに形成された凹部52とが干渉することで、撓み外歯歯車20と各ローラ40との間の相対的な軸線方向移動が規制される。そして、これにより、第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12と撓み外歯歯車20との間の良好な噛合状態を維持することができる。その結果、より高いトルク伝達効率を確保することができる。
【0039】
[第2の実施形態]
以下、撓み噛み合い式歯車装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0040】
図9〜
図11に示すように、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1Bは、上記第1の実施形態における撓み噛み合い式歯車装置1との比較において、その撓み外歯歯車20B(20)及び波動発生器30B(30)の形状が相違する。
【0041】
詳述すると、本実施形態の撓み外歯歯車20Bもまた、その軸線方向(
図10中、左右方向)における第1噛合領域α1よりも第2噛合領域α2側にリム厚の厚い厚肉部50Bを備えている。そして、本実施形態の撓み外歯歯車20Bは、第1噛合領域α1と第2噛合領域α2との間の中間領域α3に、第1噛合領域α1及び第2噛合領域α2を含め、他の部分のリム厚D0よりも厚いリム厚D3(最大値)を有した厚肉部50Bを有している(D3>D0)。
【0042】
具体的には、この厚肉部50Bは、撓み外歯歯車20Bの内周面20s側にリング状の突出部51Bを形成する態様で形成されている。また、この厚肉部50Bは、その撓み外歯歯車20Bの内周面20sに形成する突出部51Bの断面形状(撓み外歯歯車20Bの軸線方向に沿った断面形状)が略半円形となるように形成されている。そして、本実施形態では、これにより、その優れた可撓性を確保しつつ、撓み外歯歯車20Bの剛性を高めることが可能となっている。
【0043】
更に、本実施形態においてもまた、波動発生器30B側の当接部材を構成する各ローラ40Bには、その撓み外歯歯車20Bの内周面20sに対する当接面40sに、上記厚肉部50Bの設定により撓み外歯歯車20Bの内周面20sに形成された突出部51Bに対応する凹部52Bが形成されている。
【0044】
具体的には、
図11に示すように、本実施形態では、各ローラ40Bの当接面40sにおける第1当接領域β1と第2当接領域β2との間の中間領域β3には、その各ローラ40Bの全周に亘って、上記撓み外歯歯車20Bの内周面20sに形成された突出部51Bの断面形状と略等しい略半円形の断面形状を有した凹部52Bが形成されている。
【0045】
また、本実施形態のローラ40Bは、この凹部52Bの底部52bにおいて、その直径が最小となるように形成されている。そして、ローラ40Bは、この凹部52Bの底部52bにおける直径R3と他の部分の直径R0との間の直径差(ΔR=R0−R3)の二分の1、つまりは「凹部52Bの深さ」が、上記撓み外歯歯車20Bに設定されたリム厚差(ΔD=D3−D0)よりも大きな値となるように形成されている(ΔR/2>ΔD)。
【0046】
以上、本実施形態においてもまた、上記第1の実施形態と同様、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20の剛性を高めることができる。そして、本実施形態の構成を採用することにより、以下のような特徴的な効果を得ることができる。
【0047】
(1)即ち、同軸に並置された第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に対して軸線方向に跨るように噛合する撓み外歯歯車20Bには、当該撓み外歯歯車20Bを捩じ切るような「せん断応力」が作用することになる。従って、上記のように、この「せん断応力」が強く作用する第1噛合領域α1と第2噛合領域α2との間の中間領域α3に限定して厚肉部50Bを設定することで、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20Bの剛性を高めることができる。
【0048】
(2)波動発生器30B側の当接部材を構成する各ローラ40Bの当接面40sには、厚肉部50Bの設定により撓み外歯歯車20Bの内周面20sに形成された突出部51Bに対応する凹部52Bが形成される。そして、各ローラ40Bは、その凹部52Bの底部52bにおける直径R3と他の部分の直径R0との間の直径差の二分の1、つまりは「凹部52Bの深さ」が、撓み外歯歯車20Bに設定されたリム厚差よりも大きな値となるように形成される。
【0049】
上記構成によれば、厚肉部50Bの設定により生じた軸線方向のリム厚差に依らず、略均等な面圧で当該撓み外歯歯車20Bの内周面20sにローラ40Bを当接させることができる。詳しくは、その第1噛合領域α1及び第2噛合領域α2に対して第1当接領域β1及び第2当接領域β2を当接させることができる。
【0050】
(3)また、金型を用いて撓み外歯歯車20Bを樹脂形成する場合には、その型割面を厚肉部50Bに設定するとよい。そして、これにより、高い剛性を確保することができるともに、その製造を容易化することができる。
【0051】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1(1B)は、第2内歯歯車12を固定要素とすることにより、波動発生器30(第2軸状部材36)を入力要素とし、第1内歯歯車11(第1軸状部材33)出力要素とした減速装置として機能することとした。しかし、これに限らず、第1内歯歯車11を固定要素とする構成であってもよい。そして、2入力1出力、或いは1入力2出力の差動機構として用いてもよい。
【0052】
・上記第1の実施形態では、第2噛合領域α2に厚肉部50が形成され、第2の実施形態では、第1噛合領域α1と第2噛合領域α2との間の中間領域α3に厚肉部50Bが形成されることとした。しかし、これに限らず、撓み外歯歯車の軸線方向における第1噛合領域α1よりも第2噛合領域α2側の全域、即ち第2噛合領域α2及び中間領域α3に亘って厚肉部が形成される構成であってもよい。また、厚肉部50を第2噛合領域α2に設定する場合、必ずしも当該第2噛合領域α2の全てを厚肉部50としなくともよい。同様に、厚肉部50Bを中間領域α3に設定する場合についてもまた、その中間領域α3の全てを厚肉部50としなくともよい。そして、第2噛合領域α2及び中間領域α3について、それぞれ部分的に厚肉部を形成する構成であってもよい。
【0053】
・上記各実施形態では、撓み外歯歯車20(20B)及び各ローラ40(40B)は、樹脂を用いて形成されることとしたが、例えば、金属を用いる等、その材質は任意に変更してもよい。
【0054】
・また、上記各実施形態では、各ローラ40(40B)の当接面40sには、厚肉部50(50B)の設定により撓み外歯歯車20(20B)の内周面20sに形成された突出部51(51B)に対応する凹部52(52B)が形成されることとした。しかし、これに限らず、例えば、撓み外歯歯車20(20B)側の突出部51(51B)が小さい場合等には、このような凹部52(52B)は、必ずしも形成しなくともよい。
【0055】
・上記第1の実施形態では、ローラ40における第1当接領域β1と第2当接領域β2との直径差(ΔR=R1−R2)の二分の1、つまりは「凹部52の深さ」が、撓み外歯歯車20側のリム厚差(ΔD=D2−D1)と略等しい値(ΔR/2≒ΔD)に設定されることとしたが、そのリム厚差よりも大きい値としてもよい(ΔR/2>ΔD)。
【0056】
・また、第2の実施形態におけるローラ40Bについては、凹部52Bの底部52bにおける直径R3と他の部分の直径R0との間の直径差(ΔR=R0−R3)の二分の1、つまりは「凹部52Bの深さ」が、上記撓み外歯歯車20Bに設定されたリム厚差(ΔD=D3−D0)と略等しい値となるように形成してもよい(ΔR/2≒ΔD)。
【0057】
・上記各実施形態では、周方向に均等間隔(180°間隔)で配置された一対のローラ40を当接部材とした波動発生器30(30B)を用いることとした。しかし、これに限らず、例えば、楕円ボールベアリングを用いる構成であってもよい。また、
図12に示すように、一端が撓み外歯歯車20Cの内周面20sに当接するように放射状に配置された複数のスポーク61と、これらの各スポーク61を連結する可撓性を有した円環状の連結部62と、その周面63sに各スポーク61の他端側が当接する状態で回転可能に設けられた楕円カム63と、を備えた波動発生器30Cを用いてもよい。そして、このような波動発生器30Cを用いる場合についてもまた、その当接部材の当接面(スポーク61の端面)に、厚肉部の設定により撓み外歯歯車の内周面に形成された突出部に対応する凹部を形成するとよい。
【0058】
・また、各ローラ40(40B)は、必ずしも一部材により構成されるものでなくともよい。例えば、第1当接領域β1及び第2当接領域β2を構成する二つのローラ部材からなるものであってもよく、これらに加えて中間領域β3を構成する3つ目のローラ部材を備えるものであってもよい。そして、このような分割構造を採用することより、その製造を容易化することができる。
【0059】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記波動発生器は、駆動トルクに基づき回転する回転体と、該回転体により回転自在に支持された複数の当接部材と、を備えてなること、を特徴とする撓み噛み合い式歯車装置。
【0060】
即ち、このような波動発生器を用いる場合には、撓み外歯歯車の撓み形状を一定に保持することが重要となる。従って、このようなものについて、各請求項の構成を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。
【0061】
(ロ)前記撓み外歯歯車は、前記第2内歯歯車に対する噛合領域において前記撓み外歯歯車の内周面に突出する前記突出部を有すること、を特徴とする撓み噛み合い式歯車装置。
【0062】
(ハ)前記撓み外歯歯車は、前記第1内歯歯車に対する噛合領域と前記第2内歯歯車に対する噛合領域との間の中間領域において前記撓み外歯歯車の内周面に突出する前記突出部を有すること、を特徴とする撓み噛み合い式歯車装置。