(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係るレンズ位置調整機構,バリフォーカルレンズ,及び監視カメラを、好ましい実施例1〜4などにより
図1〜
図12を用いて説明する。
【0013】
(実施例1)
図1は、本発明の実施の形態に係るバリフォーカルレンズにおける実施例1のレンズ51を説明するための斜視図である。
レンズ51は、バリフォーカルレンズであり、筐体1と、筐体1の前方側(被写体側)に回動可能に設けられたフォーカスリング2と、フォーカスリング2よりも後方側(撮像素子側)に設けられたズームリング3を、有している。
【0014】
筐体1の内部には、フォーカス用レンズ及びズーム用レンズ(共に図示せず)を含む複数のレンズから構成されたレンズ群LGが保持されている。
レンズ51は、フォーカスリング2及びズームリング3の回動に伴い、それぞれフォーカス用レンズ及びズーム用レンズ(共に図示せず)が光軸L上を移動してフォーカス調整及びズーム調整が行われるようになっている。
【0015】
フォーカスリング2には、外周面に平歯車の歯が形成されたギヤ部2aが設けられている。
筐体1には、モータベース4が、ねじNJなどの固定手段により固定されている。
モータベース4には、出力軸にピニオンMfaを有するモータMfと、ピニオンMfaに噛合する大径ギヤ5a,フォーカスリング2のギヤ部2aに噛合する小径ギヤ5b,及び軸部5cを一体的に有する減速ギヤ5と、減速ギヤ5を一方向(前方)に付勢する付勢部材としての板バネ6と、が取り付けられている。大径ギヤ5aは、小径ギヤ5bよりも多歯数のギヤとされている。
【0016】
詳しく説明する。
モータベース4は、筐体1に固定されるベース部4aと、ベース部4aから前方に向けて延在する矩形の枠部4bと、を有して形成されている。
モータMfは箱状のケースMfcを有し、ピニオンMfaがケースMfcから後方側に突出する姿勢で枠部4bの前方側に固定されている。
減速ギヤ5は、軸部5cが、モータベース4のベース部4aにおいて光軸Lに平行に形成された孔4a1に対し挿抜方向に移動可能に挿通し、軸線が光軸Lに平行となる姿勢でモータベース4に回転自在に支持されている。
【0017】
板バネ6は、バネ性を有する板材を略V字状に屈曲させて形成されている。板バネ6は、枠部4bの後方部と減速ギヤ5の小径ギヤ5bとの間に差し込まれて、減速ギヤ5を前方に付勢するようになっている。
【0018】
この板バネ6による付勢に対し、減速ギヤ5は、その大径ギヤ5aの前方端面がモータMfのケースMfcに当接することで前方への移動が規制されている。
大径ギヤ5aは、枠部4b及びモータMfのケースMfcの厚さ(光軸Lに直交する方向の幅に相当)に対し、十分大きく形成されている。そのため、光軸L方向から見たときに、大径ギヤ5aは、一部が枠部4b及びケースMfcから径方向外側に突出している。
【0019】
モータMfは例えばステッピングモータであり、必要な回転トルクを確保すべく減速ギヤが省スペースで組み込まれたギヤードタイプが選択されている。また、更なる高回転トルクを得るために、ピニオンMfaからフォーカスリング2のギヤ部2aに至る減速比は比較的大きく設定されており、フォーカスリング2の回動負荷に対して十分なトルク余裕を確保し、フォーカスリング2の回動に支障が生じないようになっている。
そのため、ピニオンMfaと大径ギヤ5aとが噛合した状態でフォーカスリング2を回動させようとすると、減速比に対応して増大するコギングトルクに抗して回動させることになるため、その回動は実質的に困難になっている。
【0020】
上述の構成により、レンズ51は、指などにより、板バネ6の付勢力に抗して大径ギヤ5aを後方側へ押し込むことで、減速ギヤ5を後方側へ移動させることができる。
図1は、レンズ51の基本状態(第1の位置)を示し、減速ギヤ5を押し込んだ押し込み状態(手動調整状態:第2の位置)が
図2に示されている。
【0021】
図2に示されるように、減速ギヤ5は、後方側(矢印DR1の方向)へ移動させた押し込み状態において、大径ギヤ5aがピニオンMfaから離脱して大径ギヤ5aとピニオンMfaとの噛合が解除され、小径ギヤ5bとフォーカスリング2のギヤ部2aとの噛合が維持される。
このように、減速ギヤ5は、モータMfのピニオンMfaとの噛合が解除されることから、大径ギヤ5aを押し込んだまま回すとフォーカスリング2を容易に回動させることができる。
すなわち、フォーカス調整を、少なくともフォーカス用レンズを所望の合焦位置に近い位置に移動させる粗調を手動で行えるので、短時間で行うことができる。
また、減速ギヤ5は、指などで筐体1の前方側から押し込むことができる。例えばこのレンズ51がカメラに装着された際に、筐体1の前方側は撮像範囲であって開放されているので、この前方側からの指での押し込みは大変容易であり、作業性が極めて良好となる。
【0022】
粗調が終わったら、指を離すことで、減速ギヤ5は板バネ6の付勢力により前方に移動する。これにより、減速ギヤ5を再び基本状態に戻すことができる。すなわち、第1の位置と第2の位置とを選択的に取り得るようになっている。
基本状態になったら、モータMfを駆動し、ピニオンMfaから大径ギヤ5a、小径ギヤ5b、ギヤ部2aへと回転を伝達してフォーカスリング2を回動させ、フォーカスの微調を行う。
【0023】
このように、レンズ51は、減速ギヤ5の位置を移動させることで、フォーカスリング2の回動を手動と電動とで選択的に行えるように構成されたレンズ位置調整機構TKFを備えている。
ここでレンズ位置調整機構TKFは、少なくとも、モータベース4,減速ギヤ5,ピニオンMfaを有するモータMf,及び付勢部材である板バネ6含んで構成される。
従って、レンズ51によれば、粗調を手動で高速に実行した後に、微調を電動で実行することができ、高精度のフォーカス調整を、極めて短時間に行うことができる。これにより、フォーカス調整の現場作業の効率を向上させることができる。
【0024】
(実施例2)
図3は、実施例2のレンズ151の斜視図である。レンズ151は、バリフォーカルレンズであり、筐体11と、筐体11の前方側(被写体側)に回動可能に設けられたフォーカスリング12と、フォーカスリング12よりも後方側(撮像素子側)に設けられたズームリング13と、を有している。
【0025】
筐体11の内部には、フォーカス用レンズ及びズーム用レンズ(共に図示せず)を含む複数のレンズから構成されたレンズ群LGが保持されている。
レンズ151は、フォーカスリング12及びズームリング13の回動に伴い、それぞれフォーカス用レンズ及びズーム用レンズが光軸L上に移動してフォーカス調整及びズーム調整が行われるようになっている。
【0026】
ズームリング13には、外周面に平歯車の歯が形成されたギヤ部13aが設けられている。
筐体11には、モータベース14が、ねじNJなどの固定手段により固定されている。
モータベース14には、出力軸にピニオンMzaを有するモータMzと、ピニオンMzaに噛合する大径ギヤ15a,ズームリング13のギヤ部13aに噛合する小径ギヤ15b,軸部15cとを一体的に有する減速ギヤ15,及び減速ギヤ15を一方向(後方)に付勢する付勢部材としての板バネ16が取り付けられている。大径ギヤ15aは、小径ギヤ15bよりも多歯数のギヤとされている。
【0027】
詳しく説明する。
モータベース14は、ベース部14aと、ベース部14aから後方に向けて延在する矩形の枠部14bと、を有して形成されている。モータMzは箱状のケースMzcを有し、ピニオンMzaがケースMzcから前方側に突出する姿勢で枠部14bの後方側に固定されている。
減速ギヤ15は、軸部15cが、モータベース14のベース部14aにおいて光軸Lに平行に形成された孔14a1に対し挿抜方向に移動可能に挿通し、軸線が光軸Lに平行となる姿勢で回転自在に支持されている。
軸部15cは、ベース部14aを貫通して前方に突出しており、その先端にはつまみ部17が取り付けられている。つまみ部17の外周面はローレットなどの摩擦増強処理が施されており、つまみ部17を指で摘むことで減速ギヤ15を回し易くなっている。
【0028】
板バネ16は、バネ性を有する板材を略V字状に屈曲させて形成されている。板バネ16は、枠部14bの前方部と減速ギヤ15の小径ギヤ15bとの間に差し込まれて、減速ギヤ15を後方に付勢するようになっている。
この板バネ16の付勢に対し、減速ギヤ15は、その大径ギヤ15aの後方端面がモータMzのケースMzcに当接することで後方への移動が規制されている。
【0029】
モータMzは例えばステッピングモータであり、必要な回転トルクを確保すべく減速ギヤが省スペースで組み込まれたギヤードタイプが選択されている。また、更なる高回転トルクを得るために、ピニオンMzaからズームリング13のギヤ部13aに至る減速比は比較的大きく設定されており、ズームリング13の回動負荷に対して十分なトルク余裕を確保し、ズームリング13の回動に支障が生じないようになっている。
そのため、ピニオンMzaと大径ギヤ15aとが噛合した状態でズームリング3を回動させようとすると、減速比に対応して増大されるコギングトルクに抗して回動させることになるため、その回動は実質的に困難になっている。
【0030】
上述の構成により、レンズ151は、指などにより、つまみ部17を摘み、板バネ16の付勢力に抗して大径ギヤ15aを前方側へ引き出すことで、減速ギヤ15を前方側へ移動させることができる。
すなわち、
図3は、レンズ151の基本状態(第1の位置)を示し、減速ギヤ15を引き出した引き出し状態(手動調整状態:第2の位置)が
図4に示されている。
【0031】
図4に示されるように、減速ギヤ15は、前方側へ移動させた引き出し状態において、大径ギヤ15aがピニオンMzaから離脱して大径ギヤ15aとピニオンMzaとの噛合が解除され、小径ギヤ15bとズームリング13のギヤ部13aとの噛合が維持される。
このように、減速ギヤ15は、モータMzのピニオンMzaとの噛合が解除されることから、大径ギヤ15aを引き出したまま回すとズームリング13を容易に回動させることができる。
すなわち、ズーム調整を、少なくともズーム用レンズを所望の倍率位置に近い位置に移動させる粗調を手動で行えるので、短時間で行うことができる。
また、この手動による調整作業は、突出したつまみ部17を摘むことで行えるため、指をズームリング13の位置まで奥深く差し入れる必要がない。これにより調整作業が極めて容易となる。
また、つまみ部17は、筐体11の前方側から指で摘むことができる。例えばこのレンズ151がカメラに装着された際に、筐体11の前方側は撮像範囲であって開放されているので、この前方側からの指での摘みは大変容易であり、作業性が極めて良好となる。
【0032】
粗調が終わったら、指を離すことで、減速ギヤ15は板バネ16の付勢力により後方に移動する。これにより、減速ギヤ15を再び基本状態に戻すことができる。すなわち、第1の位置と第2の位置とを選択的に取り得るようになっている。
基本状態になったら、モータMzを駆動し、ピニオンMzaから大径ギヤ15a、小径ギヤ15b、ギヤ部13aへと回転を伝達してズームリング3を回動させ、ズームの微調を行う。
【0033】
このように、レンズ151は、減速ギヤ15の位置を移動させることでズームリング13の回動を手動と電動とで選択的に行えるように構成されたレンズ位置調整機構TKZを備えている。
ここでレンズ位置調整機構TKZは、少なくとも、モータベース14,減速ギヤ15,ピニオンMzaを有するモータMz,及び付勢部材である板バネ16含んで構成される。
従って、レンズ151によれば、粗調を手動で高速に実行した後に、微調を電動で実行することができ、高精度のズーム調整を、極めて短時間に行うことができる。これにより、ズーム調整の現場作業の効率を向上させることができる。
【0034】
(実施例3)
バリフォーカルレンズは、レンズ51のレンズ位置調整機構TKFとレンズ151のレンズ位置調整機構TKZを両方備えたレンズ52としてもよい。
図5は、レンズ52を光軸Lの前方側(被写体側)から見た模式図である。
【0035】
レンズ位置調整機構TKFとレンズ位置調整機構TKZとは、互いに干渉しない位置(例えば
図5に示される光軸Lを挟んで対向する位置)に配置される。
図5に示されるように、被写体側からみて、大径ギヤ5aは、少なくとも外形の一部が露出し、つまみ部17は全体が露出するようになっている。
これにより、大径ギヤ5aは、被写体側から指などで押したり、押しながら回すことが容易である。また、つまみ部17は、被写体側から摘んで引き出したり、引き出した状態で回すことが容易である。
【0036】
レンズ52のように、レンズ位置調整機構TKFとレンズ位置調整機構TKZとを両方備えていても、粗調を手動で高速に実行した後に、微調を電動で実行することで、高精度のフォーカス調整及びズーム調整を、極めて短時間に行うことができる。これにより、フォーカス調整及びズーム調整の現場作業の効率を向上させることができる。
【0037】
さて、上述したレンズ52のように、フォーカスリングとズームリングとをそれぞれ独立したモータで回動させる構成とする場合、レンズの筐体に対し、フォーカスリング用の駆動系とズームリング用の駆動系とを別々に取り付けると組み付けや噛合調整のための工数を多く要し組み立てが難しくなる。
そこで、工数を減らし組み立てを容易にするため、以下に説明するように、各駆動系を一つのハウジングに予め固定してハウジングアッシー化し、レンズの筐体に対してそのハウジングアッシーを固定する構成にするとよい。この構成によれば、噛合調整をすることなく組み立てが完了するので、工数が少なく組み立ても容易になる。
【0038】
図6は、ハウジングアッシー29Aを備えたレンズ53を説明する斜視図である。ハウジングアッシー29Aは、一つのハウジング29に、フォーカス用モータMfを含むフォーカス駆動系KFとズーム用モータMzを含むズーム駆動系KZとが予め組み付けられている。
レンズ53は、ハウジングアッシー29Aを筐体21に固定して組み立てられており、電動によりフォーカス調整及びズーム調整が可能である。
【0039】
図7は、ハウジングアッシー29Aを説明するための斜視図である。
レンズ53は、レンズ位置調整機構TKF及びレンズ位置調整機構TKZを備えたものではないが、組み立てが容易となる例として説明する。
【0040】
図6に示されるレンズ53は、バリフォーカルレンズであり、筐体21と、筐体21の前方側(被写体側)に回動可能に設けられたフォーカスリング22と、フォーカスリング22よりも後方側(撮像素子側)に設けられたズームリング23(図示せず)と、を有している。
筐体21は、前後方向の中央部に、概ね周方向全体において径方向外方に突出するフランジ部21aを有している。
【0041】
筐体21の内部には、フォーカス用レンズ及びズーム用レンズ(共に図示せず)を含む複数のレンズから構成されたレンズ群LGが保持されている。
レンズ53は、フォーカスリング22及びズームリング23(図示せず)の回動に伴い、それぞれフォーカス用レンズ及びズーム用レンズが光軸L上を移動してフォーカス調整及びズーム調整が行われるようになっている。
【0042】
筐体21の側部には、フランジ部21aを前後方向から挟むようにハウジングアッシー29Aが固定されている。
この固定は、複数箇所の爪嵌合(後述)とねじ止めとによる。
図6に示される例では、ハウジングアッシー29Aは、筐体21に対し、二箇所の爪嵌合と一つのタップねじNJ2によるねじ止めで一体化されている。
【0043】
図7は、筐体21に取り付けられたハウジングアッシー29Aのみを、
図6における斜め後方側(矢視Y1)から見た斜視図である。
ハウジングアッシー29Aは、樹脂で形成されたベース部29aを有する。
ベース部29aには、フォーカス駆動系KFとして、出力軸にピニオンMfaが取り付けられたフォーカス用のモータMfと、ピニオンMfaに噛合する大径ギヤ25a,フォーカスリング22のギヤ部23a(図示せず)に噛合する小径ギヤ25b,及び軸部25c(図示せず)とを一体的に有する減速ギヤ25と、が取り付けられている。
【0044】
また、ベース部29aには、ズーム駆動系KZとして、出力軸にピニオンMzaを有するモータMzと、ピニオンMzaに噛合する大径ギヤ35a,ズームリング23のギヤ部23a(図示せず)に噛合する小径ギヤ35b,及び軸部35c(図示せず)とを一体的に有する減速ギヤ35が取り付けられている。
【0045】
さらに、ベース部29aには、フォーカスリング22の回動位置を検出するフォーカス検出スイッチ部SWfと、ズームリング23の回動位置を検出するズーム検出スイッチ部SWzとが取り付けられている。
【0046】
ベース部29aは、平板状で筐体21の外周部に沿う円弧部29a1を有する基部29a2と、基部29a2の外周縁から立ち上げられた壁部29a3と、を有し、概ね半円弧状に形成されている。
その中央部位Tmの壁部29a3には、壁部29a3を延長するように突出すると共に内側に屈曲するL字状を呈して爪部29b1が形成されている。
また、円弧状の一方の端部Ta側における壁部29a3には、壁部29a3を延長するよう突出すると共に内側に屈曲するL字状を呈して爪部29b2が形成されている。
また、円弧状の他方の端部Tb側における壁部29a3には、貫通するねじ孔29cが設けられている。
【0047】
図8は、ハウジング29aを説明するための平面図である。
ハウジングアッシー29Aを筐体21に取り付けた状態で、爪部29b2の屈曲した部分29b4は、ねじ孔29cの方向を向き、爪部29b2と爪部29b1とねじ孔とを結ぶ線LNaを設定すると、爪部29b1の屈曲した部分29b3は、線LNaに直交する方向に延びている。
すなわち、
図8の模式図に示されるように、爪部29b2とねじ孔29cとが光軸Lを挟んでほぼ対向する位置にあり、爪部29b1が周方向でそれらの中央位置にある。
【0048】
図9(a),(b)は、ハウジング29aの爪部2b1位置でのフランジ部21aとの嵌合を説明するための、模式的断面図である。
図9(a)は、ハウジング29aをフランジ部21aに嵌合させる前、
図9(b)は嵌合させた後の状態が示されている。ハウジング29aについては、一例として
図8におけるSC1−SC1位置の断面を示している。
図9(a)にも示されるように、基部29a2と、爪部29b1及び爪部29b2と、の間には、光軸L方向に所定の間隙Ha(
図7も参照)が設けられている。
この間隙Haは、各爪部29b1,29b2の位置に対応したフランジ部21aの厚さHfに対応している。詳しくは、若干(例えば約0.1mm)の強嵌合となるようHa<Hfとされているとよりよい。
【0049】
上述のように、ハウジングアッシー29Aの筐体21への取り付けは、フランジ部21aを、基部29a2と爪部29b1及び爪部29b2との間に差し込むことで行われる。
そして、この取り付けは若干の強嵌合とされており、爪部29b1,29b2の可撓性によりフランジ部21aを挟み込む力が生じ、容易には外れない嵌合維持力が生じる。
【0050】
また、ハウジングアッシー29Aと筐体21とは、嵌合する面同士が互いの形状に対応した面で形成されているので、嵌合状態での形状追従性が高く、所定の嵌合姿勢が維持される。
この嵌合状態で、フランジ部21aには、ねじ孔29cに対応した位置にくるよう下孔が設けられているので、タップねじNJ2をねじ孔29cに通して両部材を締結する。
モータMf及びモータMzの位置は、爪部29b1及び爪部29b2よりもタップねじNJ2に近い位置とするのがよい。これにより、各モータMf,Mzの動作時に、その動作振動に励起してハウジングアッシー29Aに振動が発生するのを効果的に防止できる。
【0051】
屈曲した部分29b3と部分29b4とが互いに直交する方向に延在している。これにより、フランジ部21aに嵌合した状態で、各爪部29b1と爪部29b2とのフランジ部21aへの掛かり量を大きくとることができ、装着姿勢が安定する。
また、爪部29b2が、ねじ孔29cの軸線上に延出していることから、タップねじNJ2をねじ孔29cに通して締結した場合に、爪部29c2がフランジ部21aに対し、より深く入り込むようになる。
これにより、固定がより強固となり、固定後に外部からの振動等でハウジングアッシー29Aが外れたりずれたりする虞がほとんどない。
【0052】
(実施例4)
実施例4は、ハウジングアッシー39Aを有するレンズ54である。
ハウジングアッシー39Aは、ハウジングアッシー29Aのベース部29aの替わりに、そのベース部29aを実施例1のレンズ位置調整機構TKF及び実施例2のレンズ位置調整機構TKZを搭載可能なように変形したベース部39aを用いてなるものである。
すなわち、レンズ54は、筐体21に、ベース部39aとレンズ位置調整機構TKF及びレンズ位置調整機構TKZとを一体化したハウジングアッシー39Aが取り付けられて構成されている。
【0053】
図10は、レンズ54に搭載した状態のハウジングアッシー39Aを後方側から見た図である。
レンズ位置調整機構TKFとレンズ位置調整機構TKZとは、
図10に示されように、それぞれハウジングアッシー39Aのベース部39aにおける一方端部と他方端部とに配置するとよい。
【0054】
ベース部39aは、ハウジング29aと同様に、平板状でレンズ54の筐体21の外周部に沿う円弧部39a1を有する基部39a2と、基部39a2の外周縁から立ち上げられた壁部39a3と、を有し、概ね半円弧状に形成されている。
その中央部位Tmの壁部39a3には、壁部39a3を延長するように突出すると共に内側に屈曲するL字状を呈する爪部39b1が形成されている。
また、円弧状の一方の端部Ta側における壁部39a3には、壁部39a3を延長するよう突出すると共に内側に屈曲するL字状を呈する爪部39b2が形成されている。
また、円弧状の他方の端部Tb側における壁部39a3には、貫通するねじ孔39cが設けられている。
【0055】
端部Ta側の先端部位には、レンズ位置調整機構TKZが、モータベース14を連結することで取り付けられている。
端部Tb側の先端部位には、レンズ位置調整機構TKFが、モータベース4を連結することで取り付けられている。
【0056】
図11は、レンズ54を説明するための模式的斜視図である。
レンズ54は、筐体21と筐体21に固定されたハウジングアッシー39Aとを有する。ハウジングアッシー39Aは、
図10に示されるように、二つの爪部39b1,39b2と基部39a2との間に筐体21のフランジ部21aを挟持することで筐体21に保持され、さらに、壁部39a3に設けられたねじ孔39cに通されたタップねじNJ3がフランジ部21aに設けられた下孔(図示せず)に締め付けられることで筐体21に固定される。
【0057】
レンズ54においては、ハウジングアッシー39Aを備えることで、ハウジングアッシー29Aを備えた場合と同様の効果が得られる。
さらに、大径ギヤ5aを押し込んだり、押し込んだ状態で回したり、或いはつまみ部17を引き上げたり、引き上げた状態で回したりする場合には、ハウジングアッシー39aには指などで力が付与される。
この力の付与に対しても、ハウジングアッシー39Aはハウジングアッシー29Aと同様にレンズ54の筐体21に強固に固定されているので、変形が生じたり、取り付け位置がずれたりする虞がほとんどない。
従って、レンズ54を用いた監視カメラの設置時のフォーカス或いはズームの手動調整を、高精度で行うことができる。また、設置された監視カメラに対し、走行車両や稼動する工作機械などから振動が付与されても、ハウジングアッシー39Aの取り付け位置がずれたり外れたりすることがなく、高い信頼性が確保される。
【0058】
図12は、実施例のレンズ51,52,54を搭載した監視カメラの一例を示す模式図である。
【0059】
図12に示される監視カメラ装置DCは、いわゆるドームカメラであり、基部D1と透明のドーム部D2とを有する。ドーム部D2の内側には、撮像素子Vを備えレンズ51(52,54)が取り付けられた監視カメラDHが収められている。
【0060】
撮像素子Vからの映像信号SN1は、有線又は無線によって制御装置SGに送られ、画像表示部SGaなどに表示される。
制御装置SGからは、作業者の指示等により、フォーカス調整信号SN2及びズーム調整信号SN3が、監視カメラ装置DCに対し送出される。
このフォーカス調整信号SN2及びズーム調整信号SN3により、レンズ51(52,54)におけるフォーカス調整用のモータMf及びズーム調整用のモータMzが駆動するようになっている。
【0061】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
モータMf,Mzは、ステッピングモータに限定されない。
減速ギヤ5,15,25,35を付勢する付勢手段は、板バネ6,16に限定されない。コイルバネなど他種のバネ類、或いは弾性部材(ゴム、樹脂)などを用いてもよい。