特許第6221896号(P6221896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナカヨの特許一覧

特許6221896共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント
<>
  • 特許6221896-共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント 図000002
  • 特許6221896-共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント 図000003
  • 特許6221896-共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント 図000004
  • 特許6221896-共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント 図000005
  • 特許6221896-共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント 図000006
  • 特許6221896-共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント 図000007
  • 特許6221896-共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221896
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20171023BHJP
   H04W 72/08 20090101ALI20171023BHJP
   H04W 36/18 20090101ALI20171023BHJP
【FI】
   H04W72/04 137
   H04W72/04 131
   H04W72/04 132
   H04W72/08 110
   H04W36/18
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-68505(P2014-68505)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-192319(P2015-192319A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134707
【氏名又は名称】株式会社ナカヨ
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】葉梨 修弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
【審査官】 齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−068285(JP,A)
【文献】 特開平08−340569(JP,A)
【文献】 特開2008−131214(JP,A)
【文献】 特開2006−345193(JP,A)
【文献】 特開2012−175677(JP,A)
【文献】 特開2006−087084(JP,A)
【文献】 特開平09−018941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回線に接続され、自無線アクセスポイントに帰属している1以上の無線端末との間で時分割多元接続方式(TDMA)による無線通信を実行し、前記回線と前記無線端末との間で通信データを中継する無線アクセスポイントであって、
予め定められた複数の周波数帯に対応する複数の無線チャネルのいずれかを他無線アクセスポイントと共通な共通チャネルとして設定する共通チャネル設定手段と、前記共通チャネル以外のいずれかの無線チャネルを個別チャネルとして設定する個別チャネル設定手段と、前記共通チャネルに対応する共通チャネルビーコン信号または前記個別チャネルに対応する個別チャネルビーコン信号を定期的または非定期に発信するビーコン信号発信手段と、前記共通チャネルビーコン信号または前記個別チャネルビーコン信号に対応して帰属要求を送信してきた無線端末を自無線アクセスポイントに帰属させる処理を実行する無線端末帰属手段と、前記共通チャネルまたは前記個別チャネルを介して前記帰属させた無線端末とTDMAによる無線通信を実行し前記回線と前記無線端末との間で通信データを中継するデータ中継手段と、を有し、
前記ビーコン信号発信手段は、前記共通チャネルを用いたTDMAによる無線通信で使用する複数のタイムスロットの内、空タイムスロットが無い場合または空タイムスロット数が所定値以下である場合に、前記個別チャネルビーコン信号を発信し、
前記無線端末帰属手段は、いずれかの無線端末から前記共通チャネルビーコン信号に対応する帰属要求を受信した場合に、前記帰属要求の送信元の無線端末を、前記共通チャネルを介して通信する無線端末として自無線アクセスポイントに帰属させる処理を実行し、いずれかの無線端末から前記個別チャネルビーコン信号に対応する帰属要求を受信した場合に、前記帰属要求の送信元の無線端末を、前記個別チャネルを介して通信する無線端末として自無線アクセスポイントに帰属させる処理を実行することを特徴とする共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント。
【請求項2】
請求項1に記載の無線アクセスポイントであって、
前記無線端末帰属手段は、前記共通チャネルビーコン信号に対応して帰属要求を送信してきた無線端末に係る情報を、前記共通チャネルの各タイムスロットが使用中か否かを管理する所定の通信制御装置へ通知し、前記通信制御装置から前記無線端末が使用すべきタイムスロットに係る情報を受信した場合に、前記無線端末を、前記共通チャネルを介して通信する無線端末として、自無線アクセスポイントに帰属させることを特徴とする共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線アクセスポイントであって、
前記ビーコン信号発信手段は、前記個別チャネルビーコン信号を定期的または非定期に発信している状態で、前記共通チャネルに使用中ではないタイムスロットが発生した場合に、前記個別チャネルビーコン信号の出力電波強度を段階的に低下させることを特徴とする共通チャネルと個別チャネルを有する無線アクセスポイント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割多元接続(TDMA)方式を適用した無線アクセスポイントに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロセルやピコセルを用いた構内コードレス電話システムの一般的な技術として、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)方式のような、TDMA(Time Division Multiple Access)方式を適用したディジタル移動通信システムに関する技術がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここで、セルは、1台の基地局(本発明では無線アクセスポイント)がカバーする範囲のことであり、マイクロセル(半径数十m〜数百m)やピコセル(半径数m〜数十m)のようにセルの範囲が狭いと、基地局が発信する無線電波の出力は小さいて済むと共に、複数の基地局を設置して、所望の通話エリアを柔軟に確保することができる。このため、構内コードレス電話システムではマイクロセルやピコセルによる無線通信方式を適用することが一般的である。また、電波資源の有効利用を図るために、1通信チャネルに複数人分の通信データを多重化する時分割多元接続方式(TDMA)を適用することが一般的である。
【0004】
しかしながら、複数の基地局を設置した場合、通話しながらセル間を移動する際に、ハンドオーバ処理(基地局切替)が必要となる。そして、隣接セル間の無線チャネルは周波数が異なることが一般的であり、ハンドオーバ処理の際の周波数の切替処理に一定以上の時間(例えば、数msec)を要するので、瞬断による通話品質の劣化が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−289359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、ハンドオーバの際の周波数の切替処理を軽減し、瞬断による通話品質の劣化が生じる可能性が低い無線通信アクセスポイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、所定の回線に接続され、自無線アクセスポイントに帰属している1以上の無線端末との間で時分割多元接続方式(TDMA)による無線通信を実行し、前記回線と前記無線端末との間で通信データを中継する無線アクセスポイントであって、予め定められた複数の周波数帯に対応する複数の無線チャネルのいずれかを他無線アクセスポイントと共通な共通チャネルとして設定する共通チャネル設定手段と、前記共通チャネル以外のいずれかの無線チャネルを個別チャネルとして設定する個別チャネル設定手段と、前記共通チャネルに対応する共通チャネルビーコン信号または前記個別チャネルに対応する個別チャネルビーコン信号を定期的または非定期に発信するビーコン信号発信手段と、前記共通チャネルビーコン信号または前記個別チャネルビーコン信号に対応して帰属要求を送信してきた無線端末を自無線アクセスポイントに帰属させる処理を実行する無線端末帰属手段と、前記共通チャネルまたは前記個別チャネルを介して前記帰属させた無線端末とTDMAによる無線通信を実行し前記回線と前記無線端末との間で通信データを中継するデータ中継手段と、を有し、前記ビーコン信号発信手段は、前記共通チャネルを用いたTDMAによる無線通信で使用する複数のタイムスロットの内、空タイムスロットが無い場合または空タイムスロット数が所定値以下である場合に、前記個別チャネルビーコン信号を発信し、前記無線端末帰属手段は、いずれかの無線端末から前記共通チャネルビーコン信号に対応する帰属要求を受信した場合に、前記帰属要求の送信元の無線端末を、前記共通チャネルを介して通信する無線端末として自無線アクセスポイントに帰属させる処理を実行し、いずれかの無線端末から前記個別チャネルビーコン信号に対応する帰属要求を受信した場合に、前記帰属要求の送信元の無線端末を、前記個別チャネルを介して通信する無線端末として自無線アクセスポイントに帰属させる処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、共通チャネルを使用する無線端末として自無線アクセスポイントに帰属している無線端末が、他無線アクセスポイントのエリアへ移動してハンドオーバする場合、または、共通チャネルを使用する無線端末として他無線アクセスポイントに帰属している無線端末が自無線アクセスポイントのエリアへ移動してきてハンドオーバする場合に、周波数の切替処理およびタイムスロットの変更処理が不要なので、ハンドオーバに伴う通信品質の劣化の可能性が極めて低い無線アクセスポイントを提供出来る。
しかも、共通チャネルに空タイムスロットが無い状態で、新たな無線端末からの帰属要求を受信した場合でも、個別チャネルで帰属させることが出来るので、共通チャネルのタイムスロット数に対応した数以上の無線端末を収容出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る無線通信システムの基本シーケンスの例である。
図3】本発明の実施形態に係るタイムスロットの構成例を示した図である。
図4】本発明の実施形態に係る無線アクセスポイントのブロック構成図である。
図5】本発明の実施形態に係る通信制御装置の動作フローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る無線アクセスポイントの動作フローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る無線端末の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システムの全体構成図であって、無線アクセスポイント1、通信制御装置2、無線端末4、内線端末6から構成される。
【0011】
無線アクセスポイント(以下、APと略すこともある)1は、マイクロセルやピコセルの無線通信可能エリア(以下、セルと称すこともある)5を形成する無線基地局である。
【0012】
無線アクセスポイント1は、内線3を介して通信制御装置2と有線通信を実行すると共に、無線通信可能エリア5内に存在する無線端末4と無線通信を実行し、通信制御装置2と無線端末4との間で通信データを中継する。無線アクセスポイント1は、無線通信システムとしての無線通信可能エリアを拡張するために複数存在する。
【0013】
なお、無線アクセスポイント1と通信制御装置2の接続は、内線3に限定ではなく、通信制御装置2と各無線アクセスポイント1を直接接続する有線または無線によるローカル接続であってもよい。
【0014】
各無線アクセスポイント1は、各無線端末4とTDMAに基づく無線通信を実行する。このTDMAに基づく無線通信は、複数の無線チャネル(以下、CHと略すこともある)内の予め設定された特定のCHを、他の無線アクセスポイント1と共通な共通CHとして使用し、共通CH以外のいずれかの無線チャネルを個別CHとして使用する。無線端末4を帰属させる際、共通CHに空きのタイムスロット(以下、空タイムスロットと略す)がある場合は、共通CHに帰属させ、共通CHに空タイムスロットが無い場合は、個別CHに帰属させる。
【0015】
なお、無線端末4を個別CHに帰属させた場合であっても、共通CHのタイムスロットに空きが生じた場合は、個別CHの送信出力を段階的に弱め、無線端末4に擬似的なハンドオーバをさせて、共通CHへ移行する。無線アクセスポイント1の内部構成および動作フローについては後述する。
【0016】
通信制御装置2は、例えば、構内コードレス電話システムにおける構内交換機やボタン電話システムの主装置である。通信制御装置2は、内線3と外線7と各無線アクセスポイント1との間で通信データを中継する。なお、通信制御装置2の動作フローについては後述する。
【0017】
無線端末4は、通信中に移動可能な内線端末であって、例えば、DECT規格の構内コードレスホンである。無線端末4は、いずれかの無線アクセスポイント1に帰属して構内コードレスホンとして動作し、通信制御装置2を介して、外線7の通信先,他の無線端末4,内線端末6と通信する。
【0018】
内線端末6は、通信制御装置2に収容される一般的な内線端末(例えば、ボタン電話機)であって、内線3および通信制御装置2を介して、外線7の通信先,無線端末4,他の内線端末6と通信する。
【0019】
内線3は、内線端末6や無線アクセスポイント1を含む各種の内線端末と通信制御装置2を接続するための配線であって、通信方式は、アナログ通信方式またはディジタル通信方式、或いはIP(Internet Protocol)通信方式のいずれであってもよい。なお、IP通信方式の場合、一般的なLAN(Local Area Network)配線を内線3として適用できる。
【0020】
外線7は、電話網やインターネット網等のWAN(Wide Area Network)8にアクセスする回線であって、通信方式は、アナログ通信方式またはディジタル通信方式、或いはIP通信方式のいずれであってもよい。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る無線通信システムの基本的なシーケンス例であって、無線端末4がAP1−1へ帰属する例、AP1−1に帰属中の無線端末4がAP1−2にハンドオーバする例、各AP1の共通CHが満杯になった状態で新たな無線端末4−Xを個別CHによりAP1−1に帰属させる例、AP1−2に共通CHで帰属していた無線端末4が離脱し空いた共通CHに無線端末4−Xが再帰属する例を示している。なお、図2において、実線は内線3を介した有線通信によるシーケンス、破線は無線通信によるシーケンスであることを示す。
【0022】
まず、フレーム同期が確立された状態の本無線通信システムにおいて、空きの共通CHに無線端末4が帰属し、その後ハンドオーバにてAP1−2へ帰属するシーケンスを説明する。
【0023】
AP1−1は、共通CHの周波数帯に対応した共通CHビーコン信号を定期的に発信している(S210)。共通CHビーコン信号を受信した無線端末4は、共通CHビーコン信号の送信元であるAP1−1へ帰属要求を送信する(S211)。帰属要求を受信したAP1−1は、共通CH帰属要求通知を、共通CHを管理している通信制御装置2へ送信し(S212)、通信制御装置2は共通CHのいずれかの空タイムスロットを指定する番号情報をAP1−1へ通知し(S213)、AP1−1は無線端末4へ指定されたタイムスロット番号情報を含む帰属許可を送信する(S214)。すると、共通CHの指定されたタイムスロットによる無線通信により、外線7,通信制御装置2,AP1−1,帰属した無線端末4の各間で、通信データの中継が開始される(S220)。
【0024】
なお、以上のS210〜S220と同様の処理を、各AP1,各無線端末4の間で実行し、上下各N個のタイムスロットに対応するN台(DECTの場合、最大12)の無線端末4がいずれかのAP1に帰属し、複数の通信データが中継される(図示せず)。
【0025】
次に、ハンドオーバのシーケンスについて説明する。通信中に無線端末4がAP1−2側へ移動すると、AP1−2からのビーコン信号(S230)の受信強度の方が大きいと判定した無線端末4は、AP1−2へ帰属要求を発信する(S231)。このS231の帰属要求の無線電波はAP1−1にも届くが、AP1−2への帰属要求信号にはAP1−2を識別するID(図示せず)が含まれており、AP1−1がこれに反応することは無い。なお、このIDは、AP1−2からのビーコン信号(S230)を受信した無線端末4が、そのビーコン信号に含まれているAP1−2を識別するIDを抽出し、該帰属要求信号に含ませたものである。
【0026】
S231で無線端末4から帰属要求を受信したAP1−2は、新たな帰属要求を受付けた旨の共通CH帰属要求通知を、内線3を介して通信制御装置2へ送信する(S232)。この共通CH帰属要求通知を受信した通信制御装置2は、この無線端末4がAP1−1に帰属していることを知っているので、ハンドオーバに伴う帰属要求通知であると判定し、この無線端末4に割り当てていたタイムスロットに係る情報をAP1−2へ、内線3を介して通知すると共に(S233)、元の帰属先のAP1−1へ、当該無線端末4がハンドオーバしたことを通知する(S234)。
【0027】
S233において、通信制御装置2より使用すべきタイムスロット番号の通知を受けたAP1−2は、無線端末4へタイムロット番号の指定を含む帰属許可を発信する(S235)。
【0028】
次に、共通CHのタイムスロットが満杯になった状態で、無線端末4−Xを個別CHにて帰属させ、その後空きCHが発生した共通CHへ移行するシーケンスについて説明する。ここでは、無線端末4−XがAP1−1へ帰属する場合について説明する。
【0029】
タイムスロット数に対応する数の無線端末4が各AP1に帰属すると、共通CHに空タイムスロットが無くなり、これ以上の無線端末4の帰属が不可能なので、通信制御装置2は各AP1に対して共通CH空無通知を通知し(S241、S242)、これを受信した各AP1は個別CHビーコンの発信を開始する(S243、S244)。
【0030】
なお、この共通CH空無通知を通信制御装置2が各AP1へ送信する条件は任意であり、例えば、優先的な無線端末用に所定数(例えば、3)のタイムスロットをキープしておくために、空タイムスロットが所定数になった時点で、共通CH空無通知を各AP1へ送信するようにしてもよい。
【0031】
個別CHビーコンを受信した無線端末4−Xは、受信した個別CHビーコンの発信元のAP1に対して帰属要求を送信する(S245)。ここで、個別CHのタイムスロットの空きの有無については各AP1で管理している。従って、個別CHでの帰属要求を受信したAP1−1は、通信制御装置2に帰属の可否を問い合わせることなく自AP1−1の判断で、無線端末4へ個別CHのタイムスロット番号の指定を含む帰属許可を送信する(S246)。そして、個別CHによる無線通信により、外線7,通信制御装置2,AP1−1,帰属した無線端末4−Xの各間で、通信データの中継が開始される(S247)。
続いて個別CHを使用して通信していた無線端末4−Xに対して、空いた共通CHによる通信に切替えさせるシーケンスについて説明する。
【0032】
AP1−2に共通CHで帰属していた無線端末4が本無線通信システムから離脱(本無線通信システムの圏外または電源断)すると(S250)、AP1−2は、無線端末4の帰属を解除した旨を通知する共通CH帰属解除通知を通信制御装置2へ通知し(S251)、この情報を受けた通信制御装置2は、自通信制御装置2内の共通CHタイムスロットの管理情報を更新すると共に、各AP1へ共通CHのタイムスロットに空きが出た旨の共通CH空有通知を通知する(S252、S253)。
【0033】
共通CHに空きが有る旨の通知を受けた各AP1は、個別CHビーコン信号の発信出力を段階的に小さくしながら、個別CHビーコン信号の発信を停止する(図示せず)。なお、各AP1は、個別CHビーコン信号を定期的に発信している際も、共通CHビーコンの定期的な発信は継続している(S254、S255)。これは、個別CHで帰属している無線端末4と、共通CHで帰属している無線端末4を共存させるためである。
【0034】
ここで、AP1−1が発信する個別CHの送信出力を段階的に小さくする理由は、無線端末4を個別CHから共通CHに擬似的にハンドオーバさせるためである。一般的なハンドオーバは、無線端末が移動して隣接APのビーコン信号の受信強度が所定レベル以上になった時に、元のAPから隣接APへ帰属変更するのに対し、前記擬似的なハンドオーバは、同一のAP1に通信条件を変更(個別CH→共通CH)して再帰属する。
【0035】
即ち、個別CHの送信出力を段階的に小さくするのは、無線端末4が擬似的に移動している状態を模したもので、同一AP1から発信される個別CHビーコン信号と共通CHビーコン信号を受信する無線端末4は、相対的に共通CHビーコン信号の受信強度が段階的に大きくなるので、ハンドオーバ処理が自動的に起動される。これにより、帰属するCHの変更に係る専用のプロトコルが不要となるので、無線端末4は一般的なハンドオーバ機能を有する無線端末でよい。
【0036】
共通CHビーコン信号(S254)の受信強度が相対的に大きくなった無線端末4は、AP1−1へ帰属要求を送信する(S256)。以下、先に説明したハンドオーバのシーケンス(S230〜S235)と同様に、AP1−1は、通信制御装置2へ共通CH帰属要求通知を送信し(S257)、通信制御装置2から空いた共通CHのタイムスロット番号を通知され(S258)、無線端末4−Xへ使用すべきタイムスロット番号の指定を含む帰属許可を送信する(S259)。そして、(S220)と同様に通信データの中継が再開される(S260)。これにより、無線端末4−XとAP1−1の通信は個別CHから共通CHに変更され、無線端末4−Xは他のAP1へ移動する場合に、共通CHによる効率的なハンドオーバが可能となる。
【0037】
なお、共通CHが満杯の状態のままで、無線端末4−Xが他のAP1へハンドオーバすることも当然可能である。共通CHが満杯の状態において、全てのAP1はS243,S244と同様に個別CHビーコン信号を発信しており、しかも隣接するAP1と電波干渉しない周波数帯の個別CHが設定されている。即ち、この状態は一般的な無線アクセスポイントのシステムと等価であり、この状態でのハンドオーバは周波数の変更処理を伴う一般的なハンドオーバと同じである。
【0038】
図3は、本発明の実施形態に係る通信データのフレームの構成例を示した図である。通信データのフレームは、ヘッダとペイロードである複数のTDMAフレームから構成されている。各TDMAフレームは、複数の下りタイムスロット(DECTの場合、5msec、12スロット)と上りタイムスロット(DECTの場合、5msec、12スロット)から構成されている。共通CH及び個別CHで使用する周波数は、予め定められている複数のCHの周波数(DECTの場合、1,895.616/1,897.344/1,899.072/1,900.8/1,902.528MHzの5CH)のいずれかである。共通CH及び個別CHとして任意のCHを設定可能であるが、同一のCHを共通CH及び個別CHとして設定することはない。
【0039】
なお、各タイムスロットにおいて、通信すべきデータが無い空スロットの場合、その空スロットの時間帯の間、データの送信元は搬送波の出力を停止している。従って、例えば、図1において、AP1−1に帰属している無線端末4が隣接のAP1−2側へ移動し、AP1−2の通信エリア5−2の範囲に入ったとしても、全AP1で無線端末4が使用するスロットは共通なので、無線端末4を帰属させていないAP1−2にとって、そのスロットは空きであり、そのスロットのタイミングにおいて搬送波の出力は停止したままの状態である。そして、無線端末4がAP1−2に近づいていき、AP1−1へのハンドオーバが実行されてAP1−2に帰属すると、今度は、AP1−1にとってそのスロットは空きになるので、AP1−1は、そのスロットのタイミングにおいて搬送波の出力は停止するので、そのスロットのタイミングにおいてAP1−1とAP1−2が同時に搬送波を出力することはない。即ち、移動中の無線端末4とハンドオーバ前後のAPとの間で同一周波数である共通CHの搬送波による電波干渉は無く、無線端末4は、移動中であっても品質劣化の少ない通信を実行できる。
【0040】
図4は、本発明の実施形態に係る無線アクセスポイント1のブロック構成図であり、通信制御部10、無線通信部11、内線対応部12、同期信号抽出部13、ビーコン信号発信部14、チャネル切替部15、無線端末帰属部16、帰属端末情報記憶部17、共通/個別チャネル設定部18から構成される。
【0041】
通信制御部10は、自無線アクセスポイント1の全般を制御する手段であって、無線通信部11、内線対応部12、同期信号抽出部13、ビーコン信号発信部14、チャネル切替部15、無線端末帰属部16、帰属端末情報記憶部17、共通/個別チャネル設定部18の各部と、通信データを授受,中継する。
【0042】
無線通信部11は、自無線アクセスポイント1に帰属している無線端末4と無線通信する手段であって、無線端末4から受信した無線信号を復調し、通信制御部10,無線端末帰属部16へ出力する。また、ビーコン信号発信部14、無線端末帰属部16から入力した信号を変調し、無線端末4へ向けて無線発信する。なお、この無線発信の周波数チャネルは、チャネル切替部15から指示された共通チャネルまたは個別チャネルのいずれかである。
【0043】
内線対応部12は、内線3との接続インターフェースであり、通信制御部10と内線3との間で、通信データを中継する。
【0044】
同期信号抽出部13は、内線3から入力する信号を監視し、通信制御装置2が送出したTDMAフレームのフレーム同期に係る同期信号を抽出し、抽出した同期信号を通信制御部10へ出力する。そして、同期信号を入力した通信制御部10は、その同期信号に従属同期するように各部を制御する。
【0045】
ビーコン信号発信部14は、通信制御部10からの指示に従って、共通チャネルまたは個別チャネルのいずれかの周波数帯の同期信号を生成し、生成した同期信号をビーコン信号として、近傍の無線端末4へ発信する。なお、ビーコン信号の発信は同期信号と同期していればよく、同期信号の周期毎の定期的な発信であってもよいし、間欠的な非定期な発信であってもよい。
【0046】
チャネル切替部15は、TDMA通信を実行する複数のCH(DECTの場合5CH)を切替える手段であって、通信制御部10からの指示に従って、無線通信部11が発信すべき無線信号の使用チャネルを、共通CHまたは個別CHのいずれかのチャネルに切替えるように、無線通信部11を制御する。なお、共通CHまたは個別CHの具体的なCHは、共通/個別チャネル設定部18を参照して、その周波数帯のCHに切替える。
【0047】
無線端末帰属部16は、無線通信部11が受信,復調した無線信号を監視し、無線端末4が発信した帰属要求信号を抽出し、抽出した帰属要求信号を処理して得た帰属要求情報を通信制御部10へ引き渡す。また、通信制御装置2から入力した帰属に係る無線端末4への応答情報を無線通信部11へ引き渡す。
【0048】
帰属端末情報記憶部17は、無線アクセスポイント1に帰属している無線端末4のID情報、タイムスロット番号、CH情報等、無線端末4との通信に係る情報を記憶する。
【0049】
共通/個別チャネル設定部18は、複数のCHの内、通信制御装置2から通知された共通CH、および自AP1が個別チャネルとして選択したCHに係る情報を記憶しておく手段である。なお、個別CHとして選択するCHは隣接する他の無線アクセスポイント1と異なる周波数帯のCHである。
【0050】
図5は、本発明の実施形態に係る通信制御装置2の動作フローチャートである。以下、他の図を併用して動作フローを説明する。本フローは、電源が投入され、各無線アクセスポイント1間の同期が確立していない状態でスタートする(S500)。
【0051】
通信制御装置2は、全体同期の開始イベント(例えば、本装置2の電源オン、またはシステムリセット)を検知すると、各無線アクセスポイント1へ、フレーム同期に必要なフレーム同期信号を、内線3を介して定期的に送出することを開始する(S501)。
【0052】
ここで、各AP1へ送出する同期信号は、TDMA通信を実行するために必要なフレーム同期のタイミング情報を含む信号であり、例えば、図3に示したフレームのペイロードが空な、一定間隔のヘッダのみフレームであり、各AP1が無線端末4向けに発信するビーコン信号と同一のフォーマットでもよい。本無線通信システム全体の同期が確立した後、以降のフローへ進む。
【0053】
S510において、共通チャネルに空タイムスロットが有るか否かを判定し、空タイムスロットが無く(S510,NO)、各アクセスポイント1へ、共通チャネルに空きが無いことを通知していない場合(S511,NO)、共通チャネルに空タイムスロットが無いことを各アクセスポイント1へ通知し(S512)、S510へ戻る。S511において、共通チャネルに空タイムスロットが無いことを既に通知済みの場合(S511,YES)、S512をスキップしてS510へ戻る。
【0054】
共通チャネルの空タイムスロットが有る場合(S510,YES)、各アクセスポイント1へ共通チャネルに空きが有る旨を通知していないならば(S520、NO)、各アクセスポイント1へ共通チャネルに空タイムスロットが有る旨を通知し(S521)、S530へ進む。共通チャネルに空きが有る旨を通知済ならば(S520、NO)、S521をスキップして、S530へ進む。
【0055】
S530において、内線3を介して各無線アクセスポイント1から送信されてくる共通チャネルによる帰属要求通知の受信の有無を判定し、YESであればS531へ進み、NOであれば、S540へ進む。
【0056】
S531において、受信した帰属要求通知がハンドオーバに伴う帰属要求であるか否かを判定する。この判定は、自通信制御装置2内の帰属中無線端末情報記憶部(図示せず)を参照し、帰属を要求している無線端末4が当該帰属要求通知を送信してきた無線アクセスポイント1と異なる無線アクセスポイント1に帰属していた場合にハンドオーバであると判断する。ハンドオーバであると判断した場合(S531,YES)、ハンドオーバ前、即ち当該無線端末4が現在帰属している無線アクセスポイント1へ、ハンドオーバ中である旨のハンドオーバ通知を送信し(S532)、S533へ進む。このハンドオーバ通知を受信した無線アクセスポイント1は、帰属していた無線端末4が他の無線アクセスポイント1へハンドオーバすることを知り、当該無線端末4との帰属関係を解除し、帰属端末情報記憶部17の内容を更新する。S531でNOであれば、S532をスキップしてS533へ進む。
【0057】
S533において、当該帰属要求通知を送信してきた無線アクセスポイント1に対し、使用すべき共通CHのタイムスロット番号を通知する。なお、ここで通知する共通CHのタイムスロット番号は、受信した帰属要求通知がハンドオーバに伴う帰属要求であった場合は、当該無線端末4が使用していたタイムスロット番号であり、ハンドオーバではない新たな帰属要求であった場合は、いずれかの空タイムスロット番号である。そして、通知したタイムスロット番号に基づいて、帰属中の無線端末4が使用しているタイムスロット情報を更新する(S534)。
【0058】
S540において、内線3を介して、いずれかの無線アクセスポイント1から共通チャネル帰属解除通知を受信すると(S540,YES)、自通信制御装置2が記憶している帰属中無線端末情報から、当該共通チャネル帰属解除通知に含まれている、帰属解除した無線端末4に係る情報を削除し(S541)、S510へ戻る。いずれの無線アクセスポイント1からも、共通チャネル帰属解除通知を受信していなければ(S540,NO)、S541をスキップして、S510へ戻る
【0059】
図6は、本発明の実施形態に係る無線アクセスポイント1の動作フローチャートである。以下、他の図を併用して動作フローを説明する。本フローは、電源が投入され、他の各無線アクセスポイント1との間でフレーム同期が確立していない状態でスタートし(S600)、待機状態において、S601,S603,S605,S610,S620,S630,S640の各イベントの有無を循環して監視している。
【0060】
S601において、内線3を介して、フレーム同期信号を通信制御装置2から受信した場合(S601,YES)、フレーム同期の処理を行い(S602)、S603へ進む。この受信したフレーム同期信号は、通信制御装置2が内線3へ送出したフレーム同期信号を、自無線アクセスポイント1内の同期信号抽出部13が抽出したものであり、自無線アクセスポイント1内の各部は、このフレーム同期信号に同期して各種の信号処理を実行する。フレーム同期信号を受信していなければ(S601,NO)、S602をスキップして、S603へ進む。
【0061】
S603において、通信制御装置2から共通チャネル空き無し通知を受信した場合(S603,YES)、共通チャネルの空タイムスロットの有無に係るフラグFを0にセットし(S604)、S605へ進む。共通チャネル空き無し通知を受信していない場合(S603,NO)、S604をスキップして、S605へ進む。このフラグFは後述するS611,S621におけるフロー制御のためのものである。
【0062】
S605において、共通チャネル空き有り通知を受信した場合(S605,YES)、フラグFを1にセットし(S606)、S610へ進む。共通チャネル空き有り通知を受信していなければS606をスキップして、S610へ進む。
【0063】
S610において、ビーコン信号の発信タイミングが到来したか否かを判定し、YESであればS611へ進み、NOであればS620へ進む。なお、このビーコン信号の発信は通信制御部10が管理しており、定期的にまたは間欠的(非定期)に、同期信号抽出部13が抽出した同期信号に同期して発信する。
【0064】
S611において、F=1であれば(S611,YES)、共通チャネルに空タイムスロットがあるので、通信制御部10は、無線通信部11,ビーコン信号発信部14,チャネル切替部15を制御して、共通チャネルの周波数帯に対応する共通チャネルビーコンを発信させると共に(S612)、個別チャネルビーコン信号を発信中であれば、定期発信している個別チャネルビーコンの送信出力を段階的に低下させていき、最終的に送信を停止させ(S613)、S620へ進む。
【0065】
S611において、F=1で無かった場合、即ち、F=0であった場合(S611,NO)、共通チャネルに空タイムスロットが無い状態であり、新たな無線端末4に対しては個別チャネルで帰属させることになるので、個別チャネルビーコン信号の定期的な発信を開始する必要がある。ただし、共通チャネルで帰属中の無線端末4に対しても、それまでの共通チャネルビーコン信号の定期的な発信を継続する必要がある。そこで、通信制御部10は、チャネル切替部15を制御してビーコン信号の搬送周波数を、共通チャネルと個別チャネルの周波数帯に交互に切替えて、共通チャネルビーコン信号と個別チャネルビーコン信号の交互発信を開始させ(S614)、S620へ進む。
【0066】
なお、この交互発信により、共通チャネルビーコン信号と個別チャネルビーコン信号の発信周期は2倍になるが、新たに帰属する無線端末4側にとってはビーコン信号の検出タイミングが多少遅れる可能性が有る程度、または帰属中の無線端末4にとってはフレーム同期ずれの補正タイミングが多少遅れる可能性が有る程度であり、大きな支障はない。
【0067】
S620において、発信したビーコン信号に反応した無線端末4、即ち、自AP1の無線通信可能エリア5内に位置する無線端末4から帰属要求を受信した場合(S620,YES)、S621へ進み、帰属要求を受信しなければ(S620,NO)、S630へ進む。
【0068】
S621において、F=0の場合、即ち、共通チャネルに空タイムスロットが無い場合(S621,YES)、個別チャネルでの帰属許可や使用すべき個別チャネルのタイムスロット番号等の通信条件を無線端末4へ送信する(S622)。なお、個別チャネルのタイムスロットは自AP1が管理しており、通信制御部10は、帰属端末情報記憶部17を参照して、自AP1に帰属している無線端末4が使用していない個別チャネルの空タイムスロットをサーチし、無線端末4が使用すべきタイムスロットを選択する。もし、個別チャネルにも空タイムスロットが無ければ、無線端末4へは帰属不可を送信すればよい(図示せず)。
【0069】
S621において、F=0でない場合、即ち、F=1である場合(S621,YES)、 共通チャネルに空タイムスロットがある状態なので、無線端末4の端末情報を含む帰属要求通知を、共通チャネルを管理している通信制御装置2へ送信し(S623)、通信制御装置2からタイムスロット番号を受信したならば(S624,YES)、共通チャネルでの帰属許可および使用すべき共通チャネルのタイムスロットの番号を含む通信条件を無線端末4へ送信し(S625)、S630へ進む。なお、図示しないが、S624で所定時間(例えば、数分)が経過しても、通信制御装置2からタイムスロット番号を受信しない場合(S624,NO)、S622と同様な個別チャネルによる帰属処理を実行するようにしてもよい。
【0070】
S630において、通信制御装置2からハンドオーバ通知を受信した場合(S630,YES)、帰属端末情報記憶部17に記憶している、ハンドオーバで抜けた無線端末4に係る帰属端末情報を削除し(S631)、S640へ進む。ハンドオーバ通知を受信していなければ(S630,NO)、S631をスキップして、S640へ進む。
【0071】
S640において、通信制御装置2または無線端末4から通信データを受信した場合(S640,YES)、通信制御装置2と無線端末4との間で通信データを共通チャネルまたは個別チャネルにより中継し(S641)、S601へ戻る。通信データを受信していなければ(S640,NO)、S641をスキップして、S601へ戻る。S601へ戻った以降は、以上の処理を繰り返す。
【0072】
図7は、本発明の実施形態に係る無線端末4の動作フローチャートである。無線端末4は、電源が投入された状態で、どの無線アクセスポイント1にも帰属していない状態でスタートし(S700)、周波数スキャンによるビーコン信号の探索を定期的に実行する(S701)。そして、待機状態において、S710,S720,S740の各イベントの有無を循環して監視する。
【0073】
S710において、所定の電波強度以上の共通CHビーコン信号を検知し(S710,YES)、検知した共通CHビーコン信号の送信元の無線アクセスポイント1に帰属中でなければ(S711,NO)、検知した共通CHビーコン信号に含まれているAP1のIDを含む帰属要求を発信し(S712)、S713へ進む。既に当該無線アクセスポイント1に共通チャネルで帰属中であれば(S711,YES)、S730へ進む。
【0074】
S713において、発信した帰属要求に対する帰属許可及び通信条件を受信した場合(S713,YES)、無線アクセスポイント1より通知された番号の共通チャネルのタイムスロットによるTDMA無線通信を開始し(S715)、S730へ進む。帰属許可及び通信条件を受信しなかった場合(S713,NO)は、タイムアウトの判定を行い、所定の時間以内であれば(S714,NO)、S713に戻り、所定の時間を過ぎた場合は(S714,YES)、S701へ戻る。
【0075】
S710において、所定の電波強度以上の共通CHビーコン信号を検知せず(S710,NO)、所定の電波強度以上の個別CHビーコン信号を検知すると(S720,YES)、検知したアクセスポイント1と個別チャネルで既に帰属中であれば(S721,YES)、S730へ進み、帰属中でなければ(S721,NO)、個別チャネルで帰属要求を送信し(S722)、S723へ進む。個別チャネルのビーコンを検知しなかった場合(S720,NO)、S740へ進む。
【0076】
S723において、発信した帰属要求に対する帰属許可及び通信条件を受信した場合(S723,YES)、無線アクセスポイント1より指定されたタイムスロットによるTDMA無線通信を開始し(S725)、S730へ進む。帰属許可及び通信条件を受信しなかった場合(S723,NO)は、タイムアウトの判定を行い、所定の時間以内であれば(S724,NO)、S723に戻り、所定の時間を過ぎた場合は(S724,YES)、S701へ戻る。
【0077】
S730において、S715またはS725で開始した共通チャネルまたは個別チャネルによるTDMA無線通信で、通信データを送信または受信し、帰属解除に係る操作が為されなければ(S740,NO)、S701へ戻る。帰属解除に係る操作が為されたならば(S740,YES)、帰属中の無線アクセスポイント1へ帰属解除を通知し(S741)、本フローは終了する(S742)。なお、帰属解除に係る操作は、例えば、自無線端末4のログオフまたは電源オフ等の操作である。
【0078】
なお、S730における送受信する通信データは、図3に示したTDMAフレームに含まれており、1回で送受信するTDMAフレームの数は任意であるが、定期的にS701へ戻る必要がある。このS701への戻りは、自無線端末4の移動に伴って、隣接の無線アクセスポイント1からのビーコン信号の電波強度が強いか否かを判定するためであり、隣接の無線アクセスポイントからのビーコン信号の電波強度が強い場合は、S710のYESまたは、S720のYES以降のフローにより、隣接の無線アクセスポイント1へのハンドオーバを実行する。
【0079】
また、個別チャネルで帰属している状態で、同一の無線アクセスポイント1が発信した共通CHビーコン信号を検知した場合も、S710のYES以降のフローにより、共通チャネルで再帰属する。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明によれば、共通チャネルでいずれかの無線アクセスポイントに帰属している無線端末は、隣接の無線アクセスポイントのエリアへ移動してハンドオーバする際、共通チャネルのまま同じタイムスロットで隣接の無線アクセスポイントに帰属変更できるので、周波数の切替処理およびタイムスロットの変更処理が不要な分、ハンドオーバに係る処理が効率的であり、ハンドオーバに伴う通信品質の劣化の可能性が極めて低い。しかも、共通チャネルの各タイムスロットは、各無線アクセスポイントで重複せず、かつ、各無線アクセスポイントは、帰属中の無線端末が使用していないタイムスロットの期間、共通チャネルの搬送周波数の電波を発信しないので、隣接の無線アクセスポイントと同じ周波数である共通チャネルによる電波干渉も無い。
【0081】
ただし、共通チャネルに収容可能な無線端末の台数は、無線アクセスポイントの設置数に関わらず、タイムスロット数(DECTの場合12台)に制限されるが、10数人以下の一般的なオフィスや家庭であれば、この台数制限は問題にはならず、ハンドオーバ処理を簡略化できる効果の方が大きい。
【0082】
しかも、隣接の無線アクセスポイントと異なる個別チャネルを併用することにより、従来と同等な台数の無線端末を収容することが出来る。さらに、個別チャネルで収容した場合であっても、共通チャネルのタイムスロットに空きが生じれば、個別チャネルで既に帰属している無線端末を、共通チャネルに順次収容替えするので、10数人以上の規模の大きなオフィスにも適用可能である。
【0083】
ところで、共通チャネルの各タイムスロットは特定の無線アクセスポイントおよび特定の無線端末に占有されるので、TDMAフレームにおける隣接無線アクセスポイントとの電波干渉の恐れは無いものの、隣接する無線アクセスポイントが無線発信するビーコン信号については電波干渉が発生する可能性がある。このビーコン信号の干渉エリアは局部的とも思われるが、この電波干渉を回避する方法としては、例えば、隣接する無線アクセスポイントにおける、共通チャネルのビーコン信号の無線発信を各無線アクセスポイントにおいて間欠的な発信とし、隣接無線アクセスポイントで同時に発信しないように制御すればよい。この制御の具体的な手段としては、例えば、通信制御装置2が各無線アクセスポイント1のビーコン信号の発信タイミングを管理し、各無線アクセスポイント1へビーコン信号の発信を適宜指示すればよい。
【符号の説明】
【0084】
1・・・本発明に係る無線アクセスポイント
2・・・本発明に係る通信制御装置
3・・・内線
4・・・無線端末
5・・・各アクセスポイントの無線通信可能エリア
6・・・内線端末
7・・・外線
8・・・WAN
10・・・通信制御部
11・・・無線通信部
12・・・内線対応部
13・・・同期信号抽出部
14・・・ビーコン信号発信部
15・・・チャネル切替部
16・・・無線端末帰属部
17・・・帰属端末情報記憶部
18・・・共通/個別チャネル設定部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7