特許第6221929号(P6221929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221929
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車両用運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/17 20120101AFI20171023BHJP
【FI】
   B60W30/17
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-99649(P2014-99649)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-214309(P2015-214309A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】新野 洋章
(72)【発明者】
【氏名】大石 正悦
(72)【発明者】
【氏名】石川 浩
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−69727(JP,A)
【文献】 特開平11−66499(JP,A)
【文献】 特開2007−69729(JP,A)
【文献】 特開2009−184502(JP,A)
【文献】 特開2004−90788(JP,A)
【文献】 特開2000−76600(JP,A)
【文献】 特開2005−178518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 50/16
B60K 31/00 − 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車を認識し、その先行車へ自動追従する自動追従制御を実行する自動追従制御実行手段(9)と、
前記自動追従制御の開始指示を取得する開始指示取得手段(3)と、
以下の条件A1〜A5が成立したか否かを判断する条件判断手段(3)と、
自車両のブレーキがオンからオフになったことを検出するブレーキオフ検出手段(5)と、
前記条件A1〜A5の成立後、自車両のブレーキがオンからオフになった場合、前記自動追従制御を開始する自動追従制御開始手段(5)と、
前記条件A1〜A5が成立しているとき、自車両と先行車との車間距離D1を検出し、前記自動追従制御中に先行車の停車に応じて自車両を停車するときの目標車間距離を前記車間距離D1とする停車時目標車間距離設定手段(7)と、
前記自動追従制御の開始時に、自車両と先行車との車間距離D2を検出し、前記自動追従制御中に先行車の発進に応じて自車両を発進させる発進タイミングTを前記車間距離D2に基づき設定する発進タイミング設定手段(7)と、
を備えることを特徴とする車両用運転支援装置(1)。
条件A1:前記自動追従制御中ではない。
条件A2:自車両のブレーキがオンである。
条件A3:自車両が停車中である。
条件A4:先行車を認識している。
条件A5:前記開始指示取得手段が前記開始指示を取得した。
【請求項2】
前記発進タイミング設定手段は、前記自動追従制御の開始時に、前記車間距離D2と、自車両に対する先行車両の相対速度V2とを検出し、前記発進タイミングTを前記車間距離D2及び前記相対速度V2に基づき設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
自車両と先行車との車間距離、及び自車両に対する先行車両の相対速度から前記発進タイミングTを算出するマップ(M0、Mm)と、
前記発進タイミング設定手段が検出した前記車間距離D2及び前記相対速度V2に基づき、前記マップを補正するマップ補正手段(7)と、
を備え、
前記発進タイミング設定手段は、補正後の前記マップを用いて前記発進タイミングTを設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記自動追従制御中に、以下の条件B1〜B4のうちのいずれかが成立した場合、前記自動追従制御を終了する自動追従制御終了手段(5)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置。
B1:自車両のシフト位置が前記自動追従制御の開始時におけるシフト位置と一致しなくなった時点からの経過時間が所定の閾値以上である。
B2:先行車を認識しなくなった時点からの経過時間が所定の閾値以上である。
B3:自車両のドライバがブレーキ操作を行った。
B4:自動追従制御の終了指示を取得した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動追従制御等の運転支援を行う車両用運転支援装置が実用化されている。自動追従制御においてドライバの好みや癖を反映したドライブフィーリングを得るために、自動追従制御に用いる目標車間距離等のデータを、ドライバによる追従運転状態において学習する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−178518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術では、ドライバによる追従運転状態中に学習を行うため、複雑なロジックが必要になる。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、上述した課題を解決できる車両用運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用運転支援装置は、先行車を認識し、その先行車へ自動追従する自動追従制御を実行する自動追従制御実行手段と、自動追従制御の開始指示を取得する開始指示取得手段と、以下の条件A1〜A5が成立したか否かを判断する条件判断手段と、自車両のブレーキがオンからオフになったことを検出するブレーキオフ検出手段とを備える。
【0006】
さらに、本発明の車両用運転支援装置は、条件A1〜A5の成立後、自車両のブレーキがオンからオフになった場合、自動追従制御を開始する自動追従制御開始手段と、条件A1〜A5が成立しているとき、自車両と先行車との車間距離D1を検出し、自動追従制御中に先行車の停車に応じて自車両を停車するときの目標車間距離を車間距離D1とする停車時目標車間距離設定手段と、自動追従制御の開始時に、自車両と先行車との車間距離D2を検出し、自動追従制御中に先行車の発進に応じて自車両を発進させる発進タイミングTを車間距離D2に基づき設定する発進タイミング設定手段とを備える。
【0007】
条件A1:自動追従制御中ではない。
条件A2:自車両のブレーキがオンである。
条件A3:自車両が停車中である。
【0008】
条件A4:先行車を認識している。
条件A5:開始指示取得手段が開始指示を取得した。
本発明の車両用運転支援装置は、自動追従制御に用いるデータを簡易なロジックで確実に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用運転支援装置1の構成を表すブロック図である。
図2】車両用運転支援装置1実行する自動追従制御許可状態の設定処理を表すフローチャートである。
図3】車両用運転支援装置1が実行する自動追従制御開始処理を表すフローチャートである。
図4】車両用運転支援装置1が実行する自動追従制御終了処理を表すフローチャートである。
図5】初期マップM0及び補正後マップMmを表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施形態>
1.車両用運転支援装置1の構成
車両用運転支援装置1の構成を図1に基づき説明する。車両用運転支援装置1は、車両(以下、自車両とする)に搭載されたECUである。車両用運転支援装置1は、図示しないCPU、RAM、ROM等の周知のコンピュータの構成を備える。車両用運転支援装置1は、機能的に、自動追従制御許可状態判定部3、自動追従制御開始/終了判定部5、目標車間距離演算/補正演算部7、及び自動追従制御実行部9を備える。
【0011】
自動追従制御許可状態判定部3、自動追従制御開始/終了判定部5、及び目標車間距離演算/補正演算部7の機能は後述する。自動追従制御実行部9は、周知の自動追従制御を実行する。
【0012】
この自動追従制御中、自車両は先行車両に自動的に(自車両のドライバが運転操作を行わなくても)追従する。また、自動追従制御中、先行車両が停止すると、自車両と停止した先行車両との間に予め設定された目標車間距離をおいて、自車両も停止する。また、自車両及び先行車両が停車した状態から、先に先行車両が発進すると、自車両と先行車両との車間距離、及び自車両に対する先行車両の相対速度に基づき定まる発進タイミングTで、自車両も発進する。
【0013】
車両用運転支援装置1は、追従スイッチ(s/w)11、シフト位置センサ13、ブレーキペダル操作センサ15、先行車両認識センサ17、及び車輪速度センサ19からそれぞれ信号を取得する。
【0014】
追従スイッチ11は、自車両のドライバがオン/オフ操作可能なスイッチであって、オンからオフへ切り替わったときと、オフからオンへ切り替わったときとに、それぞれ、特有の信号を出力する。自車両のドライバは、自動追従制御の開始を指示するために、追従スイッチ11をオンにする。また、自車両のドライバは、自動追従制御の終了を指示するために、追従スイッチ11をオフにする。
【0015】
シフト位置センサ13は、自車両のシフト位置を検出し、検出したシフト位置に応じた信号を出力する。
ブレーキペダル操作センサ15は、自車両のブレーキペダルに対するドライバの操作を検出するセンサである。ドライバがブレーキペダルを踏んだとき(ブレーキがオンであるとき)、ブレーキペダル操作センサ15は、それに応じた信号を出力する。また、ドライバがブレーキペダルを踏んでいないとき(ブレーキがオフであるとき)、ブレーキペダル操作センサ15は、それに応じた信号を出力する。
【0016】
先行車両認識センサ17は、カメラやミリ波センサ等を備え、先行車両を認識し、自車両と先行車両との車間距離を算出する。また、先行車両認識センサ17は、車間距離の経時的な変化量を取得し、その変化量から、自車両に対する先行車両の相対速度を算出する。先行車両認識センサ17は、先行車両の有無、自車両と先行車両との車間距離、及び自車両に対する先行車両の相対速度を表す信号を出力する。
【0017】
車輪速度センサ19は、自車両の速度を検出し、その速度を表す信号を出力する。特に、車輪速度センサ19は、自車両が停車中である場合は、速度が0であることを表す信号を出力する。
【0018】
車両用運転支援装置1は、駆動力制御部21を用いて、自車両の駆動力を制御する。また、車両用運転支援装置1は、制動力制御部23を用いて、自車両の制動力を制御する。なお、上述した自動追従制御において、自車両の発進、停車、加速、減速は、駆動力制御部21及び制動力制御部23を用いて行われる。
【0019】
自動追従制御実行部9は自動追従制御実行手段の一例であり、自動追従制御許可状態判定部3は開始指示取得手段、及び条件判断手段の一例であり、自動追従制御開始/終了判定部5はブレーキオフ検出手段、自動追従制御開始手段及び自動追従制御終了手段の一例であり、目標車間距離演算/補正演算部7は停車時目標車間距離設定手段、発進タイミング設定手段、及びマップ補正手段の一例である。
【0020】
2.車両用運転支援装置1が実行する処理
(2−1)自動追従制御許可状態の設定処理
図2に基づき、車両用運転支援装置1(特に自動追従制御許可状態判定部3)が所定時間ごとに繰り返し実行する自動追従制御許可状態の設定処理を説明する。
【0021】
ステップ1では、既に自動追従制御許可状態であるか否かを判断する。ここで、自動追従制御許可状態とは、後述するステップ7で設定される状態であり、自車両のブレーキがオンからオフになった場合、自動追従制御を開始する状態である。自動追従制御許可状態ではない場合はステップ2に進み、自動追従制御許可状態である場合は本処理を終了する。
【0022】
ステップ2では、自動追従制御中であるか否かを判断する。自動追従制御中ではない場合はステップ3に進み、自動追従制御中である場合は本処理を終了する。
ステップ3では、先行車両認識センサ17により先行車両を認識できるか否かを判断する。先行車両を認識できる場合はステップ4に進み、先行車両を認識できない場合は本処理を終了する。
【0023】
ステップ4では、ブレーキペダル操作センサ15を用いて、自車両のブレーキがオンであるか否かを判断する。自車両のブレーキがオンである場合はステップ5に進み、ブレーキがオフである場合は本処理を終了する。
【0024】
ステップ5では、車輪速度センサ19を用いて、自車両が停車中であるか否かを判断する。自車両が停車中である場合はステップ6に進み、停車中ではない(走行中である)場合は本処理を終了する。
【0025】
ステップ6では、追従スイッチ11の状態がオフからオンへ切り替わったか否かを判断する。すなわち、本ステップ6の処理を前回行ったときは追従スイッチ11がオフであり、今回本ステップ6の処理を行ったときは追従スイッチ11がオンとなっていたか否かを判断する。追従スイッチ11の状態がオフからオンへ切り替わった場合はステップ7に進み、それ以外の場合は本処理を終了する。
【0026】
ステップ7では、自動追従制御許可状態を設定する。
ステップ8では、その時点における自車両と先行車両との車間距離を、先行車両認識センサ17を用いて取得し、これを車間距離D1とする。
【0027】
なお、この車間距離D1は、自動追従制御中に先行車の停車に応じて自車両を停車するときの目標車間距離として用いる。すなわち、自動追従制御中、先行車両が停止すると、自車両と停止した先行車両との間に車間距離D1をおいて、自車両も停止する。
【0028】
前記ステップ2での否定判断は条件A1が成立することの一例であり、前記ステップ3での肯定判断は条件A4が成立することの一例であり、前記ステップ4での肯定判断は条件A2が成立することの一例であり、前記ステップ5での肯定判断は条件A3が成立することの一例であり、前記ステップ6での肯定判断は条件A5が成立することの一例である。また、自動追従制御許可状態は、条件A1〜A5が成立している状態の一例である。
(2−2)自動追従制御開始処理
図3に基づき、車両用運転支援装置1(特に自動追従制御開始/終了判定部5)が所定時間ごとに繰り返し実行する自動追従制御開始処理を説明する。
【0029】
ステップ11では、自動追従制御許可状態であるか否かを判断する。自動追従制御許可状態である場合はステップ12に進み、自動追従制御許可状態ではない場合は本処理を終了する。
【0030】
ステップ12では、既に自動追従制御中であるか否かを判断する。自動追従制御中ではない場合はステップ13に進み、自動追従制御中である場合は本処理を終了する。
ステップ13では、ブレーキペダル操作センサ15を用いて、自車両のブレーキがオンからオフへ切り替わったか否かを判断する。すなわち、本ステップ13の処理を前回行ったときは自車両のブレーキがオンであり、今回本ステップ13の処理を行ったときは自車両のブレーキがオフとなっていたか否かを判断する。自車両のブレーキがオンからオフへ切り替わった場合はステップ14に進み、それ以外の場合は本処理を終了する。
【0031】
ステップ14では、自動追従制御を開始する。
ステップ15では、先行車両認識センサ17を用いて、自動追従制御の開始時における、自車両と先行車両との車間距離D2を算出する。
【0032】
ステップ16では、先行車両認識センサ17を用いて、自動追従制御の開始時における、自車両に対する先行車両の相対速度V2を算出する。
ステップ17では、シフト位置センサ13を用いて、自動追従制御の開始時における自車両のシフト位置P0を検出し、記憶する。
(2−3)自動追従制御終了処理
図4に基づき、車両用運転支援装置1(特に自動追従制御開始/終了判定部5)が所定時間ごとに繰り返し実行する自動追従制御終了処理を説明する。
【0033】
ステップ21では、自動追従制御中であるか否かを判断する。自動追従制御中である場合はステップ22に進み、自動追従制御中でない場合は本処理を終了する。
ステップ22では、シフト位置センサ13を用いて、自車両のシフト位置を検出し、そのシフト位置が、自動追従制御の開始時におけるシフト位置P0と一致するか否かを判断する。シフト位置P0と一致しない場合はステップ23に進み、シフト位置P0と一致する場合はステップ27に進む。
【0034】
ステップ23では、シフト位置がシフト位置P0と一致しなくなった時点からの経過時間をカウントする。
ステップ24では、前記ステップ23でカウントした経過時間が、予め設定された閾値A以上であるか否かを判断する。閾値A以上である場合はステップ25に進み、閾値A未満である場合はステップ27に進む。
【0035】
ステップ25では自動追従制御を終了する。
ステップ26では、自動追従制御許可状態を終了する。
一方、前記ステップ22で肯定判断した場合又は前記ステップ24で否定判断した場合はステップ27に進み、先行車両認識センサ17によって先行車両を認識できない状態(ロスト状態)であるか否かを判断する。ロスト状態である場合はステップ28に進み、ロスト状態ではない場合はステップ30に進む。
【0036】
ステップ28では、ロスト状態が始まった時点からの経過時間をカウントする。
ステップ29では、前記ステップ28でカウントした経過時間が、予め設定された閾値B以上であるか否かを判断する。閾値B以上である場合は前記ステップ25に進み、閾値B未満である場合はステップ30に進む。
【0037】
ステップ30では、ブレーキペダル操作センサ15を用いて、自車両のドライバがブレーキ操作を行った(ブレーキをオンにした)か否かを判断する。ブレーキ操作を行った場合は前記ステップ25に進み、ブレーキ操作を行わなかった場合はステップ31に進む。
【0038】
ステップ31では、追従スイッチ11がオンからオフに切り替わったか否かを判断する。オンからオフに切り替わった場合は前記ステップ25に進み、それ以外の場合は本処理を終了する。
【0039】
なお、前記ステップ24での肯定判断は条件B1が成立したことの一例であり、前記ステップ29での肯定判断は条件B2が成立したことの一例であり、前記ステップ30での肯定判断は条件B3が成立したことの一例であり、前記ステップ31での肯定判断は条件B4が成立したことの一例である。
(2−4)発進タイミングT設定処理
まず、発進タイミングTについて詳細に説明する。上述したとおり、自動追従制御中において、自車両及び先行車両が停車した状態から、先に先行車両が発進すると、自車両と先行車両との車間距離、及び自車両に対する先行車両の相対速度に基づき定まる発進タイミングTで、自車両も発進する。
【0040】
目標車間距離演算/補正演算部7は、この発進タイミングTを以下のように設定する。
(i)初期マップM0を未だ補正していない場合
目標車間距離演算/補正演算部7は、予め、図5に示す初期マップM0を備えている。この初期マップMOは、自車両と先行車との車間距離D、及び自車両に対する先行車両の相対速度Vから発進タイミングTを算出するものである。
【0041】
初期マップMOは、相対速度Vと、車間距離Dとの関係を規定するものであり、例えば、初期マップM0において、任意の相対速度Vに対応する車間距離はD(V)である。
任意の時点における自車両及び先行車両の状態(相対速度Vと車間距離D)は、図5上の点Yで表される。自車両及び先行車両が停止している状態では、点Yは縦軸上(相対速度Vが0の領域)上にある。その後、自車両は停車したままで、先行車両が発進すると、相対速度V及び車間距離Dは徐々に増加し、点Yは、図5において右上の方向に移動してゆく。やがて、点Yが初期マップM0に達したタイミングが発進タイミングTである。
【0042】
(ii) 初期マップM0を既に補正している場合
目標車間距離演算/補正演算部7は、前記ステップ15、16で車間距離D2及び相対速度V2を取得すると、それらを用いて、初期マップM0を補正し、図5に示す補正後マップMmを算出する。また、目標車間距離演算/補正演算部7は、補正後マップMmを算出した後も、前記ステップ15、16取得した車間距離D2及び相対速度V2を取得するごとに、それらを用いてさらに補正後マップMmを補正する。なお、この補正については後述する。
【0043】
補正後マップMmも初期マップMOと同様に、相対速度Vと、車間距離Dとの関係を規定するものであり、車間距離D及び相対速度Vから発進タイミングTを算出するために用いられる。すなわち、補正後マップMmを算出した後は、上述した点Yが、補正後マップMmに達したタイミングを発進タイミングTとする。
【0044】
(iii)マップの補正について
目標車間距離演算/補正演算部7は、前記ステップ15、16で取得した車間距離D2及び相対速度V2を用いて、以下のように初期マップM0を補正し、補正後マップMmを算出する。
【0045】
初期マップM0上で、相対速度V2に対応する車間距離をD(V2)とする。次に、以下の式(1)により、係数K1を算出する。
式(1) K1=D2/D(V2)
そして、任意の相対速度Vに対し、K1×D(V)という値の車間距離が対応するマップを、補正後マップMmとする。なお、補正後マップMmをさらに補正する補正処理も、上と同様に行うことができる。
【0046】
また、初期マップM0の補正は以下のように行ってもよい。まず、以下の式(2)により、差分ΔDを算出する。
式(2) ΔD=D2−D(V2)
そして、任意の相対速度Vに対し、D(V)+ΔDという値の車間距離が対応するマップを、補正後マップMmとする。なお、補正後マップMmをさらに補正する補正処理も、上と同様に行うことができる。
【0047】
また、初期マップM0の補正は以下のように行ってもよい。まず、以下の式(3)により、係数K2を算出する。
式(3) K2=ΔD/V2
そして、任意の相対速度Vに対し、D(V)+K2×Vという値の車間距離が対応するマップを、補正後マップMmとする。なお、補正後マップMmをさらに補正する補正処理も、上と同様に行うことができる。
【0048】
3.車両用運転支援装置1が奏する効果
(1)車両用運転支援装置1は、自動追従制御が開始される前であって、自車両が停車しているときに車間距離D1を取得し(前記ステップ8参照)、その車間距離D1を自動追従制御において使用する。
【0049】
また、車両用運転支援装置1は、自動追従制御の開始直後に、車間距離D2及び相対速度V2を取得し(前記ステップ15、16参照)、それらを自動追従制御において使用する。
【0050】
そのため、自動追従制御において用いるデータを精度よく、また簡易なロジックで確実に取得することができる。
(2)車両用運転支援装置1は、自車両が停車中であり、ブレーキがオンであることを条件として、自動追従制御許可状態とする。そのため、自車両の安全性が高い。
【0051】
(3)車両用運転支援装置1は、ドライバの運転操作から学習した車間距離D1、D2、相対速度V2を用いて、ドライバの好みに応じた、停車時の目標車間距離や、発進タイミングTを設定することができる。
【0052】
(4)車両用運転支援装置1は、自車両のシフト位置が自動追従制御の開始時におけるシフト位置と一致しなくなった時点からの経過時間が所定の閾値以上となると、自動追従制御を終了する。そのため、自動追従制御を適切に終了させることができる。また、誤操作等により、シフト位置を短時間変更しても、自動追従制御がドライバの意図に反して終了してしまうような事態が生じにくい。
<その他の実施形態>
(1)発進タイミングTは、相対速度Vにはよらず、車間距離Dのみによって設定してもよい。例えば、自動追従制御中において、自車両及び先行車両が停車した状態から、先に先行車両が発進し、自車両と先行車両との車間距離Dが所定の閾値Cに達したタイミングを(相対速度Vによらず)発進タイミングTとすることができる。
【0053】
また、車両用運転支援装置1は、前記ステップ15で取得した車間距離Dにより、上記の閾値Cを補正することができる。例えば、前記ステップ15で取得した車間距離Dを、補正後の閾値Cとすることができる。
【0054】
(2)追従スイッチ11の代わりに、他の入力装置を用いてもよい。例えば、ドライバが発音した音声から、オン又はオフを認識するものであってもよい。
(3)初期マップM0又は補正後マップMmを補正するタイミングは適宜設定できる。例えば、車間距離D2及び相対速度V2を取得するごとに行ってもよいし、複数回の履歴に基づき行ってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…車両用運転支援装置、3…自動追従制御許可状態判定部、5…自動追従制御開始/終了判定部、7…目標車間距離演算/補正演算部、9…自動追従制御実行部、11…追従スイッチ、13…シフト位置センサ、15…ブレーキペダル操作センサ、17…先行車両認識センサ、19…車輪速度センサ、21…駆動力制御部、23…制動力制御部
図1
図2
図3
図4
図5