特許第6221941号(P6221941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221941
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20171023BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-108314(P2014-108314)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2015-225118(P2015-225118A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山岡 亮
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−152025(JP,A)
【文献】 実開平06−000885(JP,U)
【文献】 特開2012−047934(JP,A)
【文献】 特開2012−113127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 − 27/02
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(1)の収容部(2a)に収容され、前記収容部の開口(2b)を通して前記移動体の投影面(3a)に画像を投影することにより、前記画像を虚像(5)として前記移動体の室内から視認可能に表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
光源光を発する光源(12a)と、
前記光源光から直線偏光を取り出す第1の偏光子(16a)と、
前記第1の偏光子からの前記光源光に照明され、前記画像を表示する表示画素(17a)と前記画像を表示しない非表示画素(17b)とを切替可能に設けられ、前記表示画素の偏光方向(DP1)と前記非表示画素の偏光方向(DP0)とを異ならせる液晶層(16d)と、
前記液晶層からの前記光源光を、前記投影面へ向けて導光する導光部(20)と、
透過軸(42a)の光を透過させ、前記透過軸と交差する遮断軸(42b)の光を遮断することにより、前記光源光のうち、前記表示画素に対応する前記光源光を透過させると共に、前記収容部の前記開口を塞ぐ防塵シート(40)として配置されている第2の偏光子(42)と
前記防塵シートにおいて前記第2の偏光子に重ねて形成され、位相差を生じさせることにより、前記光源光の偏光状態を調整する位相子(44)と、を備え
前記偏光状態の調整は、楕円偏光への調整であって、
前記防塵シートでは、前記第2の偏光子が前記光源側で、前記位相子が前記投影面側であることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記遮断軸は、光を吸収する吸収軸であることを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記防塵シートは、前記開口において、暗色のベゼル(50)によって縁取られていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の収容部に収容され、収容部の開口を通して移動体の投影面に画像を投影することにより、画像を虚像として移動体の室内から視認可能に表示するヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の収容部に収容され、収容部の開口を通して移動体の投影面に画像を投影することにより、画像を虚像として移動体の室内から視認可能に表示するHUD装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されているHUD装置では、透過照明による液晶表示器の液晶層の前面に貼着された第1の偏光子としての偏光板と、液晶層の後面に貼着された第2の偏光子としての偏光板とを備える。そして、液晶表示器が発した光源光は直線偏光になっており、光源光は、収容部の開口に配置されたアクリル等の透光性樹脂からなる防塵シートから射出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−113197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のHUD装置のような構成では、透光性樹脂からなる防塵シートを介して、外部から内部構造が見えてしまう。また、例えば92〜93%程度の透過率であるアクリル等の透光性樹脂からなる防塵シートを光源光が透過するため、光源光のエネルギー効率が悪化してしまう。内部構造が見えるという課題を解決するために、防塵シートを暗色に着色したり、ハーフミラーを用いた場合では、表示光に対する防塵シートの透過率が更に減少するため、光源光のエネルギー効率の悪化は著しいものであった。
【0005】
ここで、光源光のエネルギー効率とは、発光した光源光のエネルギーに対する虚像として移動体の室内から視認される光源光のエネルギーの割合である。
【0006】
本発明は、以上説明した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、内部構造が見えることを抑制しつつ、光源光のエネルギー効率が高効率であるHUD装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示される発明のひとつは、移動体(1)の収容部(2a)に収容され、収容部の開口(2b)を通して移動体の投影面(3a)に画像を投影することにより、画像を虚像(5)として移動体の室内から視認可能に表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、光源光を発する光源(12a)と、光源光から直線偏光を取り出す第1の偏光子(16a)と、第1の偏光子からの光源光に照明され、画像を表示する表示画素(17a)と画像を表示しない非表示画素(17b)とを切替可能に設けられ、表示画素の偏光方向(DP1)と非表示画素の偏光方向(DP0)とを異ならせる液晶層(16d)と、液晶層からの光源光を、投影面へ向けて導光する導光部(20)と、透過軸(42a)の光を透過させ、透過軸と交差する遮断軸(42b)の光を遮断することにより、光源光のうち、表示画素に対応する光源光を透過させると共に、収容部の開口を塞ぐ防塵シート(40)として配置されている第2の偏光子(42)と、防塵シートにおいて第2の偏光子に重ねて形成され、位相差を生じさせることにより、光源光の偏光状態を調整する位相子(44)と、を備え、偏光状態の調整は、楕円偏光への調整であって、防塵シートでは、第2の偏光子が光源側で、位相子が投影面側であることを特徴とする。
【0008】
このような発明によると、光源が発する光源光は、第1の偏光子により直線偏光が取り出される。そして、当該第1の偏光子からの光源光は、液晶層により画像を表示する表示画素の偏光方向と画像を表示しない非表示画素の偏光方向とを異ならせた状態となり、第2の偏光子により表示画素に対応する光源光が透過する。これによれば、第2の偏光子における表示画素に対応する光源光の透過によって画像が形成され、移動体の投影面に画像を投影することが可能となり、画像を虚像として移動体の室内から視認可能に表示することができる。また、画像を形成する第2の偏光子が収容部の開口を塞ぐ防塵シートとして配置されているので、第2の偏光子と防塵シートとを別々に設ける場合に対し、エネルギーの損失を抑制して、画像を表示することができる。また、防塵シートとして配置され、透過軸の光を透過させ、これと交差する遮断軸の光を遮断する第2の偏光子は、外光の一部を遮断することとなる。これによれば、当該外光がHUD装置内で反射して再びHUD装置の外部に射出されることで外部から内部構造が見えることを抑制することができる。以上により、内部構造が見えることを抑制しつつ、光源光のエネルギー効率が高効率であるHUD装置を提供することができる。
【0010】
このような発明によると、防塵シートにて第2の偏光子と重ねて形成されている位相子は、位相差を生じさせることにより光源光の偏光状態を調整する。これによれば、第2の偏光子と位相子との位置合わせを容易にしつつ、エネルギー効率が最適化された所望の偏光状態の光源光の透過によって、投影面に画像を投影することができる。また、テレビ等で使用されているシートを転用できる場合があるため、HUD装置を容易に製造することができる。
【0011】
なお、括弧内の符号は、記載内容の理解を容易にすべく、後述する実施形態において対応する構成を例示するものに留まり、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態におけるHUD装置の車両への設置状態を示す模式図である。
図2】一実施形態におけるHUD装置の光学系を示す模式図である。
図3】一実施形態におけるHUD装置の構成を示す分解斜視図である。
図4】一実施形態における投射部の構成を示す斜視図である。
図5】一実施形態における液晶パネルの一部分を模式的に示す断面図である。
図6】一実施形態における液晶層を透過する光源光の偏光方向を説明するための模式図である。
図7】一実施形態における防塵シートを説明するための模式図である。
図8】一実施形態における投影面に入射する光の偏光状態を示す模式図である。
図9図1における防塵シートの周囲を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の第1実施形態によるHUD装置100は、移動体の一種である車両1に搭載され、当該車両1の暗色のインストルメントパネル2における収容部2aに収容されている。収容部2aは、インストルメントパネル2において、HUD装置100を収容するスペースであり、ウインドシールド3側に開口2bを有している。HUD装置100は、収容部2aの開口2bを通して、車両1の表示部材であるウインドシールド3に画像を投影する。
【0015】
ここで車両1において、ウインドシールド3の室内側の面は、画像が投影される投影面3aを、湾曲する凹面状又は平坦な平面状等に形成している。また、車両1においてウインドシールド3は、室内側の面と室外側の面とで、各面を反射してできる虚像5を重ねるための角度差を有するものであってもよい。あるいはウインドシールド3は、室外側の面での反射による虚像5の輝度を抑制するために蒸着膜ないしはフィルム等を室内側の面に設けたものであってもよい。さらに、ウインドシールド3の代わりに、車両1と別体となっているコンバイナを車両1内に設置して、当該コンバイナの投影面に画像を投影するものであってもよい。
【0016】
画像が投影面3aに投影される車両1において、HUD装置100は、座席6に着席する車両1の乗員に、かかる画像を虚像5として車両1の室内から視認可能に表示させる。すなわち、投影面3aに反射される光が乗員のアイポイント4に到達し、乗員がアイポイント4に到達する光を知覚する。これによって、乗員は、車速、若しくは燃料残量等の車両状態値、又は道路情報、若しくは視界補助情報等の車両情報を、認識することができる。
【0017】
このような機能を実現するHUD装置100の具体的構成を、図2〜9に基づいて、以下に説明する。HUD装置100は、投射部10、導光部20、ハウジング30、及び防塵シート40を主として構成されている。
【0018】
投射部10は、図2,3に示すように、箱型の表示器状に形成されている。図4に示すように、投射部10は、バックライト12、投射レンズ14、液晶パネル16等を有している。
【0019】
バックライト12は、光源12a、集光レンズ12b、拡散板12c等により形成されている。光源12aは、例えば発光ダイオードからなる発光素子であり、光源用回路基板18上に配置されている。光源12aは、光源用回路基板18上の配線パターン(図示しない)を通して、コントローラ及び電源(図示しない)と電気的に接続されている。光源12aは、通電により電流量に応じて光源光を発することで、ランダム偏光の光源光を集光レンズ12bに向けて投射する。集光レンズ12bは、合成樹脂ないしはガラス等からなる透光性の凸レンズであり、光源12aと拡散板12cとの間に配置されている。集光レンズ12bは、光源12aからの光源光を集光して拡散板12cに向けて射出する。拡散板12cは、光拡散材が練り込まれたポリカーボネイト等の合成樹脂により形成される半透明又は乳白色の板であり、集光レンズ12bと投射レンズ14との間に配置されている。拡散板12cは、拡散により輝度の均一性を調整した光源光を投射レンズ14に向けて射出する。
【0020】
投射レンズ14は、合成樹脂ないしはガラス等からなる透光性の凸レンズであり、バックライト12と液晶パネル16との間に配置されている。投射レンズ14は、バックライト12からの光源光を集光して液晶パネル16を照明する。
【0021】
液晶パネル16は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)を用いた液晶パネルであって、例えば2次元方向に配列された複数の液晶画素17から形成されるアクティブマトリクス型の液晶パネルである。液晶パネル16では、図5に示すように、第1の偏光子としての偏光板16a、一対の透明電極16b〜c、一対の透明電極16b〜cに挟まれた液晶層16d、その他カラーフィルタ16e等が積層されている。
【0022】
偏光板16aは、全ての液晶画素17を跨ぐ平面状に形成され、投射レンズ14等を介して照明されるランダム偏光の光源光から直線偏光を取り出して、液晶層16dに入射させる。
【0023】
一対の透明電極16b〜cは、外部コントローラ(図示しない)と電気的に接続されて、外部コントローラの電気信号により、液晶画素17ごとに電極16b及び16c間に電圧を印加可能となっている。
【0024】
液晶層16dは、例えばネマティック液晶等の液晶分子を主成分とする溶液が充填された層である。液晶層16dでは、一対の透明電極16b〜c間の印加電圧により、液晶分子の配向方向が制御されて、印加電圧に応じて液晶層16dに入射する光源光の偏光方向を変化させることが可能となっている。図6に示すように、具体的に、液晶画素17のうち、画像を表示する表示画素17aでは、液晶層16dの透過により偏光方向が例えば90度変化するようになっている。一方、液晶画素17のうち、画像を表示しない非表示画素17bでは、液晶層16dを透過しても偏光方向が変化しないようになっている。また、各液晶画素17において、表示する虚像5に対応して印加電圧が制御されることにより、表示画素17aと非表示画素17bとが切替わるようになっている。このようにして、液晶層16dは、偏光板16aからの光源光に照明され、表示画素17aと非表示画素17bとを切替可能に設けられ、表示画素17aの偏光方向DP1と非表示画素17bの偏光方向DP0とを異ならせる。ここで、本実施形態における偏光方向とは、直線偏光となっている光源光において、電場の振動する方向とする。
【0025】
なお、アクティブマトリクス型を採用した本実施形態では、従来の液晶パネルにおけるTN(Twisted Nematic)方式に準じた駆動方式を採用しているが、従来の液晶パネルにおけるVA(Vertical Alignment)方式に準じた駆動方式、又は従来の液晶パネルにおけるIPS(In-Place-Switching)方式に準じた駆動方式を採用してもよい。また、パッシブマトリクス型が採用されてもよい。
【0026】
そして、液晶パネル16の液晶層16dを透過した光源光は、直線偏光であって、表示画素17aの偏光方向DP1と非表示画素17bの偏光方向DP0とが異なった状態で、導光部20に投射される。
【0027】
導光部20は、図2,3に示すように、平面鏡22及び凹面鏡24等により構成される。平面鏡22は、合成樹脂ないしはガラス等からなる基材の表面に、反射面22aとしてアルミニウムを蒸着させること等により形成されている。反射面22aは、滑らかな平面状に形成されている。そして、平面鏡22は、投射部10の液晶パネル16からの光源光を、凹面鏡24に向けて反射する。
【0028】
凹面鏡24は、合成樹脂ないしはガラス等からなる基材の表面に、反射面24aとしてアルミニウムを蒸着させること等により形成されている。反射面24aは、凹面鏡24の中心が凹む凹面として、滑らかな曲面状に形成されている。そして、凹面鏡24は、平面鏡22からの光源光を、開口2bを通して投影面3aに向けて反射する。このようにして、導光部20は、液晶層16dによって表示画素17aの偏光方向DP1と非表示画素17bの偏光方向DP0とが異なった光源光を、開口2bを通して投影面へ向けて導光する。
【0029】
ハウジング30は、投射部10及び導光部20をユニット状にして固定し、車両1の収容部2aへと収容するためのケースである。また、ハウジング30は、収容部2aの開口2bに対応する箇所に、収容状態で開口2bを塞ぐ防塵シート40を保持している。
【0030】
防塵シート40は、収容部2aの開口2bを塞ぐシートである。防塵シート40は、図7に示すように、第2の偏光子としての偏光板42、位相子としての位相差板44、及びハードコート層46を重ねて形成されている。特に本実施形態の防塵シート40では、偏光板42が光源12a側であり、位相差板44が投影面3a側であり、貼り合わせにより重ねて形成されている。また、防塵シート40は、開口2bにおいて、防塵シート40の色に合わせた暗色のベゼル50に縁取られている。
【0031】
偏光板42は、防塵シート40として配置され、透過軸42aの光を透過させ、透過軸42aと交差する遮断軸42bの光を遮断するようになっている。ここで、透過軸42aとは、当該透過軸42aに沿った方向に偏光方向を有する光が偏光板42に入射した場合、透過率が最大となる軸である。また、遮断軸42bとは、当該遮断軸42bに沿った方向に偏光方向を有する光が偏光板42に入射した場合、透過率が最少となる軸である。
【0032】
本実施形態の偏光板42は、例えばポリビニルアルコールにヨウ素を添加したフィルムを主としてシート状に形成され、ヨウ素分子の配向方向によって透過軸42aと遮断軸42bとが実質直交して形成される。このような構成の偏光板42の遮断軸42bは、光を吸収する吸収軸となっている。すなわち、吸収軸としての遮断軸42bに偏光方向を有する光が偏光板42に入射した場合、吸収率が最大となる。
【0033】
このような偏光板42は、透過軸42aを表示画素17aの偏光方向DP1に合わせて配置される。また、偏光板42は、吸収軸を非表示画素17bの偏光方向DP0に合わせて配置される。このような配置により、偏光板42は、液晶層16dから導光部20を介して投影面3aに向かう光源光のうち、表示画素17aに対応する光源光を透過させる。また、偏光板42は、非表示画素17bに対応する光源光を吸収する。すなわち、偏光板42における表示画素17aに対応する光源光の透過によって画像が形成される。
【0034】
位相差板44は、シート状に形成され、位相差を生じさせることにより、入射する光源光の偏光状態を調整する。具体的に、位相差板44は、進相軸44aと、これに交差する遅相軸44bとの方向において、それぞれ異なる屈折率を有している。そして、入射した光において、進相軸44aに沿った成分の位相差板44媒質中の光速と、遅相軸44bに沿った成分の位相差板44媒質中の光速とが異なることにより、進相軸44aに沿った成分と遅相軸44bに沿った成分とで位相差が生じる。その結果、位相差板44は、偏光状態を調整可能となっている。
【0035】
このような位相差板44には、偏光板42を透過した表示画素17aに対応する光源光が直線偏光の状態で入射する。位相差板44は、進相軸44a及び遅相軸44bを、表示画素17aの偏光方向DP1及び偏光板42の透過軸42aとは異なる方向に配置される。このような配置により、表示画素17aに対応する光源光の偏光状態を調整することが可能となっている。
【0036】
本実施形態における位相差板44は、偏光状態の調整として、楕円偏光への調整を行なう。すなわち、位相差板44は、偏光板42から入射する表示画素17aに対応する光源光を、楕円偏光に変換して、投影面3aに向けて射出する。図1,2,8に示すように、投影面3aに斜めから入射する光は、位相差板44による楕円偏光への調整により、入射面に対するs偏光成分及びp偏光成分の両方を有し、楕円偏光において長軸となる方向DMAが入射面に対して斜めとなっている。ここで、入射面とは、入射する光線と、入射する箇所における投影面3aの法線方向を含む平面である。
【0037】
投影面3aにおいてs偏光成分の反射率がp偏光成分の反射率よりも高くなることにより、裸眼の乗員に対しては、s偏光成分が多くなるような偏光状態で投影面3aに入射することが好ましい。その一方で、投影面3aに反射される光は、p偏光成分を含むことで、乗員が偏光サングラスを装用している場合でも、一部(例えばp偏光成分に対応する光)が偏光サングラスを透過するようになる。したがって、裸眼の乗員及び偏光サングラスを装用した乗員の両方を考慮して、輝度及びエネルギー効率が最適化されるように、楕円偏光において長軸となる方向DMAが設定される。
【0038】
ハードコート層46は、透光性の合成樹脂からなる層である。ハードコート層46は、防塵シート40において最も投影面3a側において露出して形成されており、防塵シート40の傷つきを防止する。ハードコート層46単体で防塵シート40を保持するための強度を確保する必要がないため、ハードコート層は、偏光板42の厚み及び位相差板44の厚みに対して薄い薄膜状に形成されている。
【0039】
このような防塵シート40は、偏光板42における遮断軸42bにおける光の遮断により、太陽光等の外光がHUD装置100の内部に入り込むことでHUD装置100の製品寿命が低下することを抑制する。また、防塵シート40は、偏光板42における遮断軸42bにおける光の遮断により、乗員からは暗色に視認される。
【0040】
防塵シート40は、図9に示すように、開口2bにおいて、座席6とは反対側に傾いた状態で、中央部がHUD装置100の内部側に凹となって湾曲する円筒面状に形成されている。この湾曲における曲率半径は、例えば150cmに設定されている。このような円筒面状の防塵シート40により、防塵シート40に入射してハードコート層46又は位相差板44により反射される外光の多くがベゼル50の側面部52に入射するようになっている。そして、暗色の側面部52により、外光が吸収される。
【0041】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作用効果を以下に説明する。
【0042】
本実施形態によると、光源12aが発する光源光は、第1の偏光子としての偏光板16aにより直線偏光が取り出される。そして、当該偏光板16aからの光源光は、液晶層16dにより画像を表示する表示画素17aの偏光方向DP1と画像を表示しない非表示画素17bの偏光方向DP0とを異ならせた状態となり、第2の偏光子としての偏光板42により表示画素17aに対応する光源光が透過する。これによれば、偏光板42における表示画素17aに対応する光源光の透過によって画像が形成され、車両1の投影面3aに画像を投影することが可能となり、画像を虚像5として車両1の室内から視認可能に表示することができる。また、画像を形成する偏光板42が収容部2aの開口2bを塞ぐ防塵シート40として配置されているので、画像を形成するための偏光板と防塵シートとを別々に設ける場合に対し、エネルギーの損失を抑制して、画像を表示することができる。また、防塵シート40として配置され、透過軸42aの光を透過させ、これと交差する遮断軸42bの光を遮断する偏光板42は、外光の一部を遮断することとなる。これによれば、当該外光が装置100内で反射して再び装置100の外部に射出されることで外部から内部構造が見えることを抑制することができる。以上により、内部構造が見えることを抑制しつつ、光源光のエネルギー効率が高効率であるHUD装置100を提供することができる。
【0043】
また、本実施形態によると、防塵シート40にて偏光板42と重ねて形成されている位相差板44は、位相差を生じさせることにより光源光の偏光状態を調整する。これによれば、偏光板42と位相差板44との位置合わせを容易にしつつ、エネルギー効率が最適化された所望の偏光状態の光源光の透過によって、投影面3aに画像を投影することができる。また、テレビ等で使用されているシートを転用できる場合があるため、HUD装置100を容易に製造することができる。
【0044】
また、本実施形態によると、偏光状態の調整は、楕円偏光への調整であって、防塵シートでは、偏光板42が光源12a側で、位相差板44が投影面3a側である。これによれば、位相差板44にて光源光が楕円偏光に変換された状態で、画像を虚像5として視認可能に表示するので、視認者が偏光サングラスを装用している場合に頭を傾けたとしても、虚像5の輝度が急激に変化することを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態によると、遮断軸42bは、光を吸収する吸収軸である。これによれば、非表示画素17bに対応する光源光が偏光板42において反射され、装置100内で更に反射して装置100の外部に射出されることで外部から内部構造が見えることを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態によると、防塵シート40は、開口2bにおいて、暗色のベゼル50によって縁取られている。これによれば、光の遮断により暗色に視認される防塵シート40として配置されている偏光板42と、暗色のベゼル50とで一体感を醸し出すことが可能となる。
【0047】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0048】
具体的に変形例1としては、防塵シート40において、位相差板44がなくてもよい。この例として、偏光板42のみにより形成されていてもよい。また、偏光板42とハードコート層46とを重ねて形成されていてもよい。
【0049】
変形例2としては、位相差板44による偏光状態の調整は、直線偏光の光源光を、直線偏光のまま偏光方向だけ変えるものであってもよい。この場合の変形例3として、防塵シート40では、位相差板44が光源側で、偏光板42が投影面3a側であってもよい。
【0050】
変形例4としては、位相差板44による偏光状態の調整は、直線偏光の光源光を、円偏光に変換するものであってもよい。
【0051】
変形例5としては、防塵シート40は、開口2bにおいて、暗色のベゼル50によって縁取られていなくてもよい。
【0052】
変形例6としては、HUD装置100は、車両1以外の船舶ないしは飛行機等の各種移動体(輸送機器)に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
100 HUD装置、1 車両(移動体)、2a 収容部、2b 開口、3a 投影面、5 虚像、12a 光源、16a 偏光板(第1の偏光子)、16d 液晶層、17a 表示画素、17b 非表示画素、20 導光部、40 防塵シート、42 偏光板(第2の偏光子)、42a 透過軸、42b 遮断軸、44 位相差板(位相子)、50 ベゼル
図1
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図9