特許第6221942号(P6221942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221942
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20171023BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-108315(P2014-108315)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2015-225119(P2015-225119A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山岡 亮
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−163613(JP,A)
【文献】 特開2005−067515(JP,A)
【文献】 特開2011−203680(JP,A)
【文献】 特開平11−314538(JP,A)
【文献】 特開2005−247224(JP,A)
【文献】 特開平09−066757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 − 27/02
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の眼(7)を撮影する撮影手段(6a)を有した移動体(1)に搭載され、前記移動体の投影部材(3)に画像を投影することにより、虚像(10)を視認領域(12)において前記乗員により視認可能に表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
姿勢が変更可能に設けられる光学部材(26,226)を有し、前記光学部材の姿勢に応じて前記視認領域を移動させる光学系(20)と、
前記撮影手段が撮影した前記眼の前記視認領域に対する相対位置に基づいて、前記相対位置に関連付けられた姿勢となるように、前記光学部材の姿勢を自動調整する調整手段(S50,S250,S252,S254,S350)とを備え
前記移動体の上下方向をz方向と定義し、前記光学系により前記視認領域が前記z方向に移動する範囲を可動領域(14,214)と定義すると、
前記撮影手段が撮影した前記眼の位置(PE)が前記可動領域内であるか否かを判定する判定手段(S30,S230,S236,S237,S330)を備え、
前記光学部材は、第1軸(26c)を有し、
前記光学系は、前記第1軸まわりの回動駆動によって前記光学部材の姿勢を変更することにより、前記視認領域を前記z方向に移動させ、
前記調整手段は、前記眼の位置が前記z方向において前記可動領域内であると前記判定手段により判定された場合、前記第1軸まわりの回動駆動によって、前記光学部材の姿勢を自動調整することを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記撮影手段が撮影した前記眼の位置が前記可動領域から前記z方向に外れていると前記判定手段により判定された場合、前記乗員が着座するシート(5)の高さ(HS)を変更するように前記乗員に警告する警告手段(S32,S232,S332)を備えることを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記シートの高さが変更された場合、前記光学部材の姿勢の自動調整を開始することを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前方に前記虚像を表示する前記移動体の左右方向をy方向と定義すると、
前記虚像は、前記移動体の前記前方において、前記y方向となる前記左右方向に幅をもって表示され、
前記光学部材(226)は、第2軸(226d)を有し、
前記光学系は、前記第2軸まわりの回動駆動によって前記光学部材の姿勢を変更することにより、前記視認領域を前記y方向に移動させ、
前記調整手段(S250)は、前記眼の位置が前記y方向及び前記z方向において前記可動領域(214)内であり、かつ、前記視認領域が前記y方向において前記可動領域内であると前記判定手段(S230,S236,S237)により判定された場合、前記第2軸まわりの回動駆動を停止させ、前記第1軸まわりの回動駆動によって、前記光学部材の姿勢を自動調整することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記調整手段(S252)は、前記眼の位置が前記y方向及び前記z方向において前記可動領域内であり、かつ、前記視認領域が前記y方向において前記可動領域からずれていると前記判定手段により判定された場合、前記第1軸まわりの回動駆動と、前記第2軸まわりの回動駆動とによって、前記光学部材の姿勢を自動調整することを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記調整手段(S254)は、前記眼の位置が前記可動領域から前記y方向に外れていると前記判定手段により判定された場合、前記第1軸まわりの回動駆動と、前記第2軸まわりの回動駆動とによって、前記光学部材の姿勢を自動調整することを特徴とする請求項又はに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記移動体のパーキング状態が解除された時点で、前記光学部材の姿勢を自動調整するための動作を開始することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
前記調整手段は、前記光学部材の姿勢を自動調整した後、前記乗員により前記光学部材の姿勢を手動調整可能とすることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載され、移動体の投影部材に画像を投影することにより、虚像を乗員により視認可能に表示するヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体に搭載され、移動体の投影部材に画像を投影することにより、虚像を乗員により視認可能に表示するHUD装置が知られている。特許文献1に開示のHUD装置の調整では、HUD装置に加え、調整用ディスプレイ、調整用鏡、調整用の被撮影物を用いている。そして、調整作業として、作業者は、車両を所定位置に停止して、調整用鏡、及び被撮影物を所定位置に固定する。さらに、作業者は、車外検知カメラで被撮影物を撮影した画像及び運転者検知カメラで調整用鏡を撮影した画像が表示された調整用ディスプレイを見ながら、HUD装置を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−262666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のHUD装置では、上記のような煩雑極まる調整を作業者に強いるため、需要者である乗員が各自の眼の位置に合わせて表示位置を調整することは、面倒かつ困難であった。
【0005】
本発明は、以上説明した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、乗員の各自の眼の位置に合わせた表示位置に自動で調整可能なHUD装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、乗員の眼(7)を撮影する撮影手段(6a)を有した移動体(1)に搭載され、移動体の投影部材(3)に画像を投影することにより、虚像(10)を視認領域(12)において乗員により視認可能に表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、姿勢が変更可能に設けられる光学部材(26,226)を有し、光学部材の姿勢に応じて視認領域を移動させる光学系(20)と、撮影手段が撮影した眼の視認領域に対する相対位置に基づいて、相対位置に関連付けられた姿勢となるように、光学部材の姿勢を自動調整する調整手段(30)とを備え、移動体の上下方向をz方向と定義し、光学系により視認領域がz方向に移動する範囲を可動領域(14,214)と定義すると、撮影手段が撮影した眼の位置(PE)が可動領域内であるか否かを判定する判定手段(S30,S230,S236,S237,S330)を備え、光学部材は、第1軸(26c)を有し、光学系は、第1軸まわりの回動駆動によって光学部材の姿勢を変更することにより、視認領域をz方向に移動させ、調整手段は、眼の位置がz方向において可動領域内であると判定手段により判定された場合、第1軸まわりの回動駆動によって、光学部材の姿勢を自動調整することを特徴とする。
【0007】
このような発明によると、光学系は、光学部材の姿勢に応じて視認領域を移動させる。これによれば、光学部材の姿勢の変更により視認領域を移動させることで、乗員の各自の眼の位置に合わせて虚像を表示することが可能となる。そして、光学部材の姿勢は、撮影された乗員の眼の視認領域に対する相対位置に基づいて、当該相対位置に関連付けられた姿勢となるように自動調整される。これによれば、実際に乗員の眼の位置を撮影して、光学部材の姿勢を自動調整することで、煩雑な調整作業を強いることなく、乗員の各自の眼の位置に合わせた表示位置に自動で調整可能なHUD装置を提供することができる。
【0008】
なお、括弧内の符号は、記載内容の理解を容易にすべく、後述する実施形態において対応する構成を例示するものに留まり、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態におけるHUD装置の車両への搭載状態を示す模式図である。
図2】第1実施形態におけるHUD装置の光学系を示す模式図である。
図3】第1実施形態におけるHUD装置の構成を示す分解斜視図である。
図4図1における凹面鏡の姿勢の変更について説明するための模式図である。
図5】第1実施形態における視認領域と可動領域との関係を説明するための模式図である。
図6】第1実施形態における制御回路を説明するためのブロック図である。
図7】第1実施形態における制御回路等の動作を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態におけるHUD装置の光学系を示す模式図である。
図9】第2実施形態における視認領域と可動領域との関係を説明するための模式図であって、図5に相当する図である。
図10】第2実施形態における制御回路等の動作を示すフローチャートである。
図11】第3実施形態における手動調整スイッチを示す模式図である。
図12】第3実施形態における制御回路等の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態によるHUD装置100は、移動体の一種である車両1に搭載され、インストルメントパネル2内に収容されている。HUD装置100は、車両1の投影部材としてのウインドシールド3に画像を投影する。これによりHUD装置100は、車両1の室内の視認領域12において乗員の眼7により、かかる画像を虚像10として視認させる。すなわち、ウインドシールド3に反射される画像の光が、乗員の眼7の位置に到達し、乗員が当該光を知覚する。これによって、乗員は、車速、若しくは燃料残量等の車両状態値、又は道路情報、若しくは視界補助情報等の車両情報を、認識することができる。
【0012】
車両1のウインドシールド3において、室内側の面は、画像が投影される投影面3aを、湾曲する凹面状又は平坦な平面状等に形成している。また、ウインドシールド3は、室内側の面と室外側の面とで、各面を反射してできる虚像を重ねるための角度差を有するものであってもよい。あるいは、ウインドシールド3は、室外側の面の反射による虚像の輝度を抑制するために蒸着膜ないしはフィルム等を設けたものであってもよい。さらに、投影部材として、ウインドシールド3の代わりに、車両1と別体となっているコンバイナを車両1内に設置して、当該コンバイナに画像を投影するものであってもよい。
【0013】
ここで、本実施形態では、水平面上の車両1の上下方向をz方向と定義する。また、前方に虚像10を表示する車両1の前後方向をx方向と定義する。さらに、前方に虚像10を表示する車両1の左右方向をy方向と定義する。
【0014】
最初に、HUD装置100の具体的構成を、簡単に説明する。HUD装置100は、光学系20、及び当該光学系20を制御する制御回路30を備えている。光学系20は、図2,3に示すように、投射器22、平面鏡24、凹面鏡26、及び防塵シート28を有している。
【0015】
投射器22は、液晶式の投射器であり、内部の光源(図示しない)からの光を、表面の液晶パネル22aを透過させることで画像を形成し、当該画像の光を光束として平面鏡24に向けて投射する。特に本実施形態では、光源として発光ダイオードからなる発光素子が採用され、また、液晶パネル22aとしてドットマトリクス型のカラーTFT液晶パネルが採用されている。なお、投射器22は、画像を投射可能であれば他の構成であってもよく、例えばレーザを用いるMEMSスキャナ方式の投射器、あるいは有機EL方式の投射器であってもよい。
【0016】
平面鏡24は、合成樹脂ないしはガラス等からなる基材の表面に、反射面24aとしてアルミニウムを蒸着させること等により、形成されている。反射面24aは、滑らかな平面状に形成されている。かかる形状により、平面鏡24は、投射器22からの画像の光を凹面鏡26に向けて反射する。
【0017】
凹面鏡26は、合成樹脂ないしはガラス等からなる基材の表面に、反射面26aとしてアルミニウムを蒸着させること等により、形成されている。反射面26aは、凹面鏡26の中央が凹む凹面として、滑らかな曲面状に形成されている。より詳細には、ウインドシールド3の投影面3aに投影される画像の虚像に生ずる歪みを抑制するため、当該投影面3aの形状に応じた非球面状、より厳密には自由曲面状に形成されている。かかる非球面状の形状は、後述する第1軸26cまわりの回動駆動による凹面鏡26の姿勢に応じた虚像10の上下移動を考慮して設定されている。かかる形状により、凹面鏡26は、平面鏡24からの画像の光を、防塵シート28を通して、HUD装置100よりも上方に位置する車両1のウインドシールド3に向けて反射する。
【0018】
また、凹面鏡26は、凹面鏡26の中央を通るように配置され、y方向に沿った第1軸26cを有している。そして、凹面鏡26は、後述する制御回路30からの駆動信号に従って、ステッピングモータ26bにより、凹面鏡26を第1軸26cまわりに回動駆動される。すなわち、凹面鏡26は、姿勢が変更可能に設けられる光学部材をなしている。
【0019】
防塵シート28は、ポリカーボネイト樹脂等の合成樹脂により、透光性を有する板状に形成されている。防塵シート28は、光学系20を収容するハウジング40の開口を塞ぐことで、凹面鏡26からの画像の光を車両1のウインドシールド3に向けて透過させると共に、HUD装置100外の塵等が装置100の内部に侵入することを防止している。
【0020】
このようにウインドシールド3に投影された画像の光は、光束として、ウインドシールド3に対して後方の視認領域12に到達することとなる。そして、乗員の眼7の位置PEが視認領域12内であれば、画像の光を前方の虚像10として視認することができ、視認領域12外であれば、画像の光を虚像10として十分に視認することができない。
【0021】
このような光学系20における、凹面鏡26の姿勢の変更について、図4,5を用いて以下に説明する。凹面鏡26が軸26cまわりに回動駆動すると、凹面鏡26の姿勢、すなわち反射面26aの角度が変更されることにより、画像の光の反射角が変更される。そして、反射角が変更された画像の光のウインドシールド3における投射箇所及び入射角も変更され、これに応じて、光束としての画像の光が到達する範囲も変更される。要するに、凹面鏡26の姿勢が変更されると、凹面鏡26の姿勢に応じて視認領域12が移動することとなる。
【0022】
特に本実施形態では、図4に示すように、具体的に、凹面鏡26の姿勢が第1軸26cまわりの一方に回動駆動すると、例えば視認領域12はz方向であって車両1に対して上方に移動する。この場合、車両1の前方に表示される虚像10の表示位置は、例えばz方向であって車両1に対して下方に移動する。また、凹面鏡26の姿勢が第1軸26cまわりの他方に回動駆動すると、例えば視認領域12はz方向であって車両1に対して下方に移動する。この場合、虚像10の表示位置は、例えばz方向であって車両1に対して上方に移動する。
【0023】
このように、光学系20は、第1軸26cまわりの回動駆動によって凹面鏡26の姿勢を変更することにより、視認領域12をz方向に移動させる。
【0024】
ここで、本実施形態では、光学系20により凹面鏡26の姿勢に応じて視認領域12がz方向に移動する範囲を可動領域14と定義する。y方向に沿った第1軸26cまわりの回動駆動により視認領域12がz方向に上下移動するHUD装置100において、視認領域12と可動領域14との関係は、図5によって明らかになるであろう。なお、ここで、z方向に垂直な平面上において車両1の前後方向にも垂直な方向がy方向である。
【0025】
制御回路30は、例えばマイクロコンピュータ(図示しない)を主体として形成される電子回路である。図6に示すように、制御回路30は、投射器22、及び凹面鏡26のステッピングモータ26bと電気的に接続されている。また、制御回路30は、車内カメラ6a、メータ4、及び乗員が着座するシート5のポジションを検出するシートセンサ5a等と車内LAN9により通信可能となっている。そして、制御回路30は、車内カメラ6a、メータ4、シートセンサ5aから入力される信号に基づいて、投射器22における表示状態、及び凹面鏡26の姿勢を制御すると共に、メータ4に信号を出力することが可能となっている。
【0026】
メータ4は、詳細を図示しないが、例えば、指針による指標としての目盛を指示することで、車両状態値を表示すると共に、液晶ディスプレイ等による画像表示により、車両情報、及び警告等を表示する車両用表示装置である。
【0027】
また、車内カメラ6aは、例えば赤外光の検出に対応したCCDカメラであって、図1,4に示すように、ウインドシールド3の上方に配置されており、当該カメラ6aの光軸に近い位置に図示しない赤外光源を備えている。車内カメラ6aは、乗員である運転者の表情を撮影することで、例えば眠気を感じていると予測された運転者に対し警報音を発生させるモニタリングシステム6に用いられているため、乗員である運転者の眼7を撮影可能となっている。
【0028】
次に、車両1のエンジンスイッチがオンされた時点で、第1実施形態における制御回路30が、モニタリングシステム6と連携して、コンピュータプログラムの実行により実施するフローチャートを、図7に基づいて詳細に説明する。
【0029】
ステップS10では、乗員の眼7の撮影を行なう。具体的には、車内カメラ6aが乗員の眼7を含む表情を撮影し、その撮影画像データが制御回路30へと入力される。ステップS10の処理後、ステップS20に移る。
【0030】
ステップS20では、乗員の眼7の位置PEの算出を行なう。例えば、ステップS10にて得られた撮影画像データから、赤外光源による乗員の眼7の角膜反射像を抽出する。そして、車内カメラ6a、及び赤外光源の配置を考慮し、撮影画像データにおける角膜反射像の位置から眼7の位置PEを算出する。なお、他の方法により眼7の位置を算出してもよい。ステップS20の処理後、ステップS30に移る。
【0031】
ステップS30では、眼7の位置PEがz方向において可動領域14内であるか否かを判定する。具体的には、制御回路30のメモリ(図示しない)が予め可動領域14のz方向における範囲を記憶しており、ステップS20にて算出された眼7の位置PEが、z方向において当該範囲内であるか否かを判定する。特に本実施形態では、右眼7及び左眼7それぞれを判定して、両眼7が範囲内でなければ否定判定を下すようにする。なお、片眼7が範囲内であれば肯定判定を下すようにしてもよい。ステップS30において肯定判定を下すと、ステップS40に移る。一方、ステップS30において否定判定を下すと、ステップS32に移る。
【0032】
ステップS40では、凹面鏡26の理想の姿勢の算出を行なう。具体的には、ステップS20にて算出された眼7の位置PEに関連付けられた凹面鏡26の理想の姿勢を算出する。そして、ステップS20にて算出された眼7の現在の視認領域12に対する相対位置に基づいて、凹面鏡26が理想の姿勢となるような第1軸26cの回動駆動量を算出する。
【0033】
ここで、本実施形態における理想の姿勢とは、z方向において、ステップS20にて算出された眼7の位置PEが、視認領域12の範囲の中心となるような凹面鏡26の姿勢を示す。ただし、z方向において、眼7の位置PEが可動領域14の境界に近い場合は、視認領域12を中心とするように移動させることができないため、中心に近づくための第1軸26cの回動駆動の限界における姿勢を、理想の姿勢とする。ステップS40の処理後、ステップS50に移る。
【0034】
ステップS50では、凹面鏡26の姿勢の調整を行なう。ステップS40にて算出された第1軸26cの回動駆動量に基づいて、駆動信号を入力されたステッピングモータ26bが、凹面鏡26を第1軸26cまわりに回動駆動させ、姿勢が変更される。ステップS50を以って一連の処理を終了する。
【0035】
一方、ステップS30にて乗員の眼7の位置PEが可動領域14からz方向に外れていると判定された場合のステップS32では、乗員に警告を行なう。具体的には、制御回路30がメータ4に警告信号を出力すると、メータ4の液晶ディスプレイに警告メッセージが表示される。特に本実施形態では、乗員が着座するシート5の高さHSを変更するように警告するようになっている。ステップS32の処理の所定時間後、ステップS34に移る。
【0036】
ステップS34では、シート5の高さHSが変更されたか否かを判定する。具体的には、乗員によってシート5の高さHSが変更されたことをシートセンサ5aが検出し、当該シートセンサ5aの検出信号が制御回路30に入力されているか否かを判定する。ステップS34において肯定判定を下すと、再びステップS10の撮影を開始する。すなわち、姿勢を自動調整するための動作を開始する。
【0037】
このようにして、制御回路30は、車内カメラ6aが撮影した乗員の眼7の視認領域12に対する相対位置に基づいて、当該相対位置に関連付けられた理想の姿勢となるように、凹面鏡26の姿勢を自動調整する。ここで、自動調整とは、制御回路30が車内カメラ6a等から入力される信号等に基づいて、凹面鏡26の姿勢を変更することを意味する。
【0038】
なお、第1実施形態では、車内カメラ6aが「撮影手段」を構成し、ステップS50を実行する制御回路30が「調整手段」を構成し、ステップS30を実行する制御回路30が「判定手段」を構成し、ステップS32を実行する制御回路30が「警告手段」を構成する。
【0039】
(作用効果)
以上説明した第1実施形態の作用効果を以下に説明する。
【0040】
第1実施形態によると、光学系20は、凹面鏡26の姿勢に応じて画像の視認領域12を移動させる。これによれば、凹面鏡26の姿勢の変更により視認領域12を移動させることで、乗員の各自の眼7の位置PEに合わせて虚像10を表示することが可能となる。そして、凹面鏡26の姿勢は、撮影された乗員の眼7の視認領域12に対する相対位置に基づいて、当該相対位置に関連付けられた姿勢となるように自動調整される。これによれば、実際に乗員の眼7の位置PEを撮影して、凹面鏡26の姿勢を自動調整することで、煩雑な調整作業を強いることなく、乗員の各自の眼7の位置PEに合わせた表示位置に自動で調整可能なHUD装置100を提供することができる。
【0041】
また、第1実施形態によると、制御回路30は、乗員の眼7の位置PEがz方向において可動領域内であると判定した場合、第1軸26cまわりの回動駆動によって、凹面鏡の姿勢を自動調整する。これによれば、乗員の眼7の位置PEがz方向において視認領域12外であった場合でも、乗員の各自の眼7の位置PEに合わせた表示位置に自動で調整することができる。
【0042】
また、第1実施形態によると、制御回路30は、乗員の眼7の位置PEが可動領域14からz方向に外れていると判定した場合、乗員が着座するシート5の高さHSを変更するように乗員に警告する。これによれば、乗員にシート5の高さHSを変更し、乗員の眼7の位置PEがz方向の可動領域14内に入ることを促すことで、HUD装置100が故障しているために虚像10が見えないのではないということを、乗員に認識させることができる。
【0043】
また、第1実施形態によると、制御回路30は、乗員がシート5の高さHSを変更した場合、凹面鏡26の姿勢の自動調整を開始する。これによれば、乗員がシート5の高さHSを変更することで、乗員の眼7の位置PEが可動領域内に入った状態で自動調整することができる。
【0044】
(第2実施形態)
図8〜10に示すように、本発明の第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0045】
第2実施形態のHUD装置200の凹面鏡226は、反射面26aの形状こそ第1実施形態と同様である。ところが凹面鏡226は、図8に示すように、凹面鏡226の中央を通るように配置され、第1軸26cに加え、凹面鏡226の中央において第1軸26cと交差し、第1軸26cに垂直な第2軸226dを有している。そして、凹面鏡226は、後述する制御回路30からの駆動信号に従って、ステッピングモータ26bにより、凹面鏡を第1軸まわりに回動駆動されるようになっている。また、凹面鏡226は、別のステッピングモータ226eにより、凹面鏡226を第2軸226dまわりに回動駆動されるようになっている。すなわち、凹面鏡226は、姿勢が変更可能に設けられる光学部材をなしている。
【0046】
このような凹面鏡226の姿勢の変更について、第1軸26cまわりの回動駆動によっては、第1実施形態と同様である。一方、第2軸226dまわりの回動駆動によって凹面鏡226の姿勢が変更されても、凹面鏡226の姿勢に応じて視認領域12が移動することとなる。
【0047】
具体的に、凹面鏡226の姿勢が第2軸226dまわりに回動駆動すると、視認領域12はy方向であって車両1に対して左右方向に移動する。すなわち、光学系20は、第2軸226dまわりの回動駆動によって凹面鏡226の姿勢を変更することにより、視認領域12をy方向に移動させる。この場合、虚像10の表示位置は、y方向であって車両1に対して左右方向に移動する。
【0048】
しかし、y方向となる左右方向に幅をもって表示されている虚像10が左右に移動すると、虚像10の拡大率が虚像の中心を挟む左右で非対称となるため、左右で歪みに違いが生じ、歪みが目立ち易い状態となる。したがって、第2軸226dは、第1軸26cまわりの回動駆動だけでは、乗員に画像の光を虚像10として十分に視認されることができない場合の補助的な軸として用いられる。ここで、第2軸226dまわりの回動駆動に対する視認領域12の移動において、虚像10の中心を挟む左右で虚像10の拡大率の差が極小となる視認領域12の位置に応じた凹面鏡226の姿勢を、初期姿勢とする。
【0049】
第2実施形態における可動領域214は、第1実施形態と同様に光学系20により凹面鏡26の姿勢に応じて視認領域12がz方向に移動する範囲と定義される。ただし、第1軸26cに垂直な第2軸226dまわりの回動駆動により視認領域12がy方向に左右移動もするHUD装置200では、図9に示すように、初期姿勢に対して視認領域12がz方向に移動する範囲を可動領域214とする。また、第2軸226dまわりの回動駆動に伴い、視認領域12が可動領域からy方向にずれることとなるが、視認領域12が可動領域214からy方向に移動する範囲を、拡張領域216と定義する。特に本実施形態では、初期姿勢において、第1軸26cがy方向に沿った状態となり、y方向における拡張領域216の中間に視認領域12が位置する。なお、図9では、初期姿勢に応じた視認領域12が実線で示され、初期姿勢に応じた視認領域12を包含する可動領域214も実線で示され、拡張領域216は破線で示されている。
【0050】
次に、車両1のパーキング状態が解除された時点で、第1実施形態における制御回路30が、モニタリングシステム6と連携して、コンピュータプログラムの実行により実施するフローチャートを、図10に基づいて詳細に説明する。なお、車両1のパーキング状態の解除とは、パーキングブレーキ及びシフトレバーにおけるパーキングレンジの両方の解除を意味する。
【0051】
ステップS210〜S220は、第1実施形態のステップS10〜S20と同様の処理を行なう。ステップS220の処理後、ステップS235に移る。
【0052】
ステップS230は、第1実施形態のステップS30と同様の判定を行なう。ステップS230において肯定判定を下すと、ステップS236に移る。ステップS230において否定判定を下すと、ステップS232に移る。ステップS232,S234は、第1実施形態のステップS32,S34と同様の処理を行なうこととなる。
【0053】
一方、ステップS230にて乗員の眼7の位置PEがz方向において可動領域214内であると判定された場合のステップS236では、眼7の位置PEがy方向において可動領域214内であるか否かを判定する。具体的には、制御回路30のメモリ(図示しない)が予め可動領域214のy方向における範囲を記憶しており、ステップS220にて算出された眼7の位置PEが、y方向において当該範囲内であるか否かを判定する。特に本実施形態では、両眼7が範囲内でなければ否定判定を下すようにしているが、片眼7が範囲内であれば肯定判定を下すようにしてもよい。ステップS236において肯定判定を下すと、ステップS237に移る。一方、ステップS236において否定判定を下すと、ステップS244に移る。
【0054】
ステップS237では、視認領域12が可動領域214内であるか否かを判定する。具体的には、凹面鏡226の姿勢が初期姿勢であれば、視認領域12が可動領域214内であるため、肯定判定が下すこととなる。一方、初期姿勢の第2軸226dに対して、現在の第2軸226dが回動している状態であれば、視認領域12がy方向において可動領域214からずれている状態であるため、否定判定が下すこととなる。ステップS237において肯定判定を下すと、ステップS240に移る。一方、ステップS237において否定判定を下すと、ステップS242に移る。
【0055】
眼7の位置PEがy方向及びz方向において可動領域214内であり、かつ、視認領域12がy方向において可動領域214内であると判定された場合のステップS240では、第1軸26cまわりの回動駆動による凹面鏡226の理想の姿勢の算出を行なう。具体的には、第2軸226dまわりの回動駆動を停止させ、初期姿勢を維持することを前提として、ステップS220にて算出された眼7の位置PEに関連付けられた凹面鏡226の理想の姿勢を算出する。そして、ステップS220にて算出された眼7の現在の視認領域12に対する相対位置に基づいて、凹面鏡226が理想の姿勢となるような第1軸26cの回動駆動量を算出する。ステップS240の処理後、ステップS250に移る。
【0056】
ステップS250では、第1軸26cまわりの回動駆動による凹面鏡226の姿勢の調整を行なう。ステップS240にて算出された第1軸26cの回動駆動量に基づいて、駆動信号を入力されたステッピングモータ26bが、凹面鏡226を第1軸26cまわりに回動駆動させ、姿勢が変更される。ステップS250を以って一連の処理を終了する。
【0057】
また、眼7の位置PEがy方向及びz方向において可動領域214内であり、かつ、視認領域12がy方向において可動領域214からずれていると判定された場合のステップS242では、第1軸26cまわりの回転駆動と、第2軸226dまわりの回転駆動とによる凹面鏡226の理想の姿勢の算出を行なう。具体的には、凹面鏡226の姿勢を、初期姿勢とすることを前提として、ステップS220にて算出された眼7の位置PEに関連付けられた凹面鏡226の理想の姿勢を算出する。そして、ステップS220にて算出された眼7の現在の視認領域12に対する相対位置に基づいて、凹面鏡226が理想の姿勢となるような第1軸26c及び第2軸226dの回動駆動量を算出する。ステップS242の処理後、ステップS252に移る。
【0058】
ステップS252では、第1軸26cまわりの回転駆動と、第2軸226dまわりの回転駆動とによる凹面鏡226の姿勢の調整を行なう。ステップS240にて算出された第1軸26c及び第2軸226dの回動駆動量に基づいて、駆動信号を入力されたステッピングモータ26b,226eが、凹面鏡226を第1軸26cまわり及び第2軸226dまわりに回動駆動させることで、姿勢が変更される。すなわち、ステップS252によって、視認領域12は可動領域214内に移動することとなる。ステップS252を以って一連の処理を終了する。
【0059】
また、ステップS230にて乗員の眼7の位置PEが可動領域214からy方向に外れていると判定された場合のステップS244では、第1軸26cまわりの回転駆動と、第2軸226dまわりの回転駆動とによる凹面鏡226の理想の姿勢の算出を行なう。具体的には、第1軸26cまわりの回転駆動と、第2軸226dまわりの回転駆動との両方を行なうことを前提として、ステップS220にて算出された眼7の位置PEに関連付けられた凹面鏡226の理想の姿勢を算出する。そして、ステップS220にて算出された眼7の現在の視認領域12に対する相対位置に基づいて、凹面鏡226が理想の姿勢となるような第1軸26c及び第2軸226dの回動駆動量を算出する。ステップS244の処理後、ステップS254に移る。
【0060】
ステップS254では、第1軸26cまわりの回転駆動と、第2軸226dまわりの回転駆動とによる凹面鏡226の姿勢の調整を行なう。ステップS240にて算出された第1軸26c及び第2軸226dの回動駆動量に基づいて、駆動信号を入力されたステッピングモータ26b,226eが、凹面鏡226を第1軸26cまわり及び第2軸226dまわりに回動駆動させることで、姿勢が変更される。すなわち、ステップS254によって、視認領域12はy方向において可動領域214からずれた状態となる。ステップS254を以って一連の処理を終了する。
【0061】
ここで、第2実施形態における理想の姿勢は、第1軸26cの回動駆動については、第1実施形態と同様の考え方を適用する。一方、第2軸226dの回動駆動については、初期姿勢を基準として、ステップS220にて算出された眼7の位置PEが、視認領域12内となるための最小限の第2軸226dまわりの回動駆動による姿勢を、理想の姿勢とする。
【0062】
第2実施形態においても、制御回路30は、車内カメラ6aが撮影した乗員の眼7の視認領域12に対する相対位置に基づいて、当該相対位置に関連付けられた姿勢となるように、凹面鏡226の姿勢を自動調整する。したがって、第2実施形態によっても、第1実施形態に準じた作用効果を奏することが可能となる。
【0063】
また、第2実施形態によると、y方向となる左右方向に幅をもって表示される虚像10は、凹面鏡226の第2軸226dまわりの回動駆動によって虚像10の中心を挟む左右で歪みに違いが生ずるおそれがある。そこで、撮影された乗員の眼7の位置PEがy方向及びz方向において可動領域214内であり、かつ、視認領域12がy方向において可動領域214内であると判定された場合、第2軸226dまわりの回動駆動を停止させ、第1軸26cまわりの回動駆動によって、凹面鏡226の姿勢を自動調整する。これによれば、虚像10に左右の歪みに違いを生じさせることを抑制して、自動調整することができる。
【0064】
また、第2実施形態によると、眼7の位置PEがy方向及びz方向において可動領域214内であり、かつ、視認領域12がy方向において可動領域214からずれていると判定された場合、第1軸26cまわりの回動駆動と、第2軸226dまわりの回動駆動とによって、凹面鏡226の姿勢を自動調整する。これによれば、虚像10に左右の歪みに違いを生じさせることを抑制して、自動調整することができる。
【0065】
また、第2実施形態によると、撮影された乗員の眼7の位置PEが可動領域214からy方向に外れていると判定された場合、第1軸26cまわりの回動駆動と、第2軸226dまわりの回動駆動とによって、凹面鏡226の姿勢を自動調整する。これによれば、視認領域12をy方向に外れた乗員に対して、虚像10を視認可能に表示させることができる。
【0066】
また、第2実施形態によると、車両1のパーキング状態が解除された時点で、凹面鏡226の姿勢を自動調整するための動作を開始する。これによれば、乗員が運転姿勢の状態で、凹面鏡226の姿勢を自動調整することが可能となるので、運転中の乗員の各自の眼7の位置PEに合わせた表示位置に自動で調整可能なHUD装置200を提供することができる。
【0067】
なお、第2実施形態では、車内カメラ6aが「撮影手段」を構成し、ステップS250,S252,S254を実行する制御回路30が「調整手段」を構成し、ステップS230,S236,S237を実行する制御回路30が「判定手段」を構成し、ステップS232を実行する制御回路30が「警告手段」を構成する。
【0068】
(第3実施形態)
図11〜12に示すように、本発明の第3実施形態は第1実施形態の変形例である。第3実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0069】
第3実施形態の制御回路30は、図6のブロック図に加え、図11に示す手動調整スイッチ308と電気的に接続されている。手動調整スイッチ308は、上下に傾斜可能に形成されている。制御回路30が手動調整スイッチ308の入力を許可する手動調整モードにおいて、手動調整スイッチ308は、上側が押されると、凹面鏡26の姿勢が第1軸26cまわりに回動駆動して、虚像10の表示位置がz方向であって車両1に対して上方に移動するようになっている。また、手動調整スイッチ308は、下側が押されると、先程とは逆まわりに回動駆動して、虚像10の表示位置がz方向であって車両1に対して下方に移動するようになっている。その他、図示しないが、制御回路30は、輝度調整スイッチと電気的に接続されている。手動調整モードにおいて、輝度調整スイッチを操作すると、投射器の光源の出力を手動調整して、虚像の輝度を調整することができる。
【0070】
次に、車両1のエンジンスイッチがオンされた時点で、第1実施形態における制御回路30が、モニタリングシステム6と連携して、コンピュータプログラムの実行により実施するフローチャートを、図12に基づいて説明する。
【0071】
ステップS310〜S330は、第1実施形態のステップS10〜S30と同様の制御を行なう。また、ステップS330にて乗員の眼7の位置PEがz方向において可動領域14内であると判定された場合のステップS340〜S350は、第1実施形態のステップS40〜S50と同様の制御を行なう。ステップS350の処理後、すなわち凹面鏡26の姿勢を自動調整した後、ステップS360に移る。
【0072】
ステップS360では、手動調整モードへの移行を行なう。すなわち、制御回路30が手動調整スイッチ308の入力を許可することで、乗員は、手動調整スイッチ308により、凹面鏡26の姿勢を手動調整可能となる。ステップS360を以って一連の処理を終了する。
【0073】
一方、ステップS330にて乗員の眼7の位置PEが可動領域14からz方向に外れていると判定された場合のステップS332〜S334も、第1実施形態のステップS32〜34と同様の制御を行なう。ただし、ステップS334において否定判定を下すと、ステップS360に移るようになっている。
【0074】
第3実施形態においても、制御回路30は、車内カメラ6aが撮影した乗員の眼7の視認領域12に対する相対位置に基づいて、当該相対位置に関連付けられた姿勢となるように、凹面鏡26の姿勢を自動調整する。したがって、第3実施形態によっても、第1実施形態に準じた作用効果を奏することが可能となる。
【0075】
また、第3実施形態によると、凹面鏡26の姿勢を自動調整した後、乗員が凹面鏡26の姿勢を手動調整可能とする。これによれば、虚像10が視認されない状態からの調整が困難な乗員であっても、HUD装置300の制御回路30が虚像10の見える凹面鏡26の姿勢まで自動調整した後、乗員の各自の好みに合った見え具合に微調整等の手動調整をすることができる。
【0076】
なお、第3実施形態では、車内カメラ6aが「撮影手段」を構成し、ステップS350を実行する制御回路30が「調整手段」を構成し、ステップS330を実行する制御回路30が「第1判定手段」を構成し、ステップS332を実行する制御回路30が「警告手段」を構成する。
【0077】
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0078】
具体的に、第1〜3実施形態に関する変形例1としては、姿勢が変更可能に設けられる光学部材は、凹面鏡26以外の、例えば平面鏡24であってもよい。
【0079】
第1〜3実施形態に関する変形例2としては、理想の姿勢は、他の考え方に基づいて算出されてもよい。例えば、第1軸26cの回動駆動について、ステップS20,S220,S320にて算出された眼7の位置PEが、視認領域12内となるための最小限の第1軸26cまわりの回動駆動による凹面鏡26の姿勢を、理想の姿勢としてもよい。
【0080】
第1〜3実施形態に関する変形例3としては、ステップS20,S30,S32,S34,S40,S220,S230,S232,S234,S236,S237,S240,S242,S320,S330,S332,S334,S340の処理は、制御回路30以外の、例えばメータ4が行なってもよい。
【0081】
第1〜3実施形態に関する変形例4としては、ステップS32,S232,S332における警告は、車両1のナビ画面に警告メッセージを表示してもよく、音声で警告するようにしてもよい。
【0082】
第1〜3実施形態に関する変形例5としては、ステップS32,S232,S332における警告の後に、シートの高さが変更された場合、乗員が車両1に備えられた自動調整ボタンを押した時点で、再びステップS10,S210,S310の撮影を開始するようにしてもよい。
【0083】
第1,3実施形態に関する変形例6としては、エンジンスイッチのオンに代えて、パーキング状態が解除された時点で、凹面鏡26の姿勢を自動調整するための動作、すなわちステップS10,S310を開始するようにしてもよい。
【0084】
第2実施形態に関する変形例7としては、凹面鏡226の姿勢を自動調整した後、乗員により凹面鏡226の姿勢を手動調整可能とするS360に相当する処理が追加されてもよい。
【0085】
第2実施形態に関する変形例8としては、パーキング状態の解除に代えて、エンジンスイッチがオンされた時点で、凹面鏡226の姿勢を自動調整するための動作、すなわちステップS210を開始するようにしてもよい。
【0086】
第2実施形態に関する変形例9としては、パーキングブレーキ及びシフトレバーにおけるパーキングレンジの少なくとも一方が解除された時点を、パーキング状態が解除された時点としてもよい。
【0087】
第1〜3実施形態に関する変形例10としては、エンジンスイッチのオン又はパーキング状態の解除に代えて、乗員が車両1に備えられた自動調整ボタンを押した時点で、凹面鏡26の姿勢を自動調整するための動作、すなわちステップS10,S210,S310を開始するようにしてもよい。
【0088】
第1〜3実施形態に関する変形例11としては、HUD装置100は、車両以外の船舶ないしは飛行機等の各種移動体(輸送機器)に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0089】
100,200,300 ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)、1 車両(移動体)、3 ウインドシールド(投影部材)、5 シート、6a 車内カメラ、7 眼、10 虚像、12 視認領域、14,214 可動領域、20 光学系、26,226 凹面鏡(光学部材)、26c 第1軸、226d 第2軸、30 制御回路、HS 高さ、PE 位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12